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歴史的視点から見た「米朝首脳会談」の本質 朝鮮半島の歴史が暗示する“金正恩の末路” 
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投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 11 日 14:58:16: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

WEDGE REPORT

歴史的視点から見た「米朝首脳会談」の本質 朝鮮半島の歴史が暗示する“金正恩の末路”
2019/03/10

樋泉克夫 (愛知県立大学名誉教授)


写真:AFP/アフロ
 2月末のハノイにおける米朝首脳会談は、トランプ大統領にとっては成功であったが、金正恩委員長にとっては失敗だったのか。その逆だったのか。両者にとって成功だったのか。あるいは共に失敗だったのか。互いが相手を甘く見てハードルを上げすぎたのか――両陣営関係者のみならず関係各国においても喧々諤々・甲論乙駁の議論が見られ、その評価は定まりそうにない。

 場合によっては米朝平和宣言にまで踏み込むのではないかなどと異様なまでに期待値が高かっただけに、我が国メディアの大勢に漂う“落胆ぶり”は目を覆うばかり。米朝両国関係は一気に冷え込むだろうとヤケクソ気味な極論まで聞かれるほどだ。毎度のことながら、根拠薄弱なままに希望的観測を打ち上げすぎるのではなかろうか。

 考えてみれば、1950年6月に勃発した朝鮮戦争以来、じつに70年近くも時に敵対感情を滾らせながら相互不信を募らせ続けてきた両国である。昨年6月のシンガポールに続き今回のハノイの2回の会談において最高首脳が握手したからといって、その程度の関係で互いが腹を割って話し合えるほどに相手を信頼できるなどと考えるのは、余りにも現実離れしている。情緒的にすぎるとしか言いようはない。

「敵対」を「友好」に転換させたキッシンジャーの手腕
 かつて「外交とは交渉当事者の個人的信頼感の醸成が大前提である」といった趣旨の発言をしたのは、1972年2月のニクソン大統領訪中を実現させたキッシンジャー大統領補佐官だったと記憶する。

 彼がニクソン大統領と共に北京に乗り込み、周恩来首相以下の中国政府首脳との間で交わした機密会談の内容を記録した『ニクソン訪中機密会談録(増補版決定版)』(名古屋大学出版会 2016年)には、敵対していた米中間の信頼醸成に向けて(ということは中国側を信用させるために)、アメリカは当時の中国にとっての最大の脅威であった「ソ連社会帝国主義」が中国に向けて展開していた軍事情報を最大漏らさず伝えたと記されている。

 じつはこの会談の3年前の1969年3月、中ソ両国は両国国境を流れるアムール川(黒龍江)支流のウスリー川の中州に位置するダマンスキー(珍宝)島の領有権をめぐって、全面戦争一歩手前の軍事衝突を繰り返した。中国側は国内に向けてソ連軍を押し返し勝利したと伝えているが、やはり近代装備のソ連軍の脅威をヒシヒシと感じたに違いない。

 おそらく人民戦争の時代は過ぎ去ったことを自覚したからだろう、毛沢東はソ連軍による核使用の全面攻撃まで想定し北京中心部に防空壕を建設する一方、「三線建設」と称し兵器工場を中心とする主要国防施設を内陸部に移設したほどだ。であればこそ相変わらず国民には「打倒美帝国主義」を叫び続かせながらも、“敵の敵は味方”の論法に従って、毛沢東は様々な方法を駆使してホワイト・ハウスに「ニクソン訪中歓迎」のサインを送ったのである。当時の中国政府にしてみるなら、アメリカが収集したソ連軍に関する最高軍事機密は喉から手が出るほどに欲しかったはずだ。

“虎の子の軍事機密”を提供することで、敵対から友好へと転換させようと格闘するアメリカの対中外交の“本気度”を示したということか。

「ビジネス」と「外交」は違う

 かくしてホワイト・ハウスと中南海の信頼関係が築かれ米中友好関係がスタートしたわけだが、はたして昨年来の一連の対北朝鮮交渉に当たって、トランプ大統領=ポンぺオ国務長官コンビは、かつてニクソン大統領=キッシンジャー補佐官コンビが中国政府に示したような信頼醸成への作業を試みていたのであろうか。

