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「問題社員」を辞めさせない限り生産性は上がらない 言葉ありきの仕事グセをやめれば企業は変わる 高ければいいわけではない
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/634.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 22 日 22:30:03: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

「問題社員」を辞めさせない限り生産性は上がらない

 問題社員は組織のがん細胞

【短期集中連載】中小企業はここから変えよ(最終回)
2019.3.22(金) 野崎 大輔

(野崎大輔:組織人材開発コンサルタント)

 前回、前々回と、働き方改革の本質は生産性の向上だと述べてきました。そのためには、社員が辞めないような会社作りをしないといけないとも言ってきました。しかし、時には辞めてもらわなければならない社員も存在します。それは、往々にして生産性向上を阻害する要因になっている「問題社員」です。

(前々回)そんなに甘くない! 中小企業「働き方改革」の現実 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55792

(前回)コレをやったら失敗する、中小企業の「働き方改革」 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55793

問題社員は組織のがん細胞
「問題社員」と一口に言っても、様々なタイプがあります。

 例えば、「根はいい人なんだけど、仕事が出来ない」というタイプ。こういう人はまだ見込みがあります。根気強く育てていけば活躍できる人材になる可能性があります。基礎力を徹底させて、仕事を通じて育成していくことになります。

 しかし、仕事が出来ても、会社に対して文句や不平不満ばかりを口にして組織に悪影響を及ぼす社員は気をつけなければなりません。こうした社員は「反“会社”勢力」と言っています。

 会社に勤めているのであれば、会社の経営理念や方針に沿って業務に当たるというのが大前提です。会社の方針に対して反抗的で、文句ばかり言っているような社員は、仕事が出来る人だとしても、組織に悪影響を及ぼすのであれば辞めさせた方がいいと私は思っています。

 大企業では半会社勢力が一人くらいいても大勢に埋もれて目立ちませんが、従業員20人未満の中小企業の場合、1人でもそんな人がいると、対応に苦慮することになります。その人に同調するような人が出てくることもあり、組織が蝕まれてきます。仕事が出来て、発言力が多い人であれば、なおさら負の影響力を発揮します。

 もうこうなると組織にとってはがん細胞。ほかの人たちに転移する前にさっさと辞めてもらった方がいいのです。そうしないと、社内のチームワークが壊滅的なダメージを受けることになってしまいます。

 その観点から、中小企業の経営者から反“会社”勢力で困っているという相談を受けた際は、あえて強く「その社員は辞めさせた方がいいですよ」と進言することもあります。

問題社員のおかげでまじめな社員が次々と離職
 先日、私が支援しているある企業の社長から、「うちの会社、社員がけっこう辞めるんです」と相談を受けました。「辞める理由は何ですか?」と社長に聞くと、「夏場の作業が体力的にきついから、ということです」とのことでした。

 でも、腑に落ちなかった私は社長に根掘り葉掘り質問していきました。すると、どうやらあるベテラン社員と一緒に作業している社員がほぼ辞めているということが分かりました。仮にその人物をAとすると、社内では「Aと一緒に仕事をするのが嫌だ」と言う社員が多く、Aが原因で辞めていった人が何人もいたことが分かりました。

 以前も書きましたが、社員の離職は大きなロスです。採用コスト、教育コスト、人件費・・・Aのせいで、これまで同社は大きな損害を被ってきたわけです。

 そこで社長に言いました。「社員が辞めるのは、仕事がきついんじゃなくて、こいつのせいですよ」と。「これから決めなきゃいけないのは、Aをどうするかですよ。注意しても直らないのであれば私は辞めさせたほうがいいと思う」。そこまではっきり伝えました。

 社長も納得してくれたようで、「じゃあ、その線でAと話してみます」ということでした。

 結局、Aは自分の非を認め、改心を誓ったので、そのまま雇い続けることになりました。これはこれでよい結果だったと思います。

 中小企業で離職率が高くなる要因の一つが、このAのような人間の存在にある可能性もあります。だいたい社員が次々に辞めていくというのは、社内の人間関係に原因があることが多いです。その原因を放置したままで、いくら「働き方改革」を叫んでも、働く環境は変わりません。

