中絶胎児も痛みを感じている可能性がある

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投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 8 月 31 日 00:24:36:

   中絶胎児も痛みを感じている可能性がある


●先日(8月21日)の投稿(ΨΨ空耳の丘Ψ9SR316; 英国で「脳死患者は痛みを感じる可能性がある」という医学論争が勃発)では、「脳死」患者が臓器摘出の際に痛みを感じている可能性が高いという麻酔医の問題提起をめぐって英国で議論が起きていることを伝えましたが、今度は妊娠初期の――だから中絶しても全然かまわないと考えられてきた――胎児でも痛みを感じている可能性がある、という懸念が医師の中で広がっていることが報じられました。

●フランス革命の直前に、フランスではメスメルの“動物磁気”治療が大流行していました。 今で言う「理学療法」ってとこだったのですが、当時はこの中央ヨーロッパからやってきた新型医療が、従来型の医療を行なっていた医者たちから顧客を奪い、上流階級の入れ込みようも激しかったことから、当然、“動物治療”叩きの風潮が高まりました。 それを後押ししたのは、いうまでもなく医学エスタブリッシュメントと、それに同調する――そして世俗的利権を共有していた――学士院(アカデミー)の名誉学者連中だったわけ。
  “メスメル療法”の効果を調べるための王立専門委員会というのが急遽つくられて、その代表格として活躍したのは、フランスの学界で当時もっとも影響力のあったラヴォアジェ[1743〜94年]でした。なにせラヴォアジェは「近代化学の開祖」と呼ばれるほどに、化学のありかたを革命的に“発展”させた人物だったので、彼の発言は決定的な影響力を持っていたわけ。
  この王立委員会は、「メスメルの治療に効果はない」という予想通りの結論を出し、新型医療の普及に冷や水を浴びせたわけですが、ラヴォアジェの言論でもっと有名なのは、当時起きた隕石落下事件に対して「天に岩など存在し得ないから、岩が空から落ちてくるなんて絶対起こるはずがない」といって、これを否定したことです。 ラヴォアジェが生きているうちは、この御託宣が効いて、隕石落下事件はまともな考察の対象にはなりませんでした。
  ……ところが彼の死後、大規模な落下事件が起きて、実際に起きた以上、誰もそれを否定できないということになり、ラヴォアジェのドグマは斥[しりぞ]けられました。 結局、エラい学者先生でも、絶対的教条を信じ込むと、現実を見誤るというわけ。 (このあたりの詳しい話は『現代医学の大逆説』[工学社]を参照してください。)

●ラヴォアジェの思い込みは人畜無害だったのでしょうが、学者の思い込みで人殺しが正当化されるのでは、かなわない。 
  妊娠中絶はなにかと争点になりますが、とりあえずそうした政治論争とは別に、胎児や胚の生物学的能力をしっかりと見きわめる研究が絶対に必要だと思うのですが……。

● ……そういや、多分に旧約聖書の影響なんだろうけど、欧米ではつい最近まで女性は「男性のなり損ない」でしかない“欠陥人類”だと考える風潮が、学者の世界でも強かった。 そうした性差別だけでなく、同様に「白人以外はサルに近い“亜人類”だ」と考える科学信仰もあった。 
  女性も、有色人種も、そうしたイデオロギーが蔓延している社会の中で自分たちの存在の正当性と、権利の(既成支配層との)同等性を主張して闘った結果、「人権」を獲得することができた。
  胎児や赤ん坊は、自分たちの「権利」を主張することができない。 だからすでに「人権」を持っている人々が絶対的な保護を行なわねばならない存在なのですが、テメエの権利を主張するために、自分で「権利」を主張できない者たちの生命を蹂躙するのは、「権利」を語る資格がないのだと、私は考えています。 (そういう意味では、「脳死」患者の生命を蹂躙する風潮は、野蛮の最たるものだと思うし、まして成人のような“権利”が認められていない小児を――「他人を救うため」という名目で――殺してもいいとする今秋の「臓器移植法」改悪策動は、日本のジコチュー的倫理退廃の最悪の事例だと思いますね。)


●以下に、デイリーテレグラフのネット記事(翻訳ずみ)を紹介します。

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  赤ん坊は、中絶の時の苦痛を感じている可能性がある

  世間では何千件もの妊娠中絶が行なわれているが、これはまだ生まれていない子供たちに苦痛をもたらしている可能性がある――「胎児の意識」という論争的な問題に、医師たちが一石を投じた。

