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[政治・選挙・NHK237] いつもは弱腰の朝日新聞がついに小川榮太郎を提訴! 「森友・加計問題の著書巡り文芸評論家らを提訴 朝日新聞」 赤かぶ
72. 2017年12月27日 10:58:45 : FqQiluaeTI : D8LMezZq8tQ[1]
みんなこの本読んだことあるのかな。
小川栄太郎氏の言い分が正しいと思う。
朝日新聞を擁護したり、小川栄太郎氏を批判する人の気持ちが全く理解できない。

2017.12.25 21:03更新
森友・加計「虚報と決めつけ」 朝日新聞が検証本著者の小川栄太郎氏を提訴 
http://www.sankei.com/affairs/news/171225/afr1712250051-n1.html
森友、加計学園問題をめぐる報道を「虚報」と決めつける書籍を出版され、名誉を傷つけられたとして、朝日新聞社は25日、執筆者で文芸評論家の小川栄太郎氏と発行元の飛鳥新社(東京)を相手取り、謝罪広告の掲載と計5千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
書籍は10月に出た「徹底検証『森友・加計事件』朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」。
訴状によると、書籍は森友、加計学園問題の朝日新聞報道について
「安倍(首相)の関与などないことを知りながらひたすら『安倍叩(たた)き』のみを目的として、疑惑を『創作』した」
などと記載している。
朝日新聞は
「本社には一切取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造(ねつぞう)、報道犯罪などと決めつけている。事実に反した誹謗(ひぼう)中傷による名誉毀損(きそん)の程度はあまりにひどく、言論の自由の限度を超えている」
とのコメントを出した。
小川氏は全面的に争う姿勢を見せた上で、
「言論機関が個人に対し、好意的でない文章を出したからと提訴するのは事実上の言論弾圧だ。朝日新聞の世論に対する影響力は高く、力の行使については政治権力と同じようなおもんばかりがなければならない。言論機関は言論の場で白黒つけるべきだ」
と話している。
小川氏は今月、正論新風賞に選ばれている。

●小川 榮太郎
昨日 6:45
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/1676554472437367
【朝日の訴状への初見コメント】朝日新聞社は、拙著『徹底検証 森友加計事件 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』の中身を巡って、私と出版元の飛鳥新社に対し、5000万円の損害賠償請求を提訴しました。今後の対応の詳細は明日以後、出版社および顧問弁護士と協議しつつ詰めてゆきますが、以下、訴状の初見の印象からの簡単なコメントをまず発表します。
執行役員の言葉として以下が掲げられています。
「小川氏の著書の事実に反した誹謗・中傷による名誉毀損(きそん)の程度はあまりにひどく、言論の自由の限度を超えています。建設的な言論空間を維持・発展させていくためにも、こうしたやり方は許されるべきではありません。やむを得ず裁判でこの本の誤りを明らかにするしかないと判断しました。」
笑止千万とはこのことです。私の言説が言論の自由の限度を超えているというなら公称650万部の新聞社は、たった9万5千部しか出ていない本のかよわい一著者に5000万円の賠償請求をするのではなく、650万人の読者に向かい、小川の非を鳴らし、朝日新聞の報道がいかに正しかったかを説得しなさい。それで私の社会生命、言論人生命は終わります。私が事実に反した誹謗中傷本の著者として社会生命を失えば、朝日新聞社は言論機関として自己の正当性を堂々と証明できるのです。
裁判所に判断を委ねる必要など、社会的に圧倒的強者であり、自説を証明できる膨大な紙面と圧倒的な読者数を誇る朝日新聞社の取る道としてあ�ってはならぬ最悪の邪道と言う他ありません。
それよりも、朝日新聞の再三にわたる「言論の自由の限度を超えた」捏造―珊瑚礁事件、従軍慰安婦、吉田調書、森友加計捏造報道などなど―についての、今尚決して清算、克服されていると言い難い損害を出来る限り客観的に算定し、日本国民の総意としての損害賠償を朝日新聞社に徹底的に、「最終的且つ不可逆的に」国民の総意として求める時期が来たのではないでしょうか。とりわけ従軍慰安婦報道については、日本国内では社会的な事件となり全社的な謝罪をしたにも拘らず、国際世論の鎮静に向けて朝日新聞は全く努力せず、世界での慰安婦問題の拡散は留まるところを知りません。この日本国家をあげての損害を金額算定すれば天文学的数値に上るでしょう。  
そうした自社の「言論の自由の限度」をはるかに超えた現況をなかったかのようにしておきながら、自社に批判的なドキュメンタリーについて、紙面を使っての検証や反論のプロセスを一切省き、表現の細部ばかりを争点にしていきなり巨額の賠償請求訴訟を起こすことは、自由社会を破壊する言論弾圧に他なりません。
しかも、この訴状は、私の12月5日発出の朝日新聞社への回答をほぼ全く踏まえていません。
〈千葉光宏・朝日新聞社執行役員広報担当の話〉
「小川栄太郎氏の著書には、森友・加計学園に関する朝日新聞の一連の報道について事実に反する記載が数多くありました。本社には一切取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造、報道犯罪などと決めつけています。
具体的にどう違うか指摘し訂正を求めましたが、小川氏は大半について「私の『表現』か『意見言明』への苦情に過ぎません」などとして応じませんでした。」
馬鹿を言うなという言葉を吐くのも虚しい気持ちになります。私は朝日新聞申入れの「具体的にどう違うか指摘し訂正を求め」た項目に全て丁寧に反論しています。その事実をこの訴状及び千葉氏のコメントはほぼ完全に隠蔽し、私との言論戦から逃げて、まるで私がろくな回答をせず不誠実な対応をしたかのような印象操作の上で、訴訟を挑んできたのです。
その上、前回の申入書と同様、個々の訴因がばかげています。一例のみをあげれば、私以外の多くの方が悪質な捏造として批判している5月17日付の「総理のご意向」スクープの黒い枠で文章を覆い隠した写真について、「新聞の一般的な手法」だなどと、常識的な感覚では理解に苦しむ開き直りをするなど、私が朝日新聞主導の「捏造」と主張する大筋の主張を覆し得ない細部表現への無理筋の抗議に終始しています。
私は今後も全くひるまずに批判すべきは批判し続けますが、今回の訴訟を見て、言論人の中には、朝日新聞を批判することが訴訟リスクを含むと考え、批判を手控える方も出てくるのではないでしょうか。また他の大言論機関がこの手法を模倣すれば、日本は事実上、マスコミ、大企業による言論封殺社会になりかねません。一命を賭しても、今回の朝日ファシズムを容認するわけにはゆきません。
裁判は当然徹底的に受けて立ちますが、裁判以外の広く開かれた日本社会で、「森友加計は朝日新聞の捏造か否か」、「拙著が描く朝日の報道犯罪は妥当な論評と言えるか否か」、「今回のような訴訟は言論弾圧であるか否か」などを、朝日新聞が社会的に決して逃げられない形で訴えてゆく所存です。以上

●朝日抗議文を完全論破 新聞社として恥を知りなさい
小川榮太郎 文藝評論家 社団法人日本平和学研究所理事長
2017年12月
◆<はじめに>
私は、2017年11月21日付で朝日新聞社広報部長名の申入書を受け取った。
その申入書によると、拙著『徹底検証「森友・加計」事件 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』は、朝日新聞社の「名誉・信用を著しく傷つける不法行為であり」、私と出版元の飛鳥新社に<厳重に抗議するとともに、すみやかに弊社に謝罪し、事実に反する部分を訂正し、弊社が被った損害を賠償するよう強く求める>ということだ。
私は早速一文を草したうえ、花田紀凱編集長はじめ飛鳥新社、および複数の弁護士と協議しつつ回答を準備し、12月5日付で朝日新聞社に発出、12月6日にはネット上で公開した。
反響は凄まじいものがあった。申入書を受け取った時と私が回答を発出した時のリツイートは、延べ1万件を超え、それらを見た人の合計は延べ117万人に及んだ。テレビで報じられた事件でもなく、私が有名タレントでもないことを考えると、異例な数字だ。
リツイートからごく一部を拾っても、次のような激励がほとんどだった。
<当たり屋みたいな(笑)朝日新聞にきちんとそつのない正論で答える小川さん 応援しています>
<言論には言論で勝負することを拒む言論機関(笑)>
<実に痛快な「完全論破」だなあ>
<涙が溢れてきました。小川さん応援しております>
<この回答文、電車の車内吊りにしたいくらいです(無理は承知ですが・・・)>
自慢したいわけではない。
長崎県平戸市の黒田成彦市長が11月28日にツイッターで、朝日新聞の「誤報」を理由に「市長室での購読打ち切り」を公表したところ、賛同と支持がネット上に溢れたという。
新聞社からの厳重抗議に一文筆家が回答したり、地方自治体の長がある新聞の購読打ち切りを発表しただけで、無数の賛同の声がネットを覆う。
異常事態と言える。
朝日新聞は「天声人語」で手前勝手な床屋政談を続けている場合ではない。これこそがまさに、天の声、人をして語らしむそのものではないか。
日本ABC協会によると、今年上半期の朝日新聞の販売部数は、前年同期比で32万5000部も減っている。実に時間換算にして1分30秒に1人、解約が続いているという惨状だ。銀行や生命保険ではそんな事態に突入したらどうであろう。他人事ながら、悪名高い押紙を勘定に入れなくとも、破綻的な事態ではないか。
こうして国民的な不信に油を注ぐことになった、朝日新聞の抗議文への私の回答文だが、朝日新聞に発出し、ネットで公開しているものは、原文を半分近くに圧縮したものだ。
そこで今回、朝日新聞への回答をフルヴァージョンで初公開することにした。
以下がその全文である。
◆言論には言論で勝負を
朝日新聞からの申入書への回答に先立ち、貴紙による一連の森友・加計報道について、総論的な結論から申し上げます。
朝日新聞は日本を代表する言論機関です。
法的構成が不可能な言いがかりで一個人を恫喝するのではなく、言論には言論で勝負していただきたい。
その為に、
1 貴社は私への申入書をネット上で公開した以上、この回答全文も責任を以て公開すること。
2 私の回答を歪曲せずに、性格を正しくとらえた記事で紹介すること。
3 今後、朝日新聞紙面に、森友加計報道に関する私の見解と貴紙の見解、また、両方の立場の有識者を公平に配分して、充分な質量の検証記事を載せること。
4 当該記事の執筆者や貴社幹部らと、私及び私と見解を同じくする有識者による公開討論をぜひ幅広く内外のメディアを前にして行うこと。
以上を強く求めます。
なぜならば、貴紙の森友加計報道は、この数か月、拙著のみならず、各界の幅広い有識者の批判にさらされており、さらには、総理、副総理、与野党国会議員による言及・国会質疑さえなされるに至っており、それ自体既に社会問題だからです。
「朝日新聞による2月から7月の森友・加計報道は「捏造」か否か。」
貴紙の森友加計報道が、ここまで社会的事件になっている以上、言論機関として、この問題の検証から逃げることは最早許されません。
問題を拙著による信用棄損に矮小化せずに、朝日新聞の森友加計報道のfactを開示し、社会問題としての堂々たる検証に進まれることを強く希望します。
私も微力ながら、本問題が日本社会の津々浦々まで知られ、多くの国民に問題意識を共有してもらえるようあらゆる努力を惜しまないつもりです。
朝日新聞と小川榮太郎――どちらが正しいかが問題なのではありません。最終的な結論が「捏造」と出ようと、貴紙の「表現の自由の範囲」だと出ようと、私は構わない。
◆朝日の要求不成立の理由
貴紙一連の報道はデモクラシーへの挑戦です。デモクラシーを支える根幹は主権者たる国民が信頼に足る政治情報を得ることにあるからです。
貴紙報道の実態と現実の森友加計事件の乖離を国民が知ること――それこそが今後の日本のデモクラシーの健全性を守る上で、全てに勝る課題であると確信しています。
この総論的結論をまず、広く日本社会に訴えた上で、以下回答申し上げます。
【回答】
この度、拙著『徹底検証 森友・加計事件 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』に対し、11月21日付の申入書において、貴社は、「弊社の名誉・信用を著しく傷つける不法行為」と断罪し、「厳重」な「抗議」の上、「謝罪」「訂正」のみならず、「損害を賠償するよう強く求め」てきました。
ところが、申入の中身を検討すると、記事件数に関する些末な訂正の要求Jを除き、具体的なfact上の争点がありません。
事あるごとに「言論の自由」を真っ先に叫び続けてきた貴社の立場から言えば、このような重大な文言を発出する以上、「言論の自由」を逸脱するfactに関する明白で著しい誤謬か、logicに関する明白で著しい嘘の事実構成が緻密に指摘されているべきですが、貴社申入項目は、殆どが私の「表現」か「意見言明」への苦情に過ぎません。これで賠償の要求とは、一般社会の通念に照らしても常軌を逸しています。
その点を指摘した上で、本申入書の私への訂正、謝罪、賠償の要求が成立しない根本の理由をまず申し上げます。
前書き第一節には<弊社に一切の取材もないまま、「虚報」「捏造」などと決めつけるのは弊社の名誉・信用を著しく傷つける不法行為だ>とあります。
申入書は項目を細分していますが、後で回答するように抽象的な苦情の羅列に過ぎず、貴社申入の核心は、この一文に尽きると解せます。
そこで、個々の論点の前に、この核心部分について、根本を述べましょう。
拙著は、貴紙報道を何らの検証なく「虚報」「捏造」と決めつけているのではなく、すべてfactとlogicに基づき、279頁に渡る著作全体を通じて、貴紙報道が「虚報」「捏造」だったことを証明する試みです。
◆事実とストーリーの乖離
拙著全体を通じての基本的な主張は次の通りです。
森友学園、加計学園、どちらの事案も、基本的にそこで生じていた「現実のプロセス」と、朝日新聞社が主導して読者、国民に対して提示してきた「ストーリー」が、全く噛み合わず、極めて乖離している。
貴紙の本年2月から7月にかけての紙面を一貫して追跡すれば、貴紙が描き出した「ストーリー」は、両事件ともに、端的に、安倍晋三総理大臣及び安倍夫人、または安倍政権の、強い、決定的な、且つ不正な関与があるとの疑念を広く国民に抱かせるものでした。
それに対し、私が、膨大な関係文書の精読と関係者への取材により発見し直した経緯は、それとは全く異なるものでした。事実上安倍氏が直接且つ不正にこの両問題に関与している可能性はあり得ないというのが結論です。
この森友・加計を巡る私が描く「事実」に対し、貴紙が紙面で作り上げてきた「ストーリー」との明白な乖離の全体を指して、私は「虚報」「捏造」と呼んでいます。
これは、白を黒、鳶を鷹と言うような個々の事実細部における「捏造」ではなくとも、実はそれ以上に深刻な、個々の正確な事実を元にした、構図上の明白かつ客観的かつ否定しようのない「捏造」による別ストーリーの創作であるというのが、私の本書での評価なのです。
したがって、貴紙が、「虚報」「捏造」という私の研究の結論を不服とするならば、本書全体の証明が、詳細なfactとlogicによって、全体として過ちであるということになる逆証明を付した上で、改めて抗議なり賠償なり、証明内容に相応な申し入れをしていただきたい。今回の申入書は全く逆証明が出来ていません。
◆読者に誤解を与える「捏造」
第2に、前書き第2節についても触れておきます。
<「加計学園」報道に関して、弊社がNHK幹部と「密議」や「共謀」して「組織的な情報操作」を行ったと記載するなど、荒唐無稽な持論を展開しています>とあります。
私は、本書該当部分において、貴紙の紙面と、NHKの報道内容を、時系列を通じ、また、このスクープに関連した情報を深く知り得る人物への取材を通じて、ロジカルな推定をしています。
「推理」であることを明記し、「事実」「伝聞」「推定」を正確に描き分け、読者に誤解を与える「捏造」にならぬよう、細心の注意を払って記述しています。
該当箇所における私の記述の目的は、
@朝日新聞、NHKのスクープ文書が別である上、呼応に不自然さがあること
A幾らでも主観や嘘を含み得るメモ書きを大胆にも1面トップに据えた驚くべき貴紙の自信
B国家公務員法の守秘義務違反になる現職職員の証言リスクという多元方程式を解くために、時系列の詳細に立脚して推量することにあります。
かねてから安倍叩きの意図を持って共謀する一群の報道関係者ネットワークを仮定する方が、偶然の連鎖による説明よりも合理的だが、現時点では当事者そのものへの取材によって明らかになる性質のものではないーそれが今回の事態です。
私が意図的に採用した「推量」という方法は、そのような状況に対して、現実に生じていた事実そのものでなくとも、事柄を巡る大きな構造を暴き出すという機能を持っているのです。
これは、証言を新たに得ることができない、限られた歴史資料しかない過去の問題に対して、歴史家が史料の信憑性や史料と史料の隙間を検討しながら、あり得たはずの事実の近似値を炙り出す史料批判の方法に近似します。何らの物証もなく、信憑性の高い証言もないまま安倍首相夫妻の関与、後には「忖度」があったかもしれないと主張し続けている貴紙の当て推量とは次元が違う方法的な仕事だと自負しています。
さらに、前書き第3節において、申入書は次のように述べています。
<弊社の一連の報道は、森友学園に国有地が大幅に値引きされて売却された不透明性・不自然さを指摘するとともに、約50年ぶりとなる加計学園による獣医学部の新設をめぐり、公平で適正であるべき手続きに疑念を抱かせる複数の文書の存在を明らかにしたものです>
この文書自体が嘘です。
第1に貴紙は、森友学園への大幅値引きの不透明性と不自然さについて、事実に基づいた報道を殆どしていません。むしろ、実際に関西の現場で生じていた事実取材記事、公開されている議事録に基づく客観報道は極めて僅かで、大見出しの殆どは、安倍総理、安倍政権、安倍夫人に関わる疑念であるとの誘導が続きました。それが、現実の森友問題といかに乖離しているかは、本書がつぶさに論証しております。
もし本書が主観の産物に過ぎないというのなら、貴紙の一連の報道が、国有地の大幅値引きの「不透明」で「不自然」なプロセスそのもに正確に照準を当てた真相究明のための報道となっていたことを、貴紙報道の紙面検証を通じて、明らかに示してください。
第2に、申入書には「複数の文書の存在を明らかにした」とありますが、これも「嘘」です。貴紙において、文科省関係者から入手したとされる文書は、ごく一部、とりわけ「総理のご意向」及び「官邸の最高レベルが言っている」の部分を極度にクローズアップし、それ以外の殆どを報じていないことは記事量比較をすれば容易に証明できることだからです。
何より深刻なのは、貴紙が、スクープ文書8枚全部の公表を全くしておらず、そこから浮かび上がる時系列を全く報道していないことです。
このスクープ文書の「不透明」「不自然」な扱いこそは、拙著の朝日新聞報道批判の核心部分であり、この核心に触れずに、私にいかなる抗議をしようとも、それは貴紙報道の「虚報」「捏造」を立証した拙著への有効な批判を構成し得ないのは明白です。
◆文書をどう読み解くか
申入書前書き第4節には、<弊社に一切の取材もないまま、根拠もなく、「虚報」「捏造」などと決めつけるのは、弊社の名誉・信用を著しく傷付ける不法行為>だと指摘していますが、そもそも本書の性質上、貴社公式窓口や取材班への公式な取材は意味をなしません。
私の本書執筆の基本的なアプローチは次の三点です。
1 朝日新聞該当記事及び他報道機関の必要な関連記事の収集と熟読、解析。
2 朝日新聞紙面からは殆ど全く組み立てられなかった「事の実際の経緯」を、森友・加計問題の「一級資料」である国会、府議会、国家戦略特区関連会議、大阪府教育審議会、国有財産近畿地方審議会などの膨大な議事録を独自に収集して、熟読、解析。
3 以上2つのアプローチでも明らかにならないか、朝日新聞が故意に隠蔽していると推定される事柄について、独自に関係者に取材。
以上の3段階です。
私が執筆経過で驚愕したのは、貴紙の膨大な当該記事群数百本を幾ら読んでも、2に上げた森友加計問題の「一級資料」の読みから浮かび上がる経緯が、殆ど全く見えてこないことでした。
貴社にこそ厳しく、改めて問い直したい。
なぜ貴紙は最も信頼に値する「一級資料」たる各種公的文書が明らかにしている事案の細部や構造を、膨大な報道の中で殆ど伝えていないのですか。貴紙読者および国民の前で、この私の問責に対して説得力ある弁明をすることが、私を問責するよりも先に貴社がなさるべきことではありませんか。
その上で、第一に、拙著の最も基本的な論理構造は、貴社の記事と、現実の森友・加計問題の乖離を明らかにすることにあります。記事に関しての取材を貴社にする意味がありません。何故なら記事そのものは既に公表されており、それらの「文書としての性格」をいかに読み解くかが本書の主目的だからです。
◆著者への名誉棄損
一方、2に示した一級資料の熟読はもとより、3に示した通り、朝日新聞が明らかにしていない件に関する森友・加計問題関係者に対する必要と判断された取材は可能な限りしております。
私が貴紙の虚報を謀略と推定している箇所では、森友学園スクープ、加計学園スクープいずれも、当然、関係者に取材し、その上で、「事実」と「伝聞」と「推理」を明確に描き分け、「捏造」によって読者を騙すことにならぬよう細心の注意を払って執筆しています。
さらに、関係者への取材としては、本文から明確にご理解いただける方々や団体以外に、首相官邸関係者数名、大阪航空局、国土交通省、大阪府教育課、北野法律事務所、藤原建設、大阪音楽大学、森友学園関係者、農林水産省、加計学園、朝日新聞のスクープに関する情報提供可能な関係者などに対して申し込み、その一部は可能であり、また別の一部は、現時点では応じ難いとして断られました。
以上のような方法論上の自覚と理由があり、それに則って、必要十分な資料の読みと取材に基づいて書かれた拙著を、申入書は貴社窓口や取材班への取材がないことを以て「一切の取材もないまま、根拠もなく」と決めつけています。
明確に事実に反する私への名誉棄損です。
【16項目への回答】
(一)
<「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」及び「無双の情報ギャング 朝日新聞に敬意を込めて捧ぐ」との記載>について<上記の記載は、事実に基づかない、弊社に対する著しい誹謗中傷であり、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです>とあります。(著者注:「上記の記載は」以下は全項目で繰り返されるので以下「事実に反する」と略します)
【回答】
@ 既述の通り「報道犯罪」「情報ギャング」は本書全体を通じての証明事項です。訂正を要求するなら拙著全部の論理構造の過ちを逆証明してください。
A 上記記載は、「事実」でなく、私の「意見の要約的表現」です。それに対して貴社がこのような通告を行うことは巨大メディアという権力による個人の執筆者の表現の自由の侵害です。仮にこのような申入を大企業や大組織が、自らを批判する著書に気軽に発出できる社会を許せば、立場の弱い個人の著者は自由な批判や表現が不可能になります。自由社会の存立を危うくする「危険な一線を越えた指摘」と言わざるを得ません。
(二)
<弊社の「森友学園」「加計学園」に関する一連の報道にねつ造はありません>
【回答】前項同様、本書全体が貴紙の捏造を構造的に論証しております。全体の論証を説得力を以て反証してください。
(三)
<仕掛けた朝日新聞自身が、どちらも安倍の関与などないことを知りながらひたすら『安倍叩き』のみを目的として、疑惑を『創作』したとの記載>は事実に反する。
【回答】森友問題において土地の大幅値下げに安倍氏の関与がないという認識は、国会質疑当初の段階から、民進党・共産党議員の間でさえ、了解事項でした。従って、国会質疑、大阪府また近畿財務局など関連する議事録という「一級資料」、関係者の取材を重ねれば、この土地値下げに関して安倍氏の関与があるとの見解を持つことは極めて困難だとの判断が本書の結論です。
一方、加計学園問題に関しても、朝日新聞がスクープした文科省文書8枚が、状況に当てはめて解釈すれば、安倍氏の意向なるものを明確に否定する内容と言えます。また、前川氏の証言は、物証や傍証がなく、7月の国会参考人質疑で、和泉補佐官とのやり取りなど貴紙が1面トップでスクープした重要部分が、事実に立脚しない一方的な当て推量であることが本人証言から明らかになっています。これらをはじめとして、拙著は、全体として当該項目に関して証明していますので、説得力ある反証明をお願いします。
◆説得力ある反証を
(四)
<弊社は「安倍叩き」を社是としたことは一度もありません>
【回答】「社是」はむろん、会社の正式な意味の社是と言っているのではなく、比喩表現です。また、該当箇所は、故三宅久之氏と故和若宮啓文氏のやり取りを紹介し、若宮氏が「安倍叩き」を「社是」と言ったことを否定する内容を紹介した上で「社是」という言葉を用いています。
「比喩表現」への抗議、朝日新聞側が否定している事実を紹介しているのに抗議、一体、貴社広報部は常識がなさすぎるのではありませんか。
(五)
<「朝日の記者側から、何らかの訴訟を構成すれば記事にできるとの助言があった末でのこの記事だという」との記載。豊中市議の木村真氏に対し、弊社記者が起訴を促すような助言をしたことはありません>
【回答】貴紙記者から当該件を直接聞いた報道関係者への取材に基づいた記述であり、慎重を期し伝聞としています。
(六)
<共産党や民進党の議員による国会質問や答弁について「初報をスクープした朝日新聞は、これらの質疑や会見内容を全く伝えていない」との記載。弊社はこれらの質疑や会見を少なくとも二回、紙面で報じています>
【回答】私の該当箇所の「全く」の文意は、「質疑や会見内容」の「主要な全容」を伝えていないことの強意表現であることは、文脈から明らかです。
とりわけ(2017年2月)18日付朝刊の国会論戦報道を「質疑を伝えている」として提示されていることに、驚きを禁じ得ません。
(2017年2月)17日の国会議事録を確認すれば明らかなように、共産党の宮本岳志氏、民進党の福島伸享氏の質疑は、森友学園の学校法人認可適当と国有地払い下げについて、全体像を相当程度炙り出しています。ところが貴紙報道は、それらを1行も伝えず、質疑中、安倍首相が「売却に自分や妻が関係していたら議員を辞める」と発言するなど、安倍氏に関連した部分のみの報道に終始しているではありませんか。
貴紙が申入書前書き第3節に言明しているように、<森友学園に国有地が大幅に値引きされて売却された不透明性・不自然さを指摘>したかったならば、正にこの両氏の質疑を丁寧に紙面にすれば、問題の構図が読者に伝わり、それが安倍首相と関係がないことも明らかになったはずです。
この私の主張に対して、説得力ある反証を願います。
◆見出しによる「虚報」
(七)
籠池氏の国会証人喚問時の貴紙について拙著が<見出しは上から順に、『籠池氏「昭恵夫人から、口止めとも取れるメール」』『お人払いをされ、一〇〇万円を頂き金庫に』『夫人から財務省に、動きをかけて頂いた』」と昭恵叩きの虚報三連発>と記載している。
しかし、<記事は、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる可能性がある参議院予算委員会の証人喚問における籠池泰典証人の発言の要旨を記載したもので、上記見出しは発言内容の重要な部分を見出しとしたものです。籠池氏が上記のとおり発言したことは真実であり、「虚報」には該当しません>
【回答】「虚報」です。<発言内容の重要な部分>と指摘がありますが、この日の証人喚問では昭恵夫人は主要主題とはなっていません。
貴紙は証人喚問議事録摘録の1面全部で、昭恵夫人をターゲットにした見出しのみを3本出していますが、証人喚問議事録に基づけば、昭恵夫人に関する質疑は、文字数換算にして全体の2.9%に過ぎません。記事量のみで重要度は測れないにしても、当該残りの97.1%に重要な論点は幾つもありました。
それどころか、この日の貴紙は1面、社説を始め、全面にわたり昭恵夫人を見出しに仕立てた個人攻撃を行っています。
私は見出しによる「虚報」と評価します。購読者に紙面で、私の評価が正しいか否かを問いかけてみられては如何ですか。
(八)
朝日新聞社がスクープをした8枚の文書に関し、<『総理の意向』『官邸の最高レベル』という、安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず、未公開のまま、今日に至っている>とあるが、朝日新聞はその内容を(2017年)5月17日、18日、19日の紙面で紹介しており、<「安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず」という指摘は事実に反します>。
【回答】事実に反しません。
私のこの文書に関する主張は冒頭にも申しました。確かに5月17日、18日、19日の紙面では、文書の他の箇所が若干紹介されています。
しかし、8枚の文書をスクープした以上、その文書全体を読者へ提示するのが報道の基本です。且つ、全体像から読み取れる時系列を読者に解説するのも、スクープした新聞社の責任です。貴紙はそのいずれも全く果たさず、文書が明らかにしている事実関係とはまるで異なる恣意的なストーリーを描き続けました。
8枚の文書は私が拙著256頁から268頁において、時系列に沿って解説した通り、事実上安倍総理の関与があり得ないことを示す決定的な文書と言えます。
もし拙著記述が事実に反すると言うのなら、時系列、「一級資料」たる各種議事録、文科省文書の読み、関係者の取材、国家戦略特区の決定プロセスなどから、私の組み立てた「事実」と異なる、貴紙の主張する「事実」を説得力を以て構築し直し、ご提示いただけませんか。
◆やくざの恐喝と変わりない
(九)
<弊社の記者や幹部が、加計学園の問題について「ある人物」や「NHKの人間」と一堂に会したことはありませんし、報道について共謀したこともありません>
【回答】これは、私の推量部分です。推量部分に関する私の方法については既述の通りです。
(十)
<「朝日が裏取りもせずにスクープを決断」とあるが、弊社は複数の取材源に確認したうえで該当記事を掲載しています>
【回答】この拙文の切り取り方は異常・不正です。156頁の拙著該当箇所を少し広く引用します。
<今回のスクープ記事には「加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9〜10月に文科省が作ったことを認めた」とあり、入手先を書かず、確認者が「文科省関係者」1人だということが分かる。要するに、この文書は現役職員ではない「文科省関係者」が単独で持ち込み、その人物自身が文書の信憑性を保証したことになるわけである。
後に判明したところによれば、この文書を共有していたのは獣医学部新設に関わる当時の文科省職員10数人だった。当時この文書を共有し、その後退職し、1人の証言しかないのにNHKと朝日新聞が裏取りもせずにスクープを決断できる程、社会的地位のあった人物ーさすがにそういう人物は1人しかいまい。言うまでもなく、この後、「安倍の意向」を一貫して主張し続けることになる前文科省事務次官・前川喜平自身だ>
朝日新聞の記事内で、「文科省現役職員」、または「文科省の複数の職員」という言葉が出て来るのは、初報から20日も経った、(2017年)6月6日です。貴紙は取材源の記述には正確を期すという一般的な判断をもって、取材源を推測したのがこの箇所です。
貴紙が「裏取り」をしていないことに力点はなく、「裏取りをしなくてもスクープが打てる信頼度の高い情報源」ということが文脈です。
こうした「推量の文脈」と無関係にたった17文字のみを切り取って、「事実」に反すると捻じ込んでくるのは、やくざの恐喝と変わりません。貴紙記者はこんな恣意的な引用を日常なさっているのでしょうか。
◆よく読んでください
(十一)
<「実は、朝日新聞は、加計学園問題を3月14日の第一報からこの日まで2ヶ月もの間、小さな記事3点でしか報じていない」(158頁)との記載。弊社はこの間に少なくとも10本の記事を全国版(東京本社発行)に記載しています>
【回答】私は、貴社の該当記事を、いくつかのキーワードから多面的にネット検索で収集し、紙媒体と照応する方法を取りましたが、指摘のあった記事の多くがヒットしておらず、記載した記事本数が不足していました。
ご指摘の記事を検討しましたが、該当しない記事や素粒子まで含まれております。次回増刷分より「小さな記事3点」を「わずか10点にも満たぬ記事」と訂正します。
(十二)
【回答】これも(九)と同断であり、推測であることを明記した場所ですので、事実を争点とする主張は失当です。
(十三)
<「現時点では取材拒否が多く」(160頁)との記載。弊社の取材窓口にはもちろん、弊社の取材班にも、貴殿からの取材申し入れはこれまで一度もありません>
【回答】該当箇所は、貴社取材窓口、または取材班への取材が拒否されたと書いていません。取材全般についての私の見解は既述の通りです。
(十四)
<「全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報」「確信を持って誤報、虚報の山」「前川喜平たった一人の証言で」とは何を指すのか及びその根拠をお示しください”とあります。
【回答】根拠は、拙著4章・5章全体です。よく読んで正しくご理解ください。
また、この項には、<弊社は文部科学省関係者や当事者、関係者に幅広く取材をし、報道しております>とありますが、この問題に関し、貴社は、安倍総理、加戸守行氏、義家弘介氏、萩生田光一氏、文科省担当課担当責任者ら、特区ワーキンググループの委員諸氏に取材し、その主張を充分に報じていますか。
もしそうした取材と事理を明らかにするに足る充分な報道があれば、具体的にお示しください。
◆萩生田氏に関する「捏造」
(十五)
<弊社は萩生田氏の言い分を度外視しておらず、本年6月16日から17日にかけての朝夕刊で3回にわたり見出しを付して萩生田氏の言い分を報じています>
【回答】萩生田氏に関する貴紙報道について、拙著では分量の関係で7行に纏め、詳述しておりませんが、実は大変深刻な「虚報」「捏造」が行われているので、この機会に改めて正確に指摘しておきます。6月15日文科省発表文書中に「指示は藤原審議官曰く官邸の萩生田副長官からあったようです」と二重の伝聞が書かれていたのみなのに、貴紙は1面トップで<「官房副長官が指示」メール>の大見出しを打ち、2面全面で「官邸関与 深まる疑念」と大きな記事にしています。これを見る読者は、誰も数文字の二重の伝聞だけが根拠とは思いません。私見ではこれは見出しによる「捏造」です。
また、6月20日文科省公表文書の中身を、21日付貴紙は「萩生田氏発言」と題して<「総理は18年開学」と期限>と大見出しを打っています。ところが、記事の終わりの方には松野文科相が<「内容に不正確な点があった」として萩生田氏に「大変迷惑を掛けた」と陳謝した>事実を報じています。
発表当事者である文科大臣が不正確で陳謝した文書内容を大見出しに打つのは、驚くべき「虚報」ではないでしょうか。この私の見解が非合理なものであるなら説得力ある反論をお願いします。
(十六)
【回答】(八)と同様なので、回答を省きます。
以上。

◆指摘項目@
・朝日新聞の主張
「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」及び「無双の情報ギャング、朝日新聞に敬意を込めて捧ぐ」は、事実に反する。
・著者の主張
本書全体の検証の結論だ。
誹謗と言うなら本書全体の論証に有効な反論をせよ。
◆指摘項目A
・朝日新聞の主張
弊社の「森友学園」「加計学園」に関する一連の報道に捏造はない。
・著者の主張
本書全体が貴紙の捏造を証明している。
◆指摘項目C
・朝日新聞の主張
「安倍叩き」を社是としたことは一度もない。
・著者の主張
「社是」は「事実」記述ではなく「比喩表現」。常識ある大人なら誰でも分かる。
◆指摘項目E
・朝日新聞の主張
国会質問や答弁について「初報をスクープした朝日新聞は、これらの質疑や会見内容を全く伝えていない」とあるが2回、紙面で報じている。
・著者の主張
該当箇所の文意は、「質疑や会見内容」の「主要な全容」を伝えていないことの強意表現。紙面は森友問題の適切な全体像を全く伝えていない。
◆指摘項目G
・朝日新聞の主張
文科省文書8枚について、(2017年)5月17日、18日、19日の紙面で報じており、「文書内容をほとんど読者に紹介せず」との指摘は事実に反する。
・著者の主張
朝日新聞は事実解明に不可欠な8枚の文書の全文公開も解説も1度もしていない。安倍関与を匂わせる部分以外殆ど報じていないことは記事量ベースで容易に証明可能。
◆指摘項目HIK
・朝日新聞の主張
「ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に介し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することが共謀したとみる他ないのではあるまいか」との記載は、事実に反する。
・著者の主張
「事実」記述部分ではない。貴紙記事、NHKスクープの熟読と時系列の検討、取材をもとにした推量である旨明記してある。
◆指摘項目J
・朝日新聞の主張
「小さな記事3点でしか報じていない」というが、該当期間中に加計学園問題を報じた記事件数は10本。
・著者の主張
「わずか10本足らずの記事でしか報じていない」と次版から訂正。
◆指摘項目L
・朝日新聞の主張
「現時点では取材拒否が多く」との記載に対し、朝日新聞取材窓口、取材班への取材申し入れは1度もなかった。
・著者の主張
該当箇所は、朝日新聞取材窓口または取材班への取材申し入れの記述ではない。
◆指摘項目M
・朝日新聞の主張
「全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報」「確信を持って誤報、虚報の山」「前川喜平たった1人の証言で」に対する根拠を示せ。
・著者の主張
本書第4章・5章が根拠。
全文丁寧に読み直せ。

2017/11/21
「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」の著者・小川榮太郎氏と飛鳥新社への申入書
http://www.asahi.com/corporate/info/11207014

●安倍晋三首相は「報道犯罪」の被害者である。
まるで「安倍疑惑」であるかのような攻撃が執拗に続いた森友学園問題、加計学園問題は、いずれも安倍首相とは何ら全く関係のない事案だった。
森友学園問題は、大阪府豊中市の零細な幼稚園経営者と地方の役所の間で生じた、交渉や駆け引きに纏わる不明朗処理の問題に過ぎない。安倍首相に関係がないどころか、国政案件とさえ言えない。利権がその背後にあるわけでもない。
加計学園問題に至っては「問題」すら存在しない。
安倍首相と新たな獣医学部を立ち上げようとした学校傾経営者、加計孝太郎理事長の友人関係による情実が取り沙汰され続けたが、そもそも獣医学部新設を10年にわたり牽引してきたのは加戸守行・前愛媛県知事であって、加計孝太郎理事長ではない。
また、獣医学部新設を一貫して強く主張してきたのは、安倍首相ではなく国家戦略特区諮問会議やその下部組織となる国家戦略特区ワーキンググループの民間委員たちだ。彼らは、52年もの間、文科省の非合理な規制で獣医学部が認可されずに来たことを強く問題視し、事の推進を主導した。
加計学園問題のどこを探しても安倍首相ー加計ラインは浮かび上がってこない。
本当の構図は、長年獣医学部新設を阻んできた勢力と、規制を打破して獣医学部新設の為に動いた人達の間の戦いだったのである。
それを左派マスコミは、森友学園の籠池泰典夫妻と安倍晋三夫妻、加計学園の加計孝太郎理事長と安倍晋三首相の個人的な関係による不正な優遇があったかのような印象操作で、安倍首相を個人攻撃し続けた。
安倍晋三は首相であり、しかも近年稀にみる安定政権の長だ。政権批判は必要であり、安倍首相の側も、権力者として通常人を遥かに超える監視や批判に耐えねばならない。
が、総理としての権限行使から一歩離れれば、安倍晋三もまた、人権を保障されるべき一個の弱い人間に過ぎない。証拠もなく、風評だけで、どんな誹謗中傷でも総理なら耐えろと要求するのは、深刻な人権侵害であり、権力批判として許容される範囲を超えている。
安倍首相への批判は、政策論争でなければ、あくまで物証に基づく権力の違法な悪用のみに絞られる。
「安倍叩き」の間、安倍首相による不正、権力乱用の物証はただの1つも発見されなかった。
「もり・かけ疑惑」は国を巻き込んでの「冤罪事件」だったのである。
しかも左派マスコミによる安倍首相追及がいつの間にか度を越して、自ずから踏み外しがあったという自然発生的な熱狂ではない。
加害側には冤罪事件を計画、実行した「主犯」が存在するのである。
いずれの案件も、朝日新聞である。
朝日新聞が仕掛け、テレビが横一線でワイドショーに取り上げて、他の新聞が疑問視しても、それらを全て圧殺して「安倍疑惑」に仕立てていったと言ってよい。森友学園問題の時には幾つもの偶然が重なり、加計学園問題の時は全てを周到な計画の下にー。
何よりも衝撃的なのは、仕掛けた朝日新聞自身が、どちらも安倍首相の関与など無いことを知りながら、ひたすら「安倍叩き」のみを目的として、疑惑を「創作」したことだ。
朝日新聞は、森友学園の国有地売却問題を今年2017年(平成29年)2月9日に第一報した。ところが、その記事を読み、政治案件として後追い取材をしようとした他社の記者に対して、朝日新聞の現場記者は
「これは政治案件ではありませんよ。幾ら叩いても政治の話には絶対になりませんから」
と答えていたというのである。
しかし、現場記者のそうした認識とは裏腹に、この案件を、朝日新聞はこの後、社の総力を挙げて「安倍疑惑」に仕立てあげていく。
加計学園問題も同様だ。
では、この「もり・かけ」騒動の最中、我が国はどんな環境に置かれていたのか。空疎なワイドショー騒ぎで政治が占拠されていい程、暇で平和だったのだろうか。
言うまでもなくそれどころではない。
北朝鮮有事に巻き込まれつつある、その只中であった。
森友学園騒ぎが始まった直後の2017年(平成29年)2月12日、安倍首相が首脳会談のために訪米している最中に、北朝鮮は移動式発射台から新型弾道ミサイル「北極星2」を日本海に発射した。それ以来、北朝鮮は、日米中の非難をよそにミサイル実験を繰り返し、加計学園問題が勃発する直前の5月14日には、弾道ミサイル「火星12」が高度2000km以上に達した。7月5日には、北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)は、アメリカを射程に捉えたと報道され、8月29日早朝には日本の頭上をミサイルが通過、太平洋上に着水した。9月3日にはかつてない規模の地下核実験を強行している。アメリカの3大ネットワークやヨーロッパのニュース番組でさえ、北朝鮮問題を速報や特番で伝える頻度が急増しているのに、ミサイルを撃ち込まれる現実可能性の高い我が国では北朝鮮そっちのけで「もり・かけ」劇場に終始していたのである。
半年間、国会は、集中して、政府に北朝鮮情勢と安全保障政策を質し、また、避難訓練体制の整備や避難場所の確保へと動くべきではなかったのか。左派マスコミは国民に周辺環境や日本の有事体制の不足を報道し、世論喚起し続けるべきではなかったのか。
ところが、彼ら左派マスコミや左派野党は事態を全く放置し、まるで共闘するかのように、安倍首相に関係のない「疑惑」で、安倍首相その人を消耗させ、安倍政権の地盤を崩し続けた。
これは右派の政治家・安倍晋三への、リベラル・左派による攻撃というイデオロギーレベルの政治闘争を超えている。国民の生命や国土の保全を踏みにじる、戦後最大の国民への背信行為ではあるまいか。
リアルな北朝鮮危機に置かれている今、我が国は、朝日新聞をはじめとする左派新聞ー左派テレビー左派月刊誌・週刊誌が連動しての、国の内部崩壊の危機にも又置かれていたのである。
国民に切実に問いたい。主権者たる国民の1人として、あなたはこの2017年秋の国会でもそれを放置するのか。そして「虚報」で政治をぶち壊し続ける「報道機関」の存在を、指をくわえて見ているというのか。
是非真剣に考えていただきたいと思う。

違法性を主張するなら、証人喚問による自白の強要に頼らず、物証を揃えて証拠を提示しろ。
朝日新聞の次の社説を読むと、現職総理に対するこの見下したような物の言いようは、ただ事ではあるまい。
朝日新聞は考え違いも甚だしい。
安倍首相に違法性があると言うのなら、それを追及する側に立証責任があるのは至極当然なのだ。
相手の自白に頼るやり方、自白の強要は卑劣な行為だ。
違法性があるというのならば、そう主張する側に物証を揃えて証拠を提示する義務がある。
(社説)加計学園問題 論点をすり替えるな
2017年5月31日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12964080.html
<特区であれ、通常の政策であれ、行政府として、それを進める手続きが妥当であると国民や国会から納得が得られるようなものでなくてはならない。なのに首相は自ら調べようともせず、私が知り合いだから頼むと言ったことは一度もない。そうではないというなら証明してほしい」と野党に立証責任を転嫁するような発言をした。考え違いもはなはだしい。(2017年5月31日)>

◆蠢動
東京都千代田区内神田。繁華街から少し外れた静かな路地にある居酒屋「UZU」。安倍晋三総理大臣の夫人、昭恵がオーナーの店だ。自身、日本酒が大好きな昭恵が長年の夢を実現して、自然材の素朴な店の佇まい、徹底的に食材にこだわる酒肴の店を出したのは2012年10月10日のこと。
日頃は、そうした昭恵の食に対する姿勢に共鳴する客筋が出入りする、静かな店だ。
・・・が、今日はいつになく、騒然としている。2017年6月21日、街がすっぽりと夜闇に包まれ、神田の繁華街が酔客に溢れ始める午後8時、初老の男が報道陣同伴で現れたからである。男は店に入り、店員に何かを渡そうとしている。
が、店員からは拒否された。
拒否は予想されたところだったのだろう。
店を出た男に、取材班がスポットライトを浴びせる。
今や、日本で最も顔を知られることになった男の1人、籠池泰典・前森友学園理事長である。
夕闇から浮かび上がった籠池は、ぽつりぽつりと取材に答え始めた。
・籠池:今日はね・・・寄付で頂いた100万円をね、お返しせなあかんと思って持ってきたんですよ。
・記者:実際その100万円は見せて、なんて言って渡したんですか?
・籠池:店で、これを渡して欲しいんだけどということでね・・・。
・記者:100万円、もう1度見せてもらっていいですか?
・籠池:いいよ。
表と裏をさり気なく見せ、ポケットに戻そうとしたその時、
・記者:100万円・・・ちゃんと、100万円入ってますか?
・籠池:100万円入ってる。
・記者:今真ん中、白い紙のように見えましたけど・・・。
・籠池:ああ全然、それは違う・・・まあそれでよろしい・・・。
そそくさとその場から去ろうとした籠池に、報道陣は追い打ちをかける。
・記者:封筒さっきのもう1度見せてもらっていいですか?上と下が1万円、2万円しか入っていないように見えましたが?
・籠池:もう帰りますわ、帰ります。

2万円サンドイッチを100万円と言い張る籠池泰典コントに日本中が爆笑
http://netgeek.biz/archives/98334

テレビという媒体は恐ろしい。
今日ではもはや見せっ放し、言い放っしで逃げることはできない。テレビ画像は不特定多数の視聴者によって録画、保管され、少しでも怪しい点があれば、ネット上に匿名の個人が公開し、無数の人間によって検証、拡散されていゆく。
この場面もたちどころにネットに拡散され、スポットライトを浴びた「100万円」の束が、実は、白い紙98枚を上下だけ1万円札で覆った、いわば「偽の100万円束」だったのである。
これが2017年2月から5月にかけて、3カ月以上、日本の国会とマスコミを独占し続けた「森友学園問題」の顛末だ。
籠池は、偽証が許されぬ国会の証人喚問(2017年3月23日)で、首相夫人の安倍昭恵から100万円を密室で寄付金として受け取ったと証言した。その男が、1万円札に挟まれた98枚の紙っぺらを持参して、「金を返しに来た」と昭恵の経営する店まで押し掛けた。しかも、テレビカメラの前でその玩具の100万円を平気で見せて、その場でばれた。
国会での証言の信憑性を問うのも馬鹿馬鹿しい人間だったのである。
国会では2017年2月14日から5月9日までの衆参の予算委員会(合計22日)で「森友問題」が取り上げられた。合計約36時間40分。これは予算委員会の審議全体(約105時間)のうちの約35%にも上る。国会の開催には1日3億円かかると言われていることから単純計算すれば、予算委員会だけで約23億円(3億円×22日×約35%)がこの人物を巡る「疑惑追及」に消費されていたことになる。国会全体での質疑時間は更に倍加するであろう。
戦後最大の安全保障上の危機の最中、国民と国土を守る喫緊の議論は何1つ行われず、天下の大事のように「玩具の100万円」を返しに来た人物の後を追いかけ、マスコミも又それを煽り続けた。
そして誰もそのことの腐敗・堕落の深刻さに絶望もせず、責任の追及に声を上げる者もないまま時は過ぎていった。
しかし、「森友問題」とはそもそもどんな問題であり、まず、何が問いとして投げかけられたのであったか。我々は、籠池劇場の「印象」の羅列に振り回されて、実は「問題」が何だったのかさえ、ほとんど誰も分かっていないのではあるまいか。