 しかし、だからと言って「問題社員」に対して「君、クビだ」と言うことは、法律的にも不可能です。

 では、「問題社員」どうすればいいのか。これはもう端的に本人に言えばよいのです。もちろんパワハラになるような伝え方はNGですが、例えば「君のマネジメントのせいでこういう悪影響が出ているんだ。直してくれないと困るんだ。改善してもらえないのなら、君は別の道を考えたほうがいいよ」という具合に正直に言うのです。

 社長は組織の全体最適の視点を持つ必要があります。何か障害があるのであれば、速やかに対処しなければ問題は大きくなり、組織が蝕まれていくのです。

 肉体的な疲労よりも精神的な疲労の方が疲労度は高く、いわゆる気疲れによって生産性は低下します。ある会社の管理職の方は、「問題社員が1人いるだけで部署全体のパフォーマンスが30%は下がっている」と仰っていました。これは会社としても大問題なはずです。

 一般的に解雇は悪というイメージがありますが、組織に悪影響を及ぼし、改善の見込みがない問題社員とは一緒の道を進むことはできません。真面目に働いている社員が嫌な思いをしたり、我慢したりしているのを放置している方が悪です。経営者としてどちらを優先するかは明白です。

 中小企業にありがちな「問題社員」には、もう一つ典型例があります。仕事をしない、会社の批判をしたり、周囲と上手くやれないお局さんケースです。

 周りからは、「あの人がいるとやりにくいんだよな」と言われていたり、部下をつけるといじめて辞めてしまうということも起きます。特に事務部門で長く勤め続けているお局さんは、社内で絶大な発言力を持つようになります。時には社長に直接不平不満をぶつけてくる強者もいます。

経営者は腹を括って対応を
 同時に問題なのは、こういう人たちは自分で仕事を抱えこんでしまい、ブラックボックス状態にしてしまいがちということです。

 社長はお局さんについて、「アイツがいないと会社が回らないんだ、だから辞めてもらっちゃ困るんだ」ということで、問題があってもあえて見て見ぬふりで、辞めさせることには及び腰になりがちです。ところが、実は簡単にできる仕事を、無自覚のうちに複雑化していることも少なくありません。最新のソフトやサービスを利用すれば、低コストでスムーズにすむ仕事が、非常に高コストで複雑な仕組みで進められていることもあるのです。

 こういう人は自分の仕事を「これは私しかできない」と言って他人に教えず、わざとブラックボックスにしていきます。そうやって自分の立場を強固なものにしようとしているのです。

 しかし、こうしたお局さんはやっぱり組織のがん細胞です。社内への影響力も無視できません。引継ぎが上手くいかなくて一時的に業務が混乱することがあったとしても、こういう人間には一刻も早く辞めてもらわなければなりません。

 問題のある社員には、ストレートにいかにその人が周囲に悪影響を与えているか、いかに会社の期待に応えられていないかを説明します。こういう人たちは自分が正しいと思っているので遠回しに言っても、気づかず、自分が悪いとも思いません。だからストレートに伝えた方が良いのです。

 だいたい、お局さんが社内で幅を利かせるようになるのは、社長や上司が「あいつを怒らせたりすると面倒臭いから放っていた」というのが原因であるケースが多いのです。ここでまた「面倒だからいいや」で済ませてしまっては、事態は何も解決しません。

 中小企業が生産性の向上を図るためには、例え仕事ができたとしても、周囲に悪影響を及ぼし、全体の生産性を低下させている問題社員を何とかしなければなりません。

 実はコレが働き方改革の前に大切なのです。職場における人間関係の良し悪しも少なからず生産性に影響を及ぼします。

 もしも自分の会社に「問題社員」がいるようなら、社長は腹を括って臨まなければなりません。がん細胞はひとりでになくなることはありません。放置すればますます増長し、他の社員にも転移してしまうかもしれません。早い段階で取り除けるかどうかは、社長の覚悟次第と言えるでしょう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/55794
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55794

