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働き方改革を加速させる「サテライトオフィス」 残業削減と生産性向上の二兎をどう追うか シニアの「心の高齢化」をいかに防ぐ
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/462.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 11 日 10:11:09: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

働き方改革を加速させる「サテライトオフィス」

2019.3.11(月) 田澤 由利

東京電力の郊外型から、駅ナカ、NY発WeWorkまで


東京電力のテレワークオフィス「SoloTime」
 メディアなどで「サテライトオフィス」という言葉を目にすることが多くなった。

 その背景には「働き方改革」がある。時間外労働の上限規制など、働き方改革法案は、4月1日から施行となる(中小企業は来年から)。

 特に、時間や場所を有効活用して柔軟に働く「テレワーク」を導入する企業が増えるなか、「働く場所」が多様化してきている。

 今回は、「サテイラトオフィス」ビジネスの最新の動きをお届けする。

働き方改革における「サテライトオフィス」とは?
 「サテライト(satellite)」は、惑星のまわりを回る「衛星」のこと。サテライトオフィスは、「本社や本部から離れたところにある小規模な事務所」として使われることが多い。

 一方、「働き方改革」の視点からは、「毎日通勤し、朝から晩まで働いていたオフィス (所属事業所)から離れた、会社が認める働く場所」と言うこともできる。

 「働き方改革」において、生産性を向上させつつ、人材を確保しなくてはいけない企業にとって、コストを抑えつつ「社員が働く場所」を広げる「サテライトオフィス」は、非常に重要な位置づけとなる。

 筆者は、「サテライトオフィス」を大きく3つに分類している。

●都市型サテライトオフィス

 首都圏であれば、東京駅、品川駅、新宿駅など、企業が集まる都市部に設置されたサテライトオフィス。

 社内会議や資料印刷のために会社に戻ることなく、営業のための移動を効率化できる。企業の生産性の向上に寄与する。

●郊外型サテライトオフィス

 社員が住む郊外に位置するサテライトオフィス。子育てや親の介護などで、通勤時間が負担になる社員が、効率よく働くことができる。

 短時間勤務の子育て社員がフルタイムで働くことも可能だ。災害や交通トラブル時も、有効に機能する。企業にとっては、社員の離職防止、ワークライフバランス向上、そして災害時の事業継続に寄与する。

●地方型サテライトオフィス

 全国各地で、地域の自治体などが設置するサテライトオフィス。

 テレワークの普及により「地方のサテライトオフィスで仕事が可能」になれば、地方創生はもちろん、社員の福利厚生から地方での人材確保、災害時の事業継続など、企業にもメリットが生まれる。

サテライトオフィス御三家も次のステップへ
 早くから法人向けのサテライトオフィス事業に取り組んできた先兵は、それぞれ次のステップに動き始めている。

 東急電鉄のNEWWORKは、直営店は首都圏を中心に全国に設置。店舗ネットワークは全国100拠点となる。今年に入って大阪にも直営店を設置した。

 リクルート系不動産会社ザイマックスは、サービス名を『ZXY(ジザイ)』に変更、来年度は100店舗を目指す。

 三井不動産の駅直結のハイグレードオフィス『ワークスタイリング』も、2020年度には50店舗を目指す方針だ。

 4月1日の「働き方改革法案」施行を前に、確実にビジネスとして成長することが予測されるサテライトオフィス事業。新しい企業の新しい動きも見え始めている。

東京電力の郊外型サテライトオフィス
 東京電力が郊外型サテライトオフィス事業をスタートした。

 先に書いたように、都市型は営業活動の効率化に、郊外型は社員のワークライフバランスに大きく貢献する。

 しかし、東京の「郊外」は広いうえに、一地域の利用者数が限られる。ビジネス性を考えると、東京23区内から徐々に広がるのを待つしかないと、筆者は考えていた。

 しかし、東京電力は3月1日、八王子市にテレワークオフィス「SoloTime」の第1号店舗をオープンした。

 さっそく八王子の「SoloTime」を訪問してみた。八王子駅から徒歩3分。

 普通の雑居ビルの8階なので、正直期待していなかったのだが、エレベーターを降りると、白を基調にしたオシャレなオフィスが目の前にあった。

 「ひとりの時間」という名称から、ネットカフェのような個別ブースが並んでいるのかと思いきや、オープンスペースも広く、明るく、過ごしやすい。

 無人店舗ではあるものの、女性でも安心して利用できる安全性が特徴だ。

 非常用の「緊急ボタン」の設置はもちろんだが、なかなか押しにくいという配慮から不安な時は「ちょっと見守って」ボタンも用意されている。

 八王子は、複数の路線が入るターミナル駅。都市部へ通勤する人も多い。企業が認める「サテライトオフィス」があれば、多くの社員のワークライフバランスが向上するだろう。

東京電力のテレワークオフィス「SoloTime」
 新規ビジネスを担当している東京電力ホールディングスの佐藤和之氏は、こう語る。

 「働き方が多様化するこれからの時代、都心ではフェイス・トゥー・フェイスの打ち合わせなどの『会議・コミュニティ』の場所となり、家の近くではテレビ会議も含めた『ソロワーク』の場所となるのではないか」