◆発端
それは2017年2月9日、客観を装った朝日新聞の記事により、さりげなく始まった。
<■学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か
2017年2月9日05時03分
http://www.asahi.com/articles/ASK264H4YK26PPTB00J.html
財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。>
社会面を7段使った比較的大きな記事である。
大阪の学校法人が近隣国有地の10分の1の値段で、国有地を払い下げてもらっていた。この国有地売却について非公表となっているために、地元豊中市の市議会議員が、大阪地裁に公表を求めて提訴したというのである。
もっともらしい。
だが、全国紙7段の記事にすることではあるまい。地元市議が、公表を求めて地裁に提訴したに過ぎない。公表した結果、問題がなければ終わる話だ。調査したところで、違法性の可能性は低かろう。財務省が足の付く違法取引などするわけないからだ。大阪府議会で問題になるのが関の山であって、朝日新聞全国版で7段抜きの記事というのは、不自然だろう。
当然だ。
これは仕掛けだったのである。
この記事の終わりには以下の1段が付け加えられているのを見れば、それは明らかだ。
<森友学園が買った土地には、今春に同学園が運営する小学校が開校する予定。籠池理事長は憲法改正を求めている日本会議大阪の役員で、ホームページによると、同校は「日本初で唯一の神道の小学校」とし、教育理念に「日本人としての礼節を尊び、愛国心と誇りを育てる」と掲げている。同校の名誉校長は安倍晋三首相の妻・昭恵氏。>
籠池は2011年まで日本会議大阪の役員だったが、その後、同会とは関係がない。いずれにせよ、この件は、菅野完の『日本会議の研究』(扶桑社新書)以来、1年以上続いていた日本会議叩きー日本会議関連本だけで6冊、朝日新聞も大型連載を組んでいるーの取材から浮かび上がったのに違いない。しかも、「日本初で唯一の神道の小学校」「愛国心教育」という点をわざわざ報じているのは、森友問題が当初、イデオロギー闘争として着眼されていた事を示していよう。本来なら、土地取得非公表という行政事実と、学校法人の教育理念は関係ないのだ。
そして、勿論、何よりの肝は、文末にさり気なく添えられている「同校の名誉校長は安倍晋三首相の妻・昭恵氏」。
第1次安倍政権は朝日新聞主導の「安倍叩き」によって退陣に追い込まれた。その際、朝日新聞の元主筆・若宮啓文が語ったとされる「安倍叩きは朝日新聞の社是」という言葉を政治評論家だった三宅久之から聞いた。
時の流れは恐ろしい。三宅も若宮もその後、相次いで鬼籍に入り、今はもういない。が、生前三宅から聞いたところによると、若宮が三宅に電話をかけてきて「僕、そんな事言ったかなあ」と抗議し、三宅が「じゃあ、俺が作り話をしたとでも言うのか」と応酬したことがあったそうである。朝日新聞からは発言は事実ではないと抗議があった。
が、朝日新聞はそんな建前論を振りかざす必要はなかったのだ。
最近の森友ー加計スキャンダルの最中にも、民進党を離党した長島昭久代議士が次のようなツイートをして話題になったのは記憶に新しい。
<一昨日暴露された加計学園をめぐる文科省の内部文書の真贋については予断をもって語ることはできませんが、昨日たまたま話した朝日新聞のある幹部の表情には、社運を賭けて安倍政権に対し総力戦を挑むような鬼気迫るものがありました>
(2017年5月18日19時34分)
「安倍叩き」は今なお「朝日新聞の社是」なのだ。
それにしても、この森友学園の一件は、情報の仕込み元からしてどうにも胡散臭い。
何しろ、豊中市議会議員とは言え、この問題を提訴した木村真市議は普通の意味での議会人とは到底言えないからだ。
木村真は「連帯ユニオン議員ネット」副代表となっているが、これは穏健な議員団体ではない。2005年、連帯ユニオン(全日本建設運輸連帯労働組合)関西地区生コン支部と地方議員等が連携して結成されたが、そもそも関西生コンは過激な極左活動団体なのである。沖縄の反基地闘争に注力、「安倍政権打倒」等を掲げ、委員長の武健一は逮捕歴が実に3回、実刑判決も食らい、大阪拘置所に収容中、便宜を受けた刑務官に釈放後、現金100万円を渡して贈賄で再逮捕されるような人物だ。その時、同時に逮捕された武健一のボディーガード役は山口組系の元組長(樺山勝美)であり、また、武健一は2003年、辻元清美議員に1000万円の献金をしている(『月刊宝島』2010年1月号に記載)。さらに、武健一は「連帯ユニオン議員ネット」代表の戸田久和・門真市議会議員への不法献金でも追徴金を払っている。そしてこの件で戸田議員の側も、罰金80万円、追徴金360万円及び公民権停止2年間の処分を受けていたのだ。
その戸田議員のブログには次のように記されている。
http://www.hige-toda.com/____1/renntai_yunionn/kakikomi/1_22kakikomi_3htm.htm
<関生労組は出発時点から職場のヤクザ支配と熾烈に闘わざるを得ない状況があり、現実に会社が雇ったヤクザに2人が殺されているし、武委員長も拉致監禁されるなど少なくとも5回は殺されかけています。ヤクザに暴行・脅迫された例は数え切れません。
そういう闘いを経て、やがては「山口組も手を出さない」ほどの闘争力と力関係を作りあげていきましたが、それはまさに血と汗に色どられた苦闘の歴史です。>
これが現職市議の書くことだろうか。木村真もこのような人脈図中の団体副代表なのである。
一方、朝日新聞が、偶然、大阪支局に持ち込まれた1学校法人の国有地取得問題をいきなり記事にすることも又、考えにくい。この記事は署名記事(吉村治彦、飯島健太)だが、執筆者の1人、吉村治彦記者はラジオ番組で次のように「取材を始めたきっかけ」を語っている。
<私が豊中市を担当していまして、日頃から行政なんかを取材しているんですけれども、先ほど木村さんが出ていらっしゃったと思うんですが、まあ、あの木村さん・・・ん・・・ではないんですけれども、ある方からですね、ええーまあー豊中市が取得しようとした土地があったんですけれどもそこがまあ、お金の問題で取得できなかったんだけれども、そこになんか小学校が建設されていて、ただその金額がいくらで取得したっていうのが分からないっていうふうに聞きまして、その情報をまああのーきっかけにですね、ま関心を持って取材を始めました。>
(2017年2月22日、TBSラジオ「荻上チキ・Session22」)
情報源を木村真としようとして、咄嗟の判断でごまかしたように聞こえる。木村真が活動家であることが広くマスコミで喧伝されたら、取材ではなく、活動家ネットワークと朝日新聞の共謀と見られる恐れは充分あるケースだ。咄嗟に木村真とは別の「ある方」からの情報としたのではなかったのか。吉村治彦は朝日新聞の大阪社会部で豊中市を担当する記者、木村真は豊中市議、土地は豊中市の国有地である。こんな特殊な土地売却額の「非公表」表示を、他の「ある方」が同時に吉村治彦に持ち込むことは考えにくい。実は、木村真から朝日新聞記者への情報提供は前から度々あったのである。が、そのままでは記事にできる客観性が担保できない。そこで朝日新聞の記者側から、何らかの訴訟を構成すれば記事にできるとの助言があった末でのこの記事だと思う。
朝日新聞は、こんな風に破壊的な極左集団人脈と記者が昵懇になり、客観記事を装って彼らのメッセージをあれこれ発信しているのだろうか。もしそうなら朝日新聞を良識の声と信じる購読者への背信である。読者らが知ったらどう思うだろうか。

2017.8.17 11:39更新
森友学園・国有地売却額非公開訴訟、国が却下求める 一転開示で「訴えの理由なくなった」 大阪地裁
http://www.sankei.com/west/news/170817/wst1708170049-n1.html
学校法人「森友学園」(大阪市)に格安で払い下げられた大阪府豊中市の国有地売買をめぐり、木村真・豊中市議が当初非開示とされた売却額を公表するよう国に求めた訴訟の第4回口頭弁論が17日、大阪地裁(山田明裁判長)であった。国側はこれまで非開示処分は妥当として争っていたが、今月4日付で一転して開示を決めており、この日の弁論では訴えの理由がなくなったとして、請求却下を求めた。
一方、木村氏側は
「当初の非開示処分によって裁判を起こさざるを得なくなった」
として、国に損害賠償計11万円を求める訴えの変更を申し立て、山田裁判長は16日付で許可した。
国は昨年9月、木村氏の情報公開請求に対し、非開示を決定。木村氏が今年2月に提訴した2日後に、近畿財務局のホームページ上で1億3400万円の売却額を公表した。ただ訴訟上では、改めて開示していなかった。

戸田の補足 1
http://www.hige-toda.com/____1/renntai_yunionn/kakikomi/1_22kakikomi_3htm.htm
(注)共産党直系だった関生が弾圧対応で共産党と分岐、独自左派に 
草加さんの解説で、関生(かんなま)の生い立ちと共産党との分岐時期についての認識の所だけが事実と違っているので、戸田から説明します。
1;関生は1965年に「全自運関西地区生コン支部」として出発した時から(その前史も含めて)一貫して共産党員が委員長初めとする役員の大半を占める、共産党直系の労組でした。
現場叩き上げの生コン労働者が共産党から教育を受けて労働運動や政治運動に邁進し、共産党党員になって、共産党の指導と指揮に従って労組活動をしてきました。  
昨年10月の武委員長の講演の記録を見ると、共産党との分岐当時、関生には共産党員が500名くらいいたとあります。講演では「・・事実は関生党員みたいな性格が強かった。共産党の攻撃の時には、その99%が共産党を脱退しました。」ともあります。
2;関生労組は出発時点から職場のヤクザ支配と熾烈に闘わざるを得ない状況があり、現実に会社が雇ったヤクザに2人が殺されているし、武委員長も拉致監禁されるなど少なくとも5回は殺されかけています。ヤクザに暴行・脅迫された例は数え切れません。  
そういう闘いを経て、やがては「山口組も手を出さない」ほどの闘争力と力関係を作りあげていきましたが、それはまさに血と汗に色どられた苦闘の歴史です。
3;そういった修羅場を何度もくぐった労組ですから、公務員比率がどんどん高まった共産党労組の中では「最も頼りになる実力部隊」であると同時に「異色の存在」でもありました。  
特に武委員長の卓越した指導力・構想力はありきたりの共産党指導の枠に収まり切らず、共産党と武委員長サイドとのあつれきが広がっていきました。武委員長のカリスマ的指導力とそこへの多数の労組員の心服を指して共産党は(外部の人も)「武一派」・「武一家」とも呼ぶほどでした。
4;生コンの労働運動の進め方では共産党とのあつれきが生じていたとは言え、イデオロギー的には「日本共産党」のイデオロギーが正しいものと、関生役員(共産党党員)は長らく考えてきたわけですから、60年代後半〜70年の世界的激動期にあっても、関生は「新左翼」や「全共闘」とは全く無縁で、「あんな奴らはトロツキストの跳ね上がり分子だ」的にしか考えなかったわけで、例えて言うならばその時代にソ連東欧圏での民主化運動弾圧に動員された「筋骨たくましい炭坑労働者」みたいな位置にあったでしょう。
5;共産党との分岐が決定的になったのは、関生労組の「ヨーロッパ型の産別労組」としての運動と組織が大前進したことによって、中央財界にまで強烈な嫌悪と危機感を呼び起こしたことによる80年頃からの組織破壊的な連続弾圧を受けてのことでした。  
当初「弾圧糾弾」の姿勢だった運輸一般や共産党が、82年11月には運輸一般中央本部にガサ入れされたことで、このままでは共産党本部にまでも弾圧が及び、共産党攻撃宣伝で総選挙対策上も非常にヤバイ!、と危機感を強めて、「弾圧される側にも問題がある」、「社会的良識に反する、とかくの風聞がある」という対応に変化して、「運輸一般中央本部12・17声明」なるものを当の運輸一般中央委員会で諮る前に「赤旗」紙上で発表する、というほどの支離滅裂な引き回し(共産党のお家芸!)を行ない、83年には共産党追随グループが関生の分裂デッチ上げ集会を強行し、双方の対立が猛烈に激化してこれに権力の介入弾圧も加わる(もちろん共産党の告訴告発戦術による武委員長らの関生への不当弾圧で)という修羅場になっていきました。   
対立の中で武委員長らの500人以上の共産党員が共産党から離脱しています。また逆に共産党追随の分裂裏切り分子を関生労組から除名などもしています。  
そうして84年3月の支部臨時大会で運輸一般と正式に決別し、組織名称を「関西地区生コン支部労働組合」とし、9月には総評へも加盟した。  
そして新たな全国組織の結成を模索して、「総評全日本建設産業労組」と関生、そして東京の大有生コンの3者が合流して84年11月に「全日本建設運輸連帯労組」が結成され、翌85年1月(!)にはこの連帯労組の近畿地本が結成された。
また3月には運輸一般東京地区生コン支部と静岡県セメント生コン支部も連帯労組に合流した。
6:労働戦線の右翼統一たる「連合」の誕生については、全民労協を経て民間連合が結成されたのが87年、官民を含めた連合が正式に発足したのが89年ですから、関生の共産党との分岐はそのはるか以前です。  
また、千人を超える規模で(分裂時直前には3千人)労組が共産党から左分裂したのも異例だし、それがずっと「階級的労働運動」の旗を掲げる左翼でやっているのも、日本の歴史においては超異例なことです。
7:共産党系以外との交流を実質的には禁じられていた関生を総評・社会党ブロックとの仲介の労を執ったのは、共産党中国派を出自とする「日本労働党」http://www.jlp.net/でした。  
労働党と関生はずっと友好関係にあり、各種集会では「政党」として挨拶してもらうし、同党がお膳立てした「自主・平和・民主のための広範な国民連合」  http://www.kokuminrengo.net/には設立当初から役員・会員を送り共同しています。(ちなみに戸田も「国民連合」設立当初の93年からの会員)
8;共産党との分裂、総評ブロックへの加入以来、新左翼業界、反・非共産党系市民運動業界等々との付き合いも始まった。反戦平和運動的には新左翼の反中核ブロックとの付き合いがずっと多い。  
それというのは、83年三里塚闘争分裂で中核が「熱田派」へのゲバ襲撃をやって大衆運動的に嫌われ者になり、もともと中核系大衆運動が微弱な関西ではノンセクト系やインター・プロ青年系、総評左派系大衆運動(労組含む)との付き合いが必然的に多くなるからである。
だから中核系との付き合いは、関生・全金港合同・動労千葉のいわゆる「三労組共闘」と最近の反戦運動などで有る程度であって、関東圏の人が「三労組共闘」の宣伝を見て「関生・ 連帯は中核系か」と思った、と言う話は中核にとっては嬉しい誤解かもしれないが、我々にとっては苦笑するしかない。 関生・連帯はあくまで独自の左翼勢力である。
全金港合同も大和田さんという卓越した指導力を持った独自左翼リーダーの下で発展してきた労組であり、中核の活動家が労組員の中にちょこっとはいるが、これ自体が中核系では全然ない。
9:政党との付き合いで言えば、共産党が敵対を続ける限りでは共産党と対決しつつ、「反自民の共存外交」が基本。公明党も自民党との連立を組むまではずっと招待してきた。  
社民党・新社会党を強く支援しつつ民主党にも「市民派」にも選挙支援を行なっている。
また例えば首長選挙で、連帯と長年友好関係の深い社民党の人から支援を頼まれ、一方共産党候補側からは当然ながら支援要請などない、・・・そんな場合は自公民社候補を押す場合もあ る。戸田個人としては、自治体首長選挙で社民党が自民公明と共同することには大反対で、「革新共闘」を追及すべき、と思っていますが・・・・。
これとは別に、守口市長選や門真守口合併反対運動の時などは、社民党・市民派・保守系・ 共産党とともに共闘したりもしています。これは地元の戸田や三浦さんからの提起を受けてです。
10;客観的に見れば、連帯近畿・関生は組織力闘争力・財政力のある左派大衆団体だから、左翼党派の絶好の加入相手であるはずだが、84年頃から関生・連帯を知っている戸田が見ていていも不思議なほど、党派活動家が全然入ってこない。たまにちょっと色つき的な人が入っても連帯労組員として変容していくか、連帯を去っていくかでしかない。  
きっと連帯・関生というそれ自体の独自性と磁場が強烈で、武委員長らの指導力も強いし日々の活動・闘争の忙しさがハンパじゃなくて、左翼党派が内部に入ってどうこうすることができないのだろうと思う。  
左翼党派の側もそれを認知しているから、外部団体として交流する方にメリットを見出しているのだろう。
11:武委員長らの共産党員体験のある古参幹部だけでなく、共産党体験のない中堅・若手幹部も新左翼業界のあれこれをほとんど知らないし興味も持っていない。  
みな「労働者民衆の生活向上のために左翼・革新・平和勢力は四の五の言わずにみんな協力共同したらいいじゃないか」、とシンプル素朴に思っているだけである。  
反権力で一致すれば場合によっては右翼的と目される勢力とすら共闘する(暴対法・組対法・盗聴法などでの反対運動の例)  
また、あまり付き合いのない団体からでも「右翼暴力団の襲撃がありそうなので支援して欲しい」と頼まれれば、「堅気の衆を守るために」体を張って出張っていく。  
「内ゲバはいかん」とは思うし、今の運動の中でそんなことをする輩は許さないが、だからといって「昔内ゲバをしたことを今全面謝罪しない限り共闘なんてしない!」というような話に引き回されるつもりはない。  
連帯・関生はそんな労組である。
12;近年、韓国の労働運動との共同共闘を重ねるにつけて、連帯・関生の中に韓国の民主労働党のような、戦闘的労働運動を土台とした「我々労働者の政治勢力」の結成を望む気運も出てきている。世間を見渡してみて、これという頼りになる所がないのなら自分らでまず始めてみようか、ということになるかもしれない。
とりあえず、以上。

が、それならば、森友学園への土地売却には、問題は一切無かったのか。
いや、そうではない。
確かに問題ある事案ではあったのである。
森友学園に売却された約8770uの国有地は、近畿財務局が2013年6月から9月にかけて売却先を公募し、紆余曲折を経た後、2016年6月に、森友学園に売却したものだ。
ところが、2016年9月、木村真豊中市議が情報公開請求をしたところ、近畿財務局は売却額などを非公表とし、朝日新聞も12月に情報公開請求をしたが、それに対しても非公表とされた。
非公表の理由は、森友学園側から、公表すると学校運営に悪影響が出る恐れがあるから公開しないでくれと申し入れがあったためだというのが近畿財務局の説明だった。この土地は地下に大量のゴミが埋まっていたとして、売却過程で、正規価格の約8分の1で森友学園に払い下げられている。小学校建設地に大量のゴミが埋まっていた事を「表沙汰」にしたくないーそういう理屈である。
いずれにせよ、近畿財務局側に非公開の意図があったわけではない事は、後の籠池夫妻の幾つかの証言から明らかだ。
この土地は国土交通省の地方機関である大阪航空局の所有で、近畿財務局は売却を依頼され、交渉に当たったに過ぎない。売却処理に違法性はない。が、経緯にごたごたがあったのは事実であるり、役所としては「表沙汰」にしたくない節々がある案件だった。
<朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった>
とあるが、近隣の購入者は豊中市だ。ここにも国と豊中市の間でからくりがあり、違法性はないが「表沙汰」にしにくい事情はあった。
「表沙汰」にしにくいこうした複数の事情や思惑と、朝日新聞側の安倍叩きの意図ーいわばその極端な化合の結果、安倍首相と何の関係もない地方の1事案が、まるで安倍スキャンダルの如き様相で喧伝され続けたのが「森友事件」だったのである。
この記事が元で国会質疑となった為、価格は公表された。それによると、2012年時点で地価8億7472万円、2013年時点で地価7億6302万円である。
約8億円の物件が1億3400万円での売却ーどのような理由で売却価格が約7分の1になったのか。合理性はあるのか。また、近隣地を含め、国有地売却の実例の中で、この事案はどの程度特殊なのか。
朝日新聞の記事は、隣接地は正規価格の14億2300万円円で売却されているのに、なぜ、森友学園には大幅なダンピング価格で売却されたのか、と問うている。
もちろん、朝日新聞が描きたかった筋書きは次のようなものだろう。
日本会議の役員が理事長を務め、保守的な理念で開校される小学校の名誉校長が安倍首相の妻、安倍昭恵夫人だった。その物件が、価格非公表だった上、公開させてみたら通常の7分の1まで値引きされていた。安倍首相が、籠池に対して何らかの便宜を図っていたのではないかー。
行政における決定プロセスを知っている者からみれば、実はこういう話は全く荒唐無稽である。有力政治家、特に現職の総理が、具体個別の土地の売却で知人の便宜を図るなど、今の時代、致命傷になるだけだからである。
万一にも金銭の授受があれば隠し通せる保証はない。金を受け取った時に贈賄側が密かに録音・録画しておく事は容易にできるご時世だ。一方、金の授受もないのに、便宜だけ図って無理に事を進めさせ、後から問題になれば、こんな馬鹿げた話はない。
むろん、公共性の高い優れた事業ならば、堂々と後押しするなり、公的な手続きを踏めばいいのであって、陰で便宜を図る必要もない。
更に言えば、私立学校の開校には、民間委員で構成される私立学校審議会の審査がある上、厳しい設立基準を満たさねばならない。総理だからといって、こうした手続きに介入できる筈がない。
安倍昭恵夫人が名誉校長の名前貸しをしている段階で、安倍首相の具体的な関与があり得ないのはすぐ分かる。安倍昭恵夫人は天真爛漫、奔放な女性に見えるが、
安倍首相が1993年の初当選以来、激動の政治家人生を、個人的スキャンダルや不祥事なしに乗り切ってきた陰の主役である。要職を務め続ける政治家にとって何が許され、何が致命傷になるかを分からずにここまで政治家の妻を務められた筈がない。
つまり、政治や行政の実際を知らず、政治家と見れば何となく利権と結び付いた悪人だと吹き込まれている一般国民からみれば、何やら怪しい構図だが、現実の政治を知れば関与などあり得ないーそういう地方案件が今回の森友学園の土地払い下げ問題なのである。

●学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か
吉村治彦、飯島健太
2017年2月9日05時03分
http://www.asahi.com/articles/ASK264H4YK26PPTB00J.html
財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。
売却されたのは、豊中市野田町の約8770平方メートルの国有地。近畿財務局が2013年6〜9月に売却先を公募し、昨年6月に大阪市内で幼稚園を営む学校法人「森友学園」に売った。契約方法は、公益目的で購入を希望する自治体や学校法人、社会福祉法人などを優先する「公共随意契約」がとられた。
この契約について、地元の豊中市議が昨年9月に情報公開請求したところ、財務局は売却額などを非公表とした。朝日新聞も同年12月に公開請求したが、今年1月に同じく非公表とされた。国有地の売却結果は透明性と公正性を図る観点から、1999年の旧大蔵省理財局長通達で原則として公表するとされている。だが、財務局は取材に「学園側から非公表を強く申し入れられた。公表によって学校運営に悪影響が出るおそれがある」と説明した。
朝日新聞が登記簿などを調べると、森友学園側に契約違反があった場合、国が「1億3400万円」で買い戻す特約がついていた。公益財団法人の不動産流通推進センターによると、買い戻し特約の代金は売却額と同じ額におおむねなるという。森友学園の籠池泰典理事長も売却額が買い戻し特約と同額と認めた。
一方、財務局が森友学園に売った土地の東側にも、国有地(9492平方メートル)があった。財務局が10年に公共随契で豊中市に売ったが、価格は約14億2300万円。森友学園への売却額の約10倍とみられる。ここは公園として整備された。
日本初、神道の小学校」開校の予定
森友学園が買った土地には、今春に同学園が運営する小学校が開校する予定。籠池理事長は憲法改正を求めている日本会議大阪の役員で、ホームページによると、同校は「日本初で唯一の神道の小学校」とし、教育理念に「日本人としての礼節を尊び、愛国心と誇りを育てる」と掲げている。同校の名誉校長は安倍晋三首相の妻・昭恵氏。
籠池氏は取材に「(非公表を)強く求めていない。はっきりではないが、具体的な売却額は財務局が出したと記憶している」と説明している。昭恵氏には安倍事務所を通じて文書で質問状を送ったが、回答は届いていない。(吉村治彦、飯島健太)
■7億円での購入「価格が低すぎ…

◆火をつけた質疑は何か
2017年2月9日の朝日新聞の記事を受け、6日後の2月15日、共産党の宮本岳志が土地売却の経緯を質すことから、国会での追及が始まった。その後、2月17日には民進党の福島伸亨もこの問題を取り上げる。実は、この2人の質疑は、国有地売却を巡る問題点をかなりよく整理し、調べた上でのもので、挑発的な言辞はあるものの、事実関係を明らかにする上では真っ当な質疑だったと言っていい。とりわけ宮本岳志の質問は、国有地売却の際の国有財産近畿地方審議会や森友学園の小学校認可の際の大阪府の私学審議会の資料にもあたり、各役所の問題処理の曖昧さを鋭く指摘している。
実は2人の質疑を読めば、要するに事柄は資金不足の中で小学校を立ち上げたい籠池が無理に事をせっつき、近畿財務局や大阪府私学課が少しずつ曖昧な処理を重ね、関係者が互いに信用連鎖で事を進めた事案に過ぎず、国政レベルの疑惑や安倍首相の情実などあり得ないことが分かる。
さらに、2月13日には籠池と、その頃顧問弁護士だった酒井泰夫が報道陣に対して払い下げ経緯を説明している。
ところが、初報をスクープした朝日新聞は、これらの質疑や会見内容を全く伝えていないのである。
何故だろう。
国有地払い下げ問題の全貌は最初期の国会質疑で明らかになっているし、弁護士の説明に非合理はなかったのである。
問題を提起した朝日新聞としては明らかになった事実を報道すれば、事は済むはずではないか。
いや!
話は逆なのだ。事柄がこんなに早く明らかになってしまっては、意味がない。
朝日新聞にとってこの事件の「値打ち」は、国有地払い下げの真相になどはない。籠池泰典森友学園前理事長が日本会議の役員で、名誉校長が安倍昭恵総理夫人だというところにある。
安倍首相と国有地払い下げが結び付く前に、真相が解明されてはスクープの意味はなくなる。
朝日新聞は早くも明らかにされてしまった事件の経緯は報じず、じっと待った。
そしてその甲斐はあったのである。
2月17日、国会における民進党の福島伸亨と安倍首相のやり取りの中に、朝日新聞が狙う着火点が潜んでいたからだ。

■福島伸亨委員
ここで、「『記念小学校』設立に向けて」という籠池理事長のお手紙があります。
<さて、かねてより保護者の皆様から御要望をいただだいておりました小学校開設の件ですが、ようやく10年来の構想が実現する運びとなりました。しかしながら、小学校の建築には10億円の費用を要し、本日現在、2億円の資金不足が生じております。つきましては、ぜひ、皆様の御協力をお願いしたく、御寄付をお願いする次第です。書面にて厚かましいお願いで恐縮ですが、寄附金は1口1万円とし、2口以上の御寄付を賜れると幸甚に存じます。御寄付に当たっては、同封の振り込み用紙をお使いいただきますようお願いします。平成26年3月。>
ということで、これが同封された振り込み票ですけれども、(略)
<御寄付を賜りました方には、安倍晋三記念小学校の寄附者銘板にお名前を刻印し、顕彰させていただきます>
と。
私はこれは、総理が悪いと言っているんじゃないんですよ、利用されているだけじゃないかと思うんですけれども、こうした名目でお金を集めているということを総理は御存知でしたでしょうか。

■安倍内閣総理大臣
私はそもそも、今、話を初めて知ったわけでございますが、これは、私が総理を辞めた時に、うちの妻が知っておりまして、そしてその中で、いわば私の考え方に非常に共鳴している方で、その方から小学校を作りたいので安倍晋三小学校にしたいという話がございましたが、私はそこでお断りをしているんですね。(略)まだ現役の政治家である以上、私の名前を冠にするというのは相応しくないし、そもそも、私が死んだ後であればまた別だけれども、何かそういう冠をしたいというのであれば、私の郷土の大先輩である例えば吉田松陰先生の名前とか付けられたらどうですかというお話をしたわけでございます。(略)
いずれに致しましても、繰り返し申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして、なぜそれが当初の値段より安くなっているかということは、これは理財局に聞いて、もう少し詳細に詰めていただきたいと思いますし、認可においては、大阪府(略)に確かめていただければいいことであって、私に聞かれてもこれは全く分からないわけでありますし、繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、なさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということをはっきりと申し上げておきたい。

安倍首相の驚きが伝わるやり取りだ。同時に安倍首相自身が国有地払い下げも認可も全く認識しておらず、担当者がより詳細に説明すべきだと考えていることも分かる。この日までの国会質疑を通じて、安倍首相もこの件の処理が不明朗だと感じていたに違いない。
重大なポイントが2つある。
この日の質疑で、籠池泰典が安倍首相の名前を使い、寄付金集めをしていた事実が判明した。安倍首相自身の与り知らないことであろうと、安倍首相と籠池泰典を金で結び付けられる可能性が見えたのだ。
第2に、安倍首相が、自身のみならず安倍昭恵夫人が認可や国有地払い下げに関わっていたら「間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」とまで言い切ったことだ。
安倍首相にしてみれば、首相辞任までをも国会で断言するということは、身の潔白を証しだてる日本人流の強意表現だった。
が、残念ながら、国会やマスコミの反安倍陣営は、そうした美学はまるで持ち合わせていなかったようである。
「総理の地位を賭けた否定」を「名誉による証明」だと考えた安倍首相に対して、反安倍側は、逆にどこまでも追及し、少しでも関係が証明できれば、内閣総辞職を迫ることができる言質を国会で取ったと受け止めたのである。
しかも同じ質疑の中で安倍首相の名を使った寄付金集めが明らかになっている。朝日新聞はさぞ色めきたったであろう。
この質疑を契機に、少しでも安倍夫妻と森友学園の関係を印象付けようというなりふり構わぬ騒ぎが準備されたに違いない。自分で仕掛けたにもかかわらず、野党の追及を報じなかった朝日新聞では、少し置いた2月23日から記事が激増し始める。
一方、テレビのワイドショーでは、それに先立って「安倍昭恵叩き」が始まった。

*共産党の宮本岳志(2017年衆院選、比例近畿ブロック単独で立候補し、4選)
*民進党の福島伸亨(2017年衆院選、希望の党から茨城1区より出馬するも、自民党公認田所嘉徳に敗れ、重複立候補をするも比例復活での当選も出来ず、落選)

◆籠池劇場第1幕 安倍昭恵夫人叩き
2017年2月21日、テレビ東京「ゆうがたサテライト」が「独自初公開・総理夫人が名誉校長になるまで」とテロップを付し、2015年9月に森友学園が経営する塚本幼稚園で講演する安倍昭恵夫人の様子を放送したのが、バッシングの狼煙となった。
安倍昭恵夫人は挨拶の中で「籠池園長・副園長の本当に熱い熱い思いを何度も聞かせていただいて、この瑞穂の國記念小學院で何か私もお役に立てればいいなと」と発言している。あえて深読みすれば、安倍昭恵夫人による便宜、口利きという筋書きを得る挨拶だ。
「こちらの教育方針は主人も大変素晴らしいと思っていて、(籠池)先生からは安倍晋三記念小学校にしたたいと当初は言っていただいたんですけれども、主人が、”総理大臣というのはいつもいつも良いわけではなくて、時には批判に晒されることもある。もし名前を付けていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたい”ということで」という発言に対しては、安倍首相の国会答弁と食い違うと、番組は指摘した。安倍首相は2月17日の答弁で、校名に自分の名を冠するのは「私が死んだ後であれば別だが」などと述べているからだ。
「ここから普通の公立の学校に行くと普通の公立の学校の教育を受ける。せっかくここ(塚本幼稚園)で芯ができたものが、また(公立の)学校に入った途端に揺らいでしまう」との発言を、番組は「公立小学校の批判とも取れる発言」として紹介した。
注目すべきは、これらの安倍昭恵夫人の3つの発言だけがこの後、数限りなく報道され続けたことだ。逆に言えば、安倍昭恵バッシングの素材は実はこの最初の報道の中にしかなかった。それで嵐のようなバッシングが3カ月にわたって続くことになるのである。
一方、その翌日、2月22日には民進党の玉木雄一郎が衆院予算委員会の中で塚本幼稚園について以下のように言及する。
「(塚本幼稚園では)食事中はお茶を飲むことが禁止されているそうです。(略)それは”旧海軍がそうしていたから”という教育なんだそうです」
「これはちょっとびっくりしましたけれど、複数の親から聞きました。お漏らしをしたり、ウンチを漏らしたりすることもあるでしょう。それをパンツでウンチを包んでですね、幼稚園のバッグに入れて持って帰らすと。(略)時に食器と一緒に入っているので、極めて不衛生だと」
同日のテレビ朝日「報道ステーション」では玉木雄一郎の質問を紹介した後、匿名の「元園児の保護者」へのインタビューを伝えた(パンツの話のみ)。24日のTBS「ビビット」では電話取材として「元園児の保護者」の発言を音声で伝えているが、こちらも玉木雄一郎の話とほぼ同内容である。民進党とテレビ朝日、TBSの間で、早くも情報源を共有していたのである。
この件について、大阪府の松井知事は22日の定例会見で「府としては児童虐待を通報しやすい窓口を設置しているが、その学校施設で虐待があったという情報や通報はまだ来ていない。(略)民進党議員は大阪府の行政へは通報せずに『メディアの皆さんにこれどうなんだ?』と外へ向けて発信しているやり方は政治家としてどうなんだと思う」と強い不快感を示した。
こうして国有地払い下げ問題そっちのけの安倍昭恵バッシング、森友バッシングがテレビと民進党の共闘で始まった。
朝日新聞はどうか。
2月23日、「国有地売却 深まる疑念」との見出しで、本格的な攻勢が始まる。
「価格・政治家関与・・・国会で追及」となっているが、記事本文を読んでも「疑惑」は全く深まっていない。見出しには「政治家関与」とあるが、記事には「政治家の関与の有無も論点になっている」の一言があるだけだ。記事内容の要約ではなく、見出しそのものが印象操作を狙った「虚報」である。
だが、何よりも、この頃、朝日新聞とテレビ各局で共通していたのは、国有地売却問題をそっちのけにした、右派幼稚園としての森友学園誹謗の強い意図である。
同日朝日新聞の「幼稚園で『嫌韓・嫌中』文書」という記事は、次のように右派色のみを強調して幼稚園の教育方針を紹介している。
<この幼稚園(注:塚本幼稚園)は、ホームページ(HP)によると、毎朝の朝礼で、明治天皇名で教育理念などを規定した教育勅語の朗唱、君が代を斉唱するとしている。
府は、幼稚園側が「よこしまな考えをもった在日韓国人・支那人」などと記した文書を在園時の保護者に配っていたほか、園のHPでインターネット上に園に対する誹謗中傷があったとして「(記事の)投稿者は、巧妙に潜り込んだ韓国、中華人民共和国などの元不良保護者」などとする文書を一時、公開していたことを報告した。>
国会も23日の衆議院予算委員会で民進党の今井雅人と福島伸亨が、前々日のテレビ東京「ゆうがたサテライト」の内容を受けた質問を行い、国有地問題よりも、安倍昭恵夫人が名誉校長を引き受けた件に焦点が移り始めた。
こうして、塚本幼稚園の教育内容を極端な劇画化によって叩く森友学園潰しと、籠池夫妻の特異なキャラクターへのワイドショー的喧噪、そして安倍昭恵夫人バッシングによる籠池劇場が開幕したのである。
だが、肝心の土地取得の際の森友学園と国のやり取りはどこに行ったのか。そこに違法性がなければ、安倍昭恵夫人を国会で話題にする意味がない。いや、そこに違法性があっても安倍昭恵夫人を取り立てて問題にする必要は全くない。
話の進め方が逆なのである。
本来ならば、違法性を強く示唆する証拠が出て、それに基づき違法性の有無の調査や追及がなされ、その線上に安倍晋三首相や安倍昭恵夫人が浮かび上がれば、その時に初めて安倍首相の責任が問われるというのが筋道だ。
ところが、今回のケースは、違法性の追及は国会質疑で最初に終わっていたのに、それは隠し、安倍晋三首相ないし安倍昭恵夫人の関与を匂わせ続けながら、メディアが喧噪を巻き起こし、安倍政権の足元から火をつけたという話である。
例えば、安倍昭恵夫人バッシングの最中、3月1日、共産党の小池晃の質疑がきっかけとなり、安倍昭恵夫人は私人か公人かが論争された。
愚問という他はない。
総理大臣夫人は、公的な地位も職務権限もないのだから、公人ではない。しかし、純然たる私人でもない。国内での賓客もてなしでも、首相の海外訪問への同行でも、公的な立場で行う。来賓で招かれれば、総理大臣夫人として紹介される。総理の代理のニュアンスを帯びるが、大概の場合、ファジーな存在であって、公人性を帯びた私人というのが穏当な位置付けであろう。
当然、安倍昭恵に総理夫人としての見識や自重は求められる。安倍外交の国際的信認が極めて大きくなっている今日では、なおさらだ。
が、森友学園の新設小学校名誉校長という肩書は、そんなに脇の甘い判断だったと言えるのか。
経緯は安倍首相が2月24日の国会で答弁している。2015年9月、塚本幼稚園に講演に訪れた安倍昭恵夫人は、控室で名誉校長を引き受けるよう懇願されたが、総理夫人という立場を慮り断った。
ところが、父兄や児童の前で壇上に上がった安倍昭恵夫人を、籠池が名誉校長として紹介してしまう。その後も改めて安倍昭恵夫人は辞退を申し入れるが、関係者の前で紹介した以上引き受けてくれないと困るという形で最終的に押し切られ、引き受けたというのである。
確かに、このような強引な人物と関係を絶たなかったのは、首相夫人の立場を考えれば、脇が甘いということになるかもしれない。
だが、それは後知恵と言うべきだろう。
何よりも、塚本幼稚園の評判は長年、上々だったのである。同幼稚園が主催しての講演者リストには、村上和雄、櫻井よしこ、中西輝政、渡部昇一、曽野綾子をはじめとする各界有識者が名を連ねる。幼稚園、それも系列の全児童数が約150名の施設としては異例だ。その上、今となっては嘘と判明しているが、天皇陛下の臨御
を仰いだとのホームページの記載まであった。籠池は保守層の中で、幅広く信用の連鎖を作っていたのであって、安倍昭恵夫人だけに脇の甘さを指摘できまい。
さらに、安倍昭恵夫人特有の事情もある。
首相夫人の肩書が付けば、普通なら巨大な防護壁の中に隔離され、権力と権威によって雲上人となる。名刺を通じることさえ難しく、面会に至っては極度に吟味される。
2度目のファーストレディーとなった安倍昭恵夫人は、寧ろ、首相夫人としてこそ、そうした通常の官僚システムの統制下や総理夫人の肩書では不可能な形で人と繋がることを欲した。
天真爛漫な笑顔や誰にも垣根を設けない対人態度から、安倍昭恵夫人は天衣無縫で、あまり物を深く考えない人という印象で見られている。とりわけ森友問題をきっかけににした安倍昭恵夫人バッシングでは、彼女の不用意さや無責任さに攻撃の矢が向けられた。しかし、彼女が首相夫人になって面会した人たちのリストを見ると、無考えで能天気な人間ならば、むしろ、絶対に避けるような人を多数含んでいる。極左の活動家と会い、あるいはホームレスの住処に飛び込み、「アベ政治を許さない」というTシャツを着た人と積極的に会話する。
批判もあれば、リスクもあるだろう。厳しい批判はむしろ安倍首相を支持する側からも聞こえてくる。
だが、安倍昭恵夫人が、保守政治家・安倍晋三に対して異議申し立てをする人たちの側に、妻でありありながら努めて立ってこようとしてきたことが無意味だとは、私は思わない。
過褒は慎みたいが、意見の多様性や寛容さを身を以て生きてきた安倍昭恵夫人のファーストレディー像は、政治信条やイデオロギーの隔たりによる絶叫や憎悪が幅を利かせつつある今の日本で、1つの風穴だったというのは許されるだろう。
それだけに、とりわけこの後、朝日新聞が先頭に立って安倍昭恵夫人を森友学園への便宜供与と結び付けようとし続けた執拗さには、遣り切れなさを禁じ得ない。他のメディアが安倍昭恵夫人をとうに解放した2017年5月になってさえ、朝日新聞は籠池泰典と安倍昭恵夫人が一緒に写っている写真を紙面ででかでかと掲載したり、全てを安倍昭恵夫人のせいにするまでに変節していた籠池泰典の発言も大見出しにし続けた。
恐ろしいのは、追及する朝日新聞の側も安倍昭恵夫人の便宜供与などあり得るはずがないと知りながら、政治家本人ではなくその家族を人民裁判にかけ続けたことだ。
全体主義国家で連帯責任を問う恐怖政治の手法に酷似するからだ。
社会主義国や軍事独裁国家では、政治犯が裁かれる時、同時に、身内縁者友人も粛清される。
安倍首相という1人の政治家を叩くために、森友学園問題では妻の安倍昭恵夫人が集中砲火を浴び続け、加計学園問題では、安倍首相の友人である加計孝太郎の事業に多大の損害が加えらえた。
政治家の妻や友人というだけで、何ら違法性がないのに、人格や経営が根本から否定されかねないーこんな左派マスコミによる人民裁判に、この後も何らの責任や規制を課さなくて本当にいいのだろうか。

*玉木雄一郎:2017年10月の第48回衆議院議員総選挙では希望の党の公認を受けて立候補し、香川2区で4選。
*今井雅人:2017年10月、第48回衆議院議員総選挙では希望の党公認で出馬し、金子の後継指名を受けた長男の金子俊平に敗れたが、重複立候補していた比例東海ブロックで復活し、4選。
*福島伸亨:2017年10月の第48回衆議院議員総選挙では希望の党から茨城1区より出馬するも、自民党公認田所嘉徳に敗れ、重複立候補をするも比例復活での当選も出来ず、落選。

◆国有地売却 知らぬ総理、答えぬ財務省
話を戻そう。
2017年2月25日の朝日新聞2面には「国有地売却 首相が弁明」と大見出しが出ている。
それでは、いよいよ国有地売却問題に安倍首相が関連していた証拠でも挙がったのか。
そうではない。
この見出しは、全くの「嘘」なのである。
安倍首相は、2月24日の国会答弁で、国有地売却について何ら弁明していないからだ。
記事は「首相はこの日、審議の冒頭から森友学園との関係性を否定しようとした」と書き出されている。しかし、安倍首相は、この日、森友学園については安倍昭恵夫人の話やパンフレットで理念を知っているだけで、森友学園の詳細はもとより、国有地売却の経緯は知らないと答弁しているだけだ。
何しろ、この日の国会で国有地売却の詳細を厳しく追及した民進党の福島伸亨(2017年10月衆院選落選)からして、質問の中で次のように言っているのである。
■福島伸亨委員
<この森友学園の国有地売却をめぐる問題、総理と全く関係なく、様々な謎、おかしな点があります。>
つまり、追及者の福島伸亨自身が「総理と関係ない」と国有地売却を、朝日新聞は大見出しで「国有地売却 首相が弁明」と打ったわけだ。
では、福島伸亨の国有地売却を巡る疑問はどういうものか。
第1に、学校を作るという使用目的が明らかになっていなければ国有地を売ったり貸したりできないはずなのに、近畿財務局はその段階で森友学園と契約交渉をしているのはなぜか。また、国有地での随意契約はそれ自体異例である。なぜ一般入札でなかったのか。
第2に、大阪府では、土地を自己所有していなければ私学設置は認められない筈なのに、今回、借地だった段階でそれが認可されているのはなぜか。
第3には、施行中に新たな埋蔵物が発見された途端に、資金に不安があるから購入ではなく借りたいとしてきた森友学園が、一転して買うと打診し、国側もそれに呼応するかのように破格の1億3400万円で売却したのはなぜか。
第4に、売買契約書では本年の5月31日までに平成29年度分の分割払いとして1100万円余りを国庫に納付するという契約を結んでいるにもかかわらず、本年度予算にはこれが計上されていないのはなぜか。
実際、いずれも、曖昧な処理だった。ここで簡単に答えを出しておこう。
大阪府の審査基準では、私学設置の認可は、申請者が土地を自己所有していることが前提である。ところが籠池泰典は土地を所有しておらず、国有地を借りて学校を開校するつもりでいた。一方、財務省が国有地を売却・貸与するには、購入者の使用目的が明確でなければならないから、本来なら学校設置認可が前提である。これは元来がイタチごっこになる話だったのだ。その点について答弁に立った財務省の佐川宣寿理財局長(現国税庁長官)は、次のように答弁している。
<もちろん設置主体である学校法人は地方公共団体の認可が必要でございますので、そこについてこういう要望が出ておりますけれども、大阪府としてどういう風にお考えでしょうかというようなことをお尋ねしたりしてございますので、そういう意味では、私学審議会あるいは国有財産地方審議会の前に、そういうような要望書を踏まえて御議論するというのは極めて普通のことでございます>
細目はともかく根本はこの答弁に尽きる。つまり、民間事業者である籠池泰典から小学校を開校したいとの強い希望が入ったため、堂々巡りになりかねない話を、近畿財務局と大阪府私学課とで事前に基準を緩和する調整をしたというのである。
第2の私学設置認可は、大阪府の私学審議会が判断することだ。国会で聞いても答えは出ない。大阪府私学審の条件付き認可は、極めて問題ある判断だったが、政治の不当な介入はなかった。
第3の、森友学園が「一転して買うと打診した」理由は、これも又国会に訊いても仕方ないだろう。一方、肝心な、土地価格がなぜ9億5600万円から1億3400万円になったかは、佐川宣寿理財局長が答弁する前に、別の質問に移り、議論が雲散霧消してしまった。だが、仮に佐川宣寿理財局長がどう答弁しても、朝日新聞をはじめ左派マスコミは全く報道する気はなかったに違いない。
第4の点は、分割契約とは言え、実際には全額支払われる可能性があるので、予算としては金額を計上せず、支払い実態を次年度に書き入れるという事務的な手続きの問題に過ぎない。
こうした質疑を繰り返す中で、野党の方針は、次第に財務省理財局長の佐川宣寿を突く事に向かう。
佐川宣寿理財局長の答弁は、通常の事案であれば、官僚としてそつのないものである。連日の細目にわたる追及にあくまで真面目に応じ、ミスがない。
だが、あくまで役人答弁だ。
森友学園の小学校許認可は、地方の極小案件で、安倍首相は関与も認識もしていない以上、具体的経過については安倍首相自身が答弁に立てない。
これが野党の着眼点だった。
安倍政権成立後、4年間、野党は国会質疑で殆ど全敗を続けていたが、それはひとえに、特定秘密保護法や安保法制など、安倍政権を失速させ得る法案で、安倍首相自身が答弁の矢面に立ち、野党を論破してきたからであった。
その安倍首相自身が森友学園問題では細目について答弁に立てない。
安倍首相自身は総論か伝聞しか語れず、細目は官僚に答弁させるほかはない。
するとどうなるか。
原則として、質問されたことのみに答えるー。当然、佐川宣寿理財局長の答弁はそうした官僚の裁量から外れぬ答弁になる。
さらには、佐川宣寿理財局長の答弁は、問題をどんどん細かく
してゆく野党の追及に対して、具体的な説明を避け続けた。細目を詳細に語ることで、藪蛇になることを怖れたのだろうが、問題を長期化したい左派野党や左派マスコミにすれば、こんな好都合な話はない。佐川宣寿理財局長が大阪の課長クラスの役人たちの事細かな交渉過程を明らかにしようとしない内は、安倍昭恵夫人と籠池泰典を話題に据えた「安倍叩き」をいつまでも演じ続けられることとなるからだ。
例えば、佐川宣寿理財局長は、交渉の詳細を幾ら質問されても、全て交渉記録は破棄して残っていないの一辺倒で通した。
■佐川宣寿理財局長
<昨年6月の売買契約の締結に至るまでの財務局と学園側の交渉記録につきましては、委員からの御依頼を受けまして確認しましたところ、近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした。(略)
面会等の記録につきましては、財務省の行政文書管理規則に基づきまして保存期間1年未満とされておりまして、具体的な廃棄時期につきましては、事案の終了ということで取り扱いさせていただいております。
したがいまして、本件につきましては、平成28年6月の売買契約締結をもちまして既に事案が終了してございますので、記録は残っていないということでございます。>
国の行政文書は、よほどの特例でない限り1年未満に破棄する規則がある。この規則は森友学園、加計学園の2例に鑑みれば明らかに問題だ。2例とも国政と関係のない細かな行政事案で、記録がない為に国会が重大な遅滞を呈した。行政文書の保存期間は大幅に見直すべきだろう。だが、現状では佐川宣寿理財局長
の答弁は規則通りで、特例ではない。
ところが、こうした記録の有無をめぐり、同じ質疑が延々と繰り返されるのである。
だが、それだけではない。
佐川宣寿理財局長は、交渉当事者に細部の確認をすることを拒み続けたのである。近畿財務局と大阪府私学課の処理には一々に少しずつ不明瞭な点がある。細目を明らかにすると財務省の監督責任に話が及ぶ可能性があった。佐川宣寿理財局長は逃げの答弁に徹して財務省を守ったのである。
また、実は、森友学園が購入した国有地と同条件の土地は近隣に3カ所あり、それらを比較すれば森友学園の値下げ幅は、実は全く特例ではない。だあ、左派野党の質疑は当然そこを避けるし、佐川宣寿理財局長も聞かれない以上答えない。左派野党は怪しげな重箱の隅を探し出しては突き続け、佐川宣寿理財局長は具体的な現場職員の聴取から逃げ続ける。
こうして、奇妙な構図が生まれた。
朝日新聞は、森友学園問題を安倍疑惑へと誘導する見出しを打ち続け、他の左派マスコミが共振する。テレビでは、籠池泰典や安倍昭恵夫人という特異なキャラクターによる劇場化がワイドショーを賑わし続ける。問題を鎮静化させ得る唯一の存在であるはずの財務省が機械的な答弁を繰り返し、国有地売却疑惑という本丸の解決を遅らせる。
いつの間にか、財務省までもが、疑惑長期化の不可欠な主役の一員になり始めていたのだ。
一方、当初、民進党議員は、先程の福島伸亨のみならず、為にする議論はあるとは言え、まだ自制的だった。
■今井雅人
<だから、そういう観点で、ここはちゃんと切り分けて考えていただきたいんですけれども、私はこの土地取引とかそういうものの総理や御夫人が絡んでいるというふうには思っていません。そのことは私は信じています。(2017年2月27日衆院予算委員会)>
実はこの頃、今井雅人に限らず、野党議員の多くは安倍首相の道義的責任を問いながらも、土地取引と安倍夫妻とは切り分けていたのである。
ところが、朝日新聞が主導する左派マスコミ報道は、左派野党議員のこうした自制的側面は伝えない。この後、執拗に、塚本幼稚園と安倍昭恵夫人を結び付け、土地取引に関する安倍昭恵夫人の関与を印象操作し続けることになるのである。

