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少子高齢化で日本の景気変動が小さくなる理由 世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(前編)
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/434.html
投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 21 日 14:46:42: CYdJ4nBd/ys76 6dw
 

少子高齢化で日本の景気変動が小さくなる理由

2019/10/21

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 日本の景気変動が小さくなり、大不況が来にくくなる、と久留米大学商学部教授の塚崎公義は説きます。


(kevron2001/gettyimages)
高齢者の消費は安定している
 高齢者の消費は安定しています。主な収入は年金ですから当然安定していますし、老後のための貯蓄を取り崩すとしても、毎月一定額を取り崩して生活する人が多いでしょう。したがって、個人消費に占める高齢者の消費が増えると、個人消費が安定するので、景気が安定するのです。

 高齢者の消費が安定しているということは、高齢者向けの仕事をしている人の収入も安定している、ということですから、彼らの消費も安定しているでしょう。労働者に占める高齢者向けの仕事をする人の比率も上がって行くでしょうから、これも個人消費を安定させる要因となります。

 極端なことを言えば、現役世代が全員高齢者向けの仕事に従事している国では、景気の変動は一切ありません。もちろん、これは極論ですが、方向としては少しずつそちらに日本経済が近づいていることは間違いないでしょう。

少子高齢化によって労働力不足となる
 少子高齢化が進むと、労働力不足になり、失業が生じにくくなります。理由の第一は物を作る人が減ること、第二は労働集約的な消費が増えることです。ちなみに本稿で物というのは財とサービスの両方を指します。

 物を作る人である現役世代の人数が減る一方で、物を使う人である総人口はそれほど減らないため、物不足になり、「現役世代は全員働いて物を作れ」という圧力が加わるわけです。

 加えて、若者が好んで買う自動車等は生産の機械化が容易ですが、高齢者が使う医療や介護のサービスは機械化が難しいので、同じ100万円の個人消費でも多くの労働力を必要とするのです。

 労働力不足が進むと、景気が良い時には猛烈な労働力不足、景気が悪くても少しは労働力不足、といった時代になるでしょう。そうなると、景気が悪いことが今より気にならなくなる、ということも言えそうです。

失業が生じなければ個人消費は落ち込まない
 景気の波が大きくなるのは、「景気が悪くなると倒産が増えて失業が増えて失業者が物を買わなくなるから個人消費が落ち込む」というメカニズムによるのです。

 たとえばリーマン・ショックの時には、輸出企業が労働者を解雇したので、解雇されて収入が得られなくなった人々が消費を減らし、それが景気を一層悪化させた、というわけです。

 しかし、労働力不足の時代になると、製造業を解雇された労働者は、飲食業等々がよろこんで雇ってくれるので、失業することも収入を失うこともありません。そうなれば、個人消費は落ち込まずに済むわけです。

製造業に労働力が回せない
 バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済の最大の問題は失業でした。輸出が減ると失業が増えてしまうので、輸出は極めて重要だったのです。しかし、労働力不足の時代になり、状況は変わりました。

 輸出企業が労働力不足で十分な物を作れない時代が来るかもしれません。労働集約的な生産ラインはすでに途上国に移っていますが、その流れは加速して行くでしょう。

 これまでは、「海外の不況で注文が減ったから輸出が減った」ということでしたが、今後は「労働力不足で十分な品物が作れない。したがって、海外からの注文が増えても減っても生産量も雇用も増やせない」という時代に近づいて行くのかもしれません。

 「現役世代は、介護や医療に加え、国内で消費される物を作るので精一杯だから、最低限輸入に必要な外貨を稼ぐだけの輸出は行なって欲しいが、それ以上の輸出は不要」というイメージですね。

 もちろん、政府が経済計画で輸出量を調整するわけではありませんが、輸出企業にとっても、海外の景気の変動によって輸出数量が増減するより、海外の景気にかかわらず一定量の輸出を続けるという方が望ましいかもしれません。

