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「青い山脈」の成功と失敗 ― 亡き杉葉子を偲んで ― (ちきゅう座)
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/647.html
投稿者 肝話窮題 日時 2019 年 6 月 07 日 21:23:45: PfxDcIHABfKGo isyYYouHkeg
 

 
「男女同権」や「基本的人権」は、競争第一の企業社会の門前で立ちすくんだのである。同権の代わりに不平等と格差が、そして人権社会の代わりに同調圧力の共同体が出現したのである。「令和の御代」は、「青い山脈」の精神的側面の実現に失敗した日本の現実を、更に厳しい姿で我々に突きつけることになるだろう。(本文より)


2019年 6月 6日
<半澤健市(はんざわけんいち):元金融機関勤務>

 
《ヤミ屋に囲まれて生まれた「青い山脈」》
■ 昭和24年1月に作曲されたこの曲のメロディーは、当時服部(良一)が大阪駅から京都駅へ行くすし詰めの電車の中で生まれた、という。ハッピ姿やハチ巻きの闇屋の大群がぎっしりと乗り込み、服部は身動きも出来ないまま、車窓からくっきりと見える美しい山脈(やまなみ)を眺めながら、健康的なメロディーを頭に画いていた。これと思った旋律が浮かんだので、忘れない中に直ぐに書き留めておかなければ、と考えた服部は、五線紙をカバンから取り出す隙もないので、ポケットの手帖を辛うじて引っぱり出し、手帖の鉛筆で、ハーモニカの略符1,2,3を使って素早く書き留めた。まわりの闇屋さんも、商売の計算をしている仲間と思ったのか、同情的に見てくれたので、電車が京都駅に滑り込むまでに、最後の小節を無事書き終って、目出度く「青い山脈」の名旋律が完成した。■

 これは、三枚組のCD『服部良一―僕の音楽人生』(1989年、コロムビアミュージックエンターテインメント(株))に、音楽評論家瀬川昌久が書いた解説の一部である。

《「青い山脈」を選んだのは一人だけ》
 30人ほどの映画同好グループで、「世界映画史上・私のベスト3」という人気投票をしたことがある。20年ほど以前と記憶する。上位には「天井桟敷の人々」、「ローマの休日」、「第三の男」、「ライムライト」といった不朽の名作が、邦画では小津安二郎、黒澤明、溝口健二の代表作が並んだ。

「青い山脈」を挙げたのは私一人だった。服部良一が「闇屋さん」に囲まれて名曲を作ったとき、私は13歳であった。「青い山脈」と杉葉子は、私にとって青春の象徴であったし、私の中では「戦後民主主義の象徴」であり続けた。

それは「青春」の輝きと儚さ、未成熟に終わった「戦後民主主義」をずっと想起させてくれたからである。原節子(教師島崎雪子)、木暮実千代(芸者)、若山セツコ(その妹)、池部良(受験浪人金谷六助)、竜崎一郎(独身の町医者)、伊豆肇(旧制高校生ガンちゃん)。彼らは既に映画に出演していた。特に原節子、木暮実千代、竜崎一郎は、戦意高揚作品の主役、準主役でもあった。杉葉子だけが唯一の「新人スター」である。その肢体の美しさに私は息をのんだ。私は今でも映画館のどの席の近くで見たか―混んでいて座席に座れなかったのである―をハッキリ覚えているし、その後テープやDVDで何度も見て場面の展開を覚えている。

《杉葉子と原節子は戦後民主主義の象徴だった》
 今井正によるこの作品のあと、「青い山脈」は三回のリメイクがあったが、誰もが思い出すことはない。杉葉子はその後、成瀬巳喜男の「山の音」「めし」、市川崑の「結婚行進曲」「青春銭形平次」、田中絹代の「月は上りぬ」などで一定の評価を得たが、結局「青い山脈」の寺沢新子(旧制高等女学校5年生)の衝撃を超えられなかった。女子大出の英語教師を演ずる原節子は理念の具象化として表現されている。それもあって彼女の住まいが画面に現れることはない。杉葉子も「お母さんが二人いる」設定にもかかわらず、その家庭も画面に出てこない。主題歌「恋のアマリリス」の歌詞にある「姉と呼びたき師の君も悩み給うか恋の夜は」は新子の目線で見た雪子である。前編で、二人が女学校に近い小高い丘の芝生でおどる場面に、このメロディーは雪子が口笛を吹く設定で使われた。

《名曲だけが残るのだろうか》
 監督の今井正はなぜか、服部作曲の「青い山脈」を高く評価しなかったという。しかし藤山一郎と美人歌手奈良光枝が吹き込んだレコードは空前のヒットとなった。70年後の今でも、懐メロのTV番組は、「青い山脈」の全員合唱で終わる。今井はそれでも、前編―前後編二本あったのだ―のタイトルバックに合唱で入れた。後編、恋人たちが砂浜に向かって銀輪を走らせる場面にも使った。婚約した原節子と竜崎一郎を望遠レンズに入るラストシーンでもゆっくりした旋律を歌い上げている。

