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TOKYO少女(5)
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投稿者 オニオン 日時 2004 年 10 月 08 日 02:15:57:iftHLhX4R7M9I
 

(回答先: TOKYO少女(4) 投稿者 ねこ 日時 2004 年 10 月 06 日 01:28:07)

5 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/07 14:32:54
昨夜7時くらいから飲みはじめ、10時くらいにはできあがり
電車で帰ったかタクで帰宅したかよく憶えてないですけど
部屋に戻ってPCを起動して2ちゃん喪板を開いたとこはなんとなく憶えてます。
レスをしてたのもなんとなく憶えてます。
明け方寒くて目が覚めて頭が痛くて吐きそうでした。
1時間でアップするなんて豪語してたようですが
あの時点でアップできるのはゲロの山だけだったかと。。。いや、失礼。
酔っぱらうとやたら陽気になって騒ぐみたいなので
以後、陽気な70の出現にはご注意ください。

翌日学校とか仕事があるにもかかわらず
夜更かしさせてまで待っててくれた人がいたとしたら申し訳なかったです。
ごめんなさいでした。そんなわけで昨夜のぶんです。
二日酔いのまま書いたので、書き直しするかもしれません。
今夜は仕事で外出するので帰宅は深夜の予定です。
今日の分のアップはかなり遅くなるかも。

7 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/07 14:35:07
8日朝。
子供の頃からずっと通いつけの主治医のいる病院。
彼女は待合室の平べったい長椅子に座っている。
茶色で合成皮革の長椅子はところどころに穴があいていて
ガムテープで補強されている。
何度となく見てきたこの茶色の長椅子に座っていると、ほんとうに気が滅入る。
たぶん病院の陰鬱なイメージが刷りこまれてるんだろう。
主治医は高齢で真っ白い髭が自慢の、子供に優しい爺さんだった。
安静に。これが処方箋だった。
ぼくはこの言葉を受けとるためにここに来る。安静に。
この病院で2種類以上の薬を処方されることはまずなかった。
だからぼくはこの爺さんが気に入っている。
飲んでもいいし、飲まなくてもいい。爺さんはそう言ってるみたいだった。
問診と触診が終わって、シャツに手を通してると爺さんはぼくにこう言った。
「今日はあのお嬢さんといっしょにいなさい。そばにいて看病してもらいなさい」
ぼくが笑いながら、なぜです? と訪ねると爺さんはあっさりこう言ってのけた。
若い男の風邪の特効薬は、若い女性だ。
からかうようにぼくに言って、それがよほど可笑しかったのか声に出して笑った。
ぼくは小さかった頃、この爺さんによく釣りに連れていってもらった。
ペンキの剥げた小型トラックの荷台に乗って、海岸を目指すのが好きだった。
弟は釣りに熱中してたけど、
ぼくは荷台に揺られる道中そのものが好きだった。
海岸線道路のコントラストの効いた強い日射し。蝉の声。
ぼくの幼少の頃は平穏そのもの。
どこにいっても安全がもれなく無料でついてくる。
大人たちがゆるく張った監視の目から外に出ることのない毎日。
でも姫様はそうじゃなかった。
風邪に倒れたとき、姫様はただ寝てるしかできなかったんじゃないだろうか。
ひょっとするとあのやしろのどこかに、ひっくり返って
ただじっと天井の絵を眺めているしかできなかったんじゃないだろうか。
あの晩、彼女は目を閉じ、欠落した絵を克明に復元した。
ちいさな唇から漏れた言葉が、闇の中で結晶化して、美しかった絵の細部を浮かびあがらせた。
その記憶の正確さは、長いことあの絵だけを見て過ごした証拠だ。
小さな女の子が、あのカビ臭い絵をそっくり記憶してしまうほどの動機ってなんだ?
いや、動機なんてたぶんない。不自然すぎる。
そういう状態に追いこまれたんだ。
彼女はただうずくまって、熱が去るのをじっと待っていた。
目を開けば天井の絵が視界いっぱいに広がる。
そのとき弟は、彼女の側にいて額に浮いた汗を拭ってあげたんだろうか。


