http://www.asyura2.com/25/kokusai36/msg/285.html
| Tweet |
今宵、南海先生の庵に集まったのは、理想に燃える洋学紳士、血気盛んな豪傑君、そして主人の南海先生である。机上には安酒ではなく、戦略的思考を研ぎ澄ますための一級のモルトウイスキーが置かれている。
◆紳士君の糾弾:NPT体制の死守◆
「先生、イランの暴走を許せば、戦後の核不拡散体制(NPT)は完全に瓦解します!」
洋学紳士は、国際社会の「規範」を信じ、声を荒らげる。「核合意(JCPOA)を無視し、濃縮度を兵器級に高める行為は、文明社会への叛逆です。法の支配を徹底し、イランに徹底的な制裁を加えるべきです。そうでなければ、世界は再び弱肉強食の暗黒時代へ逆戻りしてしまいます」
◆豪傑君の嘲笑:イスラエルという「聖域」◆
これに対し、豪傑君は鼻で笑った。「紳士よ、君の言う『法の支配』とやらは、どこまで機能しているのだ? イスラエルを見ろ。あそこはNPTにも入らず、数百発の核を隠し持っている。だが、アメリカも欧州も、それを一度として公式に非難したことがあるか? 答えはノーだ」
豪傑君はグラスを煽り、凄みを利かせる。「『イスラエルは持っているくせに、イランは持つな』。この欺瞞に満ちた二重基準こそが、国際政治の正体だ。力こそが正義であり、持たざる者は常に虐げられる。イランが核を欲しがるのは、サダム・フセインやカダフィがどうなったかを見れば、生存戦略として至極当然の帰結ではないか!」
◆南海先生:地政学的リアリズムの宣告◆
二人の議論を遮るように、南海先生が、静かに、しかし断定的な口調で語り始めた。
「二人とも、まだ甘いな。国際政治という舞台は、紳士君が夢見る『法廷』でもなければ、豪傑君が叫ぶ『喧嘩場』でもない。そこにあるのは、冷酷なまでの物理的な『均衡点』の奪い合いだ」
先生は地図を指し示し、言葉を継ぐ。
「まず、イスラエルの核だ。彼らが『持っていると言わない』のは、単なる隠蔽ではない。それは『意図的な曖昧さ(Strategic Ambiguity)』という高度な兵器なのだ。核を公認されれば周辺国の核武装を正当化させてしまうが、隠し持つことで『手を出せば国が消える』という極限の恐怖を植え付けている。これは倫理の問題ではなく、純粋な生存計算だ」
「そしてイラン。彼らが狙っているのは、核爆弾そのものの完成ではない。『いつでも核を持てる能力(Nuclear Hedging)』を確立し、米国とのディール(取引)において対等な椅子に座ることだ。彼らは北朝鮮の教訓を血肉としている。つまり、独裁政権にとっての核は『平和へのパスポート』なのだよ」
◆イスラエルの「持っているくせに」を逆手に取る戦略◆
紳士君が狼狽する。「では、正義や公平はどこにあるのですか!」
先生は冷たく言い放つ。「国際政治に『正義』という言葉を求めるのは、砂漠で水を求める以上に無益だ。イスラエルが『持っているくせに』許されるのは、彼らが西側の情報・軍事ネットワークにおいて不可欠な結節点(ハブ)であり、かつ核を『自爆的』に使わないという冷徹な信頼を築いているからだ」「加えて敢えて言えば、ホロコースト等で過酷な運命を味わった事への欧州の贖罪による核保有の許容があったことは否定できない」
「イランがその壁を突破しようとするなら、相応の血とコストを払うしかない。しかし、我々日本がこの問答から学ぶべきは、イランの善悪ではない。『核という究極の抑止力を持つ国だけが、真の主権を語れる』という、剥き出しの真実だ」
◆覚醒せよ日本、そして世界の帰趨◆
議論が深夜に及ぶ頃、南海先生は窓の外の暗闇を見つめて言った。
「イスラエルを批判するのは容易い。イランを恐れるのも自由だ。だが、この二重基準の地獄の中で、唯一の核被爆国でありながら、核を持たぬ『くせに』核の傘に守られ、その実、自国の防衛を他国に委ねている我が国の危うさをこそ、我々は直視すべきではないか」
「イラン核問題は、他国の火事ではない。それは『国家が自立するために、どれだけの覚悟が必要か』を我々に突きつけている刃なのだ。……酒はもういい。この議論の続きは、国防のシミュレーションが終わってからにしよう」
三人の酔人は、冷徹なリアリズムの余韻に酔いを醒まされ、重い足取りで庵を後にした。東京の夜空には、ただ冷たい星が輝いている。
鬩ぎ合うイラン戦争の中、互いに相手政権の殲滅を目指す両国の間で米国トランプ大統領は、「イスラエルは(実質)核を持ってよいが、イランはダメ」というスタンスで事態を収める事を目論む。
それで、中東は本当に収まるのか? 仮にイランの牙が抜かれた後は、イスラエルはグレーター・イスラエル構想を発動し、これに対しサウジ、トルコ等の地域大国が核保有を目指し新たなハルマゲドンの芽にならないのか? ・・・等々今後の展開は見通せぬが、他に具体的な構想を示し推し進める強力な主体は無い以上、取り敢えずはトランプの動きを牽制しつつも見守るべきかと筆者は考える。
|
|
|
|
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
|
|
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。