| <■1433行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>自民党総裁選の失敗…なぜ「夫婦別姓」だったのか 阿比留瑠比 正論10月号 「政界なんだかなあ」
 2024/10/2 7:00
 https://www.sankei.com/article/20241002-UZSDGX2IWZFGXM6JFOTIFZEOHU/?outputType=theme_monthly-seiron
 今回の自民党総裁選で、1つの争点として再浮上した問題が、選択的夫婦別姓を認めるか否かだった。
 私は元々こうした家族や性の在り方といった心に関する問題に、政治が介入するのは極めて慎重であるべきだと考えるが、次期衆院選が近い現在、わざわざこの問題を持ち出すのは政治的にも下手なやり方だと感じた。
 私は本誌の令和5年4月号で、安倍晋三元首相がこの問題と政治家の
 「大局観」
 について、次のように話したエピソードを紹介したのでその部分を再掲する。
 《建前とはいえ保守政党を名乗る自民党が、時代の流れだからとばかりに安易にリベラル派に同調することは、政治的にも愚策ではないか。
 安倍氏は嘆いていた。
 「LGBT問題や夫婦別姓に関しては、野党側ははなから一枚岩なんだから、自民党が揉めている姿を晒しても野党を利するだけではないか」
 「ういう大局を見渡せる政治家が今は少ない」
 活動家たちは、自民党議員が自分たちの意見を取り入れたら拍手喝采はするだろうが、決して自民党には投票しない。
 「多様性を巡る象徴的なテーマである選択的夫婦別姓を認める決断をすれば自民党は道が開けるのではないか」
 小泉進次郎元環境相は神奈川新聞のインタビューでこう述べていたが、これこそ典型的な勘違いだと言える。
 左にウイングを延ばしてもそこに票田はない。
 選択的夫婦別姓もまた、別姓を選んだ夫婦と同姓を選んだ夫婦との間で心理的な断絶を生みかねない。
 安倍氏は岸田文雄首相について、こう語っていた。
 「岸田さんはそうリベラルではないんだ」
 「以前、夫婦別姓の議論が高まった時に『(片方の親とは別姓になる)子供の視点が全然ない』と話していた」》
 それから僅か1年半後、小泉氏は選択的夫婦別姓を主要政策の1つに掲げて総裁選に出馬した。
 恐れていた通りに事態が進展したのである。
 リベラル政策を推進する一部自民党議員の頑迷さには、ほとほと手を焼く。
 自民党がLGBT法や選択的夫婦別姓問題で立憲民主党など野党と同じか近いスタンスを取るならば、自民党の存在意義自体が問われることになるのが、どうして分からないのか。
 ■基本的な事実誤認
 小泉氏は9月6日の出馬表明記者会見で、
 「多様な人生」
 「多様な選択肢」
 を掲げて明言した。
 「経済界も早急な対応を求めている」
 「最近の世論調査を見れば、選択制であれば別姓という選択肢を認めてよいのではないかという意見が増えている」
 「1人1人の願いを聞かず議論を続けて30年」
 「もう議論ではなく決着をつける時ではないだろうか」
 「私が首相になったら選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的な議論を進める」
 「(1年以内に)30年以上議論を続けてきたこの問題に決着をつけ、1人1人の人生の選択肢を広げる」
 「党議拘束をかけずに、この法案の採決に挑む」
 「旧姓使用で対応可能なのではないかという声は、私も承知している」
 「ただ、多くの金融機関では旧姓で銀行口座やクレジットカードを作ることはできない」
 「そして、不動産登記ができない」
 「契約書のサインも認められない場合がある」
 「研究者については、論文や特許の取得時に戸籍上の氏名を用いる必要があって、旧姓は利用できないということだ」
 この小泉氏の言葉に対しては、やはり総裁選に出馬していた高市早苗経済安全保障担当相がこう事実誤認を指摘し、話題となった。
 「選択的夫婦別氏制度を実現するという候補予定者に『(旧姓では)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、4月から不動産登記は旧姓でできる」
 更に、高市氏の指摘に関して自民の長尾たかし前衆院議員がX(旧ツイッター)で、こんな補足をしていた。
 「小泉氏は法改正されていることを知らなかった」
 「因みに銀行口座も金融庁からの通知で順次作れるように移行されているのに作れないと説明していました」
 「間違って作られた経団連の資料をそのまま説明したからです」
 そこで、経団連が6月に公表した選択的夫婦別姓の実現を求める提言
 「選択肢のある社会の実現を目指して」
 を見ると、
 「ビジネスの現場における通称利用の弊害が生じる場面(例)」
 として、確かに
 「口座やクレジットカードの作成時」
 「不動産登記を行う時」
 「研究者は、論文や特許取得時に戸籍上の氏名が必須」
 などと書かれていた。
 小泉氏は選択的夫婦別姓の推進理由について
 「経済界も早急な対応を求めている」
 と話しており、やはり経団連の提言を見たのであろう。
 9月10日に行われた立憲民主党の4人の立候補者と党所属女性議員との討論会でも、4人全員が選択的夫婦別姓に賛意を示した他、そのうちの1人である野田佳彦元首相がこう述べていた。
 「経団連も早期実現を主張するようになった」
 「チャンスを逃してはいけない」
 更に、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(7月14日号)も1面トップ記事で
 「経団連本部訪ねて聞いてみた 選択的夫婦別姓」
 と大きく取り上げている。
 間違いを流布した経団連の罪は重く、結果的に小泉氏に恥をかかせたことになる。
 実際には、高市氏らが指摘したように事実関係は以下の通りである。
 一、今年4月から「旧姓併記」での不動産登記が可能。
 一、令和3年10から「旧姓併記」での特許申請が可能。
 一、全国の6割の銀行や信用金庫で旧姓名義の口座開設が可能。
 一、世界で1000万人が利用するORCID(オーキッド)システムへの登録により、「旧姓」や「別名」でも論文発表が可能。
 つまり、経団連や小泉氏がいう旧姓(通称)使用による不便さの多くは既に解消されているか、徐々に解消へ向かうかしているというわけである。
 ■子供への配慮がない
 また、小泉氏は
 「議論を続けて30年」
 になるから決着を着けると言うが、30年も決着が着かなかったのにはそれだけの理由があるからだろう。
 人の心や家族の問題を、何でも簡単にぶった切ればいいというものではない。
 この点について今回の総裁選で注目すべき論点を挙げたのが上川陽子外相だった。
 上川氏は9月14日の日本記者クラブ主催の討論会で、選択的夫婦別姓には
 「個人的には賛成」
 だとしつつ、次のように慎重論を説いていた。
 「社会が分断をしてしまう」
 「深い分断に陥る危険性、リスクについては、しっかりと納得をしていくプロセス、これを更に深めていく必要があるのではないか」
 「こういった1つの事柄で社会全体が分断をしてしまうような案件を賛成反対、更には分断をしてしまうのではないかという状態を残したまま、決定してしまうということは、日本の国の力を削ぐことにも繋がりかねない」
 これは冒頭に紹介した安倍氏の言葉にも通じる所があり、的を射ている。
 実際、選択的夫婦別姓問題が浮上する度に自民党は分断を繰り返してきた。
 それが法案を提出して採決となれば、日本社会全体に対立の構図を新たに作ることになってしまう。
 もしこれが成立し、施行されれば夫婦同姓を選ぶか、別姓を選ぶかという対立軸も生まれる。
 別姓を選んだら民主的・進歩的で、同姓派は守旧派呼ばわりされる場面も出てきそうである。
 家同士、親族同士の対立も容易に想定できる。
 夫婦別姓となれば、必然的に片方の親とは別姓になる他、制度の組み立て方によっては兄弟で別姓ということもあり得るが、それを子供がどう受け止めるという問題も重要である。
 また、安倍氏が岸田氏の言葉として紹介した
 「子供の視点が全然ない」
 のが、これまでの夫婦別姓論議だったが、今回の総裁選でそこを小林鷹之元経済安保担当相が指摘したのも良かった。
 9月15日の討論会ではこう語った。
 「令和3年に内閣府がやったアンケートに、調査によってもその同姓を維持すべき方と、同姓を維持しつつ旧姓の通称使用を法制化するという方、これが4割ぐらいいる」
 「そこを合わせると7割いる」
 「そういうまだコンセンサスが形成されてない中で、早急にばんと決断するということは、政治の在り方として適切ではない」
 「重要なのは大人の選択の権利を認めるにしても、生まれてくる子供たちの視点を、私たち政治家は無視してはいけない」
 「家族、兄弟姉妹の中で姓が異なる家庭が出てくる可能性がある以上、そうした子供たちの視点にも立って慎重にコンセンサスを丁寧に粘り強く作っていくのが政治の本質だ」
 この当事者である子供の視点に関する議論が、これまで政治家の公の場での議論やマスコミで取り上げられることはほとんどなかった。
 経団連のような経済合理性だけで割り切れる話ではそもそもないのである。
 ■思考の深さが見える
 ちなみに小林氏が挙げた内閣府の調査
 「家族の法制に関する世論調査」
