http://www.asyura2.com/24/kokusai35/msg/842.html
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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2025年10月2日 https://tanakanews.com/
■要約
トランプ米大統領がウクライナに対し好戦的な姿勢に豹変したのは、米覇権を動かしてきた英欧エリートを自滅させるための策である。その戦略は、ウクライナ戦争の主導役を米国から英欧に押し付け、米国は手を引くというものだ。諜報面で米国に依存する英欧は、米国から有償で兵器を買わされても、兵器庫の情報がロシア側に漏れて破壊されるため勝てず、国力を浪費させられる。ロシアはこの英欧の自滅を歓迎している。
一方、トランプは世界覇権から米州主義に転換し、中南米での影響力確保に傾注している。モルドバのように欧州で新たな戦争の火種が生まれても、米国は加わらない。この一連の動きの本質は、米露が組んで英欧を潰し、米覇権を終わらせて世界を多極化させることにある。しかし、英国系のマスコミがこの構造を報じないため、多くの人々は覇権転換に気づかないままでいる。
■本文
トランプ米大統領が9月23日、ウクライナとロシアを和解させる従来の姿勢を豹変し、好戦的な姿勢をとり始めた。
トランプは「ウクライナは、EUから支援してもらえば(負けている戦争を挽回して)ロシアから全ての領土を奪還できる」とか「NATO諸国は、露軍機が侵犯してきたら(たとえそれが先日のポーランドの事態のようにNATO・ウクライナ側の偽旗作戦だった可能性があっても)どんどん迎撃しなきゃダメだ」「ロシアは経済が崩壊寸前だ。表向きだけ強そうに見せている"張り子の虎"だ」といった発言を連発した。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/trump-says-nato-should-shoot-down-jets-breach-nato-airspace
Trump Says NATO Should Shoot Down Jets That Breach NATO Airspace
https://news.antiwar.com/2025/09/23/trump-claims-ukraine-can-retake-all-territory-captured-by-russia-may-be-able-to-go-further/
Trump Claims Ukraine Can Retake All Territory Captured by Russia, May Be Able to ‘Go Further’
突然の姿勢転換に、米露双方の分析者たちは説明に苦労していたが、裏を知っていれば簡単な話だ。米覇権放棄と多極化をこっそり推進する隠れ多極派のトランプは、米覇権を動かしてきた英欧のリベラル派エリート(英国系)を自滅させるため、就任以来の9か月かけて、ウクライナ戦争の米欧側の主体を米国から英欧に移した。
トランプの米国は、ウクライナ戦争の主導役を英欧に押し付け、米国は手を引いた。その移行作業がおおむね完成し、英欧が露敵視の主役を継承する準備を進めたので、トランプは8月にアラスカでプーチンと首脳会談して裏の親密さを確保し、表向きだけ米露が敵対に戻ることを決めたうえで、今回の豹変になった。
https://tass.com/world/2021077
Europe fears Trump to blame it for Kiev's military failure
https://edition.cnn.com/2025/09/24/politics/ukraine-trump-putin-pressure
Trump’s new Ukraine stance is meant to pressure Putin, officials say, despite lack of sanctions or military aid
ウクライナ戦争は開戦後の早い時期から、ロシア側がウクライナNATO側の兵器庫の場所を探知し、攻撃して破壊してきた。米欧NATOは兵器の無駄遣いを強いられ、防衛費を浪費した。これは米英覇権崩壊・隠れ多極主義的な構図だった。米諜報界に、ウクライナのどこに兵器庫があるか露側に教える勢力(隠れ多極派、リクード系)がいた。
https://korybko.substack.com/p/the-five-most-likely-motives-behind
The Five Most Likely Motives Behind Trump's Flip-Flop On Ukraine
https://responsiblestatecraft.org/trump-ukraine-russia/
Trump's latest line on Ukraine isn't a 'shift,' it's a hand-off
