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※2025年6月27日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年6月27日 日刊ゲンダイ2面
逆らえず、抗えず、やられっぱなし(内閣広報室提供・共同)
NATOに課せられた国防費5%の横暴はやがてアジアにも回ってくる。逆らえなければ、国民負担の大増税。
自動車関税とのダブルパンチで確実に日本経済はへたっていく。朝貢外交で媚びるのではなく、米国との距離の見直しが急務だ。
◇ ◇ ◇
これが国際政治の現実ということか。欧州の名だたるリーダーたちが、あっさりトランプ米大統領に屈してしまった。
オランダで開かれていたNATO首脳会議は25日、GDPに占める防衛費支出の割合を2%から5%に引き上げる新たな目標に合意した。NATO加盟国の防衛費増額は、以前からトランプが強く要求していたものだ。「欧州は負担が少ない」と訴えていた。欧州勢は要求を丸のみした形である。言い分が通ったトランプは「首脳会議は大成功だった」と大喜びしている。
NATO首脳会議は、なにからなにまで前代未聞、異様だった。
ルッテ事務総長は会議の冒頭、加盟国の防衛費増額について「トランプ大統領、親愛なるドナルド、あなたがこの変化を可能にした」と、いきなりヨイショ。
さらに「あなたは何十年もの間、どの大統領も成しえなかったことを達成する」「欧州は大きな額を払うことになるでしょう。そうすべきであり、これはあなたの勝利です」と、絶賛する始末だった。
トランプの宿泊先を、オランダ国王が住むハウステンボス宮殿とするなど異例の厚遇で迎え、会議の日程も3日間から2日間に短縮している。
とにかく、トランプの機嫌を損ねないよう、腫れ物に触るような扱いだった。まるで宗主国を相手にしているかのようだった。
「同盟を軽視するトランプ大統領は、1期目からNATO離脱をちらつかせ、今回も直前まで会議に参加するかどうか明言しなかった。NATOの集団防衛を規定する第5条を守るかどうかについても、『定義による。第5条には多くの定義がある』と言葉を濁すありさまでした。しかし、アメリカに抜けられたらNATOは機能不全に陥り、欧州の安全も危うくなりかねない。欧州各国は、なんとしてもアメリカをNATOにつなぎとめようと必死だった。5%目標という無理難題ものまざるを得なかったということです」(外務省関係者)
5%目標の達成は難しい
トランプがふざけているのは、NATO加盟国に5%目標を突きつけながら、アメリカの支出もGDP比3.19%にとどまっていることだ。しかも「彼らは払うべきだ。でも我々は払わなくてもいい」と、勝手なことを口にしている。
それでも欧州各国は、トランプを怒らせないために文句を控えている状況である。
しかし、5%目標を達成するのは、そう簡単な話ではない。従来の目標であるGDP比2%だって、加盟32カ国のうち達成しているのは23カ国だけだ。イタリアやスペインなど、財政の苦しい国は2%を大きく下回っている。
5%に引き上げようとしたら、財政が逼迫するのは間違いない。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「欧州各国が、GDP比5%目標を受け入れたのは、アメリカをNATOにつなぎとめたい、ということもあるでしょうが、この先、アメリカ頼みは難しくなるという覚悟もあるのだと思う。なにしろ、トランプ大統領は『アメリカは同盟国に食い物にされてきた』と本気で思っている。戦後、アメリカは自由と民主主義を守るために、さまざまな国際的な公共財を提供してきたが、米国第一のトランプ大統領は『ヨーロッパの安全は、ヨーロッパが守ればいい』というスタンスです。これまでのようにアメリカに期待できないとなったら、欧州は自分たちで安全を守るしかない。地続きのロシアと対峙するためには、GDP比5%の支出も仕方ないということでしょう。あのドイツまでが、徴兵制の復活を検討しはじめている状況です」
日本は20兆円の大増税に
米関税との二重苦(代表撮影・共同)
NATO加盟国に課せられた「国防費5%」は、いずれ日本にも突きつけられるに違いない。
すでに日本は、防衛費をGDP比3.5%に引き上げるよう非公式に打診されているという。正式に要求されるのも時間の問題なのではないか。
GDP比5%となると約30兆円である。2025年度の防衛費は約8兆5000億円だから、20兆円以上も財源を捻出する必要がある。もし、消費税増税を実施して賄うとしたら、税率を10%も上げなければならない。
消費税を10%アップしたらどうなるのか。消費が一気に冷え込み「防衛費不況」に突入するのは間違いない。
しかも、ただでさえ日本は、トランプから理不尽な「関税」を課せられ、経済がどうなるのか分からない状態だ。
自動車への「追加関税」25%だけでも、日本経済は致命的な打撃を受けかねない。基幹産業である自動車産業は、裾野が広く、日本の全就業人口の1割にあたる約530万人が携わっているからだ。あのトヨタでさえ、4〜5月の2カ月間だけで営業利益が1800億円も吹き飛ぶという。
そこへ、防衛費の増額まで加わったら、日本経済はもたないのではないか。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「急ピッチで少子高齢化が進む日本は、国力が低下している。国民の多くは物価高に苦しみ、生活に余裕もない。新しい産業も生まれない。いまの日本に防衛費の大幅増に耐えられる体力があるでしょうか」
トランプに舐められている
はたして石破首相は、トランプの要求にどう対応するつもりなのか。
最悪なのは、要求を突っぱねる胆力も、うまくかわす戦略もなさそうなことだ。
「日本の防衛費は日本で決めるものだ」と、もっともらしいことを口にしているが、このままではトランプに押し切られる可能性が高いのではないか。
「関税」問題にしても、ひたすら譲歩し、対峙する姿勢がゼロだからだ。
アラスカのLNG開発、トウモロコシの輸入増加、数十億ドル分の米国製半導体の購入──と、目いっぱい、トランプが喜びそうな対米貢献メニューを並べている。
だからか、トランプにも完全に舐められている。
突然、電話協議を持ちかけられ、「素晴らしい戦闘機がある。一度、見に来ないか」「日本には一番良いものを用意するぞ」と、軽口をたたかれる始末だ。
アメリカのイラン空爆に対しても、国連憲章に違反することは明らかなのに、石破は「確定的な法的評価は困難」などと、あいまいな態度に終始していた。
恐らくトランプは、「石破は御しやすい」と思っているはずだ。
「ヨーロッパは防衛費5%を受け入れましたが、日本とヨーロッパとでは、置かれた状況がまったく違います。ウクライナを侵略したロシアと地続きのヨーロッパが危機感を強めるのは分かりますが、いま日本に戦争を仕掛ける国がありますか。ロシアや中国に、海を越えて日本に攻め込むメリットは小さい。トランプ大統領から防衛費の大幅増額を要求されたら、石破首相は『日本は欧州とは違う、防衛費の大幅増額は必要ない』と説明すべきです。そもそも、もし、いま安倍政権だったら、石破さんは『アメリカの言いなりになるべきではない』と、正論を吐いていたはずです」(五十嵐仁氏=前出)
石破はトランプの要求をのむのか。対応次第で日本をドン底に落とすことになる。
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