◆塚本幼稚園、虚像と実像
実際、国会が紛糾する中、テレビのワイドショーは、塚本幼稚園の特異な教育の片鱗や、籠池夫妻の強烈なキャラクターを追いかけ続けた。
教育勅語を暗唱する園児らの様子が繰り返し放送され、コメンテーターが総出で批判する。副園長の籠池諄子が保護者に送った手紙のうち「私は差別はしていません。公平に子供さんを預かっています。しかしながら、心中、韓国人と中国人は嫌いです」などといった文言が繰り返し紹介される。戦前に広く歌われた「愛国行進曲」を合唱する園児たちの様子を「軍歌を歌わせている」と伝える。
こうした報道の中でも、最も耳目を引いたのは、2015年秋の運動会の映像だろう。
代表の園児4人が選手宣誓で「日本を悪者として扱っている中国韓国は心を改め、歴史教科書で嘘を教えないようにお願いします。安倍首相がんばれ!安倍首相がんばれ!安保法制国会通過良かったです」と言っている映像がテレビで流れた衝撃は大きかった。
こうして籠池夫妻のキャラクター、うんち、教育勅語の奉唱、安倍応援などがモザイクのように散りばめられながら、塚本幼稚園が異形のの幼稚園として糾弾され続けることになったのである。
実像はどうだったのか。
塚本はJR大阪駅から1駅だが、いわば大阪の下町である。街をぶらぶら歩くと、昭和の原風景のような小物店や洋食屋と住宅が入り混じる中に、橙色の塚本幼稚園が小さく収まっている。安倍昭恵夫人が新設の小学校の名誉校長とされたり、安倍首相の名前と結び付けたりという報道の先入観を持ってここに来ると、誰しも素朴でこぢんまりした佇まいに驚くだろう。
塚本幼稚園は下町の風景の中にしっくり収まり、長年、地元に溶け込んだ幼稚園だった。
父兄の園への評価は概して高い。
今では珍しく、子供の躾にこだわり、父兄に対しても言うべきことは言う。給食を残したら全部食べるまで廊下に出される、教育勅語や論語の暗唱など、1つ1つの指導は確かに厳しかった。
が、一方で、先生と一緒に遊ぶ時間を子供たちは心から楽しんでもいた。先生方は親身で、子供の長所・短所をよく見抜き、父兄との定期面談も詳細・具体的なものだったという。籠池泰典の2人の娘の、先生としての評判も良い。子供も先生になつき、毎日先生に手紙を書くなど、父兄、児童、先生方が心で繋がっている幼稚園だった。
副園長の籠池諄子は典型的な大阪のおばちゃん気質と思われていた。教育に一所懸命だったことには誰も異存はない。ただ、子供の食事の世話や躾が充分でない母親には厳しく、反論でもしようものなら、凄まじく荒れ狂うのはテレビで放映された姿そのものだったようだ。その結果、退園させられた児童もいた。バッシングの時に園児の元父兄として出るのは、主にこうして退園させられた人たちである。
むしろ大多数の父兄はその教育方針を支持し、親に対しても言うべきことを言う園の姿勢は評価していた。
自ら保育園の園長を務めるある女性は、父兄の1人としてこう語る。
「親御さんに厳しくするのも、子供のことを考えてやっているわけだけど、中々あそこまで普通はできません。幼稚園も商売だから、今では親に対して下手に出るのが普通です。最初は違和感があったけど、子供達の事を考えて言っているのが分かったら納得しました。あんな風に叩かれる謂れはない。教育に熱心だっただけだと、そこは今でも信じています」
テレビで放映され騒がれた「安倍首相頑張れ」の選手宣誓も、こうした日常的な指導や先生方との家族ぐるみの信頼感の中の一風景に過ぎず、むしろ父兄間では、大阪特有の「ノリ」「ネタ」として理解されていたようである。「そういうこと、普通、幼稚園でやるか?」というような調子で、父兄たちは笑いながら興じていたとうのである。
一方、図越寛PTA会長は、今回の事件の前と後とでの、籠池夫妻のあまりの変わりように、深い混乱を覚えている。
「籠池夫妻を見ていて、人間とは何だろうかとか、本音と建前とか、多重人格とか、色々考えて戸惑っています。具体的な詐欺などは裁かれるべきです。実際に私の長女自身も被害者で、診断書を詐欺に悪用されていました。その憤りはある一方で、籠池夫妻と3年間過ごした中で、教育方針やあり方を信頼していただけに、ショッキングというか、どうしても理解できない部分がある。
・・・潔く認めて罰を受けるとか、被害者や寄付者に対して謝罪する、そういう行為が今のところ全くありません。こうした現状では、以前の教育内容も薄っぺらな嘘だったのかと考えざるを得ません」
図越寛PTA会長は保守的な理念や愛国心を籠池泰典と共有していると信じてきた。PTA会長としても、籠池泰典への信頼感は強かった。娘2人を幼稚園に通わせ、伊勢神宮の提燈行列や國神社参拝などに共に参じて過ごした3年と、その後の大き過ぎる変化は、図越寛PTA会長の中で人間そのものへの不信となる程、傷が深かったように見える。
逆に言えば、それだけ塚本幼稚園も園長一家も、真面目な父兄らから、信頼されていたのである。
だが、報道はそうした実像の片鱗さえも伝えない。
過去数十年、この幼稚園を誇りに思い、尊い思い出と共に大切にしてきた無数の卒園生や父兄や先生たちを踏みにじる虚像を垂れ流し続けた。
安倍叩きのためなら何でも許されるという延長上で、幼稚園の実像も、幼稚園関係者の想いも、園児や親たちの大切な記憶も全て穢し、破壊しつくす。こんなことが報道であり、マスコミの仕事であっていいのだろうか。
・・・それにしても、これのどこが「安倍疑惑」なのだろう。
過去の政治疑惑事件を思えば、今昔の感に堪えない。
昭和電工疑獄、ロッキード事件、ダグラス・グラマン事件、リクルート疑惑・・・。全て首相や、それに準ずる政治家を主役にした疑惑事件だが、政商が暗躍し、巨額の金が動き、報道も、真相究明に向けて総力を結集していたものである。
政治スキャンダルは巨悪の背景を伴うのが常識だった。
世を揺るがすほどの追及をするには、それだけの実態がなければならないことも常識だった。
森友学園問題はこうした常識の全てを覆す。
出て来る話題は、地方役場の交渉記録や幼稚園での選手宣誓や総理夫人の奔放さばかりだ。
何とふざけた話だろう。
だが、それでも、まだ森友学園騒動は序の口だったのである。
2017年3月1日の朝日新聞の社説では「森友学園 公教育を逸脱している」との記事が出た。「子どもの教育法として望ましい姿とはとても思えない」という書き出しで、園児の宣誓を批判し、教育勅語の素読を批判している。
だが、眼目はそんなところにはない。安倍夫妻に問題を結び付ける印象操作にある。
例えば、社説はこう疑問を呈する。
■「教育勅語は、天皇を頂点とする秩序を説き、戦前の教育の基本理念を示したものだ。『基本的人権を損ない、国際信義に対して疑問を残す』などとして、48年に衆参両院で排除・失効の確認が決議されている。この経緯からも、素読は時代錯誤だ」
⇒教育勅語も君が代も立憲君主国としては普通であり、フランス国歌よりはるかに穏健である。それを暗唱するのは趣味の問題で、キリスト教系の学校で「主の祈り」を暗唱するのと同じだ。私立幼稚園なのだから、いやなら親が子供を行かせなければいい。それが憲法20条で保障された信教の自由だ。
「基本的人権を損ない、国際信義に疑いを残す」として1948年に衆参両院で排除と失効確認が決議されたのだが、それは、占領軍の圧力によるものだし、また、国家全体としての扱いが問題だったのであって、内容がけしからんということには直ちにならない。
内容はあらゆる家訓や社訓や道徳家の言葉と同じで、そんなに間違っていることを書いているわけではない。
■安倍昭恵夫人は塚本幼稚園の「教育内容をどこまで知っていたのか。小学校の名誉校長を辞したが、経緯はなお不明なことが多い」。
⇒経緯に不明な点などない。強引な依頼を断れずに引き受けた肩書を、同学園が社会問題化したから返上したに過ぎない。
■「首相は当初、学園や理事長について『妻から先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている』と肯定的に語っていたが、その後、『学校で行われている教育の詳細はまったく承知していない』などと距離を置き始めた。いかにも不自然だ」ともある。
⇒全く不自然ではない。当初から安倍首相は「妻から聞いているが」と前置きした上で、学園を肯定的に語っていただけである。与り知らないところで寄付金が募られていたり、訪問していないのにホームページ上に安倍首相が訪問したと記載されていることを知れば、態度を豹変させるのは当然だろう。
■社説の末尾近くになると「売買契約に関する交渉記録が廃棄されたのも都合の良すぎる話だ」とある。
⇒行政規定上、通常の交渉記録は1年未満に破棄されることになっている。
「都合の良すぎる話」でも何でもない。
要するに、「経緯はなお不明」「いかにも不自然」「都合の良すぎる話」と、語尾を畳みかけることによる典型的な印象操作である。

●(社説)森友学園 公教育を逸脱している
2017年3月1日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12819044.html

●教育勅語とフランス国歌のどっちが危険か
2017年03月09日 22:11
http://agora-web.jp/archives/2024870.html

●教育勅語は軍国主義かを中立的に論じる
2017年03月09日 12:30
http://agora-web.jp/archives/2024857.html

◆籠池劇場番外ー鴻池浪速劇場
さて、2017年2月28日から参議院に移った国会審議も、森友問題に終始した。
共産党の小池晃が某自民党国会議員の事務所の面談記録を入手したとして、その記録を元に売却経緯の不透明さを指摘するというのが参議院での森友劇場
の始まりだった(3月1日)。直後にその当人が記者会見して、すぐに明らかになったが、この自民党議員は鴻池祥肇である。
鴻池祥肇は以前、籠池泰典から幼稚園での講演を依頼され、「その時の子供たちの態度は大変素晴らしいと思った。思想的にもわしに合うなと思いました」と言う。
ところが、2014年4月頃、籠池夫妻が議員会館事務所を訪れ、籠池の妻が、泣きながら紙に入ったものを差し出す。すぐに金だと察した鴻池は「無礼者。政治家の顔を銭ではたくような、そんなん教育者ちゃう、帰れ」と言って突き返したーこれが鴻池が記者会見で明らかにしたかった核心部分であろう。
鴻池は中身は幾らか分からぬが金を突き返したという。後に籠池は中身が3万円の商品券だったと釈明したが、むろんそんな筈はない。事情に詳しい人間によると、籠池はこの時、100万円を包んだが、鴻池から突き返されたと話していたという。
いずれにせよ、事は重大である。籠池が、自民党の地元有力国会議員に贈賄しようとしたの証言が当事者から出たのである。もし鴻池が金を実際に受け取っており、その記録が共産党の小池晃の手に渡るという形であれば、これ自体、事件である。
この、いわば贈賄未遂の暴露を機に、籠池劇場は、籠池の犯罪帳簿の様相を呈し始める事になるのである。
それにしても、なぜ鴻池事務所の面談記録などが流出し、共産党の小池晃の手に渡ったのか。
今回流出したものは極めて具体的な交渉記録だ。なぜこんな詳細な、自民党の大物議員の事務所記録を共産党が入手できたのか。共産党の諜報網がそんなに高度だということか。
どうもそうではないらしい。
鴻池自身が、今回の流出に対して、記者会見で全く怒りや抗議の色を見せていないのである。
それどころか、小池晃が国会で取り上げたペーパーが鴻池事務所のものかと聞かれた鴻池は次のように答えている。
「いや、どんな紙持っとるか知らんけど、うちはオープンです!もう、天皇陛下だけは起こしにならんけど、どんな人でもうちの事務所に出入りする」
共産党であっても出入り自由だということなのだろうか。
民進党ながら鴻池と近い櫻井充も「誤解のないように」と題されたメルマガで「鴻池氏が学校法人の認可を下ろさせたくないので、共産党に情報提供した」と断定し、この櫻井の発言を、鴻池は否定していない。おそらく、鴻池が共産党に情報提供したというのは正しいのだろう。
だが、「学校法人の認可を下ろさせたくない」という動機は当たるまい。
鴻池自身が贈賄を否定した事を自ら演劇的に証言してみせるのが、端的な目的だったのであろう。事実関係から言えば、籠池が金の受け取りを拒否した前後、鴻池事務所は、籠池の小学校設立をサポートし続けていた。騒ぎが大きくなれば、鴻池の名前が「政治家の介入疑惑」として挙がる日が来るのは避けられない。「疑惑」と書かれた後にいくら「金品の授受」を否定しても、疑いはなかなか晴れない。鴻池は、名前が出る前に、金品の授受がなかったことを示したいと考えたわけだろう。しかし、聞かれもしないのに記者会見を開いて釈明するのも妙な話だ。そこで国会で野党に追及させてから名乗りを上げようと考えたのではないか。
しかし国会で追及されるのは鴻池ではなく、安倍首相なのである。麻生太郎副総理に近いながら、安倍首相とは距離のある鴻池が”安倍に恩義があるわけでもなし、政局になれば自分が一番槍ということになる”とまで考えたかどうかは分からない。
だが、これが、安倍首相とは全く関係ないところで「政治家の関与」という言葉をマスコミが使う免罪符となってしまったのは間違いない。朝日新聞は、この鴻池の記者会見で、初めて森友問題を1面トップ記事に据えた(3月2日)。政治家が金銭授受を否定してみせただけで1面トップとは笑わせるが、逆に言えば大物政治家が直接関係していたことで、森友問題は国政問題に昇格してしまったと言える。
以後、朝日新聞の大見出しも記事件数も急増する。翌3月3日の1面に「森友側の要求、次々実現」、2面でも「政治家介入の有無 焦点」、社説には「政治家の関与、解明を」、3月4日には「森友側 政治家と接点続々」という具合である。安倍晋三という肝心な「政治家」は一切関係ないのに、「政治家の関与」「疑惑」と書かれ続ければ、印象上、読者には安倍首相の疑惑に見えてくる。鴻池祥肇の場外での一人芝居はは、印象操作を狙う朝日新聞にとって格好の素材になったのである。

●森友側の要求、次々実現 「購入のみ」の国有地、借り入れ 4千万円の賃料、2千万円台に
2017年3月3日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12822802.html
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、自民党参院議員の鴻池祥肇(こうのいけよしただ)元防災担当相の事務所が学園側から繰り返し陳情を受け、その際に作成した「陳情整理報告書」の内容が明らかになった。事務所側は口利きを否定しているが、結果的に学園側の要求が次々に実現していく経過が記されてい…

●(時時刻刻)政治家介入の有無、焦点 森友側「本省にアポを」鴻池氏側拒否 陳情記録
2017年3月3日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12822859.html
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題は、自民党の鴻池祥肇(こうのいけよしただ)元防災担当相の事務所の関与が明らかになり、新たな局面を迎えた。朝日新聞が入手した事務所の「陳情整理報告書」とこれまでの国会論戦からは異例な手続きが重ねられた実態が浮かんできたが、政治家の介入の有無など真相の解…

●(社説)森友学園 政治家の関与、解明を
2017年3月3日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12822700.html
政治家の関与が疑われる以上、すみやかに関係者を国会に招致し、不自然な取引の背景を徹底して調べる必要がある。
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題にからみ、新たな証言が出た。
自民党の鴻池祥肇(こうのいけよしただ)・参院議員が14年春、議員会館事務所を訪れた学園の理事長夫婦から「紙に入ったもの」を差し出され、「これでお願いします」と言われたという。鴻池氏は受け取らず、中身も見なかったと話す。
学園は当時、大阪府豊中市の国有地に小学校を設置する計画を進めており、国有地の賃借や取得を目指していた。紙の中身はわからない。だが、学園側が政治家に便宜を図ってもらおうとしたと考えるのが自然だ。
理事長には詳細を明らかにする責任がある。事実なら教育者としての資質も問われる話だ。
朝日新聞が入手した鴻池氏側作成の「陳情整理報告書」によると理事長や国との接触は2年半で25回あり、「賃借料をまけてもらえるようお願いしたい」などの要求も示されている。鴻池氏の地元秘書は理事長と国を仲介したことを認めている。
注目すべきは、取引が大筋、報告書にある依頼に沿って進んだことだ。
学園は当初、国有地を一定期間借りた上で購入する予定だった。しかし、財務省は府の認可方針が必要だと主張し、府は財務省の「確約」を求めた。
報告書には理事長の言葉として「鶏と卵の話。なんとかしてや」と書かれている。
実際、府私学審議会は15年1月、「認可適当」の答申を出し、翌月、国有財産近畿地方審議会が定期借地契約を「了承」した。府私学審議会の会長は「認可適当を出さないと国有財産の審議会が動かないこともあり、事務局同士が協議した」と取材に答えている。
小学校開設という結論ありきで物事が進み、中立公正であるべき審議会の議論がゆがめられた可能性はないのか。財務省と府はさらなる調査をすべきだ。
他の政治家の関与も焦点だ。財務省は交渉記録を廃棄したというが、記録がないなら、職員への聞き取りを進めるべきだ。
理解できないのは安倍首相の対応である。きのうの国会では「会計検査院がしっかり審査すべきだ。政府としてできることはそれが最大限だ」とまるでひとごとのようだ。
自ら疑惑の解明に指導力を発揮すべきだ。問われているのは、国民の共有財産である国有地が格安で売却されたのではないかという重大な疑惑だ。

◆口利きと陳情と贈収賄、どう違うのか
ところで、この種の必ず悪の本尊のように糾弾される「政治家の介入」という事の意味を、ここで少し浚い直しておこう。
そもそも、国民から相談を受け、行政に適切な対処を働きかけるという意味での「政治家の介入」は、寧ろ、政治家の重要な仕事である。民意を政治に反映させることは、法律を作る立法と並び、政治家の任務の柱と言ってよいのだ。行政は、国民に対して、しばしば杓子定規で強圧的である。民意を受けて当選した政治家が、そうした行政と国民の間に立つことで、行政は柔軟性を取り戻し、民意を受けて少しずつ動いていく。
実際、議員会館に置いてある議員との面会用紙の第1は「陳情」なのである。
「陳情」を厳密に定義すれば、憲法で認められ、国会法や地方自治法で規定されている「請願」の一形態で、国会または官公庁に実情を述べ、善処を要請することを意味する。国民にとって重要な権利である。
しかし、陳情に金の授受が加わると犯罪になる。
議員や官僚などの公務員が、その職務行為に対する対価として金品などを受け取れば収賄罪に問われ、贈った側は贈賄罪となる。また、他の権限ある公務員に働きかけて不正行為を斡旋して賄賂を受け取れば「斡旋収賄罪」に問われる他、「斡旋利得処罰法」も施行されている。こうして、「陳情」と「金銭の授受」がある場合は、厳密に区別される。
ところが、左派マスコミの報道は、政治家を攻撃する時、わざとそこを曖昧にするのである。その際の典型的な用語が「政治家の介入」や「口利き疑惑」などだと言っていい。これら「口利き」「政治介入」の負の語感を媒介にして、「陳情」に「贈収賄」の響きを持たせ、いかにも不正があったかのように連想させる印象操作である。
しかし、このような用語の恣意的な濫用は、バッシングされた政治家を害するのみならず、国民にとっての著しい不利益となる。
なぜか。
「口利き」や「政治介入」などの見出しで叩かれるのを怖れるあまり、政治家が正当な陳情を受けることにさえ臆病になるからだ。そうなると、無数の中小企業や無力な個人は、巨大な行政の権限に直接身を晒され、行政の不当な壁を乗り越えることが不可能になってしまう。
小沢一郎による平成初期の政治改革の結果、政治家に対する監視や縛りが強くなり過ぎ、政治家の資金力と権力は、今や非常に弱体化している。そうした中、政治家が利害調整や規制突破のために行政に介入することを悪のように追放すれば、行政が民意によって是正される機会は永久になくなってしまう。政治が金儲けになる金権政治は確かに政治を汚染したが、逆に、今日のように政治家を弱体化させ過ぎると、官庁とマスコミという選挙の洗礼を受けていない別の「権力」が増長する結果となる。今、我々が本当に警戒しなければならない「権力」は、みはや政治家ではなく、むしろ、行政とマスコミの結託の方なのだ。加計学園問題で、我々はその結託の腐敗堕落の一端を垣間見ることになるであろう。
今回の場合、鴻池祥肇は、贈収賄は否定しているが、鴻池事務所は陳情に応えている。正当な事だ。
先程、「森友側の要求 次々実現」という朝日新聞の見出しを紹介したが、この胡散臭げに見える見出しを、もし「国民の陳情 次々実現」と書いたらどうだろう。
まさに、政治の力による国民益の追求に他なるまい。
これが見出しのマジックなのである。

●森友側の要求、次々実現 「購入のみ」の国有地、借り入れ 4千万円の賃料、2千万円台に
2017年3月3日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12822802.html
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、自民党参院議員の鴻池祥肇(こうのいけよしただ)元防災担当相の事務所が学園側から繰り返し陳情を受け、その際に作成した「陳情整理報告書」の内容が明らかになった。事務所側は口利きを否定しているが、結果的に学園側の要求が次々に実現していく経過が記されてい…

◆籠池、補助金受給疑惑が発覚・忖度の追及
2017年3月6日には、新たな事態が出来した。
森友学園の違法性が指摘され始めたのである。
森友学園が補助金を不正に受給していたとの疑惑であり、2月9日の初報同様、朝日新聞のスクープである。
朝日新聞によると、森友学園は、国の補助金決定時には小学校建設費を約15億円と報告していたが、大阪府の私学審議会には7億5600万円と報告していたとというのである。金額が倍も違う。
現実にかかった金額が大阪府に報告した7億5600万円だとすると、補助金を倍額受け取っていた可能性が出る。この不正受給報道を受け、3月6日までに、大阪府は森友学園の小学校認可の先送りを決めた。こうして、鴻池祥肇に対する贈賄未遂に続き、補助金の不正受給までもが明らかになれば、安倍叩きどころではない。地方の小事件には過ぎないものの、事柄は「籠池の犯罪」という文字通りの事件性を帯び始めたと言える。
ところが、である。
事が「籠池の犯罪」になっては、安倍スキャンダルは終息してしまう。
その為、国会もマスコミも、籠池の容疑には追及の矛先を向けず、この後も安倍夫妻の関与という獲物のいない猟場から一歩も外に出ようとはしなかった。
事実、補助金の不正受給という刑事事件に焦点が移動しかかった同じ日、極めて問題の多い国会質疑が行われいる。
参議院予算委員会で、民進党の福山哲郎が、国有地払い下げに当たって、役所側が安倍首相や安倍昭恵夫人を「忖度」したのではないかと、安倍首相を追及したのである(3月6日)。
■福山哲郎
<総理が関わっていないという、昭恵夫人も関わっていない、ひょっとしたら被害者なのかもしれない、私もそのようにも考えたいと思います。しかしながら、この許認可が始まる直前に名誉校長に就任を受諾をして、寄附金集めには、安倍昭恵夫人が名誉校長だとか、さらには講演に来られているかとか、そういう話も出るはずです。
そして、これ大阪の財務局の立場で言えば、安倍昭恵夫人が名誉校長に就任している小学校を、手続きができないからといって先送りなんかして開校を延長したら、それは昭恵夫人に恥をかかせたのか、安倍総理に恥をかかせたのか、近畿財務局だって忖度するでそう。それは。(略)そこを延期するとか、そんなことしたら総理に恥をかかせることになる、そういうことを状況として作ったこと自身が問題なんじゃないですか。(略)だから、こういう不透明な手続きが積み重なるんですよ。
総理、いかがですか。>
無茶な質問である。
常識として政治家の妻が名誉校長に就任しているというだけで、世の中が動くことがあるのだろうか。パーティーの発起人に名前を連ね、出席すれば式に花を添えることになるとか、名誉職に名前を出せば拍がつくということは当然ある。首相夫人の名前があれば数万円の寄付金を出す人が多少増えることはあり得るだろう。
だが、そうした社会的な箔と事業の信頼性の担保はまるで次元が違うことである。例えば、安倍昭恵夫人が、UZUを出店する時の融資は安倍首相の妻であることでまるで特例にならなかったと述懐している。当然だろう。日本は良くも悪くも「顔」で事業が決まる社会ではもはやないのである。
とりわけ、安倍昭恵夫人の存在が役人の忖度する理由になったとは信じられない。地方役場から見て首相夫人は遠い存在でしかない。幾ら地方の役人が首相夫人に忖度しようと、総理の覚えがめでたくなる可能性はゼロである。それでいて後から手続きに瑕疵があったと指摘されたら一巻の終わりなのだ。地元に強大な利権を持つ政治家を忖度するならまだしも、一体誰が一文得にもならず、リスクしかないような忖度をするだろう。
その上、役人の忖度の有無は、安倍首相には答弁不可能に決まっている。
いや、それ以前に忖度は内心の事実なのだ。実は、国会で「忖度」が質疑されたことは、人権とデモクラシーを根幹から揺るがす恐ろしい可能性を秘めているのである。
人が何かを忖度したかしないかは、本人の内心でしか分からず、多くの場合、本人さえ無意識だろう。物証がないまま、いや物証がないからこそ、そうした忖度を根拠に社会的に糾弾するというのは、内心の自由の侵害そのものだ。
前近代の拷問や、全体主義国家の「自白」の強要と同じ構図なのである。スターリンがある人間を粛清しようとする時、物証など必要ない。スターリンに謀反する内心を想定して、それを根拠にある人間や一族・党派を抹殺・殺戮すればいい。
福山哲郎自身は、質疑の流れの中でふと発言したに過ぎなかろう。だが、左派マスコミがこの「忖度」疑惑を大々的に報じ、安倍政権を攻撃し始めたその後の有り様を見ると、この質疑は放置できない。
これは人権侵害であると同時に、デモクラシーの根本的な否定でもあるからだ。
デモクラシーで問われるべきは、機関決定の手続きの違法性の有無である。それ以上であってもそれ以下であってもならない。忖度の有無は手続きの違法性に関わらない。手続きが適法なのに、忖度があれば政治が糾弾されるとなれば、政治の正統性を担保する方法がなくなってしまう。
民進党をはじめとする左派野党や、朝日新聞をはじめとする左派マスコミは、安倍昭恵夫人という「家族」への「人民裁判」に続き、この段階で「忖度」という「内心の自由」を問うに至った。この事の危険性を、政府与党や日本社会が強く指弾しなかったために、この後、加計問題でも、「友人関係による忖度の有無」で3カ月、安倍首相を攻撃し続けるロジックを、彼らに許してしまうことになるのである。
虚報と忖度に基づいた、物証なき責任追及ーこんな暗黒社会の原理を、我々は2度までも許容したことになるのである。
事後的にでもよい、日本社会は、この2件(森友問題・加計問題)の煽動者に責任を取らせなければならない。さもなければ、今後、朝日新聞をはじめとする左派マスコミのような世論を煽動する力のある全体主義者が人民裁判的に振る舞っても、許される先例になりかねないからだ。
なお、この日 3月6日、国会では自民党の西田昌司議員が質問に立ち、佐川宣寿理財局長から、国有地売却の全体像を的確に引き出している。もしマスコミがこの質疑をきちんと国民に伝えれば、「森友問題」はほぼ終息していたであろう。
しかし、朝日新聞は1行も記事にせず、テレビ報道もまたこれを黙殺した。
こうして森友問題の引き延ばしが図られ、朝日新聞の第一報(2月9日)から1カ月を経た3月8日、民進党の福島伸亨から、国家戦略特区をめぐり加計学園に不自然な点があるとの質疑が初めて登場し、それを朝日新聞が翌日報じた。
3月6日早朝には、北朝鮮が中距離弾道ミサイル「シカッドER」(射程1000km)4発を発射し、うち3発が日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下している。北朝鮮ミサイルの命中精度が急激に向上している中で、左派野党と朝日新聞ら左派マスコミは、それをそっちのけで森友学園騒ぎを演じつつ、裏では加計問題で次の弾を撃ち込もうと、仕込みに血道を上げ始めていたのである。

●西田昌司「参議院 予算委員会 質問」(H29.3.6)
https://www.youtube.com/watch?v=pj72xHAkm5o

◆稲田朋美バッシング
森友問題2カ月ー。
2017年3月9日には、小学校校舎建設費について、従来の報道では2通とされていた価格の異なる契約書が、実は3種類あったことが明らかになった。
施行を担当した藤原工業は大阪府建築振興課に対して建築費を15億5520万円と報告している。ところが、森友学園側は、大阪府私学審議会には、7億5600万円とする契約書を提出し、既報とは異なり、国土交通省には、23億8464万円の契約書を提出していたというのである。
私学審議会に低価格で報告したのは、森友学園の財務状況が厳しいため、自己資本比率を高く見せかけ認可を可能にするためだ。一方、国に対しては、最大限の補助金を得るため、逆に金額を大きく申告したわけである。
3月10日の朝日新聞「時時刻刻」は「森友疑惑増すばかり」との大見出しが躍った。
確かにその通りなのだ。
森友学園の経営に不正がある以上、「森友疑惑」は存在するわけだからだ。補助金不正が明らかになった後の10日の記者会見でも、籠池泰典はとうとうと自説とメディア批判を述べ立てた。不正が露見する中、饒舌にメディア批判をがなり立てれば、報道する側の大義名分も立とうというものだ。
その上、不要なつまずきが生じた。防衛大臣・稲田朋美の答弁ミスである。
稲田朋美は、3月10日の国会で民進党・白眞勲から籠池との関係を聞かれ、次のように答弁した。
■稲田朋美
<この点、何回も私も御答弁申し上げておりますけれども、森友学園の籠池理事長夫妻とは、面識こそありましたが、ここ10年来、お会いしたこともございませんせんし、弁護士時代を通じて相談を受けたこともありませんし、ましてや、本件に関して言えば、報道されるまで小学校を設立するなどという、聞いたことすらありませんし、本件土地売買に何の関係もございません>
ところが、翌日に答弁修正と陳謝に追い込まれたのである。
確認し直したところ、稲田朋美はかつて学校法人森友学園の代理人として裁判に出廷していた。2004年12月、抵当権抹消に関する訴訟だった。夫で弁護士の稲田龍示が同年10月に森友学園と顧問契約を結んでおり、稲田朋美は代理で出廷していたのである。稲田朋美が国会議員になる直前のことである。
大筋から言えば、答弁に別段の誤りはない。13年前の代理出廷の有無など、本来、政治家の答弁による責任問題の範疇を逸脱しているという他はない。
ところが、記憶の欠落が余りに徹底的で、そのため稲田朋美の否定が余りにも強い口調だったために、格好の攻撃対象となってしまった。森友スキャンダルの狂騒状態を考えれば、稲田朋美は記憶ではなく記録による守りの答弁に徹すべきだったのである。
稲田朋美の場合、彼女の傷はそのまま安倍首相の傷に直結する。
稲田朋美は、2005年、当時幹事長代理だった安倍晋三に抜擢されて国政に出て以来、戦う愛国保守の姿勢を強く打ち出し、保守層の支持を受けてきたが、とりわけ安倍晋三その人に厚遇されてきた政治家だからだ。
通常の政治家のキャリアよりもだいぶ点の甘い女性政治家の登用だが、それでも、稲田朋美の場合、当選3回で第2次安倍政権の規制改革担当大臣、さらに政調会長に抜擢されたのは異例だった。党3役は並みの閣僚よりも実権は強い。政調会長は既得権益の党内調整も視野に入れながら政策に練り上げねばならず、力量を要する。総理への階段となり得るポストである。その後は防衛大臣に就任し、2017年7月28日、日報問題で大臣を辞任した。厚遇の前半は、人材育成の意味かと見えたが、政調会長、そして防衛相へという性急な登用は、安倍晋三その人への批判ともなる結果となった。
朝日新聞が1面大見出しで「虚偽答弁」を攻撃したのは言うまでもない。種切れになりかかっていたところに安倍政権の本丸から出た格好の敵失だったのである。
朝日新聞の、稲田朋美に対する「虚偽答弁」というレッテル貼りはおよそ半月続く。
14日の時時刻刻で「稲田防衛相と森友学園、疎遠? 旧知?」、15日は1面トップで「稲田氏一転『出廷を確認』『記憶違い』弁明」「答弁撤回し謝罪 森友裁判代理人」となり、3日間に8本の大見出しを打っている。最終的に朝日新聞はこの件を、3月25日「稲田氏また釈明 籠池夫妻と国の話し合い『夫が同席』森友学園問題」まで引っ張った。
常軌を逸した叩きぶりだが、それには意味があったのである。
第1に、安倍首相の最側近に打撃を与えることで、自民党内の安倍首相の力を削ぐことになり、第2に安倍政治の理念の後継者とされる稲田朋美を叩くことで、保守政治の後継者を潰せることになる。朝日新聞の稲田叩きに力が入るのも当然と言えよう。
中でも、最たるものは、3月16日「籠池氏取材した作家が発言紹介」「稲田氏と握手し話した」という見出しを打たれた記事であろうか。
稲田朋美は籠池泰典との関係を否定しているが、籠池の方では、最近、稲田朋美と握手もし、話もしたというのが、見出しの意味である。
ところが驚くではないか。記事を読めば、籠池が「稲田朋美と最近会った」というのは、2015年10月「保育園関連の会合で会ったときに、大勢の中で握手をして話をした」ことだというのであう。普通、そんな会い方に「稲田氏と握手し話した」という見出しを付けるだろうか。
ちなみに朝日新聞はこの籠池の発言を菅野完に取材して記事にしている。菅野完は、時に保守を自称するなど言動に謎が多いが、実際には極左活動家であり、しかもその括りからもはみ出る人物である。『週刊金曜日』によると、2012年7月25日に首都圏反原発連合(反原連)に参加するが、女性問題がきっかえとなり、8月8日に本人の意志により脱退した。この性的暴行については本人も認め、最近、判決も出ている。翌年2月には、しばき隊の結成とともにメンバーとなった。「レイシストをしばく」と称する団体の結成メンバーだったわけである。だが、デモ活動のカンパ金を着服したとされ、後に脱退している。朝日新聞が「作家」と銘打ち公然と取材源としていいような人物なのだろうか。ところがこの後、我々はこの特異な人物が森友問題の陰にしばしば出没するのを見ることになるのである。

●籠池氏「会って握手」と主張 稲田氏「記憶ない」と否定
岡戸佑樹、力丸祥子
2017年3月15日22時10分
http://www.asahi.com/articles/ASK3H5QW8K3HUTIL02P.html
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、ノンフィクション作家の菅野(すがの)完(たもつ)氏が15日、同学園の理事長を辞任する意向を示している籠池(かごいけ)泰典氏と面会し、報道陣の取材に応じた。
稲田朋美防衛相が
「10年ほど前から(籠池氏と)関係を絶っている」
としている点について、
籠池氏が
「都内で会って握手をした」
と主張している、と述べた。
籠池氏は15日に予定していた日本外国特派員協会(東京)の会見をキャンセルし、この日午前に上京。都内にある菅野氏の事務所を訪れた。
菅野氏は面会途中、事務所前で待つ報道陣の前に現れ、
「保育園関連の会合で会ったときに、大勢の中で握手をして話をした」
という籠池氏の発言を紹介。
日時は、
「僕が調べたら、2015年10月で自民党本部だと思う」
と話した。
稲田氏は前日の14日、これまでの説明を翻して学園側の代理人として民事訴訟に出廷していたことを認め、国会で謝罪。籠池氏とは
「10年ほど前に失礼なことをされ、関係を絶っている」
と主張していた。
菅野氏は、稲田氏が指摘した
「失礼なこと」
をめぐる籠池氏の説明として、訴訟の進行をめぐって
「納得しかねたのでファクスを送ったことだろうと言っている」
と話した。
一方、稲田氏は15日の菅野氏の発言を受けた取材に対し、事務所を通じて
「多数の者が参加する業界の会合、政策会合や講演会などの場にお見えになったのかもしれませんが、記憶に基づきますと、お会いしたという認識はない」
と回答した。
菅野氏によると、籠池氏は
「大阪府豊中市の国有地売却をめぐる問題が報道された後、財務省の佐川宣寿理財局長から弁護士を通じて『10日間でいいから身を隠してくれ』との連絡を受けた」
という趣旨の説明をしたという。
こうした内容は同日午前の国会でも取り上げられ、同省の佐川局長は
「隠れてくれなどと言った事実はない」
と否定。
籠池氏の代理人弁護士は同日夜、
「事実誤認。佐川局長と話をしたことはない。財務省の他の職員からも言われたことがない」
とし、代理人を辞任したとする談話を報道各社に送った。
菅野氏は、籠池氏がこの日の会見をキャンセルした理由について
「色々な事情がある」
とした上で、
「こんな状況で話をすると事態を正確に伝えられない性格の方。そういうことをご自分で判断されたのがひとつの要素」
と述べた。
同日夕、菅野氏の事務所を出た籠池氏は報道陣に手を上げ、無言で車に乗り込んだ。(岡戸佑樹、力丸祥子)
■森友学園の弁護士、代理人を辞任
森友学園の代理人弁護士は15日夜、学園の代理人を辞任すると明らかにした。報道各社あての文書で発表した。同日正午に籠池泰典氏夫妻に辞任の意向を伝え、夕方、了承を得たという。
また文書では、籠池氏が
「財務省の佐川宣寿理財局長から弁護士を通じて『10日間でいいから身を隠してくれ』との連絡を受けた」
という趣旨の説明をした、というノンフィクション作家の菅野完(すがのたもつ)氏の話について、
「事実誤認」
と否定。
「佐川理財局長とは面識もありませんし、話をしたこともありません。財務省の他の方からもそのようなことを言われたことはありません」
と記した。

◆寝返った籠池
2017年3月16日ー塚本幼稚園の卒園式である。
この日を境に、籠池泰典は、それまで尊敬の念をもって語り続けていた安倍首相夫妻を、貶める言辞を弄することになる。
卒園式の式辞で、園の講堂を埋め尽くした園児と父兄を前に、副園長で籠池の妻・諄子は、次のような驚くべき発言をしたのである。
「みなさん、本当にこの政府を私は潰してしまいたい」
「私の1人の革命ではないか」
「園長は半年以上ブタ箱に入らされるそうです」
「安倍政権は腐ったものです」
「園長は本当に国のためにやってんだったら、こんな時ほど内閣が切り捨てないで助けてくださったらええんじゃないですか、(安倍首相は)自分もブタ箱に入れと言いたいです!」
さらには「本日をもって塚本幼稚園は閉園します」と発言した。
父兄によれば、籠池もまた「安倍首相から小学校設立に100万円の寄付があった」「かなり仲良かったのに裏切られた」などと発言したという。閉園との突然の宣言に驚いたPTA会長の図越は、籠池に取り消しを迫り、舞台上ではマイクの奪い合いになった。
会場は一部を除き、凍り付いたように静まり返っていたという。
ある卒園児の母親は、涙が止まらなかったと言葉少なに語る。それまでの幼稚園の素晴らしさ、教育方針への感謝・・・。バッシング報道がひどくても園の実態の良さを信じてきた。それをよりによって子供にとって晴れの日に、籠池夫妻自らが足元から崩してしまう想像もしなかった有り様に、涙しかなかったというのである。
卒園式は関係者以外を厳重に排除して行われたから、100万円を安倍首相から受け取ったとする籠池の発言は当初、外には漏れていない。が、同じ日の午後、籠池は参院予算委員会の現地調査で、同様の発言を繰り返した。
「我々がこの学園を作り上げようとしたのは、皆さんのご意思があってこそやと思っております。しかも、そのご意思の中には、誠に恐縮ですが、安倍内閣総理大臣の寄付金が入っておりますことを伝達します」
安倍首相から寄付金を貰っていたというのである。
この後、籠池が受け取ったとしている金額が100万円であることもすぐに明らかになった。
ワイドショーの時間帯だったため、この発言が各局中継で、驚きをもって報じられたのは言うまでもない。
むろん、仮に安倍首相が森友学園に寄付をしていたとしても、何の問題もない。政治家への不法な献金というのはあり得ても、政治家から学校法人への寄付は違法ではない。むしろ奇特な行為というべきだ。
が、安倍首相側は、菅義偉官房長官の記者会見を通じて、この事実を即座に否定する。
それにしても、卒園式の祝辞で、安倍首相を罵倒し、突然100万円の寄付を公表するほど追い詰められた籠池夫妻の異常な心境は、何によるものだったであろう。
問題が大きくなり始めた後、籠池諄子は、安倍昭恵夫人に対して再三メールや電話で相談を続けていた。メールは後に、政府側から公表されたが、その公開メールを少し辿ってみよう。

◆籠池諄子ー安倍昭恵の往復メール
<2016年6月4日>
■籠池諄子
ご無沙汰しております。本日「殿利息でござる」の映画を観てきました ある方が籠池さんとだぶるからと勧められての事清まりました
■安倍昭恵
携帯水没でデータが一部飛んでしまいました。失礼ですが、お名前を教えて下さい。
■籠池諄子
今晩は 塚本幼稚園 籠池泰典の家内です
■安倍昭恵
大変失礼致しました
<2016年6月5日>
■籠池諄子
殿利息でござるの映画を是非ともご覧ください 籠池

この前年の2015年9月に安倍昭恵夫人は名誉校長を引き受けているが、籠池諄子からのメールは無沙汰挨拶で始まっており、一方、安倍昭恵夫人は「籠池」という名前を見ても人物を同定できずに名前を教えてくれと返信している。それに対して籠池諄子は自分の名ではなく「塚本幼稚園 籠池泰典の家内」と名乗っている。
安倍昭恵夫人と籠池夫妻、特に妻の籠池諄子とがいかに親密かが報道で強調され続けたが、実際の2人の関係がどの程度だったかは、この冒頭部分だけでも分かる。
また総理夫人への無沙汰挨拶のメールで、映画「殿利息でござる」を薦める籠池諄子の対人距離感や社会性の特殊さも推測がつく。
この後も散発的に籠池諄子から安倍昭恵夫人へのメールがあるが、注目されるのは、森友問題が事件化して10日経った2017年2月18日からのやり取りである。
<2017年2月18日>
■安倍昭恵
この度のことはどうなっているのか、ご説明もなく、マスコミから追いかけられて戸惑っております

安倍昭恵夫人にしてみれば、成り行きで名誉校長を引き受けただけで、籠池の事業計画を全く把握していない。説明がないので、マスコミにどう対処していいかも分からずメールで問い合わせたのである。

<2017年2月21日>
■安倍昭恵
なぜ売却価格を非公表にしてしまったのですか。やはり怪しまれるようなことはしない方がよかったのかなあとは思います。祈ります。
■籠池諄子
(略)主人は何度もこたえていますが伝わりません 公開しなかったのは、土壌汚染や廃棄物のある土地で開校しようとしていると、悪評をたてられたら困るのでしませんでした。
とメールしてください

籠池泰典は、様々な取材やこの後の証人喚問で、非公表にした理由は別にないと説明しているが、妻の籠池諄子は本当のところを説明しており、それは実は財務省が再三国会で答弁した理由と同じである。こんなことをなぜ籠池泰典は一々隠したがるのであろうか。
次の2017年2月25日の籠池諄子のメールには注目すべき一節が表れる。
「この際はっきり首相に申し上げます。私の主人は一人でここまでしてまいりました誰も助けていただいたことなどありません
政治家は保身ばかりで助けてはくれませんこっちが力をつければすりよるのでしょうからこの学校は必ず認可をとりたいです」
政治家の後押しが無かったことの明確な表明である。安倍憎しに転じた後、籠池泰典は安倍昭恵夫人の力で事が進んだかのような発言を繰り返し始めるが、少しでも安倍昭恵夫人の力で事が進んだと感じていたら籠池諄子はこんな文章を書くまい。また、地元政治家も、陳情を繰り返した割には事柄の進展にさして力にならなかったというのが籠池夫妻の実感だった、それがこの文面に滲み出ている。

<2017年2月25日続き>
■籠池諄子
安倍総理が森友学園に抗議したといわれたのはショックで、初村秘書の安倍昭恵さんからの文面 そして娘や園長にかなり醜い対応をされたのは政治の世界は怖いなあと正直思いました(略)
幼稚園に国会議員が来て自民党を守るため昭恵さんの写真を外してほしいといわれました要は私達わからないものが政治に首を突っ込むといけないんだと勉強いたしました
■安倍昭恵
私もよくわかりませんが、色々と気を付けなくてはいけないことがあります。私が関わったということは、裏で何かがあるのではと疑われないように、細心の注意を払わなくてはならないということだったのでしょう。
まず非公開だったことが疑われることになりました。そしてあまりにも熱い思いで突き進まれたために、色々なところに歪みもあったのではないかと考えます。
主人が総裁選挙で講演をお断りしたとき、ひどく怒っておられたとのことでうちの事務所は不信感になってしまいました。
私は同じように夫のやっていることを信じて応援しています。総裁選挙はこちらとしたら何事にも代えられない一大事でした。また、幼稚園をご紹介した際も、あまりにも悲しい留守番電話が残っていて、私は愕然と致しました。
人はなかなか思いをその通りには伝え合えないものです。そんな中で、誤解が生じていったことがあり、園長のご説明を理解することができなくなったのかしれません。(略)

「私が関わったということは、裏で何かがあるのではと疑われないように、細心の注意を払わなくてはならないということだったのでしょう」というのが、口止めメールのように朝日新聞をはじめ左派マスコミで喧伝された。だが、これが「裏で何もない」からこそ書かれた文面なのは明らかだろう。また、安倍昭恵夫人は「非公開」が疑念を生じたこと、「そしてあまりにも熱い思いで突き進んだ」結果「、色々な歪が生じた」ことを正確に指摘している。左派マスコミは安倍昭恵夫人の関与に固執し続けたが、安倍昭恵夫人が籠池泰典の事業計画を全く知らず、報道で初めて認識したことを一連のメールはよく伝えている。
また、安倍事務所と籠池側の行き違いもこのやり取りで触れられている。総裁選挙の最中に、安倍首相は塚本幼稚園で予定されていた講演を断らざるを得なくなり、その際、安倍事務所は籠池側から厳しく責められていたのである。メールで籠池諄子は、逆に、森友騒動の中で、安倍事務所側から籠池泰典に厳しい対応があったことに苦情を言い、安倍昭恵夫人は留守電のメッセージに愕然とするものがあったと書いている。安倍昭恵夫人や安倍事務所らは、支持者としての籠池家の機嫌を損ねぬよう、総裁選の時点から齟齬を飲み込んで付き合っていたことになる。安倍昭恵夫人と籠池夫妻の「親密な関係」そのものが作り話だったのである。

<2017年2月28日>
■安倍昭恵
私は講演の謝礼を頂いた記憶がなく、いただいているのなら教えて頂けますでしょうか。申し訳ありません。
■『私は講演の謝礼を頂いた記憶がなく、いただいているのなら教えて頂けますでしょうか。申し訳ありません。』あまりにひどい なぜその情報はどなたからですか 全国の方々から励ましのメールがどっさり届き励まされます 絶対おかしい!
■安倍昭恵
報道されたようなので、確認です。
■籠池諄子
えーひどい ひどすぎます 応援メールをみていただきたいぐらいです
■安倍昭恵
私も籠池園長の熱意は信じています。 本当に記憶から飛んでしまっていて、他の講演等は全て振り込みか、銀行に入れて税理士事務所に管理してもらっているのですみません。

籠池諄子のメールは、はぐらかしなのか、意味がよく分かっていないのかは分からない。
ただしはっきりしていることがある。安倍昭恵夫人は講演料を受け取った場合、振り込みか銀行入金をして税理士に管理させていると述べている。森友学園で講演料を受領していれば、同じ措置を取ればよく、安倍昭恵夫人には隠す理由は全くない。
一方、籠池側にしても、払っていない講演料を無理に払ったことにする必要もなかろう。偽証を禁じる国会証人喚問でさえ、籠池泰典は、刑事訴追に関係ないとあらば、無用な虚偽答弁を幾つも重ねている。どうも籠池夫妻には意図してというよりも、自動的に事実と創作が混在してしまう病理があるのではあるまいか。
そして、籠池が安倍攻撃に転じた直後、2017年3月16日のメールのやり取りとなる。
<2017年3月16>
■籠池諄子
安倍首相はどうして園長を地検にいわれたんですか 国は自分等に大事な民衆をきりすてるのは許せない国会にでます 安倍首相を
■安倍昭恵
それは嘘です。私には祈ることしかできません。
■籠池諄子
尊敬していたのに小学校をやめ 幼稚園は 破産 建築や社長は破産 お父さんは詐欺罪あんまりにも 権力を使うなら死にます
■安倍昭恵
私もどうしていいかわかりません。権力など使っていません。神様はどこに導こうとしているのか。とにかく祈っています。自分達の保身ではありません。日本の将来のためです。
■籠池諄子
嘘の情報
■安倍昭恵
100万円の記憶がないのですが。

それまでの調子と打って変わり、安倍攻撃に完全に転じているが、幾つも奇妙なことがある。
第1に、安倍首相が籠池泰典を地検に逮捕させる命令を出したかのように信じ込んでいる。荒唐無稽な話である。
第2に、国会に出ると書いている。証人喚問の事であろう。これ又妙な話で、なぜ急に国会で証言したくなったのか。
第3に、最後に安倍昭恵夫人が100万円を渡した覚えがないことをメールしているが、籠池諄子からの返信はない。これは何を意味するのか。
安倍首相が籠池泰典を裏切り、検察に逮捕させる方針に転じたから、証人喚問に出て安倍首相に都合の悪い事を話してやれと吹き込んだ人物が、この直前にいたのではあるまいか。
そうしてその、安倍首相にとって都合の悪い話が100万円の寄付として突如言い立てられ始めたのではにか。
ここまで一連のやり取りを見ると、籠池諄子にははぐらかしや意味不明なメールはあっても、安倍昭恵夫人に向かって正面から嘘の主張はしていない。激情家ではあっても根は純粋な人間なのであろう。返信をしていないのは、この100万円が作り話だからだ。面と向かってメールで嘘を主張するー安倍昭恵夫人に思いの襞にわたる相談をし続けた籠池諄子にとって、それは超えられない一線だった。返信がない事自体が、何よりも正直な答えだったのであろう。
ところで、「安倍総理が園長を地検に」などと籠池夫妻を信じ込ませたのは誰だったのか。
実は、私も場違いなピエロのように、このシーンに登場している。このメールのやり取りの最中、安倍昭恵夫人から相談を受け、私は数日の間、籠池泰典と電話連絡をしていたのである。
<2017年3月10日>
■安倍昭恵
小川榮太郎さんがFBで反論しています。少しずつこの状況が異常だということになってくるはずです。
■籠池諄子
紹介してください 失業するので本をかいて借金をかえします

