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ゴラン高原のイスラエル主権承認は北方領土問題に禍根 シリア系住民が承認に抱くアンビバレントな思い  日本はもっと毅然と
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投稿者 うまき 日時 2019 年 4 月 03 日 12:38:23: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

ゴラン高原のイスラエル主権承認は北方領土問題に禍根
シリア系住民が承認に抱くアンビバレントな思い


保坂 修司
日本エネルギー経済研究所 中東研究センター 研究理事
2019年4月3日
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全5157文字

ゴラン高原に関するイスラエルの主権を承認する文書に署名するトランプ大統領(左)。中央に立つのはイスラエルのネタニヤフ首相。その左後方はトランプ大統領の娘婿のクシュナー氏。政権の中東外交のカギを握る親イスラエル派(写真:ロイター/アフロ)
 米国のドナルド・トランプ大統領は3月25日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との首脳会談に合わせ、イスラエルが占領するシリア領ゴラン高原におけるイスラエルの主権を認める宣言に署名した。

 20年以上前、シリアを訪問したときのことだ。そのゴラン高原のそばで某国軍事関係者と話をしたことがある。その関係者が「こんなところを奪われるなんて信じられない」と、ぼそりとつぶやいたのを今でも鮮明に覚えている。

 軍事的にいうと、ゴラン高原は、守るに易し、攻めるに難し、いわゆる難攻不落の自然の要害という地形らしい。行ったことのあるかたはご存じと思うが、イスラエル側からみると、ずっと平たんな地が広がっているのが、突然、シリアとイスラエルをわける1949年の境界線のところでボコっとシリア側に盛り上がる感じだ。

 1967年の第3次中東戦争のとき、シリアはこの高原の高みから下に展開するイスラエル軍と対峙したことになる。イスラエル軍は地形的にも数的にも圧倒的に不利だったはずだが、攻撃開始後わずか2日でゴラン高原の大半を制圧し、軍政下に置いてしまったのである。

 1973年の第4次中東戦争でシリアはゴラン高原奪還を目指したが、数的優位にもかかわらず、作戦は失敗に終わった。その後、1981年にイスラエルは、イスラエルの法律と行政をゴラン高原に適用する法律を成立させ、事実上、ゴラン高原を自国領に併合してしまう。

 なお、第3次中東戦争の戦後処理の大枠を定めた国連安保理決議第242号はイスラエル軍の占領を否定、同軍が最近の紛争で占領した領域から撤退することを要求している。ちなみに、この決議には米国も賛成している。

 また、1981年のゴラン高原併合でも、国連安保理は決議497を全会一致で採択。イスラエルによる併合が無効であると断じ、決議242に従うよう、つまり1967年に占領した地域から撤退するよう再度要求したのである。もちろん、決議に賛成した国には米国も含まれる。

イスラエル「自衛のために必要ならば許される」
 米国はゴラン高原に関してイスラエルが非合法に占領しているという立場を一貫して堅持してきたのだ。ここが、エルサレム問題との大きな相違である。エルサレムの場合、米国は当初こそ国際管理にこだわっていたが、1990年代以降、歴代政権、議会ともにイスラエルの首都はエルサレムとの立場を明確にしていたからだ。これまでの米大統領が米国大使館のエルサレム移転にゴーサインを出さなかったのは、移転そのものに反対していたのではなく、移転すれば、アラブ諸国が反発し、中東和平プロセスが頓挫する可能性があるからといえるだろう。

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シリア反体制派でさえ米国を非難


 翻ってゴラン高原だ。前述のとおり、つねにイスラエルの行動を支持してきた米政権であっても、ことゴラン高原に関してはずっとイスラエルによる併合に反対してきた経緯がある。それをトランプ大統領はいきなりひっくり返してしまったのだ。

 軍事占領した外国領土を自国に併合することは国際法上許されないはずだが、イスラエルのロジックは違うらしい。イスラエルが用いる代表的なロジックでは、自衛のために必要ならば、外国の領土を占領してもいいということになる。また、占領地を返還したのち、そこがふたたび安全保障上の脅威となるおそれがある場合、占領国は、自衛のためその占領地を占領しつづけることができるというのである。

 シリアとイスラエルは対立しており、シリアにゴラン高原を返還すれば、そこからイスラエルが攻撃される可能性がある。だからゴラン高原を返還できない。ましてやイスラエルと敵対するシリアのバシャール・アサド大統領を支援するため、イランやその子飼いともいうべきヒズボラ(レバノンのシーア派武装勢力)がシリア国内に展開し、現にイスラエルに対し攻撃を加えている。したがって、ゴラン高原の維持はイスラエルの安全保障に直結するわけだ。

