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消費税の呪われたジンクスとMMTの信憑性
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投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 01 日 12:45:36: CYdJ4nBd/ys76 6dw
 

消費税の呪われたジンクスとMMTの信憑性
竹中正治:龍谷大学経済学部教授
政策・マーケット DOL特別レポート
2019.10.1 5:40
消費増税後に景気後退ともなれば、財政赤字拡大を容認するMMT派が勢いづきそうだ 

 消費税率の8%から10%への引き上げが10月施行された。振り返ると、日本の消費税は経済・政治両面で暗い記憶を引きずっている。
 消費税の経緯を振り返り、併せて「均衡財政へのこだわりは根拠なき神話」と説くMMT(現代貨幣理論)派の主張の信憑(しんぴょう)性を考えてみよう。
消費税と内閣退陣のジンクス
 消費税の導入は竹下登内閣の下で1989年4月に実施された(税率3%)。ところが、竹下首相は「リクルート事件」で89年6月に退陣となり、消費税導入とリクルート事件で人気が落ちた自民党は参議院選挙(89年7月)で与野党の議席が逆転する敗北を喫した。
 この時、経済面では日経平均株価指数が1989年12月末を高値に翌90年初から急落となり、不動産市況も91年をピークに暴落、90年代前半はバブル崩壊不況となった。政権の人気急落とバブル崩壊不況が消費税導入に絡んで記憶されることになってしまった。
 次は1997年4月の橋本龍太郎内閣による消費税率の5%への引き上げだ。97年7月にタイの通貨バーツ相場の急落で始まったアジア通貨危機の波及と銀行の不良債権問題で、97〜98年は金融危機型の不況となり、橋本内閣は98年7月の参議院選挙で敗れて退陣した。
 この時も不況の原因として消費税率の引き上げは、実証分析では極めて限定的であることが指摘されているが、金融危機型不況と内閣退陣に関連して記憶されることになった。
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2020年には日本も景気後退の可能性が高い

そして、民主党政権では2012年に野田佳彦内閣の下で与野党の「3党合意」で消費税の2段階引き上げ(5%から8%、10%)が決まるが、同年12月の総選挙で民主党は大敗、今に至る自公連合による安倍晋三政権に替わった。
 安倍政権の下での2014年4月の消費税率引き上げ(5%から8%)では、想定通りの駆け込み消費増と4月以降の消費減が起こったが、個人消費の動向は2015〜16年にかけても弱く、これを消費税率引き上げの影響が中長期化しているためと説く論者もいる。
 消費税率引き上げ後の消費の減退は、長く見積もっても1年程度で終了し、その後は2015年から16年にかけて中国経済の失速と世界景気の鈍化の中で起こった株価の下落による負の資産効果などが強く影響していると筆者は判断しているが、その詳細は別の機会に譲りたい。
 この時、安倍内閣は消費税増税を実施しながらも「生き延びた」初めての内閣になったわけだが、いわゆるリフレ政策で円高是正(円安)と企業利益や株価回復、雇用増を伴う景気回復にともかく成功していた結果だろう。
 そして、今10月、消費税は8%から10%に引き上げられた。食料品に対する軽減税率、キャッシュレス決済へのポイント還元、幼児教育・保育無償化などとセットになっており、実質的な家計の負担総額としては2014年に比較してずっと小さい(もっとも、運用ルールを複雑にするだけで消費税の逆進性を修正する効果の乏しい軽減税率には筆者を含む多くのエコノミストや経済学者が反対している)。
 しかし、世界経済は米中欧を中心に目立って減速しており、筆者は2020年には日本も景気後退の可能性が高いと考えている。そうなれば今回の消費税率引き上げも暗いジンクスとなってしまうだろう。
均衡財政へのこだわりは「根拠なき神話」か
 消費税率の歴史を振り返ると、それが直接、景気後退の原因になるとは言い難いのだが、景気と政治的なリスクを伴って実施されてきたことは否定できない。
 そこで問題になるのが最近米国を中心に話題のMMTの「均衡財政へのこだわりは根拠なき神話である」という主張だ。消費税率の引き下げや撤廃を主張する政党が飛び付きそうな主張である。
 まず今年8月に邦訳が発刊された「MMT現代貨幣理論入門」(L・ランダル・レイ著、補注1)に基づいてMMT派の主張を確認してみよう。この著作に書かれていることを対象にする限り、MMTは思っていたほど「トンデモ」ではない。むしろオールドケインジアン(1980年代以降のネオケインジアンではなく)の流れをくむ既知の枠組みにすぎない。

