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※紙面抜粋

※2026年6月4日 日刊ゲンダイ2面
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混乱必至、効果なし…場当たりで無定見の消費税減税じゃ全然駄目だ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/388526
2026/06/04 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し

人気欲しさのためだけにやる(C)日刊ゲンダイ
その場しのぎの政策で、支持率維持しか頭にない高市政権が食品の消費税1%に向けて動き出したが、バカげたことをやるものだ。財源なし、2年限定、外食産業にも補助金、益税温存と綻びだらけの支離滅裂。無責任で野放図な積極財政の挙げ句、日本経済はどうなるのか。
◇ ◇ ◇
「悲願のゼロ」から「1%の奇策」にカジを切った。食料品の2年限定の消費税減税を巡り、政府が来年4月から税率1%に引き下げの方向で調整に入った。今月下旬にも高市首相が最終判断する。
1%に向けて動き出した理由は、レジのシステム改修に要する時間だ。経産省は3日、超党派の「社会保障国民会議」の実務者会議で改修期間の見解を示し、税率ゼロだと準備期間は「1年程度」、1%なら「半年程度」で対応可能と説明。これを踏まえた判断らしいが、何を今さらだ。レジシステムで割り算のできない「0%の特殊性」は、前任の石破政権の頃から、とうに指摘されてきたことだ。
高市は「私の悲願」とか言って「2年限定の飲食料品の消費税ゼロ」を衆院選公約に掲げたものの、バカ勝ち後はのらりくらり。サッサと対処できたはずのレジ問題もほったらかし。国民会議での議論も消費税減税より、社会保障と税の一体改革で高市が「本丸」と位置づける「給付付き税額控除」を先行させてきた。
いきなり「税率1%で早期実現」とは、支持率維持しか頭にない政権の人気取り策に過ぎない。高市陣営の疑惑の中傷動画の影響か、下落傾向にある支持率のアップを期待したのだろう。高市にとって都合がいいのは、報道各社の世論調査でも早期実施を前提とした1%への支持が、遅いゼロよりも高いことだ。「公約違反」との批判もはね返せると見越し、「早さ優先」で1%の奇策に傾いたとしか思えない。
円の価値をとことん毀損して物価は高騰
とはいえ、消費税減税の実現に向けて課題は山積み。最大の懸念材料は、財源だ。公約の税率ゼロから1%になっても、年間4.4兆円程度もの巨額の税収が失われることに変わりはない。
消費税収は年金や医療、介護、少子化対策といった社会保障に充てる貴重な財源だ。減税でドカンとあく大きな穴をあけっぱなしにはできないのだが、高市は赤字国債に頼らない方針を示したきり。「補助金や租税特別措置の見直し、税外収入など」で賄うといえども、肝心の具体策はゼロだ。その場しのぎの場当たり策でしかない。
減税効果も怪しい。現在の税率8%が1%に引き下がる分、食料品の値段も下がると期待する気持ちは分かる。だが、そう簡単にはいかないのは、この4年もの間、物価が2%超ペースで上がり続けている最大の要因を考えれば分かる。そう、「円安」だ。今や「世界最弱」とまで称される日本円の価値をとことん毀損しているのが、今の高市政権なのである。
日銀の利上げに圧力をかけ、応急措置として4月末以降、実に11.7兆円規模の円買い為替介入を実施。いったんは1ドル=155円付近まで急騰したが、わずか1カ月余りで逆戻りだ。3日は一時160円台をつけ、介入効果はすっかり帳消し。介入前の円安水準までUターンである。
「恐らくトランプ米政権からの“脅し”もあり、どうやら日銀も今月の金融政策決定会合では利上げに踏み切りそうですが、遅きに失した感は否めません。名目金利から物価上昇率を差し引いた『実質金利』は延々とマイナス圏にとどまり、物価動向に対して中央銀行の対応が後手に回る『ビハインド・ザ・カーブ』を見事に描いています」(経済評論家・斎藤満氏)
人気欲しさに際限なきバラマキ策の様相

