http://www.asyura2.com/25/warb26/msg/324.html
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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2025年10月21日 https://tanakanews.com/
■要約
ガザ戦争は10月14日に形式的に停戦(終戦)したものの、イスラエル軍は攻撃を再開しており、ガザ抹消・パレスチナ抹消というイスラエルの目的のもと、低強度な戦争状態が継続する様相を呈している。停戦は安定しないが、トランプ前大統領はイスラエルを訪問し「ガザ終戦」を演出することで、現場の戦闘とは別に、国際政治的に諸国がイスラエルとの関係改善を進める状況を作り出した。
イスラエル(リクード系)は、英国系を排除して米諜報界を牛耳る地政学的・軍事的な強さを背景に、中東での覇権を拡大している。アラブ諸国(UAE、サウジ、エジプトなど)、トルコ、ロシアといった国々は、表向きのパレスチナ支持を続けつつも、イスラエルとの協調を進めている。
イスラエルはイラン包囲網としてコーカサスにまで覇権を広げ、トルコを事実上の傘下(コーカサス担当)とした。プーチンのロシアは、自国の影響圏だったコーカサスをイスラエル(傘下のトルコ)が乗っ取ることを黙認する代わりに、中東での利権維持を確保している(シリアのロシア海軍基地維持など)。この動きは、米諜報界の英国系を潰し、非米化・多極化を進めるリクード系と隠れ多極派の策略の一環である。
中東でイスラエルと敵対し続けているのはイランのみであり、イスラエルは自国が強い今のうちにイランのイスラム共和国体制転覆を図る必要がある。この転覆は、将来的にアゼルバイジャンからイランおよびイラクのクルド地区を経由してイスラエルまでパイプラインを敷設する戦略とも連動している。今回の形式的な停戦は、各国がイスラエルとの利害調整や協調を進める契機となったと考えられる。
■全文
10月14日、ガザ戦争が停戦(終戦)した。ハマスは残っていた人質20人の全員を帰還させた。死んだ人質の遺体の多くも返還した(残りは瓦礫の下に埋まっている)。イスラエルは、停戦を実現したトランプを華々しく称賛した。
しかしその後、戦闘が再開されている。イスラエル軍は10月20日、ハマスが攻撃してきたと言って、反撃と称してガザへの攻撃を再開した。
ガザとエジプトの間にあるラファ検問所は閉まったままだ。停戦した感じがない。このままずっと低強度な戦争状態が続く感じがある。
https://sputnikglobe.com/20251019/israeli-security-minister-ben-gvir-urges-netanyahu-to-resume-full-scale-fighting-in-gaza-1122989241.html
Israeli Security Minister Ben-Gvir Urges Netanyahu to Resume Full-Scale Fighting in Gaza
https://www.zerohedge.com/geopolitical/where-are-protesters-us-warns-hamas-planning-ceasefire-violating-attack-palestinian
Ceasefire On Thin Ice As Hamas Kills Gazan Civilians, Israel Retaliates To 'Yellow Line' Threat
イスラエルの目的はガザ抹消・パレスチナ抹消であり、ガザを再建する気などない。米イスラエルは、英ブレア元首相ら著名な政治家や財界人を集めて国際的なガザ再建委員会を作ったが、それは英国系・リベラル派をピエロに仕立てて愚弄する見世物だ。
安定的に停戦したら、次はガザ再建だという話になる。イスラエルは、事態をその方向に展開させたくない。停戦は安定しない。イスラエルは、いろいろ理由をつけて戦闘を断続的に続ける。ブレアの委員会はエジプトで待ちぼうけを食らわせられる。
https://thecradle.co/articles-id/33563
Blair’s second coming: Gaza under colonial trusteeship
https://tanakanews.com/251012mideast.htm
ガザ戦争後の中東
こんな状態なのに、トランプはわざわざイスラエルに来て華々しい「ガザ終戦」を演出した。あれは何だったのか。
それはおそらく、ガザの現場の実際の戦争は続くのだが、国際政治的なイスラエルと他の諸国との関係はガザ戦争が終わったことにしてイスラエルとの関係改善が進むという、分裂した2つの状況を作り出すためだ。
イスラエル(リクード系)は、英国系を追い出して米諜報界を牛耳っているので、地政学的・軍事的にとても強い。だから、みんなイスラエルと仲良くしたい。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/israel-wont-reopen-rafah-crossing-hamas-fails-return-bodies-slain-hostages
Israel Won't Reopen Rafah Crossing As Hamas Fails To Return Bodies Of Slain Hostages
しかし、みんなパレスチナ国家を支援してきた。イスラエルがガザで派手な人道犯罪を展開している限り、みんなイスラエルを非難せざるを得ない。
そこでトランプが出てきてガザ終戦の演技を展開し、ガザ戦争が終わったことにした。みんなその演技に乗り、ガザ戦争が終わったことにしてイスラエルと仲良くし始める。そんなシナリオでないか。
https://www.jpost.com/israel-news/article-870311
Is normalization with Saudi Arabia closer or further way?