トランプは大統領に返り咲いた後、米国をこの自滅構造から引き抜き、ウクライナ戦争の主導役を英欧に押しつけた。英欧やウクライナが米国から得る兵器類は、それまでの無償(や割引価格)から有償(定価販売)に切り替わった。
英欧は従来から、軍事力の根幹である諜報の人材もデバイスも少なく米国依存だ。英欧は、戦争の主導役になった後も諜報面で米国の言いなりにしか動けないので勝てない。英欧が米国から兵器類を買ってウクライナの前線に出しても、兵器庫の情報が露側に漏れ、使う前に何割かが破壊されてしまう。
https://sputnikglobe.com/20250924/eu-defense-in-crisis-why-europe-is-falling-behind-russia-1122846427.html
EU Defense in Crisis: Why Europe is Falling Behind Russia
反露に転換したトランプが「ロシアは張り子の虎だ」と言い出したのに対し、言われたロシアは大統領報道官が「我が国は、虎じゃなくて熊だと言われるんですけどね。張り子の熊という言い方はないんですが・・・」と、冗談で返して受け流している。
ロシアとしては、トランプが英欧に戦争の主役を背負わせて英欧の自滅が加速するのは大歓迎だ。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/russia-mocks-trumps-paper-tiger-remark-says-ukraine-cannot-take-back-territory
Russia Mocks Trump's 'Paper Tiger' Remark, Says Ukraine Cannot Take Back Territory
欧州において、英仏独やEU当局はロシア敵視が強いが、ハンガリーやスロバキアは与党が親露な傾向で、ウクライナ経由のパイプラインなどでロシアから石油やガスを買い続けている。英仏独EUは覇権放棄なトランプと齟齬があるが、ハンガリーやスロバキアは親トランプでもある。
だがトランプは最近「欧州は、敵であるロシアの石油ガスを買ってはならない」と言い出し、ハンガリーやスロバキアを困らせている。
トランプは「欧州は、ロシアでなく米国から石油ガスを買え」とも言っている。これを見ると、トランプの策は守銭奴なだけにも見えるが、米国の石油ガスはロシアのよりずっと高い。ハンガリーやスロバキアは、米国やEU当局の反対を押し切ってロシアの石油ガスを買い続けると予測される。トランプの策は、守銭奴の目くらましを伴いつつ、ハンガリーやスロバキアを、セルビアみたいな反米親露な国に押しやっている。
https://www.rt.com/business/625258-us-replace-russia-energy-eu/
US ‘ready to displace’ all Russian gas and oil in EU - energy secretary
ウクライナに隣接する旧ソ連のモルドバ(ルーマニア民族の国)では、親EU派(反露派)の与党と、親露派の野党が鋭く対立してきた。9月28日に議会選挙があり、親EU派の与党が辛勝したが、与党は在外投票所でニセの投票用紙を詰め込む不正をやった可能性がある。この不正は、選挙前から親露派が予測・指摘していた。
モルドバ与党の政府は、選挙前に2つの野党を非合法化して選挙から締め出す野党潰しもやった。選挙不正をしなかったら親露派の野党が勝って政権交代になり、ウクライナの近傍に親露な国が出現していた。
露敵視なEUは、モルドバが親EUから親露に転換するのを許さず、モルドバ与党に選挙不正をやらせて親露への転覆を阻止した。EUが自画自賛する民主主義の実体はこんなもんだと露側が非難している。
https://www.moonofalabama.org/2025/09/moldovas-pro-eu-party-wins-vote-due-to-manipulation-and-eu-interference/
Moldova’s Pro-EU Party Wins Vote Due To Manipulation And EU Interference
https://tass.com/politics/2022769
Moldovan authorities rule out dialogue with Russia
モルドバには、沿ドニエストル共和国とガガウジア(ガガウズ)自治区という、人々がロシア語(やトルコ系のガガウズ語)を使い続ける強硬に親露な2つの地域がある(他のモルドバはルーマニア語=モルドバ語)。
沿ドニエストルはソ連崩壊時にモルドバと別の国として独立しようとしてモルドバと戦争になり、停戦維持のために今も約千人のロシア軍が駐屯している。
2つの州では今回の選挙で、投票所に向かう橋を投票日に親EUな当局が封鎖し、親露で野党支持な住民が投票に行けないようにしたり、選挙前にガガウジアの親露政治家が投獄されたりしている。
https://korybko.substack.com/p/moldovas-jailing-of-the-gagauz-leader
