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北朝鮮、これから始まる「粛清の嵐」と「軍の台頭」 大恥かいた金正恩、自暴自棄で不測の事態も 米朝首脳会談決裂でも、ご褒美
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/626.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 08 日 22:26:48: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

北朝鮮、これから始まる「粛清の嵐」と「軍の台頭」

漂流する東アジアを撃つ(第3回)
2019.3.7(木) 右田 早希
金正恩氏、列車で帰国の途に ホー・チ・ミン廟を訪問後
〔AFPBB News〕ベトナム・ランソン省のドンダン駅に到着して手を振る、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央、2019年3月2日撮影)。(c)YE AUNG THU/AFP

(右田早希:ジャーナリスト)

「パル オムヌンマル チョルリカンダ」(? ??? ????)

 朝鮮半島に、昔から広く流布する諺だ。直訳すると、「足のない馬、千里を行く」。これだとチンプンカンプンだが、朝鮮語(韓国語)では、「マル(?)」には二つの意味があって、「馬」と「言葉」。つまりこの諺は、「人の噂話というものは、アッという間に千里も伝わってしまう」と諭しているのだ。換言すれば、朝鮮半島の人々は、噂話が大好きだということだ。それは、いくら北朝鮮のような閉鎖社会であっても、基本的に変わることはない。

会談決裂は北朝鮮国内で「周知の事実」
 先週2月27日、28日に、トランプ大統領と金正恩委員長がハノイで行った米朝首脳会談の「世紀の決裂」は、一週間が経っても、北朝鮮国内では「成功裏に終わった」ことになっている。例えば、朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』(3月5日付)は、こう報じている。

<朝鮮労働党委員長でおられ、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長でおられるわれわれの党と国家、軍隊の最高領導者・金正恩同志におかれましては、ベトナム社会主義共和国に対する公式親善訪問を成果を持って終えられ、3月5日に専用列車で祖国に到着された。(中略)

 明け方の3時に、歓迎曲が鳴り響く中で、敬愛する最高領導者同志が乗られた専用列車が平壌駅構内に静かに入ってくると、最高領導者同志を寝ても覚めても夢見ていて、ただお戻りになる日だけを日がな指折り待ちわびてきた全国人民の、烈火のような敬慕の情と立ち溢れる激情の噴出である「万歳!」の、爆風のような歓呼の声が、平壌の空を覆い満たし、こだましたのだった>

 明け方の3時に、平壌市民たちが歓呼するはずもなく、また本当に歓呼させられたなら、いい迷惑だったろう。朝鮮中央テレビの映像で見る限り、駅のホームに居残りの幹部たちがズラリ整列し、平身低頭で迎えていた。

 実際には、「金正恩委員長がトランプ大統領と決裂した」という事実は、すでに北朝鮮国内に流布しているという。

胸を撫でおろした居残り組
 丹東で長く、北朝鮮への観光ビジネスを行っている中国人が証言する。

「中国と北朝鮮は、1400qもの国境を接していて、日々交流しているのだから、当然国境付近の北朝鮮人は知っている。われわれも中国のSNS上に載っている話を、北朝鮮人たちにしている。彼らは裏では、『3日もかけてハノイまで列車で往復して、いったい何をやっているんだ?』と呆れ顔だ。

 そもそもいまの北朝鮮人は、父親の故・金正日総書記に抱いていたような敬愛の念を、金正恩委員長に対しては抱いていない。ただ従え、尊敬しろと命じられて、面従腹背で頭を下げているだけだ。

 丹東で北朝鮮ビジネスをやっているわれわれは、今回の米朝会談後に、対北朝鮮ビジネスが本格的に復活できると期待していただけにガッカリだ。だが、私たち以上にショックを受けているのが、当の北朝鮮人たちだ。あと一年もいまの経済制裁が続けば、北朝鮮は潰れてしまうよ」

 これから北朝鮮で起こってくるであろうことが、二つある。

 一つ目は、今回の「ハノイの決裂」に対する朝鮮労働党内部での「総括」だ。すなわち、誰を「生贄(いけにえ)の羊」にし、責任をなすりつけて粛清するかということだ。今回、ここまで「最高権威」(金正恩委員長)に国際的な恥をかかせてしまったのだから、「プライドの国」と言われる北朝鮮で、金委員長の側近たちが無事で済むはずがない。

