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mei bWVp コメント履歴 No: 100000
http://www.asyura2.com/acpn/b/bw/bwv/bWVp/100000.html
[雑談専用39] Re: がんについて
自己レスです。言葉が足りてないところがかなりあるのですが、ヒーラ細胞と再生医療について追記します。
ヒーラ細胞は無制限に増殖した、と書かれているのですが、まずそこからが嘘ではないかと疑ったところからいろいろな本を読んで調べました。
ガンの3大治療法と呼ばれるものは、日本だけかと思ったら海外でも大体同じようです。日本の場合は、原爆の影響からか放射線治療は最も人気がないようですが。
がんの治療法の根拠はまず、ガンがなんらかの突然変異によって無制限に増殖するようになった、ということを根拠としています。
つまり、近藤誠医師などが言われているように、数か月〜何年か様子を見ても肥大化しない場合、治療の根拠自体がないわけです。
私はガンは増えないと思います。

再生医療については、IPS細胞が作成可能かのように読めるかもしれませんが、私は作成不可能だと思います。
すべての細胞になることができる万能細胞、とTVでははやしたてていますが、すべての細胞になることができる能力があるのは受精卵だけです。
ES細胞とクローンも作れるとは思いません。
ES細胞は作成に卵子を使いますが、切りとった細胞はただの肉片にすぎず、自立して増殖することはできないと思います。

シャーレの寒天培地でよく細菌の培養をしていますが、細菌が自立して増殖するのは独立した生き物だからです。
細胞は独立した生き物ではなく、生き物の一部分にすぎません。

別の投稿で書きましたが、ワクチン接種した母に風邪をうつされたというのは勘違いかもしれません。喉のリンパ腺が痛かったのですが、熱はでませんでした。
http://www.asyura2.com/10/idletalk39/msg/903.html

[環境・自然・天文板6] ケニア JICA
1991年ティラピアの大量死、ウォーターバックの健康被害及び、1993年フラミンゴとペリカンの大量死について。ジャイカの研究報告?

https://www.jica.go.jp/jica-ri/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jbic/report/review/pdf/13_06.pdf
ケニア:ナクル地域の開発と自然環境の共生に関する一考察 ―環境事業、ひとつの取り組み―

          環境審査室第2班課長  澤井克紀*1 日本工営株式会社  氏家寿之*2

要 旨
ケニア第4の都市ナクル市は、フラミンゴで世界的に有名なナクル湖と隣接しているユニークな市 である。その地域的な特性から、「開発と自然環境の共生」が大きな課題であることは容易に想像で きる。しかしながら、従来の都市開発政策と自然環境保護政策は必ずしも調和をもったアプローチと はなっておらず、湖の周辺に点在する環境汚染源が貴重なナクルの自然に複合的な環境ストレスを作 り出している。 諸々の環境問題への対処策を提案することは可能であるが、問題は、ケニア政府の行政能力、さら にはドナー側の限界等を考慮したとき、いかに総合的な計画について、環境ストレスを最小にすると いう目的のもとに、その実行を確保するかということである。また、今日では、計画や事業実施の段 階で、多くのステークホルダーの関与も無視できないという課題もある。 日本は、過去、有償・無償資金協力でナクル市の上下水道事業を支援した経緯もあり、ナクルの総 合的な環境問題に取り組む下地が備わっている。都市の規模としても扱いやすい。世界的なドナーが 関心を示しているナクルの環境問題に、日本が援助協調のイニシアティブを取る意義は大きいと考え られる。 本稿では、ナクルの環境問題の現状を整理し、総合的な環境プログラム事業としていかなるアプロ ーチがあり得るのかを考察する。
Abstract
Nakuru in Kenya is a very unique town located close to Lake Nakuru National Park which is famous in the world for its Flamingoes. From the view of its regional characteristics, it is not difficult to imagine that the great concern of Nakuru town must be “Harmonization of Development and Natural Environment”. However, the infrastructure development corresponding to the town´s growth has been implemented so far without significant consideration of the environment conservation policy. Therefore, the environmental pollution sources that are located around the Lake have caused a complicated environmental stress to the valuable nature of the Nakuru region.
Although it may not be difficult to propose a counter measure for individual an environmental problem, the crucial issue is how to actually implement a comprehensive environmental program aiming at minimization of the environmental stress, taking into consideration of the capability of the Kenyan government and the limited support from the donors. In addition, the involvement of stakeholders in each stage of project planning or implementation has become another issue that
環境審査室第2班課長  澤井克紀*1 日本工営株式会社  氏家寿之*2
*1 国際協力銀行前ナイロビ首席駐在員 *2 援助効果促進調査(SAPS)チームリーダー

要 旨
ケニア第4の都市ナクル市は、フラミンゴで世界的に有名なナクル湖と隣接しているユニークな市 である。その地域的な特性から、「開発と自然環境の共生」が大きな課題であることは容易に想像で きる。しかしながら、従来の都市開発政策と自然環境保護政策は必ずしも調和をもったアプローチと はなっておらず、湖の周辺に点在する環境汚染源が貴重なナクルの自然に複合的な環境ストレスを作 り出している。 諸々の環境問題への対処策を提案することは可能であるが、問題は、ケニア政府の行政能力、さら にはドナー側の限界等を考慮したとき、いかに総合的な計画について、環境ストレスを最小にすると いう目的のもとに、その実行を確保するかということである。また、今日では、計画や事業実施の段
*3 正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。湿地は、生産力が非常に高い生態系であるが、

はじめに
ケニアのナクル湖は、百万羽を超えるレッサー フラミンゴの飛来地として有名であり、1968年に はケニアで最初の国立公園に指定された。また、 1990年には、ラムサール条約登録湿地*3に指定さ れるなど、世界的に重要な自然保護地区になって いる。 そのナクルの自然保護地区に隣接する形 で、ケニア第4の都市、ナクル市(人口約36万人) があり、活発な経済活動が営まれている。 このナクル市を対象として、日本は上下水道整 備事業を円借款ならびに無償資金援助で実施し、 上水施設は1992年、下水処理施設は1997年にそれ ぞれ完成している。両事業は、ナクル市にとって 不可欠な都市インフラであるが、結果的に、人口 集中、都市化、各種経済活動を促すことになるの で、適切な対策がなされない場合、都市環境の悪 化は避けられない状況にある。 国際協力銀行(JBIC)と国際協力事業団 (JICA)は、2000年11月に共同で事業の事後評価 「ナクル上下水道整備に係る合同評価」を実施し た*4。本稿では、両事業そのものの評価結果では なく、評価作業を通じて得られたナクル地域の抱
える危機的な環境問題について分析するととも に、「開発と自然環境の共生」という観点からの 新たな環境事業の協力のあり方について考察を行った。

