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有事が来るぞ(2)暮らしはどうなる?
http://www.asyura2.com/0403/dispute17/msg/981.html
投稿者 竹中半兵衛 日時 2004 年 5 月 20 日 09:43:02:0iYhrg5rK5QpI
 

(回答先: 「有事が来るぞ」(1)備えれば憂い生む−−−−生活者から見た有事法研究 投稿者 竹中半兵衛 日時 2004 年 5 月 20 日 09:38:27)

【世相百断 第52話】有事が来るぞ(2) 暮らしはどうなる?

http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/sesou52.htm


 有事法制が動き出し、戦時体制に移行すると、市民の暮らしはどのような影響を受けるのか。

 武力攻撃が予測されるに至ったと総理大臣が判断し、それに伴って総理大臣から出動命令が出されると防衛庁長官が予測し、自衛隊に出動待機命令を出した場合、まずどんなことが起こるだろうか。

 防衛庁長官は、総理大臣の承認を得たうえで、出動後に自衛隊が部隊を派遣すると思われる地域をあらかじめ「展開予定地域」と指定し、その地域内で自衛隊は陣地構築工事などを行なうことができる。これまでは実際に防衛出動したあとでなければできなかったが、それが法改正で「武力攻撃が予測される」時点でできるようになった。

 この陣地構築にあたって、県知事の公用令書を取ったうえで自衛隊は私有地にある家屋以外の物件を、移動または撤去することができる。

 まだいつ戦争が起きるともしれないのに自分の土地が自衛隊に使用されることになり、そのための立入検査が行なわれることに怒った所有者が、立入検査をを拒んだり、妨害したり、必要とされる報告をしなかったり虚偽の報告をすると、あとで触れるように20万円以下の罰金刑に処せられる。

 さらに、きれいにガーデニングした自分の土地が掘り返され、立木をはじめとする家屋以外のものがつぎつぎに撤去されて迫撃砲陣地が作られていくのを見たその家の所有者が、理不尽なことをすると怒って自衛隊の行動を妨害すると、事と次第によっては自衛隊は正当防衛の範囲内で武力を行使することができる。

 もちろん、自衛隊の陣地構築によって損害を受けた所有者は国から補償を受けることができるが、我が土地に入ってきた武装集団が思いのままに土地を使用するのを抗議もできずに見守るほかはなくなるだろう。

 さらに自衛隊が防衛出動すると、同じく県知事の公用令書を取ったうえで、私有地やそこにある家屋を徴用して使用することができる。立派な邸宅は高級将校の宿舎にされるかもしれない。マンションは兵舎に変るだろう。

 防衛庁長官または制令で定めるものが緊急を要すると判断した場合は、知事に通告するだけで自らの権限でこれを行なうことができる。そして制令がまだ定められていないので、ここでいう「制令で定めるもの」が誰になるかはまだわかっていない。防衛出動そのものが緊急事態なのだから、実際このような状況になれば公用令書などとらずに通告だけで土地家屋の徴用が行なわれるだろう。

 居住している所有者が自衛隊の邪魔だと判断されれば、いや、たぶん自衛隊が入ってきた時点で邪魔だと判断されるだろうが、我が建物から退出しなければならない。

 法改正以前は私有地に入ることはできても、家屋その他を勝手にいじることができなかったが、法改正でそれができるようになった。家屋が自衛隊にとって使い勝手が悪ければ、取り壊しはできないが形状変更はできる。といっても、柱一本残っていれば取り壊しにはあたらないから、実際はやりたい放題だろう。

 しかもこの「処分」にあたって、公用令書を交付すべき所有者が所在不明その他制令で定める場合は、事後交付でいい。現実にはほとんどの場合事後交付になるだろう。

 このほか、海岸法、河川法、森林法、自然公園法、漁港漁場整備法、港湾法、都市公園法等の対象とされている土地を占有、あるいはそこに建築物を構築する場合、法改正前は管理者等との協議が必要だったが、改正後は事前通知し、意見陳述を受けるだけでよくなった。有事法制が発令されているなかで、「非国民!」という非難を覚悟のうえで自衛隊にたてつく意見陳述をするものはいまい。実際には、こうした土地でも自衛隊はやりたい放題ができる。

 さらには公有地・私有地に建築物を構築するにあたって、自衛隊は土地収用法、土地区画整理法、首都圏近郊緑地保全法、近畿圏の保全区域の整備に関する法律、都市計画法、建築基準法、消防法の適用を受けなくてもいい。

 道路法の特例を受け、道路管理者に事前通知するだけで道路にも建築物を構築することができる。自衛隊の部隊が通行のために応急措置として行う道路工事なら、「事後通知」でいい。

