http://www.asyura2.com/24/gaikokujin3/msg/614.html
Tweet |

中国・反日映画『731』に酷評の嵐、ボイコット呼びかけも…習近平政権の反日煽動に中国人もうんざり?/JBpress
福島 香織https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/%E4%B8%AD%E5%9B%BD-%E5%8F%8D%E6%97%A5%E6%98%A0%E7%94%BB-731-%E3%81%AB%E9%85%B7%E8%A9%95%E3%81%AE%E5%B5%90-%E3%83%9C%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88%E5%91%BC%E3%81%B3%E3%81%8B%E3%81%91%E3%82%82-%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3%E6%94%BF%E6%A8%A9%E3%81%AE%E5%8F%8D%E6%97%A5%E7%85%BD%E5%8B%95%E3%81%AB%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E3%82%82%E3%81%86%E3%82%93%E3%81%96%E3%82%8A/ar-AA1N660u?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=68d2f8db66f44384af57fc5c2774dcc1&ei=11
(福島 香織:ジャーナリスト)
9月18日、いわゆる中国のいうところの国恥日(満州事変のきっかけとなった柳条湖事件)に合わせて、話題の反日映画「731」が中国で封切りとなった。監督は趙林山、広告畑出身で、時代映画「銅雀台」(2012年)で映画監督デビュー。主演には中国を代表する俳優で映画監督・姜文の弟、姜武や、民国時代をテーマにした映画「黄金時代」で魯迅役を演じてアジア助演男優賞を受賞した王志文ら演技派がそろっている。
監督によれば、監督デビューした2012年当時から「731」映画を撮りたかったそうだが、市場がこの映画を受け入れられるほど成熟していなかった、という。この映画の撮影プロジェクト自体は2017年からスタート。3年かけて北京文学編集長の劉恒と共同で脚本をつくり、2020年からクランクインしていた。
映画製作にこれほど時間をかけたのは、日本へ調査に行ったり、米国が機密指定を解除した8000ページの「731部隊報告書」や、731部隊のオリジナルメンバーの423時間に及ぶ口頭証言の画像データなど、多くの歴史的資料に当たったりしたからだという。
9月17日にハルビンでプレ上映会が開催されたとき、監督は涙を流しながら「この映画は歴史の証拠を映像化した。映画館が法廷であり観衆みなが裁判官だ。9月18日、正義の法廷が開廷した」と語った。
そして、18日に中国全国封切りとなったその初日だけでチケット売り上げは3億元を記録したのだった。
だが、映画論評サイトなどを見ると、この映画に対する評価はすこぶる低い。もちろん、大絶賛の論評もあるのだが、それは明らかにネット紅衛兵的な愛国主義者たちによるもので、多くの映画好きによる評価は星1、2と軒並み低い。中には「歴史を冒とくしている」「愛国情緒を消費している」「(囚人に提供される食事が豪華だったり、収容施設に清潔なトイレがあったりする描写は)日本軍を美化しすぎている」といった愛国主義者からの反感を買ったものもあった。
しかもきわめて珍しいことに、中国ネット民の間で、この映画にたいする鑑賞ボイコットを呼びかける書き込みも多々あったのだ。
いったいこれはどういうことだろう。
まず「731」とはどんな映画か。
ストーリーが無茶苦茶で雑、ありえない描写…
大手映画チケット販売プラットフォーム「猫眼(マオヤン)」やSNS「豆瓣(ドウバン)」の映画評欄をざっと見てみる。
「人物の描き方が平たん。物語は混乱している。観衆に歴史を本当の意味で理解させることができないだけでなく、むしろ歴史を侮辱している可能性がある。この映画は愛国情緒を消費し、731事件の厳粛性を消し去っている。あまりにひどい映像のせいで、観客の反発を招きかねない(実際、反発を招いている)。これがまさか、当時の歴史に対する敬意なのだろうか?」
「監督のレベルがあまりに低く、物語が無茶苦茶で雑」
「当局の政治プロパガンダによる操作のせいで、3億元のチケット売り上げを作り出しただけ」
「ありえないプロット、不可解で滑稽な要素がたくさんあり、シリアスな歴史的題材を“脱獄コメディ”に変えてしまっている!」
「この監督は日本から派遣されたんじゃないのか? 彼はこんな冗談みたいなものを制作して海外で公開するつもりなのだ」
豆瓣では、こんな「ほめ殺し」の映画評もあった。
「この映画は、日本をオリエンタリズム満載の、西洋のステレオタイプ的な見方で描いており、それに加えてキリストの殉教を、最高にクールに描いている。
「日本の獄警(刑務官)が伝統的和服を着て、武士みたいな刀を差しているし、マルタ(人体実験の被験者)を実験室に連れていくとき、赤い傘を差しかけながら、ものすごく高い下駄をはいた花魁が歩いていくんだ。マルタの後ろには、月代の頭で、白い着物を着た日本の武士みたいな恰好の刑務官がずらりと並んでいる…、このシーンだけで度肝をぬかれた」
「…西側の視点からみたオリエンタリズム・パンクで、震撼した。ジェイド・エンパイア(米国のゲームソフト、中国神話をベースにしている)や、ドラゴン・キングダム(ジャッキー・チェンとジェット・リーが出演している孫悟空をモデルとしたカンフー映画、米国映画)の類だ」
「ウイルス気球で自由の女神や万里の長城、エッフェル塔を攻撃して、エッフェル塔の下で人々が阿鼻叫喚するシーン(劇中の日本人の想像)は、大いに我々を喜ばせた。ゲームのレッド・アラートの大袈裟なCGをそのまま夢想してほしい! 監督は西側の低コストカルトムービーの魅力をわかっているね!これはまさに、レッド・アラートに匹敵するシーンだ」