第1章 既存調査の概要

ナクル地域の開発と自然環境に関わる調査報告 には、フラミンゴの生態等も含め数多くある。 Strategic Nakuru Structure Plan (SNSP)は、 都市開発とローカルアジェンダ21*5を融合させる 目的で、国連のHABITATとベルギー政府の支援 のもと作成されたものだが、政府、大学などの研 究機関、NGOや一般市民も参加したボトムアッ プ方式の計画手法を採用していることが特徴であ る。ナクル市の将来ビジョンとして、@環境都市 A鉄道拠点都市 B国際エコツーリズム都市 C 地域の中核都市 D地域サービスセンターといっ た目標を掲げているが、主として都市基盤整備の 空間レイアウトを提示しているものである。した がって、都市開発がナクル湖へ与える影響や地域 の総合的環境保全という視点が不十分である(中 村 2001) 。

120 開発金融研究所報

ケニアの野生動物保護を管轄しているKenya Wildlife Service(KWS)が、オランダ政府や World Wide Fund (WWF)等の支援を得て作成 し た Lake Nakuru Integrated Ecosystem Management Plan 2002−2012 は、国立公園の管 理という視点から自然保護と資源管理について検 討したものである。公園内のみならず、1,800km2 の面積を有するナクル湖の集水域における人間活 動(森林伐採、農業開発、工業排水等)がナクル の生態系を乱している現実を指摘しているが、 SNSPとは逆に都市とのリンケージについての指 摘は弱い。 閉鎖湖であるナクル湖の水質に関しては、 WWFや地元のエガートン大学、ナイロビ大学等 による多くの調査がある。1995年に行われたナク ル湖水ならびに底泥の調査では、70年代に比べて 銅、マンガン、水銀等の蓄積が著しく増加してい るほか、農薬も検出されている(Thamy & Raini 1995)。そのような重金属、農薬がどのようにナ クルに棲息する生物に影響を及ぼすかの検証は難 しいが、1991年のテイラピアの大量死、ウォータ ーバックの健康障害、1993年のフラミンゴの大量 死といった現象の一因として、様々な毒性物質の ナクル湖への負荷量が生物に影響を与えうるレベ ルにまで達したように思われる(辻村 2001)。フ ラミンゴの大量死も、重金属を体内に蓄積してし まうことで衰弱し、そこに何らかの大きなストレ ス(感染症、餌不足等)がかかった際に起こると いうのが、今では定説になっているようだ。 上記のような環境問題は、ケニア政府もナクル 市も一応の認識を示しているものの、多くの関係 機関が個々の担当事業の達成のみに関心があり、 都市開発においても自然保護事業においても総合 的な環境開発計画のなかで調整し、実施するとい う機能が欠落している(Mwangi 2000)。この背 景には、ケニア政府やナクル市の行政能力、予算 制約、人材不足等といった問題があるが、ナクル の開発に協力しているドナー間の調整も全くされ ていないのが実情である。これでは、環境負荷を ミニマムにするという大きな目的のために個々の 開発を進め、エコタウン・ナクルを目指すような ことは難しいと言わざるを得ない。

第2章 ナクル地域の特徴

(1)ナクル湖 ナクル湖は、@閉鎖湖 Aアルカリ・ソーダ湖 B富栄養湖 C水位変動の激しい湖といった特徴 がある。 すり鉢状の地形の底にある閉鎖湖であるという ことは、周辺の人間、経済活動で使用された水が、 表流水あるいは地下水となってナクル湖まで到達 している可能性を示している。また、湖まで流れ 着いた汚染物質が湖内に堆積し易い状態であるこ とを意味する。 ナクル湖を含むリフトバレー州には、pH9-10程 度のアルカリ・ソーダ湖が点在している。アルカ リ性の高塩分濃度という特殊な水環境に適応でき る植物プランクトンとしてスピルリナというラン 藻類が繁殖し、フラミンゴはそのスピルリナを餌 として、リフトバレーの湖群を渡っている。因み に、フラミンゴのピンク色はスピルリナのカロチ ノイドによるものである。 ナクル湖は人為的な影響とは関係なく富栄養で あり、これによってスピルリナの高い一次生産性 とそれを餌とする、約百万羽のフラミンゴの生息 を支えてきた。 さらに、閉鎖湖であるため、湖への流入水量と 湖面からの蒸発によって水量が決まる構造になっ ている。降雨量や河川水量の変化、日照、風等の 影響によって、大きな水位変動が起こる。ナクル 湖では、1933年以降8回湖が干上がった記録があ る。一方、1998年にはエルニーニョの影響で4m を超す水位上昇を記録している。このような現象 は、スピルリナを含む湖に生息するすべての生物 に影響を及ぼす(辻村 2001) 。
(2)ナクル湖国立公園 ナクル湖国立公園は、ナクル市の中心から南約 3kmのところにメインゲートがあり、ナクル湖 を取り囲む面積188km2の野生動物自然保護区で ある。とはいっても、周囲は電気フェンスで囲ま れているため、動物が他の地域へ移動するような ことはない。 1968年、ケニア政府はナクル湖周辺をケニアで
始めての国立公園に指定した。ナイロビから約 160kmという手軽な観光地であり、世界的なフラ ミンゴや、象を除く多くの動物の生息地として、 ケニアでは年間最も多い観光客を集めている国立 公園になっている。 ナクルで宿泊する観光客は、主として国立公園 内にある2つのロッジを利用することになり、観 光収入の多くは入園料を徴収しているKWSとロ ッジの経営者の懐に入ることになる。すなわち、 観光客は公園に隣接するナクル市との接点はほと んどなく、また、ナクル市住民にとっても、ナク ルの観光資源は直接自らの生活に関係していると いう意識は薄いのが実情である。
(3)ナクル市 ナクル市は、東西を結ぶ鉄道交通の拠点という 地理的な好条件とナクル湖国立公園という世界的 な観光地を抱えることによって、リフトバレー州 の州都として栄えてきた。 1962年には市域面積92km2、人口38,000人だっ たものが、2000年には290km2、約360,000人の都 市へと急速に成長してきており、今後も人口の集 中・増加は続くものと予測されている。 他の多くの都市がそうであるように、人口増に 基礎インフラ整備が全く追いついておらず、水不 足、排水施設の未整備、ごみ問題、工業排水等々、 様々な都市環境問題を引き起こしている。そして、 それらの環境問題は、都市に隣接するナクル湖お よびナクル湖国立公園の環境問題と密接に関係し ている。 ケニア第4の都市とはいえ、ケニア政府同様、 ナクル市の予算も経常コストで使い果たしてしまっている状況なので、インフラ整備は、主として 外国援助に頼って実施されているのが実情であ る。しかしながら、その額も決して多くはない。
(4)土地利用形態の変化 ナクル湖集水域の土地利用パターンは、都市開 発、農業開発、森林伐採等々の影響により変化し 続けている。図表1は、1970年から96年までの間 の土地利用変化を示したものであるが、70年から 86年までの都市域の拡張や、森林や大規模農地が 減少し小規模農地が急激に増えていることが分か る。これは、地方から貧しい人達が都市に集まっ てきても就業機会がなく、結局は森林を切り開い て小規模農業で生計を立てるしかすべがなかった という結果であるとも思われる。この傾向は現在 でも続いていることが確認されている。 このような形での農業開発は、なかには不法な ものもあり、無秩序なものであるから、ナクル湖 の集水域の水文環境、延いては生態系を変化させ、 さらには、農業で使用される化学肥料がナクル湖 の水質に影響を与える恐れがあることが考えられ 得る。
(1)水質 ナクル湖の水質・底質については、過去からの
第3章 ナクル湖の汚染の現状

