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飛躍的進歩を遂げる軍事技術と日本の防衛戦略 新防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画の光と影 
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/473.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 26 日 07:47:18: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

飛躍的進歩を遂げる軍事技術と日本の防衛戦略
新防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画の光と影
2018.12.26(水) 用田 和仁
中国、海上演習で空母「遼寧」に戦闘機着艦
中国海軍の海上演習で、同国唯一の空母「遼寧」に駐機されたJ15戦闘機(2018年4月24日撮影)。(c)AFP PHOTO〔AFPBB News〕

1 先進性と後進性が混在する新大綱・新中期防
 2018年12月18日に閣議決定された防衛計画の大綱(新大綱)と平成31年度から平成35年度までを対象とする中期防衛力整備計画(新中期防)は、中国が間髪を入れず「強烈な不満と反対」を表明した。

 「中国の正常な軍事行動について脅威をあおっている」としたことは、初めて抑止力の効いた大綱・中期ができた表れだ。

 中国は、中国の軍事的活動の高まりに対して、日本に「慣れろ」と魔法をかけてくるが、今後は決然と中国の「異常な軍事的冒険」に立ち向かう日本国民の覚悟と防衛への積極投資が望まれる。

 一方、厳しい見方をすれば新大綱・新中期防はイノベーションの力とバックギアの力が混在しており、さらなる改善と修正がなければ国民を守り切り、日米が合理的に一体となった作戦を実行できるとはならないだろう。

 さらに、日本の防衛理念の根底にあるものを見落としてはならない。

 それは、中国や北朝鮮の軍事的脅威が現実のものとなっているにもかかわらず、「自らが空白となり周辺諸国の侵略を誘発しないために『基盤的防衛力』を保持する」、すなわち、ショーウインドウに装備品を並べることが基本となっている点だ。

 この考え方ではもはや日本を守り切ることはできない。人も急速に戦力化しないし、装備品も予算カットで散々買い叩かれたことから、防衛産業には急速増産できる体力は既にない。

 「脅威に対しては、脅威に対抗」できる現実の防衛力を持たねばならないということだ。

 新大綱で何度も繰り返されている「これまでに直面したことのない安全保障環境の現実の中にある」という認識ならば、国民や政治家はその危機感を感じ取るべきだろう。

 すなわち、財務省主導で、一応、装備品や弾などを並べておけば済む時代は終わったのである。

 動かすことすらままならない。そのうえ、さらに中期計画の節減をしようとしているおかで、南西諸島の切り札である対艦ミサイル数が削られ、あるいは「F35」を完成品で購入するため、日本の航空産業は大打撃を被ることになる。

 この岩盤の思考を切り崩さなければ国民を守り切ることはできない。「国破れて国家予算なし」である。

 一方、今から急速に中国に追いつこうとすると際限のない軍事費の増額になり、ソ連のように経済破綻することになるかもしれない。

 それを合理的に解決する1つが、新大綱のサイバー・電磁領域などでの優越の獲得(頭脳や神経に作用して無力化する、一般的に「非物理的打撃」という)である。

 そして、2つ目は前大綱の深化として、日米を貫く領域横断の作戦に基づいた「勝てる戦略」の明確化が必須である。

 しかし、領域横断の戦いの理解が不十分なため戦略が確立されていない。前大綱が深化されていない問題がここにある。

2 時代を切り開く首相の指示
 物理的破壊手段(精密誘導弾や砲弾などにより物理的に破壊する兵器での「物理的打撃」)は、際限のない軍事費(防衛費)の増大を招く。

 中国の数十年に及ぶ大軍拡や北朝鮮の数百発に上るミサイルなどに、すべてを物理的打撃で対抗することは、予算的にも、確実性から見ても不可能である。

 さらに、空母には空母を、飛行機には飛行機をという「対称戦力だけによる対処」では予算的にも、作戦的にも限界がある。

 そのため、中国が米軍の空母に立ち向かうのに安価なミサイルで対抗しているように、「非対称戦力による対処」の考え方を持つことが極めて重要である。

 この点において、安倍首相、国家安全保障局(NSC)の判断は時代を切り開く画期的なものであったと称賛できる。新大綱で「(非物理的打撃を)現在の戦闘様相における攻防の最前線だ」と断言したことは的確である。

