日米情報協力の推進(Armitage Report)

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投稿者 vio 日時 2001 年 5 月 10 日 21:21:27:

回答先: アーミテージ国務副長官「日米関係を米英並みの同盟に」 投稿者 kamiura.com 日時 2001 年 5 月 10 日 20:49:25:

● 02/09/01_日米情報協力の推進(Armitage Report)

 やはり、別に目新しいものでもないのだが、INSS(国防大学国家戦略研究所)が、2000年10月11日付けで発表した特別報告を取
り上げてみたい。元国防次官補で、ブッシュ大統領のブレーンであり、対日政策のキーマンでもあるRichard L. Armitageが作成に
関与したレポートである。
 実はつい先日まで、私もレポートに目を通していなかった。別に日米関係の専門家でもない、単なる無職者の私が、どうしてこれを
チェックしようと思ったかというと、きっかけは先週日曜日のテレビ朝日系「サンデー・プロジェクト」である。
 石原慎太郎が出演しており、ダボス会議での演説の件につき、お馴染みとも言うべきか、自説を展開していた。慎太郎という名前が
なければ、単なる陰謀論好きの電波野郎の発言として一蹴されてしまいそうな内容だったが、田原総一郎とは意気投合の様子だった。
 それはともかく、そこで触れられたのがArmitageのレポートである。内容がフリップに3項目ぐらいにまとめられていて、一つ
として「日本版CIAの創設」などと記されていた。オヤと思い、私がわざわざネット検索で関連文書を探したのはそのためである。
 ながら見だったので、同一の文書をもとにしているかどうか自信がない。が、たぶん上のINSSレポートのことだろう。日米間の情
報協力の問題は、リストラ官庁攻撃者としても要注目であるので、本稿でも取り上げておきたい。
 1月31日付の産経新聞によれば、同レポートを材料に、自民党国防部会でも定期的に勉強会が開催されているようである。遅ればせ
ながらであるが、当方も一応関係個所を軽くフォローしておくこととしよう。
 以下は、同レポートの「インテリジェンス」の項の仮訳である。

 日米両国にとって、東アジアにおける潜在的・顕在的な脅威は変質しつつある。そのため、二つの同盟国間のインテリジェンス機能
について、より協力を深め、統合することが必要となっている。日米同盟の重要性にもかかわらず、日本とのインテリジェンスの共有
度合いは、この分野において我々がNATO諸国とますます緊密な関係になっていくのと比較して、極めて対照的である。グローバル
な発展とともに、そうした傾向はますます加速されている。したがって、予算・人員が削減される中、平和維持ないし創出活動といっ
た新たな使命を果たすために、同盟国間のインテリジェンス機能において協力を深め、その統合を進めていく必要もまた生じているの
である。
 冷戦の終焉によって、脅威が捉えにくくなり、しばしば政策オプションもより複雑なものになっている。その結果皮肉にも、世界共
通の安全保障上の脅威に関する重要なインテリジェンスを収集・分析する上で、協力を深める必要性が切迫している。日本政府は、既
存の日米間の情報協力がその必要性を満たしていないことを明らかにしている。
 合衆国にとっては、日本とより協力を深める潜在的な意味は明白である。同盟国は政策を実行するにあたって、差異を明らかにしつ
つ同時に合意に達しなくてはならない。その際の判断は相対的でかつ競合的な分析に基づくものでなければならない。インテリジェン
スの共有が、目的達成のために必要となる。そのほか、労力を分配すれば、つまり、同盟国相互の利益に応じて分析作業を割り振れ
ば、予算・人員が制限されたインテリジェンス機構にとっても、得るところが大きい。日本は国際社会に組み込まれているのだから、
戦略的な情報交換にあたって、貴重な生情報や洞察をもたらすことができる。
 おそらくより重要なことは、日本との情報協力に関する戦略ビジョンが長らく課題とされてきたということだろう。日米間の情報協
力を強化することができなければ、リスクを増大させるばかりである。試練を迎え、同盟間で共通の理解や行動が求められるときに、
基本認識やあるいは政策までもがバラバラになってしまうからだ。
 情報協力の質を向上させることは、日本にとっても同様に重要である。日本がより国際社会に貢献するためには、日本独自のインテ
リジェンス能力を強化すると同時に、米国との協力を深める必要があるからである。
 情報協力を進めれば、日本は政策決定や決定過程、危機管理の面でも改善をはかれるだろう。さらに言えば、アジア圏の内外におい
て、日本は多様な脅威に直面し、より複雑な形で国際的責任を問われる。インテリジェンスによって、日本政府は自国の安全保障上の
必要をよりよく理解することができる。
 情報協力によって、日米同盟における日本の役割も強化される。日米両国におけるインテリジェンス機構の規模の不均衡を考慮すれ
ば、バランスのとれた情報共有には必然的に時間がかかるだろう。しかし、長期的には、潜在的な脅威に関する生情報、競合的な分析
資料、相互補完的な将来見通しが得られるはずである。そうであれば、協力もより実りあるものになるだろうし、両同盟にとっても享
受できる情報は向上するはずなのである。
 両国における国内レベルの問題として、日米情報協力を実現するにあたっては、国内での調整が求められる。協力は、新しい態様の
ものであると同時に、既存の関係を拡大するものでなければならない。
 米国は以下のような施策を実行する責任がある。