図表1 ナクル地域の土地利用変化 (%)
出所)Robert Ndetei 2001
土地利用のタイプ
森林 大規模農地 牧草地 都市域 国立公園 小規模農地

1970 47 34 15 1 3
1986 28 13 11 13 11 24
1996 18 10 9 15 11 37
図表2 ナクル湖の一般水質項目
出所)JBIC SAPS調査報告書 2001
項目
水温(℃) pH 電気伝導度(mS/cm) 塩分濃度 DO(mg/L) ORP(mV) BOD5, mg/L COD, mg/L SS, mg/L T-N, mgN/L T-P, mgP/L
ナクル湖 20.5 −27.1 10.0 −10.2 35.7 −49.7 22.5 −32.1 5.7 −22.5 -181 −-188 237 −640 653 −984 142 −808 27.9 −87.4 8.0 −11.7

調査で様々なデーターがあるが、今次調査ではそ れらデーターを検証する意味で、いくつかのサン プリング分析を試みた。 図表2は、一般水質項目のデーターである。 pH値、電気伝導度および塩分濃度はいずれも高 い数値を示している。湖表層の溶存酸素(DO) レベルも高く、概ね過飽和(温度および塩分濃度 により7.4−8.8mg/L程度)となっているが、これ は富栄養湖での光合成活動が大きいことによるも のである。 図表3は、湖の重金属の中央値を過去の調査デ ーターと比較したものである。1995年、1999/ 2000年の調査データは、今次調査結果や水質基準
値と比較して非常に高い値が検出されているが、 この違いについての詳細な分析はできていない。 また、ナクル湖周辺の湖との比較において、ナ クル湖では、カドミウム、鉛および亜鉛の濃度が 高いことが分かっている。これらは、人為的な汚 染の可能性を示唆していると言える。なお、重金 属は総クロムを除いてほぼ同じオーダーで湖に分 布しており、流入河川による大きな変化は認めら れなかった。 図表4は、ナクル湖国立公園に生息する草食野 生動物の体内にある重金属のデーターである。 1997年に、国立公園とナクル市の境界線近くに生 息していたものであるが、鉛やカドミウムの体内
1232002年12月 第13号
図表4 草食動物の体内汚染
汚染レベル 中央値 (mg/kg DM)
肝臓 腎臓 まぐさ
鉛 カドミウム 亜鉛 モリブデン
40.6 1.92 n.a n.a
12.08 15.05 n.a n.a
2.88 0.31 126 7.20
出所)W.J.Mavura 2001
出所)JBIC SAPS調査報告書 2001
項目 ナクル湖 土壌基準(USA) カドミウム (Cd) 鉛 (Pb) 亜鉛 (Zn) 総クロム(T-Cr) 水銀(Hg) ヒ素(As) 銅(Cu) マンガン(Mn) ニッケル(Ni) 0.365 17.2 168 8.6 0.045 1.74 9.05 1,110 8.89 19.5 150 1,400 1,500 20.5 1.5 750 210
図表5 湖底質の重金属濃度 (mg/kg)
図表3 ナクル湖水の重金属濃度
出所)JBIC SAPS報告書 2001
項目 1975年 1995年 1999/2000年 2001年 水質基準 Greichus et.al. WWF 94/95 KWS Mavura & Wangila 2001 JBIC 日本 ppm ppm ppm mg/L Mg/L カドミウム(Cd) 鉛(Pb) 亜鉛(Zn) 総クロム(T-Cr) 六価クロム(Cr6+) ヒ素(As) セレン(Se) 水銀(Hg) 銅(Cu) ニッケル(Ni) 0.021 0.005 0.049 0.006 <0.001 0.002 0.2 0.3 0.5 0.1 0.3 0.6 0.11 0.44 2.38 0.57 2.48 0.11 1.09 0.0024 0.011 0.0765 0.0185 0.005 0.0357 0.0008 0.001 0.038 0.0045 <0.01 <0.01 <0.05 <0.01 <0.01 <0.0005

蓄積が認められる。また、同様にフラミンゴにつ いても確認されている。これらは、草食動物やフ ラミンゴが生態的に弱くなっている原因と言われ ている。
(2)底質 図表5は、ナクル湖の底質における重金属濃度 を示している。いずれの値も米国の土壌環境基準 の最大許容範囲を下回っており、過去の調査結果 も今次とほぼ同様の傾向を示していたことが確認 されている。 また、農薬に関係する物質の検出も底質からは されなかったが、1999/2000年に行われた調査で は、DDT、DDD、DDE等が検出されていること が分かっている。
(3)ナクル湖への流入河川の水質および底質 ナクル湖には、ンジョロ川、マカリニ川、ンデ リット川に加え、バハリニ湧水とタウン排水路か ら流入する表流水がある。今回の調査では、表流 水と底質の重金属濃度について過去のデーターと 比較して検討した。表流水については、1999/ 2000年のMavura & Wangilaの調査時には、カド ミウム、鉛、総クロム等に水質基準を上回る値が 検出されたが、今回の調査では概ね基準を下回っ ており、問題となる数値はなかった。底質につい ては、過去と同様、問題となる数値はない。
このように、ナクル湖および湖に流入する表流 水の汚染状況については、過去のデーターを裏づ けられるような調査結果にはなっていない。しか しながら、今次データーの採取も非常に限られた 時間のなかで実施したものであり、早急に問題な しと結論付けるのは危険である。また、後述する ナクル湖集水域に存在する汚染源を考慮すると、 ナクル湖の将来の汚染は避けられない状況にある とも思われ、継続的なモニタリングは不可欠である。

