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日米欧にとって食糧危機は戦乱と並ぶ重要な戦術
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202207010000/
2022.07.01 櫻井ジャーナル
このところ「食糧不足」や「食糧危機」が喧伝されている。WHO(世界保健機関)が2020年3月11日にパンデミックを宣言して以来、世界の物流が滞っていたが、今年2月24日にロシア軍がウクライナを攻撃し始めるとアメリカ政府はロシアに対する「制裁」と称して経済戦争を強化させた。アメリカは通貨、エネルギー資源、そして食糧の分野で経済戦争を仕掛けてくる。
基軸通貨であるドルを発行する特権を彼らは利用して各国を脅し、操ってきた。そのドル体制から離脱しようとしたイラク、アフリカ全体を離脱させようとしたリビアは軍事的に破壊されているが、今、ロシアや中国はアメリカに対向できる軍事力と経済力を保有している。
ネオコンは2014年、ロシアと中国を屈服させるために動いた。ウクライナでクーデターを実行、香港で反中国運動を仕掛けたのだが、これは裏目に出てロシアと中国を接近させてしまう。この両国は現在、戦略的同盟関係にある。
1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと思い込み、他国に配慮することなく好き勝手に行動できると考えたようだ。そして1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プランが作成された。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。
唯一の超大国という立場を維持するため、新たなライバルが出現しないように手を打とうとする。そのターゲットは旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、南西アジアなども含まれる。また権力の源泉であるエネルギー資源の支配も打ち出した。つまり中東をはじめとする産油国支配だ。勿論、アメリカは日本も潜在的ライバルと考えた。
ソ連が消滅する前から中国を属国にしたとネオコンは信じていた。彼らが信奉する新自由主義経済、つまりレッセフェール流資本主義の教祖的な存在だったシカゴ大学のミルトン・フリードマンが1980年に中国を訪問、それ以降、その教義を中国全域へ拡げることに成功していたからだろう。中国の代表的な信徒は趙紫陽や江沢民だった。
フリードマンは会社経営者に対し、社会的責務を無視して株主の利益だけを追い求めるように要求(Milton Friedman, “A Friedman Doctrine,” The New York Times Magazine, September 13, 1970)、彼の代表的な著作『資本主義と自由』の中で企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」に通じているとされている。(Milton Friedman, “Capitalism and Freedom,” University of Chicago Press, 1962)
この教義を世界のルールにするため、新自由主義の信奉者はISDS(投資家対国家紛争解決)条項を含むTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)を成立させようとした。これらが成立すれば、巨大企業のカネ儲けを阻むような法律や規制は賠償の対象になり、国は健康、労働、環境など人びとの健康や生活を守ることができなくなるはずだった。
これは実現できなかったものの、形を変えて彼らは持ち出してきた。「パンデミック条約」だ。これが締結されれば、WHOが全ての加盟国にロックダウンなどの政策を強制できるようになる。WHOを私的権力が動かしていることは本ブログでも繰り返し書いてきた。
中国はアメリカと国交を回復させてから新自由主義を導入したが、金融、通貨発行権、教育、健康など社会基盤を構成する分野を私的権力へ渡さなかった。中国が急速に経済発展できた理由はここにあると言われている。逆のことをした日本は衰退した。アメリカが中国とロシアを屈服させようと必死な理由のひとつは両国がドル体制、あるいは新ドル体制の脅威になるからだ。
ロシアは石油や天然ガスといったエネルギー資源を算出、そのほかの資源や食糧の重要な供給源であり、中国は経済活動が発展しただけでなく重要な資源の産出国でもある。アメリカにとっては嫌な相手だ。
アメリカにとって食糧がエネルギーと並ぶ戦略的に重要な商品だということは広く知られている。人間は生物である以上、食糧や飲料水は絶対に必要である。食糧生産を蔑ろにし、水脈を断ち切るような政策を進める政府は愚かなのか、国や国民を何者かに売り飛ばそうとしているのだと言わざるをえない。食糧が足りなくなれば飢餓になる。食糧が足りれば人口が増える。この問題でもロシアは欧米にとって目障りな存在だろう。
アメリカのNSC(国家安全保障会議)は1974年、ヘンリー・キッシンジャーの下で「NSSM(国家安全保障研究覚書)200」という報告書を作成、人口増加の地政学的な意味が指摘されている。発展途上国の人口増加がアメリカの利益、つまりアメリカを支配する私的権力の利益にとって良くないという分析だ。同じことをイギリスの王立人口委員会も1944年に指摘している。
それまでアメリカを含む欧米諸国は発展途上国が自立し、経済を発展させることができないように努力してきた。欧米に依存せざるをえない経済構造を押し付けてきたのだが、人口の増加や中露との連携がそうした枷を壊してしまう可能性がある。日米欧にとって飢餓は戦乱と並ぶ重要な戦術のひとつだ。
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