 では、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28.9%にとどまっている。
 一方、
 「夫婦同姓制度を維持した方がよい」(27.0%)
 と
 「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」(42.2%)
 で、夫婦同姓制度の維持派が7割近くに達する。
 夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては、
 「好ましくない影響があると思う」が69.0%で、
 「影響はないと思う」は30.3%にとどまる。
 今回の総裁選に当たり、読売新聞が9月13日から15日まで実施した世論調査でも、夫婦の名字に関し同様の傾向が表れている。
 それによると、
 「夫婦は同じ名字とする制度を維持しつつ、通称として結婚前の名字を使える機会を拡大する」(47%)
 と
 「夫婦は同じ名字とする今の制度を維持する」(20%)
 を合計すると67%で7割近くとなる。
 「法律を改正して、選択的夫婦別姓制度を導入する」は28%
 と、内閣府の調査と符合する。
 小泉氏が出馬表明記者会見で述べた
 「最近の世論調査」
 とは何を指すのだろうか。
 しかも子供に対して直接意見を聴いた世論調査は寡聞にしてほとんど知らないし、見当たらない。
 このこと自体が、これまでの選択的夫婦別姓論議の根本的な偏りを示しているといえよう。
 ただ、NHK放送文化研究所が令和4年に実施した調査(1183人回答)の
 「中学生・高校生の生活と意識調査」
 を見ると、別姓に関する設問が一問だけあり、こんな問いがあった。
 「結婚後、名字をどのようにしたいか」
 これに対する回答で一番多かったのは
 「自分の名字でも、相手の名字でも、どちらでも構わない」
 で58.7%に上り、姓への拘りの薄さを示している。
 「自分の名字を、相手の名字に変えたい」
 という積極的な改姓派も14.8%いた。
 その一方で、夫婦別姓を求める
 「自分も相手も、名字を変えずにそのままでいたい」
 は僅か7.0%にとどまっていたのである。
 そんな子供らが、果たして
 「片親別姓」
 や
 「兄弟別姓」
 を望むだろうか。
 わざわざ日本からファミリーネームを消し去ることに何の意味があるのだろうか。
 高市氏は既に平成14年と令和2年の2度に渡り、党法務部会に
 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
 を提出している。
 これを成立させれば、国、地方公共団体、事業者などに通称使用のための
 「必要な措置」
 を講ずる責務があるとの法的根拠が生まれる。
 また、総裁選立候補者の加藤勝信元官房長官も産経新聞のインタビューにこう答えている。
 「『旧姓続称制度』を提案した」
 「法律に旧姓使用を書き込むことで政府の様々な手続きで『旧姓でよい』という形にする」
 「家族制度の基本はしっかり守り、今ある不都合を解消していく」
 旗色が悪くなったと感じたのか、小泉氏は9月15日には産経新聞のインタビューで、高市氏が求める旧姓の通称使用法案も同時に国会で採決する可能性も排除しない考えを示した。
 このままでは自民党議員、党員の中に少なくない選択的夫婦別姓反対・慎重派の票が逃げるとみたのだろうが場当たり的である。
 それぞれの候補が、物事をどれくらい考えているかが分かる総裁選でもあった。
 (月刊「正論」11月号から)
 あびる・るい
 <正論>自由主義からの「夫婦別姓」反対 青山学院大学教授・福井義高
 2024/9/20 8:00
 https://www.sankei.com/article/20240920-VE7CYZ4YORI6LLBAB6DFBHQXSM/
 ■本来のリベラルの立場から
 自民党総裁選でにわかに争点化された選択的夫婦別姓を巡っては、導入賛成のリベラルと同姓維持を求める保守の対立という構図で語られるのが通例である。
 しかし、ここでは、夫婦同姓は日本国憲法の思想的基盤でもある古典的自由主義即ち本来のリベラルの立場からも支持できるものであることを示す。
 何かと国家(ステート)を利用して自らの主張を実現しようとする今日、リベラルと呼ばれる人たちと異なり、本来のリベラルは国家に懐疑的であり、特定の設計図に基づいて社会を改造しようとすることは、人知を超えた傲慢とみなす。
 我々の予測能力は極めて限定的であり、新たな制度を導入した場合、意図しない結果が生じることがむしろ常なのである。
 現行制度は何かと欠点が目立つ一方、新しい制度はメリットばかりが強調される。
 しかし、郵政民営化などと違い、家族に関する制度の変更は、事前には想定できなかった大きなデメリットが明らかになっても後戻りできない。
 従って、その変更にはより慎重であるべきで、旧姓の広範な使用など、夫婦同姓を維持したまま柔軟に対応することこそ、本来のリベラルが取るべき道であろう。
 異性間であれ同性間であれ、個人の感情の問題に国家が関与すべきではない。
 法制度としての結婚は、個人間の愛情を国家が承認するためのものではなく、家族という社会の基本単位を法的に保護し、子供の健全な発達を支えるためのものである。
 本来のリベラルは、共同体を維持発展させるための道具に過ぎない国家を相対化し、その暴走を防ぐためにも、個人と国家の間に様々な中間団体が並立することが不可欠と考える。
 その中で最重要な存在が核家族なのだ。
 尚、家族の在り方が多様化した米国でも、事実婚ではなく正式に結婚した実の両親と一緒に暮らすことが子供の発達に最善というのは、実証研究のコンセンサスとなっている。
 ■別姓下の究極の女性差別
 基本単位を家族ではなく核家族としたのは、あくまで夫婦(両親)と子供で1つの単位であり、祖父母など親類はその外側に位置する2次的な存在だからである。
 夫婦別姓の導入は、家制度的発想に基づき、子供の姓を巡って、こうした外側からの介入を促すことになろう。
 同じ儒教圏として日中韓台を文化的に同一視する見方があるけれど、夫婦同姓の日本には、日本より遥かに家系を重視する別姓の中韓台で深刻な問題となった究極の女性差別も存在しない。
 医療技術の進歩で出生前に性別が分かるようになったため、中韓台では女児に限り中絶することが男女比を大きく歪める(男児過多・女児過少)ほどの規模で行われるようになったのである。
 儒教的家族観が一定の影響を持つ日本では、夫婦同姓はむしろ女性の立場を守るとも言える。
 進化心理学、行動遺伝学の観点からも、女性を守る家族制度という点が重要である。
 とはいえ自らの主張を絶対視しないのが、本来のリベラルの立場である。
 夫婦別姓の是非を巡っても同様で、最後は民意に基づき決めるのがあるべき姿であろう。
 ■エリートの家族観との乖離
 議会制民主制においては、直接投票で選ばれる議会を通じた間接的政治決定が原則である。
 しかしメディアのみならず、行政や司法を通じたエリートによる価値観の押し付けが顕著な今日、これまでデモクラシーにおける懸念事項とされてきた大衆の暴走ではなく、民意と乖離したエリートの暴走の抑止が重要となってきている。
 従って、財政や国防などと違い、イエスかノーかで答えることができる価値観に関わる問題については、国民に直接問うことが望ましい。
 今日のエリートと一般国民の価値観の乖離の大きさを示す実例が、2024年3月にEU加盟国であるアイルランドで行われた、家族・子育てに関する条項の憲法改正に伴う国民投票の顚末である。
 議会を通過した改正案は大きく3つからなる。
 まず結婚に基づく家族を国家の保護対象とするという条項に、結婚に限定せず別の家族の在り方も含める。
 また家庭(ホーム)における女性の貢献が不可欠という条項から、女性と家庭という言葉を削除し、家族のメンバーによるケアと書き換える。
 そして母親が経済的必要性から家庭での務めを犠牲にすることがないよう国家が配慮するという条項を削除するというものである。
 要するに日本とも共通するエリートのコンセンサスである「新しい」家族観の明文化である。
 ところが、投票結果は反対が賛成の倍以上となり、民意によって憲法改正は退けられたのだ。
 選択的夫婦別姓に限らず、価値観に関わる問題については、賛成反対どちらの立場であっても、国民投票で決めるのであれば、しこりを残すことなく、ほとんどの国民は、その結果に納得するのではなかろうか。
 自民総裁選「選択的夫婦別姓より、話すべきことあるはず」 仏紙東京特派員アルノー氏2024/9/18 11:04
 https://www.sankei.com/article/20240918-EOERMIHNK5CJDICIHRLTD4UJGA/
 自民党総裁選を知日派の外国人はどう見ているのかー。
 フランスの主要紙フィガロの東京特派員、レギス・アルノー氏が産経新聞のインタビューに応じ、
 「日本にとって真に重要な問題が議論されていないことに驚く」
 と候補者討論に疑問を呈した。
 ーー総裁選をどうみる
 今の日本が直面する重要問題が全く討議されていないと感じる。
 人口減少に伴い、移民受け入れはどうするのか。
 秋になっても連日、気温が30度を超える異常気象が続き、エネルギー計画も喫緊の課題となっている。
 国民はスーパーで主食のコメが買えずにいるというのに、どうしたことか。