第4章 ナクル湖の汚染源に関わる 考察

ナクル湖に対する汚染源として考えられるの
は、家庭排水、工場排水、廃棄物処分場、森林伐 採と農業活動といったところである。
(1)家庭排水 家庭排水は、多くの家庭が下水管渠の接続がな されていないため、上水の供給量が増えても下水 処理量が増えないという状況にある。また、人口 の80%が竪穴式トイレを使用していることから、 有機系(BOD等)負荷の大部分が環境中に排出 されているものと考えられる。
(2)工場 ナクル市の工場は、主に西部の下水処理区域に 立地しており、その数は現在46工場である。主要 業種は食品と繊維であるが、乾電池工場やなめし 革工場といったものもある。工場の排水処理およ び廃棄物処理の実態を示す資料の入手は困難であ ったが、6工場について排水と汚泥の分析を行う ことができた。その結果によれば、国際的な排水 基準やナクル市が策定した暫定基準をはるかに超 える重金属や農薬が検出され、ナクル湖に対して、 工場は重要な汚染源となることが確認できた。工 場主に対するヒアリングにおいても、環境対策に ついての意識はあるものの、それは高いコストを 伴うものであることから、積極的な環境投資とは なっていない様子である。政府の支援や技術アド バイスを求める声もあった。
(3)廃棄物処分場 ナクル市は、中心部から約4km離れたところ に唯一の廃棄物処分場を保有しており、有害廃棄 物、病院廃棄物を含め、そこに投棄されている。 処分場には、浸出水集水設備および処理設備が存 在しないため、地下水汚染の懸念がある。また、 排水路が存在しないために雨水が埋立地内に流入 し、その結果廃棄物層を通過する浸出水の量が増 加するとともに、露出した廃棄物と接触して川へ 流出する可能性もある。 廃棄物処分場の下流で採取した土壌と浸出水を 分析したところ、多くの重金属濃度が高い値を示 すことが確認され、殺虫剤やγ-HCHも基準値を 超える値であった。下流側の農業地域は既に重金 属や殺虫剤で汚染されている可能性が高い。投棄
場所が断層上に位置しており、割れ目の浸透係数 が高いことも問題である。 なお、現在フランス政府が現在の処分場の閉鎖 と新規の処分場設置の計画を進めていると聞いて いる。 この廃棄物処分場とは別に、ナクル市内には少 なくとも2つの違法な廃棄物投棄場と小規模のゴ ミの山が数多く存在している。不法投棄の発生状 況は、ナクル市が廃棄物埋立処分場の処分料を引 き上げてから徐々に悪化の傾向にある。 さらに、ナクル湖国立公園の北側の敷地内には、 面積約16haの旧処分場がある。1970年代初期に一 般廃棄物、産業廃棄物の投棄に使用されてきたが、 1974年に公園の一部に含まれることになり閉鎖さ れたものである。その後埋め立てがなされ、現在 は緑多い場所であるが、マグネシウム蓄電池で使 われるカーボンカソードチューブのような廃棄物 も散見される。
旧処分場の土壌汚染の状況を調べると、鉛、亜 鉛、総クロム、ヒ素、銅、マンガン、ニッケルと いった重金属に、周辺の土壌における濃度や国際 的な含有量の基準値を超える濃度が検出された。 かなり汚染レベルが高いが、その汚染範囲はナク ル湖方向に拡大しているものと思われる。30年近 く渡って汚染管理をすることなく放置してきた結 果であるが、汚染範囲と深度を特定するには、よ り詳細な調査が必要である。
(4)森林伐採と農業活動 過去30年にわたるナクル湖集水域の急速な開発 は、土壌浸食とナクル湖における土砂の堆積の危 険を増大させた。また、農村人口の増加によって 農業活動は活発となり、燃料用の薪の需要も増加 している。微妙な水位バランスで成り立っている ナクル湖においては、このような集水域の開発を 無視するわけにはいかない。
Foekeb & Owuor(2000)によると、都市域の 農家の35%が化学肥料を、29%が殺虫剤を使用し ている。また、流域内の2-7%の農民が有害性の 高いDDT、1%がディルドリンとエンドスルファ ンを使用しているという報告もある(Mavura & Wagila(2001)
) 。 今回の調査では、農地下流の河川水や湖水、底 質からは、検出限界以上の農薬レベルは確認でき なかったが、将来的には農業活動を適切にコント ロールしなければならないことは当然であろう。
(5)雨水・排水システム ナクル市の雨水・排水システムは、中心商業区 および新住宅地区の一部の約37haをカバーしてい る。タウン下水処理場には、雨水滞留池が設けら れているが、維持管理状況が不十分で、堆積した ゴミや土砂によってそのキャパシティーは集中豪 雨時には対処できないものとなっている。その結果、溢れた雨水はナクル湖へ直接流れ込んでいる。
また、この雨水滞留池からゴミや土砂が取り除か れた場合でも、処理場の敷地内に長期間山積みの まま放置されているので、新たな風雨により2次 汚染の心配があり、ナクル湖への影響も否定でき ない。 集中豪雨時には、排水路から水があふれ、市内 の道路が河川状態となってしまうことがある。そ の水は、市内に散乱しているゴミや汚物、土砂を 呑み込み、ナクル湖の表流水の一つであるンジョ ロ川に直接流れ込む。このようなことが、雨が降 るたびに繰り返されているわけで、廃棄物管理も 含めた雨水・排水システムの強化も必要である。
(6)水質モニタリング ナクル湖のそばにある水質試験所では、ナクル 湖およびその周辺の湖の水質検査、上水、下水処 理場、工場排水の検査を定期的に実施することに なっているが、予算が十分でなく、スタッフも2 名と限られている。モニタリングのためのシステムも確立されていないので、満足のいく活動はな されていないのが実情である。 また、関係者の水質検査所の機能に対する重要 性に関して、認識が非常に低いことも問題である。 これは、ナクル市の衛生管理の問題のみならず、 ナクル湖の環境管理上の問題としても捉えるべき であろう。

図表7 汚染源
Pollution Source Main Pollutants Notes
Urban Area
Rural Area
Domestic Wastewater BOD, SS, N, P Many households, especially in the informal areas, are not connected to the sewer network. Due to clogging and leaking, a part of the sewage is not reaching the STWs. Industrial Factories Heavy metals, pesticides Elevated levels of heavy metals in industrial wastewater and sludge have to be controlled. Existing Dumping Site Heavy metals, pesticides, infectious disease Industrial and medial wastes are indiscriminately dumped. Direct environmental risks to the neighbouring community and groundwater pollution are of concern. Former Dumping Site Heavy metals The site is heavily contaminated with heavy metals. It is located within the Lake Nakuru National Park, and the impact to the lake is suspected. Illegal Dumping Sites unknown (solid waste) Not much information is available about illegal dumping site. Urban Runoff Unknown Not much information is available. Potential pollution sources of SS, nutrients, and possibly heavy metals. Agriculture Pesticides, fertiliser, eroded soil Pyrethroids, carbamates, copper-based fungicides and organophosphorous pesticides are widely used in the basin. Fertilisers such as CAN, DAP and TSP are also common. Soil erosion is intense in some area. Denuded Forest Eroded soil Large amount of soil seemed released in the 90s, when the Mau Forest was cleared for resettlement.