【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏
北朝鮮の国防科学院の試験場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信配信(2018年11月16日配信、撮影日不明)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕

 最も危険なのは、『労働新聞』などで、金正恩委員長に同行してハノイ入りしたと報じられた「側近11人組」である。北朝鮮メディアで紹介されている順に名を挙げると、朝鮮労働党中央委員会副委員長の金英哲、李洙?、金平海、呉秀容、李容浩・外相、努光鉄・人民武力相、朝鮮労働党中央委員会第一副部長の金与正、李英植、金成男、崔善姫・外務副大臣、朝鮮労働党江原道委員会委員長・朴正男である。

 少なくともこのうち何人かが、血祭りに上げられることが予想される。「無事」が保証されているのは、金正恩委員長の妹である金与正と、金委員長がスイスで過ごした少年時代に父親代わりとなった李洙?くらいのものだ。李洙?は今回、世界遺産のハロン湾の観光視察をやっていたくらいなので、アメリカとの交渉からは外されており、直接的な責任は問われないだろう。だが残り9人の幹部は、いつ誰が無惨な粛清に遭っても不思議ではない。

 象徴的な映像があった。前述の朝鮮中央テレビが映し出した駅のホームで出迎える光景で、留守番役を担った幹部たちは、一様に明るい表情を見せていたのだ。朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会委員の金永南、崔龍海、朴奉珠らである。彼ら「居残り組」の心中を察するに、「ハノイに同行を命じられなくてよかった」と、ホッと胸を撫でおろしていることだろう。

密かに軍を恐れる金正恩
 もう一つ、今後の北朝鮮で起こってくるだろうことは、120万朝鮮人民軍の再度の台頭である。

 金正恩委員長は昨年4月、朝鮮労働党第7期中央委員会第3回総会を招集し、国家の重要決定を行った。それは、それまでの「核と経済」という「並進路線」をあっさり放棄し、「核開発は完了したので、今後は経済建設に専念する」と定めたのだ。

 以後、金委員長は、朝鮮人民軍をあからさまに軽視してきた。北朝鮮の長年の「仮想敵国」であるアメリカと北朝鮮が、ともに敵国でなくなれば、これまでのような強大な軍事力を有している必要がない。というより、今後の経済開発にとって、軍はむしろ「お荷物」になってくる。

 金正恩委員長は、これまで長く朝鮮人民軍が独占してきた軍需経済などの既得権益を剥ぎ取ることを、使命にしてきたのである。だから金委員長は、内心では軍を恐れている。恐れているから、空軍が管理している自分の専用機には乗らず、鉄道省が管理している専用列車に乗って、はるばるハノイまで出かけて行ったのである。

 3月5日には韓国の国家情報院が国会で、「北朝鮮北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場で、撤去した施設の一部を復旧する動きが把握された」と報告した。朝鮮人民軍は今後、核開発もミサイル開発も復活させるよう、金正恩委員長に強い圧力をかけていくだろう。

 朝鮮人民軍にクーデターを起こされないためには、金委員長はある程度、軍の意向に沿った国家運営をしていかねばならない。一年数カ月の「平穏の時」を経て、北朝鮮が再びキナ臭くなってきた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55681


 

大恥かいた金正恩、自暴自棄で不測の事態も
大きな期待が一転失望と恥辱に変った時、ボンボンは・・・
2019.3.7(木) 西村 金一
金正恩氏が平壌に到着 国営メディア報道
越北部ランソン省のドンダン駅で列車に乗り込む前に手を振る北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2019年3月2日撮影、資料写真)。(c)Vietnam News Agency / AFP〔AFPBB News〕

 ベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談では、北朝鮮の非核化とそれに見合うおみやげ(制裁解除、終戦宣言、支援)を決めるという合意ができず、したがって共同宣言に署名できなかった。