 候補者討論では『選択的夫婦別姓』が議題になった。
 しかし、誰も戸籍制度をなくすとは言わない。
 小手先の改革なら、他に話すことがあるだろう。
 衣料品店『ユニクロ』を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が『このままでは日本人は滅びる』というほど、国を取り巻く環境は深刻だ。
 ■変わり映えしない政治…「以前は違った」
 ーー自民党政治については
 総裁選は『次の首相』を選ぶ重要な選挙だが、国民は投票できず、まるで水族館の水槽を眺めているように見える。
 パリの編集部に記事を売り込んだら、『結果を書けばよい』と言われた。
 変わり映えのしない自民党政治に対し、フランスで関心は極めて薄い。
 自民党も以前は違った。
 2000年代、小泉純一郎首相(当時)は『自民党をぶっ壊す』と言い、公約の郵政改革を進めて国民の支持を集めた。
 皇室改革論議も始まり、二階俊博幹事長(同)は女性天皇の容認に踏み込んだ。
 現在、小泉進次郎元環境相は党内リベラル派と言われるが、皇位継承の在り方を巡って明確な発言を避ける。
 他の候補も同じだ。
 批判されるのが怖いのだろうか。
 野党は政権奪回の兆しすら見えず、現状ではNGO(非政府組織)と変わらない。
 ーー日本の現状をどうみる
 新型コロナウイルス流行後、非常に保守的になったと感じる。
 内向きになったということだ。
 コロナ対策で日本は欧州のように都市封鎖をせず、皆が行動を自制することで乗り切った。
 結束の強さは安全な社会を作る一方、異論を嫌う性格を強めた。
 民主主義国家なのに、環境保護や女性の権利を声高に訴えると、社会で孤立を強いられる。
 移民については門戸を閉ざしたままで、姿勢はフランスの極右に近い。
 レギス・アルノー氏
 仏紙フィガロ東京特派員。
 日仏2カ国語ビジネス誌「フランス・ジャポン・エコー」編集長。
 著作は「誰も知らないカルロス・ゴーンの真実」(2020年、共著)など。
 選択的夫婦別姓は争点か 銀行、国家資格、パスポート…「不都合な状態」ほぼ解決済み2024/9/17 14:26
 https://www.sankei.com/article/20240917-FMNXIISCNJA3DAR4V52ZK4FYHM/
 自民党総裁選に立候補した小泉進次郎元環境相が表明したことによって、一大争点のようにメディアで取り扱われ始めた選択的夫婦別姓制度導入。
 小泉氏は
 「長年議論して決着がついていない」
 と言うが、自民党は過去の国政選挙の公約などでは結婚前の旧姓(戸籍名)使用の幅広い導入を掲げ、実現してきた。
 そもそも争点化されるべきテーマなのか。
 夫婦別姓をめぐる議論は、働く女性が増えたことで、婚姻後の職場での旧姓呼称や国家資格、免許証などの旧姓使用を認めるべきという考え方からスタートした。
 内閣府男女共同参画局が令和6年6月27日付で出した
 「各種国家資格、免許等における旧姓使用の現状等について」
 によると、2024年5月31日現在、320の国家資格、免許などのうち317で資格取得時から旧姓使用ができる。
 残る3資格は
 「資格取得後に改姓した場合は旧姓使用ができる」
 となっており、旧姓使用ができないものはゼロだ。
 マイナンバーカード、運転免許証、パスポートも既に旧姓併記ができるようになっている。
 パスポートは
 「旧姓/Former surname」
 の説明が付記される。
 一方、夫婦別姓の導入を呼びかけている経団連が2024年6月に出した資料には
 「ビジネスの現場における通称利用の弊害例」
 がある。
 一部の弊害例に対する現状は次のとおりだ。
 【例:多くの金融機関では、ビジネスネームで口座をつくることや、クレジットカードを作ることができない】
 多くの金融機関ではできる。
 令和4年3月に内閣府と金融庁が金融機関に行った
 「旧姓による預金口座開設等に係るアンケート」
 によると、銀行の約7割、信用金庫の約6割が、旧姓名義による口座開設と、婚姻などで改姓した場合、既存口座の旧姓名義による取引を認めていると回答した。
 信用組合は1割超にとどまっているが、これは
 「共同センターのシステムが未対応となっていることなどから」
 という。
 【例:通称では不動産登記ができない】
 2023年の法務省令改正により、旧姓併記でできるようになった。
 【例:研究者は論文や特許取得時に戸籍上の氏名が必須であり、キャリアの分断や不利益が生じる】
 旧姓での論文執筆はほとんどの研究機関で認められている。
 特許出願については旧姓併記が可能になったが、旧姓のみでの出願はできない。
 ■まずは周知徹底を
 一方、2024年8月24日配信の共同通信によると、主要企業111社に実施したアンケートで、選択的夫婦別姓を
 「早期に実現すべきだ」との回答は17%、
 「将来的には実現するべきだ」は4%
 で計21%にとどまった。
 「結論を急がず慎重に議論を進めるべきだ」(9%)、
 「夫婦同姓を維持した上、通称使用の法制度を設けるべきだ」(3%)
 といった回答は計12%で、
 67%は「その他・無回答」だった。
 経団連が制度導入に前向きであるにもかかわらず、アンケートは傾向が違った。
 共同通信も
 「個別企業では慎重な姿勢が根強く、無回答も目立つ」
 と伝えている。
 もっとも、こうした旧姓使用や旧姓併記が完全に周知されているとは言えない。
 政府は引き続き周知を行う必要がある。
 また、経団連は金融機関をはじめとする会員企業にまずは旧姓併記の対応を促すべきではないのか。
 親子間で姓が異なってしまうことも、更に議論が必要だ。
 「選択的」
 とは、あくまで夫婦の選択であり、生まれてくる子供に選択の余地はないまま
 「親子別姓」
 「家族別姓」
 となる。
 婚姻は
 「両性の合意に基づく」
 と憲法に書かれているとはいえ、別姓をめぐって双方の両親などを巻き込むトラブルに発展するケースもないとは言えないだろう。
 <主張>自民総裁選告示 日本を守る政策競い合え 「夫婦別姓」には賛成できない社説
 2024/9/13 5:00
 https://www.sankei.com/article/20240913-3EWZIUNIWVKNJGCH5AYNPRJ2LM/
 自民党総裁選が告示され、過去最多の9人が立候補した。
 多くの派閥が解散を決め、名乗りを上げやすい環境になったことなどが背景にある。
 投開票は27日で、岸田文雄首相の後継選びだ。
 有権者である自民党の国会議員と党員・党友には、1億2千万人が暮らす日本の舵取り役には誰が最も相応しいかを考え、投票してもらいたい。
 目先の人気投票は禁物である。
 世界は激動の時代を迎えている。
 日本は、反日的で核武装している専制国家の中国とロシア、北朝鮮に囲まれている。
 ■転換期を担う自覚持て
 ロシアが侵略するウクライナ、紛争の絶えない中東を除き日本は世界で最も厳しい安全保障環境にある。
 冷戦期の東西対立の最前線は欧州だったが、現代のそれは日本を含む北東アジアである。
 先進7カ国(G7)の一員である日本には、自国の防衛に加えて、地域と世界の平和と秩序を守る責務がある。
 経済では、成長力強化が急務だ。
 「失われた30年」
 とされる長期停滞から真に脱却できるかが問われている。
 人口減少への対応や持続可能な社会保障制度の改革も待ったなしだ。
 候補者は重大な転換期に政権を担う自覚を持ち、志と具体的な政策を語らねばならない。
 早期の衆院解散・総選挙が想定されるが、聞こえのよい政策を羅列するだけでは無責任の誹りを免れない。
 選挙後の政権運営の構想と実行力こそが重要だ。
 今や、誰が首相になっても同じという時代ではない。
 安倍晋三元首相は
 「自由で開かれたインド太平洋」
 構想を世界に提示し、限定的ながら集団的自衛権の行使容認を実現した。
 菅義偉前首相は米国と共に
 「台湾海峡の平和と安定の重要性」
 を打ち出した。
 岸田文雄首相は5年間の防衛費43兆円、反撃能力の保有を決め、防衛力の抜本的強化を開始した。
 彼らの決断と行動がなければ日本は中国や北朝鮮の脅威、ロシアのウクライナ侵略を前に立ち往生していただろう。
 候補者は岸田氏が語った
 「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」
 という危機感を共有し、安倍氏以来の外交安保政策の確実な継承と発展を約束すべきである。
 高市早苗経済安全保障担当相が提案した内閣情報局、内閣情報会議創設は日本と国民の安全を高めるだろう。
 台湾有事は令和9(2027)年までにあるかもしれないと懸念されている。
 抑止力と対処力向上へ残された時間は短く、理念的な法改正に走っている余裕はない。
 米国との同盟や有志国との協力を強めつつ、地に足の着いた防衛、国民保護策を推進すべきである。
 一方で、千年、二千年の視野で日本を守るため、安定的な皇位の継承策を整えたい。
 岸田内閣は、男系男子による継承を堅持する内容の報告書を国会へ提示した。
 自民は報告書に賛同している。
 男系(父系)継承を一度の例外もなく貫いてきた皇統を守らねばならない。
 ■男系継承の皇統を守れ
 憲法改正は自民の党是だ。
 自衛隊明記や緊急事態条項創設などをいつまでに実現したいかを語ってほしい。
 首相になっても憲法改正を論ずるのは何の問題もない。