アッという間に逆戻り(C)共同通信社
たとえ消費税率を引き下げても、円安を放置したままでは、物価高騰は収まらない。追い打ちをかけるのが、原油・ナフサ不足と代替調達に伴うコストの増加だ。
ホルムズ・ショックを受けた値上げラッシュは、この夏からが本番だ。2日公表の帝国データバンク(TDB)による「食品主要195社 価格改定動向調査」(6月速報)でも一目瞭然。月ごとの値上げ品目数は6月1078、7月2419、8月1499と、今後3カ月で5000品目を超える公算は極めて大きい。
TDBは〈トレーやフィルムの原料となるナフサの値上げ分を価格に反映する動きが顕著〉と分析し、〈7〜10月実施を中心に引き続き価格改定に踏み切る飲食料品が表面化する見通し〉と結論づけた。円安・ナフサ不足・代替調達高の三重苦で、昨年に続き今年も値上げ品目は2万を突破する勢いだ。はたして来年春の減税実施まで、庶民生活は耐えきれるのか。
「それなのに度し難いのは、深刻なナフサ不足に対する高市政権の危機感のなさ。『ナフサ足りてる』の“あるある詐欺”です」と、前出の斎藤満氏はこう言った。
「今の日本経済は平時ではない。非常時です。円安を抑え、代替調達の輸入コストを引き下げ、インフレ退治に乗り出す時期なのに、高市政権が打ち出す政策は真逆です。全額赤字国債で賄う3兆円の補正予算案でのガソリン補助金継続をはじめ、需要増加のインフレ促進策ばかり。消費税減税も購買意欲を刺激する需要増加策の最たるもの。加えて税率8%から1%に引き下げれば『3〜5%の値上げ幅なら』と、さまざまなコスト上昇分を価格転嫁する余地を与えかねない。減税分の相殺は否定できません」
今回の減税はあくまで2年限定だ。価格転嫁がジワジワ広がり「課税前価格」の値上げが横行すれば、2年後に8%に戻る際の「増税」感はハンパない。庶民生活の混乱は必至。実にバカげたことをやるものだ。
大戦末期と同じく失敗する「戦力の逐次投入」
消費税1%は高市政権の場当たり、無定見の極みだ。その証拠に選挙公約の「税率ゼロ」との整合性を取るため、1%分の税収にあたる年間約6000億円を補助金などの形で還元する「実質ゼロ」案も浮上。税率が10%に据え置かれる外食産業への支援も検討する方向だ。財源なしでも、支持率欲しさに際限なきバラマキ策の様相である。
そもそも、食料品の消費税減税は給付付き税額控除導入までの「つなぎ」だったはず。ところが、給付付き税額控除の議論も「税額控除」が外れ、「給付」先行に傾斜。こちらも財源のメドは立たず、無責任な二重のバラマキでしかない。
そのくせ、トヨタ自動車などの輸出大企業に還付される不公平な消費税の「益税」は温存。元静岡大教授で税理士の湖東京至氏の試算によると、2024年度の還付額は上位30社で2兆7332億円に上り、消費税収の約1割に匹敵する。この仕組みを見直し、減税の財源に充ててもいいのに、議論すらされない定見のなさだ。
まさに綻びだらけの支離滅裂。他にも高市政権の掲げる政策は巨額の財政支出メニューが目白押し。複数年度にまたがる大規模な成長投資や、安保関連3文書の改定に伴う防衛費の増額などだ。トランプ政権の要求通りGDP比5%をのめば、防衛費は年間30兆円規模に拡大。今年度当初予算の10.6兆円から約3倍に膨らんでしまう。
「責任ある積極財政」とは名ばかりで、高市政権の無責任で野放図な放漫財政の挙げ句、日本経済はどうなるのか。
慶大名誉教授の金子勝氏(財政学)はこう指摘する。
「高市政権のバラマキは政権末期の断末魔。いまだアベノミクスの二番煎じの発想で、物価高騰対策の『フリ』でゴマカすことしかできない。3兆円の赤字補正に、総額5兆円の消費税減税と恐る恐る小出しの財政出動は、大戦末期の旧日本軍による『戦力の逐次投入』と同じ。大失敗に終わります。投機筋に“弾切れ”を意識されて効果帳消しの為替介入と同様、いずれ財政悪化を見透かされ、長期金利は止めどなく上昇し、国債は暴落しかねません。庶民の目はゴマカせても、市場から退場勧告を突きつけられるのは時間の問題です」
消費税減税じゃ全然ダメ。今や高市政権の退陣こそが最大の経済対策となり得る。
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