 そして、この戦い方を根本的に変えるゲームチェンジャーの出現が、過去2〜3年の間に確実になった現状に対応できたことは、まさに天佑である。

 その技術の中心に日本の企業があることは救いであるが、一方、米国をはじめ外国からの積極的なアプローチに日本政府として先進的な企業を守れていないことは致命的である。この件は、また別途詳述したい。

 安倍首相の平成30年9月3日の自衛隊高級幹部会同での画期的な訓示は次の通りである。

●サイバー空間、宇宙空間さらに電磁波の領域など新たな領域で優位を保つことが「死活的に重要」

(注:大綱では早期に優位性を獲得することを強調、宇宙領域専門部隊、サイバー防衛部隊、電磁波作戦部隊などを新編)

●陸海空と言う従来の発想にとらわれた発想ではこの国を守り抜くことはできない

(注:あらゆる面で領域横断の戦い方へ変換を要求、物理的打撃については南西諸島の自衛隊の作戦は、陸海空統合で敵の艦船を沈め、潜水艦を沈め航空機を落とすことを目標としており、米国にとっても領域横断作戦として高く評価されている)

●宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を横断的に活用した防衛体制への変換

(注:新大綱では新たな領域と従来の領域の組み合わせによる戦闘様相に適応することが死活的に重要と記述)

●新たな防衛力の完成に10年15年かけて実現するようなスピード感からの脱却

(注:明確な現在の脅威に対抗した考え方が必要で、財務省主導ではない、必要な防衛力への投資が必須)

●今までの常識は通用しない

 注意書きにも書いたが、新大綱と新中期防には、「新たな領域における能力の早期獲得が死活的に重要である」ことが繰り返し述べられており、的確な判断である。

 戦いの様相を一変させるゲームチェンジャー兵器は、米国も日本に教えることはない。その競争に遅れず、スタートラインにつけたことは極めて重要であり、この機会を逃していたら5年後には完全に世界の潮流から取り残されていたであろう。

 特に陸上総隊の下に、サイバー部隊および電磁波作戦部隊が新編されることになっていることは画期的である。

 もちろん、サイバー対処は国家として対処すべきだが、その中核となる共同の部隊としてサイバー防衛部隊を新編することも画期的である。

 以前、筆者は電磁波兵器について述べたことがある(参照=http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52275)。

 この電磁波を照射している時だけ効果が期待できる「電波妨害兵器(EW)」と相手の電子機器を破壊し、無力化することができる「マイクロ波兵器(電磁砲、HPMW)」のいずれも実現できる道筋ができたものと考えられる。

 (ロシアはいずれも装備化しており、ウクライナやシリアで実戦配備中である)「電波妨害兵器」は、衛星や早期警戒管制機(AWACS)など遠方の目標の機能を妨害することができる。

 車載で常続的に妨害できる陸自の妨害兵器(高出力の電子戦装備)とスポットで強力な妨害ができる空自の妨害器(スタンドオフ電子戦機)と併せて、領域横断の新たな戦いの好例となるであろう。

 また、「マイクロ波兵器」(高出力マイクロウエーブ装置)は、ある一定の大きさを持った塊が光速で飛んで行き、電子機器を破壊することができる。

 このことから、雲霞のごとく攻撃してくるドローンや無人機、さらに能力を向上させれば飽和攻撃してくる巡航ミサイル、弾道ミサイル、さらには、航空機、艦船、地上部隊のほとんどすべてを無力化することができるだろう。

 首相の訓示に「今までの常識は通用しない」とある通り、役人の考えで、従来のミサイルの補完という縛りを作ってその能力を矮小化してはならない。

 「電波妨害兵器」と「電磁砲」は完成してしまえば、先述した技術の中心となっている企業の新電源を使う事により、平時は民生電力事業に貢献し、有事は無尽蔵の「弾」を供給することになるだろう。