 公明など他党を説得していく決意も披露すべきだ。
 北朝鮮による拉致被害者全員救出の強い決意を示すことが求められよう。
 争点の1つに選択的夫婦別姓導入の是非がある。
 家族や社会の有り様に関わる問題だ。
 国民的合意を欠いたまま結論を急げば、社会に分断を招く。
 選択的夫婦別姓が導入されれば、姓は砂粒のような個人の呼称へと変貌しかねない。
 世代を重ねていく家族の呼称としての姓でなければ、姓を名乗る必要があるのだろうか。
 夫婦別姓は片方の親と子の別姓でもある。
 祖父母らも絡み、家族の歴史や絆が断ち切られ、戸籍制度も揺らぐ。
 「選択的」
 と言っても個人の自由の問題ではない。
 小泉進次郎元環境相は1年以内に実現したいと語ったが、賛成できない。
 旧姓使用の充実で対応できる話だ。
 「政治とカネ」
 を巡る問題は重要だ。
 信頼を回復しなければ自民は強い政策推進力を保てまい。
 再発防止や政治資金の透明性確保はもちろん、派閥解散に伴う党内統治の在り方も含め政治改革論議を深めてほしい。
 国内外で政治家を狙うテロが相次いでいる。
 遊説警備に万全を尽くしてもらいたい。
 自民党総裁選で急浮上の夫婦別姓、経団連の間違い阿比留瑠比の極言御免
 2024/9/12 1:00
 https://www.sankei.com/article/20240912-6AWPKWND65P33HQYWVB3XSBWSI/
 国会議員と一般国民との意識の乖離を感じることは少なくない。
 2023年のLGBT理解増進法騒動の時もそうだったが、議員たちは時に、国民の関心がさほど高くもない問題について、まるで最優先課題であるかのように熱心になる。
 今回の自民党総裁選での選択的夫婦別姓問題の急浮上も、その1つだろう。
 「旧姓使用のままだと、多くの金融機関では銀行口座やクレジットカードを作ることはできない」
 「そして、旧姓では不動産登記ができない」
 小泉進次郎元環境相は2024年9月6日の出馬表明記者会見でこう述べ、首相に就いたら夫婦別姓を認める法案を国会に提出すると明言した。
 そしてこの小泉氏の意気込みに押され、選択的夫婦別姓問題が総裁選の大きなテーマになった感があるが、国民の関心はどうか。
 NHKが2024年9月9日に発表した世論調査で、自民党総裁選で最も深めてほしい政治課題として6つの選択肢を挙げた結果が興味深い。
 それによると
 「年金など社会保障制度」が35%
 でトップで
 「経済・財政政策」(26%)
 が続き、
 「選択的夫婦別姓」は僅か1%
 で最下位だった。
 1%だから無視していいというわけではないが、優先的に取り組むべき喫緊の課題だとは言えない。
 また、小泉氏の言葉に対しては高市早苗経済安全保障担当相がこう事実誤認を指摘し、話題となった。
 「選択的夫婦別氏制度を実現するという候補予定者に『(旧姓では)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、2024年4月から不動産登記は旧姓でできる」
 更に、高市氏の指摘に関して自民の長尾敬前衆院議員がX(旧ツイッター)で、こんな補足をしていた。
 「小泉氏は法改正されていることを知らなかった」
 「因みに銀行口座も金融庁からの通知で順次作れるように移行されているのに作れないと説明していました」
 「間違って作られた経団連の資料をそのまま説明したからです」
 そこで、経団連が2024年6月に公表した選択的夫婦別姓の実現を求める提言
 「選択肢のある社会の実現を目指して」
 を見ると、
 「ビジネスの現場における通称利用の弊害が生じる場面(例)」
 という図表に、確かに
 「口座やクレジットカードの作成時」
 「不動産登記を行う時」
 と書かれていた。
 小泉氏が本当に経団連の資料を基に発言したかどうかは分からない。
 ただいずれにしろ、経団連の提言自体が誤った認識に基づいていたことになる。
 この2024年9月10日には、立憲民主党の4人の代表選候補者と党所属女性議員との討論会が開かれた。
 4人全員が選択的夫婦別姓に賛成している点が立民らしいが、その中で野田佳彦元首相がこう述べているのが気になった。
 「経団連も早期実現を主張するようになった」
 「チャンスを逃してはいけない」
 この経団連の提言に関しては、2024年7月14日の共産党の機関紙『しんぶん赤旗』も1面トップで
 「経団連本部訪ねて聞いてみた 選択的夫婦別姓」
 と大きく取り上げていた。
 国会は、与野党共に経団連の事実誤認が含まれた提言に影響されているように見える。
 このまま国民の42・2%(令和3年の内閣府調査)が求める
 「旧姓の通称使用についての法制度」
 を無視した形で、
 「選択的夫婦別姓」
 実現へと突き進むのであれば、国民との意識のズレはさらに増すばかりだろう。
 岸田内閣 支持は20%で発足後最低 不支持は60% 政党支持率はhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20240909/k10014577111000.html#:~:text=
 選択肢のある社会の実現を目指して〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜
 2024年6月18日
 一般社団法人 日本経済団体連合会
 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html
 高市早苗氏、通称使用に根拠与える法案を 「選択的夫婦別姓賛成の人は議員立法なかった」2024/9/10 12:15
 https://www.sankei.com/article/20240910-JZ4633HTQJD2FAIGT4GLEI5Y5I/
 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)に出馬する高市早苗経済安全保障担当相(63)は9日夜、BSフジ番組で、首相就任時に旧姓を通称使用できる措置を国や地方公共団体、公私の団体、事業者に義務付ける
 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
 を政府提出法案として国会に提出する考えを示した。
 「この法案が通れば、ほぼほぼ結婚で姓が変わることによる不便はなくなる」
 と指摘した。
 高市氏は平成14年、令和2年の過去2回、同法案を議員立法として党法務部会に提出したが、党議決定には至らなかった。
 その上で、高市氏は
 「これまで選択的夫婦別姓に賛成だと仰っていた方々が、自ら議員立法の形で法案を書いて、党政調会に提出していたなら、ともかく、これまで提出されていなかった」
 と述べ、選択的夫婦別姓の制度化を主張する党所属議員の手法を疑問視した。
 総裁選では、出馬表明した小泉進次郎元環境相(43)が首相就任時の選択的夫婦別姓制度の導入法案の国会提出を明言し、党議拘束をかけない考えを示している。
 高市氏は
 「そういう方向もあるのだろう」
 と述べた上で、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案についても
 「(党議拘束)かけなくてもいい」
 と語った。
 高市氏は小泉氏念頭に皮肉も 選択的夫婦別姓導入巡り自民総裁選の立候補予定者が対立2024/9/9 20:30
 https://www.sankei.com/article/20240909-2YNDBMGC35ILBDLNK4HLK6TJDQ/
 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)で、夫婦同姓か夫婦別姓を選べる
 「選択的夫婦別姓制度」
 の導入について、立候補予定者の意見が割れている。
 9日に出馬を表明した高市早苗経済安全保障担当相(63)は反対の立場で、早期実現方針を表明した小泉進次郎元環境相(43)の事実誤認を指摘した。
 党内には慎重論も根強く、賛成派が押し切ろうとすれば分断を生む可能性がある。
 「少し正しく皆さまに知識を持ってもらいたい」
 高市氏は9日の記者会見で、こう語った。
 念頭にあるのは6日の会見で
 「旧姓では不動産登記ができない」
 と発言した小泉氏だ。
 高市氏は
 「選択的夫婦別氏制度を実現するという候補予定者に『(旧姓で)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、4月から不動産登記は旧姓でできる」
 と指摘した。
 高市氏は住民票などへの旧姓併記が広がっていることや、旧姓の通称使用の拡大に向けた法案作りに取り組んできたことを挙げ、
 「私が提出したような法案が通れば、ほとんどの不便は解消される」
 と述べた。
 小林鷹之前経済安保担当相(49)も8月19日の会見で、
 「旧姓の併記が認められる制度がある」
 「ただ、周知されていないと思うので、もっと周知を徹底する形でニーズに応えたい」
 と述べている。
 小泉氏は9日、経団連の十倉雅和会長と東京都内で面会した。
 経団連は選択的夫婦別姓の実現を政府・与党に働きかけている。
 小泉氏は面会後、記者団に
 「家族の中で名字が違うことが、家族の絆の崩壊に繋がるというのは必ずしも違うと思う」
 と語った。
 石破茂元幹事長(67)は6日、東京都内で記者団に
