★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 雑談専用10 > 275.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
『戦争が残したもの』と亡命、抵抗
http://www.asyura2.com/0406/idletalk10/msg/275.html
投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 7 月 22 日 18:20:07:akCNZ5gcyRMTo
 

参照スレ
http://www.asyura2.com/0406/idletalk10/msg/271.html


ジャック・どんどん さん はじめまして バルタンです。
前投稿の本意が伝わったことを喜んでいます。(っていうか、私が冗長な語りを止めればいいんですが)

【ジャック・どんどん さん】
で、ありました。つい最近読んでいた、浅羽通明さんの「アナーキズム」(ちくま新書)でした。記憶力が悪いんで、ほんま苦労しますわ。
---------------------------------------------------------------
記憶力には私も自信がなくて同じ本を3回も4回も読んでいます。「方法序説」は10回ぐらい
読んだかもしれない。えらいとかいう話ではなく、三歩歩くと忘れる「鳥頭」(by 西原理恵子)
だから。
徹夜で本を読んでいて、なにかとてつもなくインスピレーションが沸いて、このまま本を読んで
いられたらどんなに幸福かと思っても朝が来て、仕事に行かなくてはいけない。
会社に行くと客からクレームとかジャンジャン来ていて戦争みたいになって、ヘロヘロで家に帰り
ビールを飲みながら読みさしの本を開くと「...なんだったっけ」で寝てしまう。その繰り返し。

【ジャック・どんどん さん】
インタビュー形式の自伝『期待と回想』(晶文社、1997年)で鶴見は、この時とどまっていれば、今頃はアメリカの大学教授になっていたんじゃないかと語っている。
---------------------------------------------------------------
ある意味で、そうなって欲しかったと思っています。
私の同居人の趣味で『期待と回想』をはじめ鶴見俊輔の主要な著作は自宅にありましたが、当初
は「プラグマチストの市民左翼」とバカにしていたのですが、読み出したら止まらなくなった
わけです。
当時鶴見が結核を病んでいたことは重要なファクターです。帰国しても兵隊には取られないだろうと
思っていた。
しかし、その後です。懲罰的に徴兵検査に「合格」させられ止む無く海軍軍属として日本軍占領下の
ジャワに赴任しますが、そこで日本が「敵の国」であったことを思い知らされるわけです。暴力的
制裁、捕虜虐殺、阿片栽培、慰安所、ジャワの慰安所は「強制」ではなかったようですが、白人
または白人との混血の娼婦は「高級将校用」、色の黒い現地人、朝鮮人娼婦は下士官、兵隊用。
「大東亜共栄圏」は白人コンプレックスの裏返し。いやなものは全部みせられた。

「ともに悪しき国家である日米をまえにして、より弱そうな方、負けそうな方を選んだ」
というのは「一番病」の父親への反発で「勝ち馬」には乗りたくないという心性なのかとも思いますが
私は鶴見の自分自身について言っていることはあまり「信用」していません。
結局「追放された人間」が追放されたら元の場所に戻るしかないという諦念、きつい言い方だと
自殺、自傷行為じゃないのかということです。アナアキストと言っているのもどうかな、
アナアキズムを「信じる」ようなタマかな、と思っています。

別に鶴見の心性に「下ネタ的興味」があるわけではなく、2つ関心ごとがあるのです。
一つは自分がどうしても悪に加担するはめになったとき「逃げる」事ができるかという事です。
あまり現実的でない仮定をしてもしかたありませんが、自分が「亡命」するとしたら、やっぱり
親が死んでからにしたいとか。でも「議論板」での、あっしらさんの「産業資本主義の終焉」=「平準化」
というパラダイムを受け入れると、もう逃げるところがないんですよね。アマゾンの奥地まで追いかけ
てくる。これは生理的な恐怖なわけです。そういう意味で鶴見に共感します。