 「在宅勤務はスイッチのオン・オフが難しいことから郊外のサテライトオフィスのニーズは今後増えるだろう」

 今後、東戸塚にも出店が決まっているようで、顧客ニーズを検証しながら、次々と郊外を中心に展開していきたいとのこと。他の事業者とは異なるスタンスに注目したい。

全世界で425拠点
NY発WeWorkは「コラボレーシュン」
 WeWorkは、2010年ニューヨークで2人の青年が立ち上げたコミュニティ型ワークスペースだ。

 世界100都市以上に425か所、総面積は45万坪以上。日本に進出したのは2017年だが、今月には都内12か所を中心に、横浜、大阪、福岡へも展開し、年内に約30か所を目指している。

 国内のオフィスは、丸の内北口、六本木アークヒルズサウス、GINZA SIX、日比谷パークフロントなど、誰もが憧れる人気オフィスビルが連なる。

 しかし、WeWorkで働く一番のメリットは「ステータス」ではない。

 「コラボレーション」だ。会員専用SNSから、コミュニティのためのサポート、イベントまで、メンバー同士が交流するためのサービスが用意されている。

 今年1月に京橋の東京スクエアガーデンのWeWorkに本社を移転したニューチャーネットワークスの高橋透社長を訪ねた。

 WeWorkの共有スペースに入るなり、実に様々な人が、自分のスタイルで仕事をしている。高橋氏に移転した理由を聞くと、「ここの方が快適だから」と即答。

 「社員が生き生き仕事をして、ネットワークを広げている。これからの時代は、毎日同じオフィスで、同じ人と仕事をする時代ではない」

 マネシージャーの畑中恵美さんは、自社の専用スペースではなく、あえて共有スペースで仕事をしている。

 1日1人、新しい人に声をかけることを心がけているからだ。これからのサテライトオフィスは、仕事場でありつつ、ネットワークやビジネスのコラボレーションを広げる場に進化しつつある。

WeWorkの共有スペース©WeWork
JR東日本「駅ナカ」オフィスは今年の夏に正式スタート
 これから注目される「働く場所」は、ビルに用意されたオフィスだけではない。JR東日本が昨年11月から今年2月にかけて実証実験を実施したのは、「駅ナカ」オフィスだ。

 実証実験では、東京駅・新宿駅・品川駅に設置された。企業にとっては、究極の「都市型」サテライトオフィスである。

 『“働く人”の1秒を大切に』というコンセプトどおり、移動の合間、15分単位で利用できることが特徴だ。

 筆者も実証実験期間中に利用してみた。夕方の時間帯は出張帰りの直前に利用する人が多いのか、予約が取りにくかった。

 スマホから予約して、少し前にブースに到着。しかし、予約した時間にならないとブースをオープンできない。

 一瞬面倒だなと思ったが、逆に空いていれば1分前でも予約できるという考え方だ。

 ブースのオープンは、スマホアプリからドアに掲示されたQRコードを読み込むだけ。自分用のQRコードを表示する手間も不要だった。

 ブースは決して広くはないが、30分程度なら問題ない。中にはモニターも設置されカメラも用意されている(筆者が利用したときは利用不可だった)。

 何より助かったのは、時間が近づくと「声」で知らせてくれること。

 仕事に没頭していると時間を忘れがちになるので、ありがたかった。時間を意識して仕事をするという意味でも、場所の便利さだけでなく業務の効率化に貢献しそうだ。

 このサービスは、2019年夏、「STATION BOOTH」として、正式スタートする予定だ。

 また、JR東日本は、「法人向けの駅ナカコワーキングスペース」や「法人向けの駅チカレンタルオフィス」も予定している。

JR東日本 駅ナカ・オフィス(実証実験時)
テレワーク・デイズに向け
市場は急速拡大となるか?
 東京オリンピックパラリンピックの交通緩和をきっかに、日本の働き方を変えるべく国が2017年から実施している「テレワーク・デイズ」。

今年の「テレワーク・デイズ2019」は約1か月
 昨年は、1682団体、延べ30万人以上が参加した。テレワーク・デイズの期間、都内のサテライトオフィスが満席になる現象が出たほどだ。

 先日、「テレワーク・デイズ2019」の方針が発表された。2020年前年ということもあり、目標は3000団体・延べ60万人を掲げている。

 期間も、1か月以上(2019年7月22日〜9月6日)が設定されている。

 テレワークを導入する企業が増え、それに応えるようにサテライトオフィスが広がっている。日本の働き方がいよいよ変わっていく大きな動きを感じずにはいられない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55679


 

【第1回】 2019年3月11日 大田弘子 :政策研究大学院大学教授
残業削減と生産性向上の二兎をどう追うか、大田弘子氏が語る働き方改革の本丸
政策研究大学院大学教授 大田弘子氏

4月から「働き方改革関連法」が施行される。月45時間、年360時間を原則とした時間外労働の上限規制の導入、年次有給休暇の確実な取得、同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者間の待遇差の禁止などが盛り込まれ、現在、対応に追われている企業も多いことだろう。政府の規制改革推進会議の議長として、働き方改革の議論を進めてきた大田弘子さん。大田さんは、働き方改革関連法をどう評価しているのか。前編では、働き方改革法案の施行でも解決できない、日本人の働き方に関する問題を語ってもらった。