 トランプ大統領の金正恩委員長に対する評価が「ロケット・マン」から「クレバーなグッド・ガイ」に180度の転換を見せたとしても、それが単なるリップ・サービスの域を出ないなら、やはり北朝鮮としてもアメリカを信用するわけにはいかないだろう。

 ハノイ会談2日目、対北朝鮮強硬論者のボルトン大統領補佐官が北朝鮮国内の核・軍事施設に関する最高機密を提示したことで、金正恩委員長が席を立ち、交渉は決裂したとも伝えられる。だが、強硬姿勢一辺倒では“窮鼠猫を噛む”といった状況を招きかねない。やはり一寸の虫にも五分の魂である。相手の「五分の魂」をクスグルような硬軟織り交ぜた措置が必要ではなかろうか。これを企業家出身大統領が得意とするディールというのなら、ビジネス上の取り引きと外交交渉とが同じレベルの話になってしまう。ビジネスにおける駆け引きには外交と表裏一体の国防(=国家の歴史・矜持・栄誉の守護、国民の生命・財産の防衛)という側面がないことを、やはり忘れてはならない。

経済発展で独裁体制は崩壊するという“幻想”
 トランプ大統領は核を放棄した場合の北朝鮮経済の大いなる可能性を公言する。だが、金王朝の継続による経済発展を想定しているのか。それとも経済発展によって生活向上が果たされることで国民が民主化の方向に動き、将来の金王朝の独裁体制崩壊を思い描いているのか。

 かりに経済発展の果実の多くが金王朝とそれに連なる特権階層を潤すだけで終わることになったら、最悪の場合、国民にとっての将来は現在と大差はなく、悪夢以外のなにものでもないだろう。一方、経済が豊かになれば独裁体制は崩れ自ずから民主化に向かうと想定しているなら、それが幻想にすぎないことは、1978年末の対外開放以後の中国が教えてくれる。「中国の特色を持った社会主義」ならぬ「金王朝三代の特色を持った社会主義」を朝鮮半島に定着させかねない。独裁体制下の市場経済は独裁の基盤強化に繋がりこそすれ、民主化に向かうことが至難であることは、隣国の中国で実証済みのはずだ。

 はたしてトランプ大統領は北朝鮮にどのような将来像を描いているのか。もっとも、同大統領の一連の北朝鮮外交が大統領再選を目指す選挙戦略の一環に過ぎないというのなら、金正恩委員長のみならず北朝鮮国民にとっては“いい面の皮”といったところだろう。

日本人には理解しにくい“外交交渉の現実”

 相手を全く信頼しない双方が交渉した典型例として思いつくのは、やはり中国における国共対立だ。

 1945年8月15日の日本敗北を機に、将来の中国の在り方をめぐって国民党と共産党が激しく対立した。アメリカ政府が仲介役を務めたこともあるが、最終的には両党を率いる?介石と毛沢東が重慶で会談し、次代の中国の指導者は?介石(=国民党)であることを骨子とする協定――結ばれた1945年10月10日に因んで「双十協定」と呼ぶ――を結んだ。だが、1924年の国共合作以来、互いに騙し騙された関係を続けてきただけに、双方が相手を全く信頼してはいなかった。時間稼ぎに協定を結ぶ一方で、互いに相手を打倒すべく軍備を整え、戦端が開かれる時を待っていたのだ。

 以後、共産党史観で「国内解放戦争」と呼ぶ国共内戦が1946年6月から1949年10月の中華人民共和国建国前後まで続くことになる。

 この間の農村における共産党の戦いの正しさを国民に周知徹底すべく編まれ、文化大革命期に盛んに公演された革命現代京劇の代表作の1つである『杜鵑山』では、戦いを進めるうえでの方針に関して「談々打々、打々談々」なるセリフが飛び出す。いわばテーブルに着く(「談々」)のも、戦場でドンパチ撃ち合う(「打々」)のも、最終目的である勝利を手にするために連続する戦術の一環である。戦場での戦いの主導権を握るために話し合い、テーブルでの交渉に強い立場で臨むために戦場での戦いを有利に展開し、最終勝利に繋げようというわけだ。

