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[原発・フッ素49] 原発事故の自主避難者を被告にした行政の鬼畜(田中龍作ジャーナル) 赤かぶ
37. 2017年11月30日 14:35:41 : bh0JL6SYdM : w1@jzznphJA[1]

「いいえ、私は百姓です。家に帰ろうとしていたのです。どうか許してください」顔を真っ青にして、後ろに
のけぞろうとする農民の背中に、「この野郎、図太い奴だ。言え、言わんか」K伍長の鞭が肉をさきちぎる
ようにビュンビュンとうなった。そのたびに農民は頭を両手でつつむようにして堪えていた。

軍刀や鞭、獰猛な幾十かの目玉に取りかこまれ、たまらない不安と堪えがたい苦しみの中から、「私は百姓です。
どうか許してください」崩れる体を両手でやっと支えながら、農民は頭を地面に叩きつけるようにして、何回も
何回も繰り返していた。その眼には大粒の涙をいっぱいたたえて・・・。

「ビシッ・・・ビシッ」冷酷な鞭は休むどころかさらにひどくはげしく農民の体をなぐった。小さなうめき声を
あげ、歯をくいしばる農民の日やけした顔は、血と脂汗と泥でものすごい形相に変わり、石のようにこぶしは
固く握りしめられていた。

そのさまが私にはたまらなく面白かった。ゲラゲラ笑う兵隊たちの中で、私は煙草をくゆらせていた。

草の葉ずれや驢馬(ろば)を追う鞭の音にも「八路軍だ」とうろたえまわる日本兵も、いったん身に寸鉄も帯び
ない平和な農民、女、子どもの前に立つと、こうしてたちまち牙をむき出して飛びかかったのだ。

会心の笑いをうかべたY中尉は、「この野郎、水でもくらえ」農民を力まかせに井戸の中に突き落とした。
これが彼の初めからの計画であったのである。

「アイヤ・・・」肺腑からしぼり出た農民の悲鳴が、はげしい水音にとぎれ、走り寄った私の眼に井戸の底で
もがき苦しむ農民の姿が、わずかにさしこんだ光線で黒く見えた。

「よし、こうなったら二つ一度に落とすんだ。いいか、1、2、3」
頭が割れ、血を吐いて沈んでいく農民の姿を幻想しながら、私は力まかせに石を投げ落とした。土砂をまじえて
二つの石があい前後して農民の肩を強く打ち砕いた。ブス・・・鈍い音、水煙、農民の体はちょっとの間見えな
かったが、すぐ頭を出した。

くずれそうになる体を、やっと側壁に支えて見上げるその顔には、かぎりない恨みがこもっていた。
チラチラする青白い顔、それが私をたまらなく焦燥にからせた。

「まだ動いていやがる。図太い奴だ」私が気負い立って15、6も投げたときであった。ビシッ、不気味な音、
「ウーム」水音を破ってほとばしり出た絶叫を最後にして、農民の体は水の中に消えてしまった。

「フフフ、とうとういっちまったか! 人間も案外たわいないもんだなあ・・・」のぞきこみながらあざ笑う
中隊長の満足そうな声を耳にして、「ああ、俺もとうとう一人前の将校になった」とうきうきした気持ちに
なった私は、「貴様も一緒に往生しろ」とばかり、足元に転がっている草鞋(わらじ)を力まかせに井戸に
蹴りこんだ。

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