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少数派ゆえに気分が「カルト化」したか

自国通貨建て債務なら政府は全くの制約なしにいくらでも発行して良いとMMT派が主張しているかのように受け止められているが、著者レイ氏は「政府支出を制約する正当な理由」として次の5点を指摘している(同書p356、表現は私が簡潔化している)。

(1)過度なインフレを引き起こさない範囲であること
(2)過度な自国通貨下落を引き起こさない範囲であること
(3)民間との間で経済資源の競合が起きない範囲であること
(4)民間経済主体のインセンチブを歪めない範囲であること
(5)政府のプロジェクトを管理、評価する手段を確保すること
 これらがきちんと順守されるなら、金融政策で政策金利をゼロまで引き下げても完全雇用が達成されない(失業率が自然失業率より高い)ような不況の場合には、財政政策で有効需要を創出すべきだと主張するポール・クルーグマン氏やローレンス・サマーズ氏に代表されるネオケインジアンの政策主張と一見ほとんど変わらない。私も賛同できる範囲だ。
 ただ、そのようにMMT派が受け止められずに、異端的に過激な主張をしているように受け止められているのは、彼らが反体制運動に身を投じている過激派のように、あえて異端的な言い方を振り回しているからかもしれない(この点は同書の巻末の解説で松尾匡教授も指摘している)。確かに、MMT派は今の米国の経済学の主流から理論的な枠組みが乖(かい)離しており、極少数派としてやっているうちに彼らの気分が「カルト化」してしまったのかもしれない。
 例えば、同書第1章「マクロ会計の基礎」では、政府、家計、民間企業、金融機関、海外の主要部門の資金収支がトータルでゼロになる原理が説かれている。これは先進国ならどこでも中央銀行が作成している資金循環表の原理にすぎず、財政赤字(資金不足)には国内民間部門か海外部門の黒字(資金余剰)が見合っている(バランスしている)というマクロ経済学の基礎知識にすぎない。
 ところが、レイ氏によると、これは「MMT派や、ウェイン・ゴドリーの部門収支アプローチを使ったレヴィ経済研究所の研究者を除いて、ほとんど理解されていない」原理(p97)であり、まるで主流派によって封印された「真実に至るための秘儀」であるかのように語られており、失笑を禁じ得ない。
MMT派に欠けているリスク認識

https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/-/img_69b1ad2ff45e56c1951615f1f2259e78117369.jpg
 図表は上記の主要部門の資金収支を日本の資金循環表に基づいて示したものだ。
 日本では1990年代から非金融法人部門が資金不足から貯蓄超過に転換し、それとほぼ見合う形で政府部門が資金不足(財政赤字)に転じているのが分かる。
 各部門の資金過不足の収支がバランスするのは、会計論的な必然である。しかし、同書で語られるMMT派の主張は次の2点で大きな欠点を抱えているように思える。

