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第76回 小泉演説を封印した一通の書簡「靖国問題はアメリカの問題」 (2006/06/27)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/749.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 16:36:28: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 立花隆さんの「メディア ソシオ-ポリティクス」の海外アーカイブを阿修羅のスレッドでまとめて保存してくれないかと、。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 05 日 18:06:37)

第76回 小泉演説を封印した一通の書簡「靖国問題はアメリカの問題」 (2006/06/27)
http://web.archive.org/web/20060706033845/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060627_syokan/

2006年6月27日

 自民党総裁選は、安倍でほとんど決まったようでもあるが、まだまだ一波乱ありそうでもある。

 最大の不確定要因は、8月15日だろう。

 小泉首相が8月15日に靖国参拝を強行するのかどうか。強行した場合、どのようなリアクションが中韓両国から返ってくるのか。そしてアメリカはどう出るか。

 ここにアメリカをあげるのは、これまで靖国問題に関しては、我関せずの立場を貫いてきたアメリカが、かなりはっきりと小泉首相の靖国参拝に異議をとなえはじめた(非公式にではあるが)という事情があるからだ。

 
米議会での演説が急きょ取り止めに
……………………………………………………………………
 この月末に小泉首相はワシントンを訪問して、ブッシュ大統領と旧交を暖め、2人でテネシー州にあるエルビス・プレスリーの旧宅をたずねる予定になっていると聞く。

 小泉首相はイラクからの自衛隊撤退を優先課題としたため、ブッシュ大統領のご機嫌を損じないように、牛肉の輸入再開に早々と踏み切ったようだが、その程度のことプラス・プレスリー旧宅訪問で、ブッシュ大統領との関係を良好に保つことができ、靖国参拝も容認させられると踏んでいるとしたら、それは小泉首相の計算ちがいというべきだろう。

 そのあたりの事情は、この6月24日の「ヘラルド朝日」に寄稿されたポール・ジアラ元米国防総省日本部長の「首相参拝は米国にも損失」と題する論説を一読すれば、(同日の朝日新聞「私の視点」にもこの論説は転載されているが、残念ながら訳文があまりよくないため大切なニュアンスがだいぶ抜け落ちている)すぐわかる。

 前にこのページでも、小泉首相が訪米時に、米上下両院の合同本会議で演説するプランがあったにもかかわらず、米下院外交委員会のハイド委員長(共和党)が、小泉首相の靖国参拝を理由として、そのような演説に反対する旨の書簡をハスタート下院議長に出した結果、そのプランがお流れになったことを伝えた(第73回 ポスト小泉を呪縛する靖国問題と竹中問題)。

 先のジアラ氏の論説によると、その書簡には、「A級戦犯をまつった靖国神社に毎年公式参拝をつづける小泉首相に米議会本会議場でそのような演説をすることを許したら、フランクリン・ルーズベルト大統領が、真珠湾攻撃を受けた日に、『今日はアメリカが国家的恥辱を受けた日だ』と総弁をふるったあの有名な演説(この演説でアメリカ人は奮起し、国家的恥辱をはらさんと本気で戦争をはじめた)をした議場を汚すことになる」とあり、その一言がきいて、小泉首相の上下両院合同本会議での演説がお流れになったのだという。

 
next: アメリカの上下両院合同本会議で演説をするというのは…
http://web.archive.org/web/20060706033845/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060627_syokan/index1.html

 アメリカの上下両院合同本会議で演説をするというのは、アメリカが国賓級のお客に与える最大の特権である。そのような特権を与えられながら、それを靖国問題で棒に振ってしまうような政治家がいるとは、想像することすらできないという唖然たる調子でこの論説は全文がつらぬかれている。

 そして靖国問題が、中国、韓国にとってだけの問題ではなく、その他のアジア諸国にとっても、そしてアメリカ自身にとっても重大な問題なのだということを噛んで含めるような調子で、るる書いている。

 
アメリカの歴史認識にかかわる靖国問題
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 小泉首相は、何度も、靖国参拝にイチャモンを付けているのは、中韓両国だけで、あとは世界中の国が何の異議も持たないばかりか、当然視しているというようなことを述べているが、そういう事実は全くない。

