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“微温的政策”は「デフレ不況」克服の出発点だと考えています 投稿者 あっしら 日時 2002 年 7 月 27 日 17:59:52:

(回答先: 簡潔な反論 投稿者 匿名希望 日時 2002 年 7 月 27 日 02:47:11)

反論ありがとうございます。

自説の政策の問題は後述することにして、貴殿の日本経済に対する大局的認識についてまず反論します。


>言葉は悪いですが、もはやここまで来たら観念すべきです。小手先の如何なるビホウ
>策も通用しません。最低限のセーフティ・ネットは行政で確保しつつ、どんな苦境に
>も耐えて見せる、という国民一丸となった対応をしたいものです。

「最低限のセーフティ・ネットは行政で確保しつつ、どんな苦境にも耐えて見せる、という国民一丸となった対応」は、精神的態度としてとても重要なものだと思っていますが、経済論理的には誤ったものです。

平均的国民生活の切り下げ(総需要減)は即国民経済の低落に結びつき、それがさらなる平均的国民生活の切り下げ(総需要減)を招来するという悪循環に陥るだけの話です。

日本が現在と異なる経済的諸条件であれば、そうであっても、国民一丸となって耐えなければならないと私も考えます。

しかし、年間8兆円もの貿易収支黒字と10兆円超もの経常収支黒字を計上している国民経済が、たかだか(ことさらこう言いますが)、5.5%失業率・30兆円?の銀行不良債権・750兆円の政府債務が覆い被さっているからと言って、観念してしまう必要はありません。

10兆円の経常収支黒字ということは、資本収支がプラマイ0であれば、毎年10兆円の通貨が増加しているということになります。

世界中の国民経済で通貨余剰(価値がある通貨で)というのは日本くらいなのです。
(個々の経済主体ではなく、国民経済レベルの話です)

断言しますが、米国や発展途上国のような通貨不足に陥ってはいない日本経済は、政策的に打つ手があります。

通貨事象から言えば、95年から00年にかけて本来ならば資本化されるべき通貨が40兆円も“不胎化”されていることが、国民経済に「デフレ不況」をもたらしているのです。
(資本収支がプラマイ0であれば資本化されていない通貨量は同時期で96兆円になりますが、それは日本の輸出維持にある程度貢献しているということで対象から除外します)


>最後に金融の量的緩和について一言触れると、現実が正しく証明している通り、残念
>ながらこの政策に経済をインフレに導く効果はありません。規模を拡大しても同じ事
>です。問題は銀行の信用創造機能が崩壊の危機に瀕しているところにあるのであっ
>て、日銀のマネー供給に問題があるのではないからです。

言われるようなことからも、クルーグマン教授が提唱している「インフレターゲット論」の有効性を認めていません。

金融システムに関しては、「銀行の信用創造機能が崩壊の危機に瀕している」というレベルを超えて、“銀行の自立的存続自体が危機に瀕している”と考えています。
現在の経済状況が続く限り、銀行は、自己の存続維持を図るのが精一杯で、信用創造機能の回復を図ることはできません。

財政当局の方にこう言うのは気が引けますが、銀行は、政府と同じように過剰債務=過剰不良債権を抱えてのたうち回り、中長期の合理的判断で経済事象を見れなくなっています。
(過剰債務というのは不良債権の元になった貸し出しに使った預金のことです。バブル形成に貸し込みを行ってとんでもないしっぺ返しを受けたのですから、銀行経営者は、以前から合理的判断能力を失っていたとも言えますが...)

「金融システム」という視点では、優先株購入というかたちではなく返済する必要がない通貨を銀行に投入するかどうかという重大な岐路に立っているのです。
これは、一時的か長期的かは別として、80年代から続いている民営化の流れに真っ向から逆らう“銀行国有化”を実施するかどうかということを意味します。

今では部局のみならず省庁レベルで違う政府機構の担当分野ですが、「デフレ不況」から脱却するためには、「銀行の一時国有化」政策を実施すべきだと考えていますがいかがでしょうか?

現時点の“過剰”不良債権に見合う額なのか、自己資本比率を充足させるために必要な額なのかは別として、国費を使って返済する必要がないかたちでの増資を大規模に行うことでしか、金融システムの正常化は実現できません。

銀行名や経営陣は、大きな問題がないのなら、そのままでもいいのです。(合併が有効だと考えるのなら合併させてもいいし、経営陣に問題があれば変えればいいのです)

「金融システム」が安定したら、過日の公的資金を編成してもらうと共に政府保有株式を徐々に売却して国費を回収するという過程を踏むもよし、それ以外の政治的判断をしてもよしというふうに考えています。


対銀行については、このような政策を採らない限り、「デフレ不況」も克服できず、投入した公的資金も戻ってくることがないばかりか、再度、再再度の公的資金投入が必要になります。

(「金融システム」や不良債権処理についても、魔法の政策はありませんからね)

自説の政策に関する反論に移ります。

>日本経済の低迷と財政の危機的状況を抜け出すには、デフレの克服(インフレの招来)
>が不可欠である。そのためにはデフレ・ギャップの解消が必要であり、これは個人消
>費の増大によりなされる。この個人消費の増大は、税負担を高所得者層に相対的に重
>くする事(中低所得者層の可処分所得の増大)によって実現する。この結果、公定歩合
>引き上げなど諸金利引き上げに向けた体制が整い、デフレがマイルドなインフレへと
>転換してゆく。

これまで書いたことは、このようにまとめていただいてけっこうです。


>この考え方に対しやや刺激的な言い方をしますと、「この程度の事で今の難問が解決
>するなら、すぐにも必要な法案を成立させますよ。」ということになろうかと思いま
>す。