 

【第10回】 2019年3月22日 佐宗邦威 :BIOTOPE代表・戦略デザイナー
「言葉ありき」の仕事グセをやめれば、日本企業は変われる!【入山章栄×佐宗邦威】
VISION DRIVEN時代の「人と組織」対談 #3

「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!
妄想(ビジョン)を具体化するデザインの力
佐宗:今回書いた『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』でも軽く触れているんですが、最初に個人が抱いた「妄想」(ビジョン)を話す相手は10人、20人ではなく、比較的信頼できる1〜3人くらいがいいと思うんです。最初は、「それはいいね!」とある程度ポジティブに言ってくれる友人からスタートする。
入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール准教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。「Strategic Management Journal」など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)がある。
たとえば、ベンチャーキャピタルにいきなりプレゼンにいかないじゃないですか。プレゼン自体は「見える」ことですが、プレゼンするまでのプロセスとして、こちら側で信頼できる人とのあいだでイメージを具体化するために何往復もしているわけです。
「ビジョナリー」と言われている人も、裏では、実はそういうシステムを回しているんじゃないでしょうか。
入山:佐宗さんのやっている戦略デザインファーム「BIOTOPE」はそういう役割じゃないですか?
佐宗:まさにそうですね。ビジョナリーの人が持っている「絵」の実現を支援することで、具体化のスピードを一気に上げていくことが大事だと思っています。たとえば「人工流れ星」をつくるという魅力的な「妄想」を打ち上げているALEの岡島礼奈さんという方がいます。「100年後のことをやりたいんだけど、それをどう具体化していこうか」という話、妄想からリアルの世界に落とし込んでいくというときには、僕たちの出番だなと思いますね。
そのためには、「デザイン」のとくに可視化・具現化の力が非常に生きてくると思うんです。具体性がない妄想だけでは、なかなか実現しにくい。
今回の『VISION DRIVEN』でも、原稿の前にまず1枚の大きな「絵」をつくりました。僕がラフで描いたものを、社内のイラストレーターが見事に具体化してくれて、それを自分がさらに修正していくことでより解像度を高めていったんです。最初にモヤモヤしていたものがデザインの力で具体的になっていくわけです。
ちなみに、僕からすると、入山先生も「絵」で考えるのがうまい人だなあという印象です。先生の講義では、ホワイトボードはほとんど図や絵ですから、ほとんどビジュアルで考えていらっしゃるのかなと思いました。あのわかりやすい図などはどうやってつくっているんですか?
入山:たとえば『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)で「世界標準の経営理論」という連載を4年間していたときは、僕がささっと描いた乱雑なラフをカメラで撮って、それを担当の編集者に送っていました。
この編集者さんがとても優秀で、僕が言いたいあやふやなことを奇跡的に理解して、見事に整理してくれる。さらにそれを優秀なDHBRのデザイナーさんが仕上げてくれるという流れですね。このプロセスで面白いのは、僕がイメージしたとおりのものができるときもあれば、僕のイメージをデザイナーさんが超えてくれる場合もあることです。
佐宗:僕も個人としてある程度デザインできると思っているんですが、やはりプロの具体化レベル、解像度を上げる力はレベルが違います。