  ロンドンのヴィヴェット・グローヴァー(Vivette Glover)教授は、妊娠17〜24週目の胎児の中絶は、すべて麻酔をかけて実施すべきだと主張している。

  妊娠中絶の90パーセントは妊娠13週目以前に行なわれており、「この時期までの中絶なら胎児が苦痛を感じることはありえない」というのが医師たちの共通した意見であるが、それ以降の11週刊の間に行なわれる妊娠中絶が今回の問題の出所となった。

  目下のところ、妊娠13〜24週目の中絶手術は、胎児に麻酔をかけずに行なわれている場合があるからだ。

●出典:
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=VPk1Fwjx&atmo=mmmm0wSR&pg=/et/00/8/29/nabor29.html

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●出典:
http://www.dailytelegraph.co.uk/dt?ac=002830376029449&rtmo=lnFnQAot&atmo=HHHH22NL&pg=/00/8/29/dl03.html


   胎児:生命がまったく保護されていない存在

  赤ん坊は、中絶の時の苦痛を感じている可能性がある

    2000年8月29日


  母親のお腹の中の胎児が初めて“痛み”を感じるのは、いつなのだろうか? この疑問に対する決定的な答えは、まだ出ていない。だが今回我々は、学者の意見が従来の“通念”とはちょっとずつ違うものへと変化しつつあるという現実を、お伝えしたしたいと思う。 「胎児は妊娠13週目ではやくも痛みを感じている可能性がある」――今やこうした確信を持ち始めた医師たちが現われているのだ。

  「女性と児童のための福祉基金」(WCWF)は、妊娠13〜24週目の中絶が年間2万件も実施されていることに懸念を抱いている。そしてヒトの胎児が――モルモットやハリネズミも胎児ではないというのに――法による保護をまったく受けていないと指摘している。

  「胎児が苦痛を感じるかどうか」は中絶論争の中心的な争点ではない。 なぜなら、たとえば多くの人々が妊娠中絶に反対しているのは、「妊娠中絶は人命を故意に奪う行為だから、どんな妊娠中絶もつねに犯罪である」と考えているからだ。 とはいえ大部分の人々は、妊娠中絶を「望まし くはないが正当化できる場合もある」と、容認している。 こうした大多数の人々は、「胎児が痛みを感じているか、いないか」や「胎児に痛覚が備わるのはいつの時点からか」についての認識が変われば、容易に考えを変えるに違いない。

  近年の胎児研究の傾向を一言でいえば、胚についての新知見が続々と現われて、その結果、「胎児が痛みを感じ始める時期」が少しずつ“前倒し”になっているというのが現状なのだ。 「生命慈悲の会」(チャリティー・ライフ)のジャック・スカリスブリック会長が指摘しているように、「出生前の子供たちにも、我々が想定していたよりもはるかに早い時期から感覚能力が備わっている、という証拠はどんどん蓄積している」のだ。 彼は“プロライフ(妊娠中絶合法化反対)運動”の活動家なのだが。その活動理念に共感していない多くの人たちも、この指摘には同意せざるをえないはずだ。

  ほかにも理由はいろいろあるだろうが、胎児の能力についての認識がこのように改まってきた結果、今では世論の大勢も、毎年2万人前後が中絶されていることや、妊娠24週目以前なら中絶を許している現実に、不安感を持つようになってきた。 出生前のネズミの生命が、動物愛護法制のおかげで人間の胎児よりも保護されているというのは、まったく奇妙な話だし、不愉快でもあろう。 こうした状況を見直すべき時期が訪れているといえる。 改革を実現する最良の手段は、(英国下院議会の)非閣僚議員が法案を出すことであろう。

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●出典:
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=VPk1Fwjx&atmo=mmmm0wSR&pg=/et/00/8/29/nabor29.html

●●論点1922号●●

2000年8月29日(火曜)


    胎児:生命がまったく保護されていない存在
  赤ん坊は、中絶の時の苦痛を感じている可能性がある

           ロジャー・ハイフィールド
       (『デイリー・テレグラフ』紙・科学分野編集人)

             
  世間では何千件もの妊娠中絶が行なわれているが、これはまだ生まれていない子供たちに苦痛をもたらしている可能性がある――「胎児の意識」という論争的な問題に、医師たちが一石を投じた。 ロンドンのヴィヴェット・グローヴァー(Vivette Glover)教授は、妊娠17〜24週目の胎児の中絶は、すべて麻酔をかけて実施すべきだと主張している。 妊娠中絶の90パーセントは妊娠13週目以前に行なわれており、「この時期までの中絶なら胎児が苦痛を感じることはありえない」というのが医師たちの共通した意見であるが、それ以降の11週刊の間に行なわれる妊娠中絶が今回の問題の出所となった。 目下のところ、妊娠13〜24週目の中絶手術は、胎児に麻酔をかけずに行なわれている場合があるからだ。