第5章 環境法ならびに環境組織の 整備状況

ケニアでは、2000年1月に環境管理・調整法が 施行されて以来、環境政策が強化されつつある。 世銀も、淡水資源が限られているケニアの水資源 管理には関心があり、総合的水資源管理の長期戦 略や、従来のWater Billの改正に関して助言を与 えている。これまで十分に管理できていなかった 土地利用計画や森林管理等についても法ならびに 組織整備の動きがある。 しかしながら、それらは未だ実行が伴っている とは言い難い状況にある。それなりに機能してい るといえるのは、1989年にKWSを設立した際に 策定された、野生動物法案であると思われるが、 それも国立公園内や保護地区内のことに限られて おり、ナクル湖国立公園にある問題のように、国 立公園の周囲の環境までをコントロールできるも のではない。 一方、ナクル市の環境法には、公衆衛生法(マ ラリアの予防、廃棄物管理、有害物質等を対象) があり、また、公共下水道への排水基準も策定さ れている(議会で未可決)。これらは、都市の衛 生環境と工場排水の管理を目的とするものであ り、都市に隣接する貴重なナクルの自然環境を守 るための都市環境コントロールのあり方といった 視点がない。 ナクルに関与する環境関連機関としては、環境 天然資源省がナクル郡環境委員会を設立しアクシ ョンプランの作成に関わっていたり、ナクル/ナ イバシャ地域を特別環境保全地域に指定しようと いう動きをしている。また、農業・地域開発省の ナクル郡担当は、土壌や水の保全、森林の管理を 担当している。 さらにKWSは、ナクル湖国立公園内の管理はもちろんのこと、ナクルの環境保全のための教育、 普及、調査研究活動等も実施しており、もっとも ナクルの都市および集水域の環境にも懸念を抱い ている組織であると言え、それは前述のLake Nakuru Integrated Ecosystem Management Plan 2002−2012に反映されていると理解できる。しか しながら、KWSの組織規定上、都市ならびに集 水域までの環境問題に直接関与する権限はない。 ナクル地域の環境問題に最も中心的な役割を果 たすべきナクル市は、従来の部署を再編し環境局 を設置したが、実際は廃棄物関連のスタッフが中 心となっており、総合的な環境行政を実行し得る 体制にはほど遠い。また、ナクル市は中央政府同 様、財政難に苦しんでおり、環境事業をオーナー シップをもって推進していくには、かなり問題の 多い組織になっている。 その他ナクル地域は、多くのNGO、CBOが 様々な環境改善事業に取り組んでおり、ボトムア ップからの行政への提言、管理を行うことを目的 に技術委員会なるものも設置されている。

第6章 ナクル総合環境計画の ポイント

これまで述べてきたように、ナクル湖の環境に マイナスの影響を与える要素が、ナクル市の都市 内および周辺地域に確認され、それらが複合的に 環境ストレスを作り出しているのである。それら を図表8にまとめた。 これらの項目は、さらにブレークダウンして対 処策を提案することは可能であるが、問題は、ケ ニア政府あるいはナクル市の行政キャパシティ ー、さらにはドナー側の限界等を考慮したときに、 いわゆるマスタープランの提示に終わらせること はできず、実行を確保するということである。 また、これまでの環境関連事業のように、マス タープランのなかにある個別プロジェクトにだけ 支援し、それを各ドナーが積み上げていけさえす れば、それでよいのかという疑問である。今日で は、多くのステークホルダーの関与も無視できな い。まさしく、現実的で実現性のある総合的なも のを目指す必要がある。

図表8 ナクルの環境計画のポイント     
環境計画のポイント
市街地
郊外
環境管理
(ホットスポット) ・ 工場排水および汚泥の前処理/処理 ・ 重度汚染地域の存在(既存ならびに旧廃棄物処分場、違法投棄場) (汚濁負荷の発生) ・下水管渠の維持管理と各戸接続 ・個別処理施設の維持管理 ・上水道の運営管理 ・雨水排水路と雨水貯水池の維持管理 ・廃棄物管理システム(収集、処理/処分、不法投棄等 (農薬・肥料) ・ 農薬・肥料使用のコントロール (森林伐採) ・ 入植地確保のための森林伐採における環境配慮不足(生物多様性の喪失、土壌・栄養分の流出、水文環境の変化) ・ 農業、薪炭のための森林伐採 ・ 農業や他の土壌流失源(道路、採砂地など)における土壌と水の保全 ・ ナクル湖国立公園内の生態系の変化 (法令・制度・人的資源) ・総合的な環境管理計画 ・組織制度と関連機関の協力関係 ・環境管理に関わる予算措置 (環境モニタリング) ・環境モニタリングと考察 (住民の環境意識) ・環境問題に関わる住民意識向上 ・市民(住民、工場・事業者)の環境管理責任 (土地利用コントロール) ・集水域の土地利用管理 ・環境基準と法令(特に有毒物質管理) ・スタッフトレーニング ・水質試験所の活用 ・環境教育と情報公開 ・市街地および市街地周辺部の開発コントロール(移住、 都市計画)
出所)JBIC SAPS調査報告書