筆者はこの映画を見ていないので、論評できないが、B級カルトムービーか、前衛芸術映画のような、演出があるようだ。マルタたちが、キリストの殉教者的に描かれ、いたるところに十字架のモチーフがあったり、日本の武士の恰好をしている獄警と、脱獄を図ったマルタ集団とのバトルシーンがあったり、史実とかけ離れた内容やコメディタッチの表現も多いようだ。実際、映画館では笑い声が絶えなかった、というコメントもあった。
この酷評の嵐は当局によって一部削除もされているが、「この映画の撮り直しを要求する」「この映画をボイコットすべきだ」といったコメントが多数あったことは、一部ネットメディアも取り上げている。もちろん、それに対して反論するスタイルの記事にしているのだが。
俳優の于朦朧(アラン・ユー)の転落死事件
興味深いのは、猫眼プラットフォームで、集団で「731」ボイコットを呼びかける集団コメントが登場したことだ。このコメントは、9月11日に謎の転落死をとげたイケメン中国人俳優の于朦朧(アラン・ユー)のファンたちによるものだ。
彼らが「731」ボイコットを呼びかける理由として、「歴史の苦難(731)は娯楽として消費するくせに、現実の苦難は見て見ぬふりだ」「現実は映画より恐ろしい」「有名人の死ですらはっきり理由がわからないのだから、一般人の死はさらに悲惨だ」「毎日、(反日という)仇恨を煽動されているのに、現実に発生していること(于朦朧事件)については一言もいわない」「奇形の愛国教育によって(社会不満の)矛先を移転させている」…といった批判が連なっていた。
于朦朧の死については、公安当局の公式発表では酒を飲んであやまって落ちたもので、事件性はないと早々に発表されている。
だが、それをそのまま信じている人の方が少ない。
于朦朧は9月11日午前2時ごろ、北京市朝陽区のマンションの下で死亡しているのが発見された。享年37。彼は10日、友人が経営する隠れ家バーで業界人5、6人が集まる宴会(別の情報によれば参加者は17人)に参加、マネージャーに勧められてかなり飲酒し、べろべろに酔っぱらった状態で、別室に寝にいったという。
11日午前6時ごろ、友人たちが帰ろうとすると、于朦朧の姿がなく、探したところ、建物の外ですでに死亡している状態で発見された。彼のポケットには友人のロレックス時計が2つ入っていた、という。また彼の寝ていた部屋の窓のカーテンが破れていたという。
こうした情報は、食事会の参加者の匿名投稿で、公式情報ではない。ネット情報を信じるなら、この食事会が行われたバーのオーナーは、脚本家のペンネーム「自由極光」らしい。その転落場所の写真などもネットで出回っているが、酔っぱらって誤って転落するような窓ではなかった。自殺の可能性はあるのか、というと于朦朧は2匹の愛犬がいるし、自殺するような人物ではない、と知り合いの証言もある。
ファンたちが疑念に思ったことは、最初に于朦朧の死を知らせたこの食事会参加者による投稿がすぐに削除されたこと、そして公安当局がすぐに「事件性なし」と発表したことだ。さらに、この食事会に参加した友人が誰なのかいまだに不明だ。
ネット上では、于朦朧が、芸能界の大物に、レイプされた、あるいはされそうになって抵抗して、窓から突き落とされたのではないか、という憶測が流布した。この芸能界の大物は、中国のネット上では名前が挙げられている。2020年ごろから急激に頭角を現してきた34歳になる人気プロデューサーで、習近平の側近中の側近、蔡奇の非嫡子だと噂されている人物だ。
また、習近平の遠縁外戚説もある。于朦朧のファンたちは、この政治的背景をもつ大物プロデューサーが、酔っぱらった于朦朧をレイプしようとし、これに抵抗した于朦朧が、殺害されたのではないか、という「推理」をネット上で展開しはじめた。あるいは、于朦朧はマネージャーによって大物プロデューサーに「性上納」されたのだ、と。
この「推理」のウラを取ることは不可能だ。だが、はっきりしていることは、この事件について、警察はなにかしら真相を隠しており、不自然なまでに情報統制も敷かれた、ということだ。
本来、こうした芸能スキャンダルは、政治性がないので、中国当局にとっては絶好の庶民のうっぷん晴らしになるとして、比較的自由に報じさせる。だが、公式メディアは警察発表以上の内容をほとんど報じていない。
この事件と映画「731」は全く関係ないはずだが、なぜか于朦朧転落死事件と映画評が関連づけられて、多くのネット民が批判の矛先を「731」に向けていた。
世論誘導に中国人もうんざり
こうした現象を私なりに解釈すると、結局、今の中国の人々の強い不満、不安の感情が、世の中の残酷で不条理な事件に対し強いシンパシーを生みやすくなっており、その原因が共産党体制、習近平政権の悪政にあると気づく人が、増えているということではないか、と思う。
習近平政権は、今年、反日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念ということもあって、何かにつけ反日を煽動し、中国社会に蔓延する不満、民怨を反日情緒にすり替えて発散させようと世論誘導していることは明らかだ。だが、そのやり方があまりに露骨すぎると、さすがに人民もうんざりしてしまう。
この反日世論誘導の結果、確かに一部の人民の怒りは実際に、在中国邦人に向かい、日本人や親日中国人に対するいやがらせも増えている。だが、日本人を攻撃したところで、中国社会は絶対によくならない。
習近平政権の反日世論誘導政策の限界が、映画「731」の映画評欄に現れている気がする。
福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002〜08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。
|
|
|
|
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
|
|

すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。