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中東への関与を下げたロシア(田中宇)中東の秩序形成をイスラエルに委ねたロシア。米覇権交代と多極化の行方。
http://www.asyura2.com/25/kokusai36/msg/138.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2025 年 11 月 15 日 20:16:08: KqrEdYmDwf7cM gsSC8YKzgqKBaYKigWo
 

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2025年11月15日 https://tanakanews.com/

■要約

ロシアは、外交研究所の会議を通じ、中東諸国の専門家や元外交官らに対し、今後中東の紛争解決におけるロシアへの依存時代は終わり、関与を低下させる方針を非公式に伝達した。これは、中東が米国(を牛耳るイスラエル)の影響圏であり、ロシアは域外大国による秩序形成を巡って米国と張り合わず、欧州での戦いに集中するという趣旨だ。

この戦略転換の背景には、米覇権の主導権が、以前の英国系から、リクード(イスラエル)系に不可逆的に替わった国際的な構造変化がある。リクード系は多極型世界を認める約束の下、ウクライナ戦争でロシアを優勢にすることで英国系を自滅させた。ロシアは、仇敵だった英国系を潰してもらった返礼として、中東の覇権を米国(イスラエル)にあげることにした。

その結果、中東はイスラエル覇権下となり、ロシアは軍事安保分野での関与を低下させた。ロシアは形式的にパレスチナ国家創設を支持する一方で、イスラエルが違反してもお咎めなしのトランプのガザ停戦案にも賛成している。しかし、イスラエルはイラン包囲網の名の下、アゼルバイジャンなどを通じてロシア近傍の地域覇権(コーカサス)を侵害しており、イスラエルが本当に多極型世界を尊重するのかという懸念は残されている。


■本文

10月下旬、ロシアの外交研究所であるプリマコフセンターが、アラブやイランやトルコなど中東各国(イスラエル以外)とロシアの外交専門家やたちをモスクワに集め、ロシアと中東との関係を話し合う会議を開いた。
ロシア側からは、プーチンの外交顧問たちが出席し、プーチン政権の今後の中東戦略の変化の要諦を示唆した。中東から集められた人々は、各国の外務省系列の学者や元外交官たちであり、この会議はロシアが戦略転換を中東諸国の政府に対して非公式に伝達する意味があった。

https://primakovcenter.ru/tpost/s29zivztf1-russia-the-middle-east-five-years-of-dia
“Russia - the Middle East”: Five Years of Dialogue and Ideas

この会議で露側は、中東の紛争解決をロシアに頼る時代は終わったと中東諸国に伝えた。「ロシアはこれまで中東(西アジア)の紛争解決を主導し、軍事進出を含む関与をして秩序形成を手掛けてきたが、今後の中東は米国(を牛耳るイスラエル)の影響圏だ。米国以外の域外諸大国による秩序形成は許されなくなった。ロシアは張り合わず、米(イスラエル)や中東諸国が決めた(イスラエルが米国と中東諸国に強要した)秩序を受け入れる。欧州では戦うが、中東ではもう戦わない」という趣旨だ。

https://thecradle.co/articles/west-asia-is-no-longer-our-battle-moscow-withdraws-from-the-arena
'West Asia is no longer our battle': Moscow withdraws from the arena

露側の表明は表向き「中東は米国の影響圏なのでロシアは関与を低下する」だが、イラク戦争以来の20余年、米国の中東覇権は低下し続けてきた。今より米覇権が強かった2011年のアラブの春で、シリアのアサド政権が米イスラエル傀儡のISアルカイダに倒されそうだった時、ロシアはシリアに軍事進出してアサドを延命させた。当時より今の方が米覇権は低下している。ロシアは貿易のドル決済にも依存していない。それなのにロシアは、今さら米国に配慮して中東への関与を低めるのか??

https://www.rt.com/russia/627325-russia-china-trade-local-currencies/
Russia-China trade almost 100% outside Western currencies

このような疑問に陥ってしまうのは、以前と最近の米覇権が同じものだと考えるからだ。オバマやバイデンの米覇権は英国系だが、トランプの米覇権はリクード(イスラエル)系だ。
米覇権を動かす諜報界は、911事件から25年かけて、支配者が英国系からリクード系に不可逆的に替わった。以前は「(英国に乗っ取られている)米国」だったが、近年以降は「(イスラエルに乗っ取られている)米国」だ。
英国系は覇権維持のためロシアを敵視したが、リクード系は多極型世界を認める(という約束で、米上層部の元祖である多極派に導かれて諜報界を乗っ取らせてもらった)。
リクード系は、約束通りにウクライナ戦争を起こしてロシアを優勢にし、英国系(英EU)を自滅させている。ロシアは、仇敵だった英国系をリクード系に潰してもらった返礼として、中東の覇権を米国(イスラエル)にあげることにした。それが今回の表明だ。