「長時間労働の是正」は大きな第一歩
高プロ人材の要件に課題も
 私は政府の規制改革推進会議の議長として、働き方改革の議論を進めてきた。4月に施行される「働き方改革関連法」によって、働き方にまつわる問題は一歩前進した。働き方や労働市場の改革は非常に難しいので、ここまでこぎ着けられたことを評価したい。

「働き方改革関連法」は、平たく言えば、(1)長時間労働の時間規制、(2)有給休暇の確実な取得、(3)同一労働同一賃金の3点が大きなポイントだ。

 なかでも、長時間労働にメスが入ったことは重要だ。「日本企業独特の働き方」ともやゆされる長時間労働の常態化は、問題が長らく指摘されていたにもかかわらず、これまで改革されずにきた。子育て中の女性が働くときの阻害要因だったのも事実だ。

これまで残業時間は、上限についてのガイドラインがあっても、結局は36協定で労使が協定を結べば、事実上青天井が許された。それが、今回の施行で罰則付きで、法規制できるようになったことには大きな意義がある。

 一方で、もちろん課題も残っている。まず、会社員の一部を労働時間規制から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」としての、高度プロフェッショナル制度(以下、高プロ)が、中途半端な議論に終わり、「年収1075万円以上・金融商品開発など5業務」で要件が切られてしまった点だ。海外マーケットとのやりとりが多い部署、部門、職種、IT系、研究職などがその例である。

 このように、今回は肝心の対象が年収などで一律に決められてしまった。対象職種にあてはまる人は、そもそも外資で働いている場合も多く、年俸制などで労働時間では管理されず、自律的な働き方を既にしている。今回の制度は、それを後追いで認めているにすぎない。

 本来、高プロは、「単に年収が高い人を別に管理すればよい」とか「決まった職種だけに適用すればよい」ものではない。収入や職種といった、一律の外形基準で限定するのではなく、実態として見るべきである。

 近年では、ホワイトカラーの業務の中で、長時間働いたからといって成果が上がるわけではない「労働時間で成果を測れない仕事」が非常に増えている。そうした仕事は、仕事の進め方や時間、仕事をする場所を固定的に決められず、一律の労働時間管理になじまない。

 労働時間と成果がリンクしない職種の人たちの労働時間をどう管理するのか、そしてその対象をどう限定するのか――この問題を正面から議論する必要がある。

 しかし、最初から「残業代ゼロ法案」だとレッテルを貼って決めつける動きがあったのは、建設的ではなく、残念だ。どうすれば、マネジメントがその人の仕事の内容にフィットし、生産性の向上に結びつくのか。また、残業では測れない成果をいかに評価するのかが、議論の核心にあるべきだ。

生産性向上につなげられるかが課題
人材投資とIT投資の並行促進で対処

 働き方改革を生産性向上につなげられるかどうかが最も重要な課題で、それなしには、長時間労働も本格的には是正されないだろう。中小企業には、残業時間規制が1年猶予されるものの、生産性向上が待ったなしだ。長時間労働の是正によって「残業を管理する仕事」だけ増え、人手も足りず、「業績が落ちる」事態も十分に起こりうる。働く時間だけ減って、そのまま業績が落ちたのでは本末転倒である。

 そこでは、AI、IoT、ビッグデータなど、デジタル化が新たなフェーズに入った第4次産業革命の中、デジタルイノベーションを含めた効率化も同時に進めなければならない。大企業では、働き方改革の流れを受けて、業務効率化やRPAに取り組み始めているが、これが生産性向上につながっているかどうかは、まだ定かではない。単なる業務効率化にとどまらず、業務内容の本格的見直しが必要だろう。そのためには、IT投資、それから人材投資が重要だ。

 デジタルイノベーションの真っただ中にあって、事業戦略の立て方が従来とは異なるのだから、人の使い方も同じでいいはずがない。根本的にその部分に取り組むことで、働き方改革を生産性向上につなげることができるのではないか。

 イノベーションを喚起するための人材投資は、単に技術分野だけではなく、経営人材も重要だ。ただし、経営人材は豊富にいるわけではない。デジタルイノベーションを前提にビジネスモデルをつくれる人、プロセスを構築できる人が、今後ますます求められるだろう。その意味で、外部人材をどう活用するかも重要な課題である。

 どういう人材を評価するのか、どういう人材を外部から採用したいのかが、それぞれの企業の人材の質に影響を与える。日本の大企業では、これまで人材の流動性が低く、失敗を許容しない人事評価を行うところが多かったが、あらためて人材の問題を考える必要がある。

 その意味では、今回の働き方改革は、同時に行うべき「人材投資」と「IT投資」の2つの投資と改革の背中を押したと考えるべきではないか。つまり、働き方改革関連法は単なる労務管理の変更ではなく、経営問題と捉えることが肝要なのだ。

同一労働同一賃金に残る課題
「ジョブ型正社員」がカギに

 また今回の法律で、同一労働同一賃金の導入に着手できたことも、前進だ。目指すべきは、非正規の雇用形態でも、著しく不利になることがなく、働き手それぞれが選べること。また、非正規が非正規のままで固定化するのではなく、正規と非正規の間の移動ができるようになること。