 ジアラ氏は、靖国問題は、いまや他人事ではなくて、アメリカ自身の問題になっていると強調する。靖国問題はアメリカの歴史認識の問題にダイレクトにかかわってくるという。

 そして問題の根源は、A級戦犯が1978年にわざわざ意識的に合祀されたことにあるという。

「それ以来、靖国は、太平洋戦争の責任問題を忌避しようとする人々のシンボルになってしまった。靖国神社の中にある遊就館と呼ばれる戦争博物館には、第二次大戦での日本の立場がはっきり示されている。それは、あの戦争において、日本が政治的にも道義的にも正しかったという主張である。その展示によると、あの戦争はルーズベルト大統領がアメリカの戦略的利益を守るために陰謀と挑発によってひき起こしたもので、日本にとってそれはやむをえず引き込まれた自衛戦争だったということだ」

「アメリカではもっとましで、もっと正しい戦争の原因論が信じられており、このような愚劣な歴史の書き換えは、アメリカに対する直接的な挑戦と受けとめられている」

 このあたりの表現の裏にこめられた、アメリカのエスタブリッシュメント層の激しい怒りの感情が読みとれるだろうか。

 
変わりつつある米アジア外交の機軸
……………………………………………………………………
 アメリカはこれまで、靖国問題をめぐる日中間の確執に直接かかわりを持たないようにしてきた。しかし、ここにきて、そうもいってられないというニュアンスがアメリカ側に強く出はじめており、このジアラ氏の論説にもそれが強く出ている。以下、長文のジアラ氏論説を意訳して紹介してしまうと、次のようなことを主張している。

 これまで、アメリカ側には、日米関係を強固なものにしておくことが、アメリカのアジア外交の基軸であるという認識があった。

 
next: アメリカにとって日本は…
http://web.archive.org/web/20060706031612/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060627_syokan/index2.html

 アメリカにとって日本は、これまでアジア最大の政治的軍事的同盟国であり、第一の貿易相手国であり、切っても切れないほど強く結ばれたパートナー的関係にある国とみなしてきた。

 しかし、ここにきてアメリカのその認識は大きく変わりつつある。

 アメリカにとって米中関係はすでにきわめて大きなものになっていて、米日関係と比較したときに、これまでのように、単純に米日関係のほうが大事とすぐに決められない場面がいろいろと出てきている。

 特にこの靖国問題のように、日本側の主張にアメリカにとって納得がいかない部分が含まれている場合には、アメリカがその言い分を支持して行動を起こすというようなことは基本的にしたくない。ことにその問題が関係国の間で、感情的に燃え上がりやすい要素を含んでいる場合には、アメリカは手を出したくない。

 アジアにおいて日本は基本的にアメリカと一体の国とみなされている。しかし、日本と一体と見られることがアメリカの戦略上アメリカに不利となる場合には、アメリカは日本と行動を共にすべきではない。そして靖国問題はそのようなケースだという判断がジアラ氏の考えの基本にある。

 
“真珠湾”を蒸し返す靖国問題
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 1945年以来、日本は国際社会で、平和と安全を維持する民主国家の善良な一員として、比類のない名声をかちとってきた。アメリカはそのような日本と価値を共有し、行動を共にするパートナーとしてずっといい関係を保ってきた。

 そのようにして長い時間をかけて、日本が国際社会で勝ち取ってきた名声を、いま日本は靖国問題で投げ捨ててしまおうとしているように見える。中国の言い分と日本の言い分を聞いていると、あの民主主義も人権もまだ確立されていない発展途上の国家が、まるで、日本より正しいことをしている国のように聞こえてくる。

 日本は明らかに、この靖国問題では、国家的退行現象を起こしつつある。アメリカがこのような日本と一体であるとみなされることは、国家戦略上アメリカの損失である。場合によっては、アメリカは日本から身を引くという選択をしなけれなならない。