私は当時このバカ騒ぎに全く興味がなく、事件を殆ど知らなかったがーこうしてドキュメントを書いているので白状しにくいが、その頃は、日本でも特にこの事件に無知な人間の1人だったろうーマスコミのバッシングが異様であることにはさすがに気付いていた。バッシングに晒されていた籠池泰典を心配する安倍昭恵夫人から相談された私は、それまで面識のなかった籠池泰典に電話をし、メディア対応に強い弁護士を付けるよう助言した。
とりわけ、2017年3月15日は、早朝から籠池泰典と電話で数度交わしている。私は他人事ながら翌日の卒園式が心配だった。園児を守るためには、メディアに対して喧嘩腰にならず、広報を通じて穏便に「卒園式を温かく見守ってやってくれ」と依頼したらどうかと助言したのである。
午前の電話までの籠池泰典は礼儀正しく常識的だった。
ところが、同じ2017年3月15日の夜7時過ぎ、それが豹変する。
私の掛けた電話に籠池泰典は出ず、代わって出た籠池諄子から、私はいきなり「昭恵さんに裏切られましたわ。もういいです!」と怒鳴りつけられ、電話を切られたのである。
私は呆然とした。一体、この間に何があったのか。
籠池夫妻は、この日予定していた記者会見を急遽キャンセル、代わりに飛行機で東京に向かい、そこで1人の驚くべき人物に長時間会っていることがテレビ報道で明らかになっている。
それが驚くべきことに、稲田朋美報道で、朝日新聞の記事に登場していた菅野完だったのだ。
菅野完は籠池夫妻と会談後、ひとり報道陣の前に姿を現し、「籠池さんは僕にしか話をしたくないと言うてはるんですよ」などと、まるで籠池夫妻の代理人のようであった。なぜ、安倍首相の信奉者で、保守系学校経営者だった籠池夫妻が、特異な極左活動家の菅野完と会うことになったのか。
菅野完は、『日本会議の研究』で、日本会議と宗教法人生長の家、そして稲田朋美や百地章ら「改憲勢力」を結ぶ接点の1つとして「園児に戦時歌謡を歌わせる愛国幼稚園」=塚本幼稚園に言及していた。朝日新聞の第一報が、籠池泰典を「日本会議大阪の役員」と書いていた(朝日新聞は書いていないが、実際は2011年に退任していた)ことや、菅野完を「作家」と持ち上げていることを思い合わせると、朝日新聞側と菅野完の接触はかなり早い段階からだったのではないか。
事実、菅野完は朝日新聞の第一報があった2017年2月9日以降、取材を活発化させる。翌々11日には「不自然極まりない『軍歌を歌う幼稚園』運営法人の国有地取得の経緯」と題して、朝日新聞の報道を補完する記事をネット上で発表し、15日には籠池夫妻に取材を申し込んだが拒否されたことを自身のツイッターで明かしている。2月21日発売の週刊誌『SPA!』に寄せた記事では、塚本幼稚園をやめた保護者や近隣住民などに取材を重ね、「塚本幼稚園で行われていることは、児童虐待だと言わざるを得ない」と結論している。
ところが、この仇敵同士が顔を合わせる機会が生じたのである。
3月10日の記者会見だ。籠池諄子は会見中、菅野完が厳しい質問を投げかけると「あ〜あれが一番悪いやちゃ!」と叫んでいた。しかし、長男の籠池佳茂の見方は違ったようだ。籠池佳茂は事件を機に多年の義絶を解消して父に強力を始めていたが、その夜、菅野完を酒の席に誘う。
菅野完は、この好機に、籠池佳茂を梃に、籠池夫妻と保守を離間させようとしたのではないか。籠池佳茂自身は労組の職員だったこともある。父との義絶も長い。酒を飲むと激情し、感情の振幅が大きい。一匹狼の菅野完との間で、何かが化合し、共鳴を生じたのであろうか。
2人は翌日、籠池泰典に会い、何らかの説得に動き出したという情報がある。少なくともこの日を境に籠池側に、安倍夫妻への猜疑心が芽生えた可能性は高い。それまで連日、籠池諄子から安倍昭恵夫人に寄せられていたメールがこの日から全くなくなるのである。何らかの説得工作が続く中、最終的に、3月15日、籠池夫妻は東京で菅野完と面談し、完全に籠絡されたのであろう。安倍首相が裏切って、自ら指示をして検察に籠池を売ったという趣旨のことを聞かされたのであろう。安倍首相にも自民党にも、もはや何らの援護射撃も期待できない。ならばいっそ左派野党側をを味方につけた方が延命の可能性が出るのではないか。−
仮にそんな話の成り行きだったとすれば愚かという他はない。司法の独立の下で、安倍首相が逮捕の引き延ばしの指示もできなければ、逆に逮捕を促すこともできるわけがない。
さらに言えば、保守系幼稚園としての信頼は、何はともあれまだこの時期残っていた。籠池夫妻に今後の再生の可能性があったとすれば、ほとぼりが冷めた後、保守系有志の支援の輪による社会復帰だけであったろう。実際、デヴィ夫人は応援団を買って出て、この時期にあえて寄付もしている。補助金不正は、許されないことではあっても、私腹のためではなく、小学校建設の一途な情熱のために無理な資金繰りをしたとの言い訳は付く。謙虚な謝罪と償いよる更生はあり得た。
安倍昭恵夫人も最後まで切り捨てず、祈りで応援し続けるという首相夫人としてはギリギリのメッセージを発し続けていた。
しかし、この崖っぷちで籠池夫妻は安倍夫妻への信でも、保守系学校経営者としての矜持でもなく、菅野完を選んだのだ。
そして、菅野完と長男の籠池佳茂の立案をもとに、3月16日の現地視察の後、民進、共産、自由、社民の野党4党の議員4人だけが、大阪府豊中市の籠池の自宅を訪問し、密談1時間に及んだのである。社民党の福島瑞穂、民進党の今井雅人、共産党の小池晃、自由党の森裕子の4人である。福島瑞穂は、逮捕される前に全てを話してしまえと唆し、森裕子は党首の小沢一郎の名前をしきりに出し、「小沢も心配している。ホテルにかくまう用意がある」などと籠絡に努めていたとされる。破産と逮捕が射程に入っていた籠池にしてみれば、全盛期の小沢の印象から、頼り甲斐を感じたかもしれない。
が、籠絡する方もする方なら、される方もされる方だ。
籠池の教育理念が、神道や教育勅語、日本のよき美風と素晴らしい歴史にあるのならば、4野党はその真っ向からなる否定者ではないか。
一体籠池の「日本」とは何だったのか。教育勅語の奉唱、神道による小学校の構想とは何だったのか。
確かに、籠池は報道をきっかけに、幼稚園の風評被害に始まり補助金詐取の実態が明らかになり、補助金の返還請求と学校認可取り消し、逮捕と借金と社会信用の失墜だけが残るという余りにも悲惨な結末を迎えつつあった。
理屈でもなく、今や、安倍首相への逆恨みの情念が、彼を突き動かし始めたのか。
それにしても、菅野完ー朝日新聞ー4野党、そんな胡散臭いリンクに乗ってどうしようというのだろう。彼らがいずれも売名や安倍叩きに籠池を利用しているに過ぎないのは誰が見ても明らかではないか。
一方、「100万円」発言を機に、与党側も籠池泰典の証人喚問に応じる方針に一転した。
自民党の竹下亘国会対策委員長が「籠池氏の発言は総理への侮辱であり、たださなきゃいけない」として証人喚問の要求に応じたことが批判されたが、デモクラシーの我が国では総理への侮辱は、国民の代表者への侮辱だから、この言い方に一定の理屈は立つ。
だが、そうした言葉のやり取りの問題は別にして、籠池泰典の招致は、国会史上の汚点だった。
籠池劇場がどんなに国民の注目を集めようと、それはタレントの離婚騒動や不倫疑惑と変わりはない。
こうして報道を追っているとすっかり忘れてしまうのが、森友問題の本質は国有地払い下げの大幅減額だったはずなのである。それをそっちのけにしたまま、ワイドショー的森友問題を国会に持ち込むなど、言語道断でしかなかった。国会は威信にかけて、問題を国有地売却問題に絞るべきだったし、与党には特にその矜持が必要だったはずだ。そもそも、野党はこの半月ほど前には、財務省と国交省の交渉責任者の参考人招致を求めていたのである。なぜ筋の通ったその時の野党の要求を受け入れず、籠池泰典1人の証人喚問などという悪手に与党側が走ったのか。
ここまで見たように、籠池泰典の虚言は筋金入りである。偽証罪に問える証人喚問で籠池泰典の虚言をストップさせるというのが政権や与党の思惑だったのかもしれなが、そんなもので止まる男ではない。補助金詐欺が明らかになった段階で破滅を覚悟した籠池泰典は、もはや失うもののない人間になっていたからだ。紙か録音が残っていなければ、偽証かどうかは分からない。虚言を屁とも思わぬ人間の証言を幾ら取っても、本当かもしれないが嘘かもしれないという以上の確度ある情報は得られないのだ。
こうして国会は、ワイドショー政治に自ら進んで妥協した。
焦点は安倍昭恵夫人が安倍総理に託された100万円を本当に籠池に寄付したかどうかにならざるを得ない。
不正な賄賂を受け取った疑惑で責められる話なら世に無数あるが、あげた覚えのない違法でない金を本当は出したのだろうと言って一国の宰相が責められるなど、どんなコント作者でも思いつかない笑い話であろう。
虚報、物証なし、ワイドショー的虚言、そんなゴミ屑だけで、政権を揺さぶる政治スキャンダルが作れるような国に、日本がなってしまっているー与党が証人喚問に応じたこの時点で、実は「森友問題」は別の意味で深刻な「問題」と化していたのである。

●籠池氏「会って握手」と主張 稲田氏「記憶ない」と否定
岡戸佑樹、力丸祥子
2017年3月15日22時10分
http://www.asahi.com/articles/ASK3H5QW8K3HUTIL02P.html

◆籠池泰典、証人喚問さる
証人喚問は参議院予算委員会で2017年3月23日午前10時に開会した。委員長の山本一太が証言の拒否や偽証が罪に問われることを説明した後、会場の起立を促し、籠池に宣誓を求める。
籠池は表情一つ変えずに宣誓した。
良心に従って真実を述べ、何事もかくさず、また、何事もつけ加えないことを誓います。
証人 籠池康博
日本の国会でも最も厳粛な瞬間の1つである。よほどの政治家や財界人でもこの宣誓に続く署名で筆を持つ手が震えることさえあるものだが、籠池は物怖じの気配すらない。
証言は籠池の全体経緯説明から始まったが、何と言っても国民の耳目をそばだてたのは、籠池が安倍昭恵夫人から100万円の寄付を貰ったとされる場面の証言だろう。
<平成27年の9月5日に昭恵夫人に当園において講演会をしていただきました。その講演会を開催いあたします前のひとときの間、私は園長室でお話をさせていただきました。その際、夫人の方から、封筒に入りました、封筒に入りました、封筒をかばんの中からお出しになされまして、私に、1人でさして申し訳ありませんと、どうぞということで、いただきました。その封筒をいただきまして、いいんでしょうかということで、少し上の方から拝見しましたところ、金子が入っておりました。
その金子は、その金子をいただきまして、これはいいんでしょうかとお伝えしましたところ、安倍晋三からですという風におっしゃっていだきました。そして、すぐに、私はその封筒をいただきまして、ずうっとこう机の円周を回りまして職員室の方に参りました。その時、いただいた時には私と昭恵夫人だけでございましたが、そのいただく前には秘書の方も同席し、私の家内も同席しておりました。お人払いをされましたので、秘書の方が出られました。そして、私の家内は他の事柄で退出いたしました。2人でございました。そこでいただいたということでございます>
「金子」「人払い」など、まるで時代劇ではないかと揶揄されたが、極めて細かいリアルな再現である。
ところが、「人払い」して渡された「金子」を、よりによって籠池は、この後すぐに家族や職員に見せていたというのだ。

■福山哲郎
実は、その娘さんのインターネット上のインタビューとかですと、安倍総理からお金を貰いましたよと言って職員の方に持って行って、みんなで応援をいただいたから頑張ろうねみたいなことを言い合ったというようなくだりがあるんですが、ということは、幼稚園の職員さんもその認識はおありという風に思っていいですか。
■籠池
もちろんそうです。はい。

塚本幼稚園では理事長一家や、先生方と父兄の距離は非常に近い。家族と家族が繋がって作られた小さなコミュニティーである。そんな話があれば父兄の間でもすぐに噂になったであろう。籠池と極めて親密な人間も含め、私の取材の範囲でこの話を当時耳にした人は、全くいない。マスコミも1人の証人も見出せていない。
そんな事以前に、本当にそんな金を受け取っていたならば、幾ら口止めされても、誰よりも籠池自身が黙っていられなかったであろう。現職総理からの100万円の寄付があれば、保守界隈から寄付を募る格好の呼び水になる。籠池は自己資金がなく、寄付金の集まりは極めて厳しい状況だった。もし安倍晋三総理の寄付金を受けていれば、「ここだけの話」と口止めしながら、親しい有力者だけには次々に秘密を洩らしたに違いない。安倍総理からの寄付は双方にとって違法でも何でもない。本人に無許可のまま安倍晋三の名前で寄付を募るほど厚顔な籠池が、現実に金を貰っていたのに黙り通せたはずがない。
常識で言っても、安倍総理が安倍昭恵夫人に100万円を託して籠池に渡すことはあり得ない。安倍総理は籠池と面識がない。面識のない人間に100万円の寄付をする人間はいない。安倍総理の信奉者や、熱心な保守活動家は、民間に無数いる。そうした遠くから応援する支援者の1人に過ぎない籠池を特に選別して100万円もの大金を寄付する理由が、どう考えても安倍総理には存在しないのである。
安倍昭恵夫人が安倍総理からと言って、安倍総理の許可なしに100万円を渡すこともあり得ない。現職総理の妻である。独断で100万円もの大金を総理の名前と結び付けて渡すことがどんな罠になるかに気を配らない筈がない。安倍昭恵夫人が奔放に見えるのは、コミュニケーションの幅広さだけで、金に野放図だからではない。
それにしても、この証明不可能な金銭授受以外でも、籠池には明確な偽証が幾つもあった。あり過ぎたと言っていい。

■西田昌司
この寄付金がですよ、色んな所に安倍晋三記念小学校の名前で寄付金のこの申し込みが出ているんです、長い間、そうじゃないんですか。
■籠池
そんなことはありません、ほんの一瞬であります。いや、ほんの一瞬であります。したがいまして、衆議院議員の時期の一瞬。ですから、その時だけであります。ですから、もうお断りいただいた段階ですぐに消却をいたしております。

これは偽証である。
午後、衆議院の予算委員会で自民党の葉梨康弘は、2014年安倍晋三記念小学校と記載された振込用紙が某人に郵送されている事実を指摘し、さらに、2015年9月に籠池が安倍昭恵夫人から貰った100万円を郵便局に振り込む際に使ったとされる振込用紙も「安倍晋三記念小学校」の刻印のある用紙だったと指摘した。
午前中、籠池が、安倍晋三が総理になる前の2012年秋にはこの用紙を「消却」していたというのは偽証だったことになる。
それにしても国会の権威を穢すのは、籠池の虚言の安直さである。元々こんな案件は国政と何の関係もなく、籠池自身も、補助金詐欺以外に犯行があるわけではない。要するに、籠池にしてみれば、どうでもいい話だから、どうでもいい偽証を重ねているわけなのだ。証人自身が腹の底ではどうでもいいと投げ切っている事を、日本国の国会で宣誓させて追求している。皆が、魔法にかかったように狂っていたとしか思えない。

■竹谷とし子
塚本幼稚園のホームページ上で、天皇陛下が塚本幼稚園に訪問されたということが載っています。それをあなたは知らないということは事実ですか。
■籠池
私は知りませんでした。恐縮です。

天皇のありもしなかった行幸をホームページに記載するという極端な嘘を、理事長以外の誰が独断で塚本幼稚園は掲載していたというのであろうか。
同じく、竹谷の質問である。

■竹谷とし子
雑誌上であなたは、安倍総理が塚本幼稚園を訪問したと発言したことはありますか。
■籠池
安倍総理が訪問されたとうことは、お話したことはございません。
■竹谷とし子
それでは、その雑誌が間違っているということですね。
■籠池
その雑誌が間違っているということであります。

雑誌とは『致知』(致知出版)2010年4月号である。同誌中の対談記事で、籠池は以下のように発言している。
「安倍総理には当園に足を運んでいただいたこともあり、本当に応援させていただいてます」
週刊誌の作り話ではない。『致知』の対談での自身の発言を、雑誌の捏造だと言っているのだ。籠池は、嘘をつくことに全く無自覚なのである

■竹谷とし子
寄付用紙を安倍晋三記念小学校と名乗って作りましたか。
■籠池
寄付用紙を作らせていただきました。
■竹谷とし子
安倍総理の許可は得ましたか。
■籠池
当時は総理ではございませんでしたから、安倍衆議院議員の方に、許可はいただいておりません。何々小学校といって何かの冠をさしていただくのと、タケヤマ小学校、ヤマト小学校という風な感じのつもりで記載させて頂いたんです、はい。

安倍晋三の名前で寄付用紙を作る許可を本人に得ていないと証言している。その上、学校名に安倍晋三という固有名詞を冠することを、タケヤマ小学校、ヤマト小学校などと名付けるのと同じようなものだと言うのである。籠池は、国会そのものを馬鹿にしきっている。茶化している。失うものはもう何もない。日本の最も厳粛な場で、国民注視の喜劇を演じ切って、世の表から消えましょうー。
鼬の最後っ屁のようなつもりだったのではあるまいか。
が、1つ残念なことがある。籠池が変節して、ありもしなかった不正な「政治介入」へと議論を誘導しようとした結果、彼が折角人生を賭けた小学校事業を自ら貶める証言を重ねたことである。

■籠池
<国有地の取得につきまして、政治的な関与という内容について、あったのだろうという風に認識しております。まあ様々な長短があろうかと思いますが、その都度その都度の場所で政治的な関与があったのではないかという風に思ております。>

これは籠池が一貫して、政治家の力を借りたことはなく、「不当な口利きの事実などない」と言明してきたことを全く裏切るものだ。

「これは、大阪府は、新しい制度を作って、幼稚園でやられている方でもその小学校を作れるという新しい規制緩和をしたんです。それが専門学校でも全部できるようになったんです。あなたに対して、教育の熱心なあなたに対して枠を広げたんです。それでこの制度はスタートしたんです。その時に今言ったようなそのような働きかけがあったというようなことであれば、もっと具体的に言わないと」

要するにこういう事だ。
塚本幼稚園の先代からの政界との交流、幼稚園自体の評価が高かったこと、大阪の公立小学校の左翼色のどぎつさなどが相まって、大阪の保守系ネットワークや保守系議員の籠池応援は、確かに広範に存在していた。
籠池自身、この証人喚問で、繰り返し、自民党の元大阪府議長で、2014年9月18日に死去した畠成章の尽力について語っている。畠の選挙区には塚本幼稚園がある。森友学園の先代や、松井知事の実父である大阪府会議員松井良夫とも昵懇だったため、協力的で、畠からは「松井知事に話しておいたよ」などの電話もあったという。
つまり、民間の小さな幼稚園経営者が、志を持って小学校を作ろうと奔走、陳情を繰り返した時に、その陳情に応じて政治家も応援し、行政もこれに協力的に対応していたということなのだ。
それをなぜ、籠池自身が、証人喚問で、努めて政治による不当な介入があったかのような汚れた話にしようとするのかー。
籠池は、この証人喚問の中で、有名になった次の一節を吐く。
安倍昭恵夫人からの100万円の件を問われた時のことだ。

■籠池
<事実は小説よりも奇なりであります。私が申し上げていることが正しゅうございます。>

明らかな偽証や嘘をこれだけ公然と重ねておきながらこう言い切ってしまえる籠池を見ていると、なるほど「事実は小説よりも奇なり」だ、人間という生き物は全く訳の分からないものだと唸らずにはいられない。
ところで、この証人喚問での主要なテーマは国有地売却を巡る経緯だった。この証人喚問では民進党、共産党の質疑も問題点を炙り出す上で、適切なものが多く、実は、事柄の概要はほぼこの日明らかになった。籠池を証人喚問に招致すること自体が国会の汚点だと私は先に書いたが、経緯の解明という意味では無駄な審議ではなかったのだ。
驚くべきは翌日2017年3月24日の朝日新聞である。全紙面6頁にわたってこの証人喚問を大々的に記事にした朝日新聞の1面の見出しは
「昭恵夫人付職員が関与」
だった。
質疑の採録も1面を費やして詳報しているが、見出しは上から順に、
「籠池氏『昭恵夫人から、口止めとも取れるメール』」
「お人払いをされ、100万円を頂き金庫に」
「夫人から財務省に、動きをかけて頂いた」
と安倍昭恵夫人叩きの虚報3連発の上、
社説では
「昭恵氏の招致が必要だ」、
時時刻刻でも
「昭恵氏 渦中に」
「焦る政権、一斉火消し」
という調子である。
安倍昭恵夫人については確かに夫人付職員と籠池のやり取りファックスがこの日初めて公になり、一部野党議員が問題視している。しかし、証人喚問全体での安倍昭恵夫人への論及は10分の1にも満たない。
籠池の虚言を元に安倍昭恵夫人の名前を全紙面に並べた朝日新聞の見出しは、証人喚問全体の印象とは全く照応していない。
・・・この安倍昭恵夫人叩きにどのような戦略的底意があったかは、少し先にはっきする。

◆辻元清美疑惑
この2017年3月23日の籠池泰典の証人喚問は奇妙な副産物を生んだ。
証人喚問の直後に全文が公表された安倍昭恵夫人と籠池諄子とのメールのやり取りに、民進党代議士・辻元清美を巡る記述があり、それが小波乱を起こしたのである。

<2017年3月1日>
■籠池諄子
<辻元清美が幼稚園に侵入しかけ 私達を怒らせようとしました嘘の証言した男は辻元と仲良しの関西生コンの人間でしたさむけたようです(略)
孫請業者の作業員がその委託社長がしていないといったのにもかかわらず その3日だけきた作業員が辻元清美が潜らせた関西なんとか連合に入っている人間らしいです(略)辻元清美生コンをみればある関西こうえき連合の人間をマスコミに出し社長の言い分はのせなかったそうです 国会議員の犯罪じゃないですか(原文ママ)>

このメールの真偽以前に、異様だったのは民進党とマスコミの対応だ。
民進党は早速次のようなメディアへの報道規制を申し入れ、一方、マスコミは、産経新聞を除き辻元清美について全く報道せず、民進党の報道規制を丸ごと受け入れたのである。

■安倍昭恵夫人と籠池夫人とのメールにおける辻元清美に関するデマ
2017.3.24
http://www.kiyomi.gr.jp/info/11237/
本日公表されました、安倍昭恵夫人と籠池夫人が交わしたメールの文面の中に、辻元清美に関する虚偽がありました。
民進党より、報道関係各位に、まったくの事実無根である旨、文書にて配布しております。
以下に文書内容を転載します。
===
平成29年3月24日
報道関係各位
安倍昭恵夫人と籠池夫人との間のメールについて
民進党役員室
本日、公表された安倍昭恵夫人と籠池夫人とのメールには、わが党の辻元清美議員に言及した箇所がありますが、そこで記されている内容は事実に反する虚偽のものです。
本年3月1日のメールに、辻元清美議員が塚本幼稚園に侵入しかけたとされていますが、そのようなことは一切なく、そもそも同議員は塚本幼稚園の敷地近くにも接近していません。
このことは、周囲にいた多数のメディア関係者を含め、皆が確認しているところです。
また、辻元清美議員が、作業員を下請け業者に送り込んだとされていますが、これも全くの事実無根です。
これは、ネット上で流された根も葉もない噂を信じたためと思われますが、そのような事実は一切存在しません。
メディア各位におかれては、このような誤った内容を拡散しないよう強く求めます。
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配布した文書のPDFはこちら
このようなデマにくれぐれも惑わされないようにお願いいたします。

「誤った情報を拡散するな」とメディアに要求している。「誤った情報」かどうかを検証するのが本来メディアの仕事である。それを公党が自分に都合の悪い情報を「誤っているから報じるな」と頭ごなしに決めつけるとは、言論の自由に対するこの政党の感度は一体どうなっているのであろう。しかも、自分たちは「誤った情報」をメディアと一体で悪用して、ありもしない安倍スキャンダルに興じている最中ではないか。
しかも籠池諄子のメールの内容には真実もあった。
民進党は、辻元清美は幼稚園の敷地に近付きもしていないと説明したが、実際にはこの日、辻元清美は視察団の1人として幼稚園の敷地に入っており、本人も認めている。民進党の抗議は虚偽だったのである。

■辻元清美「塚本幼稚園に参りました」民進党の圧力にブチ切れたフジテレビが決定的な証拠映像を流す
2017年3月28日
http://netgeek.biz/archives/94426
記者会見での決定的な発言を放送で流した。
ナレーション「先月21日、民進党の視察団が小学校の建設予定地を訪れた後に開かれた会見。辻元氏の発言に注目してください」
辻元清美「お昼の時間帯にですね、少し時間がありましたので、理事長への面会を求めておりましたので、幼稚園のほうに…塚本幼稚園のほうに参りました」
なんと驚いたことに自分で塚本幼稚園に行ったと発言している。スパイ送り込み疑惑についてはまだ証拠が出ていないが、これで少なくとも「塚本幼稚園の敷地近くに接近したことがない」という反論が嘘であることが確定した。

辻元清美が作業員を潜らせたかどうかは分からない。が、ここで籠池諄子が書いているのはおそらく連帯ユニオン関西生コン支部とみられる。そうであれば、それは森友学園の件を朝日新聞と共謀で仕込んだと思しき豊中市議会議員・木村真の関連団体だ。要するに右翼幼稚園を潰しでの左翼活動家人脈の連携が伏在し、朝日新聞と民進党の一部は、この人たちと密接な連携を取っていた。籠池諄子はそういう事実の一部を知っていたか、噂で聞いていたのである。
ところが、朝日新聞はこの一連の辻元清美疑惑を完全な黙殺で貫き通した。
いや、辻元清美疑惑関係で朝日新聞が出した記事は1つあった。
「辻元氏を巡る記述 民進が全面否定」という20行ほどのベタ記事である。
辻元清美疑惑に関する事実報道は全くせずに、民進党が辻元清美についての籠池諄子のメール内容を否定したことだけを報じるー読者にはチンプンカンプンだろうが、朝日新聞の虚報や都合の悪い事実の無視は、この頃には、社内的に制御が不可能になりつつあったように思われる。
こうした朝日新聞の虚報癖が何より深刻なのは、同紙が全テレビ局の報道の、事実上の基軸になってるからだ。
朝日新聞ー読売新聞ー産経新聞の論調は、それぞれ全く異なる。ところが、系列のテレビ局であるテレビ朝日ー日本テレビーフジテレビの報道は、不気味なほど横一線で、朝日新聞の論調を模倣している。朝日新聞が虚報や捏造を続けていると、その間、テレビも又、それぞれの自社系列の新聞ではなく、朝日新聞の論調に乗っかって、どんな虚報も平気で垂れ流すことになるのである。
さらに今のテレビでは、ワイドショーを中心に、新聞紙面をそのまま映像で写して紹介する番組が増えている。朝日新聞が見出しを嘘八百で塗り固めてでも「安倍疑惑」を掻き立てようとするのは、購読者に対してという以上にテレビ映りを多分に意識した手法であろう。
こうして朝日新聞発の虚構が、テレビとのキャッチボールで日本社会を森友スキャンダルで覆い尽くす中、国会では戦後2番目に並ぶ早いペースで予算案が成立する。言うまでもなく政権の最大の権力行使は予算の執行である。大阪の一学校法人のスキャンダルで安倍叩きに狂奔しながら、野党もマスコミ安倍政権が提出した予算を審議も吟味もせずび信認したことになる。
日本の国政は完全に漫画と化した。

◆谷査恵子のファックス騒動ー一部始終
一方、辻元清美疑惑とは対照的に、朝日新聞は、籠池が2015年10月26日安倍昭恵夫人付政府職員谷査恵子に宛てた手紙と11月7日付の谷査恵子からの返信ファックスを、この後大々的に報じ続けた。安倍昭恵夫人が土地売買に関与していたというロジックに何としても持ち込み、「安倍夫妻のいずれかが土地売買に関係していたら総理も議員も辞職する」と言った安倍総理の答弁に結び付けたいという魂胆である。
2017年3月23日の証人喚問の翌日の朝日新聞が、証人喚問では一部で取り上げられたに過ぎない安倍昭恵夫人の名前を、全紙面の見出しに繰り広げたのは、新たに出てきた安倍昭恵夫人付政府職員と籠池とのやり取りを使って、安倍昭恵夫人疑惑を再燃させるための下拵えだったのだ。
では、やり取りの中身はどうだったのか。
籠池は、この時の手紙で、谷に対して、国有地の定期借地が10年では短すぎ、「50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更したいのです。でないと安心して教育に専念できない。買い取り価格もべらぼうに高いのでビックリしている」
と訴えている。
さらにこんな事も書いている。
<安倍総理が掲げている政策を促進する為に※国有財産(土地)の賃借料を50%に引き下げて運用の活性化を図るということです。
※学校の用地が半値で借りられたらありがたいことです。
Aの関係してですが、平成27年2月契約事前の段階で、財務と航空の調整の中で学園側が工事費を立て替え払いして平成27年度予算で返金する約束でしたが、平成27年度予算化されていないことが9月末発覚し、平成28年度当初に返金されるという考えられないことも生じています。11月中に土壌工事が終わりますのに、4ケ月間のギャップはどう考えているのか航空局の人間の感覚が変です。4ケ月間の利息は? ふりまわされています。
新聞記事と当方の契約書を同封いたしますのでよろしくお願いします。
籠池拝
(原文ママ)>

谷からの回答FAXは以下の通りだ。
<塚本幼稚園 幼児教育学園 総裁・園長 籠池泰典様
前略 平素よりお世話になっております。
先日は、小学校敷地に関する国有地の売買予約付定期借地契約に関して、資料を頂戴し、誠にありがとうございました。
時間がかかってしまい申し訳ございませんが、財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました。
大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。
なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております。
内閣総理大臣夫人付 谷査恵子>

この後、谷は、
<籠池様
平素よりお世話になっております。先月頂戴しました資料をもとに、財務省国有財産審理室長の田村嘉啓氏に問い合わせを行い、以下の通り回答を得ました。
1)10年の定借の是非
通常、国有地の定借は3年を目安にしているが、今回は内容を考慮し、10年と比較的長期に設定したもの。他の案件と照らし合わせても、これ以上の長期定借は難しい状況。
2)50年定借への変更の可能性
政府としては国家財政状況の改善をめざす観点から、遊休国有地は即時売却を主流とし、長期定借の設定や資料の優遇については縮小せざるをえない状況。介護施設を運営する社会福祉法人への優遇措置は、待機老人が社会問題化している現状において、政府として特例的に実施しているもので、対象を学校等に拡大することは現在検討されていない。
3)土壌汚染や埋設物の撤去期間に関する資料の扱い
平成27年5月29日付 EW第38号「国有財産有償貸付合意書」第5条に基づき、土壌汚染の存在期間中も賃料が発生することは契約書上で了承済みとなっている。撤去に要した費用は、第6条に基づいて買受の際に考慮される。
4)工事費の立て替え払いの予算化について
一般には工事終了時に清算払いが基本であるが、学校法人森友学園と国土交通省航空局との調整にあたり、「予算措置がつき次第返金する」旨の了解であったと承知している。平成27年度の予算での措置ができなかったため、平成28年度での予算措置を行う方向で調整中。>
として田村嘉啓財務省国有財産審理室長の回答をそのまま籠池に伝えている。

まず根本を言う。
谷は、籠池の「資料」を受け取り、担当部署に照会した。
希望に添えないという回答を財務省から得た。
その上で
「引き続き、当方としても見守ってまいりたい」としている。「見守る」というのは、距離を置き、心で応援するという意味である。
どうも森友問題では、国民皆が座標軸自体を異常に狂わせるトリックを仕掛けられているのだが、常識に戻ろう。
常識に戻れば、籠池は大阪の小さな幼稚園経営者に過ぎない。圧倒的な弱者である。その圧倒的な弱者が、乏しい資金で小学校を新設したいと考えた。
その時、安倍昭恵夫人に必死で縋っていった。通常、民業など屁とも思っていない財務省という最強官庁の采配や大阪航空局のゴミ処理代の予算措置に苦しんでいると窮状を訴えた。安倍昭恵夫人側では「そんなの知るか」と放置すればいいだけの話なのである。そうしないで秘書に照会をさせたのは、親切心に他ならない。
そもそも籠池の手紙は、開校が危ぶまれるほど、資金力に乏しい悪戦苦闘を伝えたものだ。
このような零細事業者からの陳情の取次さえ、首相夫人による国家権力の濫用であるかのように仕立てられたら、政治も行政も、何一つ人間的な裁量やふくらみや思いやりを持てなくなるのではあるまいか。
もちろん、小学校をやろうと志を持っているが金がない、だから国有地を50年定借で貸せーこの論理は最初から倒錯している。そこまで資金力にギャップがあったのなら、経営を断念するのが普通であろう。
「安倍総理が掲げている政策を促進する為に※国有財産(土地)の賃借料を50%に引き下げて運用の活性化を図るということです」というに至っては、それを書けてしまう籠池の感覚自体に驚かざるを得ない。安倍総理と価値観を共有する保守・愛国心教育の学校を作るのだから、土地を半値にしてくれというのだ。
こういう、触れるだけで社会問題化しかねない要求に対しては、谷は田村に照会もしちない。
それに対して、朝日新聞は3月31日の記事で、
「政権はゼロ回答と主張しているが、野党は満額回答だと主張している」
と与野党の言い分を対比している。
実際、この当座、政府与党・野党・マスコミの間で、ゼロ回答か否かが問われ続けた。だが、これは問題設定自体が間違っている。
勿論、籠池が願った定借50年もゴミ処理代の予算措置の前倒しも実現していないのだから、「満額回答」でないのは言うまでもない。だが、「ゼロ回答」でもない。
全て「照会」に過ぎないからだ。
ゼロ回答というのは、要望に対して応えられないということだが、安倍昭恵夫人は、そもそも要望に答える立場にない。言うまでもなく首相夫人には権限がないからだ。権限がないか人間には、ゼロ回答も50%回答も、満額回答もありようがない。谷の返信はそこをよく弁え、「照会」に徹している。
その意味で、「ゼロ回答」という言葉を、安倍総理や菅義偉官房長官、佐川理財局長ら政府側が使った段階で、左派野党や左派メディアの術策に乗ってしまったと評する他はない。
ゼロ回答か満額回答かなどという土俵はそもそも架空のもので、安倍昭恵夫人も谷も全くその土俵にはいないのだ。
ところが、政府側がゼロ回答を強調した途端、そこにありもしなかった土俵が出現し、安倍昭恵夫人が籠池の要求にどの程度応じようとしたかという、答えの出ない論争に持ち込まれてしまう。
ここでも、安倍政権は、架空の消耗戦に持ち込まれた。
4月5日、政府は、谷が、籠池に答えて財務省に照会したFAXを送付した件について、「公務員として丁寧に対応したが、職務として行ったものではない」と閣議決定して、決着を図った。
これは当然の内容だ。
が、それに付随して、菅義偉官房長官ら政権執行部は、この照会は、安倍昭恵夫人に対するものではなく、あくまで「職員個人に対する籠池の照会だった」という文脈に置き換えようとした。
安倍昭恵夫人を問題に介在させないための詭弁である。
籠池は思い付く限りのあらゆるチャンネルを使って陳情や依頼、問い合わせを繰り返していたに違いない。そうした依頼や問い合わせの殆どは、厳密な法的ルールがないファジーなものだ。首相夫人を介した「照会」もその中の1つに過ぎない。常識で考えて、安倍昭恵夫人が秘書に照会させたと認めても、何ら問題ないではないか。
森友と加計は、いずれも安倍総理や安倍昭恵夫人の個人的な人間関係が行政を歪めたかどうかが焦点となり続けた。その際、「李下に冠を正さず」(自分の行動は常に用心深くし、疑われるようなことをしてはならない)という言い方で安倍総理は詰問されたが、金品の授受のない交友や支持者の依頼までも政治責任化するような際限ない魔女裁判の土俵に、政府は乗ってはいけないのである。日本は法治国家であり、総理にも、当然個人としての人権がある。権力者としては監視され、通常よりも厳しい倫理基準が適用されるにしても、法と物証とによらない糾弾など断じて許されるべきではない。
大事なのはその原則であり、そうした原則を政府や言論人が堂々と語れる社会の自由である。
谷が職員個人として籠池に答えたに過ぎないとする政府見解は姑息だが、なぜこんな姑息な見解を出したかと言えば、以上私が書いた常識を政府が言えば、左派マスコミの更なる攻撃に晒されると考えたからだろう。
これは社会の危険信号である。
左派マスコミが「李下」の「冠」を好き勝手に作り出し、政府が社会常識を率直に語れず、姑息な論理を持ち出して逃げを打ち、それでもなお後ろから弾を撃たれるー自由社会が自ら窒息してゆくのはこうしたプロセスを放置することから起きるのではあるまいか。
物証なき「李下の冠」で大騒ぎしている間に、日本にはびこる別の利権ー電波、新聞、雑誌との少数者による独占、パチンコをはじめとする賭博や闇社会の海外利権、弱者利権、極左労組利権、宗教法人利権、反日アカデミズム利権、マスコミと霞が関がグルになっての天下り利権ーなど、本当に争点とすべき国家的な問題が、巨大なネットワークと化してタブー視され、陰でこの国を蝕み続けている。日本の国民益の側に明らかに立っている保守系首相が架空の疑惑で叩きのめされる一方、こうした問題に対しては誰も声を挙げない。社会的な知名度や立場ある人間が率直な発言をしようものなら、左派マスコミの袋叩きにあい、社会から抹殺される。
つくづく怖ろしい社会になったものである。

●2017.4.3 21:25更新
【森友学園問題】
籠池泰典氏側の陳情の手紙全文 「買い取り価格もべらぼうに高い」「半値で借りられたらありがたい」
http://www.sankei.com/politics/news/170403/plt1704030053-n1.html
森友学園の籠池泰典前理事長が安倍昭恵首相夫人付の政府職員宛てに送った陳情の手紙のコピー
http://www.sankei.com/politics/photos/170403/plt1704030053-p1.html

●2017.3.23 18:31更新
【籠池泰典氏証人喚問】
昭恵夫人付き職員から籠池氏へのファクス回答要旨 「現状ではご希望に沿うことはできないようでございます」
http://www.sankei.com/politics/news/170323/plt1703230068-n1.html

◆破滅
左派マスコミによる安倍=昭恵叩きが続く中、籠池個人は破局に向かって追い詰められつつあった。
大阪地検特捜部は、2017年3月29日、籠池が国の補助金を不正に受給していた疑いがあるとする補助金適正化法違反容疑での告発を受理した。
籠池については、この後も、補助金の不正受給が断続的に報じられた。
4月8日には、大阪航空局に対して、汚染土壌を費を2000万円水増しして請求した詐欺容疑が指摘された。
4月14日には、籠池が経営する塚本幼稚園の元園児の健康診断書が改竄されていた疑いも明らかになる。障害などのために配慮が必要な園児に対して割り当てられる補助金があり、2015年度にはこの補助金が森友学園に576万円支給されていたが、森友学園は、診断書を改竄して水増し請求をしていたというのである。
一方、4月3日までに、籠池宅や塚本幼稚園の土地建物などが、仮差し押さえ処分となる。その上で、小学校の施工業者である藤原工業は、4月5日、工費の内約4億円が未払いだとして、森友学園側に支払いを求める訴訟を起こした。
藤原浩一社長は訴訟後の記者会見で、
「校名は安倍晋三記念小学校と聞いていた。公共事業並みの信用度だった」
と振り返った。
当然だろう。学校名に冠するとなれば、単なる使用許可を超えた意味が付与される。安倍総理と籠池の間に、理念と経営の共同体という程の盤石の一体感があったとさえ藤原社長が受け取ってもおかしくはない。学校法人と政治家には深い関係がある場合がある。大隈重信=早稲田大学、西園寺公望=立命館大学、松前重義=東海大学などが著名だが、現役でも、世耕弘成=近畿大学、船田元=作新学院などが思い浮かぶ。
当初、安倍総理の名前を冠とした小学校計画を聞かされた藤原社長が「公共事業並みの信用度だった」と感じたのは無理もない。
そしてついに、4月21日、学校法人森友学園は大阪地裁に民事再生法の適用を申請したと発表した。小学校の開設断念で資金繰りが悪化し、負債総額は少なくとも16億円に上ることになった。
神道の理念を持つ小学校の創業ー夢が破れただけではない。
籠池は、信用と名誉の全てを失ったのだ。
一応は自業自得と言える。補助金の不正受給は余りにも日本社会の経営倫理とかけ離れている。そんなことで小金を捻出しながら、資金繰り困難なまま事業化に突っ走ったのは、関係者全てへの背信でしかない。
だが、問題の発端だったはずの国有地取得に不正はなかった。
なぜ籠池はここまで焼き尽くされ、自らも燃え尽きねばならなかったのか。
保守の理念ー安倍シンパー日本会議人脈・・・そうした思想叩きとしての森友問題の「原点」を思い出してみよう。
朝日新聞に、最初、国有地払い下げの疑惑を持ち込んだ豊中市議会議員・木村真は、2017年3月12日、福島瑞穂との対談で次のように本音を暴露している(Facebook上に公開した動画。福島氏とともに「瑞穂の國記念小學院」建設現場の前で)。
■2017/03/28 に公開
木村真(※)と福島瑞穂の会話
https://www.youtube.com/watch?v=zeS_DEoH2sg
<木村「まぁそれより何よりっていうかまぁ、ハッキリゆうたらまぁ、あの〜もう極右の学校やっていうのも分かってましたので、そしたらもう市民としてやっぱりそんな学校できてほしくないっていうのはもう、率直に言って思ってましたので。」
福島「うん・・・そうですね〜・・・」
木村 「で、まぁ尚且つその〜ね、安倍昭恵さんであるとか日本会議であるとかっていう背景も分かっていたので、そういう意味で言うと、おそらく土地取得に関してね、何か胡散臭いことやってるんちゃうか?みたいなものは、まぁそれはもうハッキリと最初から思っていたので。」
福島 「あ〜でも、その勘はとても正しかったわけですね。」
木村 「まぁ潰したかっただけですけどね(笑)」
福島 「イヤイヤイヤだめそんなこと言っちゃ・・・正直な人ねぇ・・・」>

市議を名乗る破壊主義者の思惑に、朝日新聞が乗り、中途から自ら主導して煽動し続け、テレビが全局で盲従し続けた。
一犬虚に吠ゆれば、万犬実を伝うー。(一人がいいかげんなことを言うと、世間の多くの人はそれを真実のこととして広めてしまうということのたとえ)
ごく少数の人間が仕掛け、煽動し続けたイデオロギーを巡る巨大な破壊衝動の歯車に、籠池家は巻き込まれ、ひしがれたのである。

●朝日新聞は誤報知らん顔の無責任メディア 追及した左派野党も同罪
2017年12月1日
先週末、新聞を読んでびっくりしました。
大阪の学校法人「森友学園」の問題が佳境に差し掛かった今年5月、朝日新聞が報じたニュースのキーワードに
「安倍晋三記念小学校」
がありました。
森友学園が財務省に提出した設立趣意書の中に出てくる学校名が
「安倍晋三記念小学校」
で、
「この名前に反応した役人が国有地を格安で売却した」
という印象は皆さんの意識に深く根付いているはずです。
ところが、この「設立趣意書」の大部分は先週まで「黒塗り」でしか公表されておらず、小学校の名前が
「安倍晋三記念」
だという情報は、朝日新聞が5月9日に報道したことで広く流布されていったんです。
国は設立趣意書の根幹部分を黒塗りで公開した理由について
「経営上のノウハウを含むため学園の利益を害する可能性があった」
としていました。
それが先週、森友学園の管財人が
「小学校の開設がなくなり、開示で学園の利益を害する恐れがなくなった」
として公開を認めたのです。
公開によって、件の小学校名が
「安倍晋三記念小学校」
ではなく、
「開成小学校」
であったことが判明しました。
5月9日の朝日新聞の報道は完全な誤報だったことになります。もちろん、同学園前理事長の籠池泰典被告が、この小学校の名誉校長が安倍首相夫人であることを利用して値下げ交渉したことは容易に想像できます。
安倍首相が
「やめてくれ」
と言うまで
「安倍晋三記念小学校」
という名前を使って寄付集めをしていた事実がありますから、安倍首相の名前を考慮して役人が不合理な値引きを行った可能性は依然あります。
しかし、今年の6〜9月に内閣支持率が急落した背景に
「政府が黒塗りで隠した設立趣意書の中に書かれていた名前は『安倍晋三記念小学校』だ」
という報道があったのは間違いないですよね。
この点で朝日新聞は、事実関係について読者にしっかりと説明するべきでしょう。
ところが、これを伝える先週末の朝日新聞は、政治面の中ほどに
「黒塗り校名は『開成小学校』」
という囲み記事を掲載しただけで、あくまでも他人事でした。
誤報したことについても訂正も謝罪もありません。
記事を読むと、
「籠池が嘘ついたんだも〜ん」
と言いたげです。
従軍慰安婦問題の時の報道とそっくりです。
「吉田が嘘ついたんだも〜ん」
というわけです。
問題の本質は、当事者が嘘の証言をしたことではなく、その嘘について検証せず、それが真実であるかのように大々的に報じたことにあります。報道の結果についてメディアが知らん顔を決め込んでいいはずがありません。
でも本当は朝日新聞はもっと悪質なのではないかと勘繰っています。
自民党の和田政宗参院議員は
「朝日新聞はこのまま開き直るのだろうか」
「提出した設置趣意書のコピーを籠池氏は持っているはず(当たり前のこと)で、朝日新聞はそれを確認せずに報道した」
と言っていますが、
本当は朝日新聞は設置趣意書のコピーを籠池泰典被告に確認しておきながら、財務省が小学校名を非開示にしているのをいいことに、故意に嘘の
「安倍晋三記念小学校」
という小学校名を流布したんじゃないだろうか?、と。
何しろ、朝日新聞にとって、事実を知りながら故意に嘘を書くなんて日常茶飯事ですから。
朝日新聞はバレなければいい、バレてもみんなすぐに忘れるさ、俺たちが書かなければ、と思っているとしか見えません。
追及した民進党をはじめとする左派野党も同罪です。
2017年5月8日午前、籠池泰典被告から直接聴き取りをしていた福島伸享(当時民進党、2017年衆院選落選)は
「まさに安倍晋三という名前が、特例(の契約)を得られるためのノウハウになっているから示されないということ。なぜそこまで忖度するのか」
などと嘘を基に不当な追及していたからです。
本当は福島伸享は設置趣意書のコピーを籠池泰典被告に確認しておきながら、財務省が小学校名を非開示にしているのをいいことに、故意に嘘の
「安倍晋三記念小学校」
という小学校名を流布したんじゃないだろうか?、と。
何しろ、民進党にとって、事実を知りながら故意に嘘をつくなんて日常茶飯事ですから。
民進党はバレなければいい、バレてもみんなすぐに忘れるさ、俺たちが言わなければ、と思っているとしか見えません。

●森友の設置趣意書を開示 小学校名は「開成小学校」 財務省
2017年11月25日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S13243852.html
学校法人「森友学園」(大阪市)の国有地売却問題で、財務省は24日、学園が開設を目指した小学校の設置趣意書を神戸市の大学教授らに開示した。
教授らは、国の趣意書の不開示決定の取り消しを大阪地裁に求めていた。
財務省は22日の立憲民主党の会合でも同じ文書を開示した。
政府はこれまで、経営上のノウハウを含むため学園の利益を害する可能性があるなどとして、表題の一部以外は開示を拒んできた。
今月20日、学園の民事再生手続きの管財人から
「開示されても支障はない」
との意見書を得たとして開示を決めた。
開示したのは、学園が籠池泰典・前理事長名で財務局に提出した書類3枚で、小学校の理念などとともに、表題は
「開成小学校設置趣意書」
となっていた。
校名などが当初、黒塗りになっていたため、朝日新聞は籠池氏への取材に基づいて、籠池氏が
「安倍晋三記念小学校」
の校名を記した趣意書を財務省近畿財務局に出したと明らかにした、と5月9日付朝刊で報じた。

●「安倍晋三小学校」記載の資料? 財務省は黒塗り開示
2017年5月9日09時05分
http://www.asahi.com/articles/ASK5876KDK58UTIL062.html
衆院予算委で、黒く塗りつぶされた資料を示す民進党の福島伸享氏=8日午前10時37分、角野貴之撮影
国有地の取引交渉の初期段階に、安倍晋三首相の名前が財務省に伝わっていたのか。森友学園への国有地売却問題で8日、学園が2013年9月に提出した国有地の取得要望書類の記載をめぐって衆院予算委員会で論戦があった。設立予定の小学校名に首相名があった疑いを指摘した野党に対し、財務省は
「不開示情報」
として説明を避けた。
学園の籠池泰典・前理事長は8日夜、取得要望書類として提出した小学校の設立趣意書に、開設予定の校名として
「安倍晋三記念小学校」
と記載したことを朝日新聞の取材に認めた。
同日午前の衆院予算委で、民進党の福島伸享氏が同様の指摘をした。
福島氏に財務省が開示した資料では、設立趣意書のタイトルのほか、内容が記された部分が黒塗りだった。福島氏は籠池氏からの聞き取り結果として、タイトル部分に首相名を冠した校名が記載されていた可能性に言及。籠池氏や籠池氏の長女で学園の現理事長に開示の同意を得たとして、説明を求めた。
これに対し、財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長は
「学校の運営方針に関わることなので、情報公開法の不開示情報になっている」
と答弁。
籠池氏らからの同意があっても、学園が民事再生手続き中であることを理由に、開示するとしても管財人への確認が必要であるとした。
また、
「タイトルがなぜ不開示情報なのか」
と追及した福島氏に対し、
「その下に書いてある学校の経営方針と一体となっているため」
などと説明。
福島氏は
「まさに安倍晋三という名前が、特例(の契約)を得られるためのノウハウになっているから示されないということ。なぜそこまで忖度するのか」
と述べた。
一方、この日の予算委では、籠…

●違法性を主張するなら、証人喚問による自白の強要に頼らず、物証を揃えて証拠を提示しろ。
朝日新聞の次の社説を読むと、現職総理に対するこの見下したような物の言いようは、ただ事ではあるまい。
朝日新聞は考え違いも甚だしい。
安倍首相に違法性があると言うのなら、それを追及する側に立証責任があるのは至極当然なのだ。
相手の自白に頼るやり方、自白の強要は卑劣な行為だ。
違法性があるというのならば、そう主張する側に物証を揃えて証拠を提示する義務がある。
(社説)加計学園問題 論点をすり替えるな
2017年5月31日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12964080.html
<特区であれ、通常の政策であれ、行政府として、それを進める手続きが妥当であると国民や国会から納得が得られるようなものでなくてはならない。なのに首相は自ら調べようともせず、私が知り合いだから頼むと言ったことは一度もない。そうではないというなら証明してほしい」と野党に立証責任を転嫁するような発言をした。考え違いもはなはだしい。(2017年5月31日)>

●安倍昭恵夫人の証人喚問は間違い
国会も2017年2月23日の衆議院予算委員会で民進党の今井雅人と福島伸亨が、前々日のテレビ東京「ゆうがたサテライト」の内容を受けた質問を行い、国有地問題よりも、安倍昭恵夫人が名誉校長を引き受けた件に焦点が移り始めた。
こうして、塚本幼稚園の教育内容を極端な劇画化によって叩く森友学園潰しと、籠池夫妻の特異なキャラクターへのワイドショー的喧噪、そして安倍昭恵夫人バッシングによる籠池劇場が開幕したのである。
だが、肝心の土地取得の際の森友学園と国のやり取りはどこに行ったのか。
そこに違法性がなければ、安倍昭恵夫人を国会で話題にする意味がない。
いや、そこに違法性があっても安倍昭恵夫人を取り立てて問題にする必要は全くない。
話の進め方が逆なのである。
本来ならば、違法性を強く示唆する証拠が出て、それに基づき違法性の有無の調査や追及がなされ、その線上に安倍晋三首相や安倍昭恵夫人が浮かび上がれば、その時に初めて安倍首相の責任が問われるというのが筋道だ。
ところが、今回のケースは、違法性の追及は国会質疑で最初に終わっていたのに、それは隠し、安倍晋三首相ないし安倍昭恵夫人の関与を匂わせ続けながら、メディアが喧噪を巻き起こし、安倍政権の足元から火をつけたという話である。

2015年5月29日、森友学園は、10年の買受け特約を付した有償貸付契約を近畿財務局と結ぶ。
安倍昭恵夫人の森友学園の「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長就任はこの4カ月後の2015年9月5日土曜日の塚本幼稚園の教育講演会に登壇した時だ。
名誉校長就任以前に既に森友学園は近畿財務局と契約を結んでいたので、安倍昭恵夫人が契約に介入する余地があるわけがない。
籠池から安倍昭恵夫人への照会依頼は、2015年10月26日に出され、安倍昭恵夫人付職員からの回答は2015年11月17日だ。
時期が全く違う。

籠池は証人喚問で次のように証言している。
■籠池泰典
<平成28年3月に入って、工事が始まってから生活ごみが出てきました。その後工事を施工していました中道組に北浜法律事務所の酒井康生弁護士を紹介頂きまして、以降の土地取引に関する一切の交渉をお願いしましたところ、最終的に土地価格は8億円余りも値引きされ、1億3400万円になったとお聞きして、想定外の大幅な値下げにその当時はちょっとびっくり致しましたが売買契約を結びました。私は、交渉の詳細については詳しく承知していないので、値引きの根拠などについては近畿財務局当時の迫田理財局長、酒井弁護士にお聞き頂きたいと思います。>

籠池によれば、9億5600万円から1億3400万への減額は、2016年3月この時初めて選任した弁護士の交渉によるので、籠池自身は与り知らないというのである。
驚くべき証言だ。
それなら安倍夫妻はもとより政治家とも何の関係もない話ではないか。

●西田昌司「参議院 予算委員会 質問」(H29.3.6)
https://www.youtube.com/watch?v=pj72xHAkm5o
■佐川理財局長
<先方が学校開設を急いでいる中で、(略)国の責任に「おいて開校が遅れる、あるいは開設断念ということになりますれば、それは損害賠償としても、国としてですね、例えば工事の遅れに伴う追加費用など直接的なものもございましょう、それから開校の遅れによる様々な被害、あるいは生徒、父兄への対応など損害賠償請求が考えられところでございます。>

瑕疵物件による訴訟を財務省が恐れ、売り急いだことこそが籠池にとって「神風」(=土地価格売却額の大幅減額)だったのである。
風は吹いたが、風は安倍夫妻やその他の政治家からではなく、2016年3月に新たに見つかったゴミのある地下9.9mから吹き上げてきた。