みんな、とは誰か。アラブやトルコやロシアなどだ。シャラアになったアサド後のシリアはイスラエルの傀儡だし、レバノンもイスラエルにヒズボラを潰された後、反米から親米に転換し、米国(を牛耳るイスラエル)の言いなりになっている。
アラブ諸国のUAEやサウジやエジプトも、表向きパレスチナ国家を作らなきゃダメだと言いつつ、イスラエルがパレスチナ抹消を進めても仲良くしたい。
アラブで最も親イスラエルな(サウジの子分として動いている)UAEは、ガザ停戦後、さっそくテルアビブに大使館用の土地を買うことにして、これまでテナントビルに入居していた駐イスラエル大使館を、自前の恒久的な新築建物に移す動きを始めた。
https://www.jpost.com/israel-news/article-870864
UAE buys land for permanent embassy in Israel
イスラエルは数年前から、自国の中東覇権の領域を、イランの裏側にあるコーカサスにまで(イラン包囲網として)拡大する動きを進めた。それがナゴルノカラバフ紛争で勝っていたアルメニア(もともとイスラエル傘下の国)が急に大譲歩してアゼルバイジャンの勝ちになる不可解な動きになっていた。
アゼルバイジャンはトルコ系の国だ。エルドアンのトルコは、イスラエルのおかげで地域覇権がコーカサスに急拡大した。イスラエルはかつてアルメニアにトルコ敵視の噛みつかせ役をやらせており、コーカサスでのトルコの強さは今ひとつだったが、今やアルメニアはトルコに接近した。
エルドアンは表向きイスラエルを非難し続けているが、実際はコーカサス覇権を拡大させてもらい、イスラエルに感謝している。もうトルコはイスラエルを敵視していない。
https://tanakanews.com/250702armenia.htm
コーカサスをトルコに与える
トルコは、ロシアから迎撃ミサイルS400を買って配備していたが、最近S400をロシアに返却し、替わりに米国製を配備する話が出ている。表向き、印度がS400を欲しがったので、ロシアがトルコにお願いしてS400を返してもらって印度に再販売する話だ。
だが私の見立てだと、これはイスラエルが要求した結果だ。S400だと、ロシアとトルコが結託してイスラエルを裏切った場合、イスラエルの脅威になる(印度はイスラエルから遠いので問題ない。印度は反ムスリムで親イスラエルだし)。米国製のシステムなら、イスラエルは今後も米諜報界=米軍を牛耳り続けるので、トルコはイスラエルを裏切れない。
https://korybko.substack.com/p/speculation-is-swirling-about-the
Speculation Is Swirling About The Future Of Turkiye's S-400s
https://tanakanews.com/250725israel.htm
イスラエルの覇権拡大
プーチンのロシアは、自国の影響圏(旧ソ連)だったコーカサスをイスラエル(傘下のトルコ)が乗っ取ることを黙認した。見返りにロシアは、イスラエルの影響圏になっていく中東での利権を維持拡大させてもらう。
ロシアは、アサド政権の時代から、シリアに海軍基地を持っていた。ロシアはイランと協力してアサドを支援していた。
https://korybko.substack.com/p/whats-the-future-of-russias-bases
What's The Future Of Russia's Bases In Syria?