 海外が好況の時に無理をして生産量を増やしても、海外が不況になれば減らさざるを得ないのであれば、最初から無理をしない、ということでしょう。

 そうなると、生産設備の投資も安定するでしょう。淡々と同じ量を生産し続けるだけなら、設備量も一定(あるいは決められたペースで増えて行く)でしょうから。

輸出が減り続けることは考えにくい
 最後は余談です。輸出企業が生産を増やせないとなると、輸出が減り続けて輸入に使う外貨が不足する、という懸念を持つ読者もいるかもしれませんが、それは大丈夫でしょう。

 輸出がある程度以上に減り、輸入に使う外貨が不足するようになれば、ドルが値上がりします。そうなれば、輸出企業が「高い時給で労働者を集めても、それで生産を増やせれば儲かる」と考えて時給をあげるでしょうから。

 その時に、どの業種から労働者が奪われるのでしょうか。筆者の懸念は介護士の給料が今のような低い状況だと、介護業界から(直接なのか玉突きの形なのかはともかく)労働者が奪われて介護を必要とする人が困るのではないか、ということです。杞憂だと良いのですが。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17681


 
世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(前編)

ポスト冷戦の世界史−−激動の国際情勢を読み解く
2019/10/21

中西輝政 (京都大学名誉教授)


(SEAN GLADWELL/GETTYIMAGES)
 世界史の劇的な転換点である「ベルリンの壁崩壊」から11月9日で満30年になる。当時は冷戦の終焉(しゅうえん)で平和な時代が訪れる、という期待感が高まったが、今日の世界情勢は大きく暗転している。「なぜ、こうなったのか」。世界情勢の未来を見渡すためには、まずは大きく変転してきた国際秩序の波動を検証することが必要である。以下、この30年の世界情勢をそれぞれ様相が異なる10年(デケッド)ごとに区切って振り返ってみる。

 最初の10年間は、ベルリンの壁が崩壊した翌月の1989年12月に開かれたマルタ会談から始まった。そこで米国のブッシュ(父)大統領とソビエト連邦のゴルバチョフ書記長が「冷戦は終わった」と正式に確認した。当時は米国もソ連も和解して手を結び、欧州はECからEUへと統合が進み、もう一つの超大国となるのではないかとみられていた。

 また、アジアでは日本が「隆々たる経済大国」として躍進を続けており、将来的には米国に肉薄するほどの経済力をつけ、政治大国としても世界で大きな役割を果たしていくのでは、と言われていた。他方、中国は同年6月に天安門事件を起こして孤立しており、「冷戦後の平和と協調」の流れの中で生き延びるためには、国際協調に努めざるを得ない立場にあった。

 このように冷戦終結直後の世界は、幾つもの大きなパワーが互いに協調し合う多極化した「協調型・多極世界」というイメージがあった。パックス・アメリカーナ(米国による覇権)が終わり、国連を中心とした「パックス・コンソルティス」(多国協調による国際秩序の維持管理)という言葉を国際政治学者は好んで使っていた。

 しかし、1年も経たずして、複数の国が協調して国際秩序をガバナンスすることは大きな壁にぶつかった。90年7月に開かれたG7のヒューストン・サミットをブッシュ大統領が取り仕切ったが、各国の首脳は、「米国はもはや盟主ではない」といわんばかりに、特にフランスのミッテラン大統領やドイツのコール首相が、米国に対して多くの厳しい注文をつけ米国に挑戦するような議論を行った。日本も海部俊樹首相が日米の経済問題による窮状を世界に訴えた。冷戦の終結によって、国際政治の場における米国の影響力には大きな陰りが見えたかに思われたが、まさにその瞬間、事態は大きく変転していく。

 91年1月に始まった湾岸戦争だ。前年夏、サダム・フセインのイラクがクウェートに侵攻し、米国は外交力、政治力、軍事力の面で圧倒的なリーダーシップを発揮する。イラク制裁の国連決議を取りまとめ、50万人を超す米軍を中東湾岸に派兵し、トマホーク・ミサイルなど最新のテクノロジーや秘密兵器を投入し、数週間でイラク軍を蹴散らした。


