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現実を直視しなければ「維新の強さ」はわからない 松本創氏が肌で感じた大阪の期待と熱狂 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/326624
2023/07/31 日刊ゲンダイ
松本創(ノンフィクションライター)
ノンフィクションライターの松本創氏(後方は、大阪市庁舎)/(C)日刊ゲンダイ
大阪が本拠地の日本維新の会が躍進を続けている。一昨年の衆院選、昨年の参院選、そして今年の統一地方選で党勢を拡大。世論調査では政党支持率でも、次期衆院選の比例代表投票先でも野党第1党の立憲民主党を上回るが、どうにも腑に落ちない。格差を拡大する新自由主義路線をヒタ走り、醜聞が後を絶たないのに、なぜ勢いが衰えないのか。「誰が『橋下徹』をつくったか-大阪都構想とメディアの迷走」を上梓するなど、維新政治に詳しい、この人に聞いた。
◇ ◇ ◇
──創業メンバーの橋下徹元大阪市長は「今の維新は、ふわっとした民意をつかめる組織になってるんじゃないのかな」と発言しています。中ぶらりんの有権者が維新を支えているのでしょうか。
むしろ、維新に対する支持は底堅い。そうした認識を持たないとダメだと気づいたのは、2019年のクロス選でした。
──大阪都構想の賛否を問う2度目の住民投票に向けた機運を高めるため、当時の吉村洋文市長と松井一郎知事がダブル辞職。立場を入れ替えて選挙戦に臨み、圧勝しました。
現職で信を問う出直し選挙であればまだしも、勝てば丸々4年の任期が手に入る。脱法的で、地方自治の本旨からしてあり得ないと批判的スタンスで取材していたんですが、有権者の判断は違った。自民党中心に組織戦を展開した反維新側は全く歯が立たず、惨敗でした。
当時の吉村氏は目立つ実績も知名度もなく、橋下氏のエピゴーネンみたいなものでしたが、それでも大勝した。維新人気はメディアに扇動されたふわっとした熱狂と言われますが、それだけではとても語れないと選挙中に実感しました。自然に湧き上がるような維新への期待があると。
地に足着いた普通の市民が支持
──支持層は勝ち組意識が強いとされます。
維新を支えているのは、地域とつながりの薄いタワマン暮らしの富裕層だとかステレオタイプ化する見方がありますが、そんな単純化はできないし、しない方がいい。私はこの2年ほど維新支持者にじっくりと話を聞いてきました。地域に根差して商売をしている3代目、PTA活動に熱心な保護者、子育て支援カフェを運営する人……地に足を着けて活動する普通の市民はたくさんいますよ。そりゃ中にはタワマン住民もいれば、「吉村さん、カッコええわ〜」で支持する人もいるでしょう。だけど、支持者はこんな層とか、踊らされているとか、乱暴に決めつけない方がいい。
──現状分析でしくじれば、戦うに戦えませんね。
統一地方選前半戦の最終日、松井氏の政治家としての最後の演説は、「松井さん、ありがとう!」とめちゃくちゃ盛り上がっていました。難波の歩道は30メートルにわたって聴衆でギッシリ。その光景をツイートしたら、「カルト宗教の動員」「どこの異世界?」「民度の低さ」「大阪終わってる」といった反応が次々と付いた。しかし、維新が広く支持されている現実から目を背け、支持者を見下すような物言いには、とても賛同できません。
──東京の演説は閑古鳥の印象なので意外です。
個人の人気というよりは、大阪で維新体制をつくり上げたリーダーへの支持でしょうね。1990年代後半から2000年代の大阪は経済が低迷し、バブル期の過剰投資で第三セクターが次々に破綻。市役所では不祥事が頻発し、閉塞感が漂っていた。そこへ、役所と公務員を叩き、改革を標榜して登場したのが橋下氏であり、「府と市の二重行政が停滞の原因」と唱えた維新でした。
その主張や手法は大いに疑問ですが、維新が府市の首長を握って以降、それ以前からの計画を含め都心部の再開発や公園再整備が進んでいるのは確かで、そこが評価されていると思う。支持者に聞けば、みんな「府と市がバラバラだった維新前の大阪に戻したらあかん」と言います。
政党イメージは「弱者の味方」
大阪の吉村洋文府知事世代へシフト(横山英幸大阪市長=左)/(C)日刊ゲンダイ
──08年に松井氏らが担いだ橋下知事が誕生し、10年に大阪維新の会を結党。都構想で「二重行政」を解消し、大阪を成長させると訴えてきましたが、実現していません。取って代わった大阪・関西万博もIR(カジノを含む統合型リゾート)も見通しは明るくない。