 客観的に見れば、両国とも相手国の狙いが明確に分かったことは、交渉の2歩や3歩の前進だと言える。

 今回、米朝が合意できなかった部分は、北朝鮮が非核化を完全に実施できるかどうかの核心部分である。

 それは、北朝鮮が進めてきた大量破壊兵器すべてのリストを提供することである。特にウラン濃縮施設がリストに入っていることと、その査察と廃棄が問題だ。

 このほかに私が注目しているのは、今回の会談で北朝鮮国家の期待に応えられず、金正恩委員長が人生で「初めての屈辱」を味わったことだ。

 北朝鮮の今後の方向性や戦略は、「金正恩委員長が受けた屈辱に対する怒りが抑えられるのか」によって大きく異なるのではないかと考える。

 どう転ぶにせよ、金正恩委員長の腹一つで決まるだろう。だから読めない。

1.北朝鮮は計り知れない期待を抱いていた
 駅のホーム一面に真っ赤な絨毯を敷いて、盛大な見送りを受け、金正恩委員長は特別列車に乗り込んだ。

 今回のような盛大な見送りの写真は、これまで朝鮮中央通信に掲載されなかったと、私は記憶している。

 同通信は、「敬愛する最高指導者が第2回朝米首脳の対面と会談で立派な成果を収めて、無事に帰国することを心から願った」と期待を込めて書いた。

【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏
北朝鮮の国防科学院の試験場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信配信(2018年11月16日配信、撮影日不明)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕

 金正恩委員長はベトナムに向かう特別列車の中で、これから得られる成果を夢見ながら、列車から見える街並みや風景を見て、一駅一駅通過するたびに、北朝鮮はもうすぐ中国の都市や町のようになるだろうと思いを巡らせていたのだろう。

 会談が始まると、朝鮮中央通信は、「新しく到来する平和・繁栄の時代」「みんなが喜ぶ立派な結果が出る」「成功を祈願する全世界の関心と期待」といった表現を使用して、会談で大きな成果が出ることを期待しているという風潮であった。

 ドナルド・トランプ米大統領の「我々は極めて立派な関係を結んでおり、大いに成功した会談になると確信する」といった言葉も報じた。

 労働新聞は、金正恩委員長の今回の外遊に「全国が沸き返っている」とも伝えた。

 トランプ大統領も金正恩委員長に、ことあるごとに「あなたの国には、経済的にものすごい潜在力がある。あなたには、国の素晴らしい未来が待っているものと思う」と言ってきた。

 金正恩委員長は会談前から、トランプ大統領のお世辞に完全に舞い上がってしまっていたようだ。

2.直接交渉で大胆な決断を期待
 金正恩委員長は新年の辞で、「米朝関係が今年、良好な関係を築くことができる。双方の努力によって今後、必ずよい結果がもたらされると信じたい」と述べた。

 会談の初日、金正恩委員長は「素晴らしい会談、素晴らしい再開が用意されることになったのは、トランプ大統領閣下の大胆な政治的決断によるものだと思います」と述べた。

 北朝鮮はこれまで何度も、金英哲氏を特使としてワシントンまで行かせ、トランプ大統領へ直接、金正恩委員長の親書を渡してきた。それをトランプ大統領は至極喜んだ。

 北朝鮮は、実務協議に参加するマイク・ポンペオ国務長官やジョン・ボルトン大統領補佐官を騙すことはできないが、直接トップ会談で、トランプ大統領と交渉すれば、騙せると考えていた。

 そして、トランプ大統領が罠に嵌って大胆な決断をしてくれると期待したのだと思う。

 会談初日の「自信はあるか」との記者の質問には「予断はしない、私の直感では良い結果が出ると信じている」と答えた。

 制裁解除と終戦宣言の成果を欲しがり、前のめりになっていたのは金正恩委員長だった。

 金正恩委員長の経験の少なさ、中国や韓国とは上手くいったという実績が、甘い期待を持たせることになったのではないだろうか。

3.会談が決裂した最大の理由は何か
 トランプ大統領は会談後の記者会見で「北朝鮮は経済制裁の全面解除を要求してきた」と明かしたうえで、米国が寧辺の核施設や北朝鮮が公表していない核関連施設の査察や廃棄を求めたところ、金正恩委員長氏が難色を示したため「立ち去ることを決めた」と述べた。

