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※紙面抜粋
※2025年5月14日 日刊ゲンダイ2面
焦るトランプ…米中合意の裏と今後 日本にとっての吉凶は?対抗カードはあるのか
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/371782
2025/05/14 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
中国製品が入ってこなくなれば、困るのは米国(C)ロイター
敵意むき出しで関税合戦を演じた米中が一転、早期合意したが、この背景は明らかだ。中国製品が入ってこなくなれば、困るのは米国。
思い付きの朝令暮改は今後も続くだろうが、赤っ恥のトランプはどう出るのか。せめて日本からはむしり取るのか。
◇ ◇ ◇
世界で1、2位を争う経済大国が敵意むき出しで100%超の高関税を互いにかけ合う貿易戦争を続けていれば、どんな影響が出てくるのか。
各国がコトの成り行きと最悪の結末を危惧しながら注視していた米国、中国の関税合戦が一転、「追加関税を相互に115%引き下げる」との内容で合意し、とりあえず“一時休戦”となった。
米中両国によるガチンコ貿易戦争が始まったのが4月。米国が中国からの輸入品に対して34%の相互関税を上乗せすると発表したのが発端だった。
これに中国が応じる形で対米関税率を引き上げると、報復関税の応酬がエスカレート。双方の追加関税率は125%という異常事態に陥り、米国の対中関税率は、すでに合成麻薬対策に関連して発動していた20%の追加関税と合わせ、累計で145%にも達する展開となった。
米中協議前は「早期妥結はない」との見方もあったが、協議後に公表された共同声明によると、今回の追加関税の大幅引き下げにより、互いに課していた追加関税率は米国が145%から30%に、中国が125%から10%に下がる。
合成麻薬対策関連の対中追加関税は継続されるものの、両国は14日から90日間の相互関税「停止」を決定。そのうえで、両国はあらためて経済・貿易に関する協議の枠組みを新設し、交渉を継続するという。
報復関税で米国経済への悪影響が顕在化
「相互関税の90日間停止」という措置は、トランプ政権が4月に日本や欧州などに対して適用した手法と同じだ。
それを1カ月遅れで中国にも適用しただけ──といった指摘もあるとはいえ、早期合意に市場は安堵したようだ。
関税引き下げの合意を受け、12日のNY株式相場は急反発。ダウ工業株30種平均は前週末終値比1160.72ドル高の4万2410.10ドル(暫定値)で終了。ハイテク株中心のナスダック総合指数も779.42ポイント高の1万8708.34で引けた。きのう(13日)の東京株式市場でも、日経平均株価は一時前日比800円超の上昇。取引時間中としては約1カ月半ぶりに3万8000円台を回復した。
「大きな合意だった」「(米中の)関係は非常に良い」
米中協議を振り返り、“成果”を強調していたトランプ大統領。今週末にも、中国の習近平国家主席と協議する意向も示していたが、「やられたらやり返す。倍返しだ」という、これまでの強気の姿勢を転換した背景は明らかだろう。報復関税で米国経済への悪影響が顕在化してきたからだ。
例えば、消費財大手「ニューウェルブランズ」はベビーカーの97%、チャイルドシートの87%を中国から輸入しており、ロイター通信によると、関税合戦の影響で子ども向け製品価格の2割引き上げを決定。「バービー人形」で知られる玩具大手「マテル」も一部製品を値上げする方針を決めたという。
トランプが「復活」を掲げる自動車業界も、「GM」が関税措置に伴う追加費用が今後1年間で最大50億ドル(約7200億円)に上る見通しを発表。「フォード」も輸入部品などの追加コストが約25億ドル(約3600億円)と試算するなど、貿易戦争に対する懸念があらゆる業界に波及。その現実にトランプもようやく気付いたというのが実相なのだろう。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏がこう言う。
