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自民党本部が配布した「トンデモ野党」冊子を作成した黒幕は誰か
https://www.mag2.com/p/news/405780
2019.07.12 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース 自民党本部が先月、所属議員に配布した冊子の内容が話題となっています。安倍首相を礼賛し自党に批判的なメディアや野党をひたすら叩く同冊子、ネットサイト「テラスプレス」掲載の記事をまとめたものとされますが、肝心のそのサイトの作成者が不明とあって、様々な憶測を呼ぶ事態に。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、映画『新聞記者』にも登場する内閣情報調査室が関係している可能性を指摘し、その根拠を記しています。 自民党本部が配布した冊子は何者が作成したのか 東都新聞の女性記者のもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた…安倍政権を思わせる疑惑を描いた政治サスペンス映画『新聞記者』が上映中だ。 映画の原案になったのは東京新聞社会部、望月衣塑子記者の同名著書『新聞記者』である。モリ・カケ問題が世間をにぎわしていたころ、社会部記者ながら菅官房長官の定例記者会見に乗り込み、“シャンシャン会見”の空気を破って、何度もしつこく菅長官に質問をぶつけていた望月記者について、当メルマガでも二度ほど取り上げた。思い出していただくために2017年6月15日の記事「怪文書はホンモノだった。強行採決後の出来すぎたタイミングで発表」のなかのワンシーンを再掲する。 加計学園の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向」文書の有無について、「確認できない」と言い張っていた松野文科大臣が、前川喜平前事務次官や現役官僚からの証言を受け「追加調査する」と姿勢を転換した後の官房長官記者会見。
映画『新聞記者』や望月記者の著書に触発されたのか、米国でも菅官房長官のメディア対応を批判する声が出始めた。
「独裁政権をほうふつとさせる振る舞い」は、枚挙にいとまがない。気に入らない官僚には容赦なく人事で報復し、官僚はそれを恐れて官邸の意向に忍従する。政権に批判的なコメンテーターはテレビ番組から降板させるよう圧力をかける。秘密保護法や共謀罪の創設で自由、人権を脅かす…。 望月記者の著書は、真実を隠そうとする菅官房長官との記者会見でのせめぎ合いに重点がおかれているが、映画でクローズアップされているのは「内閣情報調査室」(内調)の存在だ。 内調は、公安警察、公安調査庁などと並ぶ情報機関だが、ありていに言えば、官邸内の“スパイ組織”である。そのトップ、北村滋・内閣情報官は、かれこれ7年半もそのポストに在任し、何かと安倍首相に頼りにされている。 たとえば、“アベ友”ジャーナリストとして名をはせた山口敬之氏が、準強姦容疑で警察に逮捕されかけたさい、もみ消しの相談を引き受けていたのが北村氏だとされている。 安倍首相の親友が経営する加計学園の獣医学部新設疑惑をめぐり、重要な証言者、前川喜平氏が出会い系バーに出入りしていたと報じた読売新聞のネタモトは、前川氏の行動を以前からチェックしていた内調のリークであるらしいこともわかっている。 映画『新聞記者』では、職員たちがパソコンに向かう内閣情報調査室の場面がたびたび出てくる。政権の都合のいい情報を書き込み、情報操作に励んでいるシーンだ。 こういうのを見ると、安倍政権の応援サイトのなかには、内調がからんでいるものもあるのではないかと、つい想像してしまう。 昨今話題の「テラスプレス」もそうだ。このサイトに掲載されている記事をまとめた冊子が自民党本部から党所属国会議員の事務所に大量に配られている。 冊子の標題は『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』。選挙演説用の参考書としての利用を勧めているらしい。 中身はというと、「トンデモ野党のご乱心」「フェイクこそが本流のメディア」「安倍政権の真実は?」の三章からなり、立憲民主党や共産党、朝日新聞や東京新聞をこっぴどく叩く一方で、安倍政権のやることなすことすべてを持ち上げている。 記事はテラスプレスのものとほぼ同じであり、野党党首をバカにしたような顔漫画をそえて、一冊にまとめている。 TBS「ニュース23」の党首討論でこの冊子の件が取り上げられ、キャスターが「立憲民主枝野代表の無責任を嗤う」と書かれていることを示して考えを求めた時、安倍首相は「党本部でいろいろな冊子を配っていますが、いちいち見ていない」と断ったうえでこう言った。 