 「実現は早ければ早いに越したことはない」
 と小泉氏に同調した。
 河野太郎デジタル相(61)も8月26日の会見で
 「認めた方がいい」
 と述べている。
 一方、過去に前向きな発言をしたことがある茂木敏充幹事長(68)は今月4日の会見では
 「国民の間でも様々な意見がある」
 「更なる検討を進めていきたい」
 と述べるにとどめた。
 林芳正官房長官(63)も
 「個人的にはあってもいいが、色々な意見がある」
 としている。
 高市早苗氏、選択的夫婦別姓で小泉進次郎氏に反論「不動産登記できる」解雇規制緩和も反対2024/9/9 17:23
 https://www.sankei.com/article/20240909-TZREDMPC75CKZNZKXM66THI7RU/
 自民党の高市早苗経済安全保障担当相(63)=衆院奈良2区=は9日、党総裁選(12日告示、27日投開票)への立候補を表明した記者会見で、選択的夫婦別姓の制度化に慎重な考えを示した上で、
 「少し正しく皆さまに知識を持ってもらいたい」
 と述べ、
 「選択的夫婦別氏制度を実現すると言う候補予定者に『(旧姓で)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、4月から不動産登記は旧姓でできる」
 と指摘した。
 ■「正しい知識を」
 選択的夫婦別姓を巡っては、小泉進次郎元環境相が総裁選に出馬表明した6日の記者会見で、制度の導入法案を提出する考えを明言し、
 「旧姓では不動産登記ができない」
 などと語っていた。
 その上で、高市氏は
 「婚姻で姓が変わることによる不自由を解消したい」
 「私が提出したような法案が通れば、ほとんどの不便は解消される」
 と述べ、旧姓の通称使用に法的根拠を与える法整備の必要性に重ねて言及した。
 高市氏は平成14年と令和2年、それぞれ党法務部会に、旧姓の通称使用に法的根拠を与える
 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
 を提出した。
 しかし、党議決定には至っていない。
 旧姓の通称使用の法制度化を重視する理由には世論調査の結果を上げた。
 そのうち、内閣府の令和3年12月の調査は
 「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」
 との回答は42・2%で、
 「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」
 の28・9%を上回っている。
 高市氏は、旧姓の通称使用に関する総務相時代の自身の取り組みもアピールし、「総務省関係でやることができる全ての手続き1142件について、婚姻前の姓で対応できるように変えた」などと語った。
 ■解雇規制「日本は緩い方」
 また高市氏は、小泉氏が掲げる大企業の解雇規制の緩和に関しても「反対だ」と明言した。
 「G7(先進7か国)と比較しても、日本の規制はきつくない]
 「(規制は)労働者を守る意味だが、様々な指標を見ると、(日本は)緩い方だ」
 と語った。
 <産経抄>多様性、多様性というけれど2024/9/7 5:00
 https://www.sankei.com/article/20240907-KZZFCTKANRNW7JW2QWLUV7TBFI/
 世は多様性の時代と言われる。
 「首相になったら選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的議論を進める」。
 小泉進次郎元環境相は6日、自民党総裁選への出馬表明記者会見でこう述べ、
 「多様な人生」
 「多様な選択肢」
 の拡大を訴えた。
 ▼いつしか日本社会に、多様性を主張されると異議は唱えにくい
 「空気」
 が醸成されてしまった。
 国会質疑からテレビコマーシャルまで、多様性という言葉を聞かない日はない。
 とはいえ抄子は天邪鬼(あまのじゃく)なので、
 「猫もしゃくしも多様性を礼賛する社会のどこが多様なのか」
 と言いたくなる。
 ▼レオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐」を揶揄した性的少数者の宴らしきものや、切り落とされた自らの生首を手に持つマリー・アントワネットが登場して物議を醸したパリ五輪開会式も、多様性を表現したものだった。
 評価は分かれようが、少なくとも抄子の目にはグロテスクに映った。
 ▼選択的夫婦別姓については、自民党総裁選への出馬を表明している者の中で小泉氏の他に石破茂元幹事長や河野太郎デジタル相も前向きである。
 経団連も選択的夫婦別姓の早期実現を求め、まるでそれが時代の趨勢であるかのような提言も発表したが、本当にそうなのか。
 ▼NHK放送文化研究所が中高校生を対象に令和4年に実施した調査(1183人回答)では、結婚後に夫婦別姓を望む回答はわずか7・0%しかいない。
 調査自体が見当たらないので確たることは言えないが、子供たちが夫婦別姓に伴う
 「片親との別姓」
 や
 「兄弟別姓」
 を歓迎するだろうか。
 ▼世界の潮流に乗り遅れるとの意見も承知しているが、こう愚考している。
 日本は日本のやり方でいいと認めるのもまた多様性ではないかと。
 夫婦別姓、LGBT問題でも共産党と似てきた経団連 自民党も加われば「多様性の統一」阿比留瑠比の極言御免
 2024/7/4 1:00
 https://www.sankei.com/article/20240704-ORCW5C7MEFIC7EJPSH6XFP45ZI/
 前回、2024年6月27日付の当欄『夫婦別姓で失う自民の価値』で筆者は、選択的夫婦別姓制度を巡る議論には当事者である子供の視点が欠けていると指摘した。
 その際、次のように記し、過去の調査では両親が別姓となることに否定的な意見を持つ中高生が3分の2に及んだことに言及していた。
 「平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する」
 「子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい」
 すると、親切な読者がNHK放送文化研究所が令和4年に実施した調査(1183人回答)があると教えてくれた。
 その
 「中学生・高校生の生活と意識調査」
 を見ると、別姓に関する設問は1問だけだったが、こんな問いがあった。
 「結婚後、名字をどのようにしたいか」
 これに対する回答で一番多かったのは
 「相手が自分の名字になっても、自分が相手の名字になっても、どちらでも構わない」
 で58.7%に上り、姓への拘りの薄さを示している。
 「自分の名字を相手の名字に変えたい」
 という積極的な改正派も14.8%いた。
 その一方で、夫婦別姓を求める
 「自分も相手も、名字を変えずにそのままでいたい」
 は僅か7.0%に留まっていたのである。
 やはり、こうした子供たちの意見を無視すべきではないのではないか。
 国会や司法、経済界やマスコミでの議論は、この点が欠落していて余りに功利的に見える。
 夫婦別姓は必然的に片方の親と子供の姓が異なる親子別姓となるし、制度の構築の仕方によっては兄弟別姓にもなり得る。
 ■高市法案の提出を
 そもそも今回、またぞろ夫婦別姓問題が浮上したのは2024年6月、経団連が選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める提言を発表したからだが、そこには案の定、子供の視点や立場は全く取り入れてられていなかった。
 その
 「はじめに」
 の部分には一読、呆れた。
 「ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)、(DEI)は、イノベーションの源泉であり、社会・経済のサスティナブルな成長に欠かせない要素であるとともに、先き不透明な時代の中で、企業のレジリエンスを高めるうえでも必要不可欠である」
 短い一文の中に、6つも片仮名言葉が出てくる。
 こんな不自然な言葉遣いをする者は普通、社会では敬遠されて相手にされない。
 「我が国経済の自立的な発展と国民生活の向上に寄与すること」
 を使命とするはずの経団連は、LGBT問題でも夫婦別姓問題でも、段々と日本共産党と似てきたのではないか。
 その輪の中にもし自民党も加わるとしたら、それは多様性ではなく共産党が主張する
 「多様性の統一」
 だろう。
 実際、共産党の田村智子委員長は2024年6月19日の党首討論で、経団連が政府に選択的夫婦別姓制度の早期実現を要請したことに言及し、
 「長年に渡る女性たちの訴えが遂に経済界も動かした」
 と胸を張った。
 自民党はまず、高市早苗経済安全保障担当相が平成14年と令和2年の2度に渡り、党法務部会に提出した
 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
 を審議し、国会に提出すべきである。
 これにより、
 「国、地方公共団体、事業者」
 などは通称使用のために
 「必要な措置を講ずる責務を有する」
 と定めて通称使用に法的根拠を与えれば、経団連が懸念する
 「職業生活上の不便・不利益」
 の多くは解消するのではないか。
 調査概要・グラフについて「中学生・高校生の生活と意識調査」とは?