 今回の同一労働同一賃金は、非正規雇用者の待遇改善を実現させようとするもので、これは一歩前進ではあるが、正規と非正規の間の壁が低くなったわけではない。多様な働き方を選べるようにするには、労働市場全体の改革が必要である。

 現在は、年功序列的な待遇と強い雇用保障で守られた大企業での正社員と、組合のない中小企業で働く社員との格差も大きい。非正規から正規社員になることだけでなく、中小企業から大企業の正社員になるのも非常に困難だ。だから、新卒就活の際の大企業志向がなくならないし、日本全体として人材が生かされない。

 2017年の労働力調査によると、役員を除く雇用者に占める非正規雇用の割合が37.3%である。正社員の職がなく不本意に非正規を選んでいる人は全体の14.3%で、残りは非正規を選択している。子育てや介護との両立のために非正規を選択している人も少なくないだろう。こうした働き方の選択が、著しい不利益をもたらさないようにすること、同時に、非正規を選択しても、その後に正社員で働く機会が得られるようにすることがきわめて重要だ。固定化を防ぎ、流動性を確保することである。

 そこで、大企業、中小企業、非正規の間の高い壁を低くし、格差を是正するための方策としては、3つの問題に取り組むべきだと考えている。

A)働き方による著しい不利益をなくす

 同じ企業の同じ労働なら、正規と非正規の間で、説明のつかない対価の格差をなくす。今回の同一労働同一賃金はその一歩だが、労働移動の可能性などを含めて、まださまざまな点で格差が残る。

B)固定化せずにキャリアアップできるよう職業訓練の機会を増やす

 労働市場の流動性を高める際に、職業訓練の機会を多様に得られるようにすることは不可欠だ。職種ごとの訓練プログラムに沿って民間企業の現場で訓練を受けられるようにする「ジョブカード制度」を以前につくったが、こうした制度の実効性を高めるべきである。

C)正社員の中に「ジョブ型」のメニューをつくり、ルールを明確化する

 正社員にはなりたいが、転勤はできない、残業できない、無限定な配置転換はいや、という人は少なくない。そういう人のために、職務や勤務地、労働時間のいずれかを限定する正社員を「ジョブ型」社員とよぶが、この選択肢ができると、正社員で働きやすくなる。既に多くの企業が「ジョブ型」の形態を取り入れているが、まだルールが明確ではない。例えば、地域限定の正社員の場合に、その勤務地の事業所が閉鎖したらどうなるか、子育て中に労働時間限定のジョブ型を選び、その後に元に戻れるか、などルールを明確にしておくことが必要だ。いま規制改革推進会議でも取り組んでいる。

 同一労働同一賃金に関して、外国人労働者の受け入れについても多くの課題がある。外国人労働者を受け入れるなら、きちんと受け入れなければならない。外国人労働者を採用する理由として「安いから」ではいけない。あくまで、その労働力や技能を必要とするから採用するのであり、賃金や待遇は日本人と同じにすべきで、そのための監督も厳しくすべきだ。

 労働市場改革が難しいのは、政策形成の場に、組合のない中小企業の社員や非正規社員や外国人の声が届きにくいから。経団連も連合もどうしても大企業中心の視点になりがちで、一番改革を必要としている“声なき声”が政策の場に届かない。政策決定プロセスの見直しも必要だ。

働き方改革と切り離せない
デジタルイノベーションに「出島」の試み

 働き方改革と併せて生産性を上げるための取り組みが重要だと申し上げたが、この点で一番重要なのは、イノベーションを起こしやすい環境をつくることだろう。とくに最近は、不連続で画期的な「破壊的イノベーション」が、技術やビジネスモデルを速いスピードで変えつつある。

 日本生産性本部の調査「イノベーションを起こすための工夫に関する企業アンケート」によると、「日本企業は破壊的イノベーションを起こしにくい」と考えている企業が3分の2に上る。しかし、手をこまぬいているばかりではなく、20%の企業は「出島」をつくる試みを始めている。

「出島」とは、異次元のテーマに取り組み、破壊的イノベーションを起こすために、通常のビジネスとは独立した形で運営されるイノベーション拠点のこと。大きな組織の中では、ビジネス・プロセスを変えるのに時間がかかり、失敗が許されない雰囲気も強いから、「出島」をつくって、試行錯誤を許容する環境をつくりだしているわけだ。

 そういう場所をつくって、いろいろなことに挑戦させて、失敗の経験を積ませる。どうしても日本企業の多くは、一度失敗すると、それが失点となって評価されがち。これだけ変化が激しい時代には、「失敗が評価される環境があること」が必要だ。

 しかし、出島があるだけではそれが全体へ波及するには至らない。「出島」をつくる企業が増えているのはよい兆候だが、「出島」での成果を結実させるために必要なのは、元の組織である「本体」において、出島で起こったイノベーションを受け入れる文化や環境をつくり、変わっていくことだ。

 最初から最後まで出島には研究開発の人しかおらず、意思決定できる人が関与していなかったり、どこまでも特別の存在として「離島」のままだったりすると、イノベーションにつながらない。出島で、イノベーションを担う人材が育つと同時に、本体の意思決定に食い込んでいく必要がある。