 まったくまったく、法律の運用次第では日本中の土地をどこでも使いたいように使えるわけである。

 土地家屋を超法規的に徴用・処分されるだけではない。有事法制は国民と地方自治体にさまざまな協力を強制する。

 たとえば防衛出動時には、広範な物資の収容ができる。


第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられ、当該自衛隊の行動に係る地域において自衛隊の任務遂行上必要があると認められる場合には、都道府県知事は、長官又は政令で定める者の要請に基き、病院、診療所その他政令で定める施設(以下本条中「施設」という。)を管理し、土地、家屋若しくは物資(以下本条中「土地等」という。)を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。ただし、事態に照らし緊急を要すると認めるときは、長官又は政令で定める者は、都道府県知事に通知した上で、自らこれらの権限を行うことができる。
(自衛隊法第103条第1項)


 これは改正前からあった条文だが、あらためて読んでみると、恐ろしい条文だとは思いませんか。

 改正前でも、「自衛隊の任務遂行上必要があると認められる場合」には、病院・診療所等の収容・管理、さまざまな物資の生産段階から流通・販売段階にいたるまでのものの保管を命令し、収用することができた。

 病院・診療所が自衛隊に管理されれば、戦病傷者を優先して治療・入院させることになり、それまで入院・通院していた市民は診療サービスが受けられなくなるだろう。入院患者は追い出されるだろうし、急病人も遠い病院へ行かなければならなくなる。

 管理の対象となる施設としては、条文にある病院、診療所のほか、倉庫、学校の体育館や校庭、ガソリンスタンド、自動車修理工場などが含まれる。管理対象とされた学校の校庭は、燃料や弾薬の保管場所として使用されるだろう。そうなれば当然、同じ敷地の校舎に一般人の出入りができなくなる。校庭だけでなく、学校全体が実質的に管理の対象として、学生・生徒も締め出されるだろう。

 また、こうした管理対象施設は、「その他政令で定める施設」と謳われており、今後定められるの政令の内容次第では、いかようにも拡大できる。

 保管・収容の対象となる物資とは、ガソリン・食糧・医薬品などをはじめ、トイレットペーパーにいたるまでの市民の日常生活に不可欠なすべてのものを含む。

 保管命令とは、生産者から問屋、倉庫、小売店まですべての流通過程にわたる生産物・商品を動かせなくなるということだ。流通業者は商品を売ることができなくなり、商売あがったり。それは、市民が自由に生活必需品すら買えない事態になるということだ。

 また「収用」とは、取り上げることである。収用の対象とされる物資は同じくすべての生活必需品を含む。商品を「収用」された流通業者は倒産するほかはないかもしれない。

 船舶・車輛・航空機や輸送機材・資材ももちろん対象だ。民間航空機・輸送船・フェリー・トラックなどが大量に徴発されれば、人・物の公共輸送にも大きな影響が出るだろう。工場や港湾施設なども公用令書一枚で自衛隊の思うままに使われてしまう。

 防衛庁長官または制令で定めるものはこうした命令を知事に要請することができるが、やはり緊急の場合は知事へは通知のみで自らできることとなっている。おそらく知事はこの要請を受けざるをえないだろうが、知事が逡巡すれば、自衛隊側が「緊急を要する」としてみずから民間企業や施設管理者に命令を出すだろう。

 繰り返すが、これだけ強大な命令を下す権限をもった「政令で定める者」とは誰か、まだ明らかになっていない。同じくこうした収用手続きも政令で定めることになっているが、その詳細もまだ明らかになっていない。

 また改正前の自衛隊法では、違反者に対する罰則規定がなかったが、今回の法改正で新たに以下の罰則規定を作った。


(1) 取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿し、毀棄し、又は搬出した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
(2) 立入検査 (防衛出動下令前の防御施設構築のために土地を使用する場合の立入検査を含む) を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は、20万円以下の罰金に処する。
(3) (1)及び(2)について、両罰規定を整備する。


(3)の両罰規定の整備ということが私のような素人にはトンとわからないのだが、専門家の解説だと、企業にこういう命令が下り、その中の誰か一人でも命令に違反した場合、その実行犯だけでなく、企業そのものに対しても罰金刑を科す、ということのようだ。企業に連帯責任を課して、不心得な違反者を出させない、ということらしい。

 またこうした徴用・収用については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。問答無用、絶対服従だ。

 防衛出動した自衛隊は電話その他の通信設備の優先利用ができるし、電波法の規制も受けない。防衛出動した自衛隊は膨大な通信量を必要とするから、多くの電波が軍事徴用されるだろう。友達とおしゃべりをするための携帯電話などこの非常時にもってのほかと、使用制限乃至は禁止されるだろう。

 さらに電波が逼迫すれば、民間テレビ局も電波を取り上げられ、1局に統合されるかもしれない。これは機密保護を理由にした、言論や報道の自由の制限にもなり、政府や自衛隊にとっては一石二鳥の効果を生む。 

 管理・徴用の対象は物資・公共サービスだけではない。一次産業も規制される。


自衛隊の行う訓練及び試験研究のため水面を使用する必要があるときは……一定の区域及び期間を定めて、漁船の操業を制限し、又は禁止することができる。
(改正自衛隊法第105条)