・2014年10月31日
大阪府への学校認可の申請にこぎ着けられた
・2014年12月18日
第1回目の大阪私学審議会審査、小学校建設計画の明細や生徒数の確保について、根本資料の追加が求められ、答申保留、継続審議となった
・2015年1月27日
臨時審査には、それらの資料が提出され、今度は条件付きでの認可適当となる
・2015年2月10日
私学審の認可適当を受けて、国有財産近畿地方審議会で森友学園への国有地売却が審査された
・2015年5月29日
森友学園は、10年の買受け特約を付した有償貸付契約を近畿財務局と結ぶ。
賃料は月額227万5000円とされ、2025年6月7日までに森友学園がこの土地を購入時の不動産鑑定額で購入する旨記載された
・2015年7月29日
森友学園は、土壌改良、埋設物除去の工事を実施
・2015年9月5日
安倍昭恵夫人が森友学園の「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長を受諾
・2015年10月26日
籠池から安倍昭恵夫人付政府職員・谷査恵子に宛てた手紙出す
・2015年11月17日
安倍昭恵夫人付政府職員・谷査恵子からの回答
・2015年12月5日
除去作業は終わる、地下3mまでのゴミ処理であり、森友学園側が除去作業を立て替えで実行し、終了した後に国が経費を森友学園に支払う契約
・2015年12月
施工契約をしていた藤原工業がいよいよ校舎の建築に着工
・2016年3月
土中9.9mの深部からゴミが大量に出た
・2016年3月11日
近畿財務局にその件を連絡
・2016年3月14日
近畿財務局と大阪航空局とに、現場関係者立ち合いの上、これを確認させた
・2016年3月19日
籠池夫妻で財務省本局に乗り込み、田村嘉啓・国有地財産管理室長に、ゴミの新たな発見を訴えた。
この時のやり取りのテープが籠池から菅野完を経由して朝日新聞の手に渡り、朝日新聞が捻じ曲げて報じた
・2016年3月24日
籠池は、土地を貸借ではなく、購入したいと申し出た
・2016年4月6日
森友学園が立て替えていた当初の深さ3mまでのゴミ除去代1億3000万円が大阪航空局から森友学園に返還
・2016年4月14日
大阪航空局により、処理費用8億1900万円との算定結果が出た。
一方、土地鑑定は山本不動産鑑定士事務所に依頼し、土地価格は9億5600万円とされた。
こうして鑑定価格からゴミ処理費として見積もられた8億1900万円と撤去による損失を差し引いた1億3400万円が、新たな土地代金として算出されることになった
・2016年6月20日
国に瑕疵担保責任なし、売り切りの1億3400万円で売買契約が締結されるに至った
・2017年3月6日
西田昌司の国会質疑で、財務省の答弁から判断すると、土地が瑕疵物件だと訴えられ、訴訟が長引けば、開校に工事が間に合わなくなる。
財務省としては瑕疵物件を貸与した上、開校に間に合わない責任まで取らされては敵わない。
瑕疵担保を除外し、格安に売り切り、以後、訴訟などトラブルが一切発生しない形に可能な限り急ぎ持ち込むという方針を固めたに違いない
・2017年3月24日
籠池証人喚問、9億5600万円から1億3400万への減額は、2016年3月初めて選任した弁護士の交渉によるので、籠池自身は与り知らないと証言
・2017年3月24日
籠池の証人喚問と同日に開かれた大阪府議会で証人に立った私学審会長の梶田叡一は、認可適当は話がスタートしただけだから、その時点では借地でもいいが、開業時には、大阪府の基準通り、自己所有になっていなければ認可するつもりはないとの立場を崩していない
・2017年3月29日
大阪地検特捜部は、籠池が国の補助金を不正に受給していた疑いがあるとする補助金適正化法違反容疑での告発を受理
・2017年4月3日
籠池宅や塚本幼稚園の土地建物などが、仮差し押さえ処分となる。
・2017年4月5日
その上で、小学校の施工業者である藤原工業は、工費の内約4億円が未払いだとして、森友学園側に支払いを求める訴訟を起こした
・2017年4月6日
森友騒動の最中、大阪府は関係職員から詳細なヒアリングをした結果を公表したが、それによると、担当課である私学課の職員が土地に関する審査基準を緩和する判断を独自にしたとされている(「学校法人森友学園瑞穂の國記念小學院設置認可申請に関する検証報告ー府職員が校舎敷地を府審査基準に適合すると判断したことの検証」)
・2017年4月8日
大阪航空局に対して、汚染土壌を費を2000万円水増しして請求した詐欺容疑が指摘された。
・2017年4月14日
籠池が経営する塚本幼稚園の元園児の健康診断書が改竄されていた疑いも明らかになる
・2017年4月21日
学校法人森友学園は大阪地裁に民事再生法の適用を申請したと発表した。
小学校の開設断念で資金繰りが悪化し、負債総額は少なくとも16億円に上ることになった
・2017年7月31日
大阪地検特捜部は前理事長の籠池泰典(本名・康博)(64)、妻の諄子(本名・真美)(60)両容疑者を、国の補助金をだまし取ったとする詐欺容疑で逮捕した
・2017年8月21日
学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)が運営する塚本幼稚園をめぐり、大阪府の補助金約9200万円をだまし取ったなどとして、大阪地検特捜部は、詐欺と詐欺未遂の容疑で、学園前理事長の籠池(かごいけ)泰典=本名・康博=容疑者(64)と妻の諄子(じゅんこ)=同・真美=容疑者(60)を再逮捕

◆土地売却の経緯
籠池泰典が小学校を作るという情熱そのものは本気だった。事柄の経緯、彼の人格、詐欺や虚言ーそうしたことをとりあえず抜きにして、この人物の小学校建設の情念そのものは、利害得失抜きの激しい一途なものだったと私は思う。
籠池夫妻の「保守歴」はそう長くない。生長の家、日本会議、そして伊勢神宮をはじめ、古神道系の信仰を厚くする中で、10年程前から、保守的な国家観、教育観を持つようになり、塚本幼稚園は愛国幼稚園に変貌し始める。とりわけ三男を自殺で失った後、学校経営に神がかり的な信念が加わったとされる。
個人的な不幸を乗り越え、日本への愛国心を教育方針とし、幼稚園のみならず、保守派の理念に適う小学校を作るべきだー彼自身がそう信じ、また、保守系の多くの人たちが籠池にそれを強く促したのは間違いない。
籠池のその情熱に不純な点はなかったであろう。
自己資金がない。それでも奔走して作ろうとしたのは、営利目的がなければこその、破格の情念としか言いようがないからだ。しかも小学校の運営は、軌道に乗ったとしても、さしたる営利性は見込めない。
既に幼稚園経営での負債が推定で3億円ほどある上に、新たに土地代、建物代を持ち出さねばならない。途中、国有地代が最終的に大幅減額になったとは言え、それでも1億3400万である。更に建設費が15億円以上かかる。補助金を多少不正受給しようが、そもそも補助金は工事費の3.75%が上限だ。寄付金にしたところで、億という単位を募るのは、経営者自身に巨大な実績や宗教的なカリスマでもない以上、至難の業である。自己資金がないのに寄付金と補助金に依存しての建設など成立するはずがない。
この話を始めるだけで総額20億円近い負債を背負うことになるのである。
むろん学校法人の設立認可が下りれば、社会的な信用は絶大になり、巨額の融資が受けられる。その意味で、とにかく開学にこぎ着けることが籠池の中で最優先されたのであい、開学前に、工費や土地代の不払いで自滅しないためには、補助金の不正受給だろうが安倍夫妻の名前の不当な利用だろうが、何でもせざるを得なかったわけだ。
しかし、借り入れで潰れずに済むにせよ、将来、十分に儲かるという話ではない点に変わりはない。
瑞穂の国記念小学校に子供を入学させる予定だった父兄は次のように語っている。
「生徒でも今度の募集で100人入るとして、1人の授業料を年間100万円貰っても1億円にしかなりません。
ところが、私が入学予定生徒として聞いていたのは、男女合わせて初年度が45人です。徐々に児童数が増えて6学年になるにしても、返済と維持費、人件費を含めて考えると、経営は難しかったのではないでしょうか」
一方、売主である国の側の事情を見てみよう。
この土地を巡る面倒な歴史はいささか古い。
今でこそ、周辺は大阪大学の校舎、ホール、オペラハウスが散在し、高級マンションが立ち並ぶ清潔な新興住宅地だが、もともとは沼地を埋め立てた場所で、バラック住宅が建つ部落のような状況だった。
ところが昭和40年代にトラブルが発生する。大阪空港(伊丹空港)の至近だった為、騒音問題が生じたのである。昭和45年(1970年)の大阪万博を境に空港の使用頻度は増加の一途を辿り、ついには年間発着回数は15万回を超えるに至る。周辺住民からの訴訟が絶えなくなったのを受け、昭和48年(1973年)には地元伊丹市が、「大阪空港撤去都市宣言」を掲げる程の混乱となった。
そうした中、この土地の住民たちも、航空局に苦情を持ち込んだ。上空を飛ぶ飛行機はこの付近では高さ100mほど、巨大な影を地上に落とし、轟音とともに飛び立ってゆく。2、3分ごとにバラック建ての建物の上を通過するのが早朝から深夜まに及ぶとなれば、生活には深刻な影響があっただろう。この申し出に従って、大阪航空局が土地を買い入れることにし、以後、騒音区域として管理することになったのである。
この土地は高速道路にも隣接している。国有地として空地となり周囲に住宅がなくなった為、いつしか家庭ごみの廃棄場所になり、さらには産業廃棄物の不法投棄場所にもなった。
一方、伊丹空港の騒音は、諸々の改善努力で緩和され、平成元年(1989年)3月には騒音区域が解除されるに至る。平成5年(1994年)、関西国際空港が開港されたのと軌を一にして、この土地も、行政が管理する行政財産から普通財産化されたのだった。
ところが、その後も、この土地の放置は続く。平成21年(2009年)から24年にかけて大阪航空局が、地下構造物状況調査、土壌汚染状況調査を実施したところ、鉛、ヒ素、さらに廃材・コンクリートガラが大量に埋まっていることが分かった。が、この段階ではゴミや汚染除去は実施していない。
処理をしないまま、平成22年(2010年)3月、今回森友学園に売却した土地の隣を豊中市に公園用地として売却した。売却した土地面積は9442u、売却価格は14億2300万円である。
朝日新聞は、この豊中市への売却価格に比べ、森友学園の価格は「同じ規模の近隣国有地の10分の1だった」と報道し、以後、他のマスコミも、その線に乗ったが、実は全く違う。
大阪航空局から豊中市に14億2300万円で売却されたのは事実である。だが、豊中市には、同時期、国交省の住宅市街地総合整備事業国庫補助金として、7億1000万円と、地域活性化と好況投資臨時交付金として総務省、内閣府から6億9000万円が支給されているのである。合計14億円。つまり、豊中市の実質負担金は2300万円で、籠池の実質負担額より安い。
豊中市側も7この買い物のお得感は自覚していた。
例えば、平成22年(2010年)10月12日、豊中市議会の議事録には、公明党岡本清治市議の次のような発言が見られる。
岡本
<この(仮称)野田中央公園につきましては、当初予算が15億455万円、契約金額が14億2386万円となっておりましたけれども、その後さまざまな国庫補助金と合わせて14億262万円が補助対象となるといったことから、実質1億8250万円の市債も2124万3000円の一般財源で購入することができたと、夢みたいな話でございますが、これはどういうかげんでタイミングよくこうなったかわかりませんけれども、政権かわったからこうなったかどうかはわかりませんが、どちらにしても当初は理事者も頭を悩ませておった大変大きな金額でありますが、一般財源で買えるといったいいチャンスに恵まれたんではないかと思っております>
豊中市議だった木村真がこの補助金による土地購入の相殺を知らないわけがない。調べればすぐに出てくるこんな事実を朝日新聞が掴んでいなかったわけがない。
野党もマスコミもこの事実を隠蔽しながら、豊中市が14億円で買った隣接の同規模地を籠池が10分の1の価格で購入したという偽りの情報を流布し続けているのである。
さらに興味深いのは、些か離れた場所だが、同じ豊中市が、新関西国際空港株式会社から平成27年(2015年)6月、7億7000万円で土地を購入したケースである。給食センターを建設するためだった。
豊中市は土地を公園にする時には、2000万円で盛土をするだけで済ませたが、給食センターの場合には、森友学園同様、建物建設の基礎工事の為に掘削しなければならない。ところが、平成28年(2016年)6月、豊中市が地盤調査のためのボーリングを6カ所実施したところ、全ての地点でコンクリートガラなどの産業廃棄物が発見され、その後、土壌汚染までも確認されたのである。
瑕疵担保条項のない契約だったが、平成29年(2017年)2月9日、豊中市は瑕疵担保責任について関空と協議に入り、結論が出ないまま、3月から工事に入った。ゴミの撤去費用は、約14億3000万円と、土地代金を遥かに上回るが、豊中市は全額を売主である関空に求める方針だ。
まさに、森友問題と同じ条件の土地で、ゴミ処理を巡り大きなトラブルが生じているのである。
しかも、偶然にも、豊中市と関空が14億円のゴミ処理代の協議を始めたのは、朝日新聞が森友問題を初報した2月9日の事だった。ところが、豊中市と関空のこのトラブルはどこも報じていない。
つまり、森友が購入したのと同条件の近隣地2件(野田中央公園と給食センター)はどちらも”曰く付き”だったのだ。
一方、森友の購入した土地は、大阪航空局が近畿財務局に売却を依頼してきたものの、買い手がつかなかったものである。
売買交渉は1度決裂している。平成24年(2012年)1月、大阪音楽大学が購入を検討しながら、同年7月に購入を断念しているのだ。大学側が7億円での購入を希望したのに対して、国側が時価9億円で売ろうとした為だとされている。
だが単純な価格交渉で折り合わなかったのかどうかには疑念がある。大阪音楽大学は、近隣に校舎を持ち、周囲に多く関連施設を持っている。周辺事情に詳しい大学側が物件の瑕疵性や周辺の実売価格との差などに不満を持った可能性はあるだろう。
そして大学と交渉が決裂した翌平成25年(2013年)4月、大阪航空局は、再度近畿財務局に対して、入札によるこの土地の処分を依頼した。
ところが、入札者はいなかった。7月までには、大阪府と豊中市から相次いで、この土地の取得要望者がいない旨が回答される。
その直後の9月にこの土地の取得を希望してきたのが籠池だったのである。
大阪航空局が持て余していた国有地に籠池が飛び込んできた。籠池としてみれば、塚本幼稚園や自宅から車で15分圏内と近く、僥倖と思ったに違いない。しかも騒音の問題があるとなれば、価格交渉の余地もあると考えたかもしれない。
しかし、籠池はおそらく隣接する豊中市が大量の補助金によって土地購入金額をチャラにしていた話は知らなかったに違いない。籠池自身は値下げは難しいとの感触を持っており、9億6000万円の土地を50年間定期借地で契約するのが希望だった。豊中市という公共団体が近隣地を事実上2300万円で入手していたことを知ったら、黙ってはいなかったはずである。
ちなみに、籠池は安倍晋三記念小学校名での寄付金募集の時期を、平成24年(2012年)秋としている。
したがってこの土地に出会ったのは、寄付金募集開始から1年後ということになるわけである。
この後、国有地の契約と大阪府からの小学校認可適当がほぼ同時に成立する平成27年(2015年)初頭までは、今のところ、鴻池事務所から流出した陳情整理報告書以外にまとまった資料がない。以下、このメモを元に簡単に経緯を記してみよう。
平成25年(2013年)の8月5日、籠池は兵庫県の黒川治県議会議員に伴われて、鴻池事務所に今回の件で初めて陳情に出向いた。大阪府では学校を借地に建設することはでいないが、豊中市の国有地4〜5年の借地で、その後購入という形にできないかというのが籠池の当初の相談だった。
9月2日、近畿財務局に土地取得要望書を提出した後も、籠池は鴻池事務所への陳情を繰り返す。
9月9日の記録には「賃借料を”まけて”もらえるようお願いしたい」と籠池の希望が記録されている。
9月13日の記録には、籠池が、大阪府と近畿財務局の間で土地貸借と学校認可が堂々巡りしている事について「ニワトリとタマゴの話。何とかしてや」と慨嘆している様が書かれている。籠池が大阪府から聞いたところによると、大阪府の私学課に近畿財務局の職員が来て、小学校設置認可がないと国有地を払い下げられないと言ってきたという。ところが、大阪府側は逆に、学校を認可するには土地契約が先だと籠池に説明したのであろう。だから「ニワトリとタマゴの話。何とかしてや」となる。
10月12日には鴻池議員同席で、籠池から「上から政治力で早く結論が得られるようにお願いしたい」「土地価格の評価額を低くしてもらいたい」との陳情があった。記録には秘書の筆跡で「ウチは不動産やではありませんが!」と書き込みがあり、苦笑させられる。
10月には鴻池事務所は、それでも、随分熱心に近畿財務局と連絡を取り合っている。担当官から「大阪府とは横の連携をとっているので(土地)手当の件は、府から確認があればOKと回答出来ます」とあり、賃借の件で本省と打ち合わせをしているとの報告もある。「ニワトリとタマゴ」の話は、この時期、大阪府と近畿財務局の間で調整がつき始めていたわけだ。
記録には、籠池の「長年の夢のカリキュラムを検討中なのでお目通りを」(平成25年12月2日)という言葉が記されている一方、賃借料や土地値下げ要望を持ち込まれる都度「*不動産屋と違いますので。当事者間で交渉を!」(平成26年1月31日)という鴻池事務所側の所感が添えられている。鴻池議員がメモを流出させたとすれば、これを見せたかったのであろう。
平成26年(2014年)4月に、籠池夫妻が100万円持参で鴻池本人に陳情したとされる件は東京の議員会館でのことだから、地元事務所の記録には載っていない。近畿財務局との価格交渉が難航する中で鴻池議員に直訴したのであろう。
が、平成26年(2014年)6月17日の記録には「籠池理事長より、諸手続きをコンサル業者に任せると報告有り。これでやっと事務処理が進むと思う。*要は資金調達がポイント!」とあり、鴻池事務所が、籠池の陳情が金に絡むことに閉口しつつも、前向きな推移にほっとしている様が読み取れる。
こうした一連の経緯を素直に読めば、議員事務所と大阪府と近畿財務局が、零細事業者の小学校設置の陳情に極力応えようとしているというだけの話に過ぎない。
確かに記録を見る限り、籠池は土地代や賃借料を政治力で低くするよう陳情している。えげつないというよりは、今時そんな風に世の中が動くと思っている子供らしさが少し気の毒になるが、鴻池事務所は担当役所間での円滑な連携に手を貸すのみで、当然ながら、その要求は突き放している。

◆私学審の認可適当、そして土地契約の成立
一方、大阪府への学校認可の申請にこぎ着けられたのは、鴻池メモが終わった後の、2014年10月31日であった。
だがその後の審査は難航する。
第1回目の大阪私学審議会審査となった同年12月18日には、小学校建設計画の明細や生徒数の確保について、根本資料の追加が求められ、答申保留、継続審議となった。
翌2015年1月27日の臨時審査には、それらの資料が提出され、今度は条件付きでの認可適当となる。
認可適当は認可そのものとは違うとは言え、この私学審の判断により、事実上認可に向けて、瑞穂の國記念小學院は大きく歩み出すことになったのである。
ところがここに奇妙なことがある。そもそも大阪府の私学設置の「審査基準」では、学校の校舎は自己所有地にしか建てられないことになっている。校地や運動場なら、条件付きながら借地でもかまわないが、校舎だけは自己所有地に建てねばならないのだ。一般的に各都道府県による借地条件はもう少し柔軟であり、大阪府のこの基準は最も厳しい部類に属する。
が、決まりは決まりである。
森友学園の場合、国有地とは言え借地なのだ。ここを突破できなければ話は前に進まないはずだが、どうして認可適当が下りたのか。
不思議なことに、私学審ではこの大前提がほとんど議論されていない。
なぜだろうか。
2017年4月6日、森友騒動の最中、大阪府は関係職員から詳細なヒアリングをした結果を公表したが、それによると、担当課である私学課の職員が土地に関する審査基準を緩和する判断を独自にしたとされている(「学校法人森友学園瑞穂の國記念小學院設置認可申請に関する検証報告ー府職員が校舎敷地を府審査基準に適合すると判断したことの検証」)。
ヒアリングによれば、担当職員らは「校舎敷地が借地である場合は大阪府の基準に適合しない」と認識していた。しかし「将来的には当該土地が自己所有となることが見込まれたこと」「8年後に底地国有地を買受ける意向であり、申請書の資金計画もそのように作成されていたこと」、また「文科省通知(H19)により、校地及び校舎に関する自己所有の要件が緩和されていること」を理由に、基準に適合すると、判断していたというのである。
行政の、それも担当課の独自判断としては驚くべき柔軟な解釈ではなかろうか。
しかも籠池による将来の土地売買の確実性についても、確約を取っていない。
担当者は近畿財務局に問い合わせ、森友学園から聞かされていた交渉内容が偽りでないことの確認はしていた。しかも、近畿財務局側から何度も打ち合わせに来ている。財務省が進んで調整しながら契約しようとしている案件だという信用によって、自前の財務精査はしていなかったのである。
担当課は私学審に対して、借地での申請だという説明はしている。が、私学審の民間委員側は、この話を必ずしもよく呑み込めていなかったようである。2017年3月24日、籠池の証人喚問と同日に開かれた大阪府議会で証人に立った私学審会長の梶田叡一は、認可適当は話がスタートしただけだから、その時点では借地でもいいが、開業時には、大阪府の基準通り、自己所有になっていなければ認可するつもりはないとの立場を崩していない。
私学課の認識と私学審会長の認識がまるで違うのである。
しかし、一方で、梶田私学審会長は次のようにも証言している。

■梶田私学審会長
<実を言うと、これが(国の)確約があればいいんじゃないかというのは、私は、最後に私学審議会の方々のムードー認識と言うべきかムードと言うべきか分かりませんがーだったんじゃじゃないかなと思っております。だから、これなかなか難しいのは、ちょうど規制緩和の時代に入ってきたという。したがって、いわば先例をそのまま踏襲できないという認識は、私は委員の方々にあったと思うんです。>

梶田私学審会長は近畿財務局と森友学園の契約を、国の「確約」と表現している。これは、財務省が新規参入事業者である森友学園との間で学校地としての土地契約を結ぶ以上、規制緩和案件として積極的に通していいという「ムード」が大阪府側にあったという意味だろうか。
どうにも危うい審査ではないか。
もっとも、この借地問題は曖昧なままだったにせよ、他の諸点での森友学園への疑念は、審査会で噴出した。
委員名は黒塗りで分からないが、例えば次のような調子である。
「収支上何というか、ウルトラC以上のすごい実態になるんですが、これは信憑性があるのかどうかと、私学経営をしている我々としても、私学課は毎年、財務状況調査をしておられ、実態もある程度掴んでおられると思いますが、その点を踏まえて、不正の可能性はないよと仰られるんでしょうか?」
これは塚本幼稚園の経理についての私学課への質問である。現状の塚本幼稚園の経営状態そのものが疑われていたのである。
一方、新たな小学校計画についても次のような発言が出てくる。
「細かい事を言うと、あり得ないような話ばかりがあり、こんなことがあるなら僕もやってみたいと、冗談ですけど、思うぐらいのことですので、こんな絵空事でうまくいくとは、私もとても思えないのですが」
カリキュラムについてもある委員から「素人臭い」とされた上で、「挙げればキリが無いほど、ちょっとした違和感があります」とされている。
極めつけは次の発言であろうか。
「我々学校法人は通常、監査資料に関して税理士に依頼をするということは極めて稀です。ましてや資料の2の●●の資料はM学園の小学校を受注しました、というような資料を提出して、すでに先に進んでいますということなのでしょうが、なぜこんなことになったのかと今後新聞沙汰にならなければと心配です」
要するに資金繰りも経営計画もカリキュラムも専門家らから極めて強い疑義が出されていたのである。これだけの根本的な経営上の疑義が出され、また大阪府の審査基準に外れる借地の上での校舎建設を担当課職員の判断で緩和し、認可適当を出したことになる。
どうにも理解に苦しむ話である。
が、驚きはまだ続く。
この私学審の認可適当を受けて、直後の2015年2月10日、国有財産近畿地方審議会で森友学園への国有地売却が審査された。
こちらの審議会でも、極めて強い懸念が表明されているのである。
民間委員からは「財務局は、10年間借地として貸して、8年後を目途に森友が買取りをするというが、私立小学校の経営にそんな将来性があるわけではなく、そのような買取目途は本当につくのか」との疑義が、相次いで出されている。
ところで、注目に値するのは、各委員から再三出てくる「私学審でそこは充分に議論されているとは思うが」という発言である。
関西学院大学教授の角野幸博は次のように発言している。
「大体学校法人の会計というのは普通の企業会計とは全然違っていまして、かなりリスクヘッジがかかっているということは理解しているのです。それでも、今のお話で10年の期限で、10年経った時に売買契約が結べない、恐らく在学生の利益のためには引き続き、その定借期間を延長せざるを得ないということが見えていると思うのですけどね。その上で、なおかつさらに経営が行き詰った時には、想定されるのはまず募集停止にして、その上で現在その時は在学中の児童が卒業するまでは面倒みますと。そのお金はちゃんと内部留保させられているはずなのですよね。
ということで、そこまでの安全はきっと議会でチェックされているとは思いますが・・・」
されていなかったのは既に見た通りだ。
委員らからの同趣旨の疑義を受けて、近畿財務局管財部次長の立川敏幸は、私学審が森友学園をきちんとグリップしてゆくという前提で、契約を進めたいとした上で、次のように発言している。
■立川敏幸近畿財務局管財部次長
<我々もそういった条件が履行された上で認可を得られることを前提として処理を今、進めてゆこうという風に考えておりまして、こういった形で諮問させていただいているところなのでございますけれども、今の段階でそういったことが確定的にできないという風なことでもあれば、そもそもこうやって諮問すらしませんし、こういった申請自体もあり得ないと思うのですけれども、一応こういったことをきちんと履行することということで先方から申請を受けて、進めるということでやってきておりますので、ここはスタートするべきなのだろうという風に考えているところでございます。>
借地の買取を先方がきちんと履行する前提で、諮問にかけていると答弁している。だが、委員らの懸念通り、籠池にそんな履行能力があったかどうかは今では明らかだろう。
弁護士の藪野恒明から、国有地売却は本来換価、つまりお金にするのが目的なはずなのに、これはうまくいっても8年後の換価となる。売却の趣旨に適っているのかとの疑問も出た。
■小池管財部長
<理想はすぐに購入していただくというのが理想ですけれども、一方で国有地の管理処分の方針として国民共有の貴重な財産ですから、公用・公共用の利用を優先しますという考え方もございまして、まさに小学校経営という公共性の高い事業なものですから、そういった公共性の高い事業者が国有地を使いたいという要望があった場合には、それに応えざるを得ないというところです。>
つまり、近畿財務局は、換価での儲けというより、公共性の高い事業だから申し出に応じたというのである。その前提としては私学審による森友学園の経営状態のグリップに信頼するという立場であり、審議会の民間委員らも同様に私学審による充分な審査があったと仮定して、国有地売買の契約を許可したことになる。
一方の私学審が財務省の購入判断を信頼して認可適当を出していた。
こうして、2015年5月29日、森友学園は、10年の買受け特約を付した有償貸付契約を近畿財務局と結ぶ。賃料は月額227万5000円とされ、2025年6月7日までに森友学園がこの土地を購入時の不動産鑑定額で購入する旨記載された。
左派マスコミは3カ月の間、森友学園と安倍夫妻の関係という空想を突き回して、名誉校長や忖度、照会ファックス、籠池の虚言で誇大に騒いだが、以上で明らかなように、本当の森友学園問題は別のところにあったのである。
大阪府私学審は、近畿財務局の契約に信頼して認可適当を出し、国有財産審議会は私学審の財務審査と今後のグリッピングを信頼し、結局どちらも森友学園の経営能力の吟味が疎かなまま契約や認可を進めるに至ったー危ないまでの信用循環が生じている。
籠池のように資金力もなく、平気で虚偽書類を提出する人物を国有地売買と私立学校設立という公共性が重複する事案において、国の地方機関も大阪府の機関も、全くチェックできなかった。
特段の違法性や圧力の問題というより、大阪府の私学課と近畿財務局の問題処理の杜撰さの問題であり、民間審議会のチェック機能の詰めの甘さの問題であった。
政治の圧力があったとは考え難い。籠池は零細事業者で資金繰りは既に見た通り極度に苦しい。政治家が無理に働きかけても、見返りの期待できる人間ではないのである。
事実、事務方は、自ら諮問にかけた会議だから、議事録では頗る前向きに見えるが、ここに辿り着くまでの籠池の難航ぶりを見れば、交渉過程でこの案件に特段の配慮をしてきたとも思えない。
ただし、近畿財務局としては大阪航空局を代行しての土地販売など、決着が付くならばさっさと片付けてしまいたかった。籠池の交渉はしつこく、政治家の名前をあれこれ濫発し、公開された陳情の録音を聞く限り、恫喝的言辞で役人を罵ることもしばしばだったようである。面倒から解放されたい心情が働いた可能性は充分にある。
一方、大阪府は橋下府政以来、規制緩和の潮流下にあった。近畿財務局が前向きであることを受けて、維新府政の教育分野における規制緩和の流れに私学課が乗り、積極的な判断をしたということだろう。
こうして役所間と審査員の間に根拠なき信頼循環が生じ、結果的に、資金繰りが困難で詐欺を働いていた事業者と契約するという行政判断の誤りが生じたのである。
重大なことがある。
安倍昭恵夫人の森友学園の「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長就任はこの4カ月後の2015年9月5日土曜日の塚本幼稚園の教育講演会に登壇した時だ。
以上のルーズな決定に、安倍昭恵夫人への「忖度」はありようもなかったのである。

◆神風
2015年5月29日契約の成立後、2015年7月29日から、森友学園は、土壌改良、埋設物除去の工事を実施した。この除去作業は12月5日に終わる。これは、かつて大阪航空局の調査により判明していた地下3mまでのゴミ処理であり、森友学園側が除去作業を立て替えで実行し、終了した後に国が経費を森友学園に支払う契約だった。
このゴミ撤去工事の最中、籠池は2015年9月5日に塚本幼稚園に安倍昭恵夫人を招き、講演会を開いた。安倍昭恵夫人が森友学園の「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長を受諾したのはこの時である。
そして、ここで懇切に話を聞いてくれた安倍昭恵夫人の好意に縋ろうというのが、2015年10月26日の安倍昭恵夫人付政府職員・谷査恵子に宛てた手紙だったのである。
籠池の要求に対し、谷は関係省庁に照会しただけであった。
こうして当初契約のまま時が過ぎ、地下3mまでのゴミ処理が済んだ2015年12月、施工契約をしていた藤原工業がいよいよ校舎の建築に着工する。
ところが、ここで驚くべきことが起きるのである。
籠池によると、2016年3月、小学校開設の定例の打合せ会に出向いたところ、工事関係者が騒然としていたという。何事かと言えば、杭打ち工事をしていたところ、土中9.9mの深部からゴミが大量に出たというのだ。
籠池は2016年3月11日、近畿財務局にその件を連絡し、2016年3月14日には近畿財務局と大阪航空局とに、現場関係者立ち合いの上、これを確認させた。今までは籠池自身が役所との折衝に動いていたが、今度初めて弁護士を選任した。北浜法律事務所の酒井康生である。籠池は、近畿財務局に酒井弁護士と共に出向くとともに、2016年3月19日には夫妻で財務省本局に乗り込み、田村嘉啓・国有地財産管理室長に、ゴミの新たな発見を訴えた。この時のやり取りのテープが籠池から菅野完を経由して朝日新聞の手に渡り、朝日新聞がそれをどう捻じ曲げて報じたかは後で紹介したい。
籠池は証人喚問で次のように証言している。

■籠池泰典
<平成28年3月に入って、工事が始まってから生活ごみが出てきました。その後工事を施工していました中道組に北浜法律事務所の酒井康生弁護士を紹介頂きまして、以降の土地取引に関する一切の交渉をお願いしましたところ、最終的に土地価格は8億円余りも値引きされ、1億3400万円になったとお聞きして、想定外の大幅な値下げにその当時はちょっとびっくり致しましたが売買契約を結びました。私は、交渉の詳細については詳しく承知していないので、値引きの根拠などについては近畿財務局当時の迫田理財局長、酒井弁護士にお聞き頂きたいと思います。>

籠池によれば、9億5600万円から1億3400万への減額は、この時初めて選任した弁護士の交渉によるので、籠池自身は与り知らないというのである。驚くべき証言だ。それなら安倍夫妻はもとより政治家とも何の関係もない話ではないか。
実際には、籠池は酒井弁護士を選任しながら、酒井弁護士に内密で別個にも交渉をしていた。が、いずれにせよ、定借契約の国有地から、契約時に想定されていなかった大量のゴミが出た以上、この土地は瑕疵物件だったことになったのである。
籠池側が財務省とどう交渉したかは想像に難くない。
国は、9億5600万円もの国有地で、月額227万5000円の賃料を取りながら、重大な瑕疵物件を民間人に押し付けたという話になるではないか。瑕疵担保責任を巡る訴訟を検討せざるを得ない。そこを突いたに違いない。
それだけではない。財務省側としては、直ちに急がねば訴訟規模がさらに大きくなる可能性が高かった。マスコミが黙殺した2017年3月6日の西田昌司の国会質疑から、財務省の答弁を聞いてみよう。

●西田昌司「参議院 予算委員会 質問」(H29.3.6)
https://www.youtube.com/watch?v=pj72xHAkm5o
■佐川理財局長
<先方が学校開設を急いでいる中で、(略)国の責任に「おいて開校が遅れる、あるいは開設断念ということになりますれば、それは損害賠償としても、国としてですね、例えば工事の遅れに伴う追加費用など直接的なものもございましょう、それから開校の遅れによる様々な被害、あるいは生徒、父兄への対応など損害賠償請求が考えられところでございます。>

この段階で2年後の開校を森友学園は目指していた。その土地が瑕疵物件だと訴えられ、訴訟が長引けば、開校に工事が間に合わなくなる。財務省としては瑕疵物件を貸与した上、開校に間に合わない責任まで取らされては敵わない。瑕疵担保を除外し、格安に売り切り、以後、訴訟などトラブルが一切発生しない形に可能な限り急ぎ持ち込むという方針を固めたに違いない。
そして、財務省側の状況判断を見越して、籠池は、2016年3月24日、土地を貸借ではなく、購入したいと申し出たのである。
財務局は大阪航空局にゴミ処理代の見積もりを依頼した。2016年4月14日には大阪航空局により、処理費用8億1900万円との算定結果が出た。一方、土地鑑定は山本不動産鑑定士事務所に依頼し、土地価格は9億5600万円とされた。こうして鑑定価格からゴミ処理費として見積もられた8億1900万円と撤去による損失を差し引いた1億3400万円が、新たな土地代金として算出されることになった。
2016年6月20日、国に瑕疵担保責任なし、売り切りの1億3400万円で売買契約が締結されるに至ったのである。
籠池にすれば、瑕疵物件となったため、思いがけず購入可能な金額で払い下げられたということになる。算定された8億1900万円でゴミ処理をしなければならない義務はない。この値段は、あくまでも杭打ちの全箇所で9.9mまで掘り下げて完全工事を実施すると仮定すれば8億1900万円かかるというだけの話である。実際には8億1900万円など掛けず、工事に差支えのない範囲でゴミ除去を施せばよい。
これは瑕疵物件における通常の処理に過ぎない。
瑕疵物件だと判明した以上、買主は、売主に瑕疵の可能性を最大幅に見積もらせようとするのは当然である。今後、工事を進める中で、新たにまた何が出てくるか分からないからである。事実、豊中市の給食センター用地として売却された同条件の土地では、ゴミ処理の実績は14億円を超えていた。財務省が売り急ぎ、ゴミ処理代の算出を民間に任せず、いささか怪しい処理だったのは事実だが、8億1900万円の算定が非合理だとは類推上言えないであろう。
証人喚問で、籠池はこの突然の減額を「神風が吹いたんじゃないかと思った」と表現し、逆恨みの念を込めて、この減額に安倍昭恵夫人の意向が働いたかのように演じて見せた。
だが、籠池から安倍昭恵夫人への照会依頼は、2015年10月26日に出され、安倍昭恵夫人付職員からの回答は2015年11月17日だ。時期が全く違う上、今書いたように、瑕疵物件による訴訟を財務省が恐れ、売り急いだことこそが「神風」だったのである。
ちなみに、大幅な減額が決まる直前の2016年4月6日には、森友学園が立て替えていた当初の深さ3mまでのゴミ除去代1億3000万円が大阪航空局から森友学園に返還されている。
貸与と着工にこぎ着けたはいいが、8億2600万円の物件の定借に悩まされていた籠池にとって、1億3400万円での買取と処理費用1億3000万円の入金が重なったことは、よほどの幸運を感じさせたであろう。
神風は確かに吹いた。それは安倍昭恵夫人によるものではなく、工事着工によって地下9.9mの地底から吹き上げてきた。しかし同時に、それは籠池にとって地獄の鎌の蓋を開く風でもあったようである。

◆「朝日新聞スキャンダル」
まだご紹介していない朝日新聞の記事を摘録しておく。
初報2017年2月9日から2カ月半後の4月26日の朝日新聞は、財務省側担当者と籠池が面会した際の録音を入手したとして、大きな記事を出した。
丁度今触れた、地下9.9mからゴミが新たに発見されて籠池が財務省に乗り込んだ際の音声録音が、籠池から菅野完、菅野完から朝日新聞に届けられたというのである。
この面会の目的は既に書いた通り、財務省幹部に土地が瑕疵物件だった事を直訴することにあった。
公開されたテープに、安倍総理や安倍昭恵夫人の痕跡はない。
むしろ、面会相手の財務省の田村国有地財産管理室長を脅しつけるような籠池の発言が目を引く。
籠池は
「あの方自身が愚弄されていると思ったから来たんです」
などと言っている。
あの方が誰を指すのかよく分からない。朝日新聞はそこをぼかして、安倍昭恵夫人を連想させようとしている。
籠池は、他にも政治家を匂わす言葉を何度か使っている。
「いろいろ我々にご支援頂いている、議員の先生もいらっしゃいますけど」
「昭恵夫人の方からも、誰かここも聞いてもらったことがあると思いますけど」
「元副大臣までやった人やけど、えらい怒ってましたよ。『バカにしてるなあ!』」
という調子である。
籠池が自分からこれだけ政治家を持ち出している以上、政治家による働きかけがなかった証拠にしかならない記録である。
ところが、朝日新聞の大見出しは
「籠池氏に『重大と認識』財務省 土地交渉を巡る録音記録」
とあり、小見出しは
「幹部『この件は特例』籠池氏『あの方を愚弄』『昭恵氏からも』」となっている。
なるほど、記事を読めば田村室長は確かに
「これは特例だ」
と発言している。
だが、よく読めば、田村室長は
「国有地は現金買取が原則なのに貸付をするということが特例だ」
と言っているだけなのである。
田村室長は「重大と認識」は確かにしている。が、それは
「財務省が森友学園に貸与した土地から新たなゴミが出た」
ことを「重大」だと言っているのである。
ところが、この見出しでは、財務省が、森友案件そのものを「重大と認識」し、「特例」と考えているとしか見えない。しかも「重大」「特例」という言葉に「昭恵氏からも」と重ねれば、安倍昭恵夫人の関与が連想される。さらに「あの方を愚弄」と安倍昭恵夫人の名前を重ね、籠池=安倍昭恵夫人による財務省への圧力を連想させようとしている。
4月28日の朝日新聞社説が「特別扱いの理由を示せ」として追い打ちをかけた。
民進党はこの日、籠池をヒアリングに呼ぶ。翌日の朝日新聞の大見出しは「『真っ先に昭恵氏』強調 籠池氏『電話20回超』」である。
籠池によると、安倍昭恵夫人に進捗の具合をしばしば電話で報告していたということだ。妻籠池諄子に至っては、安倍昭恵夫人に電話をかけ、1〜2時間に及ぶこともあったという。
だから何だというのだろう。安倍昭恵夫人の信じ難い忍耐力と、人の親切に付け込む籠池夫妻の図々しさを意味するものでしかないではないか。
5月9日の朝日新聞でも、常軌を逸した安倍昭恵夫人叩きが続く。題して、「『昭恵氏との写真、14年提示』籠池氏 近畿財務局に」。
紙面には、籠池夫妻と安倍昭恵夫人が小学校取得地で写した写真がでかでかと掲げられている。籠池がある時、これを近畿財務局に示したというだけのことである。
呆れたことに、丁度この頃発売された『週刊金曜日』(5月5日・12日号)は、安倍総理が国会で「(北朝鮮は)サリンを(ミサイルの)弾頭につけ、着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と警鐘を鳴らしたことに対して、「北朝鮮の脅威を煽ることで、森友問題から世間の目を逸らさせる『森友隠しだ』」と書いた。もはや、頭がどうかしているとしか思えない。
が、さすがに森友問題はこれ以上、安倍叩きに使える状況ではなくなりつつあった。
何よりも朝日新聞にとって慮外だったのは、左派野党、テレビを煽り、これだけ共闘し続けても安倍内閣の支持率が思うように下がらなかったことだろう。何しろ4月15日、16日の朝日新聞の調査でさえ内閣支持率は50%と堅調だったのである。
籠池夫妻のキャラクターは騒ぎを大きくするには格好だったが、安倍総理の関与の線は早くに消えてしまっていた。
幾ら安倍昭恵夫人叩きを演じても、安倍総理その人が政治過程に登場しない以上、支持率を下げ、退陣に追い込む危機は到底作れないー森友問題を通じて、明らかに朝日新聞は、この教訓を得たようである。
折しも5月3日の憲法記念日には、2カ月余にわたる安倍叩きに動ずる色もなく、安倍総理はある会へのビデオメッセージで、憲法9条に自衛隊を書き込む憲法改正を2019年までに実現しようではないかと呼びかけた。憲法9条死守を生命線としてきた朝日新聞らリベラル左派陣営にとって、高支持率の首相が憲法9条改正を期限付きの目標として表明したことは重大な脅威と感じられたに違いない。
社の命運を賭してでも安倍総理を潰す決定打はないかー朝日新聞の仕込みは、森友騒動の不発を受けて、極めて入念になされ続けていた。
我々は、その戦慄すべき組織的な情報戦を、加計学園問題として、これからつぶさに見ることになるだろう。

●2017.6.23 01:00更新
【阿比留瑠比の極言御免】
蔓延するフェイクニュース 朝日新聞のスクープ記事もなぜか不自然 加計学園問題の文書写真が… 
http://www.sankei.com/premium/news/170623/prm1706230005-n1.html
22日朝、テレビで民放番組にチャンネルを合わせると、森友学園の籠池泰典・前理事長の顔が大写しとなった。籠池氏が21日夜、安倍晋三首相の私邸などを訪ね、寄付を受けたと主張する100万円を返却しようとしたが断られ、記者団の取材に応じた場面だった。
籠池氏は現金100万円だという紙の束を持っていたが、本物の一万円札は上下の2枚だけで、中身は白い紙であるように見えた。
国会で大騒ぎし証人喚問まで実施した森友問題も、内閣支持率を低下させた加計学園問題も結局、火のないところに煙を立てた
「フェイクニュース(偽記事)」
ではないのか。
「怪しい」
「疑わしい」
「信用できない」
…などといくら追及しても、核心に迫るファクト(事実)は出てこない。その半面、忖度だとか面従腹背だとか曖昧な言葉ばかりが飛び交い、
「事実がないことを証明して納得させろ」
と、不可能とされる
「悪魔の証明」
が堂々と求められている。
■不自然な写真
「自分自身も(記事を)書かれる立場として、(加計問題が)いかにフェイクかとよく分かる。フェイクニュースは蔓延している」
自民党の小泉進次郎衆院議員は1日の記者会見で、こう指摘していた。そもそも加計問題が一気に火を噴いたのは、朝日新聞が5月17日付朝刊の1面トップ記事
「新学部『総理の意向』」
「文科省に記録文書」
がきっかけだった。
記事は、加計学園の獣医学部新設計画について、文部科学省が
「内閣府から『官邸の最高レベルが言っている』『総理のご意向だと聞いている』などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった」
というスクープだった。
それはいいが、記事に添えられた
「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」
と題された文章の写真が不可解である。
写真はなぜか下側が暗く文字がよく読めないが、文科省が15日に発表した同様の文書をみると、その部分にはこうある。
「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」
つまり、安倍首相の指示だと取り繕ってはどうかという話であり、逆に首相の指示などないことを示している。
ところが、そこが朝日の写真では不自然に隠された形となっている。
これでは「印象操作」と言われても仕方があるまい。
■真実は不確実
「安倍政権に批判的な記者の一人」であり、安倍政権が掲げる政治目標に
「ほとんど賛同できない」
という立場の元朝日記者でジャーナリストの烏賀陽弘道氏は、新著『フェイクニュースの見分け方』でさまざまな情報を検証している。
その上で、
(1)日本会議=安倍政権の黒幕説を首肯できる事実は見いだせない
(2)(安倍政権の言論統制を非難する記事や出版物の)「報道に介入した」「圧力を加えた」「統制した」と主張する根拠がわからない
(3)(高市早苗総務相の放送法関連答弁について)民主党時代と同じ発言を根拠にした「安倍政権は報道の自由を恫喝している」という非難は不思議
などと結論付けており、うなずける。
米国の著名なジャーナリスト、リップマンは1922年刊行の著書『世論』で、ジャーナリストの仕事についてこう訴えている。
「人びとの意見形成のもととなるいわゆる真実といわれるものが不確実な性格のものであることを人びとに納得させること」
フェイクニュースが蔓延しているならば、なおさらだろう。
(論説委員兼政治部編集委員)

●2017.11.23 01:00更新
【阿比留瑠比の極言御免】 産経新聞
朝日新聞へ「疑念が晴れない」
http://www.sankei.com/entertainments/news/171123/ent1711230001-n1.html
朝日新聞が学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題に関し、執拗に用いる表現を使えば
「疑念が晴れない」
「疑問が残ったままだ」
「追及を何とかかわしたい。そんな狙いもうかがえる」
とでも言うべきか。
まるで国家の存亡にかかわる重大問題であるかのように、加計問題について膨大な記事を量産してきた朝日が、紙面に載せたがらない事実のことである。
日本維新の会の足立康史衆院議員は15日の衆院文部科学委員会で、
「新学部『総理の意向』」
「文科省に記録文書」
と書いた5月17日付朝日の朝刊1面トップ記事について捏造報道だと指摘し、その理由の一つとしてこう述べた。
「『国家戦略特区諮問会議決定という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか』と書いてある。総理からの指示ではないが、こういう形にすれば総理からの指示があったかのように見えるよね、と書いてある。これを見た朝日が、こういう記事を1面に出すというのは捏造という」
朝日はこの日の1面で、文書を写真入りで報じていたが、足立氏が指摘した部分はなぜか暗い影が落としてあり、判読できないようになっている。筆者も疑問を抱き、6月23日付当欄で
「逆に首相の指示などないことを示している」
と記したところだ。
実は朝日は、5月18日付朝刊2面の記事
「『総理のご意向』記録に」
でも、この文書の写真を掲載している。
ただ、写真はやはり途中で切れており、
「総理からの指示に見えるのではないか」
という肝心の部分は、読者に分からないように処理されていた。
どう考えても不自然であり、記事の趣旨と矛盾するので、わざと隠しているとみられても仕方あるまい。
一方で朝日は、衆院文科委での足立氏の捏造発言は
「事実に反する」
と、まず11月16日付朝刊で足立氏の発言を紹介した上で
「加計問題『総理の意向』本紙記事 複数の文書・関係者取材し報道」
などの複数記事を掲載して反論した。
また、18日付朝刊では
「本社『強く抗議』」
との記事で
「弊社は、関係者に取材し、文書を入手し、それらを踏まえて報道しています」
と記した。
さらに22日付朝刊でも
「『捏造』発言撤回 足立氏に求める」
とたたみかけた。
だが、それらの記事には足立氏が指摘した
「総理からの指示に見えるのではないか」
との部分は、なぜか全く出てこないのである。よほどそこには触れたくないのかもしれないが、反論として不十分である。
「総理のご意向だと聞いている」
という文書作成者の伝聞部分は何十、何百回と強調しておいて、あまりにバランスを欠く。
朝日は21日、著書
『徹底検証「森友・加計事件」 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』
の中で、足立氏と同様の部分を指摘した文芸評論家の小川栄太郎氏に対しても申入書を送り、こう反論していた。
「弊社は、上記8枚の文書について、その内容を本年5月17日、18日、19日の紙面で紹介しており、『安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず』という指摘は事実に反します」
そこで17〜19日の朝日紙面を改めて読み直してみたが、
「総理からの指示に見えるのではないか」
との部分への言及は見当たらなかった。
朝日はそこは重要だとは判断しなかったというのだろうか。やはり疑念は晴れない。

●2017.11.27 19:52更新 産経新聞
朝日新聞の「総理のご意向」報道に与党が逆襲! 菅原一秀氏「わざと隠したんでしょうかねぇ」
http://www.sankei.com/politics/news/171127/plt1711270028-n1.html
「わざと隠したんでしょうかねぇ」−。
自民党の菅原一秀氏は27日の衆院予算委員会で、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題について「新学部『総理の意向』」と報じた朝日新聞の報道(5月17日付朝刊)に疑問を投げかけた。
朝日が報道の根拠とした文部科学省の文書は、同省が6月15日、省内調査の結果として公表した。
ただ、文書中の
「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」
という部分は、朝日の記事に添えられた写真では影が落とされ読めなくなっている。
菅原氏は
「これはすなわち『指示がない』ということではないか。朝日新聞はわざと下のほうを隠したんでしょうかねぇ」
と首をかしげた。
その上で
「総理の意向があって困っているのではなくて『意向がなければ困る』『あったらありがたい』という状況だったのではないか」
と指摘した。
文科省の担当者は
「安倍晋三首相や官邸から指示はなかったと認識している」
と重ねて説明した。

