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【「デフレ不況」からの脱却をめざして】 グランド・デザインを持ちつつも、まず第一歩の政策実施を  [政財界が望む「法人税減税」の活用方法] 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 29 日 21:43:46:

「匿名希望」氏は国家社会のグランド・デザインの必要性を強調されているが、私は、現状の苦境を脱する方法で了解が得られないようでは、グランド・デザイン(内容は不明だが革新的なもののようだと推測して)が受け入れられることもないと考えている。

また、「匿名希望」氏も『無題』のなかでため息をもらされているように、グランド・デザインを実施に移すチャンスである破滅的経済状況も訪れずに、だらだらと「デフレ不況」が進んでいくと思われる。

そうであるならば、グランド・デザインを内に秘めながらも、まずは現状の「デフレ不況」を解消していくための第一歩を踏み出すべきだと考える。
ここに提示する政策が効を奏せば、グランド・デザインも、破滅的経済状況を経ないで受け入れられる可能性があると思われる。

90年の「バブル崩壊」から傾向的にだらだらと続き98年から本格化した「デフレ不況」を脱却することが、将来のグランド・デザインを提示し納得を得られるためにも必要な条件だと考えている。


まず、「デフレ不況」について認識を整理したい。

“余剰通貨”という突き詰めた話を脇に置けば、「デフレ不況」の根源は、投資のために借り入れた資金を契約通りに返済できないほどの過剰供給力状態(供給力>供給>需要)に陥っていることにある。


● 「供給力>供給」の実態

端的に言えば、投入した固定資本を活かす供給(=資本)活動ができない経済状況になっているということである。
ある財を100万個/月生産できる体制を用意していながら70万個/月しか生産されていなかったり、10億円/月の売上を見込んで店舗を取得していながら、7億円/月の売上しか達成できていないというのが「供給力>供給」である。

より抽象的に言えば、100億円の固定資本で年間10億円の営業利益を見込んでいたのに、年間2億円やマイナスの営業利益しか上げられなくなっている状況である。

生産設備が十全には使われていないし、見込みの売上が達成されないのだから、当然、固定資本を活動させるために必要だと想定されていた従業者の数も減少していくことになり、失業者の増加につながっていく。

生産設備(店舗などを含む固定資本)がそのために借り入れた債務を返済できるレベルで稼働していない状況が続いているために、銀行の不良債権も増加している。

不良債権とは過剰債務であり、過剰債務となっている要因は、「供給力>供給」なのである。

バブルの後遺症としての不良債権もまだ残っているが、それは投機活動に貸し出した通貨が焦げ付いたものであり、ここでの考慮の対象外である。

投機活動で生じた不良債権問題は、政府がこの10余年実現しようとして失敗している土地価格の上昇で解決できることだが、産業及び商業経済主体の過剰債務=不良債権問題は、地価の上昇で解決できる問題ではない。

これは、住宅を考えればわかることである。投資ではなく住まいとして使っている住宅は、その資産価格がいくらになろうとも、住み心地には関係ないことである。
ローンが残っているとしても、問題は、資産=ストック価格ではなく、所得=フローである。
住宅=ストック価格が上昇しても、所得=フローがなくなれば、ローンの返済はできなくなり、住まいを売却しなければならなくなる。自分の住まいが高値で売れるのなら、借家も含めて他も高いのだから、住み替えもそうだが、住まいの負担が大きいことに変わりはない。
(資産価格の上昇が、いざとなれば利益を得て売れるという考えをもたらすことで、心の支えになることは否定しない。また、資産価格が下がれば、フローである所得がなくなったために売却しても債務を返済できないため、金融機関に焦げ付きができることも事実であるが、困るのは金融機関であって住宅保有者ではない)

この論理は、企業の過剰債務にも言えることである。デパートの資産価値が上昇したからといって、フローを生み出す資産を売却すれば債務のなにがしかを返済できるというだけであって、通常のかたちで債務を履行できるようになるわけではないのである。

小泉政権やメディアは、不良債権処理こそが「デフレ不況」を解消する道であると主張しているが、不良債権は「供給力>供給」が反映した事象でしかないのだから、不良債権をなくしたからといって「デフレ不況」が解消されるわけではないのである。

“投機の失敗”を別とすれば、不良債権は、「供給力>供給」を「供給力=供給」に近づけることでしか解決できない問題である。
それは、供給力を削減するか、供給を増加させるかという二者択一の問題になる。