 イージスアショアなどのミサイル兵器よりも相当安価であるにもかかわらず、日本を「電磁バリアー」で覆い、国民を北朝鮮や中国からのミサイル攻撃から守り切れる態勢が出来上がることからも、戦争を一変させるという事がお分かりになるだろう。

 ただし、イージスアショアに代表されるミサイルなどの物理的打撃は最終的な破壊兵器として、ある程度の数量は必要となるだろう。

 しかし、「主」と「従」が逆転することになる。これが、ゲームチェンジャーの由来である。

 イージスアショアの優れた側面は、多数のミサイルなどに同時対処できる「総合ミサイル防空能力」を構築できる指揮・統制能力である。

 米陸軍が相模補給廠に防空砲兵旅団を配置したことと相まって、日米は共同で最適の兵器により瞬時に対処ができ、将来、AI技術が導入されると中国などのミサイルなどの飽和攻撃に的確に無駄なく対処できるようになるだろう。

 また、今まで言われていたレーザ兵器、レールガンの記述がない。

 これは、レーザ兵器は、開発は継続するとしても、大気中をレーザのパワーを減衰させないで目標に一瞬のうちに届かせるには技術的課題があり、レールガンは日本の技術では困難な課題があるからである。

 装備化には10年程度はかかるだろう。

3 継承した前大綱・中期の未解決の重要な問題
 新大綱の記述で前大綱の統合機動防衛力を深化させたとなっているが、本質的なことを深化し切れていないところに大きな問題がある。

 新大綱には次のような重要な記述があり、正しい方向を示していると評価できる。

 「宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域と陸・海・空という従来の領域による戦闘様相に適応することが死活的に重要」

 「今後の防衛力は、個別の領域における能力の質及び量を強化しつつ、全ての領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により全体としての能力を増幅させる領域横断(クロスドメイン)作戦により、個別の領域における能力が劣勢の場合にもこれを克服し、我が国の防衛を全うする」

 また、個々の装備などを見ると以下のように時宜を得た装備が明確化されてきている。

●スタンドオフ・ミサイルの導入

(その中の「LRASM」は空自に装備されるが、元々米軍が「F18」空母艦載機用に開発している射程が1000キロ以上の対艦ミサイルで、イージス艦や地上からも発射可能)

●射程を延伸した対艦ミサイル・防空ミサイル

●島嶼防衛用高速滑空弾、極超音速弾の開発・装備化、さらには無人水中航走体(UUV)の配備

 しかし、これらの装備はいったいどんな作戦・戦略に役に立つのか分からない。答えを出すには、米軍のエアシーバトル構想やそれを取り込んだオフセット戦略の考え方を考慮して日米一体の作戦をイメージしなければならない。

 疑問点は次の通りである。

Q:新大綱・新中期に繰り返し出てくる「主に冷戦期に想定されていた大規模な陸上戦力を動員した着上陸侵攻のような侵攻事態」は考えられないとして、排除しているが、では、中国式の侵攻様相とは何なのか?

 新中期には、ゲリラ・特殊部隊への「考慮」はあり、新大綱にはハイブリド戦の記述はあるが、肝心な南西諸島や本土に対する中国の攻撃はどんな形態なのか提示がない。

Q:米国が水中の作戦を重視し、中国艦艇を沈めるためにLRASMを開発し、トマホークや防空ミサイルを含めて、あらゆるミサイルに対艦攻撃機能をつけ、「船を沈めよ」をコンセプトにしているのに、日本は明確にしていない。

 米国と合理的に一体となって作戦する気はあるのか?

Q:海空領域の戦いは海自・空自だけの役割なのか?

 船を沈め、航空機を落とすために陸海空一体の領域横断の作戦を推進していくのではないか?

 南西諸島で実施している統合演習は無駄な演習なのか?

Q:第2次世界大戦におけるミッドウエー海戦のような海空決戦は、「日中もし戦わば」の時に生起するのだろうか?

 中国が第1列島線に仕かける短期高烈度決戦は1〜2か月続くと見積もられている一方、有事、米海空軍は当初の損害を回避するために一時グアム以遠に避退する中で海自・空自は国土防衛にどのように貢献するのか?

