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連続的な需要構造変化 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 18 日 06:39:04:

(回答先: バブル末期の90年と比べると、この10年で平均給与が10%ほど上昇している 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 18 日 06:16:40)

#90年代の場合、βの上昇を遥かに上回る大恐慌タイプ(バブル期の逆)のsの急減という需要構造の変化が生じているが、それ(バブル崩壊に伴う、企業の株価、担保価値の急低下と金融機関の不良資産の急増、逆資産効果)だけが原因だろうか?高度成長期は、生産力の急激な上昇があり、一方バブル崩壊後は不況3業種を中心とした生産性の急低下があったが、それは不況を継続させた要因とは言えないか?

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/8086/rice/rice12.html
1. 資本蓄積の加遠と減速
 戦後日本の資本蓄積のテンポは利潤率の変動にほぼ規定されている。米国と比べて、日本の法人企業の利潤率は大きく変動している。高度経済成長期にあたる1956〜70年において、日本の法人企業の資本蓄積率は平均12%という高い水準にあったが、この高い蓄積率は平均24%という高い利潤率によって可能となった。また景気循環を捨象すれば、利潤率の上昇傾向およぴ資本蓄積の加速傾向が認められることも高度成長期の特徴である。1970年代半ばを堺として、高度成長は終焉し、日本経済は「安定成長期」とよばれる時代に移行する。1970年には32%あった利潤率は76年には15%に低下した。そして、1980年代後半のパブル景気が崩壊した1990年代においては、利潤率は低下傾向を示し、資本蓄積は減速している。戦後日本における資本蓄積の、このような加速、安定、減速はどのような要因によって生じたのだろうか。これを、マクロ経済変数を用いた、利潤率変化の簡単な要因分解によって検討しよう。

 利潤率上昇率は次のようにあらわすことができる。

 利潤率上昇率=資本分配率上昇率+資本係数低下率+相対価格低下率

 上式の第1項は、所得分配変化が利潤率におよぽす効果をあらわす。また第2項は資本係数変化がもつ効果である。第3項は、産出フローではかった固定賢本ストックの価格(相対価格)の変化がもつ効果である。相対価格変化をもたらす主な理由は、固定資本として使われる財(以下、「ストック財』とよぶ。)とその他の財との間で労働生産性上昇率が異なることである。この労働生産性上昇率格差は、様々な事情によって発生する。新技術の出現テンポの違いなど純技術的事情もあげられるが、第2次大戦後のような成長経済においては2節で述べるような動学的収穫逓増効果が重要である。動学的収穫逓増効果がはたらく易合、ストック財とその他の財との間の需要成長率格差(すなわち最終需要の構造変化)が労働生産性上昇率格差を発生させる。したがって第3項は、究極的には生産技術や最終需要の構造変化が利潤率におよぼす効果であると解釈できる。利潤率変化を、このような3つの要因に分解した結果(宇仁1998:表6-1)から、次のことがいえる。

 日本の高度経済成長期において、利潤率上昇を引き起こした要因は、資本係数の低下と、相対価格の低下であることがわかる。とくに相対価格低下率は年率2.6%であり、これは利潤率上昇率5.O%の約半分を説明する。これは生産技術や最終需要の構造変化が利潤率上昇に大きく寄与していることを意味する。1960年代において、所得分配率は安定的に推移したために、利潤率にほとんど影響していない。1960年代に入って、労働分配率が安定した理由としては、1960年に公務員が春闘に参加するなど、春闘を基軸とする賃金決定システムが全社会的に確立したことが挙げられる。

 1970年代前半の利潤率低下は、資本分配率の低下すなわち労働分配率の上昇と、資本係数の上昇によって、ほとんどが説明できる。とくに70年代前半に生じた約15%ボイントに達する労働分配率のジャンプの影響が大きい。70年代前半に労働分配率をジャンプさせた原因としては、高度成長末期に、労働力不足が顕在化し、その結果として労働組合側の賃金交渉力が強まったこと、さらに、この力は経済成長が鈍化した後も一定期間、慣性により持続したことがあげられる。また、1976〜90年においては、利潤率は安定的に推移する。この安定の要因は、所得分配率が安定的であったこと、ならびに構造変化にもとづく相対価格低下がもつ利潤率上昇作用が資本係数上昇がもつ利潤率低下作用を打ち消したことである。しかし1990年以降は、労働分配率が上昇し始めたこと、および資本係数の上昇テンポが加速したことによって、利潤率は低下傾向を示す。構造変化にもとづく相対価格低下は続いているが、労働分配率と資本係数の上昇がもつ利潤率低下作用を打ち消すほどではない。