2011年からの「アラブの春」やシリア内戦は、米覇権の主導権をリクード系から奪還しようとした英国系のオバマへの反撃としてリクード系が起こした。オバマは困窮し、プーチンに頼んで露空軍を、イランに頼んで地上軍(シーア派民兵団)をシリアに出してもらい、中東の秩序を守るためアサド政権を延命させた。
英国系にとっては、イスラエルに中東の秩序を破壊されるより、ロシアに管理させる方がましだった。ロシアは米国(英国系)に頼まれて中東の秩序形成者になった。

それから15年近く経ち、英国系は、リクード系の謀略によって自滅が加速している。オバマの米民主党は、覚醒運動やリベラル全体主義化や極左化させられて自滅した(NYのマムダニを支援するリベラル派は間抜け)。
英EUは、リクード系が誘発したウクライナ戦争や、温暖化対策や中東移民歓迎やコロナ対策などの超愚策によって、経済と社会が破綻させられている。

今年、リクード系のトランプが米大統領に返り咲くとともに、イスラエルは米国の諜報力と軍事力を使ってアラブの春の続きであるヒズボラやアサド潰しを敢行し、英国系がイスラエル建国時に弱体化策として用意したパレスチナ分割(パレスチナ国家創設)策を抹消するガザ虐殺を展開している(大虐殺によって、英国系の米覇権運営の基盤にあった人道主義を潰している)。

イスラエルとトランプは、中東(というより世界中)のイスラム教徒の諸国がイスラエル敵視をやめて外交関係を結び、イスラエルと仲良くする「アブラハム合意」に加盟するよう、説得・加圧している。
アラブとイスラム世界の盟主であるサウジアラビアの加盟が今後の焦点だ。サウジの弟分であるUAEは、露払い役として真っ先にアブラハム合意に参加し、外交や経済など多方面でイスラエルのために動いている。
サウジが未加盟なのは反イスラエルだからでなく、このまま加盟すると盟主の面子が潰れるからだ。欧米(英国系)のリベラル派は理解したがらないが、中東や非米側の国際政治は、民主や人権でなく弱肉強食な力の論理で動いている。

https://www.arktosjournal.com/p/war-is-ahead-of-us
Dugin: War Is Ahead Of Us

プーチンのロシアは、イスラエル主導の動きに賛成している。ロシアは公式論としてパレスチナ国家の創設を支持しており、イスラエルのパレスチナ抹消の虐殺に形式的に反対しているが、その一方で、ほとんど言葉だけ(イスラエルが違反しまくってもお咎めなし)のトランプのガザ停戦案にも賛成している。
リクード系が米諜報界を乗っ取り、英国系が維持していた米単独覇権体制が崩れ、旧ソ連・東欧はロシア覇権下、中東はイスラエル覇権下になっていく。そのためロシアは今回、覇権分野(軍事安保)における中東への関与を低下すると中東諸国に非公式に伝えた。

https://www.zerohedge.com/geopolitical/kremlin-supports-welcomes-trumps-gaza-plan-will-have-no-involvement
Kremlin 'Supports & Welcomes' Trump's Gaza Plan, But Will Have No Involvement

今の中東で、イスラエルの敵として残っているのがイラン(イスラム共和国政権)だ。イスラエルは、イランとの戦争再開が時間の問題だと言っている。オバマはイランに味方したが、正反対にトランプはイスラエルの一部だ。
イランは従来、ロシアや中国に頼ってイスラエルに対抗しようとしてきた。そこに今回ロシアが中東関与低下の非公式表明をした。ロシアはイランを見捨てたように見える。イランはイスラエルに政権転覆され、シリア型(イスラエル傀儡の政権になる)か、リビア型(分裂した無政府状態)にされるのか。

それらの可能性はある。だが同時にプーチンは「イスラエルは、ロシア経由でイランにメッセージを送っている」と言っている。イスラエルは、イランの脅威が低下するような条件を出し、イランがそれを実行したら攻撃しないで共存してやると言っている、という意味だろう。
もちろん、うそつきで有名なイスラエルのことだから、出した条件(武装解除など)をイランが了承して実行して弱まったら、攻撃して転覆するという「サダム方式」「カダフィ方式」があり得る(2人とも米国側の言いなりで武装解除した後に潰された)。

https://www.rt.com/russia/626159-israel-signal-iran-russia-putin/
Israel signaling to Iran via Russia - Putin

