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「政府紙幣」とインフレ問題 − ケイちゃん的インフレ理解の罠 −
投稿者 あっしら 日時 2002 年 11 月 17 日 14:44:30:

(回答先: 政府紙幣は悪性インフレやハイパーインフレに本当に繋がるのか 投稿者 ケイちゃん 日時 2002 年 11 月 17 日 06:26:41)


ケイちゃん、こんにちわ。

心ある人から見れば、「デフレ不況」下でインフレ問題を論議するなぞ何をたわけた床屋談義をしているんだということになるのでしょうが、デフレにしろ、インフレにしろ、経済論理と経済価値観の結びつきが織り成す経済事象ですから、現時点ではブラックボックスで不変である経済論理ではなく、もう一方の経済価値観を考えるということで重要な論議だと確信しています。

(悪性インフレとデフレは表裏一体の経済事象で、経済価値観の大枠も同じです。内容はインフレ論議ですが、経済価値観論議でもあるという視点で論議に参加していただいたり、読んでいいただければ幸いです)


「政府紙幣」発行即悪性インフレという考えはしていないことや、「政府紙幣」発行に反対の立場ではないことはご理解いただいていると思っています。


>あっしら氏は(日本においても)経済価値観の転換がなければ政府紙幣の投入は悪性イ
>ンフレに至り、悪性インフレはハイパーインフレに繋がってゆくと予言する。これは
>本当だろうか。

>良く知られるように、インフレにはコスト・プッシュインフレとディマンドプル・イ
>ンフレが存在するとされる。

>政府紙幣の投入によって見られるインフレとはどちらであろうか。

>政府紙幣によって原材料や燃料の価格が上がることはないので、インフレが発生する
>としたらそれはディマンド・プル型のものとなるであろう。その過程を通じて賃金の
>上昇が見られるはずだから、この賃金上昇をコストの上昇と見るならば、途中からは
>このディマンド・プル型インフレはコスト・プッシュ型インフレとの複合型に移行し
>てくると想像される。いずれにせよ、オイルショックの時のような純正コスト・プッ
>シュ型インフレとは全く別の経済現象になるはずだとの認識が重要である。

ディマンド・プル型だとは思いませんが、インフレに至る流れの説明は基本的に同意します。

大まかな流れは、

1) まず、需要が増加した財や用役を供給している企業の稼働率(生産性)が上がり、利益が増加する。

2) 次に、供給力不足に陥った企業が残業時間や雇用を拡大する。(失業者の減少が始まる)

3) さらに供給力不足になれば、供給力増強のための設備投資が始まり、それに向けた雇用の拡大も起きる。(無様に醜態を曝している銀行も貸し出し意欲を持つようになっているはずです)

4) 国民の可処分所得増加のなかで新規事業が起きる。


という感じでしょう。

インフレ(物価上昇傾向)が始まるのは、2)の段階からだと予測します。
可処分所得の増加+政府紙幣(政府需要)の効果で、“企業の価格上昇願望”が実現されることになります。

1)の段階から企業の支払い余力は高まっていますから、賃上げもできる状況にもなっています。インフレになれば、インフレ率相当の賃上げは行われることになるはずです。

国民経済は産業連関的に動いていますから、直接の政府需要がない企業も、でこぼこはあるとしても、可処分所得の増加とともに需要が増加する恩恵に浴することになります。

4)の段階まで達したら、政府紙幣は、目標インフレ率で収まるように発行額を制限していけばよくなります。
国際交易が一定であれば、「供給=需要」が実現されていれば物価変動は生産性の上昇ペースで下落しますから、生産性上昇率+目標インフレ率で通貨量を増加させることになります。現実的には「供給>需要」ですから、(生産性上昇率+目標インフレ率)による増加に供給>需要のギャップ分を加えた額になります。
日銀券の発行を優先させるとしたら、日銀の政策をにらみながら、政府紙幣の発行量を決めることになります。

こうなれば、国民こぞって政府に拍手喝采を送ることになるでしょう。

結論めいた言い方になりますが、こうであったのが高度成長期なのです。

(高度経済成長期の経済条件や経済価値観を思い返しておくのも大事です。企業の利益よりもGDP的成長と国民生活の向上が優先され、完全雇用でありながら、国外進出をほとんど考えず生産性の上昇で人手不足を補っていた時代です)