 実際に出島を担っている企業の経験者に聞くと、「出島がピッチャーだとしたら、本体側にキャッチャーが存在することが必要だ」と強調していた。ピッチャーに外部から人材を持ってきたとしても、本体側にキャッチャーがいなければ変革につながらない。その意味でも、出島を担当する人材は、経営に関与する権限を与えられた人であることが望ましい。トップの強い関与も重要だ。

 いずれにせよ、「失敗」を許容し、評価する人事運営が、これからの日本企業にますます求められるだろう。働き方改革の射程は、こうした人事運営にまで至るものだと考えている。

(政策研究大学院大学教授 大田弘子)
https://diamond.jp/articles/-/196295


 


シニアの「心の高齢化」をいかに防ぐか
心理学と経営学の知見を活かす
竹内 規彦:早稲田大学大学院経営管理研究科 教授
2019年3月11日
世界第1位の長寿大国となった日本において、シニアの就業者数は増加の一途をたどっている。その活用に取り組む企業は増加しているが、「雇用保障」や「福祉」の対象という位置付けが多いのが現状だ。しかし、労働人口の減少などを背景に、これからは「企業の価値ある内部資源」として、シニア人材を活用し、競争優位につなげる必要性が高まっている。本稿では、加齢に伴い人の内面は何がどう変わるのかを明らかにし、加齢のポジティブな側面を組織の強みにつなげられるかを考察する。そのうえで、企業がシニア人材を組織の「活力」の源泉とすべく、いかに育成・活用すべきかについて考える。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号より、1週間の期間限定で抜粋版をお届けする。

問われるシニア人材の活用
 日本社会は、これまでに人類が経験したことのない未曾有の少子高齢化を経験している。2007年、日本は高齢化率(国や地域の総人口に占める65歳以上人口の割合)が21%を超える「超高齢社会」へと突入した。この頃から日本の高齢化率は、世界第1位を維持している。2018年時点の日本の高齢化率は28.1%であるが、推計値によると今後もこの値は上昇し、2035年には約3人に1人が65歳以上になるとされる[注1]。

 働くシニアの動向はどうだろうか。従来、日本企業で働く人の多くは、60〜65歳前後で各社が設定する定年年齢に達し、その後は退職金、年金、現役時代の預貯金などをもとに老後を過ごすのが一般的だった。しかし、ここ最近の傾向として、60歳以上になっても働く人が増えている。

 たとえば、55〜64歳人口に占める就業者の割合は、2006年から2016年までの間で64.7%から71.4%へ増加しており、同様に65〜69歳人口に占める就業者の割合も、10年間で34.6%から42.8%へと8ポイント以上増加している。加えて、70〜74歳の層でも、4人に1人が仕事に就いていることが報告されている[注2]。すなわち、個人の職業生活が従来よりもいっそう、長期化しているのである。

 現在、企業におけるシニア人材の活用は進みつつあるが、その多くは「雇用保障」や「福祉」という位置付けに留まっている[注3]。周知の通り、高齢化と同時に進行する少子化の影響から、日本の生産年齢人口(15〜64歳人口)は減少の一途をたどっている。そして、医療技術の高度化や高齢者の健康志向の高まりなどから、高齢者の運動能力は過去15年間で10〜15%程度上昇している[注4]。また、後述するが、シニアの知的能力や仕事へのモチベーションは一律に低下するわけではなく、むしろよりポジティブに評価できる部分が少なくない。つまり、今後求められるのは、「企業内の価値ある内部資源」としての、シニア人材の積極的かつ戦略的な活用であるといえるだろう。

 加えて、この積極活用に向けた課題は、シニア人材に対するものだけではない。個々人の職業生涯の延長に備えた若年・中年層向けのキャリア開発支援など、シニアに至るまでの人材に関わる課題も含んでいる。

 企業は、「人生100年時代」を見据えて、シニア世代を含むあらゆるキャリアステージの人材をいかに育成・活用し、組織の「強み」、ひいては企業の競争優位の構築につなげられるのかについて、正面から取り組むべき時期に来ているのだ。

加齢に伴う内面の変化
 企業がシニア人材の活用を考えるうえで、まず重要なことは、加齢によりどのような内面的な変化が人に起こるのかを、正しく理解することであると筆者は考えている。

 本特集号の論文「シニア世代を競争優位の源泉に変える」でも指摘されているが、シニアに対する誤った認識に基づくステレオタイプな認知(たとえば、あらゆる意欲や能力が衰えるなど)により、無意識のうちに「エイジズム」(年齢差別)が職場に蔓延する例は枚挙にいとまがない[注5]。シニアが持つ経験や能力の過小評価が、企業の人的競争力の低下を招いていることは十分にありうるのである。

 では、加齢に伴いシニアの内面は何がどう変わるのか。加齢の内面変化を科学的に究明するディシプリンに、老年心理学や生涯発達心理学などがある。以下、加齢の変化を大きく「能力」(知能)の側面と「モチベーション」の側面とに分けて、筆者らの研究成果なども踏まえつつ、見ていくことにする。