もう一つは「政治板」で選挙結果を受けて日本共産党の方と、他の方でやりとりがあったけど、(私は
参加していないんですが)「戦争」というファクターを除外して語れないと思っているわけです。
日本共産党の方は「戦争に反対した唯一の党」とよくおっしゃるわけです。でもこれは変ですね。
自由民主党も公明党も社民党も民主党も戦前からあるわけではない。政党としては最古参になるわけ
ですが、要は自分たちは戦争に反対した、他の奴らは...と言いたいんじゃないか。
では戦争に「抵抗」した人たちはどうなるんだということです。
石橋湛山については別スレで少し書きましたが
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/s_suzuki/book_ishibashi.html
湛山は数字を上げていかに植民地支配が経済的に不合理かを説くわけです。鶴見が書いていましたが
湛山は戦時中にどこかの会社の社長をしていたのですが伊勢神宮に参拝したとき、部下から「何を
お願いしたのか」と聞かれて「日本が一日でも早く戦争に負けるようにお願いした」と公言しています。
言うだけならタダだろうと思われるかもしれませんが、吉田茂でさえ自分の書生に密告され憲兵隊に
拉致され軟禁状態になったわけです。(顔を包帯でぐるぐる巻きにした吉田茂を軽井沢で鶴見が目撃
しています。)ゾルゲ事件の尾崎秀美もそうです。三木清や中野正剛の所にいた花田清輝とか、ぎりぎり
のところで戦争を止めようとしていた。結果的には無力で日本共産党の方の言う様に「反動勢力に利用
されたピエロ」だったかもしれません。しかし、です。「ファシズムの暴虐に抗して」とかおっしゃいます
が戦前の日本が暗黒だったわけではない。どんなに欺瞞的なものでも「普通選挙法」があり、無産政党は
それなりの勢力を維持していた。「戦争板」で大西巨人の『神聖喜劇』について書きましたが
http://www.asyura2.com/0406/war57/msg/754.html
日本陸軍でさえ「罪刑法定主義」だった。スターリンやヒトラーの軍隊は「法治主義」じゃないん
ですよね。「神の軍隊」だから。
小泉並みにワン・フレーズになっているけど「まず言説の闘いにおいて敗れたという押さえが重要」
なわけです。これは丸山真男が言っていますが「獄中18年は賞賛に値するが、政治目的を実現する集団と
して目的を達成できなかったという反省、検討は必要だろう」ということです。
こういう話をすると「どんなに大変だったか」「お前はなにをしたんだ」とか共産党や民青の方は
おっしゃるんですが、「でも、あなたが戦前の共産党にいたわけじゃないでしょう?」と言いたくなる。

広松渉とか岩田弘は敗戦時に十代だったのですが共産党幹部が占領軍に「解放」されて歓迎集会が
あるので、胸躍らせて参加しますが、さながら「凱旋将軍」のような姿を見て、失望して空腹を抱えて
トボトボ歩いて帰ってくるわけです。「敗北が勝利にすりかえられる錯視」に気がついたからでしょう。
「共産党は正しかった。あとは反動の手先だ」その通り、でもそれは共産党が勝ち取ったものでは
なかったのです。しかしその錯視を支える現実があった。街はめちゃくちゃになり、親、兄弟、夫、恋人
は帰ってこなかった。戦時国債は紙くずになった。みんな「もう、こんなことはこりごりだ」と思った
わけです。「幻想」「宗教」と言っても否定できない「根拠」があったのです。しかしそのことは
戦争への「抵抗」を試みた人たちが二重に消されて行くことでもあった訳です。

ですから日本共産党の教義が如何に滅茶苦茶なものであろうと「良心的」な人たちは吸い寄せられ
「教義」と「良心」の葛藤に苦しんだわけです。柄谷行人が『早稲田文学』の5月号に「日本近代文学の
終焉」という文を書いていますが、どんなに滑稽でも「政治と文学」という構図があった、文学は
政治が取り扱えない倫理的なものを、扱おうとしたわけです。つまり日本共産党の背景にある「戦争」
という差異(外地からの引揚者という「世界交通」も含め)が「文学者」や「作品」を生み出し続けた。
しかしそれは全部、共産党の外に流出してしまったのです。街から硝煙や血の臭いが少しずつ消える
たびに「差異」は減少していった、「電位差」が無くなったわけです。その結果共産党の中の差異も
消滅した。もう共産党を逆さにしてもなにも出てこないと思っています。「政治勢力」=数として
一定の働きをすることは否定しないし逆に期待はします。しかし今の形で「草の根」と結びつくと
いうのは不可能だと思います。草の根には草の根の自生の論理があるということです。(暴言多謝)


 次へ  前へ

雑談専用10掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。