 米朝会談で合意に至らなかったのは、「北朝鮮の要求は全経済制裁解除だったから」とトランプ大統領やポンペオ国務長官が述べている。

 私は、実質はウラン濃縮施設のリストアップと廃棄を求めたことが最大の理由だったと考えている。

 ウランの濃縮については、遠心分離機を数千台揃えさえすれば、地下の施設だけでなく通常の工場でも発見されずに核物質を製造することができる。

 北朝鮮は、ウラン濃縮施設について明確にリストに挙げて、隠蔽して核物質を製造することはないということを表明しなければならない。

 かつて北朝鮮は、ウラン濃縮の兆候を数多く指摘されても「やっていない」と主張してきた。

 だが、隠し通すことが不可能になり、あるいは主張した方が国益に繋がると判断した場合には、「うそ」を撤回して「事実」を表明してきたという経緯がある。

 米国はウランの濃縮問題について、北朝鮮に隠され騙されてきた。今回も同じことが繰り返されれば、トランプ大統領は「能なし大統領」と呼ばれることになる。

 トランプ氏はこれだけは避けたいところだ。

4.金正恩委員長の失望と今後の予測
 北朝鮮メディアは会談直前、北朝鮮人民が経済再建を待ち望む大きな期待を報じたのだが、結果は予想に反して得るものは何もなかった。

 会談後、ベトナム公式訪問の映像を見ると、金正恩委員長の魂が抜けたような、ぼーっとした無表情の写真が散見された。

 このような写真が出たのは、父の金正日総書記の葬儀の時以来で、金正恩委員長が北朝鮮のトップに就いてからは初めてではないだろうか。

 金正恩委員長にとってはそれほどの衝撃だったと見ていい。

 金正恩委員長は、ベトナムから帰りの特別列車に戻ってから、怒り狂っていたかもしれない。

 今回の会談では、これまで経験したことがないほどの屈辱を味わわされたものと思う。

 金正恩委員長は、北朝鮮金一族の後継者として大事に育てられてきたから、これまで屈辱というものを受けたことがないのではないだろうか。

 金正恩委員長は大きな恥をかかされたわけだから、今回米国の手の内を読み取れなかった者たちへの粛清は免れないだろう。

 金正恩政権内部では、北朝鮮への経済制裁が継続されるという前提で、今後の対米戦略を大転換するほどの見直しをしているに違いない。

 短期的な対米戦略としては、以下の3つのいずれかであろう。

@引き続き友好的な戦略を進めるのか

A再び2017年と同じような恫喝する瀬戸際戦略に逆戻りするのか

B2つの中間として友好的だが恫喝の兆候だけ見せる戦略を取るのか

 対韓戦略としては、米国の動きを無視して友好関係を加速させる、南北関係を悪化させて韓国を動揺させる、ことなどが考えられる。

 長期的に見ると、もしも交渉が進展しなければ、再び過激な挑発に進む可能性が高いとみるべきであろう。

 予想を超える事態が起こる予感もしないわけではない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55664

 
米朝首脳会談決裂でも、ご褒美を手にした金正恩
米韓合同軍事演習の終了に大喜び、日韓関係はさらに悪化も
2019.3.7(木) 渡部 悦和
【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏
元山の靴工場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信配信(2018年12月3日配信、撮影日不明)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS 〔AFPBB News〕

 米朝首脳会談が終了した直後の3月2日、米国のパトリック・シャナハン国防長官代行と韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相が、毎年春に実施していた大規模な米韓合同軍事演習を終了すると発表した。

 この米韓合同軍事演習は、実働演習(実際に部隊が行動する演習)である「フォールイーグル(Foal Eagle)」と指揮所演習(コンピューターや指揮統制通信システムを利用した指揮所の演習)「キーリゾルブ(Key Resolve)」である。

 今後は規模を縮小した新たな訓練に衣替えすることになる。

 これら2つの演習は米韓合同演習における最大の演習であり、昨年8月に予定されていた乙支(ウルチ)フリーダムガーディアンも中止されたので3つの大きな演習がすべて中止されることになる。