イメージの解像度を上げるには五感を使う
入山:言葉だけで伝えるより、殴り描きでもいいのでラフがあったほうが伝わるということはあると思いますね。むしろ、言語による制約って、僕らが考えている以上にものすごく大きい。物事は言葉にした瞬間にすごく矮小化されるんです。僕たちは頭の中で言葉にできないいろいろなことをもっと考えているはずなんですが、言語化したときにしょぼくなってしまう。
佐宗邦威(さそう・くにたけ)
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー。大学院大学至善館准教授/京都造形芸術大学創造学習センター客員教授。東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科修了。P&G、ソニーを経て、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。著書に『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
佐宗:テキストの場合とビジュアルの場合では、バイト数みたいなものが違うんでしょうね。あるいは、その背景にある「直感」は、バイトという概念では表現できないのかもしれませんが。
過去も含め、ものすごい情報量が人間の頭のなかにはあるはずです。それを言葉という限られたバイト数で具体化するのと、視覚的なかたちで拡げて具体化するのとでは、出てくるものは全然違って当たり前だと思います。
言葉の裏にはビジュアルがあって、ビジュアルのさらに先にあるのは直感です。ですから、ある言葉を定義しようとしたら、まず全身で経験してみる。そうして経験したなかで出てきた感情のキーワードや真意があります。それをまた新しい文脈の中で言語化してみる。言語化したものを、いまの時代やこれからの時代における価値観で見てみるわけです。
入山:そうやってプロセス自体をガラッと変えてしまうことが必要なんでしょうね。「言葉ありき」というのは、なかなか難しい。僕も、みんなが名前を知っているような大企業からご相談を受けることがあるのですが、創業者やトップがぽろっと言った言葉を社員が神学論争みたいに解釈して、物事が前に進まないという構造を目にすることがあります。
佐宗:だからこそ、まずは身体で体験するとか、目で見えるように表現するというふうに、インプットやアウトプットのかたちを変えていく。それだけで、けっこう簡単に現場が変わったりするというのが、戦略デザインの仕事をするようになってから気づいたことですね。
入山:ソフトバンクは学生募集の際、ひたすら動画を見せるそうです。脳に思い浮かんだ複雑なことを俗世間化するためにビジュアル化し、最後に文字化するわけです。ビジュアルから文字化するプロセスに音や動画を利用すれば、より鮮明になると思います。
「想い」は時代に合わせて再解釈することで生き返る
佐宗:『直感と論理をつなぐ思考法』にも書いたんですが、子どもっていろいろなものを目で見て、「これはシマウマ」「これはゾウ」と学びながら、最後に言葉で名前を覚えます。そのプロセスはまさに「体感からはじまり、視覚を経由して、言語化する」プロセスで、最初から「いきなり概念」というわけではないわけです。
入山:いろいろ体感して、最後に名前をつける。いわゆるJK語って、女子高生たちの感覚で時代を表現しているんですよね。そのあたりの感覚で断絶があるから、僕はいまだに「エモい」という概念が理解できません(笑)。
佐宗:一方、ビジネスの世界は、言語での議論、論理の世界に終始しがちです。しかし新しいものは感覚からスタートしないと生まれようがありませんし、人も動かない。縛られている論理からいったん抜け出し、子どもみたいに考えるプロセスを挟んでから、もう一回言語化してみることで、概念はよりいっそうはっきりしてくるわけです。
入山:僕が佐宗さんに聞きたいのは、創業者の想いの具体化です。たとえば大企業には企業理念や経営指針など、根底にはそもそも創業者の想いがあるじゃないですか。でも古い企業になると、たいてい創業者ご本人はもう亡くなっていますから、創業者と同じことは体感できません。そういうときには、創業者の想いってどう具体化するんですか?
佐宗:まさに、そこが大企業がうまくいかなくなる原因の1つだと思っています。たとえば宗教の教祖が死んでしまったあとに、いろいろな宗派が生まれるのと同じです。「聖典」みたいなベースがあれば、ある程度は現場に合わせて解釈できるでしょうが、それでも限界はあるでしょう。
魂は、生まれたときに最初に宿る、つまり妄想(ビジョン)の段階で魂が宿っていると思っています。創業者が自分の想い、妄想を実現するために行動し、周囲を巻き込んで、時代の波に乗って上り続けた結果、会社という大きな山ができる。大事なのは、その最初の山を踏まえて、次の一歩をどう踏み出すかを考えることですね。
そのためには、創業者の「魂」を時代に合わせて大胆に「再解釈」することが必要だと思います。そしてそのためには、単なる言葉の解釈ではなく、時代における空気、時代感、人の感情などモヤモヤしたものを踏まえつつ、「ジャンプ」しないといけない。いわゆるリブランディングは、まさに「再解釈」のプロセスですね。