「無責任といえば無責任だと思いますよ。統一候補を選んでいるにもかかわらず、共産党は自衛隊違憲だと言い、立憲の枝野さんは合憲だといっている」。 いつもの話のすり替えだが、安倍首相のこの言いぶりから、冊子が配られていることはもちろん、野党批判の中身についても知っていることがうかがえる。 ところで、「テラスプレス」なるサイトが奇妙なのは、その名で検索してもページが出てこないことだ。つまり運営者はアクセス数にまったく興味がないようなのである。その点では、映画に描かれたようなネットによる情報操作とは多少、趣が異なる。 運営主体や執筆者は不明だが、昨年7月以来150本近くも記事が投稿されており、内容は安倍応援団そのものであっても、文章は分かりやすい。いわば新聞記者が書いたような感じである。 他に、はっきりしていることがある。同じ自民党なのに、石破茂氏には敵対的なのだ。 このサイトへの投稿が始まったのは昨年7月13日ごろだが、8月6日の記事では、総裁選への出馬意向を固めた石破氏について、加計学園問題とからめ「獣医師の既得権益を守るために動いた」と批判している。 総裁選を安倍氏が有利に戦えるように意図した記事であるのは明白だ。だから、口が裂けても自民党本部がからんでいるとは言えないだろう。 あえて運営主体をわからないようにし、当然、連絡もとれないようにしている。この奇怪なサイトの正体は何者なのか。 その点、総裁選で内閣情報調査室が安倍氏のために活動していたという情報があるのは、気になるところだ。
サイトの実質的運営者が誰であれ、官邸か党の安倍側近が何らかの形で関与していたと考えるほうが自然だ。スタート段階ではURLを知る特定の仲間内で情報を共有するためのサイトだったかもしれないが、記事が時系列的に増えるにつれ、選挙演説の参考資料としてうってつけになってきたのは確かだろう。 メディアの問い合わせに対し、自民党本部は「テラスプレスの許可を得て、参考資料として配布した」と説明している。テラスプレスとの関係については、次のように書面で回答したという。 「テラスプレスは、1年ほど前から広く一般にネット上で閲覧されており…説得力のある内容であることから、これらの記事をまとめた冊子があるということで、通常の政治活動の一環として、参考資料として配布したものであり、テラスプレスの運営等には関与しておりません」(ハフポスト日本版より) そうだとすると、テラスプレスが冊子にして発行したものを、自民党が買い取ったか、無償でもらったことになる。党所属の国会議員の事務所に各20冊以上配っているらしいから、相当な部数だ。 だが結局、テラスプレスの運営、執筆者などについてはいっさい語らない。おかしな話だ。自民党のような大政党がまったく知らないところから選挙にかかわる大事な資料を受け取るはずがないではないか あくまで政権とは無関係の外部ネットメディアが存在する形にし、その内容が自民党の主張に沿っているから使わせてもらったのだという装いに仕立てたとしか思えない。 ニュースサイト「BUZZAP!」によると、このアカウントの位置情報から、皇居、国会議事堂、首相官邸、霞ヶ関官庁街、自民党本部の周辺に発信源があるらしい。 万が一、政府機関である内調が、特定の政党の選挙対策に一役買っているとすれば、大問題である。 前川喜平氏のスキャンダルでっち上げや山口敬之氏の事件もみ消しに動き、さながら安倍首相の私的秘密工作機関に成り下がっているように見える現況からは、残念ながら、その疑いを拭いきれないのではないか。 内調には情報操作世論工作部門があるとされている。新聞、出版、テレビ、ネットなどのメディアごとに分かれてマスコミ担当の特命班が存在するとも聞く。 職務の性質上、われわれ一般人がその活動内容を知ることはできず、すべては推測の域を出ないが、逆に言うなら、内調が何をやっていても不思議ではないということになる。 公私の別をわきまえない不心得な政治権力者と、その忖度に余念のない側近たちが、年に何億円もの調査費を使う秘密機関を、思うがままに操ることができるなら、これほど恐ろしいことはない。 この件について、官邸は何も語るはずがない。冊子を配布した自民党本部が唯一の手がかりだ。 自民党本部は、疑惑を晴らすためにも、「テラスプレス」の実体を明らかにするべきである。 image by: 安倍晋三 − Home | Facebook 新恭(あらたきょう) この著者の記事一覧 記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。
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