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米中新冷戦、対テロ戦争…国際情勢がこれだけ複雑を極めるのはなぜか 今、日本の存在感が試されている(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/202.html
投稿者 赤かぶ 日時 2019 年 1 月 12 日 18:04:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 



米中新冷戦、対テロ戦争…国際情勢がこれだけ複雑を極めるのはなぜか 今、日本の存在感が試されている
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59271
2019.01.12 篠田 英朗 東京外国語大学教授 国際関係論、平和構築 現代ビジネス


あれから100年

2018年は、第一次世界大戦が終わってから100年目の年だった。2019年は、ベルサイユ条約が結ばれ、国際連盟が設立されてから、100年目にあたる年だ。

100年前と比べて、今日の世界は、自由主義的な価値観にもとづいて、大きく刷新されている。自由主義を基調とした国際秩序の刷新が、1919年から開始されたことには、異論がないだろう。

国際連盟の設立を主導したウッドロー・ウィルソン米国大統領の強烈な個性は、ウィルソン主義(Wilsonianism)という言葉で記憶されている。

ウィルソン主義は、冷戦を終結させた30年前の1989年の東欧革命の際にも、よく思い出された。なぜなら冷戦の終焉は、自由主義の勝利として理解されたからだ。

実際、1990年代以降の世界においては、自由主義的価値観を基盤としたアメリカが主導する国際秩序の強化が、大きな潮流となった。ウィルソン主義が、世界を席巻していると考えられた。

今日、そのような時代の流れは、過去の歴史の一コマとなっている。

2018年は、自由主義を基盤とする国際秩序が、停滞し、退潮していることが、さらにいっそう明確になった年であった。

かつて日本は、アメリカ主導の国際秩序に反旗を翻した。そして第二次世界大戦にアメリカを引きずりこむことによって、大きな歴史の流れを作った。戦後、日本は自由主義的価値観を標榜し、アメリカの同盟国となることによって、国際秩序の安定化に寄与した。

今、日本が、弱体化している自由主義的な国際秩序の維持・強化にあらためて貢献できるかが、問われている。2018年にも問われたし、2019年においても問われ続けるだろう。



米中新冷戦の時代

現代の国際政治の仕組みを大きく決定しているのが、超大国・中国の勢力拡大と、それに伴う米中の間のせめぎあいである。

中国は、自由貿易の原則を吹聴する世界第2位のGDPを誇る経済大国となった。しかし、人権の分野では、必ずしも自由主義的価値観を標榜する国となっているとは言えない。

それどころか権威主義的体制を維持したまま超大国化した中国の存在は、世界の数多くの権威主義体制に、勢いを与えている。

人権擁護や民主化などの条件を付して行われていた自由主義諸国が主導していた国際的な援助体制は、巨大ドナーとしての中国の台頭によって、大きな挑戦を受けることになった。

権威主義体制をとる国は、もはや援助のために自由主義的価値観を受け入れる必要がない。中国の経済発展を見習い、中国の支援を期待して、国家運営をしていけばよいからである。

2018年は、各地で中国の「一帯一路」攻勢の影響が語られた年だった。

スリランカやモルディブでは、国内政争が、親中派と非親中派の対立の構造そのままで展開した。パキスタンからシエラレオネ、そしてベネズエラに至る広範な地域の諸国で、中国からの巨額の援助を受け入れるべきかどうかで大きな政策論争が起こった。

これに対抗する米・日・豪を中心とする諸国が推進する「インド太平洋戦略」の考え方は、2018年を通じて着実に定着していった。欧州諸国がトランプ政権に対する警戒心を強める中、安倍首相が主導する日本外交は、「インド太平洋戦略」の強化に貢献している。

現在、日本と中国の二国間関係には改善が顕著に見られるが、中国側の戦略的計算によるところが大きい。大きな流れは、米中の両超大国間の緊張関係の高まりである。

米中貿易戦争とも呼ばれる関税政策の応酬が続く中、2018年10月4日に、マイク・ペンス米国副大統領が、中国をアメリカに介入する危険な国と非難する講演を、ハドソン研究所で行った。

この講演は、冷戦勃発を象徴したチャーチルの「鉄のカーテン」演説に匹敵する、米中新冷戦の時代の到来を象徴するものだと評されるものとなった。

2018年6月にシンガポールで開催されたトランプ大統領と金正恩・北朝鮮最高指導者の会談は、その中身の薄さにかかわらず、歴史的な事件ではあった。だが全ての計算は、米中という二つの超大国間の緊張関係を背景にして成り立っていた。