供給力を現在の供給レベルまで削減する策を実施すれば、現状のGDPレベルである種の均衡が生まれるという論理は一応認められる。
そのための方法は、金融システムの安定を維持しながらということになるから、含み益をほぼ使い切った現状では、銀行の業務純益を不良債権処理に充当させて、相当する過剰債務企業を破綻させるというものである。
しかし、この方法は、対象企業について「現在供給>新供給」になるから、「供給力>供給」はそれほど解消されず、供給減少=需要減少であるから、財の価格は上昇に転じないどころか、「デフレ不況」がより深化することになる。

残る選択肢は、供給を増加させて供給力に近づけることである。
だからといって、物理的な財が増加するかたちの供給増加であれば、デフレ傾向を解消することはできないから、人件費や販売費の増加というかたちで供給を増加させなければならない。
しかし、過剰債務状態にありながら売上不振に陥っている企業は、供給(人件費)を増加することはできないし、そのような策が固定資本の償却や債務返済に貢献することもない。
追加的需要としての政府支出の増加が期待できない現状では、なんらかのかたちで供給が増加されることを通じて、固定資本の償却と債務返済ができるレベルまで需要が増加しなければならないことになる。

それができるのは、「デフレ不況」においても利益を上げている輸出優良企業である。そのような企業が、自社の財の供給量を増やさないまま供給を増加させる“労務政策”を採らなければならない。
そして、この政策は、財の価格を当座は上げられない経済状況であることから、該当企業の一時的な利益減少につながるものである。
(この隘路を解決するためにこそ、現在政府部内で話題になっている法人税減税を利用すべきであり、その内容は後述する)

過剰債務企業は、優良企業の供給増加による需要増加の恩恵を受けて、固定資本の操業率を引き上げるか、財の価格上昇を実現することにより、固定資本の償却と債務返済を継続できるようになる。(それができない企業は、「匿名希望」氏が言われるように、お取りつぶしの対象となってもやむを得ない)

「供給を増加させて供給力に近づける」方策は、利潤水準がでこぼこという実態のなかで、高い利潤水準を維持している企業の供給増加(財の供給量増加を伴わない)を始源として、国民経済の需要循環構造を通じて達成するしかない。

このような利潤の平準化政策は、高度成長期には国策を通じて行われてきたことでもある。


● 「供給>需要」の実態

端的に言えば、企業の供給(資本)活動に伴い支払われた給与・購買・投資・利潤・利子・配当などが、従来ほどの割合でも、財や用役の需要に向かっていないという状況である。

また、輸入を通じて財の供給が増加することでも、「供給>需要」という状況になる。

財の価格が下落し続けているというのは、政府支出も含めて、「供給>需要」のギャップが拡大し続けているということである。
供給(=資本)活動に伴って支払われる通貨のうち、財や用役に向けられずに金融取引に滞留されるものや貯蓄に回されながら投資されないものがあるのなら、その分を政府支出が埋めれば「供給=需要」になる。
(政府支出については、従来的手法であれば、現状以上は拡大できない財政状況にある。30兆円という財政赤字でも多すぎるというのが実態である)

輸出の増加は、「供給<需要」という「近代経済システム」にとって何よりの経済状況を生み出すが、輸出も増加が持続的に達成できる環境にないどころか、製品輸入の増加で「供給>需要」圧力が加わっている。

企業部門は、ただでさえ赤字になっているのだから、不要不急の財を購入することは考えられない。


残る部門は家計である。
60%ほどを占めている家計需要は、総体として、可処分所得が減少したか、消費支出を減少させたと思われる。

可処分所得は、98年に実施されたような、消費税率アップや所得税&社会保険料の負担増で減少する。これは、ノー天気な人で宵越しの金はもたないと豪語していても、消費額の絶対的上限になるものである。

もう一つの消費支出の減少は、“将来への不安”が引き起こすものである。
不況がいつまで続くかもわからず、失業の危機もあり、老後の年金もあてにならないと思われる現状であれば、できるだけ生活を切りつめて貯蓄に回すというのが“正常な”大人の判断であろう。

企業部門は経営状況で態度を変えるものだから、家計が抱える問題を解消しない限り、供給増加策を採っても、デフレの解消はおぼつかない。

供給増加策を効果的なものにするためには、同時的に、「低中所得者減税」を実施しなければならない。それも、恒久的なものであることを宣言する必要がある。

■ 「供給力>供給」のギャップ縮小策としての「法人税減税」

法人税減税を先行的に実施するという政策アイデアが出ているが、法人税は利益に対して課税されるものだから、その減税方法は多様なものが可能であり、経済状況を変動させる力にもなる。