「政府紙幣」の代わりが、輸出の増加であり、建設・赤字国債による財政支出の増加です。

当時の勤労者の多くは物価高に不満を持っていましたが、実質所得は1年後という遅れながら上昇していましたら、悪性インフレではなく、インフレだと言えます。

次に、そうはならない場合を想定します。

1) まず、需要が増加した財や用役を供給している企業の稼働率(生産性)が上がり、利益が増加する。

2) 次に、供給力不足に陥った企業が残業時間や雇用を拡大する。(失業者の減少が始まる)

1)と2)は、政府需要が国内供給活動に依存している財や用役に向けられれば、該当企業は間違いなくそうなります。
公共事業・福祉関連サービス・研究開発などはそのような効果を上げます。


3) さらに供給力不足になれば、供給力増強のための設備投資が始まり、それに向けた雇用の拡大も起きる。(無様に醜態を曝している銀行も貸し出し意欲を持つようになっているはずです)

ここからが問題になります。
政府需要は対象をコントロールできますが、供給活動従事者の増加した可処分所得の使途や個人消費向けに財を供給する企業の供給活動をコントロールすることはできません。

特に問題なのは、前から書いているように、増加した需要への供給活動がどこで行われるかということです。
国内製造の利益が50で、外国製造の利益が60だとしたら、企業は利潤追求を本是としているのですから、利益がより大きい外国製造を選択するはずです。
直接の利益だけではなく、国内生産設備は老朽化し、外国生産設備は新設であるとか、地価を含む新規設備投資コストが外国のほうが低いという条件があれば、外国での供給力増強を選択するのが資本の論理です。
(製造拠点を持っている国の国内需要が高まっているのなら、そこ向けと日本向けを同時的にまかなうために、そこでの供給力を高めることも考えられます。量産効果が高いほうが選択されます)

そして、A社は国内で増産したとしても、B社が外国で増産して低価格の製品を持ち込めば、A社は淘汰されることになります。(A社が馬鹿でなければ、すぐに気づいて対抗措置=外国生産に切り替えるでしょう)

政府紙幣の発行で増えた需要に占める外国製造品が増えるにつれ、「供給<需要」ギャップが拡大することになります。
外国で生産された財は、部品や生産財などの国内供給分が含まれるとは言え、需要になる供給のある部分が欠けているものです。言うならば、「供給<需要」を体現した財です。

部品や生産財の外国製造が増加したり、外国企業の対日輸出が増加すれば、「供給<需要」のギャップがさらに拡大します。
外国企業の対日輸出増加は、日本企業の利益減にもつながっていきます。


4) 国民の可処分所得増加のなかで新規事業が起きる。

3)で生じる問題を緩和するためには、新規事業が起きなければなりません。
用役でもいいのですが、用役従事者も財で生活を維持しているのですかが、インフレを悪性インフレにしないためには、現在的水準での“必需品”を生産する新規事業が望ましいと言えます。


※ バブルの問題

3)以降がうまくいかないと、利益の拡大で潤沢になった資金を投機に使う可能性もあります。
そんなバカな!わずか13年前のバブル崩壊で懲りているはずだと考えるかもしれませんが、欲にくらんだ愚か者で満ちているからこそ、バブルは繰り返されるのです。

「政府紙幣」という新しい仕掛けが始まったのだからこれまでの経済条件とは違うと考え、これまで低落を続けた不動産や株式が上昇に転じると考える愚か者はいないと考えることはできません。(米国のニューエコノミーは、政府紙幣の代わりにITで根拠付けただけです)
余剰通貨を持った人たちが上昇に転じると確信することで、バブルは始まるものです。

こうなれば、いわゆるインフレも悪性インフレも起きません。ただ、再びバブルの崩壊が起きるだけです。

政府も、「あれだけ地価や株式が下がっていたのだから、上昇するのは当然だ」と説明するでしょう。(不良債権処理が未処理であれば、大喜びです)

