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コロナ禍、アイヌが投じる光 自然を敬う生き方(東京新聞)
http://www.asyura2.com/21/idletalk42/msg/135.html
投稿者 蒲田の富士山 日時 2021 年 11 月 30 日 06:52:30: OoIP2Z8mrhxx6 ipeTY4LMlXiObY5S
 

2020年5月22日 02時00分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/22178

 古来、人間に猛威を振るい、社会に不安をまん延させてきた疫病。2019年に日本の法律で初めて「先住民族」と明記されたアイヌ民族は、自然と共に生き、厄災を乗り越えてきた。今、私たちは先行き不透明なコロナ禍にどう向き合えばいいのか。アイヌの人たちの言葉に耳を傾けた。

◆埼玉の宇梶さん

 「ワッカウシカムイ(水の神)、アペフチカムイ(火の神)、レラカムイ(風の神)…。アイヌ民族は、全てにカムイ(神様)が宿ると考える」。アイヌ民族の宇梶静江さん(87)=埼玉県白岡市=がアイヌの世界観を語り始めた。「コロナは、ウエンカムイ(悪い神)だ。でも、人間がいかに大地に残酷なことをしてきたのかを知らせるために来たのだろう」

 アイヌは自然を敬う民族だ。全てに宿るカムイは崇拝の対象というより、対話を続ける存在といえる。宇梶さんは「自然と矛盾して生きてきた現代人は多い。今、生き方や考え方を変えなければ、ウイルスはもっと知恵を付けて人類を襲うだろう」と警告する。

 宇梶さんは北海道の貧しい家庭で育ったが、知識を学びたいと二十歳で札幌の中学校に入学し、卒業後の二十三歳で上京。差別から逃れるため、自身がアイヌということは積極的に公言してこなかった。

 ただ、子育てが落ち着き、詩の創作で言葉と向き合ううちに「アイヌは卑しいわけではないのに、なぜ沈黙したままなのか。出自を明らかにしないで生きることほど存在の否定はない」と思うように。一九七三年に東京ウタリ(同胞)会を設立し、アイヌ差別解放運動の中核を担ってきた。

 一八九九(明治三十二)年制定の差別的な「旧土人保護法」により、アイヌには粗末な土地しか与えられず、戦後も格差に苦しめられ続けてきた。今、コロナの感染者や医療従事者らが差別を受けていることに、宇梶さんは「差別の根っこには国の姿勢の問題がある。国は曖昧な役割しか示せず、偏見は広がった。ひとりひとりが大事にされない構造はアイヌも同じだ」と指摘する。

 「密」を避け孤立を強いるコロナ禍の中で、「真の孤独」を突きつけられてきたアイヌ民族の宇梶さんは訴える。「人間とは何か、人間らしい生き方とは何かが問われている。自然と向き合うアイヌ民族は、地球が抱える困難に光を投げかけることができる。その光は、世界三億人の先住民の光でもある。お互いの立場を理解し、認め合う。そんな未来の始まりにはできないか」

◆新宿区の宇佐さん

 アイヌ文化アドバイザーの宇佐照代さん(48)は、娘の瑠依乃(るいの)さん(7つ)=新宿区=と伝統楽器トンコリ(弦楽器)やムックリ(口琴)を奏でながら、終息を待つ日々を送っている。

 雨垂れの音、親グマが子グマを呼ぶ声…。アイヌ音楽が自然の音色を奏でることが多いのは、人間も自然の一部であることを表現するためだ。瑠依乃さんが「ムックリを奏でると、優しい気持ちになるよね」と話しかけると、照代さんはゆっくりうなずいた。

 照代さんの祖母・西村ハツエさん(故人)は、アイヌの権利獲得運動に奔走した。照代さんは十歳で北海道から上京。首都圏のアイヌが集まる会合で、伝統舞踊や楽器に接する中で、自身のルーツを強く意識するようになった。

 照代さんの言葉は力強い。「若い世代が伝承していかなければアイヌ文化は消えてしまう。祖母たちからアイヌ民族としての誇りを受け継いだ。多くの人に理解してもらえるよう活動していきたい」

◆疫病の神に「帰って」

 北海道の阿寒湖アイヌシアター運営協議会事務局長の尾田浩さん(64)によると、古くから交易が盛んだったアイヌ民族は、常に疫病のリスクと隣り合わせだった。疫病の神パヨカカムイは旅をしていると考えられており、疫病がはやるとコタン(集落)の入り口にパヨカカムイが嫌う魚の骨や行者ニンニクなどをぶら下げ、村を避けてもらう祈りをささげたという。

 道内では4月からパヨカカムイを祓(はら)う儀式をしている。大正期のスペイン風邪流行時は、政府の同化政策でアイヌ文化が禁止されていたので、150年ぶりの開催になる。屈斜路古丹(くっしゃろこたん)アイヌ文化保存会の豊岡征則会長(74)は「アイヌには共生と循環の思想がある。ウイルスと戦うのではなく、『パヨカカムイ、帰ってください』との願いを込めている」と話した。

 文・木原育子/写真・木口慎子  

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