 日本人は「打々」が終わったところで「談々」が始まり、双方が“不可逆的”に戦場に戻らないことを前提にテーブルに着くと考えがち。だが、世界はどうもそうではないらしい。

「マラソン交渉」が予想されるワケ
 かりに米朝交渉に「談々打々、打々談々」を当てはめるなら、アメリカにとっての「打々」は制裁の強化であり、北朝鮮にとってのそれはミサイル発射であり核実験となろうか。おそらく今後とも周辺を危機的状況に巻き込みながら、米朝両国は外交能力の限りを尽くしマラソン交渉を続けることになるだろう。だがアメリカにせよ北朝鮮にせよ一方的に相手を屈服させることは出来そうにない。それというのも米朝両国の都合(国益)だけで北東アジアを左右することはできないからだ。

 北東アジアを巡る歴史、地政学、国際関係などを考慮する時、以下を確認しておくことも必要ではなかろうか。

1)北朝鮮主導にせよ韓国主導にせよ、核を保有したままに朝鮮半島が統一されることは日本、中国、アメリカ、ロシアにとって受け入れ難い。

2)朝鮮半島が統一されたとして、この4カ国のうちの1カ国だけが統一された朝鮮半島と“特殊な関係”を持つことは許されない。

3)朝鮮戦争以来、中朝両国は必ずしも「血の同盟」で結ばれていたわけではないし、これからもそうであるはずだ。

4)北朝鮮の経済発展を考えた時、現実的に資金提供をできるのは好むと好まざるにかかわらず日本のみだろう。

5)その日本と北朝鮮の間には「拉致問題」が解決への糸口すら見つからずに残されたままだ。

6)核は金王朝を支える唯一最強の手段である。

 おそらく、以上を同時に満足させるような“多元方程式の解”は目下のところ見つかりそうにない。であるとするなら関係各国は相当長期に亘るマラソン交渉を覚悟する必要があるはずだ。

朝鮮半島の歴史が暗示する“金正恩の末路”
 同じ専用列車の長旅ながら威風堂々たる往路に較べ、復路は意気消沈――メディアが伝える印象は全く違っていた。だが昨年のシンガポール以来、ここまで西側メディアに“露出”してしまった以上、金正恩委員長は以前のように“神秘のベール”の内側に閉じこもったままではいられないだろう。やはり国際社会に向けて何らかのメッセージを発し、関係諸国との関係再構築を模索し続けるのではないか。

 そこで浮かんでくるのが、朝鮮半島の独裁者が激変する国際社会にどのように対応するのかという問題である。金正恩委員長の“次の一手”を考える時に思い至るのが、李氏朝鮮第26代国王で大韓帝国初代皇帝(在位1864年~1907年)に就いた高宗(1852年〜1919年)と閔妃(明成皇后/1851年〜95年)の2人の最高権力者の振る舞いである。

 清国朝貢体制下に置かれている以上、国際関係における選択肢は極めて限られたものだった。そのうえ相次ぐ宮廷内クーデターと内乱、さらには日清・日露戦争を経て日韓併合へと続く歴史の奔流に、高宗と閔妃は時に道化振りを発揮しながらも立ち向かった。そこで2人の事績を描いた『高宗・閔妃』(木村幹 ミネルヴァ書房 2007年)を引用しながら、彼らの“獅子奮迅の姿”を追ってみたい。