 大規模演習すべての中止は、一般の人が考える以上に各方面に大きな影響を与えることになる。

 当然、我が国も大きな影響を受けることになるので、今回の演習中止の影響について考察してみた。

トランプ大統領のツイート
 ドナルド・トランプ大統領は3月4日、次のようにツイートした。

 「軍事演習(私はウォーゲームと呼ぶ)については金正恩委員長との会談で話したことはない。フェイク・ニュース!」

 「(米韓合同軍事演習の中止に関しては)ずっと前に決断していた。なぜなら、それらの“ゲーム”にはあまりにも多額の金がかかるし、膨大な経費は返済されないからだ」

 米韓合同軍事演習でも最も大規模で最重要な演習を蔑むかのように「ゲーム」と呼び、そんな金食い虫のために多額の金は使えないというのだ。

 トランプ大統領は、米国が70年以上の年月をかけて築き上げてきた米国の前方展開戦略に関する基本的な認識を欠いている。

 米国の前方展開戦略は、米国の国益に基づき世界中で構築してきた同盟関係や友好関係の根拠になっている。

 日本に在日米軍を配置しているのも、韓国に在韓米軍を配置しているのも、米国の国益に沿った措置であり、米国主導の世界秩序を支える貴重な存在だ。

 しかし、トランプ大統領にとって、同盟関係は負担以外の何物でもないかのように振る舞っている。

 米国にとっての金銭的な損得のみで同盟関係を判断することは、将来に禍根を残すように思えてならない。

 米国の著名なシンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のリチャード・N・ハース会長は、3月4日付のツイッターで、次のように批判している。

 「(演習費用の)計算は意味をなさない。米国の国防費7000億ドルの中の(米韓合同演習経費)1400万ドルを節約することにより次のような問題が発生する」

 「米軍の即応性が低下する。米国の日本や韓国との同盟関係を弱体化させる。北朝鮮がリスクを取りやすくなる。韓国の北朝鮮に対する経済制裁破りに導く。日本が米国への依存を再考するようになる」

 このハース会長の指摘は本質をついていると思う。

「フォールイーグル」と「キー・リゾルブ」の価値
 そもそも、今回の中止の対象になったフォールイーグルとキーリゾルブとはいかなる意義を有する演習であろうか。

 まず、フォールイーグルは、世界最大の実動演習と言われていて、後方地域の安全確保・安定作戦、前方地域への重要物資の推進、特殊作戦、地上機動、水陸両用作戦、戦闘航空作戦、海上作戦、特殊作戦部隊への対処作戦などの広範な作戦を実施する。

 米軍の参加者は数万人、韓国軍の参加者は数十万人(最大で50万人参加)であり、いかに大規模な演習であるかが分かる。

 次いで、キーリゾルブについて説明する。

 キーリゾルブは、実動演習ではなく指揮所演習であり、韓国防衛を支援する米インド太平洋軍の作戦計画に基づいて行われている。

 指揮所演習の主たる目的は、指揮官の指揮統制能力の向上、幕僚の幕僚活動の能力の向上、米軍と韓国軍の調整能力の向上などだ。

 フォールイーグルは2001年以降、キーリゾルブの前身であるRSOI(Reception, Staging, Onward movement, and Integration)演習と一体となって実施されることになった。

 RSOIの各段階を説明すると、米軍を韓国内に受け入れる(reception)段階、韓国内で部隊と兵器を合体させる(staging)段階、部隊を朝鮮半島内の所定の戦略的位置に移動させる(onward movement)段階、既に到着した部隊と新たに到着した部隊を統合する(integration)段階がある。

 つまり、RSOI演習では、米国本土などから到着する米軍を受け入れてからすべての部隊を戦力発揮できる状態にする段階までを訓練する。

 このRSOIは、2008年にキーリゾルブと名称変更になったために、それ以来フォールイーグルとキーリゾルブが一体となった大規模演習が行われてきた。

金正恩委員長が最も恐れた演習
 北朝鮮との交渉の歴史を振り返って明らかなことは、「力を信奉する北朝鮮には、力を背景とした交渉しか機能しない。北朝鮮に対して融和的な交渉は機能しない」という事実だ。

 トランプ大統領は2017年末まで、「北朝鮮に対する最大限の圧力をかける」と主張し、その通りに行動してきた。

 その最大限の圧力路線こそが金正恩体制に大きな影響を与え、核実験の中断や弾道ミサイル発射実験の中断をもたらしたと思う。

 最大限の圧力の中で最も重要な手段が「国連の経済制裁」と軍事的圧力であった。

 軍事的圧力の中で大きな効果があったのは大規模演習フォールイーグルとキーリゾルブの実施である。

 金正恩委員長が最も恐れた事態は、演習であるフォールイーグルとキーリゾルブがそのまま実戦に移行し、米韓連合軍が北朝鮮を攻撃する事態だった。

 金正恩委員長は、自らが殺害される事態を恐れるからこそ、強硬にこの大規模演習に反対してきたのだ。この合同演習を中止することは、金正恩委員長に大いなる安心感を与えることになる。