直感力を磨けばビジョンは具体化できる
佐宗:ブランドの再定義をお手伝いするとき、僕は歴史分析とか歴史のフィールドワークをけっこうやるんです。その時代に生きていた人の感覚や感情を浴びるためです。
たとえばソニーの前身である東京通信工業株式会社に、「自由闊達にして愉快なる理想の工場」という井深大さんの言葉があります。この「自由闊達」という意味は、おそらく今とは違うと思うんです。言葉だけから想像してもわからない。僕らの「自由闊達」と創業者の感じている「自由闊達」とは絶対違うでしょう。
軍事産業でずっとやっていたエンジニアが、ようやく軍事ではない、本当に自分がつくりたいものをつくれる自由闊達な時代になった、という文脈で生まれてきた言葉なんです。
入山:まさにエスノグラフィック的なアプローチですよね。僕は企業向けの講演でイノベーションは重要だという話を散々していて、最後に話すのが「センスメイキング」なんです。
佐宗:不透明性の高い現代のような環境だと、外界の状況を感じ取って、そこから固有の意味をつくっていくセンスメイキング(意味づけ)が欠かせなくなりますよね。入山先生は以前から、この概念に注目されていました。
入山:でも、問題はそのあとで、「じゃあどうすればいいんですか?」と必ず聞かれる。
学術的にはセンスメイキングって奥行きの深い概念ですから、いろいろな答え方があると思うんですんが、僕の回答は意外と大したことはなくて、「経営者がビジョンを語ることも重要ですし、受け手の腹落ちも重要です」と。みんな、「なんだそんなことか」という顔をするんですが、「トップのビジョンを自分たちの現場に置き換えるとどう解釈できるか、それを考える機会をつくったり研修をしたりしていますか?」と質問すると、それをやっている企業って少ないんですよね。
「妄想」が企業に必要なことに気づいている経営者は多いと思いますが、結局、それを現実のビジネスに落とし込んでいくときには、一定のプロセスが必要です。みんな、それをやるとなると、手が止まってしまう。その本質的なアプローチのところがわかっていない。
佐宗さんの今回の本には、それが具体的かつ体系的なかたちで書かれていて、実際のアクションにつなげられるようになっている。まさに「直感」と「論理」をどうつなげばいいのかを、現場で考え続けてきた佐宗さんだからこそ書けた一冊だと思いますね。
『直感と論理をつなぐ思考法』のゲラで「モーニング・ジャーナリング」を知ったあと、迷わずすぐにモレスキンノートを購入したという入山先生。
佐宗:うれしいお言葉をありがとうございます! 今はある程度の情報はそこそこ簡単に集められます。でもそれを羅列しただけでは、ただの寄せ集めなんですよね。そこでいちばん大切なのは何なのか、その全体像をつかむためには、やはり体系性みたいなものも大事にしたいと思って、今回の本をまとめました。結局、直感と論理の「往復」を繰り返すことが、大事なのだということを僕自身も体感しましたね。
(対談おわり)

https://diamond.jp/articles/-/195877

 

【第5回】 2019年3月22日 ヤニス・バルファキス ,関美和

あなたの身近の「値段がつくと価値が下がるもの」とは?
何でも高ければいいわけではない理由

元財務大臣が十代の娘に語りかけるかたちで、現代の世界と経済のあり方をみごとにひもとき、世界中に衝撃を与えているベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳)がついに日本に上陸した。

ブレイディみかこ氏が「近年、最も圧倒された本」と評し、佐藤優氏が「金融工学の真髄、格差問題の本質がこの本を読めばよくわかる」と絶賛、ガーディアン紙(「新たな発想の芽を与えてくれるばかりか、次々と思い込みを覆してくれる」)、フィナンシャル・タイムズ紙(「独自の語り口で、大胆かつ滑らかに資本主義の歴史を描き出した」)、タイムズ誌(「著者は勇気と誠実さを併せ持っている。これぞ政治的に最高の美徳だ」)等、驚きや感動の声が広がっているその内容とは? 一部を特別公開したい。.

