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停戦で時間稼ぎせざるをえなかったイスラエルとその支援国は新たな戦争に賭ける
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202507010000/
2025.07.01 櫻井ジャーナル
ガザで住民虐殺を続けるイスラエルが新たな対イラン戦争の準備を始めていることは間違いなく、遠くない将来、新たな戦闘が始まる可能性が高い。それを見据えてイスラエルは「停戦」を望み、イランはそれを受け入れた。この展開を見て、ウクライナのケースを思い出す人は少なくないだろう。
アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてキエフでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したものの、ヤヌコビッチの支持基盤だったウクライナの東部や南部では住民の大半がクーデター体制を拒否し、軍や治安機関ではメンバーの約7割が離脱、一部は東部の反クーデター軍へ合流したことからクーデター体制の戦力を強化しなければならなくなった。そこでドイツやフランスが仲介する形で停戦交渉が始まり、2014年には「ミンスク1」、15年には「ミンスク2」が締結されたのだ。
同じように、イスラエルは停戦を望み、イランは同意した。今回の攻撃はイスラエル軍単独ではなく、アメリカ軍、少なくともアメリカ中央軍のマイケル・E・クリラ司令官が関与している可能性が高い。この軍人は熱烈な親イスラエル派で、アメリカとイスラエルだけでなく、アラブ首長国連邦、バーレーン、ヨルダンなどを巻き込んで連合体を作ろうとしてきたことでも知られている。
6月13日にイスラエル軍はイランをミサイルとドローンで攻撃したのだが、その際、イランの防空システムを麻痺させ、ドローンやミサイルを発射したと言われている。この攻撃で軍の幹部や核科学者らが殺害されたが、その攻撃に使われてドローンやミサイルはイラン国内から発射されている。その攻撃にはアメリカの軍や情報機関が協力していただろう。
この先制第一撃でイラン軍の指揮系統が麻痺、降伏するとアメリカ軍やイスラエル軍は考えたのかもしれないが、防空システムは8時間から10時間ほどで回復、死んだとされた軍の幹部の一部は生きていることが後に判明している。ドローンやミサイルはイラン国内で組み立てたようだが、その材料を持ち込ませてしまった治安当局の責任は問われるだろう。
しかし、防空システムの能力が不十分であることは否めない。ロシア製のS-400防空システムがなかったことも大きいのだが、これはロシアが売却しなかったのではなく、イランが購入を断ったということが今回判明。シリアで有効性が証明されている短距離用防空システムのパーンツィリS1やECM(電子対抗手段)も配備されていなかったのだろう。今後、イスラエルやアメリカからの新たな攻撃に備え、こうした防空システムをロシアから入手するかもしれない。
そのイラン以上に大きな痛手を被ったのがイスラエル。ネゲブ砂漠にあり、F-15戦闘機とF-35戦闘機の大半が配備されているネバティム空軍基地をはじめとする軍事基地、あるいはイスラエル軍のアマン情報本部が破壊され、同時にモサドの本部にも命中。軍事研究の中枢であるワイツマン科学研究所も壊滅的な被害を受けた。
イスラエルでは、イランによる攻撃を受けた建造物や市街の状況を発信することが禁じられ、西側の有力メディアはそうした規制に従い、宣伝機関としての役割を果たしている。曲がりなりにも停戦が実現したことから、そうしたメディアは「アメリカとイスラエルが勝った」というイメージを広げようとしているが、撮影機能が搭載されたスマートフォンが社会に広まっている現在、路上やバルコニーから攻撃や被害の様子を撮影、発信する人を取り締まることは至難の業だ。イスラエルのあるニュースキャスターは白々しい嘘を発信したくないと考えたのか、「イスラエル国防軍の基地や私たちがまだ報道していない戦略拠点に多くのミサイルが命中した」と伝えている。
イランの攻撃はテル・アビブのほかハイファに対しても実行され、イスラエル内務省の国内軍事調整を担当する支部が入ったビルに命中しているが、イスラエル最大級の石油精製所が攻撃され、閉鎖された。そのほか空港、港、発電所、軍事生産の拠点などが狙われた。ドナルド・トランプ米大統領が言うように、イスラエルは甚大な被害を受けたのだ。
イスラエルのベン・グリオン国際空港は閉鎖され、コンテナ船を扱えるふたつの港、ハイファとアシュドッドのうちハイファ港は閉鎖状態。アシュドッド港への寄港ができなくなると、イスラエルの物流は麻痺、生活必需品の深刻な不足に直面する。
停戦の時点でイスラエルに残されたミサイルは10日分程度だったと言われていたが、それだけでなく、経済を支えるインフラの破壊も深刻な状況である。
現在、中国のBRI(一帯一路)とロシアを中心とするユーラシア経済連合を連結させる動きがあり、それに対抗するためにアメリカをはじめとする西側諸国はIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)プロジェクトを進めている。
IMECはインド、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、イスラエルを結び、さらにギリシャからEUへ伸びるルートで、インドのナレンドラ・モディ首相やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこのプロジェクトに賭けていた。ハイファはIMECで重要な位置にあり、イランによるその港への攻撃は戦略上大きな意味を持つ。
イスラエルだけでなくアメリカも追い詰められている。この状況を打開するため、新たな戦争は大規模なものになるかもしれない。そのためには「第3のパール・ハーバー」が必要だろう。
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