予定されている法人税の減税を所属勤労者の給与水準を引き上げる方向に誘導できる内容にしなければならない。

人件費のみに限定せず、設備投資や研究開発投資への減税措置もそれなりに有効である。

人件費は償却期間もない無条件の「費用」だから、設備投資のように償却期間を短縮するかたちでのインセンティブは働かない。
インセンティブにするためには、前期からの人件費増加分を考慮して課税方法を決定しなければならない。
例えば、10億円の人件費が10億5千万円になったら、増加分の5千万円の50%である2500万円を所得から控除するといったものである。
黒字が2500万円であれば、この企業の所得は0円となる。

法人税減税予算の2兆円をすべて人件費増加インセンティブに活用すれば、10兆円ほどの給与所得者の所得増加となる。
これは、消費税税収を上回る規模だから、デフレ解消に必ずや資する。


■ 「供給>需要」のギャップ縮小策としての「低中所得者減税」

「低中所得者減税」は、「法人税減税」の効果性を高めるとともに、「法人税減税」の恩恵にあずからない勤労者の可処分所得を増加させる目的で実施する。

「低中所得者」とは98年の税制変更で実質増税になった層であり、「低中所得者減税」の規模については、最低限でも、98年の税制変更による可処分所得減少に見合うものでなければならない。

政府部内では課税最低限の引き下げも検討されているようだが、それはさらに「デフレ不況」を悪化させる愚かな政策であり、標準世帯で500万円までは所得税0円というのがが望ましい。消費税5%で、薄く広くという税負担は既に達成されているのである。


「低中所得者減税」に伴う税収減は「高所得者増税」で補うべきだと考えているが、それが政治的に無理であっても、「デフレ不況」の解消を第一義的に考えるのならば、「低中所得者減税」だけでも先行的に実施しなければならない。

「法人税減税」政策で、高所得者も所得が増加すると思われるので、「高額所得者増税」で税収の安定化をはかるべきであろう。

この二つの税制変更が、GDPにどれほどの影響を与え、税収もプラスマイナスでどうなるかについてはシミュレーションしていないが、それは本職の方にお任せしたい。


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今回書いた内容の基礎になっている考えを添付しますので、ご参照ください。

[短期政策のテーマ]

デフレから緩やかなインフレに転化させることで、失業者を減少させるとともに公的債務及び私的債務の実質負担を軽減する。

産業基盤の国内弱体化を防ぎ、長期的な経常収支の黒字確保をめざす。

これらを、財政支出(公的債務)の増加がミニマムになる政策で行う。


[短期政策の内容]

● 税制政策:「中低所得者減税」とその減税金額に対応した「高所得者増税」

● 金融政策:公的資金による返済不要の増資による銀行の“実質的”一時国有化

● 通貨政策:緩やかな公定歩合の引き上げと通貨の量的緩和政策の継続による実質マイナス金利の実現(但し、所得税変更後に実施。そうでなければ、量的緩和政策は働かず、さらに酷いデフレに陥り企業倒産の増加する)

● 財政政策:財政支出目的の優先度を人的活動力への対価支払いに移行

● 税制政策:設備及び就業者の追加的投資に対応した「法人税」減税

   ※ 利益額と雇用者数の関係をベースにした適用税率複数化「法人税」への変更
     を考えていますが、理解を得られるまでに時間が必要でしょう

● 金融政策:「不良債権処理」の先送り

● 資産価格:株価及び地価の公的買い支え政策の放棄
(株式や土地は、経済合理性のレベルまで下落すれば否応なく安定し、インフレが進行すれば価格は上昇に転ずる)


※ 失業対策として、「食糧自給率70%を目標とした農業基盤強化(小麦や大豆が中心)」を提示したいと思っていますが、国内世論及び対米問題もあるので、徐々に志向していけばと考えています。


[短期政策の捕捉的政策]

● それぞれの政策を実施する理論的根拠を政権が明確に説明する。

● 実質マイナス金利の実現・「不良債権処理」の先送り・株価及び地価の公的買い支えの放棄という政策実施で起きる金融機関の財務的問題については公的資金で対応することを明言する。

● 企業が抱える余剰人員については、その整理をできるだけ先延ばしするよう要請し、そのために必要な借り入れができるよう金融機関を指導する。

● 製造拠点の海外移転とりわけ“対日輸出拠点”目的での海外移転を抑制するよう経済界に要請する。(利益と販売を確保したいという企業の気持ちはわかるが、供給のないところに需要はないので、ますます販売不振と価格下落に陥る)


[短期政策の前提条件]

これまで採ってきた政策と現在志向されている政策の放棄

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