Moldova’s Jailing Of The Gagauz Leader Is Meant To Predetermine The 2028 Presidential Election
https://tanakanews.com/240516nistria.php
沿ドニエストルへの道
選挙妨害されたモルドバの親露派は、今回の選挙結果を認めず、今後も親EU反露な政府と対立し続ける。政府側の部隊が親露派を弾圧し、親露な沿ドニエストルやガガウジアの半独立状態を破壊する可能性がある。
モルドバの政府軍と、隣接するウクライナの軍隊が反露連合を組み、親露な沿ドニエストルやガガウジアを挟み撃ちするかもしれない。すでにウクライナ側のオデッサに英仏軍の特殊部隊が入っていると指摘されている。
モルドバやウクライナ、英仏の軍勢が、沿ドニエストルの露軍と交戦する可能性がある。沿ドニエストルで欧露の戦争が始まりうる。だが、そこにトランプの米国は加わらない。
https://korybko.substack.com/p/svr-revealed-that-british-and-french
SVR Revealed That British & French Troops Are Already In Odessa
https://korybko.substack.com/p/five-reasons-why-the-latest-moldovan
Five Reasons Why The Latest Moldovan Elections Were So Important
トランプは、米国から遠いウクライナでなく、近くの中南米や米国内での戦いに傾注している。麻薬戦争のかたちをとってベネズエラの反米左派政権を潰す策略も、米軍がベネズエラ本土の麻薬組織の拠点への空爆を準備している。
https://news.antiwar.com/2025/09/28/report-us-could-start-bombing-venezuela-within-a-few-weeks/
US Could Start Bombing Venezuela Within a Few Weeks
アルゼンチンでは、親トランプなミレイ大統領の与党が選挙で負けそうなので、投資家が懸念して金融市場から資金が逃避し、国債金利が急騰する金融危機に陥った。トランプの米政府がアルゼンチン国債を買い支え、金利を引き戻した。
トランプは、米国の戦略を世界覇権から米州主義(孤立主義)に転換し、米国の影響圏(地域覇権下)とみなす中南米で、反米な政権を潰し、親トランプな政権を擁護し始めている。
https://www.zerohedge.com/markets/milei-admits-market-panic-mode-argentine-capital-exodus-accelerates
Milei Admits "The Market Is In Panic Mode" As Argentine Capital Exodus Accelerates
https://www.zerohedge.com/geopolitical/bessent-signals-big-beautiful-bailout-argentina-vote-confidence-milei
Bessent Signals Big Beautiful Bailout For Argentina In Vote Of Confidence For Milei
トランプが米州主義に傾注するほど、ウクライナは英欧任せになり、ロシアが英欧を自滅させていく流れが続く。トランプはこっそり親露だから、本質は、米露が組んで英欧を潰している。英欧(英国系)が潰れていくと、米(実は英)覇権が消失し、世界は多極型のみになる。
マスコミは英国系なのでこの動きを無視し、マスコミを軽信する人々は覇権転換に気づかないまま何年も過ぎている。米覇権低下と多極化が始まったイラク侵攻から、すでに22年が過ぎているが、ほとんどの人は転換に気づかないままだ。私の分析は妄想扱いされている。
マスコミは無意味になり、ロスチャイルド家は権威あるエコノミスト誌を売却してしまう。FT紙も、無知な日本の勢力に売りつけられている。
https://www.zerohedge.com/economics/rothschild-family-exploring-sale-their-stake-economist-magazine
Rothschild Family Exploring Sale Of Their Stake in The Economist Magazine
書きたかったことの半分ぐらいしか書いていないが、長くなったので配信する。
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/251002gagauz.htm
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