昨年末にイスラエルの傀儡であるシャラアのHTS(元アルカイダ)がアサド政権を転覆し、アサドはモスクワに亡命した(最近毒殺されかけたらしい)。
アサド敵視のシャラア政権が、親アサドだったロシアがシリアで海軍基地を持ち続けることを認めるのかどうか注目されていた。
今回のガザ停戦とほぼ同時の10月15日、シャラアがロシアを訪問し、プーチンと仲良く対談した。シリアにあるロシアの海軍基地はそのまま維持されることになった。シャラアの背後にいるイスラエルの采配だろう。
https://sputnikglobe.com/20251015/new-syrian-leaders-may-see-russia-as-defense-against-us--israeli-predations-1122966919.html
New Syrian Leaders May See Russia as Defense Against US & Israeli Predations
そもそもプーチンは、ずっと前からイスラエルと親しい。ウクライナにもロシアにも、ユダヤ人(ハザールの末裔)はたくさんいる。ウクライナ戦争自体、プーチンのロシア(と非米側)を強化するためのリクード系の策略だった。
リクード系は英国系(英欧と米民主党)を潰す策略として、英国系のロシア敵視を強め、英国系がウクライナを動かして露系住民への弾圧を強める流れを作り、プーチンが邦人保護のためにウクライナに侵攻してドンバスを回収(編入)するウクライナ戦争を始めさせた。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/syria-set-allow-russia-keep-its-strategic-military-bases-country
Syria Set To Allow Russia To Keep Its Strategic Military Bases In Country
ウクライナ開戦にあたり、リクード系は英国系がうまく潰れていくよう、プーチンにいろいろ入れ知恵したはずだ。プーチンは軍事面だけでなく、地政学や覇権運営の面で、中国や印度など非米側との資源類のつながりや結束を強め、世界の非米化や多極化に貢献している。
米覇権や諜報界を動かしてきた英国系を潰す流れは、国連創設やニクソン以来のロックフェラーなど米国の隠れ多極派、隠れ多極派が1990年代後半から誘い込んで911事件を起こさせて米諜報界を英国系から乗っ取らせたリクード系のイスラエル、隠れ多極派とリクード系の申し子であるトランプ、トランプとリクード系の隠れた盟友であるプーチン、その先にいる習近平や印度モディやサウジMbSなどによって進められている。
多極化の流れはすでに山を越えて進んでいる。イスラエルとロシア(やアラブやトルコ)が仲良くするには、形だけで良いからガザ停戦が必要だった。
https://thecradle.co/articles/baghdad-sets-2028-deadline-to-end-iraqi-dependence-on-iranian-gas
Iraq Sets Deadline To End Dependence On Iranian Gas, Under US Pressure
中東でイスラエルと敵対し続けている国はイランだけになっている。イランは、イスラエル(や米国)に核施設などを空爆され、イスラエルが米諜報界を乗っ取ってすごく強くなったことは知っている。イランは、できればイスラエルと対立したくない。ほっといてほしいはずだ。
だが、イスラエルとしてはほっとけない。長期的に見て、いずれ米国の金融システムがバブル崩壊して諜報界もろとも米覇権が消失していく。イスラエルの今の強さは永久的なものでない。
イスラエルが弱くなると、呼応してイランがまたじわじわとイスラエル近傍で力を持ちうる。それはまずいので、イスラエルは自国が強い今のうちに、イランのイスラム共和国体制を転覆しておく必要がある。軍事攻撃でイランの政権を転覆させられるのか、疑問ではある。
https://www.rt.com/news/626554-iran-israel-war-imminent/
A new Iran-Israel war is just a matter of time
(私は10月17日の有料記事で、米国が地方銀行から金融危機が急拡大して間もなくリーマンショック型のバブル崩壊になる可能性と、米金融と諜報界が崩壊するとイスラエルも弱くなるので裏資金を注入してバブルを維持する可能性を書いた。その後、10月21日にかけて米欧日の株や債券の相場が異様に反騰し、これまでと同じ不合理な金融バブル膨張が戻っている。リクード系が金融を操作してバブルと諜報界を延命させる流れが、まだしばらく続きそうだ)
https://tanakanews.com/251017loan.php
突然金融危機になるかも
イスラエルのイラン潰しと連動しているように見えるのが、クルド人をめぐる最近の変化だ。イスラエルは、中東の弱い諸勢力を(米国に協力させて)テコ入れして強い勢力に噛みつかせて弱体化させる戦略の一環で、以前からクルド人をテコ入れしてきた。
イラクのクルド人をテコ入れしてサダムフセインに対抗させるとか、シリアのクルドをアサドと戦わせるとか、イランのクルド人を決起させるとか、エルドアンに人権侵害のレッテルを貼るためにトルコのクルド人を自治要求で頑張らせるとか。
フセインとアサドはもういない。トルコは、イスラエルにとってライバルでなく中東覇権運営の子分(コーカサス担当)にした。トルコのクルド人(PKK)は自ら武装解除し、エルドアンと和解して健全野党になった。
https://thecradle.co/articles/erdogans-domestic-front-the-dismantling-of-democracy-in-turkiye
