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全国各地で制定「生活安全条例」の不気味 煙草ポイ捨て禁止に隠された実像[サンデー毎日]
http://www.asyura2.com/0403/ishihara8/msg/202.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 5 月 10 日 23:52:52:dfhdU2/i2Qkk2
 

(回答先: 相互監視社会を生み出す「生活安全条例」と有事法制 [弁護士 森 卓 爾] 投稿者 なるほど 日時 2004 年 4 月 27 日 06:21:58)

「突然、誰かに―何かに―見られていることに気づく」。カナダの社会学者、デイヴィッド・ライアンは著書『監視社会』(青土社)の冒頭で述べている。何を大げさな、と思うかもしれない。が、安全・安心のまちづくり……そんな美辞麗句の裏で、見過ごしにはできない事態がこの国で進行中なのだ。


 のっけから尾籠な話で恐縮だが、人が公園で大小便をしたらどうなるか。答えは軽犯罪法違反で科料(いわゆる軽い「罰金」)を取られる可能性がある。

「それでもせいぜい1万円が限度です。それが、この条例では犬のフンを放置したら5万円の罰金。どうみてもおかしい」
 憲法学が専門の清水雅彦・和光大学講師の言う「条例」とは、東京都杉並区が今年10月から施行する「安全美化条例」のことだ。煙草の吸い殻や空き缶などのポイ捨ても、区の改善命令に従わなかった場合は「5万円以下の罰金」となる。区は当面罰則は適用しないというが、今年2月区議会への条例案提出から一貫して制定に反対してきた「つくらせない会」の小井みずほ代表がこう話す。
「問題はこれだけではありません。ビラまき、ポスター張りまで『景観』や『通行上の安全』を理由に、規制されかねない。災害被害者への募金など、市民運動もできなくなります」

 小井代表はさらに、共同住宅を建てる場合、建築主が「防犯設備の設置」について警察署と協議するよう求められることを挙げる。
「区は監視カメラの設置を義務づけたいと言っています。プライバシー侵害につながることが警察の指導で進められる恐れがあります」

 そんな懸念に対し、区はホームページ上で公開している条例への「主な区民意見」の中で、繰り返し〈他の人に迷惑や被害が及ぶことを防ごうとするもので、基本的な人権や自由を規制しようとするものではありません〉と述べている。

 しかし、冒頭の清水講師は「マナーで解決できる問題にルールを作って、そこに警察が介入する」ことで、煙草一本で住民同士が色眼鏡で見合う「相互監視社会」が生まれるのではないか、と危惧するのだ。

 杉並区条例は「安全で快適なまちづくり」などをうたって全国で制定が進む「生活安全条例」の一つだ。今年1月現在、1290自治体が制定している(都市防犯研究センター調べ)。
千代田区は昨年10月に「生活環境条例」を施行した。「路上禁煙地区」で歩き煙草を見とがめられると「2万円以下の過料(行政上の制裁金)」を取られる。これまでに約3100人がその憂き目にあった。昨今の禁煙・分煙化の中では致し方ない気がするが、これはただの禁煙条例ではない。杉並区と同様、監視カメラ設置につながる条文のほか、公共の場所に「のぼり旗」などを「放置」してはならないという規定もある。放置とは「設置する権限のない場所に設置する場合」も含み、労働団体などから「集会・結社の自由を侵す」という声があがった。

「憲法が定める基本的人権を侵害するものでは決してありません」(生活環境課)と千代田区は断言するが、区議会で条例に反対した唯一の会派・共産党の木村正明区議はこんな懸念を示す。
「政治団体がマンションの郵便受けに入れたビラが捨てられたとします。条例ではゴミはマンションの管理者が処分しなければなりませんが、その費用をビラをまいた側に請求できる。実質的に表現の自由を制限することになります」

 条例は前文で〈生活環境の悪化は、そこに住み、働き、集う人々の日常生活を荒廃させ、ひいては犯罪の多発(中略)にまでつながりかねない〉と述べる。つまり、路上禁煙を含めた環境美化によって犯罪を防いでいこう―という論理である。そのために条例では「自宅周辺を清浄にする」ことや「地域社会における連帯意識を高める」こと、さらに区や関係行政機関(つまり警察など)の「実施する施策に協力」することが「区民等の責務」とされている。区、警察、住民が一体で防犯や環境美化にあたる。美談風だが、実態はどうなのか。木村区議が言う。

「町会や商店街、区、警察が一緒に地区を回る合同パトロールというのがあります。しかし、商店街の人にすると『お客さんを監視するのか』となる。町会側も『何もしなくていい、ただ歩くだけでいいから』と言って参加者を集めています」

http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/sunday/2003/0615/tokusyu1.html

警察が「市民の日常」に踏み込む

 千代田区麹町でテナントビルを営む岡本光弘さん(49)はこう言って憤る。「条例では『置き看板』を放置してもいけない。近所のラーメン屋さんはパトロール隊に営業中に店先の看板を中に放り込まれ、『今度やったら(罰金の)5万円取るぞ』と言われました。ある店は何万円もかけて敷地内に看板を作り直したら、隣の店の看板と当たる当たらないでトラブルになっている。隣近所の関係もギスギスしてきました」