「今回の米中協議は、トランプ交渉術の弱点が見えたような気がします。つまり、どれほど強く出ても絶対にひるまない相手には譲歩の姿勢を示すということ。さらに言えば、対中関税の引き上げで最も影響を受けているのがトランプ支持層の中小企業ですから、対中強硬路線に出るほど、支持離れが進むことになりかねない。交渉の早期妥結は当然だったでしょう」
日米関税交渉は依然として視界不良が続く
かたや日本は… ああ、打つ手なし/(C)ロイター
経済悪化を懸念していたのは中国も同じだ。
中国税関当局が9日に発表した4月の米国向け輸出は前年同月比21.0%も急落。中国は内需よりも外需依存度が高く、米国と同様、貿易戦争の長期化は避けたかったに違いない。
いずれにしても、トランプが年間3000億ドル(約44兆円)に及ぶ対中貿易赤字の解消を目指して仕掛けた追加関税のディール(取引)だったが、中国製品が入ってこなくなれば困るのは米国自身。焦るトランプによる思い付きの朝令暮改は今後も続くのだろうが、拳を振り上げただけで赤っ恥のトランプは今後どう出るのだろうか。
米中協議の結果は、関税交渉中の日本にとっても吉凶を占う意味で重要だ。「ポジティブ」に捉えれば、米国は英国との関税交渉で税率引き下げに応じたのに続き、中国に対しても大幅譲歩を余儀なくされたわけで、日本を含む交渉を控えた他の国が今後、米国に何らかの条件を突きつければ、追加関税の大幅引き下げを要求する「圧力」が高まる可能性はある。
他方、「ネガティブ」に捉えれば、「MAGA」(米国を再び偉大な国にする)を掲げるトランプのことだ。大々的に打ち出した追加関税措置で次々と譲歩する展開になればメンツは丸つぶれ。もはや、これ以上の妥協は認めないとして、今後の交渉は徹底抗戦の姿勢で臨む--ことも考えられるだろう。
日本の米国に対する姿勢はまるで「お使い」
そうなれば、せめて日本からはむしり取るのか。その時、日本に対抗のカードはあるのだろうか。
関税交渉を担当する赤沢経済再生担当相は13日の会見で、米中の関税引き下げ合意に対し、「米国との協議のスケジュールや合意の内容、タイミングなどが異なるのは自然なこと」と言い、林官房長官は「影響を十分に精査しつつ、適切に対応していく」と発言。そろって冷静を装っていたが、13日付の毎日新聞は<戦略見直しの可能性>と題し、こう報じていた。
<日米関税交渉に当たる政府関係者からは「米中がもめている間に有利に交渉を進める流れを期待していたが、漁夫の利を得られなくなった」と懸念を示した>
<米中関係が改善することで、トランプ政権に各国との関税引き下げを求める市場圧力は減るだろう。日本には追い風にはならない>
<日本は早期に米国との関税交渉に臨み、譲歩を引き出そうとしてきたが戦略の見直しを迫られる可能性もある>
日本は米国との関税交渉で、家畜飼料や航空機燃料向けバイオエタノール(バイオ燃料)用のトウモロコシや、大豆の輸入拡大を提案。報復関税で対中輸出が減る分を日本が肩代わりする策だったが、米中が関税引き下げで合意となれば、この交渉カードは切れない。
中国が圧倒的なシェアを持つ造船分野についても日本が米国に技術支援を関税交渉の材料として準備している、などと報じられたが、この手も使えないだろう。「戦略の見直しを迫られる可能性」と報じられているのもそのためで、日米関税交渉は依然として視界不良が続くことになるわけだ。
経済評論家の荻原博子氏はこう言う。
「交渉というのは対等関係にあって初めて成り立つ。しかし、日本の米国に対する姿勢はまるで『お使い』です。英国や中国のような交渉にならないのです。もっとも、追従してきた米国から、まさかの関税大幅引き上げを突きつけられて右往左往。もともと交渉にならないでしょう。もはや日本ができることは、ノラリクラリしながら曖昧な態度をとることでしかないのではないか」
関税上乗せ分の一時停止の猶予期限は7月9日。その時までに日本は米国から何を引き出すことができるのか。
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