第7章 環境事業(プログラム)と しての考察

そこで、このような環境事業をどのような切り 口で捉え、現実的なアプローチをしていくべきか について、変化しつつあるドナー側、途上国側の 環境問題の取り組み姿勢も含め考察してみること とする。
(1)総合的アプローチという意味合い 環境分野の支援を実施する際には、総合的、包 括的な計画策定が不可欠であるという指摘はよく 言われることである。しかしながら、総合的、包 括的といった場合には、3次元、4次元のマトリックスをいかに整理するかという難題に直面する ことに留意しなければならない。 ナクル地域の場合には、開発と環境、都市環境 とナクルの自然環境との組み合わせ、都市環境と 貧困とも関連深い周辺森林、農村における環境と いった組み合わせが考えられる。また、多くのケ ニア側のステークホルダーが関与していること、 ケニア側のみならず多くのドナーもナクルの環境 問題に関心が高いことも、総合的であるべき理由 の一つであろう。まさしくナクル地域はすべての 要素を含んでいる地域なのである。 個々の環境プロジェクトにおいても、それらは お互いに関連しあっていることが多い。さらには、 限られた資金、技術、人といったリソースをどの
ように環境事業のために最適優先配分するかとい う点においても、総合的、包括的アプローチには 不可欠である。 従来、需要に適応した事業(ナクルの場合、例 えば上下水道事業)が主流であったが、それは人 口増や商工業の発達を促すものであるがゆえに、 他の環境ファクターにも影響を及ぼすものであ る。しかしながら、事業計画の段階で、他への環 境負荷にはあまり配慮がされてきたとは言い難い のである。 例えば、「自然と共生するエコ・タウン・ナク ル」というスローガンのもとに、あらゆる事業、 あらゆるステークホルダーが環境負荷をミニマム にするような計画になっているかどうかのチェッ クをしつつ、開発と環境のバランスを保つことに、 事業目的、制度目的、援助目的といったものが収 斂されなければならないのであろう。 総合的、包括的といった複雑系を避けては通れ ないのが環境事業であるという認識を新たにしな ければならない。しかしながら、複雑系をそのま ま途上国に持ち込んでも、それは手も付けられず、 崇高な事業計画として置き去りにされる可能性は 高い。ひとつひとつのアプローチ、あるいはプロ ジェクトそのものは、単純で分かりやすいものに しなくては、途上国のステークホルダーに説得力 をもたないし、実施もままならぬということも留 意しなくてはならない。
(2)環境コントロールセンター機能 総合的アプローチを目指すときに、どうしても コントロールセンターのようなところが必要とな ってくる。環境政策、制度確立、事業調整、援助 調整(協調)等々広範な活動を行うことになろう。 すべての情報が集約されるところであり、そのセ ンターのチェックがないと事業推進もできないと いったような、ある程度の権限が付与された行政 機関の一つであることが望ましい。 ナクルの場合は、オーナーシップの観点から、 ナクル市環境局がそのセンターの役割を果たすこ とが自然であろうが、予算、人員、知識のすべて において、現状のままでは期待できない。であれ ば、そのキャパシティー・ビルディングができる までの間、中央の環境天然資源省のイニシアティ
ブで実施する、ナクル地区環境委員会のイニシア ティブで実施するといったオプションが考えられ る。あるいは、ナクル地域の水質データーが集約、 分析され、問題の所在を絶えず把握し得る水質試 験所を活性化させ、コントロールセンター機能を 持たせることも一案であろう。 KWSは、ナクルの科学的データベースと情報 資料センターを設置して、環境のモニタリングな らびに教育の普及を行わんとする計画も有してい るようであるが、仮にそれを実現しようとするな らば、既存の野外教育センターと水質試験所の延 長線上で検討すべき問題と考える。 日本が実施している環境プロジェクトのなかに は、開発途上国が自ら環境問題に対処できるよう になることを目標に、総合的な環境管理のための 拠点作りを行ってきた。具体的には、法制度の整 備、組織強化、環境ラボの整備といった広範な業 務を行う環境管理センターを設立し、国全体の環 境管理能力を向上せんというものである。中国や インドネシア等々で実績がある。投入された無償 資金や技術協力は数十億円、なかには100億円程 度にも達する大規模プロジェクトである。 しかしながら、ケニアにおいても同様な手法が 可能かといえば、それは難しいと思われる。いく ら資金的、人的支援があるにせよ、ケニアが大規 模な環境管理センターを運営するには、あまりに もファンダメンタルズになる部分が脆弱すぎる し、そのようなところへの投資は援助国にとって も危険である。 それよりも、ナクル地域とかビクトリア湖とい った環境問題が比較的顕在化している地域をモデ ル事業として取り上げ、それを他にも活かすアプ ローチのほうが、事業目的がより一層明らかで、 ケニア側もリソースを投入しやすいのではないか と考える。しかしながら、環境コントロールセン ターがナクル地域でどのようなものになるにして も、時間を掛けて、キャパシティー・ビルディン グを支援しなければならないことは明らかであ る。
(3)キーワード「水の管理」 事業、制度、援助目的といったものが一つの目 標に収斂されているようなチェック機能が働かなければ、総合的、包括的アプローチも複雑なだけ で手が付けられない懸念があるだろうことは先に 述べた。アプローチの方法は、表面的には単純で 分かりやすいほうが、多くのステークホルダーに 対して説得力を有する場合がある。 そこで、チェック機能を有効に働かせるために は、その手法について、一つの明確なものを設定 しておくことも一考ではないだろうか。ナクル地 域の場合は、「水の管理」がキーワードになるよ うに思える。 ナクル湖周辺の人為活動とナクル湖の自然環境 を結び付けるものは水である。また、都市衛生環 境の中心となるのも水である。森林伐採からくる 土壌侵食も廃棄物処理も、ナクル湖との関連で最 も議論すべきは水の管理といえる。 日本は、上下水道事業に協力し、水質試験所も 建設している。さらに、水の管理は、比較的日本 が得意としている分野である。この意味でも、水 の管理をキーワードとした環境管理手法は、適当 であろう。 この考え方を具現化するためには、既存の水質 試験所の強化は急務である。それは、単なる設備 の補修や薬品補填を意味するものではなく、モニ タリング・サーベーランスの方法、データーの分 析結果の活用方法といったノウハウ移転を行うこ とである。それができて、環境状況の把握、事業 チェックが可能となり、環境という視点から、開 発計画を絶えず見直す姿勢も生まれくるものと思 われる。
(4)ケニア側のオーナーシップと実施能力 近年、援助の世界では、被援助国のオーナーシ ップを強調する向きがある。従来から日本政府が 主張してきた自助努力と通じるものである。この 背景には、援助事業が成功しない理由として、被 援助国側のオーナーシップの欠如によるところが 大きいという教訓から、オーナーシップを認知で きない事業には支援しないといった考え方があ る。ここでいうオーナーシップというのが、援助 国側のコミットメントとか、やる気といった意味 で使われているのであれば、それは当然のことで あり、何を今更といった感がある。ただし、責任 を伴う判断力の欠如ということであれば、援助国
側として単にオーナーシップの欠如と言って途上 国を突き放すことはすべきでない。 本件に照らしてこの問題を考えると、ケニア側 のコミットメントは得られているが、責任のある オーナーシップを取れるだけの実施能力は十分で ないということであろう。 コミットメントを得ることや、やる気を起こさ せるためには、ただナクルの環境改善の早急な必 要性を訴えるだけでは弱い。早急に必要だという だけでの事業は、ケニアには他にも多くある。本 件の場合は、2005年にケニアで開催が予定されて いる国際湖沼会議が、ケニア側のインセンティブ として強く働いている。ケニア側がJBIC調査団 と議論する際にも、常にナクルの事業取り組みと 国際湖沼会議をセットで考えていることは明白で ある。政府の高いレベルでコミットメントが得ら れていると言える。 しかしながら、ナクルの環境事業がケニア側の 責任あるオーナーシップのもとで確実に実施され るかといえば、それは非常に難しいであろう。 現在、ケニアも環境政策に積極的に取り組んで いるところであるが、そのためのインフラ整備を 行っているという域を出ていない。環境天然資源 省の強化、環境管理庁の組織、環境管理・調整法 の制定及び関連法の整備、地方での組織作りとい ったことである。これが、ナクル市環境局のよう な地方自治体のレベルになると、人、技術、施設 設備、予算と、どれをとっても非常に心許ない限 りである。リーダーシップを取るべき市長も、政 局には関心があるけれども環境政策に具体的なビ ジョンを有しているわけではない。 しかしながら、現場スタッフの数名には優秀な 職員も存在しており、適切に根気よくアドバイス を継続していけば、キャパシティー・ビルディン グは十分可能であると思われる。前述の環境管理 センターが実務的なコントロールを行うとすれ ば、ナクル市は、政策面のコントロールを行う責 任がある。そして、その両者は、環境事業を動か していくファンダメンタルズであり、その強化抜 きに事業の実施は語れないと考える。
(5)経常経費支援の必要性 事業を動かしていく上で、予算の確保は必須で
あり、ドナー側もカウンターパート・ファンドが 確保できない事業には支援しないというのが原則 的な態度である。 しかしながら、ケニアの場合は財政赤字が続い ており、しかも開発予算のほとんどを援助で賄っ ている状況なので、中央政府からの予算手当てに ついて多くを期待できない。それが、ナクル市の 財政となると事は更に悪い。上水料金の滞納のた めナクル全域に給水制限がしかれたり、水質試験 所においては電気料金の滞納のため電気が止めら れたりしている状況である。何らかの事業を実施 するにしても、予算不足で仕事が進まないという 事態もしばしばである。したがって、ナクルの環 境事業を推進する場合も、ある程度の行政経費の 支援はどうしても必要なものであると思われる。 日本はこれまで、事業実施に必要な被援助国側 の行政経費のようなものを対象に資金供与をする 例はほとんどなかった。しかしながら、最近はド ナー側が開発援助資金の一部を特定のセクターに 拠出して、途上国政府の管理能力の向上を図るた めの共有アカウント(コモン・ファンド)を設け る場合が出てきている。これは未だ実験的ではあ るが、日本もタンザニアの農業セクターやザンビ アの教育セクターで実施している例があり、ケニ アでもTrust Fundという形で導入が試みられて いる。ナクル環境事業の場合は、それを地方レベ ルで、コンパクトに実施しようというものである と理解してよい。 ナクル環境事業は、さまざまな要素が含まれ、 きめ細かなプログラム・アプローチが求められ る。そのような事業に取り組む場合は、ある程度 の自由度をもって使える資金があったほうが、か えって事務負担が軽減したり、資源が有効に使わ れたりすることはあり得よう。資金の使途、目的 が明確であり、公共支出に係わるアカウンタビリ ティーが確保されているという条件で、行政経費 の一部を支援することは十分妥当性のある話であ る。 行政経費の何をどこまでをカバーすべきかは、 別途検討の対象であるが、ナクル環境事業の場合 には、行政の実施能力強化と水質試験所の活性化 を軸として支援を始めることになると思われるの で、大きな額の支援は不要であろう。仮に特定の
プロジェクトを実施する場合は、当該プロジェク トの必要資金のなかで、行政経費の支援を検討す ればよい。
(6)援助協調の枠組み作り ナクル湖は、フラミンゴの生息地として世界的 に有名なこともあり、ナクルの環境問題について も多くのドナー、国際機関、NGO等が関心を示 している。実際、フランスが廃棄物処理事業を計 画、アフリカ開発銀行が水資源開発を実施、イギ リスが環境ガバナンス専門家派遣を検討、ベルギ ーのリューベン市が姉妹都市として協力、UNEP (国連環境計画)の東アフリカ湖沼生態系の調査 等々、それぞれの関心に基づいた支援である。 しかしながら、援助協調の枠組みを作らなけれ ば、個々の活動がバラバラになってしまい、ナク ルの環境ストレスをミニマムにするという大きな 目的ためのoutcomeが明確にならず、投資が効率 的でなくなる可能性を生む懸念がある。したがっ て、誰かが、どこかで援助協調の機能を働かせな くてはならない。 現在様々なところで議論されている「新しい形 での援助協調」は、被援助国のオーナーシップを 強調しつつ、これにドナーが開発計画・実施に共 同で取り組む、また手続きの共通化、財政援助、 セクターアプローチといった援助の手法等も対象 に議論をしている。 そのような援助協調の実現には、ドナー側も相 当の労力を要することになるし、うまく機能させ るための諸々の準備も必要になってくる。それで いて、未だ実験的なアイデアの段階なので、うま くいくという保証もない。 したがって、ナクル環境事業の場合は、それぞ れのドナーの意向をそれぞれに尊重しつつ、プロ グラムの有する目標について認識を共有し、自由 で建設的な意見、情報交換ができ、ベスト・ミッ クスを目指すことができる緩やかな援助協調の枠 組みで十分であろう。そのような政策的なコント ロール・センターは、やはりナクル市環境局のよ うなところが主体となって実施することが望まし いと考えられる。
(7)地域住民の参加 参加型事業というのも新しい援助モダリティー のひとつである。ナクルの場合、国立公園に隣接 している都市活動が直接環境に影響を与えること から、地域住民の理解がなくては環境事業も成果 が上がるはずもない。 しかしながら、やや懸念されるのは、ナクル住 民の自然環境に対する意識である。先に述べたよ うに、観光客は公園に隣接するナクル市との接点 はほとんどなく、また、ナクル市住民にとっても、 ナクルの観光資源は直接自らの生活に関係してい るという意識は薄い。ナクルの自然が地域住民自 らにとっても貴重なものであるということを実感 し、環境問題に住民が積極的に取り組むインセン ティブを構築しないと、最も重要なステークホル ダーであるナクル住民の協力は得られない。 ナクルの観光資源収入の恩恵をナクル市がもう 少し受けられることを考えることができればよい のかもしれないが、その仕組みを導入することは 容易なことではない。 そこで、環境問題に関する啓蒙活動や環境教育 を重視することが当面の課題となってくる。既に KWSがその活動を一部行っているものの、国立 公園の環境被害を訴えることに重点があるため、 ナクル市民の日々の活動との関連において環境保 護の必要性を啓蒙していく必要がある。 ナクル市における学校レベルでの環境教育の充 実、国立公園の見学等々の活動の充実はもちろん であるが、各種NGO、CBOの活動に期待したい。 現在ナクルで比較的活発に活動している主な NGOは4〜5団体、CBOは20以上存在しており、 それぞれ住宅地の清掃や維持活動、ごみ収集、植 林、農業指導といった活動を行っている。住民に 常日頃接触のあるNGO、CBOに、環境教育を実 践してもらうことが効果的である。そのための教 育キットのような支援は、十分可能性がある。 そのような活動を通じて、地域住民自身が、エ コタウン・ナクルで生活していることの自覚を形 成できれば、ナクルの自然環境だけではなく、世 界がその住民の環境への取り組みに関心を示し、 ナクル市が注目を浴びる日もくるかもしれない。