「能力」(知能)の変化

 人の知能は大きく、「流動性知能」(fluid intelligence)と、「結晶性知能」(crystallized intelligence)に分類される[注6]。流動性知能は、新たな物事を学習する、新たな環境に適応する能力である。これは「動作性」の知能に相当し、流動性知能が高いと、非言語的な情報処理(計算など)や、空間的な動きを視覚的に処理する能力などに長けているとされる。一方、結晶性知能は、個人が蓄えた経験や知識を活用し、異なる文脈や状況に応用する能力である。これは「言語性」の知能に相当し、結晶性知能が高いと聴覚的な情報処理や語彙力、言葉を使った説明や思考などに長けているとされる。

 この2つの知能と加齢との関係については、豊富な研究蓄積がある。これらの研究では、流動性知能は加齢による変化を受けやすい一方、結晶性知能は加齢による変化を受けにくいという特徴がおおむね確認されている。一例を挙げると、動作性(流動性知能)は、30歳以降低下し続けるのに対し、言語性(結晶性知能)は、50代半ばまで上昇しその後低下に転じるものの、その落ち込みは緩やかである[注7]。

 加齢と知能の関係について、さらに詳細を見てみよう。知能と年齢の関係を長年研究しているアラン・カウフマン(元エール大学小児研究センター教授)らの研究では、知能検査の世界標準として知られる「ウェクスラー成人知能検査」の第4版(WAIS-IV)で検査される、4つの知能領域と加齢の関係について報告をしている[注8]。

 図表1「4つの能力の加齢変化」から、蓄積された経験・知識の活用や言葉による説明力・思考力などに関わる「言語理解」(≒結晶性知能)と、情報の一時的な記憶と処理を同時に行うような一時的記憶力や二重課題の遂行力に関わる「ワーキングメモリー」は、加齢による影響を受けにくいことがわかる。特に、言語理解は成人後期まで上昇し、その後の下降も緩やかである。


 興味深いことに、ワーキングメモリーは60歳までほぼ一定水準を保ち、以降徐々に下降するものの、80歳あたりまでは必ずしも大きな落ち込みは見られない。一方、視覚的な情報処理や新たな環境適応に関わる「知覚推理」(≒流動性知能)と、情報処理のスピードや筆記能力に関わる「処理速度」は、30代以降一貫して低下が見られる。

 このように、シニアの知的能力は、必ずしも一様に低下しているわけではなく、むしろ言語理解などの結晶性知能は、高い水準を維持しているといえる。つまり、シニアは語彙力や言葉を使った説明力・思考力が高い傾向にある。当然ながら個人差はあるが、職場での指導的な役割や、社内外のステークホルダーに説明が求められる場面などで、活躍できる可能性が高い。また、記憶と処理を同時並行してこなすワーキングメモリーもけっして低くはない。一方で、ハイスピードでの課題処理や視覚情報の処理、未知の領域の学習などは、シニアには不向きかもしれない。

 モチベーションの変化

 次に、年齢の上昇につれ、仕事に対するモチベーションはどのように変化するのだろうか。「強さ」と「質」という2つの側面から見ていく。

(1)「強さ」の変化

 ここでは、仕事へのモチベーションの代理指標として、就業者の「ワークエンゲージメント」の年齢変化について見てみる。ワークエンゲージメントは、産業・組織心理学の領域で著名なユトレヒト大学教授のウィルマー・シャウフェリが提唱した考え方である。「活力」「熱心さ」「没頭」を特徴とする、仕事に取り組む際の前向きで充実した心の状態を指す[注9]。

 筆者の研究グループは、2018年に日本企業に勤務する18〜75歳までの就業者約6800人を対象とする質問紙調査を実施し、ワークエンゲージメントを含む組織行動関連の調査データを収集した。図表2「ワークエンゲージメントの年齢変化」は、ワークエンゲージメントの構成要素である「活力」「熱心さ」「没頭」のそれぞれについて、回答者の年代別の推移を示したものである(図表の縦軸は、スコア〈最高値は100〉が高いほど、回答者の各エンゲージメント得点が高いことを意味する)。


 興味深いことに、この図表から、年齢の上昇につれ、仕事へのエンゲージメントは下がるのではなく、むしろ上昇する傾向にあることがわかる。特に、61歳以降の年齢区分で、「活力」と「熱心さ」のスコアが比較的大きく上昇していた。したがって、個人差は当然あるものの、シニアの就業者は相対的に見て、若手や中年層の就業者よりもワークエンゲージメントが高いというのが実態である。

 なお、ワークエンゲージメントの効果として、職務パフォーマンスの向上とストレス反応の低下が明らかにされている。特に、エンゲージメントは、職務満足や組織コミットメント(会社への愛着)よりも職務パフォーマンスへの効果が高いことが、過去20年間に報告された論文約100編の検証データに対するメタ分析より確認されている[注10]。

 ただし、先の加齢に伴うエンゲージメントの上昇を示す結果は、企業で働く人々を対象としたものである。調査対象のシニアは、定年年齢に到達した後でもあえて働く選択をしている人々であり、仕事から引退した非就業者にも、同様の「高いエンゲージメント」現象が見られるかは定かではない。

(2)「質」の変化

http://www.dhbr.net/mwimgs/6/5/500/img_652dcede9deacbc1236bd828ae06e677278946.jpg


 学術的には、加齢に伴うモチベーション変化は、「強さ」の変化よりも「質」の変化が大きいと考えられている。

 スタンフォード大学ロンジェビティ研究所教授のローラ・カールステンセンが提起した「社会情動的選択性理論」(socio-emotional selectivity theory)と、その後の実証研究による裏付けから、以下のような変化が明らかとなってきている。