 果たして海自・空自は長期間、東シナ海や日本列島全域で優勢を獲得することができるのか?

Q:最終的に中国の軍事的冒険の意図をどのようにして断念に追い込むのか?

 すなわち、どうすれば中国に勝てるのか?

 これらすべての疑問は、日米作戦までを考慮に入れず、また、領域横断策を深く考えることなく「@戦いの様相の分析」と「A日米の勝ち目」の整理が不十分なために起こった問題である。

 統合幕僚監部、情報本部の責任は重い。

@戦いの様相は次の通りである(ただしこの順番で生起するとは限らない)

●中国共産党が指揮する「統一戦線工作」による洗脳(大衆操作)による無血開城
●サイバー攻撃による国家機能の麻痺、インフラの破壊

●漁船などを大量に投入した海上民兵による機雷などによる港湾封鎖、島嶼への精鋭部隊の輸送・港湾からの上陸(習主席はロシアのウクライナにおけるハイブリッド戦の研究を指示)

●国防動員法に基づく留学生・旅行者などによる国内蜂起(ゲリラ・特殊部隊)
●ドローン、巡航ミサイル、弾道弾によるレーダ、空港、港湾などに対する飽和攻撃(対処不能にさせる)

●古い軍艦、無人機を含む古い航空機による攻撃(弾を撃ち尽くさせる)
●新鋭艦、新鋭機の投入(海空決戦?)

 大綱を審議した有識者懇でも「制海、制空」から「制脳」ということが議論されたようだが、まさに新たな領域、さらにはグレーゾーンの戦いで決着してしまうこともあることは、もはや避けられない現実として法整備も含め対応を急ぐべきだ。

 また、必ずしも当初から海空決戦が生起するとは限らないのだ。

 このような戦闘様相を考えるなら、前大綱でも強調されている海上・航空優勢の獲得は重要でも、作戦・戦略を明確にしないままでの航空機、艦艇の増加だけでは、生き残り戦い続け、中国に勝つことはできない。

 海空戦力があれば日本を守れるというのは米空母がすぐに来援するとした過去の考えであるが、新大綱にもその考えが引き継がれている。

 さらに中国は、徹底して陸海空自や米海空軍が動けないようにして磨り潰しながら、あるいは弾を撃ち尽くさせて、目標とする島嶼を奪取に来ることを警戒しなければならない。

 中国式の「海洋人海戦術」だ。

 島嶼への中国の侵攻は、まさに中国版ハイブリッド戦であり、海上民兵に支援された空挺や海軍歩兵を含む精強な部隊が侵攻してくる。

 宮古島などを例に挙げれば、あらゆる港・空港を使い、一挙に5000〜6000人の迫撃砲や「RPG7」などの携帯ミサイルを持った部隊が、階級章もつけずに、宣戦布告することなく上陸して島を早期に占領しに来るだろう。

 今配置を検討している500人程度の部隊が10倍以上の「軍隊」を相手にすることになる。

 これに対抗できるのは戦車や機動戦闘車(MCV)とそのファミリーの装甲部隊である。装甲戦力なくして生き残り、国民を守りながら戦い続けることは不可能だ。

 空港のある島嶼が中国に取られれば、米軍の攻撃的な構想が破綻する。

 日米の勝ち目を整理すると次の通りである。(JBプレス「ついに軍備の世代交代始まる、日本にチャンス到来」参照=http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54330

●米国は「長期戦」「長距離打撃」へ転換

○船(水上艦、潜水艦)を沈めよ(対艦戦は中国の飽和攻撃返し、水中の支配の追求)
☆盲目化作戦での勝利(電子戦、マイクロ波兵器などの非物理的打撃)

●日本は「国土防衛」と「米軍作戦への最大限の寄与」が柱

○船(水上艦、潜水艦)を沈めよ
☆電磁領域での勝利(サイバー、電波妨害、マイクロ波兵器を5年以内に装備化)
◎生き残り、戦い続ける(ミサイル防衛、対ハイブリッド、対ゲリラ戦)