第8章 日本がナクル環境事業を 支援する意義

90年代半ばから、日本政府は環境を援助対象の 柱の一つとして位置付けてきた。しかしながら、 過去の円借款における環境事業の実例を見てみる と、地球環境問題対策案件(植林、省エネ等)や 公害対策案件(大気汚染、水質汚濁、廃棄物等)、 上下水道事業といったものであり、個々のプロジ ェクトを環境事業と定義し直したものも少なくな い。また、総合的環境保全というカテゴリーにお いても、都市環境改善ではインフラ整備の集合体 であったりする。最近になって、貧困削減・農村 開発を総合環境的環境保全事業と称する場合もあ り、NGO等とも協力しつつ参加型事業として取 り組むケースもでてきている。これは、JBICの みならず、日本の環境援助の傾向と言えよう。 上記のような環境事業のニーズが途上国で減少 したわけではない。しかしながら、総合的環境保 全というアプローチがこれから増えていくことは 自明であるにもかかわらず、これまで述べてきた ようなナクル環境事業(プログラム)のような支 援経験、そして援助協調のなかでイニシアティブ を取るようなスキームでの支援経験は、日本では 未だ蓄積されていない。 ナクルは、世界的に有名な自然環境と都市環境 が隣接しているという特殊性、マネージするには 適当な規模、日本の得意とする「水の管理」を中 心に据えたアプローチの可能性等、総合環境保全 事業として支援するに相応しい条件が揃っている と考えられる。さらには、環境と貧困といった切 り口でのアプローチも可能である。 日本単独ではプログラムの推進は不可能なの で、他のドナーとの協調は絶対必要だが、そのた めの政策と情報のコントロールを日本の支援対象 にすることで、援助協調のイニシアティブを取る ことも可能で、これも日本の支援方法としては意 義深い。資金の投入量の問題ではなく、日本側の 意志の問題によるところが大きい。 さらに、2005年にはケニアで世界湖沼会議が開 催されることが決まっており、ケニア政府もナク ルの環境問題をビクトリア湖と並べて大きなテー マにしようと考えているところである。そのような国際的な場において、日本のイニシアティブで ナクルの環境事業に取り組んでいることをアピー ルすることも、当面の目標とすることができよう。 日本の支援を世界に売り込むチャンスである。 そのために、大きな事業を実施する必要はない。 環境事業を動かしている要の部分に日本がインボ ルブしているという姿を見せることができれば、 2005年までの目標としては十分である。 最近、援助効果が目に見える形で問われること が多い。そのため、被援助国の事業実施能力が不 十分である事業には支援しないという態度も見受 けられる。予算も人もノウハウもないところを支 援して、いったいどんなoutcomeが期待できるの か、効果は出ないだろうという意見である。もち ろん、それは重要なことではあるが、それを強調 するあまり、本来援助すべきところが切り捨てら れることもあることに配慮すべきである。 援助には、“育てる”という要素も重要であり、 途上国で組織を構築し、人を育てる作業は非常に 難しく、根気のいる仕事であるという理解がなけ ればいけない。アジアでの成功も、援助は“継続 は力なり”を実践してきたことの成果を示してい る。 そのようなコンセンサスのもと、ナクルの環境 事業にはAll Japanとしての取り組みが望まれる ところである。支援することで、日本は援助する 側として、多くのことを学ぶ機会にもなろう。