北朝鮮の非核化がますます困難に
 まず北朝鮮が核ミサイルを放棄することはないことを再認識すべきだ。

 金正恩委員長は、核ミサイルの保有が自らの体制を維持する最も有効な手段であると確信している。だから今まで米国の軍事的圧力に抵抗し、国連の経済制裁を受けても核ミサイルの開発と保有を続けているのだ。

 フォールイーグルとキーリゾルブが中止になり、大きな脅威がなくなった金正恩委員長が北朝鮮の完全な非核化に応じるとはとても思えない。

 トランプ大統領が期待する「大規模演習中止が緊張緩和をもたらし、結果的に北朝鮮の非核化を推進する」とは私にはとても思えない。

 米国の北朝鮮への対応は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」という「北朝鮮に対する最大限の圧力路線」に戻るべきだと私は思う。

米韓連合軍への悪影響
●演習をしない軍隊は使い物にならない

 訓練や演習をしない軍隊は、有事の際に使い物にならない。

 私は自衛隊の現役時代、「練磨無限」を合言葉にして訓練や演習に励んできた。訓練に訓練を重ねることにより、有事に能力を発揮する精強な部隊が出来上がるという確信があった。

 自衛隊での勤務が長くなり、階級が高くなって連隊(約1000人規模)、師団(数千名規模)、方面隊(数万規模)を指揮する立場になって初めて大部隊の演習の重要性が分かってきた。

 若い小隊長や中隊長の時代にも確かに訓練に励み、その階級における訓練で多くのことを学んだが、大部隊を指揮統率するためには別の能力が必要だと痛感したものだ。

 その能力を鍛えるのが大部隊の演習なのだ。

 「フォールイーグル」や「キーリゾルブ」は、米韓合同演習で最大の演習であり、米軍と韓国軍の大部隊指揮官や幕僚の能力を高める非常に貴重な機会だ。

 その演習の機会がなくなることは、間違いなく米軍や韓国軍、特に韓国軍の能力を低下させる。

●米韓合同の有事作戦計画の改善が難しくなる

 米韓合同軍は、保有する有事作戦計画を常に改善し続けていかなければいけない。

 その改善の有効な手段がフォールイーグルとキーリゾルブなどの大規模演習を実施し、そこから改善の教訓を得ることだ。

 すべての大規模演習を中止する悪影響はあまりにも大きいと言わざるを得ない。

●米韓同盟の形骸化

 米韓同盟を形骸化していく可能性がある。在韓米軍の存在意義を低下させ、将来的な撤退に導く可能性がある。

我が国が覚悟しなければいけないこと
●キーリゾルブの前身のRSOIについて説明したが、キーリゾルブでも、米国本土などから来援する米軍を受け入れてから全ての部隊を戦力発揮できる状態にする段階までを訓練する。

 実は、米本土から展開する米軍の一部は、日本の領土や領海を経由して朝鮮半島に展開する。

 その際に、在日米軍がその作戦を支援することになる。つまり、大規模演習が中止になることは、在日米軍の任務役割にも影響を与えることになる。

●トランプ大統領の日米同盟に関する言動には細心の注意を払わなければいけない。

 日米同盟について、金銭的な損得勘定で様々な要求をしてくることを覚悟しなければいけない。

 まず考えられるのが日米共同訓練についても「金がかかるから中止する」と言いかねないし、在日米軍の削減や在日米軍駐留経費の負担増額を要求してくる可能性もある。

 さらに、日米貿易赤字の解消を強烈に求めてくることも覚悟しなければいけない。日米同盟の根幹が問われる事態を覚悟しておいた方がいいかもしれない。

●大規模合同演習の中止により米韓同盟の存在理由が希薄化し、在韓米軍の存在意義が減少してくると、いずれは在韓米軍撤退が現実のものとなってくる可能性がある。

 在韓米軍が存在しているからこそ日米韓の軍事協力も可能である分野が存在する。

 例えば、朝鮮半島の状況が悪化し、在韓日本人の避難が必要な場合、自衛隊はNEO(邦人避難作戦)を実施するが、日韓のみの二国間では韓国側の協力は難しい。

 そこに在韓米軍がいると、米軍と協力してNEOを行うことが可能になる。在韓米軍がいなくなると自衛隊のNEOは非常に難しい作戦になるだろう。

 また、在韓米軍が撤退した状況下では、現在日韓で締結している軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も破棄される可能性が高い。