心が満たされることの価値

 エギナ島に陽が落ちようとしている。夏の夕方だった。私は君とベランダに座って、海の向こうのペロポネソス山脈に赤い夕陽が沈んでゆくのを眺めていた。私が子どものころ、父がよく話していたように、私も君に、沈む夕日はなぜ赤いのかを科学的に説明しはじめた。せっかくの素敵なひと時が台無しだ。

 その晩、友人夫婦とその幼い息子のパリスを誘って、マラソナス・ビーチにあるお気に入りのレストランまでボートで向かった。食べ物を注文していると、パリスがみんなを笑わせはじめた。パリスはノリノリではしゃぎ、私たちを大いに笑わせてくれた。いつもはむっつりしている友人もつい笑ってしまうほど、楽しい晩だった。

 食べ物がくる前に、コスタス船長が、頼みがあると言いにきた。

 コスタス船長は、レストランの裏にある船着き場の私たちのボートの横に、自分の漁船を停めていた。船の錨が海底の岩に挟まってしまい、引き上げようとしたら鎖が切れてしまったという。

「お願いできませんかね? 先生、ダイビングがお好きでしょう? ひとつ潜って、この縄を錨の鎖に結んでもらえませんか? できれば自分でやりたいところなんですが、今日は持病のリューマチが痛んじゃって」そう頼まれた。

「いいよ」人助けのチャンスだと思って、喜んで海に飛び込んだ。

 夏の夕暮れ。私をうっとうしく思っている君。はしゃぎ回るパリス。コスタス船長の頼みで、海に飛び込むのは楽しかった。素敵な夏のひと時だ。心が満たされる。嫌なことも忘れてしまった。たとえば、友だちが傷ついたり、退屈な宿題をしなくちゃならなかったり、孤独を感じたり、将来に不安を持ったり、そんなときとは正反対の気分になった。

 こんなふうに心が満たされるのは、「いいこと(グッド)」だ。しかし、経済学でも「グッズ」という言葉を使う。店の棚に並んでいる品物や、アマゾンで売っているものや、テレビでしょっちゅう宣伝しているものも「グッズ」と呼ばれる。同じ言葉だが、意味はまったく違う。後者はむしろ「商品(コモディティ)」と呼ぶべきものだ。では、「グッズ」と「商品」はどう違うんだろう?

「高ければ高いほど売りたくなる」わけではない

 エギナ島の夕暮れ。パリスがはしゃぎ、私は海に飛び込む。そんな経験はおカネでは買えない。一方、「商品」は売るためにつくられたものだ。

 君が気づいているかどうかわからないが、グッズについてほとんどの人は勘違いしている。値段が高いほうがいいものだと思っている人は多い。しかも、支払ってもらえる金額が多ければ多いほど、人はそれを売りたくなるはずだと思い込んでいる人も多い。

 だが、そうではない。

 たしかに商品の場合はそうだ。消費者が高額でもiPadを手に入れたいと思えば、アップルはもっとiPadを生産する。レストランも同じで、値段が高くてもみんなが地元の名物料理を注文したがったら、レストランはその料理を目いっぱいつくろうとするだろう。

 でもパリスのお笑いは違う。おカネを払うからもっと面白いことを言ってくれとパリスに頼んだら、パリスは変に緊張してしまうに違いない。おカネをもらえると考えたとたん、面白いことが言えなくなってしまうかもしれない。

 コスタス船長の一件を考えてみよう。もし、おカネを払うから海に潜ってくれと頼まれていたら、喜んで潜っただろうか? 海に飛び込むことを楽しめただろうか?