 https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-isiki/tyuko/about.html
 回答者数
 中高生の結果:中高別の全調査結果はこちら(PDF)から
 https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-isiki/tyuko/assets/pdf/cyukousei.pdf
 ―結婚後、名字をどのようにしたいか―
 第51問〔全員に〕あなたは、将来、結婚したとしたら、名字をどのようにしたいと思いますか。次の中から、あてはまるものに、1つだけ〇を
 つけてください。
 @1982年A1987年B1992年C2002年D2012年E2022年
 1.相手の名字を、自分の名字に変えてほしい
 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E19.6
 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E16.0
 2.自分の名字を、相手の名字に変えたい
 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E13.1
 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E16.2
 3.相手が自分の名字になっても、自分が相手の名字になっても、どちらでも構わない
 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E59.2
 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E59.9
 4.自分も相手も、名字を変えずにそのままでいたい
 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E7.0
 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E6.1
 5.無回答
 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E1.0
 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E1.8
 別姓で自己否定する自民阿比留瑠比の極言御免
 2024/6/27 1:00
 https://www.sankei.com/article/20240627-TWC52YKBYNKC7DKHOP5EBO4BQU/
 自民党が性懲りもなく選択的夫婦別姓に関する党内議論を再開させるという。
 経団連や経済同友会のビジネス的見地からの要請に後押しされた形だが、不必要だったLGBT理解増進法に続いて夫婦別姓にまで突き進むとしたら、自民の存在価値をまた1つ自己否定することになろう。
 「多様性」
 というはやりの聞こえのいい掛け声に目が眩み、安易に取り込もうとするのでは、立憲民主党や共産党、社民党と最早選ぶ所がない。
 もっとも、岸田文雄首相は2024年6月21日の記者会見で、選択的夫婦別姓については次のように慎重だった。
 「様々な立場の方に大きな影響を与える問題だ」
 「だからこそ世論調査でも意見が分かれている」
 「前向きな意見の方の一方、家族の一体感や子供の姓をどうするかなどに関心を持つ消極的な意見もある」
 LGBT法を巡っては、元首相秘書官の性的少数者差別とも受け取られかねない発言や米民主党政権の圧力に屈して成立に前のめりになった首相だが、今度はぶれないでもらいたい。
 安倍晋三元首相もかつてこの問題に関し、首相にこう信頼を示していた。
 「岸田さんはそうリベラルではないんだ」
 「以前、夫婦別姓の議論が高まった時に
 「子供の視点が全然ない」
 と話していた。
 ■アンケートでは
 やはりこの点が重要だと考えるので、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する。
 子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい。
 それによると、両親が別姓となったら
 「嫌だと思う」(41.6%)
 「変な感じがする」(24.8%)
 の否定的な意見が、合わせて3分の2に達した。
 一方で
 「嬉しい」
 は僅か2.2%しかいなかった。
 また、成人を対象とした令和3年実施の内閣府の
 「家族の法制に関する世論調査」
 結果を見ても、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28.6%に留まった。
 「夫婦同姓制度を維持した方が良い」が27.0%、
 「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方が良い」が42.2%で、
 夫婦同姓維持派が7割近くに達している。
 夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては
 「好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69.0%で
 「影響はないと思う」は30.3%
 に留まっている。
 留意すべきは
 「兄弟の姓が異なっても構わない」が僅か13.8%で、
 「姓は同じにするべきだ」が63.5%
 に上ることだろう。
 夫婦どちらの姓を名乗らせるかを巡り、親族間のトラブルも予想される。
 ■フェミニストの議論
 選択的夫婦別姓については、
 「選択的」
 だから別に同性を選びたい人はそうすればいいだけだという意見もあるが、事はそう単純ではないだろう。
 既に平成17年刊行の
 「ザ・フェミニズム」(上野千鶴子、小倉千加子著)
 で、フェミニスト【フェミニストとは、全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人のことだと、英オックスフォード辞書で定義されている】である小倉氏がこんな議論をしている。
 「(選択的)夫婦別姓になったら、まるで夫婦別姓をしている人の方が進んでいて、夫婦同姓の人の方が遅れているみたいになりかねない」
 「そこでまた1つの差別化が行われるわけじゃないですか」
 女優でタレントの橋本マナミさんが2024年6月
 「私は一緒の名字がいいです」
 「好きで結婚したから」
 とテレビで発言しただけでニュースとして取り上げられる現状を見ると別姓導入で同性夫婦が肩身の狭い思いをする日が来るかもしれない。
 (論説委員兼政治部編集委員)
 阿比留瑠比の極言御免日経、朝日のコラムに異議あり 夫婦別姓論議に欠ける子供の視点
 2015/11/9 5:00
 https://www.sankei.com/article/20151109-Q7P53O3IFNNVLFLL3DOXYENVFM/
 2015年11月4日は最高裁大法廷で夫婦別姓(氏)を巡る訴訟の弁論が開かれるとあって、日経新聞と朝日新聞の朝刊1面コラムが、それぞれこの問題を取り上げていた。
 夫婦別姓に賛成・推進する立場で書かれたこの2つのコラムを読んで感じたのは、立論の前提、出発点が異なり、議論が噛み合わないもどかしさだった。
 「誰かに迷惑もかけない」
 「コストも知れている」
 「歩みの遅さを合理的に説明するのは難しい」
 日経はこう書いていたが、夫婦別姓論議でいつも気になるのが、当事者である子供の視点の欠落だ。
 子供の意見を反映した調査がなかなか見当たらないので少し古くなって恐縮だが、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を引用したい。
 それによると、両親が別姓となったら
 「嫌だと思う」(41.6%)
 と
 「変な感じがする」(24.8%)
 との否定的な意見が、合わせてほぼ3分の2に達している。
 一方、
 「嬉しい」は僅か2.2%
 しかいなかった。
 また、20歳以上の成人を対象とする内閣府の世論調査(平成24年12月実施)でも、夫婦の名字が違うと
 「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えた人が67.1%
 に上り、
 「影響はないと思う」(28.4%)
 を大きく上回った。
 夫婦別姓と言うと、両性が納得すればいいと思いがちだが、夫婦が別姓を選択した場合、子供は必ず片方の親と別姓になる。
 事は夫婦の在り方だけの問題ではなく、簡単に
 「誰かに迷惑もかけない」
 と言い切れるような話ではない。
 日経コラムは更に、こうも書いている。
 「反発する人の声から『自分と違う価値観を持つ人間が、とにかく許せない』との響きを感じることがある」
 どう感じようと自由ではあるが、この見解はかなり一方的だろう。
 10年以上前のことだが、夫婦別姓を議論していた自民党の会議を取材した同僚記者は、夫婦別姓推進派で、現在は党総裁候補の1人と言われる議員から、こう面罵された。
 「(夫婦別姓に慎重論を唱える)産経新聞は、新聞じゃない」
 当たり前のことだが、自分と違う価値観が許せないのは、何も夫婦別姓に
 「反発する人」
 に限らないということである。
 多様な価値観を説く人が、異なる価値観を否定するという矛盾を犯すのは珍しくない。
 ちなみに、朝日のコラムにはこうあった。
 「結婚や家族の多様化、個の尊重という冒頭に引いた変化(※国民意識の多様化、個人の尊重)は、別姓の議論にもそのまま当てはまる」
 「社会は旧姓使用を広げる方向に動く」
 確かに一般論としては、社会の多様化は歓迎すべきことなのだろう。
 多様性を失えば硬直化し、やがては行き詰まっていく。
 とはいえ、何でもかんでも
 「多様化」
 という言葉で正当化しても、そこで思考停止することになる。
 また、夫婦別姓を法的に位置付ける事と、旧姓使用は全く別物である。
 現在、夫婦同姓制度の下で通称使用が大きく緩和され、旧姓使用が広がっていることがその証左だと言える。
 いずれにしてもこの問題を考える時は、直接影響を受けることになる子供の意見をもっと聞いた方がいい。
 政府にも、今度調査する時は是非その視点を盛り込むようお願いしたい。
 (論説委員兼政治部編集委員)
 安倍元総理の三回忌を前に 「夫婦別氏」よりも「婚姻前の氏の使用」の利便化でWiLL2024年8月号 経済安全保障担当大臣 高市早苗
 ■安倍元総理が夢に
 2024年7月8日には、2022年の参議院選挙応援中に凶弾に倒れ、逝去された安倍晋三元総理の三回忌を迎えますね。
 度々つまらない口喧嘩をしたり、仲直りをしたりの繰り返しでしたが、それも叶わなくなった今は、しみじみ淋しくなります。
 先般、疲労が極限に達した時に、亡き両親と安倍元総理が一緒に夢に出てきたので、
 「迎えに来たのかな」
 と感じましたが、その夢には昭恵夫人も登場していたことを思い出して一安心!
 安倍元総理も懸命に応援して下さった2021年9月の自民党総裁選以降、土日は党務か政務で地方講演、平日は仕事、深夜には大量の資料読みや原稿書き・・・と休みなく働き続けていて、人間ドックなど健康診断も3年以上は受けていないので、注意喚起のために夢に出て来て下さったのかなとも思いました。
 2024年夏は、各方面との調整がつけば、安倍元総理の御命日に出国して、G7科学技術大臣会合に出席しますが、イタリアから帰国したら、1日だけは休みを確保して健康診断に行ってみようと考えています。
 ■経済界が夫婦別氏制度導入を要望
 安倍元総理が何度も仰っていたことがありました。
 「選択的夫婦別氏だけどさ、あれは駄目だよ」
 「高市さんが法務部会に提出している法案を早く成立させればいいんだよ」
 私が自民党政調会長の法務部会に提出した法律案というのは、
 『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』
 のことです。
 この法律案では、戸籍上の夫婦親子の氏が同一であること(ファミリー・ネーム)は維持しつつ、
 「婚姻前の氏を通称として称する旨の届出をした者」
 について、
 「国、地方公共団体、事業者、公私の団体」
 は
 「婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」
 としたものです。
 この法律案を、2002年と2020年の2回に渡って法務部会に提出しましたが、1回目は
 「戸籍の氏も住所も別々にするべきだ」
 といった強烈な反対意見が出て党議決定には至らず、2回目は、審査もされないまま放置されています。
 私は、足掛け約4年の総務大臣任期期間の後半(2019年9月からの約1年間)で、『住民基本台帳法』『地方自治法』『公職選挙法』『消防法』『放送法』『電気通信事業法』をはじめ総務省が所管する全法令をチェックし、資格や各種申請など事務手続きに戸籍氏しか使えなかったものを、全て婚姻前の氏の単記か併記で対応できるように変更しました。
 総務省単独の判断で変更できたものだけでも、合計1142件でした。
 仮に全府省庁が阻害と同じ取り組みを実施し、地方公共団体や公私の団体や企業も同じ取り組みを実施すれば、婚姻による戸籍氏の変更によって社会生活で不便を感じることはなくなると考えます。
 例えば、金融庁や厚生労働省。
 私自身の経験では、銀行の預金通帳でしたが、婚姻前の氏のままで使える銀行と戸籍氏に作り直すよう求める銀行が混在していました。
 数年前に年金受給者の方から伺った話ですが、通称使用届けを出して戸籍氏と婚姻前の氏が併記された住民票を提示したのに、厚生労働省の方針として
 「戸籍氏の通帳でなければ年金を振り込めない」
 とされ、通帳を作り直したということです。
 こういった所管府省庁によってバラバラの対応が残っている現状を改善するためにも、私が起草した法律案によって、
 「国、地方公共団体、事業者、公私の団体」
 が
 「婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」
 ことを明確にするべきだと思っていました。
 2024年6月、経団連会長が
 「選択的夫婦別氏制度の導入」
 を要望する
 「提言」
 を公表されました。
 報道で知る限りの理由は、働く女性の不便解消や国際社会での活躍のためにということらしいのですが、先ずは前記したような法整備を行うということでは不十分でしょうか。
 既に、マイナンバーカード、パスポート、運転免許証、住民票、印鑑登録証明書は、戸籍氏と婚姻前の氏の併記が可能になっています。
 仕業・師業と呼ばれる国家資格の殆どで、免許証などへの婚姻前の単記や併記が可能になっています。
 国際社会での活躍についても、同氏や別氏だけではなく、複合氏を使う国もあれば、氏が無い国もあり、様々です。
 ■「子の氏の安定性」
 最近は、
 「夫婦別氏制度」
 の導入に賛成する政治家は
 「改革派=善」、
 反対する政治家は
 「守旧派=悪」
 といったレッテル貼りがされているように感じますので、私のような考え方は変だと思われる方も多いのかもしれません。
 私が選択的であったとしても
 「夫婦別氏制度」
 の導入に慎重な姿勢を続けてきた最大の理由は、
 「子の氏の安定性」
 が損なわれる可能性があると思うからです。
 現行制度では、婚姻届けを提出した夫婦の戸籍は全て同氏ですから、子も出生と同時に両親と同氏になることが確定しています。
 法改正によって戸籍上も別氏の夫婦が出現した場合、子の氏の決め方について、
 「全ての別氏夫婦が納得できるルール」
 が必要になります。
 仮に
 「別氏夫婦が子の氏を取り合って、協議が調わない場合」
 には子の氏が定まらないので、『戸籍法』が規定する
 「出生の届出は、14日以内」
 というルールも見直す必要があるのではないでしょうか。
 これまでに衆議院に提出された
 「夫婦別氏制度」
 の導入を可能にする
 「民法の一部を改正する法律案」(立憲民主党案)
 を拝見すると、
 「別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称する」
 「協議が調わない時は、家庭裁判所は、協議に代わる審判をすることができる」
 とされています。
 同法律案でも、別氏夫婦が子の氏を取り合って決められないケースを想定しているわけですが、果たして、この争いを持ち込まれる家庭裁判所は、一体どのような判断基準で審判を行うのでしょうか。
 離婚の際に子の親権を争う裁判でしたら、法律に判断基準は明記されていないものの、過去の裁判例では
 「子を養う経済力」
 「子と過ごす時間を確保できるのか」
 「子との関わりや愛情」
 「子の年齢によっては子の意思」
 「健康状態」
 「教育・居住環境」
 などの要素を総合的に考慮して判断されているようです。
 しかし、出生直後の子の氏を争っている場合、家庭裁判所が如何なる審判をしたとしても、夫婦双方が納得できる理由を示すことができるとは考えられません。
 裁判官、検事、法務省大臣官房審議官としても活躍された小池信行弁護士は、
 「夫婦の協議で決まらない時の補充的な決定方法を定めておく必要がある」
 として、スウェーデンでは
 「出生から3カ月以内に決まらない時は母の氏を称するとしている」
 ことを例示しておられました。
 私は、幸せであるはずの出産直後に、子の氏を巡る争いの種を作ることを、特に懸念していました。
 「夫婦別氏制度」
 の導入を求める方々からは
 「余計なお世話だ」
 と批判されるのでしょうが・・・。
 ■世界に誇れる日本の戸籍制度
 「そもそも、戸籍制度を廃止するべきだ」
 と主張される方々もおられますが、私は、日本の
 「戸籍制度」
 は、世界に誇れる見事なシステムだと思っています。
 戸籍は、重要な身分関係を明確にするために、血族・姻族・配偶関係を記載した公簿です。
 新戸籍と旧戸籍の双方に相手方戸籍を特定表示することから、相手方戸籍を相互に索出でき、両戸籍を連結する記載が可能で、無限の親族関係の広がりを証明することができます。
 よって、戸籍の
 「公証力」
 は、非常に強いものです。
 例えば、遺産相続の分割協議手続きでは、
 「隠れた法定相続人」
 の存否を確認するため、死亡者の戸籍謄本を全て遡ることによって親族関係を確定できます。
 重要な契約事も、戸籍で証明するものが多くあります。
 この他、戸籍は、近親婚の防止、婚姻要件の調査、出生、死亡、離婚、任意認知、母子家庭の児童扶養手当、障害児童の特別児童扶養手当、母子父子寡婦福祉資金貸付、戦没者遺族に対する特別弔慰金、成年後見の申立手続き、家事調停事件手続きなど、様々な場面で行政・司法の基礎となっています。
 20年以上婚姻関係を継続している夫婦間で居住用不動産を贈与した時の配偶者控除の制度でも、戸籍によって、20年以上に及ぶ婚姻関係を把握し立証します。
 「他国に例を見ない戸籍制度だから、廃止するべき」
 なのではなくて、
 「他国に誇れる極めて優れた制度だから、守り抜くべき」
 だと考えています。
 愚か者! 経団連「夫婦別姓」提言WiLL2024年8月号 副県立大学名誉教授 島田洋一
 2024年6月10日、経団連がいわゆる
 「選択的夫婦別姓」
 の
 「早期実現」
 を政府に求める提言を出した(具体的には民法750条の改正)。
 経団連は、夫婦が妻の姓を選ぶことも可能ではあるものの、
 「実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている」
 「そのため、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することが出来ないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が、女性に偏っている」
 と言う。
 経団連によれば、
 「女性のエンパワーメント(強化)において、我が国は世界に大きく立ち遅れており」、
 その背後に、
 「各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度」
 がある。
 その代表的なものが夫婦同氏制度だというのである。
 まず最初の疑問だが、女性の活躍に関して日本が
 「世界に大きく立ち遅れて」
 いるというのは本当か。
 経団連・十倉雅和会長の頭にある
 「世界」
 がどの範囲なのか知らないが、少なくとも相当怪しい
 「世界観」
 だろう。
 実際日本において、実力ある女性の活躍が、男の場合以上に阻害されているとすれば、
 「女を下に見る」
 不見識な経営者や重役が各所に残るでいではないか。
 だとすれば、経済界の頂点に位置する経団連会長の責任が相当大きいと言わざるを得ない。
 まずは自らの指導力不足を反省すべきだろう。
 経団連提言で最も問題なのは、従来
 「夫婦別姓」
 法制化論で常に論点となってきた、
 @親子や兄弟姉妹の間で姓が異なって良いのか
 A明治以来の戸籍制度を崩すことにならないか
 といった懸念に全く答えていないことである。
 そもそも言及自体ない。
 これは無責任だろう。
 近年、パスポート、マイナンバーカードを始め、旧姓の通称使用が拡大されてきた。
 経団連提言も、
 「官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきた」
 「公的証明書や各種国家資格等でも婚姻前の姓(旧姓)の併記が可能になるなど、政府の施策としても通称使用が拡大され、経済界においても、通称使用は定着している」
 と述べている。
 「経団連調査では91%の企業が通称使用を認めている」
 とも言う。
 まだ不十分と言うなら、100%になるよう、経団連が強い姿勢で
 「立ち遅れている」
 経営者を叱咤すべきだろう。
 そのための経済団体ではないか。
 この問題で慎重論の先頭に立ってきた高市早苗議員は次のように言う。
 「結婚すると、夫婦やその間に生まれる子供は同じ戸籍に登載され、姓は『家族の名称』という意味を持つ」