 だが、このロジックを拡大解釈すると、中東の多くの国と対立関係にあるイスラエルは自衛を名目にどこでも占領できることになってしまう。また、忘れてならないのは、ゴラン高原が安全保障上、きわめて重要だったとしても、ゴラン高原の返還についてイスラエルはすでに何度かシリアと交渉した過去がある点だ。イスラエルがゴラン高原を返還する代わりに、シリアはイスラエルを国家承認するという「土地と平和の交換」である。つまり、エルサレムのケースとは異なり、イスラエルにとってゴラン高原は絶対に必要な土地ではないのだ。

 とはいえ、イスラエルを敵視するイランやヒズボラなどがシリアを拠点に展開しているかぎり、イスラエルにとってのゴラン高原の戦略的重要性が小さくなることはない。必然的にゴラン高原を返還する可能性はますます遠のくことになる。

シリア反体制派でさえ米国を非難

 むろん、イランなどイスラエルと敵対する勢力のロジックは正反対だ。シリアに駐留するのは、アサド政権をテロリストから守るためであり、イスラエルを攻撃するのは、イスラエルがシリア領のゴラン高原を占領し、シリアに攻撃を加えているからである。当然、イランは、ゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認するトランプ大統領の宣言に猛反発し、3月26日にはトランプ大統領をきびしく非難する声明をハッサン・ロウハニ大統領が出している。まあ、第三者からみると、このあたり、ニワトリが先かタマゴが先かの議論のようではある。

 当事者であるシリアも当然、「シリアの主権と領土保全に対する言語道断の侵害」と非難。アサド政権と対立する反政府組織もゴラン高原については体制側と一致している。アサド政権に批判的な他のアラブ諸国・関連機関も一斉にトランプ大統領批判の声明を発出している。

 中東以外の国もほぼ同様の立場である。EU(欧州連合)はゴラン高原の地位に関するEUの姿勢に変化はないとして、国際法と安保理決議242と497に従ってゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めないと強調している。多少の温度差はあるが、ロシア、中国、北朝鮮もゴラン高原におけるイスラエルの主権承認は認められないとの立場である。

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シリアからの米軍撤退とディール

シリアからの米軍撤退とディール
 筆者は、米国政治の専門家ではないので、トランプ大統領の心の奥まで踏み込むことはできない。しかし、ちまたでいわれているとおり、トランプ大統領が再選に向けてスタートを切り、キリスト教福音派・キリスト教原理主義者たちの票固めを始めたという見立ては、それなりに説得力があろう。キリスト教福音派・キリスト教原理主義者たちはトランプ支援の中核。熱烈なイスラエル支持で知られ、シオニスト以上にシオニストと揶揄(やゆ)される。

 実際、トランプ大統領は、シリアからの米軍の早期撤退を主張しており、これも、おそらく再選に向けたアピールにはなるはずだ。だが、イスラエルの安全保障からみれば、シリアから米軍が早期に撤退するのは望ましくない。したがって、米軍撤退の見返りとして、ゴラン高原におけるイスラエルの主権を承認といった「ディール」との見かたも出てくるだろう。

サウジアラビアに大したことはできない

 いずれにせよ、トランプ大統領が、アラブ諸国内の親米国のことをほとんど配慮していないことはたしかである。毎年恒例のアラブ連盟首脳会議(アラブ・サミット)を直前に控えたこの時期に、アラブ諸国を激怒させるような、あるいは少なくとも当惑させるような行動に出るということは、どうせ彼らに大したことはできないだろうとの判断があったとも考えられる。

 たしかに、親米の代表格であり、トランプ政権との親密な関係を誇るサウジアラビアですら、今回のゴラン高原をめぐる騒動では、トランプ政権による宣言を断固拒否し、非難するとの公式声明を出している。だが、はたしてそれ以上のことができるかどうかは疑問である。もちろん、それは、シリアやイランも同様であり、ゴラン高原奪還のために、彼らがイスラエルとの全面戦争に打って出るとは思えない(これまでのパターンでいえば、ミサイルやロケット弾を撃ち込むことぐらいはあるだろうが、だいたいはイスラエルがそれに反撃して終わり)。

 サウジアラビアとしても、アラブ諸国・イスラム諸国のリーダーとして今回の事件では断固たる態度を示す必要があるが、その一方、対イラン政策において米国からの支持を失いたくない。いろいろ躊躇(ちゅうちょ)しているうちに、トルコがいち早くトランプ大統領を非難する声明を出した。「一部アラブ諸国」(当然サウジアラビアのこと)は米国やイスラエルを恐れて声も上げられないとトルコ側に揶揄(やゆ)される始末である。

 アラブ諸国からの報道をみるかぎり、チュニジアでのアラブ・サミットをにらんだ前哨戦として、ゴラン高原(あるいはシリア)問題とイラン問題のどちらを主要テーマとして取り上げるか各国政府がせめぎあっているようだ。

ゴラン高原に住むシリア系住民はシリアへの返還を真に望んでいるか?
 トランプ政権は今後、新しい中東和平提案を出すといっているが、エルサレム、ゴランとつづくと、アラブ諸国が期待するとおりの提案が出てくる可能性は低い。トランプ政権との濃密な関係はサウジ現政権に対して、短期的には有利に働くだろうが、中長期的にみれば、アラブ諸国内におけるサウジアラビアのリーダーシップを損なうことにつながる可能性も否定できないだろう。