 米国には、エアシーバトルを基本としたオフセット戦略のように、積極的に前に出て同盟国と共に戦う積極戦略もあれば、オフショア戦略のように中国を大きく囲んで経済封鎖し、中国をギブアップさせる消極戦略が常に同居しており、その時々により幅のある選択がなされることを忘れてはいけない。

 米国は、国益によっては消極戦略を選択する自由があるということだ。

 積極戦略でも中国との核戦争への拡大を恐れ、中国本土への物理的打撃の限界も考慮して「長期戦」が基本となっていることが前提だ。短くとも1か月、長ければ1年と言う長さである。

 すなわち、日本は相当長い期間、自らの防衛力で戦い続けなければならないということだ。陸海空自共に、「生き残り、戦い続ける」ことが要求される。

 特に空自は、すべての民間空港が使えることが前提となるだろう。

 ☆印の米国の「盲目化作戦」は、米軍の切り札として作戦当初から実施すると明言しているものの実態は教えてくれない。恐らく宇宙、空からの電磁波攻撃などであろう。

 米陸軍も遅ばせながら陸自と同じような考え方を持つようになってきた。今回、日本が新大綱において電磁領域等の優越をはっきりさせたことから、やっと謎が解け非物理的打撃の新領域での一体化が進むと考えられる。

 ○印では「船を沈めよ」とハリス前太平洋軍司令官が言い、米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授(現在はCSBA)やホームズ教授に陸上発射型のミサイル網は海軍の戦いを変えたと言わしめたのは、10年前から始めた自衛隊統合の対艦攻撃演習が大本である。

 今年(2018年)の海軍演習のリムパックに米陸軍とともに陸自の対艦ミサイルが参加したことはその流れが確固として続いていることを示している。

 また、「船を沈めよ」は、米海軍で発表されていた論文(War at Sea Strategy、核戦争への拡大を抑制するため中国本土を攻撃しない一方で、中国海軍を撃滅して勝利する)と整合している。

 このため、やがて米海軍も中国のA2/ADに押し込まれず、積極的に攻勢へ打って出るDistributed Lethality(分散したあらゆる場所からの攻撃)に転換し、ハリス氏の言葉になったのである。

 4年前に筆者らは米国の国防省の直接的なシンクタンクであるCSBA(戦略予算評価局)で議論したので、これは思いつきではなく歴史ある議論を重ね確立されていった日米の考えであると断言できる。

 一方、米軍は南西諸島および日本本土の防衛が、米海空軍のあらゆる艦船および航空機の安全を保証するものでなければ、船を沈める攻撃行動には出られない。

 すなわち、南西諸島が対艦、対空、対潜水艦の壁として存在しなければ米国の戦略は成り立たないということである。

 一方、米軍とは異なり、国土防衛も同時に実行する日本の場合は、陸自の対艦・対空の壁を前提として、海自・空自と一緒に艦船、航空機を統合作戦で仕留める所に意味がある。

 水中の作戦では水上の作戦と呼応しながらも、半ば独立して日本の潜水艦は米海軍と一体となり作戦を実行するであろう。水中の作戦は、機雷戦や無人艇の運用などを含め、日米の大きな切り札の1つである。

 これらを踏まえると、新中期防は、「従来の領域における能力強化」において認識の誤りがある。

 すなわち、前大綱と同じように「海空領域の能力」で、航空優勢の獲得、海上優勢の獲得として引き継いでいるが、そのような形態は正しく戦場を捉えてはいない。

 前出ハリス元司令官は「陸軍が船を沈め、人工衛星を無力化し、ミサイルを撃ち落とし、指揮・統制能力をハックし妨害せよ」と、まさに新たな領域と従来の領域を合わせた考えを表明している。

 さらに、INF条約が廃棄されれば、米陸軍は長射程の対艦・防空ミサイルを保有し、第1列島線沿いに配置して、東・南シナ海を中国の船と飛行機の墓場とすることができるようになるだろう。