経済制裁に苦しんでいた北朝鮮の金正恩が米朝会談前に行ったのは、北京に赴いて習近平・国家主席と会うことであった。

北朝鮮は、中国への伝統的な忠誠心を思い出すことによって初めて、アメリカとの間の対等な関係にもとづく交渉に入ることができた。

逆にアメリカは、米朝会談後に、思い通りには動かない北朝鮮を見て、中国への苛立ちを募らせた。

2018年を通じて北朝鮮との関係改善に邁進し続けた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、在韓米軍撤退の可能性をほのめかしているトランプ大統領のアメリカとの関係すらも微妙なものにしてしまっている。

加えて、日本と韓国の関係悪化も放置し続けている。韓国は、朝鮮半島統一への夢を強く追い求めていると評されることもあるが、米中新冷戦の時代にあって、米中の間で中間的な立ち位置を追い求めている。

その立ち位置の自己認識が、韓国の現在の外交姿勢に影を落としている。



東南アジアでは何が起きたか

ミャンマーのロヒンギャ問題は、解決策の見えない袋小路に陥ったままだ。その背景にあるのは、ミャンマー政府の後ろ盾としての中国の巨大な存在だ。

その他の東南アジア諸国で発生した国内的紛争や政治的係争事件をめぐっても、強権的な手法による解決が追求されてきている。

フィリピンのドゥテルテ大統領は、2018年3月、国際刑事裁判所(ICC)からの脱退を表明した。麻薬犯罪容疑者の超法規的殺害をめぐり、ICCが予備調査の開始を決定したことを不服とした措置であった。いわゆる西側諸国はドゥテルテ大統領を批判的に見るが、フィリピンはチャイナ・カードを巧みに利用した外交術も駆使して、基盤を固めている。

ロヒンギャ問題に対して国連PKOが展開することはないのか、といった論調を見かけることもあった。しかし、よほどの急展開がなければ、起こりえない。

過去に日本の自衛隊も施設部隊を派遣したカンボジアや東ティモールでの国連PKOは、極めて稀な例外的な国連PKOのアジアでの事例だった。

カンボジアのPKOは冷戦期の代理戦争の終結に伴う処理であったし、東ティモールの事例は脱植民地化の処理であった。そもそもオーストラリア軍に依存した東ティモールへの国際的な介入は、ソロモン諸島などのオセアニアにおけるPKOのパターンに属するものであった。

なぜアジアでは国連PKOが展開しないのかと言えば、中国の意向を踏まえることなく、国連安全保障理事会がアジアでの介入行動に踏み出すことが、実態として不可能だからだ。

2018年末、ついに中国が国連本体への拠出金額で2019年から日本を抜いて2位に躍り出ることが決まった。PKOへの拠出金ではすでに2位になっていた。2018年末の段階で、中国の国連PKOへの要員提供数は2,500人規模で、193の加盟国中10位である。常任理事国としては圧倒的な貢献である。

中国は、国際機構を通じた多国間外交を軽視していない。むしろアメリカのほうが国際機構への警戒心が強い。ただし、価値観としての自由主義を国際秩序の原則とするか否かという問題は、それとはまた別の次元において存在し、米中対立の構造を性格づけている。

対テロ戦争の行方

2018年末、アメリカのマティス国防長官が退任した。背景にあったのは、トランプ大統領との政策的姿勢をめぐる確執であった。

マティスは、2001年9.11以来のアメリカの「対テロ戦争」の中で、職業軍人としての華々しい経歴を持つようになった人物である。

共に戦ってきたNATO同盟諸国との関係を重視するマティスは、シリアやアフガニスタンからのアメリカの撤収・兵力削減にも反対していたという。

もちろんトランプ大統領も、国防の重要性を掲げている。イランに敵対的であり、テロ対策では強硬路線を標榜している。

しかし「対テロ戦争」を半ば文明論的に捉える傾向があるマティスに対して、トランプ大統領はもっと実利的だ。大統領は、アメリカ本土の安全を最優先しつつ、効率的に安全保障政策を遂行することが合理的だと確信しているようだ。

トランプ大統領の下で、「対テロ戦争」を勝ち抜こうとするアメリカの立場は、大きく修正された。もはやアメリカは、終わりなき戦争の勝利を求めているわけではないように見える。現状維持へと目標を下方修正したうえで、「対テロ戦争」を継続していくようだ。

シリアの戦争は、アサド政権の事実上の勝利で収束しているが、まだ終わったわけではない。2018年9月、危惧された反アサド政権勢力の最後の砦であるイドリブへの総攻撃が、ロシアとトルコの間の合意によって回避された。アメリカ不在を前提にして、シリア情勢が管理されていく既定路線は、すでに固まっていた。