バブルは、資産の悪性インフレだと考えることができます。


>さて、ディマンド・プル型インフレが起こる状況とはどんなものであろうか。あっし
>ら氏が頻繁に用いる図式で言うと、「供給<需要」が成立しているということであ
>る。完全雇用がもたらされ、既存設備がフル稼働しているということでもある。こと
>ここに至って企業セクターが手を拱いてインフレの昂進を傍観していることはあり得
>ない。むしろインフレが実現する前に追加投資なり、生産性上昇のために全力を傾け
>るはずである。景気は完全に回復し、人々の経済見通しも楽観的なものに変わってい
>るはずである。換言すれば「ディマンド・プル型インフレが起こると想定される状
>況」にまで持って行くことが政府紙幣投入の目的に他ならないのである。

「企業セクターが手を拱いてインフレの昂進を傍観していることはあり得ない」という認識は、ケイちゃんの危うさを示すものです。

インフレを起こすのは、「財や用役をもっと高く売って利益を増加させたい」と考える企業だという認識が欠けています。(だからこそ、その逆方向であるデフレは経済活動を沈滞させるのです)

利益が出ているのなら、本来、価格を引き上げる必要はないのです。
利益が出ていて物価が上がるのは、賃上げがあったとしても、コスト・プッシュ型インフレではなく、プロフィット・プッシュ型インフレということになります。

賃上げは遅れて行えばいいものですから、高く売れるのなら高く売ろうとするのが企業のサガです。

そのような企業論理ですから、「インフレが実現する前に追加投資なり、生産性上昇のために全力を傾ける」というのは当てにならず、増大した需要を目の前にして、いかにしてより多くの利益を獲得するかを考えると想定したほうが妥当です。

「景気は完全に回復し、人々の経済見通しも楽観的なものに変わっているはず」だから、さらに需要が増加し、気がつかないうちに悪性インフレの芽が育つことになります。


前段の「途中からはこのディマンド・プル型インフレはコスト・プッシュ型インフレとの複合型に移行」するという説明ですが、「ディマンド・プルによるプロフィット・プッシュ型インフレ」という理解のほうが正確だと思われます。

そして、デマンド・プルに支えられたプロフィット・プッシュ型インフレが、円安をもたらすことになります。(世界的な資金運用難から、景気を回復した日本に投機資金が集まり、短期的には円安にならない可能性も高い)

この円安が外国製造を押しとどめる効果を持てば、「政府紙幣」発行はうまくいく可能性があります。
しかし、外国たとえば中国とのコスト競争で優位に立てるほどの円安は考えられないので、外国製造が増加していくことが考えられます。
そして、貿易収支が赤字に転換するようなことがあれば、円安が本格的な動きになるはずです。

高度成長期後半のように生産財も国内で生産するようになり、輸入のほとんどが原材料という貿易構造ではなく、生産財・食糧・最終製品までが輸入されている現状では、円安が物価高を引き起こすことになります。

これが、コスト・プッシュ型インフレです。
コスト・プッシュ型インフレになれば、悪性インフレの悪循環が始まり、長期的なスタグフレーションに陥ります。


>上述したようなディマンド・プル型のインフレの特性から考えると、インフレが際限
>なく昂進する可能性そのものが低い(日本のように供給サイドがしっかりした国は直
>ちに需要増に対応がなされる)。また、仮にインフレが進んだとしても、いわれの無
>い理不尽な原材料価格の高騰ではないから、インフレ率が極端に高まることはあり得
>ない。また、インフレ退治に政府が乗り出しても大きな抵抗に合う可能性はさほど高
>くは無い。すでに失業問題は解消されているし、政府紙幣のさらなる発行はインフレ
>を煽るだけで、実質給与の増大とは繋がらないことは理解容易な話である。

ディマンド・プル型インフレなのかどうかもう一度じっくりお考えください。

供給サイドがしっかりした国であることは認めますが、日本企業が日本で供給活動を行ういわれはないという価値観が蔓延していることをお考えください。

「理不尽な原材料価格の高騰ではない」とのことですが、円安により、原材料のみならず生産財から最終消費財そして食糧までが価格上昇する事態も想定してください。

悪性インフレやハイパー悪性インフレになったら、たとえ実質給与の増大にならない経済論理であっても、給与を上げろ、年金や生活保護の支給額を上げろという声があふれかえることを忘れないでください。

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