「貴殿の仰る微温的な(と、私は判断しました)政策」については、私自身も微温的な政策だと考えていますが、「効果を発揮しない」とは考えていません。

微温的な政策提示にとどめたのは、財政状況や80年代以降に定着していった経済価値観、そして、10年間も政策当局や通貨当局がもがき続けながらも克服できなかったことで醸成されている政策に対する不信から、国民多数派がなんとか了解でき「民主主義国家体制下における法案成立の難しさ」を乗り越えられるぎりぎりの政策とは何かを考慮した結果です。

98年から深刻化した「デフレ不況」から脱却するための出発点は、亀裂や混乱を生むドラスティックな政策ではなく、微温的な政策にとどめなければなられないと思っています。
(魔法の政策はないわけですし、政策に対する疑心暗鬼が満ちあふれているなかではやむを得ません)

供給=需要が供給>需要になっているギャップを、民主主義的に了解される税制による所得再分配で是正しようとしても限界がありますから、微温的な政策が発揮する効果は、「デフレ不況」から脱却するための出発点でしかありません。

しかし、デフレからインフレに転化することだけでGDPの押し上げ効果が生まれ、公的債務・私的債務・不良債権の実質価値も劣化していくことになります。(付随的効果として資産価格の下落も抑制されます)
確実にこうなるようにするために、公共投資(とりわけ土地購入)ではなく、最終消費財に向く政府支出を拡大していただきたいと考えています。
(公務員給与の引き上げでもいいのですが、民間世論はとうていそれを是認しないので他の支出方法を採ることに...)


微温的政策の重要な効果は、その政策の実施で状況が少しでも改善されることで、経済合理的な不況対策とはどういうものであるかが広く認識されるようになり、以降の政策立案と政策実施に大きく資することです。

(中低所得者に回したお金は否応なく経済主体に戻ってくるものです。そして、中低所得者にお金を回さなければ、経済主体や高額所得者の一部がぽろぽろとその地位から脱落していくことになります。これが現在の日本の実状です)


財政事情から、現状の日本は、政府支出で需要を拡大することを通じて供給を拡大することはできません。
ご指摘があったように私は既存の経済学に依拠するものではありませんが、これは、ケインズではなくセイの理論に立ち戻らなければ不況から脱却できないことを意味します。
すなわち、供給の拡大を通じて需要を拡大しなければならないということです。

貨幣経済ですから、供給の拡大は必ずしも財の供給拡大を意味するわけではありません。

財の供給量は変わらなくとも、供給サイドが支払う通貨量が拡大すれば、供給は拡大します。そして、供給が拡大すれば、需要も拡大します。ところが財の供給量は変わっていないのですから、需要の拡大により財の価格が上昇することになります。

ケインズ主義が有効性を失ったというのは、財の供給量を増加させるかたちでの需要拡大=供給拡大という政策が有効性を失ったということです。

経済合理性があっても、厳しい競争環境にある民間経済主体に即座にこの論理の実施を了解させることは困難です。
これが、微温的な政策を出発点にしなければならない最も大きな理由でもあります。


※ これに関するもう少し詳しい説明は、後刻投稿する予定の『【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:国民経済における余剰資本と余剰通貨 《年金問題の本質は“高齢化”にあらず》〈その11〉』をご参照いただければ幸いです。


最後に、簡単に現在考えている短期の政策をまとめます。


[短期政策のテーマ]

デフレから緩やかなインフレに転化させることで、失業者を減少させるとともに公的債務及び私的債務の実質負担を軽減する。

産業基盤の国内弱体化を防ぎ、長期的な経常収支の黒字確保をめざす。

これらを、財政支出(公的債務)の増加がミニマムになる政策で行う。


[短期政策の内容]

● 税制政策:「中低所得者減税」とその減税金額に対応した「高所得者増税」

● 金融政策:公的資金による返済不要の増資による銀行の“実質的”一時国有化

● 通貨政策:緩やかな公定歩合の引き上げと通貨の量的緩和政策の継続による実質マイナス金利の実現(但し、所得税変更後に実施。そうでなければ、量的緩和政策は働かず、さらに酷いデフレに陥り企業倒産の増加する)

● 財政政策:財政支出目的の優先度を人的活動力への対価支払いに移行

● 税制政策:設備及び就業者の追加的投資に対応した「法人税」減税

   ※ 利益額と雇用者数の関係をベースにした適用税率複数化「法人税」への変更
     を考えていますが、理解を得られるまでに時間が必要でしょう

● 金融政策:「不良債権処理」の先送り

● 資産価格:株価及び地価の公的買い支え政策の放棄
(株式や土地は、経済合理性のレベルまで下落すれば否応なく安定し、インフレが進行すれば価格は上昇に転ずる)


※ 失業対策として、「食糧自給率70%を目標とした農業基盤強化(小麦や大豆が中心)」を提示したいと思っていますが、国内世論及び対米問題もあるので、徐々に志向していけばと考えています。


[短期政策の捕捉的政策]

● それぞれの政策を実施する理論的根拠を政権が明確に説明する。

● 実質マイナス金利の実現・「不良債権処理」の先送り・株価及び地価の公的買い支えの放棄という政策実施で起きる金融機関の財務的問題については公的資金で対応することを明言する。

● 企業が抱える余剰人員については、その整理をできるだけ先延ばしするよう要請し、そのために必要な借り入れができるよう金融機関を指導する。

● 製造拠点の海外移転とりわけ“対日輸出拠点”目的での海外移転を抑制するよう経済界に要請する。(利益と販売を確保したいという企業の気持ちはわかるが、供給のないところに需要はないので、ますます販売不振と価格下落に陥る)


[短期政策の前提条件]

これまで採ってきた政策と現在志向されている政策の放棄

経済合理性のみならず、政治的に難しいなどご助言をいただければ幸いです。


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