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出版業の倒産が沈静化から一転して急増、支援も限界に
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190927-00010001-biz_shoko-bus_all
東京商工リサーチ 9/27(金) 14:00配信
沈静化していた「出版業」の倒産が急増
沈静化していた「出版業」の倒産が急増している。2019年の「出版業」倒産は1月-8月累計で26件(前年同期比116.6%増、前年同期12件)に達し、2018年1年間の22件をすでに上回った。この20年間では、ピークだった2009年に72件発生したが、同年12月に中小企業金融円滑化法が施行されて沈静化。2016年からは3年連続で前年を下回り、2018年は22件にとどまっていた。
2019年に出版業の倒産が急増した背景は、「出版不況」で雑誌に頼った流通システムが崩れ、「出版」、「取次」、「書店」が負の連鎖に嵌り、業界構造の改善が遅れたことが大きい。不採算の出版物の廃刊、休刊の決定の遅れだけでなく、逆に書籍点数を増やしてきた出版社もある。だが、売上増につながらず、印刷代や紙代の値上がりで赤字が拡大する悪循環に陥っている。
経営が悪化した出版社は印刷代などの支払いを延長し、印刷会社も定期的な需要が見込まれるため支援に応じてきた。こうした業界の“もたれ合い”でしのいできたが、出版社の経営改善は進まず、負債も膨らみ倒産に至るケースが散発している。
深刻な出版不況に打開策は見当たらない。抜本的な改善ができずに経営体力が疲弊した中小・零細規模の出版業者の倒産は、「出版は文化」の時代の終焉を示している。
※ 本調査は、「日本標準産業分類 小分類」における「出版業」の倒産を集計、分析した。
出版業の倒産 年次推移
◇「出版業」の1-8月倒産は26件
2019年(1-8月)の「出版業」倒産は26件(前年同期比116.6%増)で、前年同期比2.1倍増と大幅に増加した。すでに2018年の年間件数22件を上回り、このペースで推移すると7年ぶりに年間40件以上に達する可能性も出てきた。
◇原因別、販売不振(業績不振)が約9割
原因別では、「販売不振」が23件(前年同期比130.0%増)と、全体の約9割(構成比88.4%)を占めた。残りの3件は、放漫経営の「事業上の失敗」、赤字累積の「既往のシワ寄せ」、偶発的原因などの「その他」が各1件だった。
◇形態別、破産が8割
形態別は、再建を諦めた破産が21件(前年同期比133.3%増)と8割(構成比80.7%)を占めた。また、業界で印刷代や紙代の支払いに手形や小切手を用いる慣習が残り、半年間に2回の不渡り(デフォルト)を起こして受ける銀行取引停止処分も約2割(構成比19.2%)を占めた。
◇負債額別、1億円未満が約8割
負債額別では、1億円未満が20件(前年同期比150.0%増、構成比76.9%)と、小規模出版社が全体の約8割を占めた。このうち、1千万円以上5千万円未満が13件(同160.0%増、同50.0%)、5千万円以上1億円未満が7件(同133.3%増、同26.9%)だった。
1億円以上5億円未満は5件(同150.0%増、同19.2%)、5億円以上は1件(同50.0%減、同3.8%)にとどまった。
◇主な倒産事例
(株)地球丸(TSR企業コード:292988800、東京都)は、キャンプ、釣りなどアウトドア関連の書籍や雑誌「LOG HOUSE MAGAZINE(ログハウスマガジン)」を発刊していた。アウトドアブームを背景に、安定した固定読者を抱え、ピークの2005年2月期の売上高は17億1600万円をあげていた。しかし、紙媒体の需要減退に加え、出版不況で発行部数が落ち込み売上高は減少の一途をたどり、2018年2月期の売上高は約6億円まで減少。業績不振から脱皮できないまま、金融機関や印刷会社などの支援も打ち切られ、2月に破産を申請した。
出版業の倒産 年(1-8月)推移
出版社だけでなく、出版物を書店に卸す出版取次業者の倒産も続出している。2016年3月に(株)太洋社(TSR企業コード:290893208、東京都)が、自主廃業の方針から一転して破産を申請した。取次書店に連鎖倒産が発生し、出版社も不良債権が発生した。今年7月には日本雑誌販売(株)(TSR企業コード:291337848、東京都)も、書店の廃業などで破産を申請した。
電子書籍やネット普及が逆風になり、雑誌や書籍離れで書店の売上が落ち込み、出版取次も経営が厳しさを増す。さらに、取次に販売する出版社も業績が悪化する負の連鎖が広がっている。
金融機関は、事業の将来性に基づく事業性評価の貸出にシフトしている。これまで金融機関は、リスケ(返済猶予)に弾力的に応じ、取引企業を支援してきた。だが、事業性評価で、企業や市場の将来性が見込めない場合、厳しい目を向け始めている。こうした状況が進むと取引先も支援に及び腰になり、経営破たんに直面する出版業者が増える構図が浮かび上がってくる。
時代に合わない不採算の出版物は大胆な見直しも必要だろう。また、高齢化が進む読者層の開拓も求められる。10月から消費税が引き上げられ、軽減税率の対象外の出版物は2%の税負担が増し、さらに購買意欲を削ぎかねない。いかに魅力ある出版物を発刊し、読者を引きつけられる作家を見出すか。出版業界が背負う難題の克服は容易ではない。
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