 「だが、別姓になれば姓は単なる『個人の名称』になる」
 「たとえ『選択制』にしても、家族の呼称を持たない存在を認める以上、結局は制度としての家族の呼称は廃止せざるを得なくなるだろう」
 「事は家族の根幹に関わる」
 (産経新聞・2021年3月18日)
 「国際的トレンド」
 云々についても高市氏は、
 「日本は日本」
 と一蹴する。
 経団連は、旧姓の通称使用では問題解決にならない例として次のような
 「トラブル」
 を挙げる。
 カッコ内は私のコメントである。
 ・クレジットカードの名義が戸籍上の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓に合わせざるを得ない。
 (合わせたら良いではないか。合わせると女性活躍が阻害されるのか)。
 ・国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格として見做され、キャリアの分断や不利益が生じる。
 (結婚したから姓が変わったと言えば済む話、国際機関を馬鹿にし過ぎてはいないか)
 ・社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。
 その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。
 (現地スタッフとの意思疎通をより密にすれば良いだけ。あるいはパスポートに旧姓を併記すればよい。令和3年4月1日以降、申請が非常に簡略化された)
 これが、女性にとって
 「アイデンティティの喪失」
 や
 「自己の存在を証することができない」
 ほどの不条理であり、家族別姓しか解決策がない次元の
 「トラブル」
 だろうか。
 この程度の事象にも効果的に対処のマニュアルを示せない経団連では、日本経済停滞も無理はない。
 民法https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
 第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
 選択肢のある社会の実現を目指して〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜
 2024年6月18日
 一般社団法人 日本経済団体連合会
 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html
 選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求2024/6/25 23:24
 https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/
 経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が
 「選択的夫婦別姓制度」
 に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、
 「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」
 「オープンでスピーディーに議論してほしい」
 と述べた。
 経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。
 経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、
 「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」
 と指摘。
 「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」
 との認識を示していた。
 選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」2024/6/25 22:34
 https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/
 選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯
 https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/
 自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。
 経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。
 とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。
 保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、
 「自民離れ」
 が加速するのは必至だ。
 自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、
 「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」
 「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」
 と述べた。
 自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む
 「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」
 で議論に着手すると表明した。
 新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。
 党幹部は
 「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」
 と議論再開の必要性を強調する。
 自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。
 令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。
 しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。
 自民の有志議員で作る
 「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長)
 は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。
 浜田氏は
 「大変心強い」
 「時代の要請として受け止めていく」
 と語った。
 一方、慎重派で作る
 「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相)
 は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。
 慎重派の議員は
 「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」
 と不安を口にする。
 岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。
 対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は
 「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」
 と述べた。
 <主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか社説
 2024/6/19 5:00
 https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/
 結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる
 「選択的夫婦別姓」
 について経団連が早期実現を提言した。
 十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で
 「国会でスピーディーに議論してほしい」
 と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。
 経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。
 別姓推進に転じたのは
 「ビジネス上のリスク」
 などが理由だ。
 経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。
 だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。
 岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、
 「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」
 と述べたのは、もっともだ。
 夫婦別姓を認めない民法の規定を
 「違憲」
 だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
 別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。
 専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。
 同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。
 「選択」
 と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。
 別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。
 夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。
 子供の姓をどうするのか。
 祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。
 最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。
 深く理解すべきだ。
 住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。
 経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。
 <産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり       2024/6/17 5:00
 https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/
 夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある
 経団連は
 「選択的夫婦別姓」
 の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ
 2024年6月の第3日曜は
 「父の日」
 だったが、
 「母の日」
 に比べ影が薄い。
 父親の地位低下が指摘され久しい。
 ▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。
 「正論」
 を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。
 それも平和を守る知恵か。
 ▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。
 経団連が
 「選択的夫婦別姓」
 の早期実現を求める提言を先日、発表した。
 十倉雅和会長は
 「国会でスピーディーに議論してほしい」
 と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。
 ▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。
 民法の改正などが必要となる。
 女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。
 30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。
 財界が
 「急げ」
 と号令をかける話なのか。
 ▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について
 「合憲」
 とする判断を示した。
 夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
 選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。
 専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。
 ▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。
 夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。
 別姓では子の姓をどうするか。
 双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。
 「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重2024/6/11 11:24
 https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/
 小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し
 「国民の間にまださまざまな意見がある」
 とした上で
 「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」
 と述べ、慎重な姿勢を示した。
 法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。
 だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。
 小泉氏はこの点にも触れ
 「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」
 とした。
 「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも2024/6/10 18:29
 https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/
 経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。
 希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。
 政府に対し
 「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」
 とした。
 経団連による同制度に関する提言は初めて。
 十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で
 「世の中は大きく変わっている」
 「国会でスピーディーに議論してほしい」
 と述べた。
 現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。
 提言では
 「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」
 と訴えた。
 経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。
 「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」
 とした。
 主張夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った
 2021/6/24 5:00
 https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/
 最高裁大法廷は、
 「夫婦別姓」
 を認めない民法の規定を再び
 「合憲」
 と判断した。
 夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。
 妥当な判断である。
 事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。
 女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。
 平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。
 最高裁はこの時と同様、
 「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」
 と指摘した。
 平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。
 法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。
 選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。
 導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。
 親子が別々の姓になる事態も起きる。
 子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。
 平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が
 「子供にとって好ましくない影響があると思う」
 と答えていた。
 社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。
 2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。
 パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。
 日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。
 国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。
 夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁2021/6/23 21:54
 https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/
 夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は
 「合憲」
 とする判断を示した。
 最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。
 15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。
 決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について
 「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」
 と指摘。
 一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは
 「次元が異なる」
 とした上で
 「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」
 と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。
 合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は
 「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」
 と、共同補足意見で述べた。
 一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は
 「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」
 などと述べた。
 事実婚の3組は、婚姻届に
 「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」
 と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。
 2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。
 結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。