◆朝日新聞とNHK社会部の共闘
森友学園騒動もようやく終息しつつあるかに見えた2017年5月16日ー。
深夜11時、NHKが「文科省の審議会 新設獣医学部に『課題あり』と報告」と題するさりげないニュースを報じた。
1分半ほどの短いニュースだ。
タイトル通り、文科省の審議会の報告内容を報じている。
ところが、ニュースの終わりに次のような一言が加わり、画面に10数秒、何やら文書が映し出されるのである。
<この学部はことし1月、規制緩和によって今治市に設置する方針が決まりましたが、選考の途中だった去年9月下旬、内閣府の担当者が、文部科学省側に対し今治市に設置することを前提にスケジュールを作るよう求めたやり取りが文書で残されています>
これがこの後「加計学園問題」の中核となったいわゆる「文科省文書」のスクープだった。
それにしても、努めてそう見えぬよう、そっと挿入されたいかにも奇妙な「スクープ」である。
この時、NHKが放映した画像をよく見ると黒塗り部分があり、それは後で問題視されることになる「官邸の最高レベルが言っている」という箇所だった。
この誰にも気づかれぬ静かなるスクープの数時間後ー翌朝2017年5月17日、朝日新聞が、今度は逆に、1面トップで「文科省文書」をスクープする。
「新学部『総理の意向』」と横に大きくぶち抜き、NHKが隠していた学校名も「加計学園計画 文科省に記録文書」と見出しに打ち出した。
朝日新聞のリードは次のようなものだ。
<安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった>
ところがこの朝日新聞の報道には、非常に不自然なことがあるのである。朝日新聞は入手したスクープ文書の写真を1面左に大きく掲載しているのに、周囲に黒い円形のグラデーションを掛けて、一部しか読めないよう細工を施しているのだ。
一見、推理物の映画やテレビドラマのような演劇的な処理に見え、見過ごしてしまう人が多いだろう。が、少し考えれば、新聞が入手した文書を紹介するやり方としては明らかにおかしい。
普通なら、せっかく入手したスクープ文書なのだからー個人情報保護法の観点からの固有名詞以外はー全体像を誇示したいのではないだろうか。
この部分を拡大してみよう。
第1節は全文が読める。この中に「総理のご意向」が出てくるわけだ。第2節は3行目から両脇が読みにくくなるが、目を凝らしてみればまだ文意は取れる。ところがその下の3節目は1行目の「『諮問会議決定』という形にすれば、総理・・・」と、2行目の「・・・見えるのではないか。平成30年・・・」という中央部分だけが辛うじて読めるが、その下は闇に溶け込むようにまるで読めなくなっている。全体が巧みにグラデーションされているから、一見偶然のように見える。
が、偶然ではない。まさに、朝日新聞の写真で隠されていた第3節の1行目、2行目は、次のような文言だった。
○<「国家戦略特別区域諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので総理からの指示に見えるのではないか。>
これは何としたことか。
「総理のご意向」が書かれた同じ文書のすぐ下に、「総理が議長なので総理からの指示に見えるのではないか」と書かれている。もし「総理の指示」があったらこういう言い方にはなるまい。指示がなかったからこそ「総理からの指示に見える」ような操作が必要だーこの文書はそう読める。
朝日新聞のスクープは、黒い影でこの部分を隠していたのである。
それどころではない。
この日、朝日新聞は後に政府が調査・公開した文書8枚(一部ずれがある)を既に入手していたが、「総理の意向」「官邸の最高レベル」という、安倍首相の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず、未公開のまま、今日に至っているのである。
入手文書の全文は、何百ページもの記録文書ではない。文字数にしてわずか611字、本来ならば政権スキャンダルとしてスクープした新聞社が、初報で全文公開するのが当然だろう。ところが全文どころか、朝日新聞が繰り返し報道し続けたのは先程の文言2つだけだった。
なぜか。
文書全文を報道すると、朝日新聞が贋造したい「安倍スキャンダル」が雲散霧消してしまうからだ。文書全体は、加計学園の新獣医学部設置が全く「総理の意向」と関係なく折衝が進められていたことを示している。朝日新聞は、最初から世論の誤導を狙って、「総理の意向」でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽して報道し続けたのである。
とりわけ、異様と思われるのは、朝日新聞とNHKとが、単純な事件報道ではなく、最初から情報操作しなければ「事件」にならない案件で連動してスクープを出した点だ。
2017年5月16日という前日の夜11時にNHKがごく目立たぬ形で第一報し、翌朝5月17日朝刊で朝日新聞が1面トップに打ち出す。これは四六時中あることではない。
しかも、実は、NHKと朝日新聞がスクープしたのは同一文書ではない。類似してはいるが、別文書である。
NHKが放映したものを文書A、朝日新聞が報道したものを文書群Bとする。
Aは「藤原内閣府審議官との打合せ概要(獣医学部新設)」と題された1枚もので、Bは8枚ものだ。Aは「平成28年9月26日18:30〜18:55」と日時と担当官の実名が明記されているが、B文書は殆どメモのようなものである。B8枚の内、1枚はAとほぼ同じ内容で、それには「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題されている。書式から言ってAとBは別の人物による記録で、Bは8枚とも同一人物の作成と思われる。
この内、NHKが文書Aを2017年5月16日深夜のニュースで取り上げ、朝日新聞は2017年5月17日朝刊で文書群Bをスクープする。
そして朝日新聞の初報と同じ17日に、早くも民進党が文書群Bを質疑に用い、19日には共産党のしんぶん赤旗が文書Aの写真を公表した。朝日新聞と民進党、NHKと共産党の人的関係の深さが想像される。文書AはNHKも共産党も全文を見せているが、文書群Bはスクープした朝日新聞も質疑に用いた民進党も、今日に至るまで全文公開をしていない。
そして少し後になるが、6月2日、民進党は従来入手していた文書群Bとは別文書を入手したとして、文書Aを公表した。同日のNHKは、それをまるで新たなスクープのように報じたが、実は、これはNHK自身が5月16日に報じたのと同一文書なのである。
一体どういうことだろう。
違う人物から、似た内容の別文書AとBが、NHKと朝日新聞に持ち込まれ、夜11時のスクープと翌朝朝刊のスクープが偶然にも重なるーそんなことがあるはずがない。
では、同一人物が、NHKには文書Aだけを持ち込み、朝日新聞には文書群Bだけを持ち込んだのか。それもありそうにない。情報を持ち込む人物は、情報の素人だ。手持ちの情報は全部見せ、報道する側の選択に委ねるのが普通だろう。
すると、ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ないのではあるまいか。
文書Aは書いた人物こそ分からないものの、日時も出席者名も書かれており、文書群Bより信憑性が高い。NHKは国の予算が割り当てられ、受信料を強制徴収し、放送法第4条「報道は事実を曲げないですること」などの法的拘束下にある。信憑性が確証できないスクープは危険すぎる。朝日新聞は誤報を繰り返しながらクオリティーペーパーの虚名を保持してきた名うての猛者だ。その点、NHKほどの注意を払わずに済む。信憑性の高いAをNHKのスクープに割り当てたのはその為だろう。
それでも謎が残る。
というのも、これらの文書は普通ならゲテモノというべき取り扱い注意文書だからである。
文科省の記録文書と言っても、署名がない。特に文書群Bに至っては、どのような機会に作成され、使用されたかも分からない。クレジットのまるでないメモ書きだ。こんなものは誰でも簡単に捏造でき、捏造でないと証明するのは難しい。文書Aの方が信憑性が高いとは言え、担当官の名前など誰でも調べられ、多少内部事情を知る人なら偽造は容易であろう。
逆に、もしこれが本物の文科省の内部メモであったなら、流出させた人物は国家公務員法の定める守秘義務違反に問われる可能性がある。そんな危険を冒す人間が現役の官僚にいるだろうか。
朝日新聞とNHKというメディア序列のトップ2が裏を取らずに報道するには、危険すぎる文書なのである。もし贋物だと後で判明したらどうするのか。朝日新聞の場合、慰安婦報道の謝罪、福島原発報告書の捏造以降、部数減はいまだに続き、近年、経営陣は、無理なスクープを控え、無難な報道姿勢を現場に要求しているとされる。
NHKは、猶更逃げようがあるまい。政府攻撃の文書が捏造だったとなれば、国会で指弾された挙句、経営陣総辞職もののスキャンダルだ。
本来ならこの2社が自信を持ってスクープするには文科省職員複数の証言が必要だったろう。ところが、朝日新聞の記事に「文科省現役職員」とか「文科省の複数の職員」という言葉が出てくるのは初報から20日も経った6月6日からなのである(6月6日「加計文書『省内で共有』文科省現役職員が証言」)。
今回のスクープ記事には「加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9〜10月に文科省が作ったことを認めた」とあり、入手先を書かず、確認者が「文科省関係者」1人だということが分かる。要するに、この文書は現役職員ではない「文科省関係者」が単独で持ち込み、その人物自身が文書の信憑性を保証したことになるわけである。
後に判明したところによれば、この文書を共有していたのは獣医学部新設に関わる当時の文科省職員10数人だった。当時この文書を共有し、その後退職し、1人の証言しかないのにNHKと朝日新聞が裏取りもせずにスクープを決断できる程、社会的地位のあった人物ーさすがにそういう人物は1人しかいまい。言うまでもなく、この後、「安倍の意向」を一貫して主張し続けることになる前文科省事務次官・前川喜平自身だ。

◆「文科省文書」はこう読むのが正しい
朝日新聞が内容をひた隠しながら「総理のご意向」を喧伝する為に利用してきた「文科省文書」が登場する。
以下、基本的には書かれた内容をほぼ事実とみなして全文を提示しながら解読する。時系列で読み解くと、朝日新聞がなぜこの文書をひた隠してきたかがよく分かるはずだ。
■獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項
○平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること。山本大臣も「きちんちやりたい」と言っている。文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている。
○国家戦略特区における獣医学部新設に係る方針については、以下2パターンが考えられる。(今週、来週での対応が必要)
・内閣府・文科省・農水省による方針を作成(例:成田市「医学部新設」)
・国家戦略特区諮問会議による方針の決定(例:「民泊」*諮問会議には厚労大臣も出席。
○今治市分科会において有識者からのヒアリングを実施することも可能。
(成田市分科会では、医師会は呼んでいないが、文科省と厚労省で選んだ有識者の意見を聴取<反対派は呼んでいない>)
○獣医学部新設を1校に限定するかは政治的判断である。

これは2016年9月26日、内閣府の藤原豊審議官から伝えられた内容のメモということだ。10日前の関係省庁ヒアリングを受けたものだとみれば違和感はあるまい。文科省が露骨にサボタージュしようとして、国家戦略特区の委員に揉まれていたのは見た通りだ。あれから10日しても動きがないので藤原豊審議官が乗り込み、あの手この手で急がせているということであろう。
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」というのは、石破4条件に「年度内に検討を開始する」とされている以上、もうこれ以上ずるずる伸ばしにするなという意味だ。文科省と農水省は既に9カ月サボタージュしてきた実績がある。強い言葉で尻を切らねば動かないに決まっている。
「文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている」というのは、農水省の需給証明に逃げるのはもう無理だ、事が前に進んだ以上、学部認可官庁である文科省自身の事案だと腹を決めろという意味である。
「獣医学部新設を1校に限定するかは政治的判断である」という文言は、日本獣医師会からの新設反対の圧力に他ならない。

2枚目は「義家副大臣レク概要」である。
○平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといあけない。
○(国家戦略特区諮問会議決定について)教育と民泊はちがう。
○農水省や厚労省は逃げているのか。
○官邸はどうなっているのか。萩生田副長官に聞いてみる。
 やれと言うならやるが、閣内不一致<麻生財務大臣反対>をどうにかしてくれないと文科省が悪者になってしまうと。
○農水副大臣にも需給はおたくの話でしょ、と話してみる。
○本件は預かる。また連絡する。

先の内閣府からの伝達を担当課から聞いた、義家副大臣の反応である。
当然、担当課は、ここまで紹介した文科省側の議論ー農水省が獣医の需要を示さない以上、文科省は認可できないーをベースに、義家副大臣にレクチャーを入れたわけだ。
ここでの義家副大臣はその文脈上に立っているものの、ごくまともな手続き論を語っている。
義家副大臣は「平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといあけない」と指示している。前川喜平は「行政が歪められた」と証言しているが、義家副大臣は行政を歪めぬよう指示をしているのである。何よりもこれは、安倍首相子飼いの副大臣である義家に「総理の意向」なるものが伝わっていなかった証拠である。
一方、義家副大臣が、民泊と教育(学部設置)を一緒にするなと、国家戦略特区の議論にケチをつけているのは、文科省の担当が、義家副大臣に対して会議内容を歪めて伝えていることを示している。既に見たように、教育を歪めて需給の話に固執したのは文科省であり、国家戦略特区ワーキンググループ委員は、逆に、文科省は教育や研究水準だけで判断する原点に返れと諭していたのだからである。
「農水省や厚労省は逃げているのか?」とは、日本獣医師会、日本医師会という強烈な圧力団体や族議員のせいで、両省がサボタージュしている現状を指す。さらに義家副大臣が「農水副大臣にも需給はおたくの話でしょ、と話してみる」と言っているのは、前川喜平以下、文科省事務方の上級官が仕事をしないから、義家副大臣が調整に動き始めるということだ。
「閣内不一致<麻生財務大臣反対>」との認識も重要である。麻生副総理が獣医学部新設反対であるのに、文科省が新設を主導しては、閣内不一致にならないかと懸念している。

次の「大臣ご指示事項」という文書も、松野大臣が、義家副大臣とほぼ同様の認識をしていたことを示している。
■大臣ご指示事項
以下2点につき、内閣府に確認してほしい。
○平成30年4月に開学するためには、平成29年3月に設置認可申請する必要があるが、大学として教員確保や設置設備等の設置認可に必要な準備が整わないのではないか。平成31年4月開学を目指した対応とすべきではないか。
○麻生副総理、森英介議員など獣医学部新設に強く反対している議員がいる中で、党の手続きをこなすためには、文科・農水・内閣府の部会の合同部会もしくはPTを設置して検討を終えた後に動くべきではないか。
*鳩山二郎氏(鳩山邦夫元総務相次男、前福岡県大川市長)、蔵内謙氏(日本獣医師会会長長男、林芳正前農水相秘書が候補者)

安倍首相と同じ派閥、清和会でごく近い松野大臣も、この段階で「総理の意向」なるものを全く聞いていない。やはり開学時期に難色を示している。事務方は、2017年1月に国家戦略特区指定を受けたこの件を9カ月間報告していなかった。松野大臣や義家副大臣から見れば、内閣府側の性急で強引な話に思われたに違いない。
また、松野大臣は政治的な懸念も示している。
福岡補選は平成28年(2016年)6月に死去した鳩山邦夫元総務相の議席を巡って争われたが、非常に面倒な構図だった。
山邦夫元総務相の息子である二郎と、日本獣医師会会長の蔵内の息子で、安倍首相とは父親の代から選挙区で因縁のある林芳正の秘書・蔵内謙が自民党公認を争っていたが、熾烈な争いの挙句、鳩山二郎が公認候補で出馬した。問題は、それぞれの後ろ盾である。二郎の選挙には菅義偉官房長官が応援に入り、蔵内には麻生副総理が入るという政権中枢の分裂選挙になってしまったのである。
先回りして言えば、当選したのは鳩山二郎だった。
つまり、麻生副総理が推した蔵内が公認漏れの上、対立候補の側に菅義偉官房長官が入り、そちらが勝ったわけで、麻生副総理は二重に面子を潰されたことになる。
それと同時期に、麻生副総理がカヤの外に置かれたまま、52年ぶりの獣医学部新設が官邸主導で決まることになれば、麻生副総理が感情的に面白かろうはずがない。
要するに文科大臣、副大臣共に、この事案の政治性に関する配慮の軸は、「総理の意向」ではなく「副総理の意向」だったのである。

そして、次の文章が来る。義家副大臣が動いた後のものだ。
■義家副大臣のご感触
○斉藤健農林水産副大臣は「そのような話は上がってきていない。確認をしておく」ということだった。
○萩生田内閣官房副長官にも話したが、あまり反応がなかった。
○大臣のご指示のとおり、(内閣府への確認を)進めてほしい。

この期に及んで農水副大臣に報告が上がっていないというのである。内閣府や首相官邸からの「圧力」と、日本獣医師会や関係議員の「圧力」のどちらが官僚に効き目があるかは直ちに想像できよう。霞が関の課長級以下の官僚にとって、所詮、総理大臣など遥か遠くの上座に鎮座する別世界の存在だ。あくまで役所内部の論理、人脈、圧力こそが強固で恐ろしいのである。
一方、報道とは異なり、萩生田副長官は、この件をよく知らなかった。松野、義家、萩生田ー安倍首相に最も近い政治家たちが誰もこの件を、この文書が書かれた時点でまるで認識していなかったのだ。「総理の意向」が聞いて呆れる。

■10/4義家副大臣レク概要
○私が萩生田副長官のところに「ちゃんと調整してくれ」と言いに行く。アポ取りして正式に行こう。シナリオを書いてくれ。
○斉藤健農林副大臣に、「農水省が需給の部分をちゃんと責任持ってくれないと困るよ」と話した際には「何も聞いていない。やばい話じゃないか」という反応だった。

確かに、国家戦略特区認定から10カ月経っても、役人が農水副大臣に報告を上げずに済ませられるほど、日本獣医師会や族議員の圧力の強い案件だとすれば、当選3回の斉藤農水副大臣にとっては処理に困る「やばい話」と思われたに違いない。
そして、その3日後には義家副大臣の依頼を受けた萩生田副長官が、説明に来た文科省担当課に対して、次のように発言したという。
■<取扱注意>10/7萩生田副長官ご発言概要
○再興戦略改定2015の要件は承知している。問題は、「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という要件について、例えば伝染病研究を構想にした場合、既存の大学が「うちの大学でもできますよ」と言われると困難になる。
○四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか。(感染症も、一義的には県や国による対応であるとの獣医師会の反論を説明。)
○平成30年4月は早い。無理だと思う。要するに、加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない。
○学校ありきでやっているという誤解を招くので、無理をしない方がいい。
○福岡6区補選選挙(10月23日)が終わってからではないか。
○文科省だけで、この案件をこなすことは難しいということはよくわかる。獣医師会や農水関係議員との関係でも、農水省などの協力が必要。
○私の方で整理しよう。

全体に穏健な助言という他はない。「再興戦略改定2015の要件は承知している」とは、石破4条件のことであり、それがクリアできる件なのかを文科省に尋ねている。文科省側は「獣医師会の反論を説明」するなど、相変わらず業界団体を代弁している。萩生田副長官が「平成30年4月は早い。無理だと思う」としているのも、文科省のレク自体が、平成30年4月開学阻止で動いていることを思わせる。獣医学部新設が既定路線となってしまった以上、開学時期を遅らせることが文科省から日本獣医師会へのせめてもの言い訳になるからであろう。

そして7枚目が「総理のご意向」の出て来る文書である。
前川喜平はこの文書を受け取ったのが平成28年10月17日だったとしている。
担当課長が藤原豊審議官から聞いた回答だとされる。
■大臣ご確認事項に対する内閣府の回答
○設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。
○規制緩和措置と大学設置審査は、独立の手続きであり、内閣府は規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査文部科学省。大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない。
○「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会にかける必要あり。
○農水省、厚労省への会議案内等は内閣府で事務的にやるが、前面に立つのは不可能。二省を土俵に上げるのは文部科学省がやるべき。副長官のところに、文部科学省、厚生労働省、農林水産省を呼んで、指示を出してもらえばよいのではないか。
○獣医は告示なので手続きは不要。党の手続きについては、文科省と党の関係なので、政調とよく相談していただきたい。以前、官邸から「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するな、と怒られた。党の議会では、内閣府は質疑対応はあり得るがメインでの対応は行わない。
○官房長官、官房長官の補佐官、古谷副長官補、和泉総理大臣補佐官等の要人には、「1、2ヶ月単位で議論せざると(原文ママ)得ない状況」と説明している。

こうして事態の推移を追いかけてみれば、藤原豊審議官の発言は至極合理的という他はない。
そもそも「総理のご意向」は伝聞であり、そうである以上、それは今治の個別案件に掛かっているはずはない。藤原豊審議官が伝聞で安倍首相が加計学園の個別案件を進めろと指示していると知っていたとすれば、安倍首相はそれをあちこちで喋っていることになるからだ。普通に読めば、「『最短距離で規制改革』そのものを前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、個別案件の話ではなく、規制改革全体を進めることが総理のご意向だと聞いている」ということになる。
むしろ重要なのは、3項目目の、『「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか』との一文だ。
単に、安倍首相の指示がなかったことを示しているからだけではない。
なぜ文科省に対して藤原豊審議官が「総理からの指示に見える」ような決定形態を助言したのか。文科省が日本獣医師会と族議員らから、規制を崩された責任を糾弾された時に、「総理からの指示」で仕方なく呑んだという話にする以外に考えられまい。
次の項も同様だ。大学の許認可を前進させられるのは文科省の仕事だが、圧力に脅える農水省と厚労省を動かすのは大変だろうから、首相側近の萩生田副長官のところでミーティングをセットすれば、彼らも圧力団体に言い訳が立つという話に違いない。
ちなみに前川喜平は、国会の証人喚問を含む様々な場所で平成30年4月開学が安倍首相の意向だったかのように発言している。だが、この文書によると藤原豊審議官は「(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない」と発言している。
・・・こうして8枚いずれの文書も、徹底的にサボタージュしてきた関係省庁を、藤原豊審議官、義家副大臣、松野大臣、萩生田副長官らがそれぞれの立場から解きほぐし、圧力団体や麻生副総理の意向に配慮しながら、行政手続きと規制突破を両立させるべく腐心している様を伝えている。
朝日新聞をはじめマスコミが「総理の意向」以外の部分を徹底的に隠したのはその為だったのだ。
朝日新聞や前川喜平の主張し続けた「安倍首相の意向」は全て、彼らが持ち出して大騒ぎした文書自体によって否定されていたのである。

◆なぜ平成30年4月開学に決まったのか
2点補っておく。
平成30年4月開学に最終的に決まったのはなぜか。これは愛媛県今治市の強い希望だった。当然ながら予算措置の関係上、開学時期が曖昧なまま、日本獣医師会の圧力で文科省に寝返られたらたまらない。尻を決めなければ予算も教員確保も設備の目途を立てられないのである。
さらに言えば、獣医が育つのには6年かかる。平成30年4月に開学しても新人の獣医が誕生するのは平成36年3月以降になる。1人前になるのは10年後だ。ここまで10年間却下され続けた挙げ句、平成30年4月に開学しても自らの県で養成した獣医師の活躍が10年後となれば、彼らが開学を急ぐのは当然だろう。
さて、もう1つは小さな茶番劇の補足である。
国会閉会の2017年6月19日夜、NHKクローズアップ現代が、文科省調査とは別の新文書が出たとして、今度は2016年10月21日付の萩生田副長官の発言概要をスクープしたのだ。NHKによる実に3度目のスクープであり、前川喜平ルートとNHKの深い関係、又、NHK上層部における反安倍派の存在を思わせる。
この文書によると、萩生田副長官が加計学園の獣医学部新設について、詳細な指示を文科官僚にしていることになる。一部抜粋する。

○総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。
○何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邉加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる

萩生田副長官はこの文書内容を全面否定し、総理からのいかなる指示も受けたことはなく、官房副長官として気づきの点をコメントすることはあっても、自分から具体的な指示や調整を行った事はないと回答している。

「なお、今回の件では、心当たりのない内容が、私の発言・指示として文書・メールに記載されていることについて、非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じています」
萩生田副長官の否定を持ち出すまでもなく、極めて馬鹿げた文書という他はない。
ここまでの経緯で明らかにした通り、文科省は挙証責任を果たせなかった以上、行政案件として前に進める責務が既に発生している。義家副大臣が調整に入り、それを受け、藤原豊審議官と課長レベルで事はむ前に進み始めているのである。
ここで唯一、政治案件として配慮すべきは麻生太郎副総理である。従って、萩生田副長官が麻生太郎副総理との間の調整に、この時期動いていたというならば話は分かる。
が、麻生太郎副総理と関係もなく、文科省の担当課の尻を叩く為に、なぜ、官房副長官が、わざわざ総理大臣の名前まで持ち出して、あくせく汗をかかねばならないのだろうか。NHKNのスクープとしては責任問題の発生するほど拙劣な偽文書と言えよう。
NHK、朝日新聞のスクープを受けて、2017年5月17日の午後、民進党は慌ただしく衆議院議員会館で「加計学園疑惑調査チーム」を立ち上げてヒアリングを開いた。
朝日新聞の1面スクープの午後であればマスコミの注目度は急上昇する。民進党幹部が並ぶ正面背後には「加計学園疑惑調査チーム」と書かれた横断幕が掲げられ、カメラに収まるようにしてある。いきなり呼びつけられた文科省や内閣府の官僚たちは、内部文書の真偽も、経緯の詳細も答えようがない。彼らが答えられない姿がテレビに晒され、朝日新聞は得意げに書く。
「文科省幹部は『記憶にございません』と答弁」
国会でもこの日から文科省文書に関する質疑が始まった。
民進党の玉木雄一郎が、朝日新聞がスクープした文書群Bを早速入手し、衆議院の文科委員会で質問に立ったのである。
夜の各局ニュースが、前夜のNHK、朝日新聞朝刊の1面スクープ、民進党が「疑惑調査チーム」を立ち上げ、国会でも質問した4重の「信用」に依存し、大々的に報じたのは言うまでもない。
報道時間は以下の通りだ。
・NHK「ニュースウオッチ9」約7分半
・日本テレビ「NEWS ZERO」約4分半
・TBS「NEWS23」約8分半
・テレビ朝日「報道ステーション」約14分半
・フジテレビ「ユアタイム」約1分半
テレビ朝日を筆頭に、TBS、NHKの報道時間が際立っている。本来なら出所不明で、まずは信憑性から吟味に入るべき文書が、こうしてたった1日で、確かに存在する「疑惑」になってしまったのだ。
さらに驚くべきことがある。
実は、朝日新聞は、加計学園問題を2017年3月14日の第1報からこの日まで2カ月もの間、わずか10点にも満たぬ記事でしか報じていない。
ところが、国会では、3月3日の参院予算委員会での民進党舟山康江の質疑に始まり、5月15日まで、加計学園に関する質問は実に56回もあったのである。
朝日新聞はそれらの質疑を黙殺し続けていたのだ。
理由は2つ考えられる。安倍叩きとしては森友スキャンダルを賞味期限が切れるギリギリまで使いたかったというのが1点であろう。
第2に、加計学園問題の方が、森友学園に比べ不透明性が乏しい。安倍晋三と加計孝太郎が友人という以外に何も問題を作り出せない。森友の時のような劇場化も難しそうだ。決定打やシナリオを模索し続けていたに違いない。
そこに決定打はネギを背負ってやってきた。前文科事務次官という大物だ。
だが、前川喜平がこの文科省文書を手元に持っていたのは偶然だろうか。
国家公務員法は、公務員に対して、現役のみならず退職後も、職務中知り得た情報の守秘を定めている。前川が情報の流出者だと明確になれば、彼自身が違法行為を問われる可能性がある。
いや、そんな事以前の問題もある。文科省職員らの証言によれば前川は机回りを整理しない人で、デスクには書類が山積みになっていたという。そんな人物が、よりによって加計学園の経緯メモだけを退職時に持ち出したとは考えにくい。
以下は、私の推理である。
加計問題をスキャンダル化できる特ダネを探していた朝日新聞、NHK幹部らは3月以来、密議を繰り返してきた。その中で、文科事務次官を天下り斡旋で事実上更迭された直後だった前川喜平との接触が始まる。
業界内部で根強い噂となっているのは前川とNHKの社会部出身の幹部職員との長年にわたる親密な関係である。前川は安保法制反対デモに出るなど政治的には反安倍だった上、天下り斡旋の責任を政権から問われて辞任に追い込まれた遺恨がある。NHK社会部は放送業界で最も過激な労組として知られる日本放送労働組合の思想的・人的流れを今なお強く残している。NHK社会部の過激分子とNHK上層部に食い込んだ社会部左派幹部との線上に前川が浮かび上がる一方で、朝日新聞社会部とNHK社会部も広範に人脈を共有しているであろう。
そうした中、加計問題をどう安倍叩きに使うのかの材料探しが、前川に対して依頼され、前川が子飼いの部下に情報を探させた。数日ないし1〜2カ月かけた証拠探しによって前川の手元に文書が確保される。その段階でNHK、朝日新聞ともに、現役の社会部に取材に行かせたー。
もしこれがNHKと朝日新聞それぞれの現場記者から上に上がった情報だったなら、スクープの判断を両社の上層部が同時にできたとは思えない。逆に、上層部からの使嗾があった上で現場が前川に取材しているのであれば、スクープの判断が同時に可能になるだろう。
こうして朝日新聞・NHKが文書を間髪入れずにスクープし、民進党は疑惑調査チームを急遽朝日報道と同日に設定することで、ワイドショーと夜のテレビが大々的に報じる流れを準備し、かつNHKは文書Aをスクープ、朝日新聞は文書群Bをスクープして情報源が違うと言い訳ができるアリバイを作った挙げ句、事に臨んだ。
以上、現時点では取材拒否が多く、明らかにならない推定を多く含むことはお断りしておく。が、当たらずと言えども遠からずではないか。要するに、加計スキャンダルは朝日新聞とNHKとの幹部職員が絡む組織的な情報操作である可能性が高いということだ。
安倍政権に与えた打撃の深刻さと、安倍の関与がゼロで、関係する行政や民間の諸氏の不正が全く存在しなかった事を考えれば、これは、日本のトップメディアが情報を使って政治破壊活動を実践した”戦後最大級のスキャンダル”というべきではなかろうか。

◆全ては朝日新聞の隠蔽に始まった
森友問題から加計問題に賭場を乗り換え、朝日新聞の安倍叩き第2幕は開幕した。
実際、記事の質量で見ると、森友問題が如何に偽装された問題に過ぎなかったかは明白である。森友報道初出の2017年2月9日から、文科省文書スクープが1面トップを飾る5月17日までの98日間の間、森友関連記事数は223本だったのに対し、翌日5月18日からの同じ98日間の8月23日までの森友関連報道は、森友と加計を並べて扱った社説などを含めても、50件に激減し、しかも扱いはごく地味なものばかりになっている。
疑惑が真に実在するものだったなら、このような不自然な記事件数の激減は生じまい。
実際この日からシャワーのように続く加計問題記事も、中身は空疎そのものだ。しかも、朝日新聞の報道内容には当初から重大な隠蔽がある。
スクープ記事本文を詳しく解析してみよう。
5月17日のスクープには同紙が入手した一連の文書の内容が次のように紹介されている。
<朝日新聞が入手した一連の文書には、「10/4」といった具体的な日付や、文科省や首相官邸の幹部の実名、「加計学園」という具体名が記されたものもある。加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9〜10月に文科省が作ったことを認めた。また、文書の内容は同省の一部の幹部らで共有されているという>
これは文書が、具体的であること、又、幹部で共有されていたと同紙が伝聞したこと、要するに信憑性のある文書だということの説明である。
では朝日新聞は、文書の中身をどう紹介しているか。
<「平成30年(2018年)4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と記載。そのうえで「これは官邸の最高レベルが言っていること」と書かれている>
一方、文科省側については、朝日新聞は次のように紹介する。
<松野博一文科相が「大学として教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わないのではないか。平成31年(2019年)4月開学を目指した対応とすべきえはないか」とし、18年の開学は難しいとする考えを示したことが記載されている。
一方、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という題名の文書には、「(愛媛県)今治市の特区指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況である。これは総理のご意向だと聞いている」と記されている>
つまり、文科大臣は難色を示しているが、内閣府側が「官邸の最高レベル」「総理のご意向」などの文言を使って強引に事を推し進めているという構図である。
とりわけ朝日新聞が、「総理のご意向」との文言を大見出しにし、リードを「安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人『加計学園』」と書き出しているのは、今後の朝日新聞の報道方針ーというより闘争方針と言うべきだろうーを象徴する。この後、朝日新聞の報道は、毎回必ず、「安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人『加計学園』」という文言と、「『総理の意向』『官邸の最高レベルが言っている』などと書かれた文書」という枕詞付きで、記事が書かれ続けるのである。森友学園の時には、安倍首相の関与が初めからあり得ないと分かっていながら、朝日新聞はスキャンダルを仕掛けた。
しかし、大阪の地元役所の裁量には問題があった。財務省が藪蛇を怖れて答弁を手控えたことが、事件を長引かせる理由となった。籠池夫妻のキャラクター、昭恵夫人バッシングという、仕掛けた側も予想外の材料が次々に飛び出して事を大きく見せていった。ついには籠池の数々の詐欺と破綻が来る。安倍スキャンダルは嘘だったが、森友=大阪役場スキャンダルは実在したのであった。
ところが、加計学園問題は更に酷い。全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報である。偶然の波乱含みだった森友の場合と違い、今回は朝日新聞が明確に司令塔の役割を演じ、全てを手の内に入れながら、確信をもって誤報、虚報の山を築き続けていく。
何よりも驚くべきは、前川喜平たった1人の証言で2カ月半、加計問題を炎上させ続けたことだ。
森友騒動の時には、当事者は地方局や大阪府の役人で、財務省もこれを庇い、真相を明らかにし難い面があった。だが、加計は違う。国家戦略特区で認可した八田達夫、原英史ら専門委員にせよ、獣医学部招致の起案者である前愛媛県知事加戸守行にせよ、文科省側で調整しを主導した副大臣の義家弘介や責任大臣である松野博一にせよ、官邸から圧力をかけたと報道された官房副長官萩生田光一にせよ、取材を全く拒んでいない。
さらには、この問題で加計学園の認可に強力に反対してきた日本獣医師会やその背後にいる大物議員たちー石破茂、麻生太郎らーの存在をきちんと報道しなければ、本当の構図はまるで見えてこない。
ところが、朝日新聞とそれに追随するマスコミは、大騒ぎを演じた2カ月半、これらの当事者に殆ど取材せず、報道もしていない。
前川喜平1人の証言だけで加計問題を報じ続けた。
虚報とすら言えない。
他の当事者全部を隠して前川喜平というー当事者能力ゼロだった人物ー1人の、貧弱な証言だけで事件を構成しても、全く事実は浮かび上がってこないからだ。
加計問題は比喩的な意味ではなく実際に朝日新聞演出、前川喜平独演による創作劇だったのである。
が、話を急ぐまい。

◆仕掛け、次々と炸裂
朝日新聞が入手した文書と同じ文書群Bを手に、スクープ当日の2017年5月17日衆院文科委員会で初回質問に立ったのは、民進党の玉木雄一郎だ。同17日の朝日新聞夕刊は、玉木と文科大臣松野博一の問答を次のように報じている。
<民進党の玉木雄一郎氏は(略)「強い総理の意向を受けて、多少無理があってもやらなければならない。仕方なしに物事を進めたという思いが大臣自身になかったか」とただした。(略)松野博一文科相は(略)「設置認可をしっかり審議するというのが私も文科省も一貫した姿勢だ」と答弁>
松野文科相が「総理の強い意向」など全く知らず、気にもしていないことは、実は玉木が入手していた文科省文書にはっきり書かれているのである。
玉木はそれを隠して、以上のような「科白」を国会で語る。そして、朝日新聞も、文書内容を隠して、こうした科白部分だけを切り取って報じる。
一方、翌5月18日の「時時刻刻」で、朝日新聞は「獣医学部の新設は、獣医師の増え過ぎを抑えるという理由で、長年、文科省が認めてこなかった」と、獣医師の需要について一言で片付けている。この後、6月8日まで、朝日新聞には、獣医師の需要や現状について、1本の概観記事も取材記事もない。
異常な事だ。
加計学園の案件は、獣医学部新設問題である。獣医学部を巡る状況を説明する記事が1本もなければ、話の土台が購読者に全く伝わらないはずではないか。
朝日新聞はこの記事で「長年、文科省が認めてこなかった」と簡単に片付けているが、長年とは実は52年なのである。時代の流れで自然にその業態が廃れて、新規参入者が消えてしまうというのなら分かる。だが、省庁が特定の業種について52年間も新規参入を禁じてきたというのは、それ自体おかしくはないだろうか。
ところが、朝日新聞はその問題に全く立ち入らない。なぜなら、ここで獣医学部規制を巡る長年の歪みを報じてしまっては、「総理の意向」が吹き飛んでしまうからだ。
安倍首相に打撃を与えるためなら、文科行政の多年の歪みも獣医師業界の実態も、朝日新聞にとってはどうでもよかったということになる。
さらにこの「時時刻刻」では同時期に獣医学部の申請をしていた京都産業大学の件も書かれている。
<京都府と京都産業大(京都市)も関西圏特区で獣医学部をつくることを提案していたが、この日の諮問会議で、獣医学部の「空白地域」に限って新設を認めるという方針が示されたため、京産大は断念した。このとき、加計学園が選ばれるレールが敷かれた>
平成28年(2016年)11月9日の国家戦略特区諮問会議が獣医学部新設を巡る方針を出した。その中に「広域的に」に獣医学部が「空白」な地域に限って新設を認めるとの文言が入った。この文言のために、すぐ近くに大阪府立大学獣医学部がある京産大は、新規参入を断念せざるを得なくなり、加計学園が選ばれることになったと記事は言う。
要するに、「総理の意向」で、他の新規参入者を締め出す文言を加えて、加計学園に認可を与える流れを作ったというのが朝日新聞が誘導したい筋書きである。
これは、この後マスコミを乱舞する「はじめに加計ありき」なるキャッチフレーズのきっかけとなる記事だった。
まず断っておかねばならない。広範な誤解があるが、この事案では加計学園のみが特区指定を受けたのではない。国家戦略特区は、地方自治体の広域的・総合的な地域課発提案に対して指定されるもので、今回の特区指定は、広島県と愛媛県今治市の共同提案に対して認可されたものである。この共同提案によって14事業が既に推進されている。加計学園はそれらの1つに過ぎない。加計学園のみに焦点を当てた議論がそもそも全くおかしいのである。
また、特区の特長として、最初の認定者が軌道に乗れば、第2、第3へと拡大してゆくのが原則である。加計学園はすでに10年間に様々な形で15回も獣医学部の申請を行い、全て却下されてきた。
それらを踏まえれば、もし誰かが加計学園の参入を狙って条件を操作するなら、複数の特区提案に獣医学部が入っていても、同時に認可が通るよう参入基準緩め、落選の確率を下げようとするのが普通だろう。それが難しければ、来年度以降、獣医学部が第2、第3番目の認可へと確実に道が開けるような覚書を付して、将来の参入幅を事前に確保しておこうとするに違いない。なぜ、加計学園の認可を進めたい人間が、参入幅を狭くする文言を付け加えようなどとするだろう。理屈が全く逆なのである。
実際には、参入枠を1校に絞ろうとして強く圧力を掛け続けたのは、安倍首相でも官邸でもなく、日本獣医師会だった。日本獣医師会会長の蔵内勇夫自身が会報誌でその事を明言しているのである。だが、その事実は一切報じられなかった。「広域的」を付言することで安倍首相が「初めに加計ありき」を図ったとのデマが数カ月にわたり定着することになったのである。

◆政府の後手にーほくそ笑む朝日新聞
ところが、こうしてNHKと朝日新聞が満を持して仕込んだ安倍叩きの切り札に、当初、政府は全く反応しようとしない。
官房長官の菅義偉は、朝日新聞のスクープが出た2017年5月17日の記者会見で「全く、怪文書みたいな文章じゃないでしょうか。出所も明確になっていない」と「怪文書」扱いにした。
朝日新聞上層部は内心、狂喜したに違いない。すぐ後に、前川喜平という証人を出すつもりだった朝日新聞としては、菅官房長官が否定を強く打ち出すほどに、後から菅官房長官の信用が失墜することになるからである。「怪文書」とまで言い切ってくれれば、前川喜平登場の効果は絶大になる上、盤石を誇っていた菅官房長官の危機管理能力への安倍首相や政権周囲の信頼が揺らぐ。政権内部の信頼感情を分断する効果も狙えるわけだ。
だが、実際には菅官房長官の感覚そのものは正しかったのだ。
誰が書いたか、何に使ったか、内容への責任は誰が担保するかが1つもはっきりしない文書が外に流出する。内容の真偽以前にそれだけで怪文書と言うべきだろう。
さらに、誰が書いたか分からないメモ書きに「総理の意向」と書かれていたら、書かれた総理の側に説明責任が生じたり総理の側のスキャンダルになるなどということを1度通用させれば、行政も政治もーいや、どんな組織だろうと組織そのものが崩壊するだろう。言うまでもなく、内輪の駆け引きや辛辣なコメント、部外秘、また同じ組織内でも他部署に秘しておくべきメモはどんな組織にもある。家族の間でも見せれば長年の信頼が崩壊するようなメモ書きはいくらでもあり得よう。1度こんな文書に権威を認めてしまえば、今後、どんな役人テロ、クーデターも可能になる。
だが、菅官房長官を含め、政権中枢の判断は、森友騒動の後だったことを考えると、甘かった。筋論が筋論として通用しない3カ月を経た後だったのである。しかも、この文書は、2017年5月17日朝日新聞が1面トップに出し、前夜にNHKが同じ情報を報じている。民進党も同時にチームを立ち上げた。組織ぐるみでの情報の裏付けがあったと見なして、即座に最大限の対処に入るべきだった。
まして文書群Bの内容を把握すれば、何らの違法性や不当な政権の介入が書かれているわけではないことはすぐに分かったはずだ。
むしろ出所不明の文書をNHKが初報した点を重視し、政府側が強い意志で調査を指示すべきだった。国家公務員が内部情報を告発した際、「公益通報者」として保護されるのは、違法行為の告発に限られる。今回のように違法行為を全く含まない文科省内部メモがよりによってNHKに流出したとなれば、これは報道の自由の範疇を超える。そのけじめを断乎最初に政権が主導すべきだった。
ところが、文書の性格を明確に位置付けることもないまま、政府は型通りの文書調査を行う。個人のパソコンは確認しなかった。違法性がないのに、内部文書を個人レベルまで精査するのは、人権問題だからである。ところが、これが情報隠蔽のように攻撃された。
個人情報の精査は拒むというのなら、政府は人権問題を強く打ち出すべきだった。
人権問題と内容に違法性がない事を盾に個人情報の調査は拒みつつ、文書内容については「怪文書だから関知しない」という建前論に逃げずに、先手で政府見解を出すー初動はそうあるべきではなかったか。
安倍政権は稀に見る国家危機管理能力の高い政権だが、自己を守る能力に大きな欠落があったと言わざるを得ない。
後智慧で言っているのではない。朝日新聞が主導しての一連の森友・加計報道は、事ここに至り、どう見ても情報戦であって、通常の意味での報道ではない。もし現政権が多大な国民益をもたらす力量ある政権であるならば、情報戦に対して十分に自己防御できる態勢を作り直せなねばならない。政権自体を守る事も、国民の負託に対する責務だからである。
いずれにせよ、こうした政府の”気のない対応”の中、前文科次官による証言という爆弾が炸裂することになる。

◆前川喜平登場
2017年5月25日、朝日新聞は、前川喜平前文科次官の単独インタビューを1面に掲げた。証言を1面と社会面で、それ以外の記事も含めれば、この日、朝日新聞は、加計問題実に8件の記事を掲載している。
前川によれば、取材申し出はNHKと朝日新聞からだったが、NHKは報道しなかったと後で怒ってみせている。が、これはNHK内部の力学を頭に置いた政治的発言のように思われなくもない。
前川喜平はNHK社会部出身の幹部と旧知の仲とされている。
2017年1月25日に籾井勝人前会長から上田良一会長体制に交代して以後、NHKの報道は社会部極左の主導力が目に見えて増し、放送法遵守を組織是とするNHKとして異例の事態が発生している。前会長の籾井は発言が軽く、メディアでも散々叩かれたが、放送の中立性を守る重しにはなっていた。現会長の上田は、穏便な実務派であるが、報道内容については、タガが外れたように野放し状態だ。
実は、NHKの5月16日夜11時のスクープにしても奇妙な点がある。
『週刊ポスト』が、次のように報じているが、事実の裏が取れないのである。
<報道機関として先にスクープを打つのは名誉なことですが、1発目が黒塗り報道だったため、まるで我々が後追いしたような形になったのは非常に不本意です。これらはすべて『小池さん』の指示だったと言われています」
「小池さん」とは、2017年4月の人事異動で報道局長になった小池英夫氏のことである。NHK政治部で長く自民党を担当し、政治部長も務めたことから、現政権とのパイプも太い。NHK報道局記者の話。
16日の放送直前、小池さんが”こんなものは怪文書と同じだ”と言い、問題の部分を黒塗りにして放送するよう指示したそうです。文書を入手した社会部の記者の中には爆弾スクープを”不発弾”にされたと不満を漏らす者も少なくなかった。(『週刊ポスト』2017年6月23日号)>
むろん、この文書は既に書いたように普通に見せられれば「怪文書」であって、常識ある報道局長なら裏を取らずに報道することを許すはずはないだろう。ところが、その時間、小池は既に退社していて局内にいなかったとの情報がある。それどころか社会部長さえこの報道を知らなかったともいう。すると話は逆になる。報道局長や社会部長に見せれば裏を取れと言われるから、7時や9時のニュースでスクープにせず、わざとノーチェックになる深夜帯に、極力さりげなく放送した。
NHKの社会部にしてみれば、朝日新聞と共同で前川喜平のネタを追いかけてきたのにスクープを逃すのは惜しい。そこで形だけでも先陣を切るため手管を弄したーそうも推察されないだろうか。だがこうした掟破りのスクープがNHK内で許されるとしたら、報道局長、社会部長以上の「意向」か「圧力」が現在のNHK内にあり、前川喜平とのつながりもより根深いものだという可能性が出てくる。
いずれにせよ、前川喜平のインタビューは、朝日新聞の単独公表となった。
見出しは1面に「前文科次官『文書示された』」と大きく躍る。
菅義偉官房長官が「怪文書」と切り捨て、文科省調査で存在しなかったとされた文書を、前文科次官が「文書はあった」と証言したのである。効果的な政府攻撃となった。
見出しはさらに「獣医学部の新設計画『行政がゆがめられた』」と続いている。
つまり、「総理の意向」により「行政がゆがめられた」という構図である。それを文科省元トップが証言した事は重い。
<前川氏はこの文書について「獣医学部の新設について、自分が昨年秋に、担当の専門教育課から説明を受けた際、示された」と証言した。同氏によると、昨年9月9日〜10月31日に計6回、専門教育課の課長や課長補佐らと事務次官室で獣医学部の新設について打ち合わせをした。(同日付朝日新聞記事より)>
前川喜平は、菅義偉官房長官が「怪文書」とし、文科省が調査で文書はなかったと結論したことに対して「あるものが、ないことにされてはならないと思った」と、証言に立った理由を説明している。
そしてこう語る。
<文科省がそれらの言葉を持ち出され、圧力を感じなかったといえば、うそになる。「総理のご意向」「最高レベル」という言葉は誰だって気にする。私だって気にしますよ。ただ、あくまでも内閣府の審議官が語ったという言葉なので、真実はわからない>
だが、これはおかしい。
「総理の意向」の発言をしたとされるのは藤原豊審議官である。熱意は人一倍強いかわり、強引な手法への批判も聞こえる。だが、藤原豊審議官は、内閣府の経済産業省大臣官房付審議官だ。霞が関の序列の中でも、「審議官」という肩書はややこしく、様々な立場の審議官が存在する。例えば、単純に内閣府審議官といえば、次官に次ぐ内閣府ナンバー2になる。だが、藤原豊審議官は経済産業省大臣官房付審議官、その序列は局長と課長の間であり、カウンターは文科省担当課長だった。藤原豊審議官が折衝した文科省の担当課長と前川喜平事務次官の間には、担当課長→官房3課長→次長→部長→官房長、局長→審議官→次官という極端な地位の隔たりがある。霞が関という序列社会において前川喜平はそれほど「偉い人」なのだ。
逆に言えば、課長とカウンターの藤原豊審議官が総理と用談できるはずもない。そうした藤原豊審議官が「総理の意向」を持ち出しても実際には安倍首相の具体的な意向と関係ないことなど霞が関の常識だ。前川喜平が藤原豊審議官の言う「総理の意向」を気にする筈は元々なかったのである。
逆に、安倍首相の側にしてみれば、もし何らかの強い意向があれば政治家ルートを使えばいいだけの話である。松野文科大臣は安倍首相と同じ派閥清和会の身内だし、副大臣の義家弘介は子飼いなのである。
ところが、そうした事情に口を閉ざし、前川喜平は、このインタビューで、逆に尤もらしくこんな「反省」をしてみせるのだ。
<本当は、私自身が内閣府に対して「こんなことは認められない」と強く主張して筋を通すべきだった。反省している>
今さら反省する必要などない。なぜならば、文科省文書では、松野大臣も義家副大臣も、「強く主張して筋を通す」のが当然と考えており、義家副大臣が内閣府、農水省と「筋を通して」折衝している様がはっきり描かれているからだ。前川喜平に「反省」が必要だったとすれば、大臣と副大臣を働かしておいて、自分は何も仕事をしていなかったことであろう。
何よりやりきれないのは、この反省が、実は「総理の意向」に抵抗するのは不可能だったと強く暗示するための、反省を装った安倍攻撃だという点だ。やり口が汚い。
そして、その先で「行政が歪められた」と証言するのである。
<獣医学部の新設を認めるのは文科省だ(が、獣医師の需給見通しを示す)農水省や(公衆衛生を担当する)厚生労働省が、獣医師が足りていないというデータや、生命科学など新しい分野で必要なニーズなどを示さない中では、本来は踏み切れない。踏むべきステップを踏まずに飛び越えろと言われたように感じ、筋を通そうにも通せなかった。行政が歪められた>
農水省や厚労省から獣医師数が不足している根拠が示されなければ、文科省としては獣医学部新設に踏み切れないと前川喜平は言う。これは確かに文科省の公式の立場である。だが、その規制が52年続いている。ここにはどれほどの歪みがあり、規制絶対維持派と規制打破派のどんな戦いがあったか。
いずれにせよ、前川喜平の「行政が歪められた」という一言が、この後、マスコミを埋め尽くすことになったのは言うまでもない。

●前川前次官がまた不可解発言
2017年6月30日 
前川喜平・前文科事務次官が2017年6月23日に日本記者クラブで記者会見を行った。その際、2015年6月の閣議決定における、いわゆる「石破4条件」について、相変わらず「文部科学省に挙証責任はない」と言っている。これは重大な不可解発言だ。
国家戦略特区に関しては、その諸手続きを法律・閣議決定で定めている。中でも「国家戦略特別区域基本方針」はその名の通り特区に関する基本であり、これは2014年2月に閣議決定されている。
その23ページでは「規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には、当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする」と書かれている。
つまり、国家戦略特区に関しては、文科省側に合理的に規制緩和できない根拠を示す必要があり、できなければ新規参入を認める、ということだ。
文科省は機会があったにもかかわらず、これを実行していない。悪いのは文科省だ。前川氏が辞めてから文句を言うのは卑怯だ。
これは許認可をもつ規制官庁なら当然であるので、わざわざ書く必要もないことだと思っているが、国家戦略特区に関わる省庁には、文科省のような「非常識官庁」もあるために、念のために書いたのだろう。

●国家戦略特別区域基本方針
平成26 年2月25 日閣議決定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai4/sankou_kihon.pdf
23ページでは「規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には、当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする」と書かれている。

●平成15年文部科学省告示第53号(専門職大学院に関し必要な事項について定める件)
2003年5月1日
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houka/03050102.htm

