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戦後世界観と日本のアジア政策 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 28 日 18:49:01:

(回答先: 米国がアメリカ・ファーストになる時 投稿者 匿名希望 日時 2002 年 9 月 28 日 14:43:06)

戦後世界をどう捉えるのかという問題に帰着する“対立”になるのでしょう。

枠組みからあまりにも離れた論点を提示するのは混乱の元になるので、戦後世界は日本の“国益”に適っていたということを前提条件として、現実的な範囲で論点をいくつかに絞ります。


● 戦後世界構造は今後も継続するのか?

● 日米関係の“接着剤”は何か?

● 米国政権の対日を中心としたアジア戦略の意図は何だったのか?


まず、戦後世界構造はここ数年長くとも10年というスパンで崩壊すると予測しています。

他の二つの設問に直接ないし間接的に答えるかたちで、貴殿の論考へのレスを行います。

>このアナウンスを受けて、世界中の紛争の火種を抱えているところが発火するでしょ
>う。米国の軍事的プレゼンスで保たれていた既存のバランスが崩れて出来上がった空
>白は必ず何らかの形で埋められる事になります。

米国の対外活動力が劣化することで、世界で紛争が起きることを否定しません。
しかし、それは、オーバーコミットメントと言える米国の重石によって抑え込まれていたものが噴出することで起きるものですから、過渡的にはやむを得ない出来事だと考えています。

資源目的なのか政治目的なのか自国経済主体の権益確保目的なのかを別として、世界中に紛争の火種を撒いたのが米英を中心とした“よそ者”であることをきちんと認識すべきです。

火のないところに煙を立てて介入するのは、彼らが得意とするところです。
そして、本人たちはやむを得ないときを除きできるだけ表に出ず矢面にも立たないようにしてきました。ある場合には、アフリカ諸国で顕著ですが、自分たちの権益擁護者を表向き“敵”や“独裁者”として非難するというマヌーバーまで駆使しています。

米国が内向きになった結果米国政権の介入がなければ、紛争も長期化しないかたちで終結します。

米国政権の対外活動力を埋めようとする動きが、米英を中心とした経済支配層の意向を受けて画策されることは間違いありません。
5世紀以上にわたる活動成果として世界中に確保してきた経済権益が失われる危機に直面するのですから、様々な手だてを講じます。

500年間の歴史を整理する過程ですから、話し合いでみんながハッピーという決着が付くわけではありません。


>日本へは中東から一滴も原油が入ってこないという事態は大いにあり得ます。

だからこそ、米国一辺倒や米国守護神視は危険な思想であり政策です。

さらには、地理的に近い資源大国ロシアがありながら、ソ連敵視政策の名残である「北方領土問題」というトゲのために、まともな関係性が築けていません。
(あれだけの“敵対関係”にあった米ロが親密度を増しているのに比べると、米国の要請で対ロ経済援助だけ行った日本政府の外交無力は恐ろしいばかりです)


>それどころか、極東から米軍が全面撤退するとなると、まず中国はすぐに台湾を軍事
>占領し、レジームも変えます。

米国政権や米国シンクタンクの言そのままの対中国観ですね。

断言しますが、内戦の延長時期ならいざ知らず、現在の中国政府が台湾を軍事占領することはありません。
それは、台湾の軍事力よりも中国のそれが劣っているからという軍事論的な見方から出てくる結論ではありません。

そうしないのは、台湾を軍事力で支配しても“統一”にはならないことを中国政府が強く理解しているからです。
台湾が独立を宣言しても、軍事力行使の可能性を排除しないことを公言しますが、独立を国際的にも認めさせない政治外交努力を行うだけです。

中国の台湾政策は、台湾政府が中国の一部であると宣言すれば、台湾の統治形態は現在のままで構わないというものです。(外交権はともかく独自軍事機構も容認)

イデオロギーよりも経済発展を選び取った政権が、目的に反する活動を行うはずもありません。
(対中国投資にのめり込んでいる台湾経済主体が台湾政府の独立宣言を容認するとも思えませんが、ここでは台湾サイドを考慮外とします)

私が中国政府の最高権力者であれば、“入り口論”抜きで、台湾(中華民国)の陳総統を招待し、日清戦争後の日本への割譲から国共内戦を経た現在までの台湾の労苦をいたわり台湾が達成した経済発展を称賛します。一度で駄目なら、何度でも招待します。

台湾に楯と経済利益を与えて、「中台問題」を維持し続けているのは米国です。

もちろん、「中台和解」は、現在の日本政府にとって好ましいものではないことは事実です。
現在のような日本政府である歴史段階で、「朝鮮半島南北和解」と「中台和解」が実現されたら、日本政府は、進路を見失いおろおろするだけになります。

戦後世界における米国のアジア戦略の基本は、「アジア分断政策」です。
米国政権は、アジア諸国を分断しながら、個別的にホールドするという巧妙な政策を採ってきました。
分断策のキーワードが、「共産主義国敵視政策」・「中台対立」・「朝鮮半島南北対立」・「反日意識」・「北方領土問題」です。