8 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/07 14:35:45
待合室に戻ると彼女の背中が見えた。
長椅子にちょこんと座ってバッグをかき回していた。
ふり返る彼女。
おかえり。よかったね、何事もなくて。
そう言った彼女の手には一枚のフロッピィが握られていた。
プラスチックの透明なケースといっしょに。
彼女は別に悪びれた様子もなく、ぼくの目に黒い四角の板をちらつかせた。
頭の近くでくるくると人差し指を巻く仕草。
その指先には、彼女の細い髪が巻き取られていた。一本だけ。
彼女はフロッピィの磁気ディスクをガードする金属のシャッターをカチャと開いて
いま引き抜いたばかりの自分の髪をシャッターのスリットに通し
くるっとディスク本体に巻きつけた。
ライターを取りだしてさっと炙る。
ぼくは笑った。
そういうことだったのか。
用心深い姫様。
フロッピィには封がほどこされてた。
あの目黒のホテルの暗がりの中では、とてもじゃないけど見えなかった。
いや、ほかのどこの場所でだって気づかなかった。
べつにヒロを疑ったわけじゃないんだよ、と彼女は言った。
このフロッピィは他にも数人の手を過ぎていくから。
フロッピィの封は脆い。慎重に扱わないとすぐにほどけて落ちる。
ブートなんてしようものなら誰かが中身を閲覧したとすぐにわかる。
ファイルの制作者は仲間すら信用していないってことか。
彼女は慎重にフロッピィを透明ケースに収めた。
今日はお家で寝てようね、と彼女は言った。
そのとき、ぼくはとうとう我慢ができなくなって彼女の手を握って座りこんだ。
どうしても訊いておきたかった。
訊いておかなくちゃいけないと思った。
いまはいい。彼女が目の前にいるから。
目の前にいれば安心感もある。
でも彼女のいない夜はどうだ?
ぼくはベッドの中でまんじりともできずに過ごすことになる。
きっとそうなる。そんなの絶対勘弁だ。

10 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/07 14:36:54
「なあ、恵子。そのフロッピィが君を危険にさらしたりすることってあるのかな?」
彼女はぼくが突然動いたために、驚いて椅子の上を滑って後退した。
ぼくと彼女の距離が開く。
そのせいでお互いの握り合った手が吊り橋のようにぴんと張って、垂れた。
彼女は首を振った。それから、絶対にそんなことはないと小声で言った。
「ありがとう。じゃあもうひとつだけ」
少し安心できた。
彼女がぼくを気遣ってとっさに嘘を言ったのかもしれないけど
だとすればこれ以上訊いたって無駄だ。
でもぼくは安心することにした。そう信じることにした。
「あまり喋りたくないよ。ヒロ」
そうじゃないんだ。そういうことじゃない。ぼくはかぶりを振った。
「オタの、あ、えっと太田のアドレスってどうやって拾ったのかな」
彼女はごめんね勝手に見ちゃって、と言ってからこう続けた。
ホテルに泊まってた夜。
二日とか三日前。もっと前?いつだったかよくわかんない。
画像がPCに映ったままになってて、真っ黒で、それを閉じると
ブラウザにメールボックスが表示されたままになってた。
明け方。ヒロはうとうとしていた。
彼女はPCに刺さったままのフロッピィには触れなかったと言った。
たぶんヒロがそっと返してくれると思ってた。
あの目黒の夜からそれは分かってた。
自分のたいした情報活動ぶりに情けなくなった。
ゴーリキーパークあたりに出演してたら
きっと一番最初にヴォルガの流れに浮かぶ死体になっただろうな。
いろいろ訊いてごめん。とぼくは彼女の髪に触れた。
コーヒーでも飲んでいこう。
会社にも連絡入れとかないと。
彼女はそのあと用事があると渋谷へ戻って行った。
彼女はいったいどこで荷物を取り替え、着替えをし、また綺麗になって戻ってくるんだろう。
毎日必ず戻ってゆく渋谷の街に何があるだろう。
そんな疑問がいつも浮かんでは消える。
たいして重要じゃないことは分かってる。
質問することは禁じられた。まあ、いいや。
女の子の言うことはいつだって正しい。正しくないときには喋らなくなる。
病院のまわりには、いまでも畑がちらほら残っている。
乗り捨てられた赤いバン。
そいつが病院の正面の畑の角に鎮座していて
なぜこんなところで廃棄されたままになっているのか理由がわからない。
ガラスは全部取り除かれ、いまでは雑草の苗床になってて
もしかすると春には風変わりなオブジェみたく見えるのかもしれない。
タンポポとかバターカップ。その他、名も知らない小さな花。
姫様の記憶もいつかこうなるときが来るんだろうか。
色あせてういういしくなるような。

今日書いてるときに流れていた曲
シャルロットマーティン/Charlotte Martin 「on your shore」
キーン/Keane 「hopes and fears」


http://love3.2ch.net/test/read.cgi/motenai/1097126709/


 ねこさんへ
 勝手に続けてごめんなさい。ただ板の移動が激しかったんで念のためにと上げときました。70さんのストーリそのものはさらに「http://life5.2ch.net/test/read.cgi/yume/1097151006/l50」で続くみたいです。
 素晴らしいお話しを教えて頂いてありがとうございました。

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