米国の湾岸戦争勝利を祝った軍事パレード(1991年6月、ワシントンDC)。「米国一極」の時代の幕が開けた
(JOE SOHM/VISIONS OF AMERICA)

 軍事力を中心とした覇権的な力のある大国だけが「世界秩序の主宰者」になるべきだ、という米国の主張を世界にまざまざと見せつけた戦争だった。つまり、この湾岸戦争によって米国は文字通り”目にモノを見せ”て、「多極化する世界」という潮流を逆転させ、「一極の世界」へと変質させたのであった。

米国の脅威に怯え軍拡に突き進む中国

米国のパワーを世界に見せつけた湾岸戦争で中東に派兵される米軍(LANGEVIN JACQUES)
 しかし、その結果、多極協調型の新秩序の模索は潰(つい)え、欧州や中ロなど他の大国の間に「いかにして米国に対抗するか」という長期国策を植えつけることにもなった。また、湾岸戦争以後、逆に中東秩序の流動化が始まり、「9・11」、イラク戦争へとつながってゆく。

 米国の一方的な力の行使を見せつけられたソ連では、マルタでの「米ソ協調による平和」という誓約が反故(ほご)にされ、「米国に裏切られたのではないか」という思いが湾岸戦争後、ロシア人エリートたちに定着し始め、米国の意図に強い危機感を抱くようになった。

 中国も同様で、人民解放軍を中心に、湾岸戦争で見せつけられた米国の先端的な軍事技術について深刻な脅威感が広がり、さらに米国の「覇権への意志」を痛感した中国は、対米対抗心を強め、ここから大規模な軍拡へと突き進んでいった。

 このように冷戦の終焉直後は「協調型・多極世界」に移行していくと思われていたが、湾岸戦争を機に世界秩序の潮流は、表面的な一極構造の底に潜在的な対立を含んだ「競争型・多極世界」への流れへと変わった。かくして、「物事の本質というのはその誕生のときにすべて現れる」という格言が示すように、この30年を顧みたときに、ベルリンの壁崩壊から湾岸戦争を経て、91年12月のソ連崩壊までのわずか2年という短期間で、今日の世界秩序の基本的な構図がすでに明瞭に映しだされていた。

21世紀を模索した「五つの世界像」
 それにも拘わらず、その後、21世紀の世界像について、互いに大きく異なるおよそ五つのモデルが90年代中頃までに専門家から提示された。一つ目がフランシス・フクヤマの有名な『歴史の終わり』論である。つまり、冷戦後の世界は市場経済と民主化が世界の隅々まで普及し、米国を中心とした「西側」の主導による安全保障や国際政治の枠組みが形成され、そこではもはやイデオロギー対立や国家間の対立はなくなり、大戦争や世界革命といった現象は永遠に過去のものになるというものだった。

 二つ目がサミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』論で、21世紀の世界は、もはや国家間の対立ではなく、文明間の対立が基調となる世界像を示した。当時はイスラム教徒とキリスト教徒の対立によるユーゴスラビア紛争や、インドではヒンズー教とイスラム教の血みどろの紛争が起こり始めていた。それまで、21世紀は非常に明るい未来が訪れ、民主化と市場経済により繁栄の世界が広がるはずだと思っていた人々は、いわば「ハンチントン・ショック」といってもよい歴史的な悲観論を、衝撃をもって受け止めた。

 三つ目としてリージョナリズム(地域主義)による新しい世界秩序形成の可能性が唱えられた。90年代を通じ欧州の統合は進み、北米は北米経済圏、東南アジアでもASEANが急速に統合を深め一つの経済圏を作り始めた。それらがやがて社会や文化の統合につながっていき、世界の各地域で同時並行的に統合が進み、その地域間の調整により、世界経済の運営や、世界秩序の調整も可能になるのでは、という世界像が日本を含む各国でもてはやされた。APECが発足したのも、マレーシアのマハティール首相が東アジア経済協議体(EAEC)を提唱したのもこの頃だ。

