吉本隆明氏に聞く(2)オウムに“親鸞的”造悪論

 
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投稿者 おっと 日時 2000 年 3 月 16 日 04:33:21:

回答先: 吉本隆明氏に聞く(1)弓山達也氏と対談 投稿者 おっと、こんなこと言う人もいたんだ 日時 2000 年 3 月 16 日 04:32:22:

【宗教・こころ】吉本隆明氏に聞く(2)オウムに“親鸞的”造悪論
[1995年09月07日 東京夕刊]


弓山氏「先生は麻原彰晃を有数の宗教家、思想家と評価する一方、一般市民として
大衆の原像を繰り込んでいこうという考え方からは、オウム真理教を根底的に否定
するとおっしゃった。先生の中にあるオウム真理教に対する評価の二重性の解決
が、今後の課題ということですが、たしかに宗教というのは、社会の倫理とぶつかる
部分があります。親鸞も『私は父母のために念仏を唱えたことはない』と言っていま
すね」

 吉本氏「僕は親鸞が好きで、親鸞にたくさんの影響を受けていますが、オウム真理
教、つまり麻原彰晃のやったことは親鸞的な思想から言うと、造悪(ぞうあく)論なん
です。親鸞は『善人より悪人のほうが浄土に行ける』と言っていました。そうすると、
弟子の中に『それじゃあ、悪いことをしたほうが浄土に往き易い』と言って、悪いこと
をする集団、分派ができました。困ってしまうんだけれど、本来的に親鸞の教義の中
には『それなら、わざと悪いことをしたほうが、浄土へ行けることになるんじゃないか』
という造悪論を否定できない要素があると思います。それでも、親鸞は『良い薬があ
るからと言ったって、わざと病気になるやつはいないだろう』という答弁の仕方をし
て、造悪論をなだめますけれど、それは弁解にすぎず、親鸞の教義の中には『やっ
ぱりいいんだ。悪いことをしてもいいんだ。極悪なヤツのほうが往生しやすいんだ』と
いう教義が確実にあるんです」

 弓山氏「麻原のいう『タントラ・ヴァジラヤーナ』も同じ発想です。親鸞、あるいは仏
教の教義の中に危険性があるということですね」

 吉本氏「親鸞が『自然法爾章(じねんほうにしょう)』の中で漏らしている本音ですけ
れど、仏教の中には危険な要素があります。造悪論も仕方がないんだと言わざるを
えないところがあるんです。僕はオウム真理教のやったこと、やらせたことは、親鸞
流に言えば、造悪論の中に入ると思います。それで、僕の願望では『麻原、あいつ
は極悪深重できっと往生しやすいよ』と言いたいわけです。言えるようになりたいわ
けです。けれども、僕の器量が小さくて言えないわけですよ。ただ自分の中に二重性
の矛盾としてその問題があります。それは自分のダメさかげんでもあり、どうしても
二重性になってしまうのです」

 弓山氏「二重性の解決のために、葛藤されている」

 吉本氏「どうすれば、この二重性を解けるか。方向性だけは自分にあるつもりで
す。『市民社会あるいは庶民の善悪の倫理よりも、浄土の善悪の倫理のほうが規模
が大きいのだから、庶民の善悪なんていうのは、あまり問題にならないんだ』という
のが親鸞の言い方だと思います。僕らは信仰者ではないから、『浄土の善悪の規模
のほうが大きいんだ』とは言えないんだけれども、市民社会の倫理というものが、も
う少し普遍的な倫理に置き直せるんじゃないかなと思っています。それがたぶん未
来社会、消費社会の次の倫理になり得ると考えます。浄土の善悪ではないけれど、
市民社会の善悪よりも、もうすこし普遍化した善悪の規模、倫理の規模というものが
つくれるのではないかな、と僕は思っているわけです」

 弓山氏「現在の価値相対主義の中、何が真なのか、何が善なのかわかないような
状態の中で、ある意味では、麻原彰晃も新たな価値創造、新たな文化の創造を提
示しようとしたのかもしれません。しかし、オウムバッシングをしている人たちが守ろ
うとしている市民社会、これが抱える諸問題をそのまま残していいのか、というとそう
ではないと思います。現在の市民社会の中で間違っている点は間違っているんだ、
と言わなければならない。では、どうするかということが課題になってくるわけです
ね」

 吉本氏「そうです。だから麻原氏だって、ある意味で自分なりに解こうとしたし、解
いたと思ったと思うんです。だけど、それはちょっと違うよ、ということになると思うし、
僕らも、それはこうなんだとはいえない。けれども、今の市民社会の倫理は狭くて絶
対の正義とはいえない。もう少し普遍化できるんじゃないかな、と思います。僕は、そ
れを見つけたいんだ、探したいんだという願望を持ちますね。そういう願望が遂げら
れるときに、自分の中にある二重性みたいな矛盾が解けるんだと思います。今のと
ころは、そんなはっきりしたものがないですから、自分の中にやっぱり矛盾を抱えこ
んでいます。市民社会の倫理として、その社会の一員としての自分を否定する以外
にない一方、思想として市民社会のあり方を超えたい自分があります。何か超えよう
とするものがあります。そういう自分がありますから、どうしても二重性を抱えこんで
しまうんです」




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