2. 不均等な労働生産性上昇
 先に述べたように、戦後日本においてストック財の相対価格が持続的に低下している主な理由として、ストック財と、それ以外の財との間で労働生産性上昇率が異なることが考えられる。『接続産業連関表』などから、ストック財とそれ以外の財に分けて労働生産性上昇率を求めることができる。日本においては1970〜75年を除いて、ストック財の労働生産性上昇率がその他の財のそれを上回るという格差が頭著である。他の国においては、このような労働生産性上昇率格差は存在するのだろうか。他の国について日本と同様の計算を行うことは困難であるので、消費財で測った投資財の相対価格の推移から推測してみよう。OECD加盟国25カ国の国民所得統計の消費デフレータと投資(住宅投資を除く)デフレータから、消費財で測った投資財の相対価格が算出できる。25カ国の中で、相対価格の長期的な低下傾向が最も顕著なのは日本である。日本は1960年の相対価格を1として93年にはO.51に低下する。先進国の大部分では93年の値は0.8〜1.Oである。このような相対価格の推移から、ストック財とその他の財との労働生産性上昇率格差は日本において顕著な現象であると推測できる。

 なぜ日本においてこのような労働生産性上昇率格差が生じるのだろうか。以下ではカルドアの「動学的収穫逓増」という概念を手ががりにこの問題を考察する。カルドアは1953〜64年の先進12カ国のデータを使って、産出高成長率gが高いほど生産性上昇率pは高くなるという関係を実証した。この動学的な関係は「フェルドーン法則」あるいは「カノレドア第2法則」と呼ばれる。製造業に関してカルドアが行った回帰分析の結果は、p=1.035+0.484gであった。

 フェルドーン法則に示されるような「動学的収穫逓増」が作用していると仮定すると、日本において他の国よりも大きな労働生産性上昇率格差が発生する条件として次の2点が考えられる。第1に、産出高あるいは需要の成長率に顕著な格差が存在することである。ストック財の産出高の伸びがその他の財の産出高の伸びよりも大きい場合、労働生産性上昇率格差が発生するだろう。第2に、産出高成長率にかかる係数の値(カノレドアの推計式では0.484)が、日本では他の国よりも大きいことが考えられる。この係数の値が大きい場合、仮に他の国と産出高成長率格差が同じとしても、大きな労働生産性上昇率格差が発生するだろう。すなわち、この係数の大きさは、動学的収穫逓増効果の強さをあらわす。

 以下では、大きな労働生産性上昇率格差を発生させるこの2つの条件について検証する。3節で第1の条件について、4節で第2の条件について検証する。

3. 連続的な需要構造変化
 ストック財とその他の財に分けた最終需要の実質成長率を見ると大部分の期間においてストック財の需要の伸びがその他の財の需要の伸びを上回っている。このような需要成長率の格差は、最終需要の構成を変化させ、構成比でみれば、最終需要全体に占めるストック財の構成比が増加する。すなわち、戦後日本において最終需要の構造変化が持続的に起きた。どのようなメカニズムで、ストック財にかたよった需要構造変化が起きるかにっいて考察しよう。ストック財の最終需要は、投資、消費、輸出に大きく分けられる。第1に、投資は、利潤所得を原資として行われるが、何らかの要因により企業の投資意欲が高まると、利潤所得にしめる投資額の割合が増加する。sであらわされるこの割合は「資本家の貯蓄性向」と呼ぱれ、利潤率と並んで蓄積率に大きな影響を及ぼす変数である。sの上昇は、ストック財にかたよった需要構造変化につながるだろう。第2に、総消費支出の一部分もストック財に向かう。たとえぱ住宅建設や自動車、家電製晶などいわゆる「消費財機械」の購入である(本稿では、通常、投資に分類される住宅建設を消費に含めている)。このようなストック財への支出が総消費支出に占めるシェアをβであらわす、いわゆる「フォード主義的消費様式」の普及はβの上昇をもたらす。βの上昇も、ストック財にかたよった需要構造変化につながるだろう。第3に、機械輸出の増加も、ストック財にかたよった需要構造変化につながるだろう。ある程度の貿易バランスが保たれると仮定すると、ストック財を輸出する国は、その他の財を輸入する。このようなパターンの貿易が拡大するとき、その国の国内生産はストック財への特化がしだいに進むだろう。ストック財の輸出の指標として、国内投資需要量に対するストック財輸出量の比率を用い、これをγであらわす。