◆前川喜平という男
霞が関では省庁の権限と、その官庁に直結する業界の既得権益の結びつきはどこも非常に強い。それは必ずしも否定すべきことではない。省益の総体が国益だという一面は当然あるからだ。が、省益が国益を損なう場合もある。例えば、縦割り行政の弊害であり、業界権益との癒着=天下りの横行であり、正当な新規参入を阻む岩盤規制であり、事なかれ主義と面従腹背という道徳的な腐敗などが、それである。
前川喜平を、朝日新聞らによる安倍潰しの駒という観点ではなく、官僚トップとして、今回の加計問題の中に改めて置いてみると、好ましくない意味での典型的な省益派の役人だと言える。
何よりも前川喜平は、平成28年(2016年)秋に発覚した文科省内の組織的天下りの主犯格であった。第2に、前川喜平は加計問題で、安倍政権による岩盤規制突破をご破算にしようとする旧来の省益の立場に立っていた。第3に、次官時代の仕事ぶりは、縦割り行政の中に潜り込んで事なかれ主義を決め込み、自ら面従腹背を座右の銘とさえ公言している。さらに付け加えれば、東京大学=霞が関の戦後体制に根を下ろしてきた左派官僚の1人でもある。
まず前川喜平は、そもそもなぜこんなマスコミの手先のような形で、安倍政権の告発者になったのか。
必ずしも易しくはない問いである。
前川喜平は天下り斡旋の利で中途退職させられたのに菅義偉官房長官ー杉田官房副長官の恩情で、退職金推定5000万円余で最近文科省を辞めたばかりだ。実家は世界3大冷蔵庫メーカーとされる前川製作所であり、前川喜平の妹は元外相中曽根弘文の妻、つまり中曽根康弘と極めて近い姻戚関係にある。そんな人物が、怪文書を用いた政権批判のお先棒を担ぐ動機は、普通考えれば見当たらない。
幾つかの動機が複合していると思われる。
第1には、天下り斡旋で自分を事実上免職にした安倍政権への強い怨恨である。
第2には、安倍首相の官邸主導の規制打破に対する、省益派官僚としての復讐である。
第3には、安倍首相へのイデオロギー的な反発である。前川喜平は、最近の講演で、審議官時代に、安保法制反対デモに参加していたことを自ら語っている。前川喜平は「あのー、ここだけ。内緒の話ですけど。2年前の9月18日、国会前にいたんです」と切り出し、「集団的自衛権を認めるという解釈は成り立たない。立憲主義に反する」と主張した。一方、「これ、バレてたら事務次官になってなかったんです。おそらく」とも述べ、場内に笑いを呼んだ(講演会「前川さん 大いに語る」(平成29年8月2日)。
また、8月14日の東京新聞のインタビューでは「高校無償化はいい加減だったと思うし、朝鮮学校を入れるということに光を見ていた」と答えている。北朝鮮が日本への核ミサイル攻撃を公言し、日本周辺にミサイルを撃ち込み続けている最中の発言である。
第4には、前川喜平は参考人として立った途端、出会い系バー通いが指摘されたが、この件について、より深い情報を握っている筋から恫喝されている可能性も否定できない。
前川喜平が証言者として登場した当初、事情を知る関係者の多くが真っ先に感じたのは、安倍政権への怨恨だったという。
前川喜平は正規に文科次官を勤めあげて退任したのではない。任期を待たずに辞任に追い込まれた。天下り斡旋という国家公務員法違反の事案に、彼自身が主犯格の1人として関係していたことが露見したからだ。
前川喜平自身は『文藝春秋』平成29年7月号の手記「わが告発は役人の矜持だ」で次のように辞任の経緯を述べている。
<年明けの今年1月5日に松野大臣に引責辞任を申し出たところ、「次官が辞めることはないじゃないか」と1度は慰留されましたが、決心は変わりませんでした。「そういうわけにはいきません、官邸にも報告に行ってまいります」と申し上げて、杉田副長官に辞任の意を報告し、「それは役人の美学だよな、こういう時に腹を切るのが次官ってもんだ」と即ご了承いあただきました>
前川喜平はこの経緯説明を参考人招致でも繰り返した。
が、まず第1に、前川喜平は1月5日に松野文科大臣に辞任を申し出ようがなかった。松野大臣はその日、公用で京都にいたからだ。
第2に、この証言は同じ国会答弁に立った菅義偉官房長官の証言と真っ向から対立する。
菅義偉官房長官は杉田副長官から前川喜平に説明を求めた際、前川喜平は自らの進退を示さなかった。逆に、平成29年年明けになると、役所の慣例に従って、文科省事務方から3月の定年退職を6月国会会期末まで延期する打診が杉田副長官にあった。杉田副長官は、前川喜平は今回の責任を取って辞めるべきであるし、定年延長は難しいと回答した。その後、前川喜平から、せめて定年期限の3月まで次官を続けたいと話があったが、杉田副長官は無理だろうと答え、菅義偉官房長官にその都度報告があったというのである。
前川喜平の証言は、これ以外でも、他の関係者と真っ向から対立する例が目に付く。しかし、この場合は、杉田副長官がその都度菅義偉官房長官に報告している。杉田副長官が嘘の報告を菅義偉官房長官にあげる意味がない。菅義偉官房長官と杉田副長官が申し合わせて嘘をついているのでなければ、2対1の証言ということになる。そもそも、現職の官房長官が副長官と図って、一事務次官の進退などという些細な事案で虚偽の証言をするだろうか。
むろん、言い分が真っ向から対立している以上、厳密に公平な立場に立てば真相は分からないという外はない。が、推測はつく。
この頃、文科省の天下り問題はかなりのスキャンダルになっており、当事者の前川喜平を次官から降ろさねば、国会での責任追及は免れ難い状況だった。国会閉会は1月20日だ。政権側が前川喜平の罷免を急いだのは間違いない。
一方、前川喜平にしてみれば、文科省の内部調査はまだ終わっておらず、報告書は3月まで出ない。報告書が出なければ処分も決まらないはずだという言い分があったろう。
1月中旬に辞職に追い込まれるか、3月の定年まで勤め上げられるかーこれは高級官僚にとっては、天下りシステムの上で、看過できない差異である。「訳あり」の中途退官はキャリアの汚点であり、再就職までの年限や再就職先に狂いが出てしまうからだ。
しかも前川喜平には先輩たちからの天下り構造を引き継いでいるに過ぎないとの意識もあったろう。彼が斡旋した先輩らは大学の学長などに納まり、皆老後の名声を満喫しているのである。ところが、その斡旋に汗をかいた彼だけが蜥蜴の尻尾の側に追い込まれる。前川製作所、和敬塾創始家、中曽根との姻戚、文科省きってのエリート・・・。のんびりした外貌に反して自尊心の塊だとも言われる前川喜平にとって、この蜥蜴の尻尾扱いは耐え難い屈辱だったに違いない。
ところで、前川喜平は先に引用した手記で、天下り事件が発覚し、部下から報告を受けた時のことを次のように述べている。
<私は、すぐにすべてを正直に説明しなければならない、と言いました。事態が気づかず、監督が行き届いていなかった点も含めて、私には大いに責任があります>
しかし、平成29年3月30日、文科省内の調査班が発表した「文部科学省における再就職等問題に係る調査報告(最終まとめhttp://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/19/1382987_04.pdf)を見れば、前川喜平は監督責任を問われているのではない。
彼自身が、国家公務員法に違反する再就職斡旋の窓口だったのである。
私が卒読した限り、前川喜平が関与していた事案は、同報告中、事案6、事案17、事案27、事案29、事案30の合計5事案である。
「再就職斡旋の構造的解明」という記述によれば、
<・W(6)で認定されたとおり、嶋貫(和男)氏の再就職あっせんが継続できるよう、前川喜平官房長、伯井美徳人事課長は、それぞれ自ら有限会社国大協サービスへの要請を行う等の調整に動いていた>
<・V(30)、参考資料7(27)で認定されたとおり、前川文部科学審議官は、職員OBに退任の意向確認を行ったり、現職職員に再就職先の提示を行ったりする等、自らが再就職あっせんに関与していた>
前川喜平自ら「調整に動き」「自らが再就職あっせんに関与していた」と明記されているではないか。
しかも、このうち事案6は、前川喜平が、違法斡旋の中心人物である嶋貫をが国大協サービスに受け入れるよう打診している。
この件について報告書は、「前川官房長は覚えはないと発言している」が、諸々の経緯を勘案すると、「前川官房長は,単に再就職あっせんを行うことを求めただけでなく,嶋貫氏の受入れも求めたと認めるのが自然である」と前川氏の証言を「嘘」とみなし、「法第106条の2第1項に規定する『地位に就かせることを目的として』『役職員であつた者を…地位に就かせることを要求し,若しくは依頼』したものと考えられる」と、違法認定をしている(33頁)。
「すべてを正直に説明しなければいけない」が聞いて呆れる。斡旋の中心人物その人の斡旋をも前川喜平が運動していたのである。他に、慶應義塾大学や中京大学などへの斡旋にも前川喜平は直接関与している。前川喜平自身が、文科省内での構造的な動きの中心人物だったことは疑いようもあるまい。

◆出会い系バー通いという「闇」
さらに驚くべきは、前川喜平が記者会見で、文科省幹部時代、出会い系バーに通っていたことを指摘され、それを認めたことである。
前川喜平が通っていたとされる出会い系バーは新宿歌舞伎町にある「恋活BARラブオンザビーチ」という店だ。前川喜平は、文部科学審議官だった平成27年頃から、次官時代の平成28年末頃まで、週に1回は店を訪れる常連だったという。平日の午後9時頃にスーツ姿で来店することが多く、店では偽名を使っていた。同席した女性と交渉し、連れ立って店外に出たこともあった。店に出入りする女性の1人は「しょっちゅう来ていた時期もあった。値段の交渉をしていた女の子もいるし、私も誘われたことがある」と証言した。(「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」読売新聞5月22日朝刊より)。
では、前川喜平自身は何と語っているだろうか。
<私が初めて「出会い系バー」を知ったのは、2、3年前に偶然見たテレビのドキュメンタリーでした。その中で新宿・歌舞伎町に「出会い系バー」と呼ばれる店があり、経済的に苦しい女性たちがそこで男性とデートしてお金をもらい、時には身体を売り、なんとか暮らしているという内容でした(略)
そもそも私は、長年初等中等教育に関わってきたことから、「子供の貧困」に強い関心を持っていました。(略)そして「子供の貧困」が「女性の貧困」と密接につながっていることも知っていたので、強い興味を覚えたのです。実際にそのバーを探し当て、仕事終わりにしばしば顔を出すようになりました。何人かの女性と店を出て食事に行き、身の上話を沢山聞かせてもらいました。実際に話を聞いてみると、「親が離婚している」「高校を中退した」「今は自分も離婚してシングルマザーだ」という女性が多くいました。(略)こうしたことについて文科行政は何ができるのか、考えさせられました。無論、1度もやましいことはありません>
退職の経緯や天下り問題でいい子を決め込む前川喜平の狡猾さを知った上で読むと、眉に唾を付けて読みたくなるのは致し方がない。
歌舞伎町は、危険な街だ。
銀座はもとより、新橋や赤坂に通うのとはわけが違う。
テレビで見かけた店に1人でぶらりと入るなど、常識ではあり得ない。まして前川喜平は教育行政の高級官僚である。裏社会や外国の人、金も溢れている。よほど常習性があって街をよく知っているか、マスコミ関係者などに相当の悪友がいて、彼らの案内がなければ、街そのものが歩き回るには危険すぎるのである。
しかも出会い系バーは売買春の為に利用する男女の多い、いわば低額プランのデートクラブなのだ。「出会い系バー」で検索してもネットに殆どあがらない。それほどグレーな営業形態ということだ。
10年程前がピークで、今は様々に模様替えしているところも多い。全盛期には、喫茶店やバーなど飲食業の仮面を被りながら、売春斡旋そのものを目的としていた。出自が非合法なのである。当局から摘発される度に、ブラックからグレーに衣替えをしたり、足が付かないよう四六時中店名や場所を変えるなどしている。店や時期によって性格は異なるが、専門の風俗嬢を登録させ、男性客には素人と思わせながら、店外デートをさせるというビジネスモデルもある。
私自身、前川喜平が通っていた歌舞伎町の店に潜入取材した。
百聞は一見に如かず。−この店に日本の文科官僚のトップが2年以上通い詰めていたと想像しただけで、店に踏み込んだ私の全身に衝撃が走った。
薄暗い照明、場末の安っぽくいかがわしい店内の澱んだ空気、そこにテーブルが並び、男女がぽつりぽつりと座って酒を飲んでいる。男性は1時間3500円、女性はタダで男から声を掛けられるのを待っている。店に入った私に早速店員が女性の4名があるかを尋ね、私は目鼻立ちの整った30絡みの美女を指名した。この店の常連ではないらしい。昼間の仕事があるとのことだが、私の見通したところでは夜の稼業をしていると思しい。店外に誘うと一も二もなく応諾の返事である。
常客の男性の来店動機は主に2つだ。安い値段で女性と気軽に話せるという動機が1つ、もう1つは性の相手を探してということになる。
一方女性客の目的は端的に金しかあるまい。この場末のいかがわしい空気感の中、魅力的な男性との恋を心ときめかして求めに来る女性がいるとは思えない。一夜の宿りを求める家出少女、パトロン探し、体を売っての小遣い稼ぎ・・・。しかもこの店の1階上には極度にいかがわしい店ー系列店ではなかろうかーがあり、その店の仕事が終わった女の子がこちらに立ち寄ることも多いようだ。
そうした客筋の店に、日本の官僚トップ、それも教育行政のトップが常客として通っていた。これは前川喜平が買春していたかどうか以前の大スキャンダルなのである。懲戒免職以外の何があり得るというのか。菅義偉官房長官や杉田官房副長官はさすがに店の実態を知らなかったに違いない。実態を肌で知れば、厳罰以外の判断はあり得なかったであろう。
いや、それでも百歩譲って、前川喜平が実際に、若い女性の貧困の実態を知りたかったと好意的に解釈してみよう。その場合、「文科行政は何ができるのか、考えさせられた」前川喜平は、「文科行政」のトップとして何をしたのだろうか。
本当に社会正義の為に、前川喜平がこの店に出入りしていたというのなら、何年にもわたって女の子をあれこれ連れ出して身の上話を聞くなどと悠長なことをしてはいられなかったろう。組織的な少女買春の温床、強制ポルノ出演、薬物汚染、外国と通じた人身売買など、歌舞伎町の闇への義憤が湧くのが本当ではないか。
教育プロセスに組織的な性犯罪の実態を教える一節を組み込むのも1つだろう。警察や公安と文科行政がリンクして組織犯罪から若者を守るための広範な調査と連携を提言するのも1つだろう。離婚が若者を不幸に陥れると肌身で実感したならば、結婚生活の尊さ、父母揃って子育てを最後まで成し遂げる重要性を教育課程に入れようと頑張るのも1つだろう。
前川喜平はそういう動きを1つでもしているのか。
寡聞にして私は知らない。
「子供の貧困」「女性の貧困」など綺麗ごとを盾にした悪所通いの言い訳に過ぎまい。幾ら何でも嘘の性質が悪すぎるのではないか。
違法天下り斡旋の主犯格、出会い系バー通い・・・。
この2つだけでも、懲戒免職の上、マスコミに袋叩きにされるのが普通の社会的処遇だったに違いない。
ところが、奇妙なことが起きる。
マスコミをあげての前川喜平擁護が猛烈な勢いで始まるのである。
菅義偉官房長官が「文科省トップの出会い系バー通いは強烈な違和感がある」と発言すれば、「政権による個人攻撃」として、菅義偉官房長官の側が糾弾される。天下り斡旋が発覚した時には国会で前川喜平を散々叩いていた民進党や共産党、そしてメディアが前川喜平を突然、正義漢のように囃し立てる。通例なら中曽根との姻戚関係が大きく報じられただろう。何しろ、籠池と安倍首相の「はなから存在しない関係」さえ大きな疑惑として報じ続ける人達なのだ。ところが、前川喜平の中曽根との姻戚関係も、前川喜平の実家である前川製作所が冷凍庫を多くの国立大学に納品していることも一切報じられなかった。
もっとも、さすがに出会い系バー通い、違法天下り斡旋の主犯を、朝日新聞、NHKが先頭に立って持て囃すことまではできない。
ここで前川喜平をヒーロー化する牽引役を買って出たのが文藝春秋である。
文藝春秋は、長年、『月刊文藝春秋』『週刊文春』『諸君!』などそれぞれ編集独立の矜持の下で、主流マスコミと一線を画し、独自の保守的な論陣を張ってきた。在野ジャーナリズムの雄である。
政治権力に対してもむろん、必要とあらば常に挑んできた。
だが、同時に、偽善的な正義を振り回す左翼マスコミへの強い異議申し立てにより、日本の言論空間に大人の余裕と厚みを与えてきたのが文藝春秋だった。
近年、その傾向が大きく崩れつつあり、『月刊文藝春秋』は主流マスコミの焼き直し、『週刊文春』はひたすらなるスキャンダリズムに陥り、昔からの愛読者を嘆かせていたが、今回の加計問題では、安倍叩きの急先鋒を朝日新聞と競い合うまでに至った。
なぜそんなことになるのか。
2016年に就任した現社長松井清人による社命なのではないか。
<12月6日夜、市ヶ谷の私学会館で保坂正康さんの新刊『ナショナリズムと昭和』の出版記念会が開かれた。参加者は250人ほど。
そこで、発起人代表として文藝春秋松井清人社長が挨拶したが、これが驚くべきものだった。「極右の塊である現政権をこれ以上、暴走させてはならない」。現政権、つまり安倍政権を「極右の塊」と批判したのだ。「暴走」と難じたのだ。
お断りしておくが、朝日新聞の社長ではない。文藝春秋の現社長がこう言ったのだ。
( 花田紀凱 『文藝春秋松井社長が、安倍政権を「極右の塊」と発言』)
https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20161213-00065447/
安倍首相は、吉田ドクトリンと岸の自主憲法制定を、独自に融和・継承しているが、これは明らかに多年の文藝春秋自身のスタンスと近い。週刊文春と最も縁の深い歴代の代表的論客である小林秀雄、田中美知太郎、福田恒存、林健太郎、高坂正尭、司馬遼太郎、江藤淳らの名前を一瞥すればそれは明らかだろう。
安倍首相を「極右」と決めつける松井は、驚くべきことに有田芳生と親しいという。が、有田は左派イデオローグでさえない。その言動は破壊活動家と境界を接している。
朝日新聞の森友記事が破壊活動家と市議と連携して始まり、局面ごとに同じく活動家の菅野完の影がちらついていた。
文藝春秋の社長も、本来、保守の牙城だった文藝春秋を会社丸ごと簒奪し、社員もまた、編集権の独立を放棄し、政治プロパガンダに同誌のブランド名を悪用しているのではないか。
もっとも、加計問題での文藝春秋の異様さは『週刊文春』による安倍叩きにはない。
強い権力であれば、無理をしてでも叩くのが週刊誌の役割というものである。どんな不条理な叩き方であれ、週刊誌に叩かれるのはー安倍政権が強い政権ならばー安倍首相の側が甘受するしかない。
むしろ、文藝春秋が異様だったのは、月刊と週刊がー社長の意向を受けてか忖度してかは知らないがー共闘するかのように安倍攻撃を波状的に繰り返し、あまつさえ前川喜平を「聖人化」し続けた点にある。
特に慨嘆に堪えないのは、栄光のジャーナリズム史を背負ってきた月刊誌の劣化だ。
「今になって官邸サイドが『なぜ前川次官は現役のときに抵抗しなかったのか』と責め立てる。先の記者会見を含め、前川は折に触れ、『そこは反省している』と潔く語ってきた(平成29年8月号 森功「加計学園疑惑 下村ルートの全貌」)
「前川氏の筋を通す姿勢や、おかしいことには黙っていられない性分、現場の声に耳を傾ける姿勢には、共感を覚える人が少なくないのだ」(同月号中西茂「読売の前川報道を批判する」)
天下り斡旋と出会い系バー通いを知るだけでもこんな賞賛はこそばゆいが、文藝春秋は、前川喜平自身の自画自賛で、さらにそれに華を添える。
<夜間中学や自主夜間中学に知り合いが沢山できたので、そこでボランティアをしているのです。これまで1度も学校に行く機会がなかった80近いおじいさんに一から鉛筆の持ち方を教えて一緒に漢字を書いたり、高校では、数学が不得意な子に因数分解を教えたりしています>
余りにも臭い「よい子ぶり」ではないか。普通こんな手記を元高級官僚が書き、『月刊文藝春秋』が載せるだろうか。
が、「前川聖人伝説」の極めつけは、出会い系バーが暴露された直後の『週刊文春』の記事であろう。
『週刊文春』によると、同誌は前川喜平が出会い系バーに通う中で、特に気に入りだった女性(A子)との接触に成功したのだという。A子によれば、前川喜平と彼女は週2回会っていた時期もあり、3年間で30回以上は会った。
2人の間に肉体関係はなかったという。
ところが、肉体関係以前に、A子と前川喜平では、通っている時期の証言が全く食い違っている。
前川喜平は2、3年前にテレビで知って出会い系バーを探し当てて通い始めたと証言している。平成26年(2014年)、平成27年(2015年)頃からのことになる。
ところが、A子は、前川喜平が店に来たのは平成23年(2011年)冬からで、平成26年(2014年)には「具合が悪くなっちゃったからもう会えない」と言われたというのだ。
重大な証言の食い違いだ。当然別の店でなければ辻褄が合わないし、行動パターンから考えて、最近はA子とは別に、特別に親密な女性がいた可能性は高い。前川喜平には常習性があり、そのことを隠すために、最近通い始めたことにしたのではないか。
事実、ある文教族有力議員の関係者によれば、前川喜平の悪所通いは課長時代の20年前から相当なものだったという。普通のエリート官僚ならば、夜遊びは、銀座か赤坂になるだろう。ところが、前川喜平はデートクラブ、キャバクラなどや風俗店に近い店が好みで、部下たちが、前川喜平の2次会の誘いには閉口していたといのである。当然だ。文科省の出世コースを歩もうという部下らにとっては万一露見すれば人生設計さえ崩れかねないからだ。
それはともかく、全体に『週刊文春』が掲載するA子の証言は、前川喜平を善人に見せていく細部描写が余りにも出来過ぎている。例えば、A子によると前川喜平は「結婚指輪を大切にする奥さん思いの一面があった」そうだ。同衾して目に触れた指輪について会話したとでも言うなら別だが、6年前の客の結婚指輪のことなど普通覚えているだろうか。まして次のような一節になると眉唾どころか、鼻をつままなければ、とてもではないが読み通せまい。
<会う時は、私の友達と一緒のことが多かったけど、よく覚えているのは、ケンタッキーで珍しく2人で話した時のことです。(略)「友達がキャバ嬢だから、私もキャバ嬢になる」って言ったら、凄く怒られて、「親も心配しているんだから早く就職したほうがいいよ」と言われました。その後も会うたび、「ちゃんとした?」とか「仕事どう?」って聞かれました。私が高級ブランドの店員になりたいと思って、前川さんに相談したんです。手っ取り早いのは百貨店で働くことだと言われて、実際百貨店に入って、婦人服売り場で働くことにしたんです。前川さんは喜んでくれて、授業参観と言ってお店に来てくれた事もありました。急に売り場に来られてびっくりしました」(『週刊文春』2017年6月8日号「出会い系バー相手女性)
出会い系バーは売春斡旋目的から出発した営業形態で、前川喜平自身が通っていると認めた店も客筋は極めていかがわしかった。6年前となればなおさらである。A子がそんな店に通い詰め、前川喜平と店外デートを繰り返していることこそ、最も咎められるべきことなのである。
それに比べれば、キャバクラへの就職が「すごく怒られる」ことだとは到底思えない。キャバクラには性サービスはない。風営法により女性の就業環境は守られ、売春の温床になる店は殆どなかろう。キャバクラへの就職を叱る前に、出会い系バーへの「出勤」を即刻辞めさせるのが、常識的な大人の助言であろう。ところが前川喜平は自身が出会い系バーに通い続けていたのだ。話にならない。
一方、就職しようとすれば容易に百貨店の婦人服売り場勤務ができる女性が、出会い系バーに登録していたというのもかなり無理がある。百貨店の婦人服売り場えあれば接客経験のみならず商品知識や学歴が求められることも多い。2人の出会いの時期は民主党政権時代、求人状況は今より遥かに厳しかった。
ジャーナリストの須田慎一郎は件の女性に会い取材したとテレビ出演で明かしている(5月28日、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」)。放送では言葉の一部が伏せられていたが、前川喜平がその女性と肉体関係を持ったことを「裏取りした」として強く示唆した。
真偽は分からない。
が、火のないところでさえスキャンダルを煽るのが得意の『週刊文春』が、前川喜平の夜の生活をこんな美談で飾ることこそが、何より怪しいのである。
安倍叩きの駒としての前川喜平を守るために、他メディアに先駆けて出会い系バーでの美談を急ごしらえしたのではないか。他のマスコミ多数も安倍叩き路線は変わらない。わざわざ前川喜平の信用を落とすネタを拾いにゆくこともない。こうして『週刊文春』が先手を打ち、他のメディアも手控えた為、前川喜平の素行調査はうやむやになったのではなかったか。
『月刊文藝春秋』の前川喜平の手記は次の言葉で終わっている。
<私は人々のために尽くしたい、人を幸せにする仕事をしたいと考え、文科省に入りました。教育とは人々が幸福を追求するために必要不可欠なものです。その教育行政を司る文科省で、「隠蔽」など2度とあってはならないことです。後輩たちが胸を張って仕事ができるように願っています>
黙れ、偽善者よ。君には遡っての懲戒免職以外の道はない。

◆朝日新聞は火をつけ、火は燃え上がる
さて、再び朝日新聞に戻る。
2017年5月26日「池上彰の新聞ななめ読み」が余りに稚拙すぎて目を引くので、ご紹介しておこう。
<加計学園の新学部に関し、安倍晋三首相の意向が働いたかどうか。これが最大の焦点でした。それを示す内部文書が文部科学省の中にあったというのですから。スクープです。(略)そうか、ついに決定的な証拠が出たか。一読して、そう感じたのです。(略)都合の悪い文書の存在が明らかにされたため、関係者たちが右往左往している様子がわかります>
全て誤りである。
新学部に関し、安倍首相の意向が働いたかどうかは本来の焦点ではない。受託収賄に類する何らの物証もないまま、友達だから「意向」があったかもしれないというのは森友問題同様の魔女裁判である。池上彰がジャーナリストなら、まずはこの贋造された「焦点」に疑念を表明すべきではなかったのか。
しかも、朝日新聞のスクープは入手文書を公表していない。池上彰がまともなジャーナリストなら、そこをまず疑うのが当たり前だろう。
そして又、「都合の悪い文書」だから政府関係者が右往左往したのではない。出所不明・真偽不明の文書によってマスコミと民進党の「追及」が始まったから対処しようがなかったのである。
しかし、・・・。
政権中枢や自民党の対応もまた鈍すぎたのだ。
前川喜平の証人喚問を野党側が求めていることに対して、自民党は5月26日、民間人であることなどを理由に拒否した。
文科省文書についての調査要求も拒み続けた。6月18日の会期末まで、それで押し切ろうという腹だったわけである。
自民党の竹下亘国対委員長は、「前川氏は文科省を辞めた民間人だ。現職の時になぜ言わなかったのか」として拒否し、公明党の井上義久幹事長も記者会見で「重い立場にあった人間が辞めた後に言うのは理解できない」と前川喜平を非難した。
一連の対応全てが稚拙である。
前川喜平はその「重い立場」を利用して、文書の存在を確信したのである。今更、前川喜平のモラルを問うても、文書は消えない。前川喜平が何者かではなく、彼の地位と文書の実在が今問題にすべき全てなのだ。
朝日新聞、NHK、文藝春秋、元官僚トップが組んでいるのである。今更政府が前川喜平の人格を嫌味大量たらしく小出しに非難すれば、政府与党の逃げを指摘され、火事は大きくなり続けるに決まっている。
ここまでくれば情報謀略による倒閣運動だ。戦力の逐次投入で火消しなどできない。森友学園でそれは証明済みではなかったか。
こうして、政府の対応が後手に回り続ける中、5月30日の朝日新聞には、また前川喜平の取材記事が1面トップに出た。単独取材、記者会見に続き、2週間で3度目の前川喜平証言のトップニュースである。
前川喜平が、丁度文科省文書が書かれた2016年9〜10月に和泉洋人・首相補佐官と複数回面会した時の会話内容を証言した。それがスクープの内容だ。
見出しを見ると、総理の露骨な圧力があったかのように見える。「要求」の2文字も、何か不正な利益の強要を連想させる。
ところが、記事を見ると、この時期、和泉に呼ばれ密室で2人きりで会った時の断片が書かれているに過ぎない。
<和泉氏から、獣医学部の新設を認める規制改革を早く進めるように、という趣旨のことを言われた。『加計学園』という具体名は出なかったと記憶しているが、加計学園の件であると受け止めた」と証言。そのうえで「このときに和泉氏から『総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う』と言われたことをはっきり覚えている」と語った。
この面会で前川氏は和泉氏に明確な返答をしなかったといい、「大臣(松野博一文科相)に直接伝える必要はないと思い、面会の趣旨だけを担当の専門教育課に伝えた」と説明した>
引用を読めば明らかなように、一方的な会話の暴露や感想に過ぎない。裏の取れないそんな「証言」を1面トップにするだけでもどうかしている。その上、前川喜平は、最大の論点である安倍首相が加計学園の便宜を図ったかについては、「『加計学園』という具体名は出なかったと記憶している」と言っている。何のためのスクープなのか。
さらに証言には奇妙な点がある。
前川喜平は和泉首相補佐官から「総理が言えないから私が言う」と言われたと証言している。先に出た藤原豊審議官とは違い、首相補佐官は実際に総理の右腕だ。その人物からここまで強い表現を使って示唆されたのが本当だったなら、前川喜平はなぜ大臣にそれを伝えなかったのだろう。
この案件が行政のトップである総理の意向だと首相補佐官から言われれば、当然大臣の松野か、副大臣の義家に話を持ってゆかねばならない。総理が絡んでいれば政治案件であり、事務方ではお手上げだからだ。ところが、前川喜平は「面会の趣旨だけを担当の専門教育課に伝えた」という。首相補佐官に「総理が言えないから私が言う」と言われたほど重大な案件を担当課に伝えても、彼らは途方に暮れるだけではなかろうか。
おまけに妙な言葉遣いが見られる。前川喜平によれば担当課には「面会の趣旨だけを」伝えたというのだ。逆に言えば「総理が言えないから私が言う」という和泉首相補佐官の言葉そのものは担当課に伝えていなかったということだろう。
要するに一番肝心な「総理が言えないから私が言う」という和泉首相補佐官の「科白」は、前川喜平1人が密室で聞き、証人の誰もいない話でしかないのである。
これ又既視感に襲われる。密室での100万円の授受が大きな争点となった籠池のケースである。
6月1日の朝日新聞も、全く同工異曲だ。前川喜平が加計学園理事で元内閣官房参与だった木曽功と面会したことを1面で大きく報じている。
「加計学園理事の内閣官房参与 新学部 前次官と話題に 面会求める 圧力は否定」「前次官『よろしくと言われた』」という見出しが躍る。
本文を読めば失笑する他ない。文科省OBで加計学園の理事が前川喜平のところに進捗状況を探りに来たといのである。獣医学部新設は52年間禁じられてきた岩盤規制である。この数年、突破する側も、阻止する側も、それぞれに人脈を動員して活発に動いていた。木曽功元内閣官房参与の場合もそのエピソードの1つに過ぎない。行政案件に限らず、何事かが機関決定される前に、関係者や権限者が活発に動くのは当然だろう。
が、これは朝日新聞の情報操作の高等戦術だった。
こうして、ともかくも、文科省文書、和泉補佐官、木曽功元内閣参与と駒を揃えたところで、社会面に「文科省へ要求 複数ルート」と題し、「内閣参与」「補首相佐官」「内閣府」という3本のルートで、獣医学部新設が要求されていたという大見出しを打ったのである。
安倍首相が官邸ぐるみで「自分の意向」を通そうとしていたという筋書きだ。見出しを眺める読者の頭をスクリーニングしてゆく洗脳である。
朝日新聞の幹部が、日本国中を巻き込む創作劇を日々演出している自分に陶酔し始めている気味合いが感じられる。
しかしここまで容赦なく虚報を重ねて叩けるのは、裏返して言えば、加計問題は、朝日新聞が警戒心なく振る舞っても安心できる素材だからとも言える。
和泉補佐官にせよ、木曽功元内閣参与にせよ、霞が関機構での強力な利権の網の目を差配する権限者であるのは事実である。それをここまで叩けるということは、これがマスコミ側が利権に与っていない件だからだと言うことではあるまいか。
例えば同じ国家戦略特区でも、42年ぶりの医学部として開学した国際医療福祉大学の方は、マスコミ自身が役所と結託するかのように利権に組み込まれていた。何しろ同大には、以下の人たちが天下りで役員や理事などに入り込んでいるのである。
■宮地貫一(元文科事務次官)副理事長(大学設立当時。現在は役員に名を連ねず)
■佐藤禎一(元文科事務次官)教授
■渡辺俊介(日経新聞論説委員)教授
■丸木一成(読売新聞医療情報部長)教授・医療福祉学部長
■水巻中正(読売新聞社会保障部長)教授
■金野充博(読売新聞政治部)教授
■木村伊量(朝日新聞前社長)特任教授
■大熊由紀子(朝日新聞論説委員)教授
いやはや凄まじい。一体いつの間に、日本の大学教授は、地味で真面目な研究者の為のポストから、新聞社幹部の荒稼ぎ先に成り下がったのか。学問を舐めるのも大概にしたらどうなのか。
逆に言えば、こうして役所とマスコミ両方にうない汁を吸わせておけば週刊誌やネットで小ネタにはなっても、到底、新聞・テレビで叩けはすまい。マスコミ全体主義が強化される昨今の日本で、こうしてマスコミと役所を同時に取り込んでおくことは、何よりの保険なのである。
逆に言えば森友学園と加計学園で朝日新聞をはじめ全メディアが遠慮会釈なく大騒ぎを演じられ続けたのは、どちらも利権構造と無縁の案件だったからだ。
また、安倍晋三が首相という最高権力者でありながら、これだけ遠慮会釈なく叩かれ続けるのも同様で、安倍首相自身が利権とよほど縁のない政治家だという証左と言えるだろう。
そこを頭に入れながら、朝日新聞の次の社説を読むと、現職総理に対するこの見下したような物の言いようは、ただ事ではあるまい。
<特区であれ、通常の政策であれ、行政府として、それを進める手続きが妥当であると国民や国会から納得が得られるようなものでなくてはならない。なのに首相は自ら調べようともせず、私が知り合いだから頼むと言ったことは一度もない。そうではないというなら証明してほしい」と野党に立証責任を転嫁するような発言をした。考え違いもはなはだしい。(2017年5月31日)>
朝日新聞は考え違いも甚だしい。
安倍首相に違法性があると言うのなら、それを追及する側に立証責任があるのは当然なのだ。

◆朝日新聞、見出しだけで勝負し続ける
安倍首相は、2017年5月25日〜28日、G7タオルミーナ・サミットに出席するため、イタリア及びマルタを訪問した。このサミットで、安倍首相は北朝鮮を世界全体の脅威とする認識をG7リーダー達に訴える一方、「首脳宣言」から「保護主義と闘う」という文言の削除をトランプ大統領が求めたのに対し、文言の最終的な盛り込みに着地させることに成功した。安倍首相はこうした自由貿易の旗手として、2017年に入っての度重なるヨーロッパ歴訪の結果、7月にはEUとの間でEPA合意に至る。
<世界史的なEPA合意など安倍訪欧の成果は上々なのに報道されず
2017年07月11日 11:30
http://agora-web.jp/archives/2027143.html
安倍首相の外遊について成果を低く見る向きもあるが、EPAの締結は、世界における自由貿易退潮を止めるホームランである。それをG20にぶつけるかたちで発表できたのであるから、世界史的な快挙だ。
ヨーロッパの報道でも大々的に取り上げられている。フランスのテレビでは「自由貿易反対派は不意を突かれてこの重大な協定の合意に慌てている」と言っているし、アメリカのマスコミはこれで世界貿易でアメリカが不利になると大騒ぎだ。
日本のマスコミがしっかり報道しないのはいろいろ理由があるが、ロンドンを中心にヨーロッパを見ている歪みも原因だ。各社とも欧州総局をパリかブリュッセルに移すべきだ。
北朝鮮について劇的な展開はないが、そんな簡単なものでないのだから、G20の声明に盛り込まれなかったからといって騒ぐほどのことでない。
各国首脳とのバイの会談もロシアやトルコのテレビでも大きく取り上げられていた。
日本のテレビは本当に安倍首相と外国首脳の会談を報道することを意図的に避けているとしか思えない。トランプとは日米韓だけでなく日米で単独対談をしっかり時間を掛けてできたのは、トランプとマルチの会議のたびに会うといち早く約束しておいた成果だ。オバマにならスルーされかねないところだった。
それから、安倍訪欧とは関係ないが、沖ノ島の世界遺産指定が宗像神社なども含めた一体としての指定に逆転して成功したのは外交的成功。うまく行かなかったときだけ外務省を責めて、うまくいったときは誉めないのはおかしいだろう。>
勿論、朝日新聞をはじめとする反安倍メディアが、一連の安倍外交の成果を伝えるはずもない。外交成果はそっちのけ、5月から6月に入り、朝日新聞の見出しは、国会質疑の実態とさえ大きく乖離した極端な安倍叩きにますます狂奔するのである。
5月31日には「加計究明 政権なおざり 再調査、即座に否定/告発者へ個人攻撃」と書き立てている。
6月3日の朝日新聞見出しは「『官邸の最高レベルが言っている』文書、文科省内で共有か 民進指摘」である。
6月5日の安倍首相による国会答弁の翌日には、政治面に「首相、持論一方的 加計問題の答弁」である。社説では「首相らの答弁 不信が募るばかりだ」と題し、「驚き、あきれ、不信がいっそう募る。きのうの国会で、安倍首相の友人が理事長を務める加計(かけ)学園に関する首相らの答弁を聞いた率直な感想だ」と書き出されている。安倍首相が大変な不祥事を犯しているとしか読めない非難である。
6月6日の時時刻刻は「加計問題 深まる疑問」が見出しである。
6月7日の朝日新聞の記事には「文科省対応『おかしい』」とある。
菅義偉官房長官が6日の記者会見でも、まだ再調査は必要ないとしたことに対して、文科省の現役職員が「自分が見た文書、メールと同じで共有されていたものだ」と認めた。この職員は、「安倍政権の方針に反対ではないが、今回の政府の対応はおかしいと思っている」と述べたというが、これは実感であろう。
実際、6月7日にも「データ次々 政府なお強弁」「怪文書 確認できない 文科省の判断」と、政府が逃げているという構図を描き続ける。
6月8日に、「獣医学部 揺らぐ根拠」と、初めて獣医学部の新設が是か非かという記事が出た。朝日新聞の膨大な加計問題報道で、獣医学部新設という、事の本質に関するまとまった記事の、これが初出である。否定的な側から書かれているのは言うまでもない。
6月9日の朝日新聞には「面会記録『確認できぬ』」「政府側答弁一辺倒 加計問題」という見出しが出る。
自由党の森裕子が愛媛県今治市の行政文書を調べたところ、2015年4月、市企画課長らが首相官邸を訪問したとあった。森裕子は、政府に、その時誰に会ったかと問うた。萩生田光一官房副長官は、記録は1年未満に破棄という行政文書の管理規則に従って破棄されていて分からないと答弁した。規則通りの措置である。
ところが、森裕子は「官邸にいる特区の関係者は1人しかいない。特区諮問会議の議長を務める安倍晋三首相じゃないか」と迫った。今治市の担当課長が密かに首相を訪問したのではないかと詰問しているのだ。ばかばかしくて話にならないが、朝日新聞の見出しは執拗だ。
6月11日には「事前準備『加計ありき』? 面会 スケジュール 想定問答」と追撃して疑惑を演出している。
朝日新聞の見出しだけを見ていると、安倍政権は追及に対して木で鼻を括ったような対応をしたように見える。朝日新聞の愛読者の安倍首相への不信を醸成する上で、さぞや有効な見出し攻撃だったことだろう。
では事実はどうだったのか。
朝日新聞が「驚き、あきれ、不信がいっそう募る」と口を極めて安倍首相を難じた2017年6月5日の国会質疑を見てみよう。

■安倍晋三内閣総理大臣
こういう国家戦略特区、岩盤規制を突破していこうとすると、既存の団体、業界、いわば抵抗勢力と言われる人たち、そしてそれを監督する官庁は、できない理由をずっと並べるんですよ。国家戦略特区というのは、できる理由をしっかり考えていけというのが基本方針です。これは、今一生懸命やじっている方々も、民主党政権も基本的にそういう方針で臨んでいたはずですよ。でも、そうでなければ、できない理由を探していけば、これは絶対できないんです。
だから、例えば、50年間できなかった・・・(発言する者あり)済みません、少し民進党の皆さんも静かにしてくださいよ。静かな環境で議論・・・(発言する者あり)答弁をしているんですから。今一生懸命、ずっと最初から答弁しているじゃないですか。ですから・・・。
■玄葉光一郎委員長(2017年衆院選福島4区無所属で当選)
総理大臣、やじに答えなくて結構ですから、お答えください。
■安倍晋三内閣総理大臣
でも、なかなか、私、やじられると答弁をしにくいものですから。人間は誰でもそうですよ、やじられると答弁がしにくいんですから。
■玄葉光一郎委員長
まあ、でも、答弁してください。

驚くべきは民進党の玄葉光一郎の議事采配ぶりだろう。途中、安倍首相が野次に往生して窘めると、議長が野次を制止するどころか「野次に答えるな」と安倍首相を窘めているのだ。テレビ中継では野次はオフマイクだが、実は、民進党の野次は怒号のように会場に響き渡り、殆ど答弁が聞こえないことなど日常茶飯である。この時も総理答弁は殆ど聞こえなかったと思われる。ここに限らず、玄葉光一郎の議長ぶりは全体に極めて不公平で、党派性剥き出しだ。彼に限らないが、議事録を通読すると、民進党議員については、率直に言って、他のどんな政党以上に、人間性や道徳性を疑わざるを得ない質疑や発言が余りにも多い。党そのものが、公党のあり方などという上等な話以前に、人間失格なのではないか。
朝日新聞が「驚き、あきれ、不信がいっそう募る」と口を極めて安倍首相を難じた2017年6月5日の国会質疑を見てみよう。
次のやり取りもひどい。質問に立った民進党の宮崎岳志(2017年衆院選落選)は基本的な知識もなく、やり取りも実に下品だ。

■宮崎岳志委員
今ぺらぺら言われましたけれども、構造改革特区と国家戦略特区は全く別物じゃないですか。構造改革特区はボトムアップで上げてくるんでしょう。だから加計学園の名前が入って上がってくるんですよ。それはそうですよ。当たり前。国家戦略特区は総理が全部決める仕組みでしょう。国家戦略特区諮問会議は、地域だって政令で総理が決めるんでしょう。諮問会議だって議長は総理でしょう。

「国家戦略特区は総理が全部決める仕組み」と来たものだ。
そんな仕組みが日本の行政にあるわけがないではないか。
政府系の主要な諮問会議の議長が全て総理なのは当然だろう。最終権限者が総理であることと、総理の恣意で議事を動かせることは全く別問題だ。岩盤規制を突破して国家の活力を増すという目標に対して、安倍首相がリーダーシップを取ることと、個々の許認可に口出しするというのはまるで次元が違う話である。そこを安倍首相は丁寧に答弁するが、宮崎岳志は罵詈雑言で安倍首相を侮辱することしか考えていない。

■安倍晋三内閣総理大臣
今また認識の間違いをしておられますから説明しますが、構造改革特区と国家戦略特区、この違いをよく理解されていなんだろうと思います。
まず、どちらにしろサブスタンスを議論するんですから。では、皆さんの時は、構造改革特区というのは上がってきたらめくら判ですか。違いますよね。上がってきたらめくら判ではないんです。上がってきたものを精査するわけですよね。上がってきたものについては、先ほど申し上げましたように、自民党政権においては、熟度等も含めて、あるいは獣医師会等の関係においても対応不可であったわけであります。(略)
最終的には、何でも、どんな仕組みであれ、最終的に決めるのは内閣総理大臣ですよ。そして、どんな色々な会議、例えば経済財政諮問会議だって私が議長です。様々な議長があります。でも、私がそこで勝手に色々なことを決められるんだったら、そもそも諮問会議の意味がないじゃないですか。(略)

■宮崎岳志委員
べらべらべらべら適当な制度論をしゃべった上に、最後は、責任とは、言う必要がないと。
いやあ、総理が、申しわけなんですけれども、構造改革特区と国家戦略特区について全く理解されていないということがよく分かりました。例えば、平成30年4月に開学、あるいは四国に、四国とは限りませんけれども、空白地、広域的に他の獣医学部がない地域に限る、あるいは1校に限る、こういったものは、ライバルであった京都産業大学を追い落とすために後からはめられた条件じゃないですか、こういう疑惑があるわけですよ。(略)

■安倍晋三内閣総理大臣
宮崎委員が言っていることは端から破綻していますよ。今、総理が決めるということを総理は御存知なかったと言ったんだけれども、つまりそれは、私が決めていないから私は知らなかった。言っていることは全く論旨が破綻していると思いますよ。
いいですか。場所等を決めるのはまさに国家戦略特区諮問会議ですよ。読みましたか、議事録、オープンになっていますが。(宮崎岳「全部読みました」と呼ぶ)いや、恐らくそれは、私は、なかなか読んでいるとは。何か相当動揺されましたが、それは読解力の問題だと思いますよ。読解力の問題なんですよ。
では、その中で、例えば医学部と獣医学部の意味についての議論もなされていますが、御存知ですか。

■玄葉光一郎委員長
いいから、答えなくていい。

■安倍晋三内閣総理大臣
御存知ないようですから、つまり、保険診療でやっている医師と、自由診療でやっている医師、これは保険財政あるいは国家財政にかかわりがないので根本から自由にすべきだという議論がありました。しかし、国家戦略特区というのは、その中で何とかキリのように穴を開けていこうということです。(後略)

国家戦略特区の特性を安倍首相が理解していないと宮崎岳志は言う。だがもしそうなら、安倍首相は、宮崎岳志が主張する独裁的な権限を行使できないことになるわけではないか。子供の口論である。
さらに、宮崎岳志はどうやら国家戦略特区関連の議事録に目を通していない。だから特区提案を具体的に検討する、総理出席のないワーキンググループ会合での有識者委員が、議事にどれだけ強い影響力を持つかという基礎知識さえなしに質問しているのだ。
一層興味深いのは、安倍首相に挑発されて医学部と獣医学部の違いに宮崎岳志が答えようとするのを玄葉光一郎が阻止しようとしている点である。身内議員が馬脚を現すのを懸念したわけである。
全編を読んでも安倍首相の答弁は、我慢強く丁寧だ。もしテレビや新聞が、この日の主要なやり取りを充分に報道すれば、国民の大多数は政府の説明に納得しただろう。
それが、朝日新聞の見出しでは「首相らの答弁 不信感が募るばかりだ」となり、社説では「驚き、あきれ、不信がいっそう募る」となる。
こうして、事実は報道せず、延々と見出しによる「創作」が続く中、6月9日、政府は、サミットから帰国した安倍首相の指示で、ようやく文科省文書の調査に方針を転じた。
今回は、文科省はチェックの範囲を大幅に広げ、100万件以上のファイルを検索にかけた。さらに関係職員が持っている紙でも、個人フォルダ、メールボックスに入っているものまで含めて提出を指示した。
政府による再調査の結果は6日後の6月15日に出た。
その際、記者会見で配布された資料に、マスコミの圧力で行政が歪められたことへの政府の懸念が滲み出ている。
<なお、行政文書であっても、政策の意思決定に関わるものであって、行政機関相互間の率直な意見交換が不当に損なわれる等の恐れがあるもの、個人のメモや備忘録は、公開しないこととしているが、今回の件は、国民の声を真摯に受け止めて徹底した調査を行うという特例的な調査であることから、文書の存否について、通例とは異なる対応を行うこととしたものである>
それはそうだろう。
違法性がないのに、国会とマスコミが組んで大騒ぎを演じる度に、内部文書の公表に政府が追い込まれるなどという事態をこれ以上許せば、日本の行政は崩壊する。
だが、6月16日、朝日新聞の朝刊は、政府のそうした懸念をよそに「『怪文書』一転、あった」と、結果として誤報となる記事も交えて、相変わらず鼻息荒い政権攻撃である。
「官邸『官邸、細部まで指示』「異論許さぬ政権体質明らかに」といった文字が躍っている。
「『官房副長官が指示』メール」ともあったが、それは加計学園の獣医学部新設を決定する過程に萩生田光一官房副長官の指示があったと見える文書が新たに見つかったことを指す。
萩生田光一官房副長官は、この文書内容を直ちに全面否定したが、朝日新聞は逆に、萩生田光一官房副長官と文科省が文書の内容を巡って対立しているとして、萩生田光一官房副長官の言い分を全く度外視した紙面を作り続けた。この文書内容は後に文科省自身も誤りを認め萩生田光一官房副長官に謝罪している。もはや、朝日新聞は偽文書を元に政治家を叩くことにさえ躊躇がないのである。
6月18日の朝日新聞朝刊も相変わらずだ。
「認めない 調べない 謝らない 政府、終始『3ない』答弁」とやる。
社説でも「安倍政権『議論なき政治』の危機」「政府 空疎な強弁」と書く。
こうした安倍攻撃の延々たる「創作見出し」の中、2017年6月19日に至って、獣医学部の招致主であり愛媛県今治市についての記事が、何と初めて朝日新聞に出た。文科省文書スクープから1月、国会閉会後の事である。こんな露骨な隠蔽があるだろうか。
6月19日「政治断簡」に、世論調査部長前田直人はこう書いている。
<「あったことを、なかったことにできない」という文科省の前川喜平・前事務次官の言葉が、最も強烈な印象として残っている。その指摘に向き合わずに前川氏の個人攻撃に走った政権の悪態には、国家ぐるみの隠蔽工作を見るかのような戦慄をおぼえた。国会の陰の主役となった前川氏の座右の銘は、「面従腹背」だという。「安倍1強」の闇は、深そうである。>
「総理の意向」という言葉を一人歩きさせて、「なかったことを、あったこと」にしたのは誰だったのか。証拠なき安倍首相の個人攻撃に走り、自白を強要し続けたのは誰だったのか。
逆に「あったこと」である文科省文書の中身も、国会質疑の実態も、特区委員や今治市など当事者も、全て「なかったこと」にし続け、戦慄すべき隠蔽工作を仕立て続けていたのは誰だったのか。
本当に深い「闇」は安倍政権の側にあるのか、朝日新聞をはじめとするメディアにあるのか。
こうした隠蔽と虚報で、「なかったことを、あったことにできた」朝日新聞ーNHKー文藝春秋ー元官僚トップの「悪態」は、真に「戦慄」的ではなかったか。
6月19日、安倍首相は、前日の通常国会閉会を受けての総理大臣記者会見で、「加計対応が二転三転した」として、反省の弁を述べた。
「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった」と安倍首相は言う。
安倍首相としては姿勢を転じることで攻撃をかわし国民への印象を変えていく一歩だったのであろう。
だが、問題の本質は安倍首相個人の答弁の姿勢にはない。
知らない事を、本当は知っているんだろうと詰問され続けた上、安倍首相がいかに経緯を説明しても、それは全く報道されず、国会質疑の実態と程遠い「創作見出し」が続いたのである。
政権側が打つ手はより抜本的なものであるべきではなかったか。
政権自身が精鋭の防御チームを組織化した上で、安倍首相と菅義偉官房長官らが細部にわたる情報を徹底的・具体的に収集・把握し、受け身の国会答弁ではなく、全体構造を政府側から速やかに発表するしかないということだ。マスコミとは別の自前のロジックを国民に開示し、マスコミの「創作見出し」と政府の詳細説明のどちらが正しいかを政府が広報する新たな体制の構築が必要だ。
マスコミがラウドスピーカーで巨大な嘘をつき続けることを許容しながら、政府中枢に政権防衛の戦略チームがなく、広報手段もなく、総理大臣が答弁能力だけで印象操作と闘うーこれは必敗の戦いになるしかないのだ。
6月19日に報じられた朝日新聞の17、18日の全国世論調査で、安倍内閣での支持率は41%、前回の5月24日、25日の47%から6ポイント、1月の54%から見ると13ポイントも下落した。特にこの6月の調査では「支持する」と「支持しない」が41%と37%に接近し、これを潮目に、各社世論調査の数字が大幅に下落、政権の危機が叫ばれ始めることになる。
それに先立つ16日、二階俊博自民党幹事長は、夜のBSフジの番組で加計学園問題での集中審議を巡ってこう発言した。「大騒ぎして頂いたが、このことで国会審議が左右されることは、馬鹿馬鹿しいことだ」と。
もし加計問題が本当の不祥事であったなら、与党幹事長のこうした発言は、辞任に値する。それが辞任どころか小さな記事で終わったのは、野党もマスコミも、この事件が馬鹿馬鹿しい空騒ぎであることを自覚していたからだ。
マスコミと野党が組んでの、これ程大規模な国民に対する情報謀略は戦後史上、さすがに例を見ない。
私自身、二階俊博自民党幹事長の発言に付け加える言葉はない。
何一つ語るに値せず、論じるに値せぬ架空のスキャンダルに狂奔する異常な言語空間を渉猟し続け、吐き気を催す。