 今回のゴラン高原問題をめぐる一連の報道であまり触れられていないのが、ゴラン高原住民の意見である。ゴラン高原にはイスラエルが占領する以前から居住していたシリア人住民約2万人が残っているほか、イスラエル占領後、入植してきたユダヤ系住民もほぼ同数いるとされる。ユダヤ系住民はイスラエル人であり、彼らがイスラエルの主権承認を歓迎しているのは容易に想像される。

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日本はもっと毅然とした態度を

 問題は、シリア系住民である。実は、その大半が「ドルーズ派」と呼ばれる少数宗派に属している。同派は、もともとシーア派のなかの少数派であるイスマーイール派から枝分かれしたものであるが、シーア派を含む大半のムスリムはドルーズ派を異端と考えている(ただし、アサド大統領の属するアラウィー派とは輪廻転=りんねてんしょう=を信じるなど教義に近いところがある)。

 イスラエル政府は、ゴラン高原の住民に市民権を付与している。ただし、シリア系住民の9割はシリア国籍を保持しており、イスラエル系ドルーズ派は少数派である。

 しかし、近年、住民の意識に変化がみられる。シリア系ドルーズ派の中でイスラエル国籍をとる者が増えているといわれている。彼らは、シリア国内のシリア人と比較すると生活レベルが高く、政治的・社会的自由を謳歌しているという。シリア系ドルーズ派の多くが、内乱と独裁のシリアへゴラン高原が返還されるのを望んでいるかといえば、本音のところでは微妙であろう。もちろん、これは、イスラエルが50年も積み重ねてきた既成事実のおかげともいえる。

日本はもっと毅然とした態度を

 最後に日本の対応について。菅義偉官房長官は「わが国はイスラエルによるゴラン高原の併合を認めない立場であり、変更もない」とし、シナイ半島で停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団」司令部への自衛隊員派遣について「特段の影響はない」と語る。一方、河野太郎外相は「ゴラン高原の併合は認めない」との立場に変わりはないと述べたが、トランプ大統領の主権承認宣言が安保理決議に違反しているかどうかについては「米国が説明すべきだ」として直接的な批判を避けた。

 日本は、北方領土にしろ、竹島(韓国側の呼称は独島)・尖閣諸島(中国側の呼称は釣魚群島)にしろ、周辺国と問題を抱えている。軍事占領を、既成事実を積み重ねながら自国領土への併合にもっていこうとするゴラン高原のケースに当てはめると、日本の立場は明らかにシリアに近いはずだ。ゴラン高原をめぐる対応では、もう少し毅然とした態度を示してもよいと思うのだが、はたしていかがだろうか。

 いずれにせよ、シリアの要請を受け、国連安全保障理事会の緊急会合が3月27日から開催されている。各国からの米国批判があいつぎ、米国の孤立が鮮明になっている。はたして国際社会はゴラン高原問題で何らかの有効な手立てを打てるだろうか?

【追記】3月31日、チュニジアで開催されていたアラブ・サミットが最終声明を発出して閉幕した。最終声明のチュニス宣言には、ゴラン高原は占領されたシリアの領土であり、ゴラン高原の主権をかえるようないかなる試みを拒否するという文言が入ったが、米国やトランプ大統領への直接の名指しはなかった。


コメント5件
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Latebloomer

この辺の奥深さは遠い我々には分かりにくいが日韓どころではないですね。あと最後のところ米国に追従しなかっただけでもましですかね。

2019/04/03 09:42:03返信いいね!


mat

心理的中東シンパの方の意見ですから、こういう結論になるんでしょうね。日本には中立的評論の出来る方はいないんでしょうか。中東に関しては難しいんでしょうね。

2019/04/03 10:18:57返信いいね!


大和武士

示唆に富む極めて有意義な記事として拝読した。元号改正に関わり浮かれたり、批判ばかりしているマスコミも、日本を取り巻く中国・南朝鮮・ロシアとの関係からみて、日本の立ち位置はどうあるべきかの十分に推敲された記事を期待したいが無理かもしれない。

2019/04/03 10:25:33返信いいね!


janky

領土問題の本質は軍事力。
正統性とか論理性などは問題が収束せず長引くだけだね。

2019/04/03 10:57:48返信いいね!


Take.Haya

日本のこの件への対応は、まずは順当と考えます。一方、中東、イスラエル周辺を現在の状況に陥れた原因は、20世紀初頭の欧州列強が作ったという認識が有ります。そのために国連決議もなされていると。歴史的経緯を踏まえない現米国政権は、新たな歴史、秩序を作ろうとしているのでは、との懸念を持ちます。1920年代のドイツを思い浮かべるのは、心配しすぎでしょうか。
2019/04/03 11:40:11
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/040100029/?P=4&mds  

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