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上:<心の傷> 変化、見極めに時間 朝日新聞
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投稿者 エンセン 日時 2003 年 10 月 07 日 09:47:51:ieVyGVASbNhvI

 
上:<心の傷> 変化、見極めに時間

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突然の号泣、今も
 29日午後、長崎家裁3階の少年審判廷。

 中学1年の男子生徒(12)は両親に付き添われ、神妙な面持ちで裁判長が告げる処分を聞いた。グレーの半袖Tシャツに紺色の半ズボン姿。事件時に短かった髪は少し伸びていた。

 1週間ほど前、生徒は少年鑑別所で面会した付添人の弁護士にこう語った。

 「もし願いがかなうなら6月30日と7月1日に戻りたい」

 4歳の園児を連れ去ったのは7月1日夜。遺体が見つかったのは翌2日朝。事件の前に戻りたいという意味だった。

 「自分のやったことを誰に対して一番悪いと思うか。1人あげてみて」。付添人に尋ねられ、一瞬言葉に詰まったこともあった。「2人なら」と重ねて聞かれると、「園児と(その)両親」と口にした。

 29日、処分を受けて会見した弁護士は「時がたつにつれて後悔や反省の態度がみられるようになった」と語った。

 だが、事件をどう受け止めているのか、生徒の胸の内はなお謎に包まれている。

 長崎少年鑑別所で面会した関係者は生徒からこんな言葉を聞いている。

 「事件がなかったら、夏休みはもっと楽しいことができたのに」

 58日間の鑑定留置期間の精神鑑定で、生徒は他人の感情が読みとりにくく、コミュニケーションを取るのが苦手だと診断された。

 鑑定に携わった関係者の一人は「相手が発するものへの共感が感じられない」と語る。

 同級生らの目には、しばしば、パニック状態になる姿が映っていた生徒は、鑑別所でも、職員に注意されると突然、号泣した。「こんなとこ逃げ出してやる」と、扉をたたいたり、本を机に投げつけたりした。

 事件を起こした7月1日も、少年の心のうちは短い間に、大きく揺れ動く。

 家族で映画を見に行くはずだったが、帰宅が遅くなり、母親に電話したところ「なんでこんなに帰るのが遅いの」ととがめられた。母の怒りを恐れ、自宅から1.4キロ離れた家電量販店の体験ゲームコーナーに向かった。その後、園児を見つけてからの行動は突然、計画的になる。

 「お父さんとお母さんは用事があって先にいったから」。そう言って連れ出すと、路面電車に乗り立体駐車場へ。屋上で園児の服を脱がせ、事前に用意していたハサミで幼い体を傷つけた。

 だが、屋上に設置されていた防犯カメラを見つけると突然、動転し始める。他人と向き合うことが苦手な生徒には、レンズは、だれかの厳しい視線のようだった。

 家裁の決定は「その場から逃げ出すことのみを考え、邪魔になると屋上から突き落とし」と記した。

 小学校3年生の時の出来事も、この悲しい事件につながっている。生徒は股間をけられ、病院で治療を受けた。痛みがひいた後、自分で消毒液をかけた。そのころから下半身への強い関心を持ち続けた。思春期を迎えた生徒の行動に、臨床心理の専門家は「急激に成長する体への戸惑い」を見て取った。

 生徒が不器用であると心配し、付きっきりで勉強を教えた母親との関係、中学校に入って大きく変わった環境……。

 家裁の決定は、複雑な要因を細かくすくい上げ、こう指摘した。

 「少年の関心、行動の変化を見極めるには相当時間がかかる」

 児童自立支援施設行きが決まった後、付添人は生徒に声を掛けた。「(自分の)両親に手紙をかきなさいよ」。生徒はうなずいて「はい」と答えた。


■長期強制措置「やむを得ぬ」 付添人の弁護士会見

 児童自立支援施設への送致が決まった生徒の付添人の弁護士3人は29日の記者会見で、「家裁の決定は妥当」としたうえで、「改めて被害者および遺族の皆様方の悲しみを実感し、二度とこのような悲しい事件が起きないことを願うとともに、何よりも亡くなられた種元駿君のご冥福を心からお祈りする」とのコメントを読み上げた。

 最長1年間の強制措置について、戸田久嗣弁護士は「事件の重大性や今後の処遇、更生を考えたらやむを得ない」と記者団に答えた。


■アスペルガー症候群 診断名独り歩き 専門家ら「心配」

 決定が「少年の資質等」で触れたアスペルガー症候群について、児童精神医学の専門家の多くは「この障害がストレートに事件に結びつくことはない」と強調し、「診断名が独り歩きすることが心配だ」と指摘している。同症候群は発達障害で、他者の感情を読みとりづらいなどの特徴がある。


■強制措置1年間「珍しい」「妥当」

<土本武司・帝京大法学部教授の話> 強制的措置は6カ月が通常だが1年とし、さらに1年後に改めて審査するという決定は珍しい。特異性のある少年をきちんと更生させる目的に加え、十分に更生せずに社会復帰した場合の社会の安全面も考慮した。被害者の遺族への配慮もみられる。これまでの家裁審判は専ら少年の健全育成を理由にしていたが、社会防衛を意識した点で注目される。触法少年の少年院送致が認められない現行法の下で、今回の決定は最大の努力をしたといえる。

<山口幸男・日本福祉大学社会福祉学部教授の話> 1年というかなり長期の強制的措置が許可されたが、その時間を使って、集中的に子供を現実と向き合わせ、成長させるという考えだと思う。

 法を改正して少年院へ、という意見もあろうが、少年院にはこの年の子を扱った経験がない。12歳という、環境が発達に大きく影響を与える年代。経験豊かな児童自立支援施設で、10代という多感な時期を費やして事件を振り返る以外に、本人やこうした事件を防げなかった社会が被害者に償う方法はない。妥当な審判だったと思う。
 

(朝日新聞2003年9月30日朝刊紙面)

http://www.asahi.com/special/nagasaki/030930.html

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