おわりに

JBICでは前述の事後評価結果に基づく提言を踏 まえ、援助効果促進調査(SAPS;Special Assis tance for Project Sustainability)を活用して、ナ クル地域の環境汚染源を明らかにし、将来の環境 事業のためのフレームワーク作りを行った。また、 ナクルの環境問題の現状についてコンセンサスを 得ることを目的に、2001年9月には、ワークショ ップ(Workshop on Strategic Plan for Environ ment and Development in Nakuru Region)を開 催し、ケニア政府はもちろん、他のドナーに対し てもナクルの総合的な環境問題への取り組みを訴 えた。 SAPS調査のなかで、緊急性のあるものはアク
ション・プランも提示している。 言わば、JBIC の支援でナクル環境事業の提案書を作成したわけ である。そのフレームワークのなかで、日本はど のようなツールで、どのように支援するかを検討 している。 とりあえずは、行政能力の強化と水質試験所の 活性化に取り組むことで、環境事業のイニシアテ ィブを日本が取っているという姿を構築できるの ではないかと考えている。そして、他の様々なサ ブ・セクターについては、他のドナーとの援助協 調の枠組みの中で取り組めることを期待してい る。こういったアプローチそのものが、JBICに とっても新しいことであり、挑戦なのである。 ナクルを訪れた人は皆、ナクル湖のフラミンゴ の群れと自然のなかで共生している動物達を見て 感動する。その自然は、地球の財産として保護さ れるべきだと思うに違いない。しかし、その自然 環境の汚染が、周辺地域の開発のために確実に進 行していることはあまり意識しない。 ナクルの環境を守りたい、今から何らかの手を 打たなければ、といった多くの人々の思いが、こ の環境事業を推進するエネルギーになるものと願 う。
[参考文献] [和文文献] 国際協力銀行(2001) 円借款案件事後評価報告 書 中村正久(2001) ナクル湖とその集水域の総合 的な保全について 円借款案件事後評価報 告書 国際協力銀行 2001年10月 辻村茂男(2001) ナクル湖の自然環境と近年の 生態系変化について 円借款案件事後評価 報告書 国際協力銀行 2001年10月 国際協力銀行(2002) ケニア共和国 大ナクル 上水事業に係わる援助効果促進調査 (SAPS)報告書 2002年1月 国際協力事業団(2001) 国際協力総合研修所 第2次環境分野別援助研究会報告書 2001 年8月
[英文文献] Municipal Council of Nakuru(1999)Strategic Nakuru
Structure Plan Government of Kenya, Kenya Wildlife Service (2001) LAKE NAKURU INTEGRATED ECOSYSTEM
MANAGEMENT PLAN 2002-2012 Robert Ndetei, Jacson Raini, Dr. Mavura(2001) CAN WE SAVE FLAMINGOS; CONFLICT BETWEEN LIFE AND LIFESTYLES IN
ENVIRONMENTAL ISSUES IN LAKE
NAKURU WATERSHED Thamy & Raini(1995)Environmental Assess-ment Programme WWF annual Report Samson W. Mwangi(2000)Partnerships in urban environmental management: an approach to
solving environmental problems in Nakuru, Kenya,
Environment & Urbanization Vol.12, No.2
October 2000 Mavura & Wangila(2001)The Current Pollution Status by Heavy Metals and Pesticide Residues
Sep. 2001 Foekeb & Owuor(2000)Urban Farmers in Nakuru, Canada’s Office of Urban Agriculture 2000
134


http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/686.html

[環境・自然・天文板6] フロリダで麻痺状態のペリカン、世界中で相次ぐ生物の異変や大量死
strage world 奇妙な世界
2017-01-18
フロリダで麻痺状態のペリカン、世界中で相次ぐ生物の異変や大量死

http://somin753.hatenablog.com/entry/2017/01/18/フロリダで麻痺状態のペリカン、世界中で相次ぐ

先週、米国フロリダの海岸で麻痺状態のペリカンが保護されようです。
原因を調べるために水質検査などしているようですが、フロリダのペリカンと言いますと、2012年、過去数週間に渡り、ペリカン538羽の原因不明の謎の死が確認されていて、その他の鳥の死も確認されたことがありました。
このような鳥の大量死というものは日本でも確認されています。
2014年『石川県珠洲市の海岸で、大量のウミネコの死骸が流れ着いているのが見つかった』というニュースがありました。
19日午後3時過ぎ、珠洲市の海岸で大量のウミネコの死骸が打ち上げられているのを地元の住民が見つけた。20日、回収にあたった市によると、1.2キロほどの範囲にわたって合計241羽の死骸が確認された。石川県では鳥インフルエンザの疑いもあるとみて、そのうち3羽について簡易検査を行なったが、いずれも陰性だった。
241羽のウミネコの大量死、フロリダのペリカンの死のように謎のままです。
昨年はエルサルバドル付近(場所がよく分かりませんが)でペリカンが30羽大量死しました。
その頃日本では、北九州・曽根干潟(北緯33度線)で500匹のカブトガニが謎の大量死をしています。
カブトガニの異変は6月ころから始まったようです。
その頃世界では、
6月
※カリフォルニア州の海岸にエビが大量発生
※チリやロシアの湖が1日で消えた
7月
※横須賀でクジラ
※エルサルバドルでペリカン大量死
※琵琶湖でハスが消滅
※ミシガン州で鳥の大量死
8月
※チリでクジラ
※イエローストーン流域で魚大量死
※インドネシアでクジラ
9月
※日立市でクジラ
※ボストンで47羽の鳥が空から落ちてきた.....などなど
埼玉県ではカラスの大量死がありましたが死因は不明、また、チリの海岸では2500羽以上の鳥が死んでいるのが発見されたりしましたが、こちらは原因がはっきりしないながらもボツリヌス中毒の可能性ということです。
もしかしたらペリカンの大量死や今回の麻痺も何かしらの中毒の可能性があります。
では。


http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/690.html

   

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