 まず、加齢に伴い個人の関心事は、自身に関連する「リソースゲイン(資源獲得)の最大化」から「リソースロス(資源損失)の最小化」へとシフトする傾向があるとされている。なかでも、およそ30歳までの若年では、個人の行動は「情報探索」や「知識獲得」によって動機付けられる一方、30歳を超えたあたりから、個人の行動は「感情調整」により動機付けられるようになる[注11]。つまり、若いうちは、「新たな情報や知識を得るには何をすべきか」を意識して行動する傾向が強いが、年を取るにつれ、新たな経験よりも「自身の感情を安定させるためには何が必要か」を優先して行動するようになる。

 さらに、このようなモチベーションの質的変化は、個人が「誰と交流するか」という選択に影響を与え、ひいては個人の対人ネットワークの大きさにも変化をもたらすことが明らかとなっている。すなわち、新鮮な情報や知識の獲得に強く動機付けられる若い時期は、より多くの人々、いままで知り合ったことのない人々と交流し、新たな情報や知識の獲得に役立てる傾向が見られる。

 一方で、加齢に伴い、自身の感情の安定や心の平穏を求めることに強く動機付けられるようになると、配偶者や家族、親友や近しい同僚など、過去に築いてきた心許せる人たちとの継続的な交流をすることによって、自身の情緒面での安定を優先するようになる。

 実際に、ハイデルベルク大学老年心理学部教授のコーネリア・ヴルツらは、対人ネットワークと年齢の関係に関するメタ分析を行い、個人の対人ネットワークは30歳まで広がるものの、それ以降は徐々に狭まる傾向にあることを報告している[注12]。

 興味深いことに、この研究以外にも、「30歳」が、モチベーションの質的変化が起きる1つのターニングポイントであることを示唆する研究が、複数見られる(筆者らによる日本人サンプルの研究でも確認している[注13])。

 このようなモチベーションの質的変化には、一長一短がある。過去に築いてきた人たちとの交流を深化させられる一方で、新たな知識獲得を通じた自己成長にブレーキをかけてしまい、対人関係の幅は限定的になりがちとなる。そしてこの変化はシニアだけでなく、早い人では、30歳前後から見られる点に留意したい。

シニア人材をイノベーションの源泉にする
 これまで見てきたように、シニア人材の能力やモチベーションには、積極的に評価できるポイントが少なくない。シニアの「ポジティブな側面」に目を向けると、イノベーションを喚起できる可能性が高まる。

 前述のように、シニア人材は、結晶性知能に見られるような、経験をベースとした知能が高い水準で維持されている。ここで注目したいのは、シニアの持つ「専門性」と「応用力」である。経験により培われる知識やスキルの専門性の深化は、自明である。そして、結晶性能力の核でもある、自身の経験を他の新しい領域や文脈に活かす能力が、応用力である。

 これらはいずれもイノベーションを引き起こすうえで、重要な能力であると考えられている。なぜなら、新たな知の創造には、既存の「知の組み合わせ」(knowledge combina-tion)が不可欠だからである[注14]。すなわち、複数のメンバーが持つ異なる専門的な知識・経験の交換によって引き起こされる「個人間での知の組み合わせ」と、一人の個人が(新たな)異なる環境やフィールドで自身に蓄積された経験・知識を活かす形で生まれる「個人内での知の組み合わせ」の両者が求められる。したがって、新たな知が生まれるための個人の能力要件として、専門性の深化と応用力の伸張が挙げられる。この両者は(当然のことながら個人差はあれど)シニアに十分に期待できる能力だと考えられる。

 特に前者のチームでのイノベーションが生まれる重要な要因の1つに、構成するメンバーのダイバーシティ(多様性)を高めることが挙げられる。ダイバーシティには、大きく3つのタイプがある。すなわち、「属性ダイバーシティ」(メンバーの性別、年齢、国籍が多様なこと)、「深層レベルダイバーシティ」(メンバーの性格、価値観などが多様なこと)、および「仕事関連ダイバーシティ」(メンバーの仕事の専門領域、スキル、経験などが多様なこと)である。これらのうち、メタ分析の結果、チームの創造性を高める効果が確認されたのは、「仕事関連ダイバーシティ」のみであった[注15]。

 ここで重要なのは、年齢という属性のみの多様性では、イノベーションは生まれないという点である。すなわち、シニアが長年蓄えてきた「専門性、スキル、経験」に着目し、既存のメンバーの知との組み合わせ、知の多様性を追求する必要がある。

 つまり、シニアの活用をイノベーションにつなげるためには条件があり、それをクリアすることが欠かせない。1つは、既述の通り、年齢というシンボルに着目しないことである。すなわち、年齢を多様化させること自体が目標になってはならない。あくまで、シニアの持つ固有の専門性、スキル、経験を、いかにイノベーションや成果につなげるかという視点でシニア活用を考える必要がある。

 さらに、シニアは加齢により、一部の「能力」は若い世代よりも劣後する点もあるのは事実である。特に、情報処理のスピードや未知の領域の学習などは、若年層にキャッチアップできないケースもあるだろう。