 四つ目は文字通り「ボーダーレスな世界像」が主に欧州の知識層や国際機関、そして先進国のメディアを中心に広まった。日本でも”宇宙船地球号”とか”グローバルビレッジ”とかいう言葉が語られた。経済的だけでなく社会的、さらにはやがて政治的にも国境がなくなる世界が現出するのではというイメージである。21世紀は人類共同体としてのグローバル社会が地球市民によって支えられる、というユートピアニズムによるこうした楽観的な世界観が大手を振って唱えられた。しかし、今の時点から見れば、これら四つはいずれも「的をはずして」いたと言わねばならない。

 他方、五つ目として、米国の国際政治学者キッシンジャーらが早い段階から提唱していた諸大国から成る世界、いわゆるバランス・オブ・パワーの世界だ。超大国の米国に加え、欧州や日本、そしてやがて再浮上するであろうロシアや大きく成長した中国という諸大国による、多極化した世界での勢力均衡的な外交によって秩序が形成される世界像が示されていた。

 90年代に圧倒的な力を誇った米国のクリントン政権は当初、覇権国としてソマリアやユーゴスラビアへの介入やハイチの人道支援など、地域紛争に積極的に関与しようとした。しかし、米国世論やメディアの一部では、そうした紛争は当事国の責任で対処するべきだとして米国の介入に反対する「草の根」の声がふつふつと湧き出した。トランプ政権の「アメリカ・ファースト」や「カムホーム・アメリカ」という孤立主義への大きな流れが浮上し始めていたのである。

 それゆえ、私は今こそ90年代の米国を今一度深く検討することが、トランプ政権を生んだ今日の米国を深く理解する上で重要な手掛かりだと考えている。当時、米国は世界をどう見ていたのか。経済と対外コミットメントのバランスをどう捉えていたのか。米国経済の持続可能性をどう見積もっていたのか。これらは「世界の警察官」でいる気持ちがえていくプロセスと深いところで相互作用があったのではないだろうか。

*「世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(後編)」へ続く
(10月25日公開予定)
現在発売中のWedge11月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
 中西輝政、遠藤 乾、飯田将史、小泉 悠、村野 将
Part 1  NATION STATE 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは
Part 2 USA VS CHINA 米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
◆ビル・エモット氏(英『エコノミスト』元編集長)インタビュー
Part 3 EU 危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由
Part 4 CHINA 海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」
Part 5 RUSSIA 勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略
Part 6 SPACE WAR 宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17614  

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コメント
1. 2019年10月21日 14:53:37 : OO6Zlan35k : L3FGSWVCZWxFS3c=[245] 報告

少子高齢化がゆっくり進むのであれば、逆に望ましいくらいだが

急激な進行は、温暖化災害などによるインフラコストの急増で、大きな負担となる


>輸出が減り続けることは考えにくい
>輸出がある程度以上に減り、輸入に使う外貨が不足するようになれば、ドルが値上がりします。そうなれば、輸出企業が「高い時給で労働者を集めても、それで生産を増やせれば儲かる」と考えて時給をあげる

残念ながら、そう単純ではない

今後、AIやIT関連で破壊的なイノベーションが、あらゆる分野で起こり

さらにEV化が加速していけば、これまでの旧態依然とした生産システムでは対応できない


そして誰も日本製品など見向きもしなくなれば

輸出は急減、貿易赤字急増で、急激に円安インフレが進むことになる

>その時に、どの業種から労働者が奪われるのでしょうか。筆者の懸念は介護士の給料が今のような低い状況だと、介護業界から(直接なのか玉突きの形なのかはともかく)労働者が奪われて介護を必要とする人が困る

円安インフレで輸入ができなくなれば、生産性の低い国内で、何とか自給しなくてはならなくなり、益々、労働力は不足し、

高インフレと円安で、日銀による財政ファイナンスも継続できなくなり

急激な緊縮財政を余儀なくされる


つまり、かってのように途上国化し、いくら働いても貧乏という状況に戻っていく

それが今後、最も起こる確率の高い日本が陥る貧困化への道ということだ

2. 2019年10月22日 19:01:02 : bLbVVSfKBo : Q0txSzNoeHg1TG8=[173] 報告
見せかけの 景気に縋る 詭弁術

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