 また、「武力攻撃等事態法」では、「武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするため」の措置として、「生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置」(第2条第7項ロ(1))がなされることも定められている。

 ここでいう「その他の措置」の内容もまた明確になっていないが、政府答弁によると、


「国民生活安定緊急措置法に基づく生活関連物資等の生産、輸入に関する指示、また生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づく売り渡しに関する指示および命令、また石油需給適正化法に基づく使用制限」(02年5月16日、福田官房長官)などが想定されている。
(岡本篤尚「《軍事的公共性》と基本的人権の制約――〈政府解釈を中心として〉」山本敏弘編『有事法制を検証する』所収)


 つまりこれは有事法制の発動とともに戦時経済統制がなされることにほかならない。前述のように広範な物資が管理・収用されれば、当然のこと、消費者物価は高騰する。逆にいえば、消費者物価の高騰を統制しなければならないほどの物資の管理・収用が行なわれるということだ。

 配給制度、価格統制、ヤミ市場……おお、いつか来た道をたどってまさに五十数年前の悪夢にたどりつく。

 こうした想像するだに恐ろしい事態が、判断基準も曖昧な「武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」で実現してしまうのである。

 こうした一連の規定は、法的にも重大な問題をはらんでいる。管理・収用の基準は、前掲の自衛隊法103条第1項に「自衛隊の任務遂行上必要があると認められる場合」と定められていて、誰がどんな基準で必要と認めるのかという点が曖昧になっている。

 また命令権者や手続き、対象物資などの詳細は再々繰り返すように政令で定めることになっていて、まだ詳細が判明していない。しかし政令は内閣に制定権があって、国会の関与が不要である。内閣の意志次第で今後いかようにも制定できる。

 国民の財産権や経済活動の自由が重大な侵害を受ける内容の法律が、このように政府の裁量で今後いかようにも運用の詳細が定められ法手続き上のご都合主義こそ、法律の内容とあいまって危険極まりないものといえる。

 もし日本の国土がほんとうに軍事侵略されて、自衛隊が文字どおり防衛出動しなければならない事態が出来したら、自衛隊が円滑な戦闘行動を行なうための兵站活動も必要になる。しかし前回も述べたように、現実に日本の国土が軍事侵略されるおそれなどなく、しかも自衛隊の運用に関する法体系がまったくないわけではないなかで、なぜ国民保護法制も細部の法令の制定も後回しにして、今みてきたような市民の人権・財産権を侵害するような内容の危険かつ杜撰な有事法制があわてて制定されなければならないのか。

 その真の理由はおいおい明かしていくつもりだ。

 小泉首相は「有事法制を考える場合には、公共の利益のためにどの程度非常時において基本的人権が制約されるのもやむをえないか、議論しなければならない」などと言っているが、ここにも大きな論理のまやかしがある。そもそも、なぜいま有事法制が必要なのかの国民的な議論もせずに、詭弁や曖昧な答弁・解釈を繰り返して数を頼みに有事法制を成立させ、戦時対策=公共の福祉として、これを基本的人権と並行させて考えることがおかしい。


 憲法のいう「公共の福祉」とは、人権が衝突した際の調整原理を指すのであって、あくまでも基本的人権を全体として実現させようとするものです。決して、個人の権利に優先する「全体の利益」というものを認めたものではないのです。

 日本国憲法は、前文や九条などによって、軍事的なものを優先させるという考え方を改め、軍事的なものに価値を見出すという態度を放棄しています。したがって、「公共性」といっても軍事的な色彩のものは認められないのです。政府は、自分たちが「公共性」を独占し、その中身を自由に決定できるかのような言いまわしをしていますが、政府といえども憲法に拘束され、政府の権能も憲法によって限界づけられている以上、「公共性」の内容は憲法の原理原則に合致したものでなければなりません。
(水島朝穂編著『知らないと危ない「有事法制」』)


 有事法制などというモンスターが突然われわれの社会に姿をあらわしたいまこそ、こうしたまっとうな思考によって、われわれの国を守る、暮らしを守るためには何を行なわなければならないかを国民一人ひとりが真剣に考えなければならない。

 すでに法律は成立して、市民の暮らしを戦時に引きずり込むための大きな穴は、あなたの足許にぽっかりと掘られてしまったのです。いつまでもおとなしい羊のままでいれば、いやおうなしにやがて市民はその穴に突き落とされてしまう。

 有事法制は国民の暮らしを守らない。有事法制は国民の人権と財産権を侵害する。それは有事法制成立間近で勢いづいた自衛隊幹部のつぎの一言にも如実にあらわれている。


「我々の任務は国家を守ることだ。それが国民の生命や財産の安全につながる。自衛隊は国民を守るためにある、と考えるのは間違っている」

(2003年8月3日)

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