・ 国家安全保障顧問は、情報協力の強化を一つの政策とし、インテリジェンス政策上の優先課題にしなければならない。
・ 米国の政策決定者と歩調を合わせつつ、中央情報長官(DCI)は、日本と共同作業を行い、日本の国家安全保障上の優先事項に
適うような形で協力を深めなければならない。
・ 不法移民や国際犯罪、テロリズムといった国境を越えた課題に対処するには、両国の機関間で、業務計画を調整して策定する必要
がある。
・ 日本政府の十分に納得できる志向、つまり、日本独自のインテリジェンス能力を充実させたいという志向については、米国政府は
これを支援しなければならない。その中には自前のスパイ衛星も含まれている。情報共有の質を高めるためには、差し迫った課題に注
意を向ける必要がある。
・ 合衆国政府は、分析センターのスタッフを日米共同で充てたり、互恵的な教育訓練を行ったり、同様の緊密な施策を通じて、イン
テリジェンス網を充実強化することを優先するべきである。

 日米両国間で情報関係を強化するためには、同時に両国内において政治的な支援が必要である。この点につき、日本政府はいくつか
の基本的なステップを踏んでいく必要がある。

・ 日本の政治指導者は、国民的、政治的合意を得て、機密情報を保護する新たな法律を制定する必要がある。
・ インテリジェンス機能を改善すれば 、日本の政策決定についても改善が促されるだろう。一方で日本政府の指導者は、意思決定過
程についても問題を解決する必要がある。インテリジェンスの共有は、日米間はもちろんのこと、日本政府内においても行われるべき
である。
・ 経験に照らすと、インテリジェンス・プロセスにおいていかに議会を関与させるかが非常に重要である。民主主義国家において
は、インテリジェンスを監督することが、政治的了解を持続させる上で極めて重要だからである。

 要するに、日本が将来の防衛上の必要性に取り掛かり、行政機関を再編している今、我々が情報協力に取り掛かるべき時期が到来し
たということである。

 大まかな内容だが、いくつか重要な提言が含まれていると思う。数点について指摘すると以下のとおり。

 まず、日本が国内的に整備する事項として、機密情報保護のための新たな法律を制定する必要性が謳われている。
 私は当面、個人情報保護法の制定にもっとも危機感を持っているのだが、上の「新たな法律」とは、もちろんこれだけにとどまら
ず、さらに有事法制をめぐる議論をも包括する、より一般的な機密保護法のことを指しているのではあるまいか。
 若干、被害妄想的というか誇大妄想的に考えると、昨年7月末の英文名簿事件。すなわち、リストラ官庁延べ千人以上、機密指定も
含むCIA文書が、米国の諜報サイトCryptomeに掲載された事件が、上の提言にも大いに影響を与えているように思う。事件の詳細
については、本HP、Englishの項を参照していただきたいが、CNN、Washington Post、Financial Times、AP、Reuter、はては
人民日報にまで掲載された大事件である。
 10月に出たレポートなので、作成者がこの事件を十分念頭に置いていたと考えても何の不思議もない。いや、当然そう考えるほう
が自然である。
 要するにカウンターパートがこんなに情報ダダ漏れの状態では、安心して情報交換などできない。違反者が出た場合は、ぜひ、しっ
かり取り締まってもらいたい、ということなのだろう。

 米国内向けの提言として、分析スタッフを日米共同で充てたり、互恵的な教育訓練を行う、などと記されている。現在中止されてい
るともいわれる「米国中央情報局分析研修」。これが上の文脈で再開されるのか否か、再開された場合どういう態様のものになるの
か、要注目である。

 機密保護法を持ち出してきたり余計なお世話だと思う反面、いくらか良心を感じさせるのが、日本向けの提案として、情報機関の監
督に議会を関与させるべきだとしている点である。
 たしかに現在でも、たとえばリストラ官庁を例にとれば、リストラ官庁長官などが衆参法務委員会等で質疑にさらされることはしば
しばある。しかし、実際のところ、それは議会によるチェックというには程遠く、またリストラ官庁長官もノラクラと事実上の答弁拒
否ばかり繰り返しているのが実態だ。
 私も詳しく知らないが、米国においては上下院の諜報委員会が、ときに情報政策について提言を行いつつ、一定程度、情報機関を監
督しているのと大違いである。
 機密保護を持ち出すのであれば、まずもって、たとえば法務委員会に相当程度の権限を付与すべきである。

 もっとも、上のように触れてはみたものの、情報協力のパートナーとして、リストラ官庁などハナからカウントされていないのかも
しれない。今やリストラ官庁がいかにダメな組織であるかということは、誰の目にも明らかだからである。
 リストラ官庁向けにあえて記しておくが、当HPはほとんど日本語の超ドメスティックな内容だが、当HPを閲覧している米国ドメイ
ンは何もプロキシー・サーバのそれだけではなく、相当数の関係機関が含まれていることを念のために付け加えておきたい。
 我が情宣活動は米国をも射程に入れているのである。文字どおりインターネットだから当然の話ではあるのだが・・・。
 





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