私個人は、レコードB面で、二葉あき子が歌った「恋のアマリリス」を好む。杉葉子らは撮影中に後者をくちずさむことが多かったという。両曲は米国のポピュラー音楽家パーシー・フェースが、大編成オケ用に編曲して録音しているが、叙情性において映画タイトルバックのコーラスに遠く及ばない。

《人は71年前を知っているだろうか》
 昭和24年は今から71年前である。そこから71年遡ると、1877年(明治10年)である。国会も憲法もまだ出来ていなかった。右大臣三条実美の時代である。官軍は西郷隆盛と西南戦争を戦う一方で、上野では内国勧業博覧会が開かれていた。「音楽取調掛」が「東京音楽学校」に改組されたのはこの10年後である。

私が「青い山脈」を見たときに、71年前のそういう過去を回想することはできなかった。ならば、私の「青い山脈」回想は、今の13歳に、伝わるであろうか。私は「青い山脈」を論じて次のことを伝えたいのである。

《歴史認識はバラバラにされ百田某が歴史を語っている》
 昭和の前半に生まれた「青い山脈」は、その昭和を生き延び、平成をも生き延びた。されば、年相応に、老いたといわねばならない。「青い山脈」が夢見た生活水準は、その後40年ほどで実現した。GDP世界第二位になったからである。しかしそこが頂上だった。平成の30年間は、映画の恋人たちの成果が、次々にハゲ落ちる過程であった。更にいえば、もともと「青い山脈」の精神的な理念は実現されなかった。「男女同権」や「基本的人権」は、競争第一の企業社会の門前で立ちすくんだのである。同権の代わりに不平等と格差が、そして人権社会の代わりに同調圧力の共同体が出現したのである。「令和の御代」は、「青い山脈」の精神的側面の実現に失敗した日本の現実を、更に厳しい姿で我々に突きつけることになるだろう。人々は今、70年どころか、100年単位の長期展望を迫られている。同時に百田某の「歴史書」がベストセラーであるのが現実である。(2019/06/03)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8699:190606〕

http://chikyuza.net/archives/94248  

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コメント
1. 2019年6月08日 01:01:55 : TBm3y0jtUI : d2ZraE5pNzB0Ti4=[3] 報告
何言ってんの!100田インチキ野郎の味方してんのか!!

>百田某の「歴史書」がベストセラーであるのが現実である。

「ジジイ嘆き節」が安倍一味アシストなんじゃねと気づくべきだ。無批判過ぎる。嘘を事実と認めてやるようなもんだ。

誰も一度も証拠を以て確認したことなんかない!「ベストセラー」でしたとアナウンスされてるだけじゃん。一人ひとりの日本人が自分の金でかったかどうかw 内閣機密費で数字揚げたとさえ…。

選挙も支持率も政府統計も全部上辺の金のアナウンスだろ。そうでないというなら、実際を証拠付きで出してみせろと政府にいうべきだ。

開票結果の再点検でさえ未だかつて国政選挙で、野党が証明させたことないんじゃね?

嘘をつくな!という気概が必要だ!
嘘吐きを絶対許すな!

===

「青い山脈」は確かに原節子杉葉子版が一番いい。すごい映画だ。
(当時この映画を見に高校から学校そろって行ったと言ってた私の親は、先日痙攣起こし重体で意識が外からは見えなくなってしまった時に、この映画の音声を耳器で聴いて数時間、医者はだめかもと…だが最後の手を尽くしてくれたが、その後けろっと意識が覚めて持ち直したのだった。外からの処方だけではない内からの不思議な力が若き日の熱い感動にはある。)


小百合ファンであっても60年代の浮ついたリメイク版にはがっかり。軽薄過ぎる。

原晩は重いテーマに必死に楽観的に切り込んだ映画でもあろう。


原節子と杉葉子が踊るとき原が「あなたは東京で踊り子にでもなるか」とからかう。対米軍慰安所のち、「パンスケ」政策が占領受け入れのため政府警察によって実行されたまさにその時代だ。

木暮実千代は戦後芸者役なのは戦争動員映画の「愛国の花」で従軍看護婦に志願した役だったからだろう。この経歴で悲惨な目に合わされた女が日本のどこにでも元気に生きていた時代だ。セリフ一つ一つに熱烈な同情が湧く人々がいた時代だろう。戦中の慰安婦が滲まされている。

安っぽい「感動」を与える映画なんかではなく、
ひとの人生を揺さぶり変え消化されるような(でも激変の一歩手前)映画の一つだろう。

2. あおしろとらの友[2224] gqCCqIK1guuCxoLngsyXRg 2019年6月08日 08:55:20 : FY0WWgvx2K : Wm1kc2laMlAxSXc=[11] 報告
1949年の映画「青い山脈」が”美しい”ヒューマニズムを謳いあげているとしても、それが”現実”に投影され実現されるであろうという”夢”は当然の事ながら”夢”に終わる。映画は人の”夢”を吸い上げる一つの”装置”にすぎないからだ。”基本的人権”も”男女同権”も人の見るる”夢”ではない、その”行使”が”保障”されているというにすぎない、それが”行使”されなけば”権利”はない、と同じことになる。

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