 いずれにしろ、日韓関係はさらにぎすぎすしたものになるだろう。

●3月1日付のJBpress「決裂すべくして決裂した米朝首脳会談だが・・・(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55640)」で私は次のように書いた。

 「今のままでは、北朝鮮の核兵器、弾道ミサイル、化学兵器、生物兵器が残ったままになり、拉致問題も解決しない厳しい状態が続く可能性が高い」

 朝鮮半島の情勢は、我が国にとって望ましくない方向にどんどん進んでいる。

 思い出すのは、英国の第3代パーマストン子爵ヘンリー・ジョン・テンプルの「永遠の同盟国もなければ、永遠の敵対国もない。あるのは永遠の利害関係のみだ」という有名な格言だ。

 いまこそ我が国の本当の実力が試される時だ、国を挙げてこの厳しい状況を打破する以外にない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55677

ドナルド・キーン氏の恩人はCIA東京支局長だった
日本文学の道を選ぶように勧めたポール・ブルーム氏
2019.3.7(木) 新潮社フォーサイト
新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
インタビューに答えるドナルド・キーン氏(2015年12月28日撮影、写真:AP/アフロ)
(文:春名幹男)

 日本文学に偉大な貢献を為し、最後は日本人として亡くなったドナルド・キーン氏(享年96)。本当に希有な元アメリカ人だった。

 私は約20年前、一度だけ会うことができた。彼の自宅で貴重なインタビューに応じてくれた。

 その時にお借りして複写した写真が拙著『秘密のファイルーCIAの対日工作』(新潮文庫)に掲載されている。写っているのは、ポール・ブルーム氏。戦後の1948年、初代の米中央情報局(CIA)東京支局長として赴任した。吉田茂首相とも親しい伝説的なスパイだった。真珠湾攻撃前の1941年夏、米ノースカロライナ州ブルーリッジ山脈の谷あいでくつろぐブルーム氏をキーン氏が撮った写真である。

日本文学の道を選ぶよう勧めた
 2人は前年、コロンビア大学で知り合った。ブルーム氏は横浜・山手の生まれで当時BIJ(Born In Japan)と呼ばれた。フランス人民戦線のレオン・ブルム首相の遠縁で、父はフランス人、母はアメリカ人でいずれもユダヤ系だった。一家でフランスに戻ったが、ドイツ軍のパリ入城でニューヨークに逃れた。40歳を過ぎていたが、日本語を学び直そうとしていた。

 世界各地を旅していたブルーム氏はまだ18、19歳のキーン氏に自分の経験を話した。実は日本文学の道を選ぶよう勧めたのは、ブルーム氏だった。ブルーム氏との出会いが、キーン氏の転機となった。

「フランスで育ったアメリカ人はたくさんいる。日本のことをよく知っているアメリカ人は少ないので日本文学をやった方が君のためになる」と言われたという。

 この2人ともう1人のアメリカ人で日本と中国を研究していた人物、そしていわゆる「帰米2世」(米国に生まれ、中等教育を日本で受けて米国に戻った2世)の猪俣正という青年の4人で合宿中に撮ったものだった。

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 しかし、日米開戦。ブルーム氏はワシントンに向かい、発足したばかりの戦略情報局(OSS)に入り、第2次世界大戦の末期はスイス・ベルンで、後のCIA長官アレン・ダレスの下で終戦工作に従事した。

日本軍国主義と戦った
 他方、キーン氏は海軍日本語学校で日本語を学び、戦時中はその日本語能力を使って、各地で日本軍捕虜の尋問に携わった。

本コラムは新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」の提供記事です。フォーサイトの会員登録はこちら
 その時の日本語教官に、邦字紙『羅府新報』記者や『朝日新聞』ロサンゼルス通信員をしていた1世の記者、坂井米夫がいた。坂井は終戦前の1945年にOSSに入り、「日系人要員を日本国内に潜入させ、天皇に無条件降伏を直訴する」という奇抜な計画を立案した。