 2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。
 ◇
 ■夫婦同姓の規定
 民法750条は、結婚した夫婦は
 「夫または妻の氏」
 を名乗るよう規定。
 戸籍法でも、結婚時に
 「夫婦が称する氏」
 を提出書類に記載するよう定めている。
 昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では
 「家の姓を名乗る」
 とされていた。
 厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。
 改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない
 「選択的夫婦別姓制度」
 の導入を求める声が強まっている。
 夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も2021/6/23 20:45
 https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/
 最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、
 「夫婦別姓」
 を認めない民法の規定を
 「合憲」
 とする判断を示した。
 この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。
 「違憲」
 となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。
 「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。
 結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。
 「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」
 とも指摘した。
 内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。
 ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。
 夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。
 最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は
 「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」
 と打ち明ける。
 一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。
 豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は
 「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」
 「別姓が認められるのは難しいと思っていた」
 と話した。
 夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。
 生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は
 「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。
 同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、
 「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」
 と話した。
 選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長ラジオ大阪ぶっちゃけ正論
 2021/6/17 8:00
 https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/
 ■家族名が消える
 小島
 選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。
 八木
 選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。
 選択ができるという仕組みです。
 一見よさそうに思えるんですよ。
 小島
 自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。
 八木
 ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。
 別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。
 戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。
 小島
 家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。
 八木
 「氏名」の性格が根本的に変わるんです。
 氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。
 家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。
 すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。
 小島
 たまたま上の名が同じということですね。
 八木
 ええ。
 たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。
 家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。
 ■3つの姓から選択も
 八木
 別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。
 兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。
 子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。
 すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。
 妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。
 複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。
 子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。
 旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。
 おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。
 小島
 社会が大混乱しますね。
 八木
 自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。
 櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」2021/5/19 16:40
 https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/
 選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る
 「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」
 が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。
 櫻井氏は
 「保守政党としての自民党の矜持」
 と題して講演。
 安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、
 「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」
 と強調した。
 「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」
 とも語った。
 八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について
 「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」
 「逆に少子化が進む可能性がある」
 と指摘。
 「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」
 と訴えた。
 一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる
 「理解増進」
 法案についても取り上げられた。
 法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める
 「性的指向・性自認に関する特命委員会」
 が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。
 これについて、山谷えり子参院議員は
 「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」
 「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」
 と語った。
 異論暴論正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か?
 2021/5/3 10:00
 https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/
 自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。
 推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。
 これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。
 正論2021年6月号では
 「やるべきことは『夫婦別姓』か?」
 を特集した。
 高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した
 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
 の成立の必要性を強調する。
 高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。
 ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。
 子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。
 党内で提唱される
 「婚前氏続称制度」
 「ミドルネーム案(結合氏制度)」
 など歯牙にかけるに値しない。
 選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。
 正論国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章
 2021/7/6 8:00
 https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/
 ■最高裁は合憲判断を維持
 2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。
 しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。
 平成27年の最高裁判決は、氏には
 「家族の呼称」
 としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。
 その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。
 今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。
 これも妥当と言えよう。
 ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。
 そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。
 確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。
 しかし、平成29年の調査でも、
 「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、
 「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4%
 あった。
 つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。
 ■別姓望む国民はわずか8%
 さらに、別姓支持者の中で自ら
 「別姓を希望する」と答えた者は19.8%
 にとどまる。
 つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。
 平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。
 そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。
 この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。
 夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。
 だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。
 にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。
 今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、
 「家族」
 の定義は不明確であるとして否定的に解し、
 「姓」
 を
 「個人の呼称」
 の一部と考えて、夫婦同姓制度は
 「個人の尊厳」
 の侵害に当たると主張する者もいる。
 ■「家族呼称」か「個人呼称」か
 確かに、憲法24条2項は家族について
 「個人の尊厳と両性の本質的平等」
 に立脚して制定するよう定めているが、憲法は
 「家族の保護」
 を否定するものではない。
 それどころか、憲法制定時の議会においては
 「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」
 (木村篤太郎司法大臣)
 との答弁がある。
 わが国が批准している国際人権規約でも
 「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」
 としている。
 それ故、わが国の家族制度は、
 「個人の尊厳」
 と
 「家族の保護」
 によって支えられていると見なければならない。
 だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、
 「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」
 とした。
 それでは、家族制度の基本にかかわる
 「姓(名字)」
 について、国民はどのように考えているだろうか。
 先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を
 「先祖から受け継がれてきた名称」
 ないし
 「夫婦を中心とした家族の名称」
 と答えている。
 これに対して姓は
 「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
 と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。
 つまり、姓を
 「個人の呼称」
 の一部と考え、
 「個人の尊厳」
 を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の
 「家」
 や
 「家族」
 の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。
 以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。
 しかも選択的夫婦別姓制は
 「ファミリー・ネームの廃止」
 につながり
 「戸籍解体」
 の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。
 したがって、自らは希望しないにもかかわらず、
 「選択的だから」
 「望む人が別姓を名乗るだけだから」
 などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。
 次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」2015/12/16 19:12
 https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/
 次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で
 「判断を歓迎する」
 との談話を出した。
 談話では
 「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」
 「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」
 と指摘。
 その上で
 「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」
 「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」
 としている。
 夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断2015/12/16 15:24
 https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/
 【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF]
 https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf
 民法で定めた
 「夫婦別姓を認めない」
 とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、
 「規定は合憲」
 とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。
 原告は
 「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」
 などと主張したが、
 「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」
 との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。
 一方、
 「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」
 とする規定を巡る訴訟で、大法廷は
 「規定は違憲」
 と初判断。
 100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。
 最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。
 夫婦の姓について原告側は
 「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」
 と主張。
 「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」
 と指摘していた。
 国側は
 「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」
 「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」
 と反論。
 規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。
 両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。
 しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。
 民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。
 
 
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