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極端な思考実験:日本の人口が1人になったら

第1は部門間の資金過不足のフローが見合っていることは、その金融債権・債務(この場合は国債とマネー双方を「政府債務」として扱っている)の価格、あるいは実質価値の安定性を保証するものではない。
 例えば、株式の売買でも売買毎に売りの金額と買いの金額は当然一致している。しかし、その一致が生じるためには、価格は時に高騰あるいは暴落する。そして、株価全般の高騰が起こればバブルにもなり得るし、暴落が起これば深刻な不況も起こり得る。政府債務についてもそのような変動を免れない。
 ちなみに、中央銀行は先進国では組織的には政府から独立しているが、経済論的には政府の一部門であり、この統合政府ベースの視点では中銀発行のマネーも政府債務に他ならない。
 第2は実体経済の規模との比較で特定の債権・債務の残高(ストック)が著しく大きくなるほど(「金融不均衡」と一般に表現される)、何かしらの内生的、あるいは外生的ショックが生じた時に当該金融資産の価格は不安定になり、暴落も起こり得る。政府債務もその例外ではない。
 ただし、政府債務の特殊性はMMT派が強調するように、それが自国通貨建ての国債として発行された場合、その償還は別の政府債務形態であるマネー(ペーパーマネー)と交換されるだけだ。中央銀行が国債を買い、マネーを供給する限り償還に懸念はない。これは政府債務の特殊性の「表の顔」であり、このこと自体は正しい。
政府債務の「裏の顔」
 しかし、政府債務の特殊性には「裏の顔」がある。それはしばしば語られる次のような極端な思考実験をすると分かるだろう。
 日本の人口減少が続いて日本人が最後の1人となったとしよう。単純化のために海外との関係は考えないでおく。その時、政府債務は1000兆円の残高だとしよう。最後の日本人は1人で1000兆円の国債(金融資産)と政府債務の双方を保有していることになる。債権・債務は相殺されるだけで、何か新たにコストが生じるわけではない。だから国内で自国通貨建て政府債務がすべて保有されている限り、問題は生じないはずだ。これが「表の顔」である。
 ところが、これは真実の半分でしかない。もしあなたが最後の日本人なら債権・債務相殺されて無価値になる金融資産など保有し続けるだろうか。当然保有せず、相殺されない他の資産にシフトしようとするだろう。そして、そのようなシフトは日本人が最後の1人になるよりはるかに早期の時点で起こる。シフトの対象は実物財、実物資産、そして海外資産だ。すなわちインフレや通貨安で政府債務(国債や通貨)の実質価値の暴落が起こる。

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MMT派が許容するインフレ率は?

 このことが意味することは、投資家が政府債務を保有するのは、それが自分にとって独立した金融資産であり、「その支払いを自分がするわけではない(将来の世代がする)」と思っているからだ。その認識が揺らいだ時には政府債務の暴落が起こる。これが「裏の顔」である。
 そして、積み上がった政府債務残高が巨額であるほど、その衝撃は大きくなり、高インフレと通貨相場暴落を伴った金融危機にもなり得るだろう。そうした出来事は比較的稀ではあるが、ご承知の通り先進国では1920年代のドイツや戦後直後の日本で起こった。
 増税で国債を償還し政府債務を縮小するのも、高インフレによる実質価値の急減で政府債務の実質価値が縮小するのも、それを保有していた国民の負担になる点は同じである。後者のケースが「インフレタックス」と呼ばれる所以である。
 敗戦直後の日本では戦時中に発行された莫大な国債が償還を迎え、そのマネーが消費に回れば戦災で激減した供給力の下ではハイパーインフレになっただろう。そこで新円交換と預金封鎖が行われ、マネーとして引き出せる範囲が厳しく制限された。それでも数年で100倍を超える物価上昇となり、政府債務の実質価値は急減し、インフレタックスで国民は過去の政府債務のつけを払ったわけだ。
 そのような事態の再現は巨大災害か戦争で経済の供給力が大きく損なわれない限り起こり難いかもしれない。しかし、国家100年の計としてはそうした事態も現実のリスクとして考えておく必要がある。
MMT派が許容するインフレ率は?
 レイ氏があげる政府支出が制約されるべき上記の5条件に話を戻そう。例えば「過度なインフレにならない」というのがどの程度のものを示すのか、同書では明示されていないのだが、MMT派の認識は他のエコノミストを含む一般的な認識からは大きく乖離している可能性がある。
 というのはレイ氏が次のように語っているからだ。「年率40%未満のインフレ率から経済への重大な悪影響を見出すことは困難である」(p445)。
 これを文字通りに受け止めると、仮にMMT派に経済政策を任せた場合、年率20〜30%というインフレになっても「大丈夫、問題ない」ということになる。この感覚の乖離こそむしろ重大かもしれない。