 おカネを払うと言われたら、人助けの喜びや冒険のワクワク感がなくなってしまう。ちょっとばかりおカネをもらっても、失われたワクワク感の埋め合わせにはならない。

すべてを「値段」で測る人たち

 パリスが将来プロのコメディアンになったり、私がプロのダイバーだったら話は別だ。パリスのお笑いも私のダイビングも「商品」になる。

 商品とは、いくらかの金額で「売る」ものだ。それが商品であるなら、お笑いにもダイビングにも市場価格がつく。市場価格とは「交換価値」を反映したものだ。つまり、市場で何かを交換するときの価値を示しているのが市場価格だ。

 だが、売り物でない場合、お笑いにもダイビングにも、まったく別の種類の価値がある。「経験価値」と呼んでもいい。海に飛び込み、夕日を眺め、笑い合う。どれも経験として大きな価値がある。そんな経験はほかの何ものにも代えられない。

 経験価値と交換価値は、対極にある。それなのに、いまどきはどんなものも「商品」だと思われているし、すべてのものに値段がつくと思われている。世の中のすべてのものが交換価値で測れると思われているのだ。

 値段のつかないものや、売り物でないものは価値がないと思われ、逆に値段のつくものは人の欲しがるものだとされる。

 だがそれは勘違いだ。いい例が血液市場だろう。多くの国では、人々は無償で献血している。誰かの命を救いたいという善意から、献血するのだ。では、献血におカネを支払ったらどうなる?

 答えはもうわかるだろう。献血が有償の国では、無償の国よりもはるかに血液が集まりにくい。おカネにつられる献血者は少なく、逆におカネを支払うと善意の献血者はあまり来なくなる。

 グッズと商品の違いがわからない人は、どうしておカネを支払うと献血者が減るのかを理解できない。おカネを受け取りたくないから献血しない人がいることが、わからないのだ。

 でもここで、コスタス船長の一件を思い出すと、わかりやすくなる。夜の海に飛び込んでくれと船長に頼まれて、私は彼を助けたいという気持ちから、面倒だったが服を脱ぎ、暗くて冷たい海に飛び込んだ。もし「5ユーロ出すから海に飛び込んでくれ」と頼まれていたら、やらなかっただろう。

 献血も同じだ。献血者は人助けと思って献血する。だがそれに値段がつくと、人助けでなく商売になってしまう。ちょっとばかりおカネをもらっても、気持ちの埋め合わせにはならない。もちろん、時間もかかるし注射針は痛い。

「皮肉屋とは、すべてのものの値段を知っているが、どんなものの価値も知らない人間」だとオスカー・ワイルドは書いた。

 現代社会はわれわれを皮肉屋にしてしまう。世の中のすべてを交換価値でしか測れない経済学者こそ、まさに皮肉屋だ。彼らは経験の価値を軽んじ、あらゆるものは市場の基準で判断されると思っている。

(本原稿は『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』からの抜粋です)

ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)
1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EU から財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。著書には本書の他に、EU経済の問題を指摘した『そして弱者は困窮する』(未邦訳)や「史上最良の政治的回想録の1つ」(ガーディアン紙)と評された『アダルツ・イン・ザ・ルーム』(未邦訳)など、数々の世界的ベストセラーを持つ。2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。

関 美和(せき・みわ)
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な訳書に『誰が音楽をタダにした?』(ハヤカワ文庫NF)、『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP社)、『明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業』(ダイヤモンド社)など。
https://diamond.jp/articles/-/195064  

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コメント
1. 2019年3月23日 21:37:54 : jdbscxdMEI : ZWNRcnA3VXlMSmM=[167] 報告
問題経営者がブラック労働をつくる。ゴミさらに評論家がそのけつを押す。
2. 2019年3月25日 19:34:30 : DQVtywqhVE : SzV1WlhzRGNqdmc=[5] 報告
>仕事が出来ても、会社に対して文句や不平不満ばかりを口にして組織に悪影響を及ぼす社員は気をつけなければなりません。こうした社員は「反“会社”勢力」と言っています。

そのように文句や不平不満を言う人を排除していては、イエスマンばかりの組織になるぞ。その成れの果てが東芝だ。

3. 2019年3月31日 15:25:55 : C2i4eDKWA6 : d3pUQ3kvbGNsV2s=[-575] 報告

>問題社員

共同参画で下駄履かせしてもらった女ということは直に言えないから

その表現なんだね



[18初期非表示理由]:担当:言葉遣いがおかしいコメント多数により全部仮処理

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