◆隠蔽された問題の全体像
2017年7月10日、24日、25日、国会では、加計問題を扱う閉会中審査、集中審議が行われた。この3日間で招致された参考人は次の通りだ。
前川喜平(前文部科学事務次官)
原英史(国家戦略特区ワーキンググループ委員)
藤原豊(前内閣府地方創生推進事務局審議官)
加戸守行(前愛媛県知事)
八田達夫(国家戦略特区諮問会議有識者議員)
和泉洋人(内閣総理大臣補佐官)
柳瀬唯夫(経済産業省審議官)
朝日新聞をはじめ、2カ月に及ぶマスコミ報道では殆ど1回もお目にかからなかった名前ばかりである。この間、朝日新聞が報じた関係者は前川喜平と、彼が密室で2人きりで会った木曽功元内閣参与と和泉洋人内閣総理大臣補佐官、誤報で名前の出た萩生田光一官房副長官しかいない。前川喜平の1人芝居と誤報だけで2カ月もの間、加計スキャンダルを創り続けたのだ。
だが、獣医学部新設を10年間推進し続けた当事者は、実は、今回初めてここに登場した加戸守行前愛媛県知事であった。その加戸守行前愛媛県知事がここまで1度も報道の局面に登場しなかったとは、何と病み、腐った日本の報道空間であろうか。
また、実際に広島県・今治市共同提案を機関決定として通したのは八田達夫・大阪大学名誉教授が座長、原英史・株式会社政策工房代表取締役社長が座長代理を務める国家戦略特区ワーキンググループである。しかも、それは「総理の意向」が文科省文書に現れる1年以上も前のことなのだ。
さらに今回は、前川喜平の証言で圧力をかけたとされる和泉洋人・首相補佐官も出席している。
こうして、前川喜平以外の主要な登場人物がここに初めて一堂に会したわけだ。
この集中審議によって、初めて、当事者自身の証言による加計問題の構造全体が明らかになり、前川喜平の殆どが暴かれ、スキャンダルとしての加計問題は完全に息の根を止められた。
ところが、国会での徹底究明を要求してきたマスコミ自体が、この暴かれた真相を全く報道せず、この期に及んでさえ、前川喜平の発言のみを一方的に取り上げることに終始したのだ。
言うまでもなく朝日新聞がその急先鋒である。何しろ朝日新聞は、この集中審議における前川喜平以外の証人の証言を紙面から殆ど抹殺してしまったのである。
見出しは相変わらず「加計ありき、疑念消えず 前川氏『官邸が関与』首相ら当事者不在」「首相側近、『記憶ない』連発 加計問題、集中審査」となっている。審査の議事録を読めば、「疑念」は全て消える。首相が「当事者」でないことも分かる。首相側近の和泉洋人・首相補佐官や萩生田光一官房副長官は「記憶にない」を連発していな。事実を強く否定しており、合理的な説明が伴っている。朝日新聞のこれらの見出しは、議事録の実態と限りなく無関係な、例によって「創作見出し」そのものである。
さらにテレビも常軌を逸していた。
集中審議の内、7月10日のテレビ報道に関して、シンクタンク社団法人日本平和学研究所が調査をかけたが、それによると、10日、11日の在京キー局での「加計学園問題」の放映時間は合計8時間44分59秒、その内、参考人の発言を放送した時間は2時間42分22秒だが、その内訳は、前川喜平の発言が2時間33分46秒と実に約95%を占める。残りのわずか約5%が、加戸守行前愛媛県知事と原英史国家戦略特区ワーキンググループ委員に割かれた時間である。
朝日新聞社の安倍内閣支持率は、ついにこの7月8、9日調査で33%、不支持率が47%と劇的な逆転を見せ、第2次安倍政権を通じて最低を記録した。安倍首相を信用できないとした数字も61%にのぼった。
おそらく、まだ国民の大多数は、安倍首相に漫然たる不信感を持っているに違いない。安倍首相自身に何らかのやましい問題があったと感じているに違いない。
朝日新聞をはじめマスコミの隠蔽し続けてきた加計問題の全体像を明らかにしたい。
その時、スキャンダルの真の主役が安倍首相なのか、マスコミ側なのかをはっきり理解されるに違いない。
そもそも加計問題とは何だったのか。
端的に言おう。
獣医学部新設を巡る、反対派と推進者らの間の長年の闘いこそが、事の本質なのである。
7月10日参議院で、前川喜平は、獣医学部新設がそもそも必要ないという認識を次のように示している。
<これは、やはり政策として、これまで獣医学部の定員を増やすという理由がないと判断してきたからでありますし、その際には農水省などとも十分議論をしながら進めてきたと、こういう経緯があるわけであります。
今回この国家戦略特区で認めるということについて議論する中でも、これは、やはり将来的な人材需給というものを踏まえて議論しなければならない、これはもう当然のことだというふうに考えておりましたし、そのためには、やはり農水省、あるいは農水省が手に負えない別の新しい分野というのであれば、厚労省も加わってきちんと政府部内で議論するというプロセスが必要であったと思っております。(略)今治市からの提案もございました。(略)その時に文部科学省は、これは4条件を満たしていないと申し上げておりますし、9月にも、これは加戸先生がやはり提案をしておられますけれども、これについても4条件に照らしてやはり疑問があるというのが文部科学省のスタンスでございました>
前川喜平がここで言っていることを簡単に解説するとこうなる。
第1に、人材需給、つまり獣医師そのものがこれ以上必要とされていないから獣医学部新設は必要ない。
第2に、農水省や厚労省と獣医学部の新たな分野での新設について協議しなければならないが、協議していないから新設は認められない。
第3に、今回の愛媛県今治市は、国家戦略特区に獣医学部を新設する時に満たさなければならぬとされている4条件を満たしていないから、認めるべきではない。4条件とは、平成27年の6月30日に閣議決定された『「日本再興戦略』改定2015−未来への投資・生産性革命ー」という膨大な戦略ペーパーに含まれた「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」と題する一節である。世に石破4条件と言われる。4条件の内容を挙げると次のようになる。
<@現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、B既存の大学・学部では対応が困難な場合には、C近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う>
前川喜平は、人材需給にやたらこだわるが、大学の学部新設というのは、一般にそこまで人材需給にこだわるものなのだろうか。
例えば経済学部を新設する時日本、需給バランスなどをそんな厳密に議論するのだろうか。無論、獣医師の場合のように特定の免許業の養成を主目的とするわけではないにせよ、若い人材の配分をどうするかという点で、懸念に変わりあるまい。まして最近では、常盤大学ヒューマンサービス学科、東京未来大学モチベーション行動科学部、東北工業大学ライフデザイン学部など、失礼ながら横文字を並べた内実の分からない学部学科が多数認可されている。人は知的伝統の継承の中でしか創造的であり得ない。例えば徹底的に古典に習熟せずに、バッハやベートーヴェンの超絶的な飛躍は不可能だ。新しがることと真に創造的であることは寧ろ対極的であり、新名称の学部・学科を安直に量産するのは、時代の空気への迎合としか見えないが、こうした学部で、文科省は需給など本当に測っているのだろうか。
薬学部に至っては、小泉政権下の平成14年(2002年)の規制緩和の後、46だった大学・学部数が現在74まで急増している。薬剤師の過剰供給や、大学の定員割れ、学力水準の低下などが指摘されるが、文科省は是正に動いていない。
一体52年間新設を全く認めず、その理由をあくまで需給に求める姿勢と、需給を不問に付したままの10年で28校も薬学部を認可してきたことーこの対応の極端なギャップを前川喜平はどう説明し分けるのか。
何しろ、前川喜平の説明には具体性が無さすぎるのである。
国会の証言に限らず、雑誌の寄稿やメディアのインタビューでも「犬、猫、牛、豚をはじめ、国内の動物の数は年々減っており、獣医師の供給が不足している実態がないといいます」(『文藝春秋』7月号97頁)などと大雑把な伝聞を繰り返すだけで、1度として具体的な根拠やデータを示したことがない。前川喜平は、まさに2016年、獣医学部新設の是非を判断すべき文科省の事務方最高責任者だったはずだ。どうしてここまで知識がないのだろうか。
実は、少し調べれば、獣医師の過不足について、データは前川喜平の主張とは全く別の事を語っているのである。
獣医師法第22条の届出状況(農林水産省)に基づく京産大作成資料によると、平成26年現在、約3万4500人の獣医師がいる。その内ペット関連の医師が44%と最も高く、大都市では過剰気味だが、一方で家畜の防疫や改良を担う産業動物獣医師は23%、製薬・大学・研究機関の獣医師は8%に過ぎぬ上、偏在は拡大傾向にある。
BSE、狂牛病、人間への感染が懸念される口蹄疫など、疾病に対応するのは産業獣医師であり、また、研究分野への就業者がそれを下支えする。とりわけ研究者数を安定的に増やすには、大学での研究職を増やすしか手がない。その意味だけでも52年間も新規参入を拒んできた今日までの規制は不合理だ。
実際、現時点で既に、獣医学部は、前川喜平の主張とは反対に、志望者の需要を満たしていない。
現在、国が定める獣医師の定員は1学年930名である。昭和50年の文科省告示で提示されて以来変わっていない。
ところが、2017年7月10日の国会閉会中審査で自民党の青山繁晴議員が明らかにしたところによれば、現在、獣医学部の学生数は約1200名で、告示で固定された定員に対して23%もの水増し入学が横行しているというのだ。青山繁晴議員は言う。
<実は現場の方々に随分尋ねてきました。そうしますと、例えば、教室に入りきれない学生が廊下に溢れて、授業を一種見学している、覗き込んでいるという実態もある。一番大切な実習も、実は背後から覗くだけという状態が、これ大学によって変わりますけれども、起きている所がかなりあると>
ところが、メディアはこうした事実を全く伝えず、大都市部のペット病院が余っているというような事例ばかりをこの数カ月伝えてきた。
大都市部の富裕層を相手にするペット病院は高収入を見込めるため、獣医師免許を取得した人が、都市部で開業したがり、過剰になっている地域があるのは確かだ。一方、産業獣医は公務員規定による給与となる。新型の感染症を扱ったり、大型動物を扱うなど、危険度や難易度が高いにもかかわらず給与が低いため、志望者が少ないのが実情だ。
このアンバランスは、今後日本に深刻な問題を齎す可能性が高い。
鳥インフルエンザは、鳥から鳥にだけ伝染していた状態から、鳥から人へ、更に人から人へと伝染する事態に進展し、死者も既に出ている。内閣官房の「新型インフルエンザ等対策室」によれば、これまでに感染が確定した人の数は1557名、うち死亡者数は605名(致死率約39%、WHO発表、平成29年8月24日時点)である。平成28年末から中国における感染者の急増がみられ、発生規模も拡大している。日本でも同時期に、9道県の12農場で鳥インフルエンザが発生し、約167万羽を殺処分している。感染が拡大しないように、その都度少人数で奔走しているのが公務員獣医師で、全国的に深刻な不足状況に陥っているのが実情だ。
牛や豚などの口蹄疫は宮崎県で平成22年(2010年)に大発生した。同年4月頃に発生してから8月27日に終息宣言が出されるまでの間に、29万7808頭が殺処分された。畜産関連の損失額は1400億円、関連損失は950億円に上った。
加戸守行・前愛媛県知事にとって、獣医学部誘致の特に切実な動機は、この宮崎県での口蹄疫による酪農業壊滅だった。
<2017.7.16 16:00更新
【加計学園問題】 産経新聞
加戸守行前愛媛県知事インタビュー「国会は何を議論しているんだ? このバカ野郎!」「役人の矜持はどこへ行った?」
http://www.sankei.com/premium/news/170716/prm1707160032-n1.html
平成22年に宮崎県で口蹄疫が発生した際には愛媛県の港に検疫態勢を取り、入県する車と人は全部消毒し四国への上陸を阻止した。全員が不眠不休でやったが獣医師が足りないから(民間の)ペットの獣医師まで動員して助けてもらった。あのときほど獣医師がほしかったことはなかった。もう一回、口蹄疫が来たらみんなぶっ倒れますね。>
■獣医学関係大学設置状況(平成28年度全国大学一覧を基に作成)
「●国立大学○公立大学□私立大学」
【北海道】
●北海道大学獣医学部(40名)
●帯広畜産大学畜産学部(40名)
□酪農学園大学獣医学群獣医学類(120名)
【東北】
□北里大学獣医学部獣医学科(120名)
●岩手大学農学部(30名)
【関東】
●東京農業大学農学部(35名)
●東京大学農学部獣医学科課程(30名)
□日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科(80名)
□日本大学生物資源科学部獣医学科(120名)
□麻布大学獣医学部獣医学科(120名)
【東海】
●岐阜大学応用生物科学部(30名)
【近畿】
○大阪府立大学生命環境科学行域獣医学類(40名)
【中国】
●鳥取大学農学部(35名)
●山口大学獣医学部(30名)
【四国】
無し
【九州】
●鹿児島大学獣医学部(30名)
●宮崎大学農学部獣医学科(30名)
元々獣医学部は極端な東高西低で、文科省による定員は東日本が10学部735名であるのに対して、西日本は6学部あるものの学生数は195名に過ぎない(平成28年度獣医学系大学設置状況図参照)。近畿から中国地方にかけての広域を見ても大阪府立大の定員40名と鳥取大学35名、山口大学30名など、微々たるものだ。
その上、四国はゼロである。
四国は、獣医師1人当たりの受け持ち頭数が家畜・犬共に最も多い。愛媛県はとりわけ獣医師が不足しており、地元に就職することを条件に学資援助する制度があるが、愛媛県はこの制度の活用が全国で3番目に多く、現在9名が対象となっている。
さらに、四国に獣医学部が1つもないといことは、四国全域に予算規模の大きな動物病院や研究・実験施設がないことを意味する。地方自治体が国と連携して感染症対策を打ちようがない。いざという時の水際作戦も外から要員を借り受けるだけで、継続性を確保できない。獣医師養成や配置を自立的に計画・誘導できない。
こうして四国全体に獣医師が不足していることが統計的・実態的に明らかな上、数十kmの海を隔てた宮崎県での口蹄疫問題に晒された愛媛県が、獣医学部を自県に作りたいという希望は、そんなにも難癖をつけて阻止しなければならない話なのか。
しかもそれだけではない。
加戸守行・前愛媛県知事には更なる大きなヴィジョンがあった。
<【閉会中審査=参院=詳報(5)】
加戸守行氏「『加計ありき』と言うが…12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけ」「東京の有力私学は、けんもほろろでした」
http://www.sankei.com/politics/news/170711/plt1707110010-n1.html
単に獣医学部ということでなくて、アメリカに見習って、先端サイエンスなり、あるいは感染症対策なり全てが国際水準に負けないような新たな分野に取り組む獣医学部として、国際的にも恥ずかしくない拠点にもしたい。
アメリカに、あるいはイギリス、ヨーロッパに10年遅れていると私は思います。10年の後れを取り戻す大切な時期だと、そんな思いできょう、参上させていただいたわけでありまして、そのことがらはそんな意味での地方再生、東京一極集中ではなくて、地方も頑張るんで地方も国際的拠点になり得るんだよと。そういうもののモデルケースとして、愛媛県の、今治の夢を託している事業であって、『加計ありき』と言いますけど、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけであります。
私の方からも東京の有力な私学に声をかけました。来ていただけませんかと。けんもほろろでした。結局、愛媛県にとっては12年間加計ありきでまいりました。いまさら、1、2年の間で加計ありきではないのです。それは愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に詰まっているからでもあります>
今治市は申請時に新設獣医学部の特徴として、次の4項目の具体的な構想を表明した。
・動物からヒトへ(医学と獣医学の融合)
・グローバル対応:国際的な獣医学教育拠点の整備
・ローカル対応:危機管理学術支援拠点・ゾーニング
・ライフサイエンスと公共獣医事に重点:第3極の獣医学教育拠点
医学と獣医学の連携が世界的に進む中、日本の現状は規制による閉鎖性が著しい。畜産物の輸出に際しての信用を担保する国際的な獣医学部の創立は、国としても必要であり、ライフサイエンスや試薬の開発も新たな可能性のある分野である。さらに、絶滅危惧種や環境保護生物の保護も、獣医学部の新設がない中で、日本は立ち遅れている。環境問題が叫ばれて久しいが、動物の生態の研究を医学の立場から強化しようにも、獣医学部の現状では対応困難なのだ。日本の医学部は世界的な先端性を一定程度確保しているが、獣医学部は国際的にみて余りにも貧弱で、専門家らによれば「絶望的」なまでに遅れているという。
こうして前川喜平が認可できないとしてあげた理由は全て否定されているのである。
第1に、人材需給上、獣医学部そのものも獣医師も必要であり、四国にとってはとりわけ喫緊の需要があるのである。
第2に、農水省や厚労省と獣医学部の新たな分野での新設について協議していないとすれば、それは関係省庁側の怠慢なのである。
第3に、加計学園は、4条件を満たしていないと前川喜平は主張しているが、全て満たしていると解せる。なぜなら、四国に新設する事自体が「@現在の提主体による既存の獣医師養成でない構想」であり、「B既存の大学・学部では対応が困難な場合」と言える。また、「Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野」を担うというヴィジョンを今治市提案は打ち出している。
これだけ合理性と切迫性に富む、加戸守行・前愛媛県知事を主体とした今治市の獣医学部新設提案であるにもかかわらず、実は同市からの提案は、この10年間で15回申請を拒絶されてきた。
一体どうしてここまで阻まれ続けたのかー我々はむしろそちらの方を問わねばならないのではないだろうか。

◆新設へー日本獣医師会との長い闘い
今治市の獣医学部新設の要望は、平成19年(2007年)、福田康夫政権における構造改革特区の要望から始まる。
申請は15回なされ、毎回却下され続けた。
なぜか。
文科省の規制の為である。
昭和50年(1975年)の文部省告示で、獣医学部定員が930名に固定されている上、平成15年(2003年)には獣医学部新設を差し止める文科省告示が出ている。この2つの告示を盾に、文科省は長年、獣医学部新設を頭から拒絶してきたのである。
その為、福田政権であえなく申請が却下されて以来、加計学園の獣医学部新設は、苦難の道を歩むことになった。
驚くべきことに、今回加計潰しに狂奔し続けた民進党=民主党の鳩山由紀夫政権時、枝野幸男が担当大臣の時に初めて、この事案が検討対象となる。
残念ながら、それが元の木阿弥に戻ったのは第2次安倍政権だった。
麻生太郎、石破茂ら、安倍政権下での有力閣僚が日本獣医師会と近かったことが理由と推定される。
日本獣医師会会長の蔵内勇夫は自民党福岡県議会議員の実力者で、麻生太郎と懇意である。
また、日本獣医師政治連盟委員長の北村直人は元自民党衆議院議員で、石破茂と親密な友人だ。
自民党には、各分野ごとに、業界と政治が組んで霞が関に圧力をかけ、かつ既得権益を守る為、新規参入者を阻む仕組みが存在する。
政ー官ー民の強固な基盤が利権で結び付くことは、全面的に否定さえるべきではない。過度な競争と新規参入は、価格破壊や業界倫理の破壊、流動的で不安定な職場環境や低賃金を招く。既得権益は一定範囲内ならば、業界安定の基盤たり得るのである。
だが、弊害も大きい。
業界団体は多年の自民党政権下、有力な族議員に参入規制を陳情し、議員は監督官庁に圧力をかけて、規制を作らせてきた。この規制によって業界は既得権益を保護され、その為に動いた議員には様々な利権が供される。官僚はこの仕組みに積極的に参加することで天下り先を確保できたわけである。この規制の合理性が極度に乏しい場合、既得権益は大きな害悪となる。
昭和50年(1975年)の定員930名の文部省告示と平成15年(2003年)の新設不可を示す文科省告示は、合理性なき規制の典型と言えよう。加計学園の申請が却下され続けきた事を以てもそれは分かる。
それに対して、政ー官ー民の過度の癒着、過度な規制を「岩盤規制」と呼び、国家戦略特区を発足させて、これの打破を掲げたのが第2次安倍政権である。
「特区」とは「経済振興や地域活性化を目的に、区域を限って減税や助成金、規制緩和などの優遇・支援措置を認める仕組み」である。
これまで実施されてきたものには、小泉政権時に作られた「構造改革特区」や、民主党・菅直人政権時代の「総合特区」がある。
構造改革特区は、自治体や企業、NPOなどの提案に基づき、国が認定する方式を採用しているが、従来の規制の弊害を大きく改革することはできなかった。
そこで安倍政権では、構造改革特区制度を継続する一方で、国が自ら主導して規制緩和に取り組むことで「世界で一番ビジネスのしやすい環境」を作り、国際競争力の強化と経済成長を強く促す「国家戦略特区」を発足させた。
その際、従来の構造改革特区が、規制省庁の抵抗(岩盤規制)を大きく打破できなかった点に鑑み、国家戦略特区では、規制の根拠の説明責任を官庁の側に全面的に負わせることにした。規制に関わるロジックを完全に従来と逆転させたのである。
国家戦略特区に新規参入希望者が申請すると、監督官庁の側が、規制がなぜ必要かを説明しなければならなくなる。「初めに規制ありき」が通用しなくなったのである。監督官庁の課長に始まり、国家戦略特区のワーキンググループ(WG)が説明に合理性が不足すると判断した場合、順を追って上級職に説明者の格を上げてゆき、最終的には月1回開かれる国家戦略特区諮問会議で、大臣が総理の前で規制の理由を説明しなければならない。官庁にとっては業界団体や族議員との板挟みになる、大変頭の痛い制度なのである。
この国家戦略特区への獣医学部申請は、実は今治市の前に、新潟市からあった。
平成26年7月のことだ。これを受けて国家戦略特区ワーキンググループは翌年2月3日まで5回にわたる文科省等との折衝を行った。平成27年2月3日のヒアリングで、八田達夫委員が「新潟に関しては今すぐ決めてしまいましょう。それでまず先駆けにしMしょう」などと発言するなど、国家戦略特区ワーキンググループ自体が非常に積極的だった。ところがその後、新潟市からの具体的提案は進まない。
<肝心の大学(新潟食料農業大学、平成30年(2018年)開学予定)がついてこず、具体化しませんでした」(原英史委員 インターネット放送「言論テレビ櫻LIVE」より)。
新潟市が挫折した後だっただけに、今治市による平成27年(2015年)6月の提案には国家戦略特区の期待も大きかったであろう。
6月5日には、国家戦略特区ワーキンググループで提案に対するヒアリングを行い、6月8日には、各省庁ヒアリングで、文科省、農水省が提案に対する見解を述べることになった。
これらの議事録を読むと、両省担当者とも、獣医は足りており、新分野には旧来の獣医学部で全て対応できるとして、新設不要を示唆する答弁に終始しているのが興味深い。
しかも、その答弁の中には看過できない点がある。
■北村専門教育課長
<文部科学省と致してましては、愛媛県・今治市より、既存の獣医師養成でない構想が明らかになり、そのライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになった場合には、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ、特定地域の問題としてではなく、全国的見地から検討を行う必要があると考えています。>
まず第1に、挙証責任が逆になっている。
国家戦略特区では、規制官庁の側が、規制の必要な理由を説明する責任があるのに、北村は逆に今治市に需要の挙証を求めている。実はここだけではない。全ての議事録を通じて、文科省も農水省も新設不可の数値的根拠を1度も説明していないのだ。一方、今治市側が申請時に4項目の具体的な構想を表明している。
今引用した北村の発言は石破4条件に文言まで共通する。
石破4条件が閣議決定されるのはこの20日余り後の6月30日である。閣議決定前に、文科省の担当者がこの4条件を盾に新規参入を拒む立場で省庁ヒアリングに臨んでいるのは、看過できなぬ情報漏洩ではないか。
日本獣医師会から、4条件を盾に申請を跳ね除けるよう強い圧力があったと推測できる。それというのも、この省庁ヒアリング直後の、平成27年(2015年)6月22日の日本獣医師会の理事会議事録には、獣医学部新設を巡る生々しい政治的攻防が語られているからだ。この議事録は、平成29年8月下旬以後、日本獣医師会のホームページから平成27年以後の議事録のリンクが削除され、現在閲覧できない。

<■日本獣医師会平成27年度第2回理事会
日時:平成27年6月22 日(月)10:30〜12:00
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06808/a3.pdf
2 そ の 他
日本獣医師政治連盟の活動報告
(1)北村日本獣医師政治連盟委員長から次のとおり説明がなされた.内閣府が取り組んでいる成長戦略特区については,構造改革特区は文部科学省が窓口であるが,成長戦略特区は内閣府が窓口だとして,今回は静観している.いずれにしても特区設置の際は,文部科学省が担当することになるが,これまでの獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議においても特区にはなじまないという結論である.
■北村
内閣府では,4 月末から6 月5 日までの間,成長戦略特区の公募をしていたが,愛媛県今治市に新設を望む岡山の学校法人が文部科学大臣にも説明をし,内閣府に申
請したという.藏内会長は麻生財務大臣,下村文部科学大臣へ,担当である石破大臣へは私が折衝を続けている.内閣府では,方針の最終案を公表していないが,藏内会長の強い政治力等により,財務省の担当主計官が文部科学省担当官へ対応のあり方を指摘した.石破大臣は,ライフサイエンスなどは獣医師が新たに対応すべき
分野なのか,その需要があるのか,これら基礎データが示されなければ検討できないとしている.しかし,新設希望側は,5〜10 年間の計画でデータを作り上げるこ
とも視野に置きながら,藏内会長は麻生大臣,下村大臣に,私は石破大臣と折衝をし,一つ大きな壁を作っていただいている状況である.
まず,既存の獣医師養成でない構想が具体化すること,次にライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること,さ
らに既存の大学で対応が困難であることの3 つの壁をクリアして初めて,獣医師の需要の動向を考慮しつつ,全国的な見地から平成27 年度中に検討を行うというスケジュールとなる.内閣府としては平成27 年度内に規制緩和を実施し,数字を残したいという思いがあり,文部科学大臣も官邸も同様の意向である.今後も強い政治力により,この3 つの壁を突き崩すよう論議が展開されることも想定され,気が抜けない状況である.藏内会長も私も進退をかけるくらいの覚悟を持っている.
本日,総会の新役員の選定の間に藏内会長の許可を得て,会場の皆さまに共通した認識だけは持っていただくよう説明をさせていただく予定である.
(2)藏内会長から次のとおり補足説明がなされた.
■蔵内
北村委員長の説明のとおり,きわめて厳しい攻防が連日続いており,委員長をはじめ,政治連盟の役員の方々には,毎日,官邸をはじめ,さまざまな情報をいただき,ともに対応してきた.
先ほどの方針の原案はきわめて厳しいもので,「獣医師養成系大学学部の新設に関する検討.既存の獣医師養成とは異なる獣医師養成系大学学部の新設については,食の安全や人獣共通感染症への国際的対応等の公共獣医師や,応用ライフサイエンスなど,獣医師が新たに対応すべき分野への対応を含め,近年の獣医師の需要の動向や,全国的な影響等を勘案しつつ,検討し,速やかに結論を得る」と記載されており,北村委員長の努力により,石破大臣等からいくつかの規制がかけられた.また麻生財務大臣も財務省経由で文部科学省に強い対応を求めている.基本的に文部科学省も農林水産省も本件に反対であるが,官邸の成長戦略特区を審議するグループが政治的な力を働かせている.要は日本全国での大学新設希望は,この学校法人だけとなり,新たに今までの大学,あるいは今までの獣医師で対応できないような新たな分野,たとえばライフサイエンス等の分野に獣医師の必要性が生じて,既存の獣医学教育の中では対応できないのであれば検討するという解釈である.なお,農協改革で全中の萬歳会長が辞任をされたが,まるで全中は農協改革に抵抗しているように,マスコミを使って悪者にされたのと同様,われわれが大きく反対を表明すると,政治力を使って獣医師に対する悪い風評を流し,獣医師会を悪者にすることも考える必要がある.そのため大学関係者がしっかりと大学での教育は充足しているので,新設には反対する等を明確に表明するとともに,獣医学関係者が獣医師の需給は十分足りていること,たとえば獣医師が地方公務員を志向しないことは,処遇の問題である等を訴えることが重要である.われわれも何十年という時間をかけて獣医学教育の整備,充実に取り組んできたことを理解してもらう必要があり,医師会も新しい医学部の新設に反対をしていることから,できれば医師会との情報交換も行い,場面においては共闘も考慮すべきと考える.
近々,方針の原案が発表されると思われるが,その結果によってきわめて厳しい状況も予測され,少なくともわれわれ,日本獣医師会の中から異論が出ないよう認
識を共有することが不可欠である.>

「はじめに新規参入拒絶ありき」で、獣医界のトップ2が、麻生、石破、下村ら有力議員を口説いて歩いていたというのである。
省庁ヒアリングで農水省や文科省の課長が、新設推進派の委員らを前に及び腰だったのは当然だろう。
そしてこの理事会の8日後の平成27年6月30日、北村から強い要請を受けていた石破茂は「日本再興戦略」の閣議決定に、4条件を潜り込ませることに成功する。
石破4条件を再掲しよう。
<@現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、B既存の大学・学部では対応が困難な場合には、C近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う>
建前は新規参入の為の合理的な条件を装ってはいる。先に、加計学園の提案が4条件をクリアしているという理屈は私も示した通りだ。
しかし、この4条件は新規参入を拒む盤石の屁理屈にも使えるのである。
「具体的な需要が明らかになり」というが、新分野での「需要」は確定的には示せない。コンビニエンスストアという新分野にセブンイレブンの創業者鈴木敏文がチャレンジした時、「具体的な需要」を明らかにはできなかった。誰もが鈴木の構想を冷笑した。最初期の携帯電話は巨大サイズで高額だった。その段階で「具体的な需要」など明らかになるはずもない。この文言は尤もらしく言辞を飾りながら新分野の開拓・参入を拒む底意ある文言なのである。そして、この文言と「既存の獣医師養成でない構想」「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という条件が組み合わされば、全ての新規参入を拒む口実になる。
なぜか。
Aの「新たな分野」は、厳密に言えば、事前に具体的な需要を明らかにはできない。これは「新たな分野」の提言を拒絶する口実となる。ところが、逆に、条件の@とBによれば、既存の大学では対応できない「新たな分野」へのチャレンジでなければ認可できないことになっている。つまりAを満たせば@Bは満たせず、@Bを満たせばAを満たせていないと突っぱねられる。4条件そのものが、こうした論理矛盾によってあらゆる新規参入を拒むトリックだったのである。
事実、北村によれば、この平成27年6月30日の閣議決定後、石破と北村、蔵内は次のような意見交換を行っている。
<日本獣医師会平成27年度第4回理事会議事録
日時:平成27年9月10日(木)14:00〜17:00
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06811/a2.pdf
2 そ の 他
日本獣医師政治連盟の活動報告
北村委員長から,日本獣医師政治連盟は,6 月22 日の役員改選以降,北村委員長,鳥海副委員長,篠原幹事長,境会計責任者という布陣で発足したことが報告された.
さらに政治連盟は年度が1〜12 月であるため,10 月2 日の第3 回役員会が新役員による初の役員会となるが,7 月1 日には,日本獣医師会と連名で自由民主党の動物愛護推進議員連盟の総会の席上,マイクロチップ推進の要請書を正式に提出する等活動を進めている.続いて8月25 日には,平成28 年度の農林水産関係予算についての団体要望並びに平成27 年度農政推進協議会総会に出席したが,次年度は獣医師関連の税制改正要望はなく,予算概算要求も農林水産省担当部局で確保されており,これを応援するという対応とした.以降,衆参国会議員,特に獣医師問題議員連盟所属議員のセミナーに出席した.
なお,昨日,藏内会長とともに石破茂地方創生大臣と2時間にわたり意見交換をする機会を得た.その際,大臣から今回の成長戦略における大学,学部の新設の条
件については,大変苦慮したが,練りに練って誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした旨お聞きした.このように石破大臣へも官邸からの相当な圧力があったものと考える.しかし,特区での新設が認められる可能性もあり,構成獣医師にも理解を深めていただくよう,私が各地区の獣医師大会等に伺い,その旨説明をさせていただいている.
秋には内閣改造も行われると聞いており,新たな動きが想定されるが,政治連盟では,藏内会長と連携をとりながら対応していくので,各位のさらにご指導をお願い
したい旨が説明された.>
<2017.7.17 01:00更新
【加計学園 行政は歪められたのか(上)】
新設認めぬ「石破4条件」は獣医師会の政界工作の「成果」だった! 民主党政権でも献金攻勢…
http://www.sankei.com/premium/news/170717/prm1707170008-n1.html
石破自身は最近この発言が報道された後、発言そのものを否定しているが、それならば、北村は理事会で虚偽を語ったことになる。日本獣医師会も日本獣医師政治連盟も、事柄を精査して、正式な報告を出すべきではないか。
こうして、日本獣医師会は石破を使って、規制突破を目的とする国家再興戦略に規制強化の一文を入れることに成功した。
深刻なのは、この当時、石破が安倍内閣の地方創生担当大臣だったことだ。まさに規制緩和の担当大臣である。その石破が、安倍政権の政治意図に真っ向から反して、業界団体の「ご意向」のまま、岩盤規制を強化する側に回っていたわけである。
石破を信任した安倍首相及び安倍内閣=国民の負託への背信ではないか。
そしてまた、石破こそが、業界保護のために閣議決定の方針を密かに裏切り「行政を歪めて」いたことになる。
ところが、日本獣医師会が、石破の「練りに練った文言」に安心したのも束の間、この10月の理事会の後、話は前に進んでしまう。
平成27年12月15日、国家戦略特区諮問会議において、今治市、広島市が国家戦略特区指定を受けたのである。
ちなみにこの国家戦略特区の達成目標は「『しまなみ海道(西瀬戸自動車道)』で繋がる広島県と今治市において、多様な外国人材を積極的に受け入れるとともに、産・学・官の保有するビッグデータを最大限に活用し、観光・教育・創業などの多くの分野におけるイノベーションを創出する」という大規模なものだ。グローバル企業の参入や、地場製造業の活性化、観光での先進的な「自治体間連携モデル」の推進が総合的に目指されている。
だが、獣医学部新設は岩盤規制突破の象徴として、国家戦略特区民間有識者委員の間では強く意識されていた。
竹中平蔵は、この日の会議で次のように発言している。
<考えなくてはいけない問題として、地理的分布、ジオグラフィック・ディストリビューション。今まで中国・四国に特区はなかったわけでありますので、その点についても今回新たに入るということは意味があること。広島、今治が入るということだと思います。
今回、その中でとりわけ獣医学部等々を含むライフサイエンス系の問題にこの地域が取り組もうとしているところは、私は高く評価すべきであろうかと思います。この問題は成田で38年ぶりに医学部ができる。これは大変大きな話題、アベノミクスが進捗している象徴になったわけですけれども、獣医学部に関しては、それを上回る47年間新しいものがない。かつ、昭和50年、つまり約40年前から定員が増えていない。これは驚くべきことだと思います>
当初から国家戦略特区民間有識者委員の間で、獣医学部新設が異常な規制だと認識されており、突破の積極的な意思が寧ろ彼らにあったことが読み取れる。
一方、日本獣医師会は強い衝撃を受けた。
会議3日後の平成27年(2015年)12月18日、日本獣医師会の会長蔵内は日本獣医師会会報のエッセー「春夏秋冬」にこう書いた。
<会長短信「春夏秋冬(29)」
「驚きのニュース」
http://nichiju.lin.gr.jp/aisatsu/shunkashuutou/log29.html
12月15日(火)の昼、耳を疑うような驚きのニュースが飛び込んできました。  午前中に開催された国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区3次指定が決定されました。全国16の獣医学系大学、日本獣医学会、日本獣医師政治連盟、本会等が揃って長年にわたり設置に反対してきた獣医師養成系大学・学部の新設案件です。このような情報は、先週、北村政連委員長のご尽力により入手はしていましたが、事実か否か疑う余地もありました。本件については、本年6月30日に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2015」において、「M獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」として特区指定の候補とされました。しかし、検討に当たっては次の4条件が明記されていました。@現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化 Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること B既存の大学・学部では対応が困難な場合 C近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討  このように大きな壁が4つもあるため、実質的に獣医学系大学の新設は困難であると考えていました。しかし、今回は、このような条件について検証することなく、特区指定が決定されました。その記載内容は、「〈教育〉国際教育拠点の整備(獣医師系(ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野))」というものです。  今後は、提案主体である学校法人等が、内閣府、文部科学省等と具体的な区域計画等について協議を進めていくことになります。その協議過程においては、上記の4条件や大学・学部の設置基準等への適合状況等について審査が行われるものと見込まれます。獣医学系大学、政連等における獣医学部新設反対の活動は、これからが本格的な山場に入ったとも考えられます。そして更に注意を要することは、本件を契機として次々と設置申請が認可されることは、何としても阻止しなければなりません。>
繰り返し書いてきたように、国家戦略特区は、規制官庁側に説明責任がある。農水省、文科省とも、1年間、具体的な規制理由を全く説明できなかった。そうである以上、国家戦略特区ワーキンググループ側が申請を拒絶する理由はなくなる。石破4条件の手の込んだ屁理屈など、規制突破を目的とした国家戦略特区の委員らにはまるで関心がなかったろう。日本獣医師会は、石破の政治力や4条件を過大評価していたのである。
こうして、翌平成28年(2016年)の1月29日、広島県、愛媛県今治市=加計学園の獣医学部構想が国家戦略特区に指定された。
農水省と文科省にとっては面倒な局面に入ったことになる。
日本獣医師会は「獣医学部新設反対の活動は、これからが本格的な山場に入った」と改めて圧力を掛ける気満々だ。
その圧力を受けてであろう、平成28年(2016年)の1月29日の国家戦略特区指定の後も、農水省、文科省には全く動きが見られず、時間だけが過ぎてゆく。「総理の意向」など薬にしたくもない露骨なサボタージュが続くのである。
こうして初回ヒアリングから1年以上も経った平成28年(2016年)9月16日、年度を大きく跨いでようやく国家戦略特区ワーキンググループ関係省庁ヒアリングの第2回会合が行われた。
まず、会合冒頭、文科省文書で「官邸の最高レベル」発言の主と擬されている藤原豊審議官から発言がある。
国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf
1 日時 平成28年9月16日(金)14:12〜14:34
■藤原豊審議官
<去年の成長戦略の中でこの問題につきましては政府決定をしておりまして、当時、本年度中(平成28年3月まで)に検討ということなので少し時期をもう越えておるのですが、関係省庁とともに政府として宿題を負った形になっているというのがポイントでございます。>

総理の意向で行政が歪められたのではない。圧力団体の暗躍や関係省庁のサボタージュで、平成28年(2016年)3月までの年度内と決められていた事案の検討が、9月まで持ち越されていたのだ。藤原豊審議官はそこを指摘しているのだ。
また、藤原豊審議官は次のようにも発言している。

■藤原豊審議官
<先週金曜日に国家戦略特区の諮問会議が行われましてまさに八田議員から民間議員ペーパーを御説明いただきましたがその中で重点的に議論していく項目の1つとしてこの課題が挙がり総理からもそういった提案課題について検討を深めようというお話もいただいておりますので少しそういった意味でこの議論についても深めていく必要があるということで今日はお越しいただいた次第でございます。>

何の事は無い。議事録に「総理の意向」が出てくるではないか。藤原豊審議官はこういう物の言い方をする癖があるとの関係者の証言は多い。公式の場でも口にするような裏の無い意味で、サボタージュする関係省庁に発破をかける時、「総理」を口にするのは藤原豊審議官の常套手段だったのだ。
この会合は、国家戦略特区ワーキンググループ座長の八田達夫・大阪大学名誉教授と委員の本間正義・東京大学大学院農学生命科学研究科教授が、強く獣医学部新設の必要を主張し、浅野敦行・文部科学省高等教育局専門教育課長と磯貝保・農林水産省消費安全局畜水産安全管理課長がのんべんだらりな消極姿勢を示して、頭ごなしにやっつけられるという構図である。
例えば、農水省の磯貝保は「産業動物、家畜の数というのは需要が伸びていた時代と違いまして需要自体も減ってきていて減少している。また、ペットのほうもある程度飽和してきて犬の数が減ってきているという実態があるという認識をしている」と発言し、需給バランス上で新しい獣医学部認可に反対であるとことをほのめかす。すると本間正義が反論する。

■本間委員
<その意味では、つまり、獣医師の試験を受けようか、受けないで別のところの職場に行こうか等々は、まさにそういうことのマーケットを踏まえて受験生が決める話であって、そこは定員管理で縛る話ではないと思います。>

一方、農水省と文科省が獣医の需要が足りていると主張したがることに対して、八田達夫は、具体的な計測はしてるのかと繰り返し問うが、2人はいつもはぐらかす。そこで、そこまで需要が足りているというなら「獣医師が新たに必要な分野における研究者の需要を計測すべき」ではないかと八田達夫が畳みかける。すると、浅野敦行は次のように逃げを打った。

■浅野課長
<恐らくこれは文科省だけでは決められないと思いますので、きちっとしかるべく多分政府全体として、需要と供給の問題も全く関係ないわけではありませんので。>
■八田座長
<それは関係ないでしょう。文科省は研究が必要かどうか、その観点からやるから文科省に権限があるので、実際の人たちの損得を斟酌するなどということはあり得ないでしょう。文科省は研究の必要性、ちゃんと需要が十分ある研究者を養成するということが必要なら、それは当然やるべきではないですか。ほかのところを見る必要などは何もないでしょう。>
■浅野課長
<ただ、獣医学部を出た卒業生は、獣医師国家試験の受験資格が与えられますので、当然そこの需給の問題というのはかかわってくる。>
■八田座長
<それは先ほど本間先生がおっしゃったように、その能力があるかどうかを検査すべきで、そこで仮に数が多過ぎて競争によってだめな獣医師が退出して、優秀な獣医師に置きかえられるのは大いに歓迎するべきことです。実際問題として、今、例えば日本はバイオに関する研究者はすごく不足しています。医者が制限しているため不足しているので、結局、理学部の出身の人がバイオ研究を支えているわけですけれども、獣医からも来てほしいわけです。日本のバイオの研究の根底がそういう、医学部や獣医学部の既得権を持った人による供給制限で押さえられているわけです。文科省はそんなところを見るべきでない。やはり日本の研究水準を上げることを第一に考えられるべきではないでしょうか。>
■本間委員
<私も全く同じこと。繰り返しになりますけれども、要するに獣医師が増えるか増えないかということは文科省のマターではないということです。いみじくもライフサイエンスという言葉を使っているわけですから、これは医学、獣医学、理学、薬学等がまさに一体となって、これまでのような縦割りあるいは枠ごとのサイエンスで中でやっていくというのではなくて、相互にコラボレートする必要があるので、その中で獣医学を考えていかないと、今後の日本の獣医学そのものが相当に遅れてしまうという懸念も持っています。ぜひそこは枠を超えた形で、定員管理の話は別の話として、ないしは考慮に置かずに日本の研究レベルを上げるという観点からぜひ御検討いただきたいと思います。>

これに対して農水・文科両省担当課長は、獣医学部新設を認可できないという説得力ある反論を全く示せなかった。
この段階でさえ規制の必要を証明できなかった以上、文科省は最早獣医学部新設から逃げることはできない。石破4条件には、条件が満たせた場合には「本年度内に検討を行う」とある。逆に、最速で事を進めなければならなくなったのだ。

◆さて、前川喜平は何をしていたのか?
ではこの間、前川喜平は何をしていたのか。
何もしていなかった。
前川喜平は、事柄が劇的に動き始める2016年9月16日の国家戦略特区ワーキンググループ会合直前の9月9日、和泉洋人首相補佐官に呼び出され、「総理は自分では言えないから自分が総理に代わって言う」と言われたと証言していた。
密室で相手に何を言われたかを、公的な事案に際して持ち出すのは、嘘つきか卑怯者のやることだ。しかも参考人質疑での前川喜平と和泉洋人首相補佐官のやり取りから、全ては前川喜平の頭の中での連想ゲームに過ぎなかったことが判明したのである。

2017年7月24日衆院予算委員会の集中審議
■前川喜平参考人
(2016年)9月9日と記憶しておりますけれども、和泉総理補佐官から、国家戦略特区における獣医学部の新設について文部科学省の対応を早く進めろ、こういう指示をいただきまして、その際に、総理は自分の口からは言えないから代わって私が言うんだ、こういうお話がございました(略)
■和泉洋人参考人
今おっしゃった、総理が自分の口からは言えないから代わって私が言う、こんな極端な話をすれば私も記憶が残っております。そういった記憶が全く残っておりません。したがって、言っておりません。(発言する者あり)言っておりません。(略)一般論として、スピード感を持って取り組むことが大事だと言ったわけでございまして、具体のことについて、加計学園等については一切触れておりません。
■小野寺委員
和泉参考人にもう1つお伺いいたします。
今、一切そういう話はしていないということですが、総理と加計学園の理事長が親しい関係にある、友人であるということは、その当時、知っていらっしゃいましたか。
■和泉洋人参考人
週刊誌の記事などでそういった話を見たかもしれませんが、加計学園の理事長と総理が友人であるということを明確に認識したのは、3月にこの問題が報道で報じられて以降でございます。(略)
■小野寺委員
それでは、当事者の前川参考人にお伺いしたいと思います。
先程、9月9日に和泉補佐官からのお話があったということですが、その際、具体的に、加計学園とかそのような具体例のお話はあったんでしょうか。
■前川喜平参考人
(略)その時、既に私としては、総理と加計理事長とが御友人であるということは認識しておりました。また、加計学園が今治で獣医学部を作りたいという希望を持っているということも、担当課から説明を受けて聞いておりましたので、知っておりました。
したがいまして、私は、総理が自分の口からは言えないからというお言葉を聞いた時に、これは加計学園のことであると確信した次第でございます。(発言する者あり)

要するに、加計学園については和泉洋人首相補佐官の口から出ておらず、前川喜平が総理と加計学園理事長が友人だから、和泉洋人首相補佐官はその事を言いに来たと勝手に想像しただけだったのである。
ところで、和泉洋人首相補佐官も知らなかった安倍首相と加計学園理事長の友人関係を、なぜ、前川喜平は知っていたのだろう。

<総理と加計理事長とが御友人だということは、私は8月の終わりごろに担当課から説明を受けた際に聞いた覚えがございますが、今ご指摘の写真は、これは10月の半ばごろに私は拝見いたしました。
これは、私は出席しておりませんでしたけれども、獣医師会の皆様方が大臣のところに要請に見えた際にお持ちになったというふうに理解しております。(略)どうしてこの写真をお持ちになったか、その獣医師会の意図はわかりませんが、私としては、この写真を見て、総理と加計理事長との間柄が極めて親密であるということを理解したわけでありまして(略)。
(2017年7月10日閉会中審査議事録24頁下段から引用)>

これ又、つくづく奇妙な話である。
日本獣医師会は、加計学園による獣医学部新設に執拗に反対してきた。その人たちが獣医学部新設の許認可官庁のトップである文科大臣に、加計学園と安倍首相が一緒に写っている写真を資料として見せている。一体どういうつもりだったのだろう。
松野大臣や文科省に対して、安倍首相と加計理事長の親密な関係を見せて、安倍首相が情実で事を進めていると仄めかし、不正な案件だから認可するなと誹謗中傷したのではないか。
蟹は甲羅に似せて穴を掘る。
加計理事長が総理の友達で、それゆえにこの事業自体が、個人的な情実絡みだという筋立ては、日本獣医師会が作り出し、前川喜平もそうした一連の連想の中で、この事案そのもに極力関与せずに傍観を決め込んでいたのである。
義家弘介副大臣の発言を聞いてみよう。
<当時私は副大臣でしたが、実際担当課は途方に暮れていました。どうしよう・・・。報告しても上の空の前川さんを当てにできない状況でしたから、連日私の所に2度3度来て、農水省を議論の土俵に乗せて下さい。厚労省を何とかしてくださいよ、と。そこで私が動いたペーパーが、あの義家ペーパーなんですね>

前川喜平が仕事をしていれば、あの「文科省文書」など存在しなかったのである。前川喜平自身が事務方を動かして関係省庁と連携し、自ら文科省の見解を国家戦略特区の委員に説得していれば、前川喜平に報告する担当課文書が作成される必要はなかったからだ。
前川喜平は和泉補佐官から国家戦略特区の意義を説明され、急げと言われたが、反論もせず、急ぎもしなかった。
担当課長が関係省庁ヒアリングで論破されてきても、自ら立ち上がり、動こうとしなかった。
周りで政治家が懸命に調整している中で「面従腹背」を決め込んで黙っていた。
一方、担当課と政治家が精力的に動いているこの頃、週に1度は新宿の出会い系バーに偽名で通い、貧困女子の素行調査に勤しんでいた。
この直後、天下りの実行犯であることが判明したが、辞職を渋り、杉田官房副長官や菅義偉官房長官の恩情をいいことに、5000万円の退職金をせしめて退官した。
退官後に、その恩義を裏切り、朝日新聞とNHKの安倍叩きに便乗し、文科省文書を提供し、ありもしなかった総理の圧力を仄めかし、国政を混乱させ、文科省の信頼を決定的に失墜させた。
前川喜平の証言は、密室での相手の発言を取り上げるものか、彼自身の憶測ばかりで、裁判になれば証拠能力ゼロである点、籠池の証言と同様だった。
前川喜平劇場の、これが顛末である。

こうして、関係者の水面下の折衝により、2016年12月22日、松野大臣、山本有二農水大臣、山本幸三地方創生担当大臣の3大臣合意が発出され、日本獣医師会の意向を尊重して開校は1校に限るとしながらも、52年ぶりの獣医学部新設が決定された。
本来ならば、安倍政権の大きな業績として華々しく喧伝されていい画期的な悪弊打破だった。それが支持率を30%前後も下落させる架空のスキャンダルに仕立てられた。
しかし、ようやく、ようやく2017年11月14日に加計学園の獣医学部新設が認可された。
主犯は朝日新聞であり、強力な共犯者がNHKと文藝春秋だった。
朝日新聞が使った駒は前文科次官の前川喜平であり、民進党など反安倍野党である。
彼らは、それぞれの思惑やイデオロギー的な理由から、安倍首相を叩いたつもりかもしれない。
だがそれは違う。
本当に破壊されたのは、デモクラシーそのもであり、その基礎となるべき主力言論機関の信頼性であり、不当な規制打破への関係者の努力であり、獣医学部新設によって広がる日本の安全やバイオ技術の飛躍の可能性そのものだった。
言論への信頼を担保に、主権者たる国民が政治判断を下し、政治家に権力を委託する。そうしたデモクラシーにあって、日本最高の情報源と国民の多くがまだ信じ込んでいる朝日新聞とNHKとー後半では文藝春秋もーが、組織戦を想定せざるを得ないような虚報の山によって国民を洗脳し続けた。
彼らの量産した虚報が、本当にコケにし、否定したのは安倍晋三首相でも安倍政治でもない。
日本の主権者たる国民であり、日本の民主主義そのものだったのである。

http://www.asyura2.com/17/senkyo237/msg/589.html#c72

   

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