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気になる米民主党左派とMMT派の連携

 過去のインフレ高騰現象を振り返ると、総需要が総供給を上回る状態と信用の膨張(マネーの増発)が併発するとインフレの累積的な高進が起こる。賃金と諸物価がスパイラルに上昇することだ。そのような累積的な不均衡現象は、新古典派の理論的枠組みでは説明できず、日本では岩井克人教授が強調し、「不均衡動学」として取り組んできた(補注2)。
 そうしたスパイラルなインフレ高進が生じると、厳しい金融引き締めで深刻な景気後退というコストを払わずに高インフレを鎮静化できないことは、例えば1970年代から80年代初頭の米国の教訓でもある。しかし、MMT派にはそうしたリスク認識は欠落しているようだ。
 結論として、財政収支の均衡に短期、中期の時間軸でこだわるのは百害あって一利なしであるが、長期では政府債務残高の対国内総生産(GDP)比率を持続可能な状態(決して債務ゼロを意味しない)に抑制することが経済運営に欠かせない。この常識を外すわけにはいかない。
気になる米民主党左派とMMT派の連携
 MMT派の政策的主張としてもう1つの論争点は、同書第8章の「就業保証プログラム」の現実性だろう。不況下では働く意欲のある失業労働者には政府が最低賃金で雇用を提供するプログラムを運営し、何かしらの政府サービスなどを担わせるというアイデアだ。
 あくまでも最低賃金だから、景気が回復してくれば最低賃金以上の賃金で民間部門がこの労働力プールから労働力を吸収していく。したがって、その限りでは民間と競合せずに、不況下での雇用と有効需要を補完するプログラムになるはずだという。本当に機能するかどうか、現実的に機能させるためにはどのような細目設計が必要か、議論検討する価値はありそうだが、そう簡単ではなかろう。
 この対象となるのは、景気後退で失業する可能性の高い日本では労働人口の2〜3%、米国では4〜6%程度の限界的な労働者である。日本では介護や保育分野で人手不足が深刻だが、それぞれ専門的な訓練と資格を要する職業分野であり、誰でも従事できるわけではない。地道な職業訓練とセットで実施しないと、ほとんど付加価値を生まないサービスをただ失業対策目的で行うことになるだろう。
 米国ではMMT派のステファニー・ケルトン氏(ニューヨーク州立大学教授)が次の大統領選に候補者名乗りをあげている民主党のバーニー・サンダース上院議員の政策顧問に就き、またもう1人の大統領候補アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員もMMT派に傾斜するなど、民主党左派とMMT派が関係を強めている。彼らが実際に民主党候補となって大統領選で勝つ見込みは、現状では低いと思うが、注意しておいた方が良いだろう。
(龍谷大学経済学部教授 竹中正治)
補注1:L・ランダル・レイ著「MMT現代貨幣理論入門」東洋経済新報社、2019年8月30日
補注2:岩井克人著「不均衡動学の理論」(新版)岩波オンデマンドブックス、2016年1月13日
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コメント
1. 2019年10月01日 12:53:51 : OO6Zlan35k : L3FGSWVCZWxFS3c=[165] 報告

どうもMMTを何とか否定したいようで、かなり無理のあるコジツケに近い批判が多いようだ

>レイ「年率40%未満のインフレ率から経済への重大な悪影響を見出すことは困難である」(p445)。
>仮にMMT派に経済政策を任せた場合、年率20〜30%というインフレになっても「大丈夫、問題ない」ということになる。この感覚の乖離こそむしろ重大

悪質な論理のすり替え

あたかもインフレ率の妥当な水準をMMT派が20%超だと主張しているかのような印象操作を行っているが

これはあくまでもイランやトルコのような酷い状況の国家で

高インフレになっても経済はまわっていると主張しているだけのこと

2. 2019年10月05日 09:03:39 : I2ol6vz13I : UlduOGQzMG10LzY=[4] 報告
カルト化と言っているこいつが一番のカルト
wwwwww

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