  クイーン・シャーロット・チェルシー病院のグローヴァー教授は、英国科学知識普及会(the Royal Institution)がこの11月に予定している同問題に関する会議の議長を務めることになっているが、昨日、「胎児がいつから感覚能力を持つか、という疑問については、まだ多くの謎が解明できていない」と語った。 彼女は言う――「妊娠13週目以前の胎児の場合は神経が脳にまったくつながっていないので、胎児が何かを感じている可能性はおそらくゼロだと言えます。 そして26週目以降は、おそらく間違いなく感覚が備わっているでしょう」。

  「問題は妊娠17〜26週目の期間で、この時期に胎児になんらかの感覚能力が生じている可能性は、従来よりも高くなっており、それゆえこの時期の妊娠中絶には胎児への麻酔を義務づける必要性も、高まってきているのです。」  グローヴァー教授は、この議論を提起すれば堕胎反対運動をますます勢いづかせる恐れがあることも、認めている。  彼女は言う――「私は妊娠中絶の合法化を支持する“プロチョイス派”です。しかし科学的な問題と政治的な問題を混同してはならないでしょう。  必要なのは、どうすれば胎児に苦痛を与えず中絶できるかを考えることだと思います」。

  ある研究によれば、妊娠21週目以降に中絶を施した胎児は、中絶の際に泣き叫ぶのが観察されている。すでに妊娠13週目の段階で胎児に痛みを感じる能力が生まれていると確信している医者も、少なからずいる。  しかし一方、妊娠26週目以前の胎児に痛覚が備わっているかどうか、疑問を投げかける医師がいるのも確かだ。  現在の法律の下では、妊娠24週目以前の胎児なら、母体に生命の危機が迫っているなどの特別な条件下で中絶を施すことが許されている。

  「王立産科婦人科学会」(RCOG)が行なった調査は、“胎児の意識”とりわけ“胎児の痛覚”を定義したり評価するのは容易ではない、という所見を述べておきながら、結局、妊娠26週目以前の胎児には「意識」はない、という結論を下している。

  アバディーン産科病院(Aberdeen Maternity Hospital)のギリアン・ペンニー(Gillian Penney)医師は、「王立産科婦人科学会」の妊娠中絶ガイドライン策定グループの座長を務めた人物であるが、彼はこう語っている――「胎児には、我々が“痛み”と感じているものを経験する能力がないのです」。  同学会の結論を支持するような証拠は、発展途上の脳の重要な二つの領域、すなわち「皮質」と「視床」の間の神経接続に着目している。  つまり、妊娠26週目以降にこの部分が発達するまでは、痛覚が経験されることはありえない、という考え方である。

  ベルファーストにあるクイーンズ総合大学・胎児行動研究センターのピーター・ヘッパー(Peter Hepper)教授は、妊娠26週目以前の胎児が“痛み”を経験していることを示す充分な証拠はない、と語っている。 だが彼はそれを「不幸というよりも幸いなことだ」と考えている。

  「女性と児童のための福祉基金」(The Women and Children's Welfare Fund)は、英国では胎児の苦痛がないがしろにされ、動物よりも悲惨な扱いを受けている、と語っている。 胎児を保護する立法は皆無だ、と同組織は憤慨している。  もっとも、ネズミ、モルモット、ハリネズミのような「出生前の脊椎のある動物」を対象にした保護法というのは、1986年に制定された「動物(研究手続)法」( the Animal [Scientific Procedures] Act)という法律で、その趣旨は「苦痛を与える動物実験は許さない」というものなのであるが……。

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●●関連記事

●1999年10月10日:
(国際ニュース)米国は妊娠末期の中絶まで禁止の対象にしようと動き出した
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=a2sxbswL&atmo=kkkkkkku&pg=/et/99/10/10/wban10.html

●1998年8月9日:
中絶医者は胎児に鎮痛剤を与えるかもしれない
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=a2sxbswL&atmo=kkkkkkku&pg=/et/98/8/9/nabo09.html

●1998年8月2日:
新生児はこれまで考えられていたよりも即座に痛みを感じ、その持続時間もずっと長いことが判明した
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=a2sxbswL&atmo=kkkkkkku&pg=/et/98/8/2/npain02.html

●1996年10月22日:
胎児は「わずか妊娠6週間で痛みを感じている」可能性がある
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=a2sxbswL&atm=kkkkkkku&pg=/et/96/10/22/nfoet22.html

●1996年9月27日:
まだ生まれていない赤ん坊は「中絶の痛みを感じない」
http://www.telegraph.co.uk/et?ac=001136033854542&rtmo=a2sxbswL&atmo=kkkkkkku&pg=/et/96/9/27/nabort27.html


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