だがしかし、もしイスラエルがうそつき戦略でイランを潰すと、次にうそつき戦略で潰されるのはロシア(や中国や印度)になりかねない。プーチンや習近平やモディの政権は軍事的にでなく、国内の政敵に転覆されるカラー革命的な諜報活動としてリクード系に潰される。
イランは、イスラエルと露中印の今後の関係の試金石になっている。多極型世界(と世界経済)の安定には、諸大国(極。地域覇権国)どうしの信頼関係が最重要だ。BRICSはそのために存在する。
覇権運営を仕切ってきたユダヤ人(世界経済を安定させて発展させたい投資家)たちは、そのあたりを熟知している(英国系も、諜報担当はアングロサクソンでなくロスチャイルドなどユダヤ人)。イランは意外に政権転覆されないのでないかという感じもする。

https://responsiblestatecraft.org/trump-central-asia-2674274978/
Central Asia doesn't need another great game

トランプは先日、カザフスタンなど中央アジア諸国の首脳をホワイトハウスに集めて会議した。中央アジアは、中露共同の地域覇権組織である上海協力機構に入っている。マスコミは「トランプが中露を押しのけて中央アジアの石油ガスを狙っている」と報じている。
しかし、隠れ多極派であるトランプは本気で中露の覇権地域を狙わない。石油ガスは目くらましで、本題はイスラム教徒の地域である中央アジア諸国にイスラエルと仲良くしてくれと頼むことだったのでないか。早速カザフスタンがアブラハム合意への加盟を決めている。

https://www.aljazeera.com/news/2025/11/6/kazakhstan-which-already-recognises-israel-to-join-abraham-accords
Kazakhstan, which already recognises Israel, to join ‘Abraham Accords’

ロシア側は、冒頭に書いた中東諸国の外交専門家たちとの会議で「ロシアとその近傍の利権が侵害されない限り、中東地域の国際政治(イスラエルによる覇権運営)に介入しない」という趣旨も述べている。ロシア近傍の地域とは、旧ソ連の中央アジアやコーカサスを指している。
イスラエルが、トランプを通じて中央アジアの石油ガスなどの利権をあさるのでなく、イスラム諸国を親イスラエルにしたいだけなら、ロシアとしては問題ない。
しかし、利権あさりも目くらましでなく本気の目的に含まれるとなると、ロシア近傍の利権が侵害され、イスラエルが多極型世界を壊していることになる。イスラエルが本当に多極型世界を尊重するのかどうか、まだ不確定なところがある。

アゼルバイジャンなどコーカサスの動向を見ても、イスラエルがロシア近傍の秩序を守るのかどうか懸念がある。
イスラエルは、イラン包囲網の強化と称して、イランの北にあるトルコ系の旧ソ連の国アゼルバイジャンを取り込み、以前にイスラエルがテコ入れしていたアルメニアに譲歩を強要してナゴルノカラバフをアゼルバイジャンに返還させた。
この過程で、アルメニアもアゼルバイジャンもロシアへの依存を大幅に弱め、ロシア敵視の姿勢すら見せている。イスラエルはロシアの地域覇権を侵害しているが、ウクライナ戦争でリクード系に優勢にしてもらったプーチン政権は黙って従っている。

https://tanakanews.com/250126azeri.php
アルメニアを捨てアゼルバイジャンと組んだイスラエル

イスラエルが中東の地域覇権だけで満足するのか、それとも米諜報界の覇権の力を利用し続けて露中をさらに譲歩させ、形成されたばかりの多極型世界を壊していくのか。それはプーチンや習近平だけでなく全人類の今後に影響する。

人類の多くは、イスラエルの覇権拡大がどこまで行くのかという話の前に、世界が英国系覇権体制から多極型に転換したことにすら気づいてない。
トランプに侵攻されそうになっているベネズエラの左翼のマドゥロ政権は、ロシアや中国やイランといった旧覇権体制下で米国と対立していた諸国に、兵器を送ってくれと頼んでいる。
多極型世界では、一つの極が、他の極の紛争に介入することを原則としてやらない。露中イランは、ベネズエラに兵器を送らない。マドゥロは、それを知ったうえで動いているのかどうか。左翼は今の世界の転換に気づいてないし(だから左翼やってる)。

https://www.zerohedge.com/geopolitical/maduro-urgently-seeks-military-aid-russia-china-us-bulls-eye-venezuela
Maduro Urgently Seeks Military Aid From Russia & China With US Bulls-Eye On Venezuela



この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/251115russia.htm
 

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コメント
1. てんさい(い)[1608] gsSC8YKzgqKBaYKigWo 2025年11月15日 20:38:00 : 0kUGInjLpY : ZUJoU1c2MzFGUzY=[628] 報告

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