メキシコでのカーターとキッシンジャー

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投稿者 SP' 日時 2001 年 8 月 07 日 15:23:59:

回答先: 超常現象と魔女狩り ガイ・L・プレイフェア 投稿者 SP' 日時 2001 年 8 月 07 日 15:22:01:

同じく『ユリ・ゲラーの反撃』第二部より。


 この件では、私はすでにいささか関係していたと言えるかもしれなかった。アメリカの次期大統領夫人、ロザリン・カーターが、ヘンリー・キッシンジャーと一緒にメキシコを訪問した時、公式大統領晩餐会を催したのはカーター夫人と同格者のマンシー(メキシコ大統領夫人)だった。ロペス・ポルティーヨ大統領自身は出席しなかったが、私は参席した。マンシーが私を二人の貴賓のすぐ隣に座らせた。ペピートと米国大使も、フォード大統領の子息と一緒にわれわれのテーブルにいた。
 私はマイクから、彼らのためにデモンストレーションをいくつかするように具体的な注文を受けていた。カーター夫人にはスプーン曲げ、キッシンジャーには読心術であった。食事の間は丁重な会話をして、良いタイミングを待っていた。ロザリン・カーターはたいへんくだけた、飾らない人で、テレパシーや心霊現象のような概念についても全く偏見がないように見えた。キッシンジャーも同様に見えた。
「ある種の現象を説明がつかないからといって認めないのは、あまり賢いこととは言えないでしょう」とキッシンジャーは私に言った。多分彼はただ儀礼的にそう言ったのだろう。なんといっても彼は合衆国きっての外交官だったのだから。
 コーヒーが出ると堅苦しい気分がいくぶんゆるんできたので、とうとう私の得意技を披露するときが来たと感じた。私はかなりしっかりした作りのデザート用スプーンを取り上げて、カーター婦人に手渡し、その先のくぼんだ部分を手で持ってくれるように頼んだ。
「さて私の手をあなたの手に重ねさせてください。そうです。そして私はこの指でただなぜるだけです」と、言った。私は、彼女が自分の手の中でそれが曲がっていくのを感じるようにしたかったのである。
 しばらくさすっていると、やがてスプーンはいつものように上向きに曲がり始めた。カーター婦人はびっくりし、そして喜んで、笑い始めた。
 私は自分の手をどけて言った。
「さあ、持って、曲がっていくのをよくご覧になってください」
 婦人がそうして、目を開いて見守っていると、手にしたスプーンはゆっくりと上向きに曲がって直角になった。
「まあ、驚いた!」と、感嘆の言葉を発し、「国の友人たちもこれが見られたらいいのに。ジミーにこれを見せなくっちゃ」と、言ったが、そのとおりにしたようである。たしか彼女はそのスプーンを私たちの最初の出会いの記念に持っていったと思う。
 客の何人かが自分たちのテーブルを立って見に来ていた。アメリカ大使館の正式の写真家が撮った、スプーンを手に持っているカーター婦人の写真が私の所にある。その写真を撮る時は婦人と私は席を交替して、私はキッシンジャーの隣に座っていた。
「さて、キッシンジャーさん、あなたとは全く別のことをしてみたいのですが」と、私は言った。
 彼はちょっとひるんで、椅子を少し後ろにずらした。そして手を挙げて「いや、いや。私の心を読まれたりしたくないのです。秘密をたくさん知っていますから」と言った。実際に彼はかなり気掛かりなように見えた。私は「私が横を向いている間に何かを描いて、それを手で隠すだけでいいですから」と話した。その時にはもう全員が私たちを見ていたので彼も快く応じてくれた。
「それでは、そのスケッチを心の中で繰り返し描いてみてください」──私は大きな眼鏡の奥の目を見詰めて言った。こういうことは何回もやっているので、どんな絵だったかは思い出せないが、私としては上出来の部に入ったことは覚えている。私の描いたものが、彼のと同じ形だったばかりでなく全く同じ大きさだったのである。
 キッシンジャーは少し顔色が変わって、「外に何か私の心から取らなかったか」ということを知りたがった。
「いや、ここではそれについてお話しないほうが良いと思います」と、私は答えた。
 彼は私をきっと見据えた。「そうですか、まじめな話でしょうね」と、のどの奥からうなるような声で言うと、まわりの人がみな急に静かになった。
「いや、キッシンジャーさん。冗談ですよ。私はただあなたの絵をいただきました。それだけです」と言って、私はその場の緊張を解いたが、実際には外にも手に入れたものがあった。しかしそのことは別の折に話すことにした。彼は安心したようだったが、もし私がCIAの人間から個人的に要請を受けたことを実行していたと打ち明けたら、彼はなんと言っただろうか。
「それではあなたのことで私が聞いていたのは、みな本当のようですね」と、キッシンジャーは結論を出した。「超能力についてはいろいろと聞いていますが、これほど的確に働かすことができるとは、そしてあなたがそれをこのように、パーティーなどでやってみせられるとは思わなかった。精神統一が必要だとは思っていたが、あなたはそれもしなかったですね」
「いいえ、しました。あなたが心の中で繰り返し絵をスケッチなさっている間に。あれが私にとって一番重要な集中の時でした」と、私は答えた。「驚きだ!」が彼の最後の言葉であった。科学的に管理された実験ではなかったにせよ、彼に何か考える材料を与えたはずである。

 マイクが、この宴席の成り行きに大変満足していたのがはっきりわかった。彼はちょっと考えた後、私にいつものくだけた様子で尋ねた。
「何かを描いて、それを誰かの心の中に投影することはできないかな」
「できるとも、いつでもやれる」
「今試せるかい」
 どうしようかと迷った。私はまだ、あの黒魔術や心臓停止の話に本当に怖くなったのを覚えていたのである。しかしここではそれを忘れることにきめた。結局は、彼はアンドロポフを消すことを私に実際に頼んだわけではないのだから。そこで、彼がわきを見ている間に、私は彼が思いつかないようなもの、月と星のあるトルコの旗を描いた。私はそのノートの表を下にして置いて、彼の方へ押した。マイクはさっそくペンをとって、長方形とその中に三日月と小型の星を描いた。それから彼はノートをひっくり返して私たち二人のほとんど同一な絵をじっと見た。
「これは、信じられない!」と彼は驚きを表した。もしできるかどうかについて心配するのをやめてただそれをやれば、スプーン曲げでも、テレパシーでもできるということがわかると、人はいつも驚嘆するものだ。そこでまたマイクは真顔になった。
「ねえ、ユリ。きみは私の心に何かを入れたんだ。同じようにして、なにか(アイディア)をある人の心に入れて、その人をそれによって行動させるようにすることはできないだろうか。…実はアメリカ大統領のことなんだよ」。




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