「アラブの春」以降の中東の騒乱の中でも、2018年のイエメン情勢は、最も深刻な部類に入るものだった。国連によれば、約1600万人が食料危機に陥っているという。

「対テロ戦争」の副次的効果として激化したスンニ派とシーア派の対立構造の中で、サウジアラビアとイランの代理戦争が果てしなく繰り広げられている。

2018年に紛争が激化し、人道的惨禍が深刻に広がったのは、アフガニスタンだ。

延々と戦争が続くアフガニスタンだが、9.11後のアメリカによる攻撃が行われた2001年以降、タリバン勢力がここまで勢力を回復させ、国土の半分を掌握するに至るようなことはなかった。

アフガニスタンでは2018年だけで4万人が戦争によって死亡したとされるが、これも2001年以降で最悪だった。結局、2017年の米軍増派も目に見えた効果はなく、ただ戦争の激化という結果に終わった。

こうした状況で2019年に実施される予定の大規模な米軍の撤収は、果たしてアフガニスタンに何をもたらすのか。「対テロ戦争」の帰趨にとって、大きな意味を持つ問いとなる。

アフリカでは、ソマリアから中央アフリカ共和国やマリをへてナイジェリアと続く、サヘル地域を中心とする一帯が、2018年を通じて相変わらず不安定だった。

アル・シャバブ、ボコ・ハラム、マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)といったイスラム過激派勢力の動きは、続いた。それに加えて、南スーダンやカメルーンなどで、激しい地域紛争が継続・悪化・勃発した。

日本の針路

国際政治の国家間闘争の視点からは、2018年は米中間の確執が顕在化した年であった。また2018年は、「対テロ戦争」の構図は、さらに混迷を深めていった年でもあった。

2019年の先行きは不透明だ。

はっきりしているのは、自由主義の勝利とも謳われた冷戦終焉の余韻は今や消滅してしまっており、世界各地で生じている力の空白、および価値観の空白が、複雑な国際情勢を形成しているということだ。

この状況の中で、日本はどのように立ち位置を決め、針路を見定めていくべきか。いくつもの選択肢がある。多様な議論があっていいだろう。

だがやはり今こそ日本は、自由主義的価値観にもとづく国際社会の秩序を支えることによって、積極的に進むべき方向を見出していくべきではないか。

100年前の1919年、第一次世界大戦の戦勝国として講和会議に参加していた日本は、人種平等条項の挿入を提案し、否決され、米英主導の国際秩序に反感を抱いた。そして国際法を軽視し、孤立し、破綻の道を歩んでいった。

2019年、日本は、同じ道を歩むことはできない。

国際秩序が動揺しているときだからこそ、日本がその存在意義を国際社会に広く印象付ける好機があるかもしれない。今、日本の存在感が試されている。









 

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コメント
1. 2019年1月12日 20:03:02 : KxJBJ5kYmg : 7wuyORc_t1M[211] 報告
増すばかり 存在感の 希薄さが
2. 2019年1月12日 20:37:48 : tVpQ2wCKVw : g7z2Oc0sspE[2] 報告
複雑?

嘘ばっかついて収拾つかなくなってるだけだろ。

3. 雅則[817] ieuRpQ 2019年1月12日 22:00:37 : TGu8WvQwI : 6oF4AFKMaeY[54] 報告
アメリカ合衆国の話では日本の自衛隊は世界の大国に匹敵する軍事力と戦闘能力を着けているそうだ。アメリカ合衆国から武器を買い戦争を行う事なく専守防衛に力を入れて世界最高の軍事力と技術を持った。だからそれを活用して平和の為に貢献しろという要求です。アメリカ合衆国の失敗の延長をアメリカ合衆国から買った武器で行えという事です。しかし、日本にはアメリカ合衆国のマッカーサー元帥とGHQが残した戦争放棄の平和憲法を守る事を、世界との約束があります。其れを破る事は国連軍を敵にした敵国条項があり、ロシア、中国、朝鮮半島を敵にロケット、ミサイルの餌食に成ります。間違えれば一瞬にして国民の命が奪われます。日本のできる事は、経済の活性化と豊かな生活を支援する事です。戦争を防ぎ経済制裁でなく、経済支援を行う事です。自然災害等中心に助け合い協力して行く事です。世界から戦争を無くす。その為に豊かな生活を築く事で存在感を高める必要があります。話し合いで問題を解決し戦争を防ぐ。これが日本の使命です。
4. 2019年1月13日 09:13:00 : 1hFwhl5XF6 : A44FqszPm3Y[994] 報告
篠田英朗は、911と新自由主義とテロ戦争の繋がりを理解していないのでこのような評論になるのだが、日本の御用学者のレベルはこんなものです。
現在の状況を、マトモに説明できる学者など日本に居ない。

騙されないように!

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