 当時の日本軍人は戦陣訓で「生きて虜囚の辱めを受けず」と教えられており、捕虜になってどう対応すべきか分からず、キーン氏らの質問に対して、日本軍の内情をすらすら答えたようだ。

 いずれにしても、ブルーム、キーン、坂井の3氏らは日本軍国主義を嫌い、戦った人たちだった。

 戦後、1947年にCIAが発足、ブルーム氏らがCIA東京支局を設立した。

 ブルーム氏は文人肌で、欧米で日本について書かれた稀覯本(きこうぼん)を含む文献を収集するのが趣味だった。現在、横浜開港資料館にブルーム・コレクションが置かれている。

 他方、三島由紀夫らとも交遊、戦後はCIAの仕事もやりながら、時折キーン氏らとも会っていただろう。

 しかし、キーン氏は自分からブルーム氏との関係を明かすことはほとんどなかった。私には、懐かしい表情を浮かべて話してくれたが、インテリジェンス関係の人物のことを軽々に話して変な陰謀説に巻き込まれるのを避けたかったのかもしれない。


春名幹男
1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55653  

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コメント
1. 2019年3月12日 13:45:05 : LY52bYZiZQ : aXZHNXJYTVV4YVE=[234] 報告
軍事大国化と海外膨張野望の明確な発露 朝鮮中央通信社論評

【平壌3月11日発朝鮮中央通信】黒いものも白いと言い張る日本の破廉恥さが、またもやあらわになった。

先日、首相の安倍が衆議院の公開席上に現れて海上「自衛隊」の護衛艦いずもの空母化に関連して「いずもは空母に該当するものではない」と図々しく言いふらした。

今、安倍の荒唐無稽(こうとうむけい)な詭弁に世人は驚愕を禁じえずにいる。

世界の広範なメディアが主張しているように、いずもはいろいろな面から現代の空母と類似したり、果ては先んじている。

最多14機のヘリを搭載できるだけでなく、同時に5機を離着陸させられるいずもには、離着陸甲板、格納庫、飛行機昇降機など、空母に必要なものが備えられており、その現代化の水準もたいへん高い。

すでに、いずもの進水の時から軍事専門家らはこの艦船は防衛を目的とするヘリ搭載型護衛艦ではなく準空母であり、いつかは先制攻撃能力を持つ空母に変身しかねないと評した。

F35Bのような最新鋭戦闘機を搭載できる能力まで備えることになるいずもが、空母ではないという日本の強弁はこんにちの明るい世の中で絶対に通じない。

それは、「大東亜共栄圏」の昔の夢をなんとしても実現してみようとする日本反動層の執ような軍事大国化策動の一環であり、根深い再侵略野望の明確な発露である。

好戦的な安倍政権が発足した後、世界が懸念していた日本の軍事大国化と海外膨張は日を追って現実となっている。

「周辺有事法」「テロ対策特別措置法」など、海外軍事進出のための法律的土台を築いたのに続き、「自衛隊」の存在を合法化するための改憲策動に本格的に取り掛かった。

新しい「防衛計画大綱」で自国の安全保障環境が著しく速いスピードで重大になっているとうんぬんし、今後5年間に防衛費を従前の同じ時期に比べて6.4%大幅に増やして「自衛隊」武力の現代化と実戦化をさらに早めようとしている。

これに、敗戦国として憲法上禁止された空母の保有まで遂げられる場合、それは安倍政権が追求してきた戦争を行える国家への野望が実現されることを意味する。

日本が世人の指弾を受けてまで、自分らの無理押し主張を弁護する根本理由がここにある。

先制攻撃能力を備えたいずもなどに再侵略熱気によって熱くなったサムライの後えいを乗せて20世紀のように「旭日旗」を翻し、銃弾・砲弾を撃ちながら世界を意のままにばっこしようとするのが、安倍一味の変わらぬ野望である。

しかし、野望の終着点がどこかは日本の恥ずべき敗戦史がはっきりと実証するであろう。

国際社会は、平和破壊勢力である日本の軍事大国化と海外膨張策動を警戒心をもって注視している。−−−

http://www.kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf

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