Erdogan's ‘domestic front’: The dismantling of democracy in Turkiye
残るはイランだ。近年イランのクルド人は、イスラム共和国の政権に監視され封じ込められて反政府な動きがほとんどない。
だが今後、イスラエルがトランプを巻き込んでイランに本格戦争をしかけて政権転覆したら、その後のイランの混乱の中でクルド人が自分たちの領域を確保しようと動き出す。
イスラエルは、アゼルバイジャンから石油を(いずれガスも)輸入しているが、今はトルコの港までパイプラインで運んでタンカーに積み替えている。
今後もしイランが転覆されてクルド人が自治区(もしくは分離した国家)を作ると、アゼルバイジャンからイランのクルド地区、イラクのクルド地区、シリア(イスラエル傘下のクルドとシャラアの領土)を通ってイスラエルまでパイプラインを敷けるようになる。
https://oilprice.com/Latest-Energy-News/World-News/Iraq-To-Restart-Kurdistan-Oil-Exports-on-September-27.html
Iraq To Restart Kurdistan Oil Exports On September 27
ロシアや中国はイランと親しい。しかしプーチンは柔軟で、ロシアはイランを見捨てうる。プーチンは昨年まで、イランと一緒にシリアのアサドを支援していたが、イスラエルが傀儡シャラアにアサドを転覆させる時に(裏でグルになって)黙認し、アサド説得して政権を放棄させ亡命を受け入れる役を担った。プーチンは同様に、イスラエルのためにイランを見捨てうる。
米露はすでにイスラエルの傀儡だ。英欧はリベラル派のエリート支配を自滅させる。英欧の力は大幅に低下するし、その後の政権になる右派は親イスラエルだ。
イスラエルにとって今後の世界的な問題は、中共(習近平)との関係だ。試金石はイランをめぐるものだ。習近平は、イスラエル米がイランを政権転覆することを黙認するのかどうか。たぶん黙認する。中共は現実主義だ。
https://www.atalayar.com/en/articulo/politics/israel-intends-to-include-lebanon-and-syria-in-the-abraham-accords/20250630155341216405.amp.html
Israel intends to include Lebanon and Syria in the Abraham Accords
イスラエル(諜報界のリクード系)は、英国系潰しのため、世界各国を右傾化・極右化させている。日本でも、極右の高市早苗が首相になれないかもしれないという最近の状況下で、代わりに首相になるかもしれなかった玉木雄一郎が、なぜか今ひとつやる気がなく、高市の首相就任を黙認する流れを作ってしまった。
誰かが玉木の弱み(女性スキャンダルとか?)を自民党に流し、玉木は弱みを握られて譲歩せざるを得なくなったとか。日本は嬉々として米諜報界に握られてきたので、リクード系なら簡単にやれる。
首相になった高市がトランプに誘われてプーチンと会ったりしたら面白いが、ホントくだらない小役人だらけになった日本人に、そんなダイナミズムが残っているのかどうか。あまり期待してない。
https://www.jpost.com/middle-east/article-870364
'Everyone going to join Abraham Accords': Trump says at Egypt peace summit
イスラエルは、パレスチナ抹消が目標なのでガザ戦争を続ける。だが今回、表向きだけガザ戦争を停戦(終戦)したことで、中東など各国は、やりやすいものから順番に、イスラエルとの利害調整や協調を進めていく。それが今回のガザ停戦の意味だろう。
https://www.jpost.com/defense-and-tech/article-870389
Indonesia and Israel: Preparing for normalization?
ガザ戦争は同時に、米欧のうっかり英傀儡なリベラル派や左翼を激怒させ、過激化させて、極右なトランプ政権などが英国系をテロリスト扱いして潰せる状況を作っている。
ソロスがカネを出しているノーキングとか。リベラルや左派の市民自身は、やられていることに全く気づいていない。これらについてはあらためて書く。
https://www.middleeasteye.net/live-blog/live-blog-update/video-over-500000-london-protest-against-genocide-gaza
Over 500,000 in London protest against genocide in Gaza ../2510/1014h0525.txt
https://tanakanews.com/251008liberal.htm
リベラル世界体制の終わり
https://www.zerohedge.com/political/coup-dflat-billionaire-funded-no-kings-color-revolution-turns-white-liberal-boomer-parade
Billionaire-Funded 'No Kings' Color-Revolution Turns Into White Liberal Boomer Parade As Dems Become National Laughingstock
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/251021israel.htm
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