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「不良債権」が「デフレ不況」の根源的要因ではない − 50兆円で不良債権を買い取っても「デフレ不況」は解消しない − 投稿者 あっしら 日時 2002 年 10 月 29 日 16:43:27:

(回答先: 金融危機とデフレ経済を解く(1) 投稿者 たにん 日時 2002 年 10 月 29 日 02:10:18)

スーパー銭湯さんから私の主張より合理的なデフレ解消策としてご紹介をいただいたので検証をさせていただく。(合理的な政策提案であれば、当面の経済に関する書き込みをしなくてよくなるので助かる)


『【国民経済破壊の「竹中プロジェクト」に代わる『銀行再生策』】 日本経済に必要なのは「合理的な不良債権処理」』( http://www.asyura.com/2002/hasan15/msg/869.html )で書いたように、銀行の不良債権問題は、解決しなければならないものだし、解決することで経済・金融政策がスムーズに運用できること条件が整うことは確かである。

しかし、不良債権問題が解決したからといって「デフレ不況」が解消できるわけではないのである。

吉田繁治氏は、竹中大臣などと較べればずっと良質な経済学者だと判断するが、氏の主張でデフレ不況が解消することはない。

吉田氏は、結論として、

>政府と日銀が取るべき政策は、
>(1)政府は50兆円を準備し、不良債権を[簿価−引当金]の価格
>で銀行からRCC(整理回収機構)が買い取り、銀行の貸借対照表か
>ら落としてオフバランス化する。
>(2)そのための国債発行は、日銀が全部を直接引き受ける。
>(3)同時に日銀はマネーサプライで7%の増加、物価で2%の上昇
>を図ることを宣言する。

吉田氏は、「デフレ不況」の根源的な要因が不良債権にあると判断しているようである。
しかし、それが「デフレ不況」に向かう引き金であることを認めるとしても、デフレ・スパイラルに陥った根源的な要因ではない。
「デフレ不況」は既に金融問題ではなく、非金融レベルでの財や用役の供給と需要のギャップ問題なのである。

だから、不良債権をゼロにしたとしても、デフレギャップが緩和されなければ、マネーサプライ(貸し出し)も増加せず、新たな不良債権が生まれることになる。

デフレギャップの解消法こそが求められるものであり、「マネーサプライで7%の増加、物価で2%の上昇」を実現する方策を具体的に示す必要がある。


吉田氏は、この後ろに、「ハイパーインフレにはなりません。世界の(潜在力としての)商品供給量が超過状態にあるからです。断言できます」とインフレ懸念を払拭する説明をしているが、それに対しては異論はない。


>▼仮説

>最初に、立論の導きの糸を示します。

>(1)12年前のバブル経済の崩壊を経て、日本は21世紀初頭に世
>界を襲うはずのデフレ経済の先頭に立っているのではないか?

>(2)地価の下落から始まった日本のバブル崩壊を、米国と西欧は8
>年遅れの株価崩落という形で経験しつつあるのではないか。

>以上二点が、私の仮説です。

「世界同時デフレ不況」を予測しているものとして、(1)の仮説に同意する。

(2)については、日本政府・日銀の誤った政策により日本の通貨的“富”が米国に流出することで、米欧の「デフレ不況」を先送りさせたと考えている。

90年代後半の「米国の繁栄」は、日本の通貨的“富”が支えたのである。


>▼資本

>【日本】
>資金が銀行を通じて供給される日本では、担保となる地価の下落(商
>業地75%、住宅地60%)が、通貨(=信用)の収縮、つまりデフ
>レの根底にありますね。

地価の下落が「信用収縮」の一つの要因だとしても、地価が下落し続けている経済要因を考える必要がある。
地価の下落は直接的には80年代後半のバブルの反動であり、98年以降は、デフレ・スパイラルに陥っているので、地価も下落していくのが経済論理に適った事象である。

「信用収縮」を安易に地価下落に結びつけるべきではない。
担保は最後の支えであり、無担保でも貸し出しが安全に回収できる経済状況なのかどうかが問題なのである。

>これは、資本が旧来のものから他のものに逃げる恐慌です。
>資本主義の資本は、株数×株価=総時価です。

>日本・米国・西欧の 「資本主義」で同時に、
> ・20世紀型の(有形の)工業経済から、
> ・21世紀型の(無形の)情報経済への移行が起こっていると思え
>  るのです。

