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農林水産省の諌早湾干拓事業（長崎県）の工事差し止めを巡る裁判で、佐賀地裁（榎下義康裁判長）は１２日、国側の異議申し立てを退け、差し止めを命じた仮処分を認める決定を出した。この事業は「止まらない大型公共事業」の象徴とされ、９割以上が完成した後、昨年８月の同地裁の差し止め命令で工事が中断されている。国側は決定を不服として、福岡高裁への保全抗告を検討する。
干拓事業を巡っては、有明海沿岸漁民１０６人が「工事で漁業被害が出ている」として、工事の差し止めを求めた本訴とともに仮処分を佐賀地裁に申し立てた。同地裁は昨年８月２６日、事業と被害の因果関係を認め、本訴の一審判決が出るまで工事をやめるよう命じた。
これに対し、国側は（１）福岡地裁は同様の仮処分申し立てを昨年１月に却下している（２）漁業被害と干拓事業の因果関係を認める科学的根拠がない（３）差し止めを命じられた工事は漁業権行使に何ら影響を与えない、などとして、佐賀地裁に異議を申し立てた。
一方、漁民側は「漁業者は被害の実態を肌で知っている。調査でも漁業被害は明らかで、漁民は精神的にも苦痛を負っている」などとする反論書を出していた。
異議申し立て審尋は、差し止めを命じた榎下裁判長が再び担当した。審尋は昨年１２月、佐賀地裁で開かれ、１回で終結した。
(2005/01/12 13:53)
■ 05年度政府予算案 有明・八代両海の再生対策、68億７千万円 【熊本日日新聞】
政府が二十四日閣議決定した二〇〇五（平成十七）年度予算案のうち、県関係では一〇年度末の前倒し完成が決まった九州新幹線鹿児島ルート博多〜新八代に前年度比３・８％増の八百三十億円が盛り込まれたほか、ハンセン病対策、有明海・八代海再生、川辺川ダム関連などで「おおむね重点要望に沿った内容」（県企画課）となった。
ただ、来年度から本格化する三位一体改革をめぐり、地方交付税の総額は本年度の水準が確保されたものの、補助金廃止に見合う税源移譲や交付金が大幅に絞り込まれた。厳しい財政運営が確実となる中、新幹線開業に向けた地域整備や、三位一体改革を生かした独自施策や予算編成など、県の手腕は大きく問われることになりそうだ。
最大の公共事業となる九州新幹線鹿児島ルートの建設事業費は、本年度と同額の八百四十億円（新八代〜鹿児島中央の残工事費十億円含む）。
このうち本年度より三十億円上積みされた博多〜新八代は、筑紫トンネル（約十二キロ）や玉名トンネル（約七キロ）などの掘削や用地買収に充てる。新八代〜鹿児島中央は騒音や震動防止工事などを予定している。
一方、川辺川ダムからの取水を前提とした川辺川利水事業の中断で、同ダムの事業費は二年連続で本体工事費を見送り、水没予定地の生活再建事業に充てる三十六億三千万円にとどまった。利水事業も新計画策定が大幅に遅れ、暫定水源整備の十億円だけを確保した。
水俣病関連は、関西訴訟最高裁判決を受けた県と国の協議が予算編成に間に合わず、新たな対策費の計上は見送られた。ただ、環境省は対策案がまとまれば、現行の総合対策事業などの予算枠内で、当面の療養費支給などをねん出する方針。
このほか、厚労省のハンセン病対策は元患者への支援など１・９％増の四百六十八億円。長崎県の諫早湾干拓事業との関連が指摘される有明海・八代海の再生対策には二・三倍の六十八億七千万円が盛り込まれた。
焦点の三位一体改革に関しては、補助金のスリム化や交付金化の詳細が示されていないため、「全体的な影響を精査できるのは年明け以降」（県財政課）とみられる。ただ、総額一兆七千二百億円の補助金削減に対し、税源移譲は約七割の一兆千百六十億円。同課は「県の財政状況が厳しいことに変わりはない」という。
潮谷義子知事は同日、「熊本駅周辺整備に取り組むとともに、気を引き締めて適切な財政運営に努めたい」とのコメントを発表した。（東京支社・毛利聖一）
(2004/12/25)
■ ＜解説＞工事差し止め仮処分決定 農水省に猛省促す 被害回避へ現状固定必要 【熊本日日新聞】
諫早湾干拓事業の工事差し止めを命じた二十六日の佐賀地裁の仮処分決定は、強引に事業を進めてきた農水省に猛省を促す形となった。
事業費ベースで九割以上工事が進んだ事業への工事差し止め命令は「現在の権利を守るために、訴訟上の解決まで暫定的に行われる手続き」という仮処分の性格上、極めて異例だ。
佐賀地裁は、決定理由で「諫早湾の潮受け堤防の閉めきりなどによって一定程度有明海に環境悪化をもたらし、事前の環境影響評価で予測された範囲を超えた地域にまで深刻な漁業被害が及んでいる」と指摘、諫早湾干拓事業と漁業被害との因果関係を認めた。
民事の保全手続きでは、漁業者側に、因果関係の高度な科学的立証を求めるのは不公平とし、国側の主張を退けた。
その上で事業の巨大性を踏まえ、今後の著しい漁業被害を回避するためには「事業の一時的な現状固定」が必要と判断し、工事の差し止めを命じた。
二○○○年度のノリ大凶作を機に、批判にさらされてきた諫早湾干拓事業。五月には有明海異変の原因解明が期待された中・長期開門調査が見送られただけに、工事差し止めの決定は漁業者にとって現状打開の一打となった。諫早湾干拓と漁業被害との因果関係を審議している国の公害等調整委員会の原因裁定にも、影響を与えるとみられる。
今回の工事差し止め決定に対し、事業を推進する長崎県側の反発は避けられず、国は異議を申し立てる方針だ。しかし「事業全体を再検討し、必要に応じた修正を施すことが肝要」とまで踏み込んだ司法判断をどう受け止めるのか。国の姿勢が問われている。（報道部・本田清悟）
2004年8月26日夕刊
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。