私が取材を始めたのは大阪維新の会ができた10年からですが、新聞記者時代に末端で取材した国政選挙での小泉ブームを重ね見るところがありました。改革を掲げ、敵を名指しし、わかりやすい構図やイメージを打ち出すとメディアは熱狂し、世論も一方向に流れてしまう。なぜこうなるのか。同じことの繰り返しじゃないかと。
維新人気に在阪メディアがいろんな形で加担してきたのは間違いない。ひとつは「二重行政」という実態の疑わしい言葉を浸透させ、都構想という欺瞞的な「改革」を、さも重大な論点であるかのように無批判に広めたことでしょう。ただ、万博やIRをめぐって問題が続出する最近の状況を見ていると、維新のイメージ戦略やメディアとの関係もようやく転換期を迎えるかもしれないとは思いますね。
──大阪の与党となった維新は「身を切る改革」と称して公共サービスの縮小や民営化に血道を上げ、弱者を切り捨てる政治を推し進めています。
有権者の印象はむしろ逆です。関西大学の坂本治也教授らが行った政党イメージ調査では、「経済的弱者の味方になってくれる」政党のトップは維新です。22年2月調査では12.2%で単独1位、同年7月調査では15%で自民党と並んで1位。都構想を封印した代わりに給食や教育の無償化を打ち出したのが効いているんでしょう。
21年の衆院選でも、吉村氏が「身を切る改革により市民サービスを拡充しました」「橋下さんの市長時代に中学給食を始め、僕の時代に温かくし、松井さんの時代においしくしました」と繰り返していた。国政選挙であっても大阪という地方自治体の改革実績を強調し、聴衆は「私らと同じ目線で政治を語ってくれる」「生活感覚に近い」と好印象を持っていた。
かたや、例えば大阪10区で敗れた立憲の辻元清美氏(現・参院議員)は、自公政権批判や国対委員長としての実績に時間を割いていた。国政選挙だから国政を語るのは当然なのですが、普通の市民感覚からは抽象的で遠い印象がある。地方行政を握り、生活に近い具体的な施策を語る維新の演説の方が響くんですね。
吉本NSCとダブる人集め
──維新は国政進出10年にあたる22年に「中期経営計画」を策定。次期衆院選で「野党第1党を獲得」、3回以内での衆院選で「政権奪取」を掲げて目下、候補者擁立を急ピッチで進めています。
維新の組織運営は中小企業やベンチャー経営のように見えます。創設者の松井氏自身が経営者で、「民間の感覚」というフレーズを多用しましたし、起業経験のある藤田文武氏が21年に幹事長に就任して以降、その傾向は顕著です。選挙前の「候補者エントリー説明会」は企業の就職説明会のノリ。12年に始めた「維新政治塾」は「地盤・看板・鞄」がなくても、政治経験ゼロでも政治家になれるとうたい、藤田氏自身が1期生でもある。世襲だらけの自民党と比べれば、ある意味、政治を大衆化したとも言えます。
吉本興業がタレント養成所のNSC(吉本総合芸能学院)を立ち上げ、芸人になるハードルを下げたのにも似ている。弟子入りしたり、新喜劇で修業を重ねたりしなくても、学費を払って1年間通えば芸人への道が開けるようになった。
──裾野は広がりますね。
その意味で維新の戦略は極めて合理的。ただ、人材確保の間口の広さと急速な党勢拡大は、粗製乱造と表裏一体です。もうひとつの特徴が世代交代。松井氏は引退後に出版した著書「政治家の喧嘩力」で、公募選考などについて〈政治家を辞めても生活できる基盤があるほうが、議員の身分にこだわることなく、公約を一直線に、スピード感をもって実現できる〉と書いている。実際、維新はそういうタイプが多いですし、松井氏も59歳で政界を引退した。
──党の顔は数年で代わっています。
15年までが橋下氏、それ以降は松井氏と吉村氏の二枚看板、現在は吉村世代へ移行している。橋下氏と松井氏の引退は都構想の否決が原因ですが、維新支持者にはそれがまた「潔い」と映っている。私自身は維新の政策や政治手法に賛同しません。けれども、大阪維新の会ができて十数年のうちに、大阪では維新に代わる選択肢はほぼなくなった。全国化は未知数ですが、他の政党が現実を直視し、有効な対抗軸を立てられないと痛い目に遭うと思います。
(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)
▽松本創(まつもと・はじむ)1970年、大阪府生まれ。同志社大卒業後の92年、神戸新聞社に入社。06年に退社後、関西を拠点にフリーランスのライター・編集者として活動。著書に「軌道-福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い-」「地方メディアの逆襲」など。
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