>市場参加者のマネーは、情報経済の資本をまだはっきりとは見ていな
>い。次の図に示す「整列」はまだ起こっていない。

「資本主義の資本は、株数×株価=総時価」ではなく、借り入れによる投入を含む使用総資本である。

「論議雑談」で池田信夫氏の論考を批判したが、吉田氏も、現代人が陥りやすい“知価論者”とお見受けする。

「情報経済」は基礎として「工業経済」や「農業経済」があって初めて成立するものである。
(「工業経済」や「農業経済」は、「情報経済」を内に持つものであり、ことさら外に必要としないものである)

※ 参考書き込み

『世界が見えていない世迷いごと』
http://www.asyura.com/2002/dispute3/msg/475.html


>20世紀では知識は物的資本(土地・設備・機械)に従属していまし
>た。

>大企業は成功した資本であり、土地・設備・機械の有形資産と標準作
>業の労働者を大量に抱えた。そうした20世紀の大規模組織は、30
>億人の途上国の経済へ移行する。

>先進国では、資本のコアは知識による差異化になる。
>土地・設備・機械と標準作業は知識資本に従属する。

“優良グローバル企業”がより低いコストを求めて途上国に製造拠点を移すということと、産業資本が金融資本の支配に従属することや本社機能が開発・管理・販売・金融に絞り込まれていくということの説明でしかない。

労働活動力が生み出す収益の一部を得るだけの「情報経済」で先進諸国の国民全体を養うことはできないのである。
日本は、貿易収支黒字という「工業経済」でありながら「デフレ不況」に苛まれている現実を直視しなければならない。


>▼名目金利と実質金利

>住宅を事例に、名目金利と実質金利の関係を示します。

>住宅ローン金利が(本当の)低金利で、住宅価格が以前の半分なら皆
>が買いに走る。住宅の質の悪さと狭さへの不満は強い。ニーズはある。
>しかし、住宅が売れない。なぜか?ということです。

>1992年頃までは、今の2倍から4倍の価格の住宅に、ローン金利
>は7%〜8%で需要はついていた。

>今なら東京三菱銀行が01年12月に始めた初期3年間の固定金利1
>%の住宅ローンがあり、他行も追随しているにかかわらず需要の盛り
>上がりはない。企業の設備投資も同様です。

>理由は、
>  住宅ローンの[名目]金利が固定で4%レベルでも、
>  住宅は、さらに値下がりするという予想があるため、
>  ローン金利に値下がり予想を加えた[実質]金利は、
>  高いままになっているということです。

>銀行の仲介機能が健全でも、物価と資産の値下げ予想があるときは、
>実質金利が高止まりし、キャピタルロスが見込まれるため、増加借り
>入れ→投資ではなく、資産処分をして借入を減らすことが正しい選択
>です。

>名目金利(4%)+資産の下落率(5%)⇒実質金利(9%)

>以下のような「実質金利予想」がある。
>資産価格の予想を加えれば、今は低金利ではなく高金利です。

金利が低金利ではなく高金利であるという認識は重要である。

しかし、住宅需要を考えるときには、実質金利や資産価格に加えて、名目所得の変動を考慮する必要がある。
債務の返済は、個人も企業もフローによって賄われる。

70年代や80年代は、実質金利の低さに加え、インフレ率を超える名目所得の増加、すなわち実質所得の増加が見込めていた。これが、数千万円の住宅ローンも何とかこなしていけるという展望をもたせていた。

住宅に関して言えば、住居として使うものだから、実質所得が見込み通りに増えるのであれば、住宅価格が下がっても影響はない。買い換えも、その時点で他の住宅価格も下がっているのだから影響はない。


>このデフレ予想(物価と資産の下落期待)がある限り、
>(1)銀行が融資リスクをカバーする自己資本を持っていようがいま
>いが、つまり、政府が大量の資金を破綻状態の銀行に投入し、融資機
>能を正常化しても、
>(2)予想資産価格と物価の下落で構成される「実質金利」が高止ま
>りしていれば、言い換えれば、資産価格と物価の下落が続けば資金需
>要は増えず、投資も増えない。

デフレ予想のなかで企業の借り入れ意欲が沈滞する説明としては正しいものであり、重要な視点である。

しかし、だからといって、マネーサプライを7%増加させて、インフレ率を2%にすると宣言すればこの問題が解決すると結論付けるのは短慮と言わざるを得ない。


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