 したがって、新たな職場や組織へのシニアの配属(再配属)については、シニアの能力を「活かす」形での仕事や役割のアサインメントが大切である。そのためには、シニアの専門性やスキル、仕事経験などの中で、何が職場やチームの「情報資源」となりうるかを洗い出す必要がある。そのうえで、シニア人材を採用(再雇用)・配置(再配置)する際に、シニア本人の経験や専門領域が採用・配属後の職場・組織にとって、どのような情報の「新規性」と「補完性」があるかを考えなければならない。

 では、シニア活用によって、職場のイノベーションを喚起していると考えられる企業事例には、どのようなものがあるだろうか[注16]。その1つに、世界最大の食品飲料会社の日本法人であるネスレ日本が、2018年1月に開始した「シニアスペシャリスト採用」が挙げられる。

 ネスレは、成長戦略の1つに「ダイバーシティの推進」を掲げていることで知られている。この一環として開始したのが、他社で関連する職務経験を積んだ60歳以上のシニアを「新規採用」するという同制度である。同社の採用情報ページにも掲載されている通り、募集対象者は、「働くことによって心身ともに健康で充実した毎日を送りたい」「長年培った経験や専門知識を発揮したい」といった考えを持つ意欲ある60歳以上の人である。幅広い職種で募集を行い、特殊な技能を持つシニアに限定した採用とは異なる。雇用形態は契約社員で採用し、採用後は他の社員と同様に成果を求めるという。

 ネスレが実施するこの制度のポイントは、シニア活用の目的を、ダイバーシティ推進を通じたイノベーション喚起のチャンスとして明確に位置付け、実践していることである。たとえば、募集前には、人事部が社内の各部署からどのようなシニアスペシャリストがほしいかというニーズを把握し(情報資源の洗い出し)、募集を行っている。同じシニアであっても、あえて外部の人間を新たに入れるという情報資源の「新規性」と、現場のニーズに応えることで対応可能な情報資源の「補完性」がバランスよく保たれ、職場のイノベーションが誘発する環境といえるだろう。

【注】
(1)総務省統計「局統計からみた我が国の高齢者」統計トピックスNo.113, 2018. https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html(2019年2月1日確認)
(2)OECD, “Scoreboard on older workers, 2006 and 2016, 35 OECD countries,” 2016. https://www.oecd.org/els/emp/older-worker-scoreboard-2016.xlsx(2019年2月1日確認)
(3)本稿では、シニア(高齢者)の年齢定義をおおむね60歳前後以上としてとらえている。なお、国連では60歳以上、世界保健機関(WHO)では65歳以上、また日本の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では55歳以上を高齢者と定義している。
(4)スポーツ庁「平成29年度体力・運動調査結果の概要及び報告書について」2018年。http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1409822.htm(2019年2月1日確認)
(5)ポール・アービング「シニア世代を競争優位の源泉に変える」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号。
(6)J. L. Horn and R. B. Cattell, “Age Differences in Fluid and Crystallized Intelligence,” Acta Psychologica, 1967.
(7)A. S. Kaufman, “WAIS-III IQs, Horn’s Theory, and Generational Changes from Young Adulthood to Old Age,” Intelligence, 2001.
(8)E. O. Lichtenberger and A. S. Kaufman, Essentials of WAIS-IV Assessment, Wiley, 2009.
(9)W. B. Schaufeli and A. B. Bakker, “Defining and Measuring Work Engagement: Bringing Clarity to the Concept,” In A. B. Bakker and M. P. Leiter (Eds.), Work Engagement: A Handbook of Essential Theory and Research, 2010.
(10)M. S. Christian, A. S. Garza, and J. E. Slaughter, “Work Engagement: A Quantitative Review and Test of Its Relations with Task and Contextual Performance,” Personnel Psychology, 2011.
(11)L. L. Carstensen, “Evidence for a Life-span Theory of Socioemotional Selectivity,” Current Directions in Psychological Science, 1995.
(12)C. Wrzus, M. Hanel, J. Wagner, and F. J. Neyer, “Social Network Changes and Life Events Across the Life Span: A Meta-analysis,” Psychological Bulletin, 2013.
(13)Y. Jung and N. Takeuchi, “A Lifespan Perspective for Understanding Career Self-management and Satisfaction: The Role of Developmental Human Resource Practices and Organiza-tional Support,” Human Relations, 2018.
(14)C. J. Collins and K. G. Smith, “Knowledge Exchange and Combi-nation: The Role of Human Resource Practices in the Performance of High-technology Firms,” Academy of Man-agement Journal, 2006.
(15)H. van Dijk, M. L. van Engen, and D. van Knippenberg, “Defying Conventional Wisdom: A Meta-analytical Examination of the Differences Between Demographic and Job-related Diversity Rela-tionships with Performance,” Organizational Behavior and Human Decision Processes, 2012.
(16)この事例は、ネスレ日本のホームページのほか、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が発行する月刊誌『エルダー』2018年6月号(ネスレ日本)をもとに記述している。

シニア活用が重要な一方で、それが若手社員のモチベーションを奪うような事態は避けなければならない。竹内氏はそのために「未来展望」が重要だと指摘する。未来展望とは何か、いかなる成果をもたらすのか、などが記された全文は『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号に掲載。

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