
※2025年12月3日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大

※紙面抜粋

※2025年12月3日 日刊ゲンダイ2面
身を切る「フリ」はもうたくさん 議員定数削減は「改革ごっこ」の目くらまし
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/381098
2025/12/03 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し

「政治とカネ」を煙に巻く(C)日刊ゲンダイ
党首会談で決着などと大騒ぎしているが、国民は頼んだ覚えなし。「政治とカネから目をそらす国民騙し、少数政党切り捨ての横暴に有権者は目を白黒だ。露呈した民主主義軽視とその場しのぎ、 維新という政党のチンピラ体質にもう唖然。
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「2025T&D保険グループ新語・流行語大賞」で年間大賞に選ばれたのは、高市首相が自民党総裁選で勝利した際に発した「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という言葉だった。
変なイチャモンを付けるわけじゃないが、総裁選の投開票が行われたのは10月4日だ。つまり、あれから2カ月も経ってないにもかかわらず、「年間」の大賞というのだから選考委員の脳裏には、このフレーズがよほど深く刻み込まれたのだろう。
だが、この2カ月間で多く取り上げられ、世間の注目を集めた高市発言は「働いて×5」よりも他にあったのではないか。例えば集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」を巡り、台湾有事も該当し得るとした国会答弁は国内のみならず、中国はもちろん、国連総会の場でも取り上げられたほか、立憲民主党の野田代表との党首討論で企業・団体献金の規制強化を求められた際に言い放った「そんなことよりも、ぜひ(衆院議員)定数の削減やりましょう」という発言もSNSであっという間にトレンド入りしていたからだ。
とりわけ、企業・団体献金の全面禁止や規制強化に関しては、自民派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件が発覚した2023年末以降、国会質疑で度々取り上げられてきた「政治とカネ」問題の一丁目一番地と言うべき“本丸”だ。
定数削減よりも歳費を半分にするべき
世論調査でも企業・団体献金の廃止や規制強化を求める声が圧倒的多数を占めており、女性初の総理大臣に就いた高市政権に期待する声も大きかったはずだが、それを「そんなこと」と一刀両断したのだから唖然呆然。
最初からヤル気なしと決意表明したようなもので、国民を愚弄するにも程があるだろう。
2日までに公開された24年の政治資金収支報告書では、高市が代表を務める自民党奈良県第2選挙区支部で政治資金規正法の上限を超える1000万円の寄付を企業から受けていたことが判明。高市の事務所担当者は「事務的なミス」と説明し、上限を超えた分の250万円は返金し、25年の収支報告書に「支出」として掲載するというが、こうした過ちを自民は一体何度繰り返すのか。
問題が発覚するたび、「事務的なミス」と言い逃れするだけ。再発防止のための規制強化もせず、責任の所在も曖昧にしたまま。法律を順守するべき政治家としての自覚も感じられない。これではいつまで経っても「政治とカネ」問題がなくならないのは当然で、だからこそ国民は強い憤りを感じているのだ。
衆参両院選挙で、自民は「政治とカネ」問題に対する世論の激しい怒りを痛感したのかと思いきや反省ゼロ。何事もなかったかのごとく「そんなこと」扱いし、突然出てきた「議員定数削減」に前のめりになっているのだから何をかいわんやだ。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「『政治とカネ』問題で議員定数の削減を掲げるのであれば、いっそのこと定数を半分にするなら本気度が伝わりますが、1割などという数字に何の意味があるのか。ならば議員歳費を半分にするなどの政策を打ち出すべきですが、自民、維新は逆に歳費の月額5万円アップを言い出しているから、これも意味不明です。詰まるところ、いつものやっているフリで国民をごまかせると考えているわけです」
カネに汚い自民と維新が結託して政治が良くなるわけがない

衆院会派「改革の会」抱き込みは数合わせ(C)共同通信社
さて、そんな高市は日本維新の会の吉村代表と1日会談。議員定数削減について「小選挙区25、比例代表20」を軸に議論することで合意したと報じられた。
維新は当初、定数の1割削減法案を今国会で成立させるよう主張。自民が難色を示すと、今国会は工程を盛り込んだ法案にとどめ、1年以内に結論を得ることで折り合ったという。
さらに藤田共同代表が、協議が不調に終われば比例を自動的に1割削る規定を明記するよう求め、遠藤国対委員長も自民が拒否すれば連立離脱も辞さない考えを提示。11月30日夜、遠藤と木原官房長官が衆院議員宿舎で会談し、小選挙区も削減することで一致したという。
自民、維新の協議後、藤田が自民の萩生田幹事長代行について「相当汗をかいていただいた」と持ち上げ、自民の閣僚経験者も「維新もだいぶ与党の現実が分かってきた」と感想を漏らしたことが報じられ、一部メディアでは党首会談で決着などと大騒ぎしているが、何をトンチンカンなことを言っているのか。
そもそも国民は議員定数削減について早急に取り組むよう求めているわけでも、頼んでもいないのだ。立憲の安住幹事長が記者団に「なぜ1割削減なのか、なぜ1年で結論なのか説明を求めたい」と強調していた通り、結論ありきで議論はこれからというのは話の順序が逆だろう。
小選挙区の削減などは容易に決められない
大体、カネに汚い自民と「身を切る改革」などと言いながら私腹を肥やすようなことばかりしている維新が結託して政治が良くなるわけがない。
実際、両党がタッグを組んで出てきた政策案といえば、やれ労働時間規制の緩和だ、やれスパイ防止法だ──などとロクでもない話ばかりだ。
議員定数削減だって反対する野党勢力を叩くためのネタに過ぎないのだろう。しょせんは「政治とカネ」問題から目をそらすための格好の国民騙しの手口と考えているだけだ。
唐突に打ち出された少数政党切り捨てにもつながる横暴に、心ある有権者は目を白黒させているに違いないが、高市政権にとっては民主主義の軽視など知ったこっちゃないのだろう。それは衆院の会派「改革の会」に所属する3人を自民会派に取り込んだ様子からもうかがえる。少数与党の状況を何が何でも解消してやろうとなりふり構わず数合わせ。いつもは立憲や共産党の野党共闘に対して「野合」などと批判しているクセに、自分たちは相手の政策も政治信条も関係なく平気で“抱き付く”のだから支離滅裂ではないか。
維新という政党のチンピラ体質にも唖然だ。
野党と共同で企業・団体献金の原則禁止法案を提出していたにもかかわらず、自民と連立を組んだ途端、「いったん取り下げ処理をしても妥当かな」(維新の藤田)などと言い放つ始末。つい数カ月前まで、自民の金権体質を痛烈に批判し、企業・団体献金の廃止は譲らないと強硬姿勢を示していたのは何だったのか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう言う。
「議員定数の削減は、維新が主張していた企業・団体献金の廃止をひっこめる代わりに言い出した政策で、連立を組むために自民が丸のみしたのが発端です。つまり、そもそもの政策協議が稚拙だったため、今の迷走状態につながっているわけです。小選挙区の削減などは容易に決められない。下手をすれば数年かかるわけで、自民は果たして本気で削減する気があるのかも分かりません」
自民も維新も結局、「今だけ、カネだけ、自分だけ」。「改革ごっこ」や、身を切る「フリ」に騙されてはダメということだ。
http://www.asyura2.com/25/senkyo298/msg/558.html









題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。