 あるべき姿は、「海空領域」で領域横断的に作戦をし、「船(艦艇、潜水艦)を沈めること」「飛行機を落とすこと」が柱であることは明白である。

 従って、●「統合作戦による海空領域の能力」として、その中に

@「陸上からの打撃(対艦ミサイルの長射程化・超音速化、防空ミサイルの長射程化、島嶼の防衛能力の向上、機動・展開能力の向上)」

A「航空能力の向上(LRASMなどの導入、空対空ミサイルの長射程化)」

B「海上能力の向上」は2つに分かれ、

○「対水上戦能力」の向上としてミサイルの長射程化、護衛艦の対艦ミサイル装備の拡大

○「水中の作戦能力の向上」として潜水艦能力の向上、無人水中航走体などの充実、自律機雷などの開発・装備化となるべきだ。そして、極超音速滑空弾を統合兵器として保有すべきである。

 この際、陸自は機動展開能力の向上として、中級・小型級船舶の導入を決めたことは正しい決断だ。

 詳しくは書かないが、例えば英国と日本の共同開発の「ケイマン90」などは、岸壁からも急速に装甲部隊を揚陸できるため、このようなものを開発すれば上陸作戦の形態は全く変わるだろう。

 空自のF35はミサイルの搭載が2発と限られ、さらに国産ミサイルは搭載できないという欠点があることを踏まえ、F15の改修では多数の長射程ミサイルを搭載できるようにすることが必要となろう。

 海自は米国の戦略に合わせ、対艦攻撃機能の向上を図る必要があるだろう。さらに潜水艦から発射する弾道・巡航ミサイルの開発についても進めるべきだろう。

 マスコミは「いずも」の改修ばかりに注目しているが、本当に国土防衛をどのように全うしながら、米国と力を合わせることができるかの視点を見失ってはいけない。

 また、敵基地攻撃能力については、米国は北朝鮮への攻撃は認めても、中国に対する攻撃を日本に認める気はない。

 米国が中国本土への攻撃は核戦争へ誘発する恐れがあると同時に、効果が十分に期待できないことから踏み込んでいないのに、そのような考慮なしに敵基地攻撃だけが独り歩きするのは問題だ。

 現今では、核兵器でも保有しなければ効果はない。むしろ電磁領域の活用の方が可能性は高いだろう。

4 これまで直面したことのない安全保障環境への覚悟
 2018年10月のペンス副大統領のハドソン研究所での演説は、中国に全面的に立ち向かう米国の不退転の決意を表明したもので、歴史的な転換点だと評価されている。

 ルトワック氏は「これは、ビジネスの問題ではなく、中国が支配する世界、中国に牛耳られた経済の中で生きていくのかどうかだ」と断言している。

 言葉を変えると、中国の「抑圧」された人類運命共同体で生きることを選択するのか、少々トランプ大統領のわがままを我慢しても「自由」を選択するのかの分水嶺に世界は直面しているということだ。

 米国の強烈な決意が示されたにもかかわらず、日本は中国との関係は「競争」から「協調」へ向かうとして経済界は中国へ向かい、米中の仲介者たらんとするその姿は実に無謀で身の程知らずだ。

 米国は、既に中国は第2列島線内で米軍に対抗する能力があり、2025年までにインド太平洋全域で米軍に対抗できると考えている。そして、中国は米国が直面する中・長期的な最大の脅威であると断言している。

 自由を基本として、人間らしい生き方をしたいのならば、米国とともに歩むことは日本にとって正しい選択である。

 同時に、トランプ大統領は、シリアからの撤退に当たって「感謝されない地域を米軍が支援する必要はない」と述べている。

 日本は甘い。何時までも日米同盟は続き、米国のご機嫌を取るため、高額の装備品を購入することが日米同盟だと思っているならば、いつか見下され、国内産業は衰退し、米国の国益の考え方の変化によっては日米同盟は終わるだろう。

 しかし、賢明な読者の皆さんは今回の提言に、米国から切り離されても日本の防衛を日本自らができるように仕込まれた処方箋があることに気づかれたかもしれない。

 日本の歴史が途切れるのか、続くのかの過渡期の戦略は実に難しい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55061  

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コメント
1. 2018年12月26日 19:00:33 : d0QODkNglo : ul9iNPnSst8[115] 報告
腐敗する 進んだように 見せかけて

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