 岡本さんはかねて近所の人たちと、歩道に煙草の灰皿を置く独自の美化運動を進めてきた。
「それを区は条例ができたから灰皿は撤去しろと言う。毎日竹ボウキを持って吸い殻を掃除するのは誰なんだ、と言いたいですよ」

 岡本さんいわく、これでは「地域社会の連帯意識」も何もあったものではない、ということなのだ。

「つきまとい勧誘」を規制する武蔵野市条例、「捨て看板」から街の美観を守るという八王子市条例など制定の動きはとどまるところがない。亜細亜大の石埼学助教授(憲法学)は、1994年の警察法改正で警察庁に生活安全局が置かれたことが条例設置の背景にある、と指摘する。
「98年に生活安全局職員と刑法学者、都市工学専門家からなる研究会が『安全・安心まちづくりハンドブック』を出しました。ここに条例のひな型が載っているんです」(石埼助教授)

 警察行政の実態に詳しいノンフィクション作家の小林道雄氏が解説する。
「日本の警察は戦前のそれこそ国民のハシの上げ下ろしまで指図する『行政警察』としての地位回復が悲願でした。総会屋事件をきっかけにした商法改正で企業への監視・情報収集を可能にし、さらに風営法、暴対法と時々の社会情勢を追い風に行政警察権限を拡大した。そして今回、ついになし崩しに『市民の日常』に踏み込んできたのです」

 小林氏はこのほど出した著書『日本警察崩壊』(講談社)の中で、大阪府が昨年4月に施行した「大阪府安全なまちづくり条例」の問題点を指摘している。大阪府条例には公共の場での「鉄パイプ等」の携帯禁止が盛り込まれている。条例によると、鉄パイプ等とは「鉄パイプ、バット、木刀、ゴルフクラブ、角材」などの「棒状の器具」で、それで殴ったら相手が死傷する可能性のあるものだ。

「素振りをしにバットを持って公園に行き、警察官から職務質問を受けた場合、『正当な理由』かどうかの証明責任は市民にある」と小林氏は言う。原則禁止の行為だけに、黙秘は認められない。これまで暴力団員や暴走族らによる35件(4月末)が条例違反で摘発された。大阪府警は「あくまでも客観的に判断する」という。


「安全条例」はまるで有事法制か

 その大阪府条例と同じ「鉄パイプ等」条項を盛り込む条例案が6月、東京都議会に提案される。土台となるのは3月に「有識者懇談会」がまとめた「東京都安全・安心まちづくりについての報告書」だ。連帯意識の希薄化や自己中心主義の風潮などを背景に凶悪犯罪が増加し、都民の体感治安が低下していると述べる。

「自分たちのまちは自分たちで守る」という意識をもとにコミュニティーを再編・強化すべきだと主張し、そのために「地域における強力なリーダー」の養成講座までが大まじめに語られる。そして、いわゆる「オヤジ狩り」対策として、鉄パイプや金属バット所持規制が有効だと提言するのだ。

「つまり『隣は何をする人ぞ』では不安でしょう、ということです。皆で守り合っていると思うことで体感治安を回復させようとしている。しかし、それは警察官だけでなく、市民同士で『鉄パイプ等』を持っていないかどうか監視し合うような社会を生みかねません」
 生活安全条例の危険性を訴える弁護士の田中隆氏はそう解説する。また、哲学者の高橋哲哉・東京大学大学院教授はこう見る。
「平和な日常に他者、異者が闖入してくる不安をなくすということです。ことさら外国人を犯罪者視する風潮もそこからきている。犯罪の恐れだけでなく、美観を損ねるものなど否定的な意味を持つものを徹底的に排除しようとするのです」

 石埼助教授もこう言う。
「これまでは犯罪が起きる原因を除去すればいいと考えられてきました。ところが、それは簡単には分からない。だから犯罪が起きる可能性がある場所、機会を軒並みなくしていこう、そういう発想で生まれたのが生活安全条例です」

 現代人の誰しもが持っている漠然とした不安感。その正体が分からないまま、異者のあぶり出しに奔走する―それがこの条例が描く近未来像ではないのか。

「生活の安全意識は国家の安全保障、つまり有事法制と容易に重なり合う。今は北朝鮮がその『異者』です」
 高橋教授はそう話す。そして、前出の清水講師もこんな見方を示すのだ。
「有事の際、民間防衛の主体となるのは町会であり自治会ですが、それこそ生活安全条例を推進する構成メンバーなのです」

 先に触れた杉並区への「区民意見」の中に、こんな声が紹介されている。
〈マンションにおける布団等の物干しが美観を損ねることが危惧されます。より強い規制をしてもいい〉

 かつて戦争に協力しない人間を「非国民」扱いしたのは、その隣人であったことを思わざるをえない。

 もっとも、生活安全条例が有事法制への地ならしとして画策されたと言い切るのは、うがちすぎであろう。1000を超える自治体が条例を制定したのは、住民の「善意」の発露なのかもしれない。だとしても、「安全で安心なまち」が「住みやすいまち」かどうかは分からないのだ。


本誌・桐山正寿/堀 和世

http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/sunday/2003/0615/tokusyu2.html



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