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戦後日本の構造変化 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 18 日 20:15:38:

(回答先: 連続的な需要構造変化 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 18 日 06:39:04)

有意義で面白い論文を掲載していただきありがとうございます。


>#90年代の場合、βの上昇を遥かに上回る大恐慌タイプ(バブル期の逆)のsの急減
>という需要構造の変化が生じているが、それ(バブル崩壊に伴う、企業の株価、担保
>価値の急低下と金融機関の不良資産の急増、逆資産効果)だけが原因だろうか?高度
>成長期は、生産力の急激な上昇があり、一方バブル崩壊後は不況3業種を中心とした
>生産性の急低下があったが、それは不況を継続させた要因とは言えないか?

結論を先に書くと、「不況3業種を中心とした生産性の急低下があったが、それは不況を継続させた要因とは言えないか?」は、そうとは言えないと回答します。

生産性は通貨額で評価されるものですから、国内需要に依存し、固定資本に占める不動産が大きな業種は、バブル崩壊とそれに続くデフレ気味不況とデフレ不況で生産性を下降させます。(これは、流通や不動産について言える説明です)

想定した需要増加に基づいて準備した供給力は、需要増加が予測を裏切るものであれば大きな過剰となり、それが借り入れによって購入された物であれば、債務の履行が困難になります。
そして、何とか企業を存続したいと追加借り入れを求めても、担保価値の低下やその下落傾向から必然の担保価値掛け率の低下によりほとんど不可能になります。

ゼネコンは、愚かなバブルへの関わりで損失を被るとともに官民からの受注額の減少で供給力過剰に陥っています。

利潤率の歴史的変動については、

1)「高度成長期」:米国型生産設備への更新による急激な生産性(「労働価値」)上昇
端的に言えば、10人で1000個の財を生産していたのが、10人で5000個の財を生産できるようになったのに、給与水準をそれほど上昇させなかったことが、高い利潤率の物質的条件です。
しかし、生産性が上昇しても給与水準を上昇させないで高い利潤率や経済成長を維持するためには、輸出増加・設備投資増加・赤字財政支出増加といった需給バランスが調整できる条件が必要です。

それがなければ、完全雇用の継続を想定すると、同一賃金水準で生産性が5倍になれば、財の価格は1/5になります。(放置していれば、とんでもないデフレになることを意味します)

鉄鋼や機械など生産財の価格は緩やかな下落にとどめ、最終消費財の価格は上昇させていくマクロ状況を輸出増加・設備投資増加・赤字財政支出増加で実現したことが、高い利潤率と経済成長を支えました。

輸出増加は、国内に供給される財の量を減少させます。
資金不足状況での設備投資増加は、「信用創造」による需要をもたらし、供給<需要というインフレ要因になります。
赤字財政支出も、「信用創造」による需要をもたらし、供給<需要というインフレ要因になります。

給与水準は、インフレの補填が基本で、少しずつ実質ベースでも上昇していくというもので済みました。(勤労者は、企業が資金不足であることも知っており、未来に期待して賃上げを我慢したのです)

GDPに占める輸出増加・設備投資増加・赤字財政支出増加の割合が高ければ、給与水準を抑制しても需要不足に陥ることはないので、高い利潤率と高度成長を確保することができます。

生産性上昇が限定的な農業は、米価政策によって、高度成長の恩恵が配分されました。


2)「安定成長期」:日本型生産方式による緩やかな生産性(「労働価値」)上昇

TQCや創意工夫により、米国型生産設備を日本型に徐々に切り替えながら、生産性を高めていった過程です。
高度成長期に見られたスクラップ&ビルドのような急激な生産性の上昇はありません。

この時期は、繊維・鉄鋼・家電などが対米輸出自主規制となり、輸出増加による供給<需要という好条件を高めることが困難になっています。
(生産性をいくら上昇しても、輸出増加が政治的に抑えられれば、デフレの要因になります)

設備投資も、スクラップ&ビルドや輸出増加に伴う供給力増強の時代が終わっていますので、寄与率が下がりました。

この段階で労働分配率を上昇させたことが、赤字財政支出の増加とともに、鈍化した輸出増加や設備投資増加で生じる需要不足を補いました。

論文は、「70年代前半に労働分配率をジャンプさせた原因としては、高度成長末期に、労働力不足が顕在化し、その結果として労働組合側の賃金交渉力が強まったこと、さらに、この力は経済成長が鈍化した後も一定期間、慣性により持続したことがあげられる」としていますが、何より、第一次石油ショックに伴う破格のインフレとスタグフレーションが主要因です。
賃金の下方硬直性により固定的になったことが、安定成長期の日本経済を“結果的に”支えたのです。

財の価格上昇は生産性の上昇や輸出増加の鈍化などで抑えられているので、賃金水準の上昇がサービス業の需要拡大に貢献し、現在的な産業構造を形づくっていきました。

失業率が2%未満という完全雇用状況が、幅広い産業分野の給与水準を優良企業の給与水準に近づけさせる誘引でもありました。


と、考えています。


利潤が、需要条件の変動のなかで、再投資(資本蓄積)に向けられなくなったことが“余剰通貨”問題の起源です。

高度成長期は、絶対的な資金不足で、利潤のみならず借り入れまで行って投資を拡大させました。この時期は、実質的には“余剰通貨”がなかった時代です。

安定成長期は、労働分配率の上昇及び「列島改造ブーム」に便乗した土地投機や株式投資で、“余剰通貨”がそれなりに打ち消されました。

不動産や株式に対する投機で“余剰通貨”を打ち消すという最後の徒花が、80年後半の「バブル形成」です。

※ 金融取引に励んでいた人たちは、“余剰通貨”を打ち消すという自覚をしていたわけではなく、ただたんにもっと儲けたいと思って励んでいましたが...

そして、「バブル崩壊」後は、資本化にも金融取引にも使われない“余剰通貨”が拡大し、本格的な「デフレ不況」とともに、“余剰通貨”の量がさらに拡大しています。

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