 高宗の実父である大院君は、高宗即位から10年間の大院君執政期と呼ばれる時期に「朝鮮王朝において最も大きな権力を振るった」。だが財政政策に失敗したことで「農村のさらなる窮乏化をもたらし」てしまう。「清国やロシア国境に近い地域では、国境を越えて逃亡する農民が続出し、王朝経済の崩壊は、国防面において問題をもたらすことになる」。ということは「脱北」という現象は金王朝三代の治世だけに起こったわけでもなさそうだ。

 皇子である義親王は妃より格下の貴人である張氏との間に生まれたことから宮廷外で育てられただけでなく、高宗のお膝元の「漢城府を離れて日本やアメリカ等、海外を点々とすることを強いられた。その意味で、同じ皇子であっても、義親王の立場は、兄である皇太子や弟である英親王より遥かに劣るものであった。/高宗もまた、海外留学中に浪費癖のあった義親王を快くは思っていなかった」。

 ここに記される義親王の境遇は長く海外に留め置かれた金正日の実弟を思い起させるに十分であり、また海外留学中の浪費癖が原因で父親から「快くは思われていなかった」という点は一昨年2月にマレーシアで暗殺された金正男を連想させるから不思議な因縁だ。

 高宗が勅令で自らを大韓民国の陸海軍を統括する「大元帥」と定めた1898年、「自らの下で皇太子が『元帥』としてその一切の統率に当たることを明言した」。同時に「『非常事態が発生したり、出征しなければならない状態が起こった場合を除き』、皇太子以外の皇子、皇孫を、その下の大将に任ずることができないように定めている」。これを権力維持のための伝統的手段と考えるなら、実兄である金正哲に対する金正恩委員長の振る舞いもなんとなく納得できてしまう。

 対外関係では、「第一に(宗主国の清国を差し置いて)、自らの密書による秘密外交で西洋列強を引き込もうとすること、そして第二に、その事が露見した場合には、それを直接の交渉に当たった臣下の責に帰すること、第三に、その場合に工作の対象となった列強には最大限配慮するというやり方である」。

「対外関係と国内問題の区別さえ、曖昧だった」高宗ではあったが、「それを高宗の権力欲や金銭欲からのみ出たものだと考えるのは拙速であろう」。それというのも、そうすることが彼にとっては「自らと自らの家族を守ることに直結していたからである」。

『高宗・閔妃』は「こうして本当の破局がやってくることになる」と、印象的な一文で結ばれている。

 1990年代初頭にベルリンの壁が崩壊し、ソ連が解体され、東西冷戦構造が崩壊し、資本主義の勝利が叫ばれ、アメリカ一極構造が生まれた状況を捉え、フランク・フクヤマは「歴史の終わり」と評した。だが、歴史に終わりはなかったようだ。

 以上、朝鮮半島情勢にもアメリカ政治にも全くの門外漢ではあるが、ハノイにおける米朝首脳会談をめぐっての若干の思いを綴ってみた。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15585  

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コメント
1. 2019年3月11日 19:32:04 : o4ZxWSpuaU : cmp4OUZBQlJQcUU=[404] 報告
友好も 次の乱への 一里塚
2. 2019年3月11日 21:54:09 : LY52bYZiZQ : aXZHNXJYTVV4YVE=[223] 報告
日本人「本当の日米韓を知れ!」元官僚,元公安調査庁調査第二部部長で作家の菅沼光弘 氏が本当の裏側内情を暴露する。【NET TV ニュース】朝堂院大覚 日米韓の裏事情 2019/03/11
.
JRPtelevision
2019/03/11 に公開
https://www.youtube.com/watch?v=nPWFeyAhP-I
3. 2019年3月12日 00:46:46 : mjLhbQDbNw : eTNLNThNSXcuLk0=[5] 報告
>4)北朝鮮の経済発展を考えた時、現実的に資金提供をできるのは好むと好まざるにかかわらず日本のみだろう。

この一文を読んだだけでもホラ吹き文章だってのは分かるな。

実際にはもうすでにかなりの中国企業が北朝鮮に大規模投資をしている。国境の街丹東に巨大なトラックターミナルが建設されている。日本の出る幕はもうないよ。
美味しい所は全部中国人が持って行った。

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