 戦後日本におけるs、β、γの推移(宇仁1998:表6−2)を見ると、いずれについても一定のトレンドを持った変化ではない。上昇している時期もあれぱ低下している時期もある。s、β、γの個々の変化が複合されて、最終需要の構造変化が起きる。この複合的な需要構造変化の利潤率に対する効果は、「需要構造パラメータ」と呼ぶ変数kの変化がもつ効果に集約できる(宇仁1998, pp. 56-67参照)。kは、ストック財需要額の利潤所得に対する比率である。賃金所得の利潤所得に対する比率をλであらわすと、k=(γ+1)s+β(λ+1−s)である。他の変数を不変とすれぱ、S、β、γ、λの各々の上昇は、いずれもkの上昇をもたらす、高度経済成長期においてはkは急上昇している。1975年には1955年の値の2倍強の水準に達する。70年代半ぱ以後はゆるやかな上昇にかわるが、上昇トレンドは続いている。80年代後半のバブル経済期の上昇は顕著であった。このようなkの持続的な上昇は米国においては見られない。戦後日本における需要構造パラメータkの持続的な上昇はどのようにしてもたらされたのかについての説明は省略するが、次のようにまとめられる。

 1955〜60年--sを上昇させる「投資主導型j構造変化
 1960〜70年--βを上昇させる「消費主導型」構造変化
 1970〜75年--λを上昇させる所得分配変化
 1975〜85年--γを上昇させる「輸出主導型」構造変化
 1985〜90年--sとβを上昇させる「パブル主導型」構造変化

 戦後日本において、このような内容の異なる構造変化が次々と連続的に起きたために、需要構造パラメータkは持続的に上昇したのである。

4. 大きな動学的収穫逓増効果
 上記のような最終需要の構造変化が生じると、ストック財の産出高成長率がその他の財の産出高成長率よりも高くなる。産出高成長率gが高いほど生産性上昇率pは高くなるとい「フェルドーン法則」にもとづくと、これはストック財とその他の財との間で労働生産性上昇率の格差を発生させる。この格差の大きさは、この動学的な関係を示す式における産出高成長率gの係数の大きさにも依存する。日本においてこの係数の大きさは他の国よりも大きいのかどうか、すなわち日本の動学的収穫逓増効果は他の国よりも強いのかどうかを検討しよう。

 日本、米国、ドイツ、フランスについて、1976〜93年の年次データを使って回帰分析を行っ一た。全産業、製造業、およぴストック財を生産する部門である金属製品・機械製造業という3つの異なる産業分類レベルで回帰分析を行った。製造業の結果を示すと、日本は、p=0.18+0.85gであり、米国は、p=1.53+O.37gである。この回帰分析の結果から、次のことがいえる。米国と比較すると、日本の特徴は、定数項の値が小さく、gの係数が大きいことである。また、1976〜93年の製造業について、ドイツの推計結果は、p=O.9+O.65gであり、フランスの推計結果はp=2.1+O.69gであった。gの係数の大きさ、すなわち動学的収穫逓増効果の強さは、この4ヵ国の中では日本が最も大きい。したがって、仮に他の国と需要成長率格差が同じとしても、日本では大きな労働生産性上昇率格差が発生するだろう。

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