米国は、アジアが復興を遂げた日本を中心にしてまとまった存在になる可能性を徹底的に排除してきました。そして、愚かな日本政府は、米国の尻馬に乗った対アジア政策をとり続けてきたのです。

日本がアジアの中核となってまとめていくという「大東亜共栄圏」の可能性は、幸か不幸かなくなりました。
今後可能性があるのは、経済は日本中核で、政治は中国中核という政経二極のアジア統合です。

たぶん、愚かな統治者とメディアに領導されている日本は、それさえ実現できず、アジアのなかで政治的孤立化を深めていくと考えています。

鼻持ちならない中華意識や抽象的な現実認識しかできない中国政府には、嫌悪感や危うさを感じないわけではありません。


>北朝鮮の態度も急変します。

キム総書記は、小泉首相よりもモダニストです。

現在の北朝鮮の価値観的こだわりは、朝鮮半島(民族)の統一だけです。
そして、その方策としての軍事侵攻や工作活動は放棄しています。(工作活動を放棄したという意味ではなく、南北統一の政治工作活動の放棄です)
90年以降の統一手段は「緩やかな連邦制」ですし、韓国がそれに踏み切るためには、米朝和解が必要なことも理解しています。(日朝和解は付け足しです)

私が80年以降の北朝鮮の最高実力者であれば、ミニマムの武装レベルにして、占領したいのならお好きにどうぞという構えにしたでしょう。
人的物質的資源を軍事から民生に振り替えることでしか、北朝鮮の経済苦境を解消することはできません。

南北鉄道連結工事が始まったことを軽い動きとして受け止めてはいけません。
南北鉄道連結は、7月の経済改革や「新義州経済特区」よりも重要な動きです。
(南北鉄道連結は相互の軍事条件を根底から変えるものです)

南北鉄道連結の意義さえ理解できずに、“独裁キム王朝”叩きに狂奔している日本に好ましい未来が待っているとは到底思えません。

98年の「人工衛星打ち上げ」をミサイル発射だとして北朝鮮非難に終始して喜んでいるのですから、日本の知性には寒さを感じます。
(米国は人工衛星であったことを暗黙に認めています。軍事技術から言えば、弾道ミサイル発射よりも人工衛星打ち上げのほうがずっと高度で脅威です)


>日本は直ちに憲法改正が必要になり、核武装まで含めた検討を開始しなければならな
>くなります。米軍の存在でこれまで考えなくても良かったことをいやが上にも考えさ
>せられることになります。このような新たなバランスを築くための努力が周辺諸国と
>の軍事緊張をもたらすことになり、決して良い結果には至らないと思います。

個人的には、憲法を改正した上で核武装を含めた軍事力の再構築を志向しています。
一方で、国民多数が現行憲法を是として非武装を選択するのであれば、それはそれでよしという立場です。(その枠組みで対外政策を考えるということになります)

現在の日本がまず考えなければならないテーマは、中国や北朝鮮の脅威ではないのです。
周辺諸国の「反日・嫌日」意識を払拭できないまま米国のプレゼンスがなくなったときに、日本がアジアのなかでどういう位置に立たされるかということこそが最重要テーマです。

今回の北朝鮮との国交正常化交渉を経て国交正常化という過程は、そのような意味で、今後の日本の行く末を大きく規定するものになります。

米国政権及び米軍によって日本及びアジアの平和は維持されてきたという倒錯した認識を持っている人たちが統治者であり続ける限り、日本がアジアで孤立化していくことは不可避です。


最後に、「米中同盟」を“夢物語”だと考えている統治者は職を辞すべきです。

前にも書きましたが、米国が、経済が成熟し「デフレ不況」にもがいている日本よりも、外資ウェルカムで金融制度も未確立のなかで経済成長を続けている中国を選び取る可能性は高いのです。
今後世界情勢が変化し、“米ロ蜜月”が終わることも十分予測できることです。

また、米国が内向きになりアジアから米軍を引き上げた場合も、「米中同盟」が生まれる可能性があります。
駐留がない状態での日本との同盟では、アジアにある経済権益を守れないと考えるからです。(中国を基軸とするFTA交渉は順調に進んでおり、華僑ネットワークも強大です)

米国バンザイといくら唱えようと、これほど好きなんだと米国にすがろうと、米国政権の実利的判断で日本は袖にされてしまう立場でしかありません。

米国に愛されているとか、日米の経済利害は共通だとかと考える統治者は、「自国破壊者」だと断じます。

日米同盟よりも「米中同盟」が上位になったときの日本の地位がアジアでどのようなものになるかをイメージする必要があります。

日本は、北朝鮮との国交正常化交渉という好機を手にし、米国が中東戦争にのめり込もうとしている今こそ、アジア外交を根底から見直さなければならないのです。

否応なしに、米国の後ろ盾がなくなった日本という現実が招来されることになります。
(経済条件的にも、今次の「対イスラム戦争」が米国最後の一大軍事キャンペーンになります)

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