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(回答先: 保守や右翼の人は反グローバリズム、反新自由主義を声高に叫んでいるトランプ、プーチンや参政党を背後から動かしているのが大… 投稿者 中川隆 日時 2025 年 9 月 01 日 03:57:40)

反グローバリスト・反新自由主義者・自称愛国者が大好きなアホ陰謀論
先日、トランプ大統領が国防省(Department of Defense)を「戦争省(Department of War)」に改称するという大統領令を発令した。ヘグセス新戦争長官は「我々は守るだけでなく、攻めに出る。手ぬるい合法性ではなく、最大の殺傷力をもって。政治的な正しさではなく、暴力的な効果を目指す」と強調した。世界的な混乱のさなかに「暴力の効果」に信を置くとアメリカの国防政策のトップが宣言することの意味をこの男はどれくらい理解しているのだろうか。たぶんあまり理解していないと思う。事実、その発令の直後にロシアはドローンでポーランドを攻撃し、イスラエルはカタールでハマス幹部を爆殺した。
「世界はグッドガイとバッドガイが戦っている」という単純な二元論を信じて、知的負荷を軽減したいと願うのはトランプやヘグセスの勝手だが、世の中は実際にはそれほどには単純ではない。政治はわずかな入力変化で劇的な出力変化がもたらされる複雑系である。「北京で蝶がはばたくとカリフォルニアでハリケーンが生じる」という比喩がよく使われるけれども、政治というのはそのような未来予測がきわめて困難な系なのである。だから、できるだけ先入観を排して、楽観にも悲観にも傾かず、最悪の事態から最良の事態まで、思いつく限りのシナリオを用意して、現実をみつめる知的抑制が必要とされるのである。
でも、どこの国でも人々は指導者にそのような知的抑制を期待しているようには見えない。逆に、大仰な修辞を弄び、好戦的な気分を煽り、単純な善悪二元論で出来事を説明してくれる「わかりやすい政治家」がどこでも圧倒的なポピュラリティを獲得している。
日本でもそうだ。この後、自民党の総裁候補者たちも必死で「わかりやすさ」を競うようになるだろう。「話は簡単なのだ。諸悪の根源は・・・であるから、これを除去しさえすれば万事は解決する」という陰謀論をポピュラリティを求める政治家たちは競って語り出すことになるだろう。
「陰謀論」というのは「単一の"オーサー"が万事を統制している」という物語のことである。もちろん、現実はそれほど単純ではない。けれども、私たちはこのような物語に魅了される。
第一には、そう考えると複雑に見える世の中がしごく単純なものだと思えるからである。世界を理解するための知的負荷が大幅に軽減される。
でも、それだけではない。「偶然的に見える現象は実は誰かによって完全に統御されている」という信憑はしばしば人間の知性にその限界を超えることを求めるからである。
現に、「森羅万象は神の摂理によって統御されている」と信じたことで人類は一神教信仰を創り出した。一見ランダムに見える事象の背後にはシンプルな数理的法則性が潜んでいると信じたことで人類は自然科学を発展させてきた。
つまり、陰謀論的思考は、ある場合には知的負荷を軽減して人間を思考停止に導き、ある場合には知的負荷を耐えられないほどに高めて人間に知的な限界を突破することを求めるのである。ややこしい。
こう言ってよければ陰謀論的な思考は私たち全員に取り憑いているのである。と書いている私自身も「世界のカオス化の背後には何らかの法則性が働いているに違いない」と思っているからこそこんな文章を草しているのである。
自分の思考が活動を停止して、自己刷新の意欲を失っているのか、それとも今の自分とは違う人間になろうともがいているのか、それを感知するのは難しい。とても難しい。
http://blog.tatsuru.com/2025/09/16_1153.html
単純主義の神話
石破茂首相が選挙の敗北の責任をとって総裁を辞職する意思を表明した。党内外で「石破おろし」の風が吹き荒れ、党内基盤の脆い首相は、世論の支持がありながら持ちこたえることができなかった。この後の政局がどうなるのか、先行きが見えない。でも、誰が次期総裁になっても、自民党退勢の流れは変わるまい。「解党的危機」はこの後も続く。そして、内閣が失政を犯すたびに党内で「・・・おろし」が始まり、短命な内閣が続くことになる。そして、政権の安定性に対する信頼が失われると、いつの世でも「単純主義者」が前面に出てくる。
「単純主義(simplism)」という政治用語を日本のメディアは使わないが、これは「右/左」「保守/進歩」という区分よりも政治の実相を表す上では適していると私は思う。政治を「善悪・良否」のデジタルな二項対立に還元して理解し、解決策は「敵を叩き潰すこと」だと息巻くのが単純主義である。
しかし、実際の政治は無数のファクターが関与する複雑系であり、わずかな入力変化で状況は劇的に変わる。そしてまことに困ったことに「先行きが見えない」時になると単純主義者の声が大きくなる。未来が予測不能になればなるほど、「実は話は簡単で・・・が諸悪の根源なのだ」と言い切る単純主義者に人々は魅了される。単純主義者は知的負荷を軽減してくれる。だから、内心では「それほど話は簡単ではないのでは・・・」と思っていても、「深く考えずに済む」という報酬に人々は簡単に屈服してしまう。
政治状況が複雑になればなるほど人々はより単純な説明にすがりつく。これは歴史が教えることである。もちろん単純な説明によって現実を理解することはできない。でも、現実を理解していない人間にも現実を変える力はある。むしろ、現実をまっすぐに見つめることを忌避して、単純主義的妄想に耽っている人間ほど現実変成力は強いとも言える。
それは米国を見ればわかる。大統領は「テロとの戦い」という大義名分さえあれば憲法も法律も無視できるし、立法府にも司法府にも掣肘されない権力を揮うことができるようになった。ほとんど「国王」である。中国ロシアに続いて米国も独裁制を採択しようとしているのだが、たぶんそうした方が米国民の眼に「世界が分かりやすく」映るからだ。
http://blog.tatsuru.com/2025/09/16_1156.html
詳細は
保守・右翼が大好きなアホ陰謀論
https://a111111.hatenablog.com/entry/2025/05/29/210855
グローバリスト・新自由主義はただのレッテル貼り
https://a111111.hatenablog.com/entry/2025/08/31/034254
世界は極右ファシストが貧困層から支持される「フェイクファシズム」の時代に入った
https://a111111.hatenablog.com/entry/2025/07/12/015825
- 複雑な話は複雑なまま扱うことについて 中川隆 2025/9/18 16:01:57
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