 日本とアメリカの間の歴史的関係は、あの激しい戦争を戦った敵国同士だったことだ。それが今日では、過去の怨念をすべて乗り越えて、強固な同盟国になっている。日本と中国も同じように激しい戦争を戦った敵国同士だが、日本と米国のようにそのような歴史的怨念関係をすべて乗り越えて親しい関係になるということができないわけではない。日中関係がそのように修復されてアジアに安定がもたらされることがアメリカの利益にもなる。

 靖国問題がこのような形で両国間の最大の障害でありつづけている状況は、日本のためにも、中国のためにも、アメリカのためにも良くない。

 
next: 日本が靖国問題の持つこのネガティブな側面に気づけば…
http://web.archive.org/web/20060706024734/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060627_syokan/index3.html

 日本が靖国問題の持つこのネガティブな側面に気づけば、そこから抜け出すのは簡単なことだという。要するに、小泉首相が、次のように宣言すればよいのだ、とジアラ氏はいう。

 「日本にとってなにより大切なのは、国際社会における日本の名声であり、日米関係であり、日中関係です。靖国参拝が、そのすべてをぶちこわすということがわかりましたので、私はもう靖国神社に参拝しませんし、私の後継者も参拝しないほうがいいと思います」

 全くジアラ氏の主張の通りだと思うが、人から何かいわれてその通りにすることが何より嫌いな小泉首相は、おそらくこのジアラ氏の忠言を受け入れることはしないだろう。

 
アメリカが用意した「和解」のプラン
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 ところで、このジアラ氏の論説の英文オリジナルには、末尾に、奇妙な一文がある。

「この宣言をするのにどこよりもピッタリの場所は、アメリカ議会の上下両院合同本会議場であることは明らかではないか」

 以上の一文が、朝日新聞の日本語訳文からはなぜか落ちているが、英文オリジナルにはあるのだ。

 小泉首相が両院合同本会議に招かれて演説する話は、すでにお流れになってしまったのではなかったのかと思って、そのくだりを読み直してみると、実はまだ完全に終わった話とは書かれていない。まだ可能性は残っているようなのだ。

 おそらく、この背景にある真実はこんなところではないか。

 はじめブッシュ大統領が、靖国問題で日中両国が救い難い衝突コースに入りつつあるのを見て、小泉首相にその窮地から抜け出すための場として、米議会の両院合同本会議での演説という場を設定してやった。

 ところが小泉首相がかたくなにそのようなアメリカ・プランの解決策に乗ることを拒否したため、そして、米国内からも先に述べたように、米国議会で小泉首相に演説させることに反対の声が出たためにこのプランは軌道に乗らなかった。

 しかし、これこそ最良の解決策と信じている日米両政府の関係筋の人々が、ジアラ氏とトリビューン朝日紙を使って、そのプランをもう一押しするために、あの論説という形で、アメリカ政府側の意思をもう一度どう誤解しようもない形で日本に伝えた。

 アメリカ政府が、基本的にあの論説に書かれたような気持ちと意思を持っていることは、すでにさまざまのチャネルを通じて、日本政府・小泉首相側には伝わっている(以前、ブッシュ大統領が直接に日米首脳が顔を合わせる場で小泉首相を口説いたことがあるという話を書いたこともある)のに、小泉首相はそれを一貫して無視してきたのである。

 
next:「小泉美学」は外交的破滅をもたらす…
http://web.archive.org/web/20060706030557/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060627_syokan/index4.html

「小泉美学」は外交的破滅をもたらす
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 この先いったいどうなるのか。

 アメリカ側がさらに一押しして、アメリカ滞在中に突如小泉首相の議会演説での靖国不参拝宣言がなされる可能性もゼロではないと思う。

 しかし、それ以上に可能性があるのは、小泉首相の8月15日の参拝だろう。

 なにしろそれだけが、小泉首相がこれまでにした大きな政治的約束で、まだ果たしていないことなのである。

 小泉首相がこだわる「小泉美学」からすると、この約束は何が何でも果たしたい約束だろう。だがそれを強行した場合、国際的にどのようなリアクションが起こるか。まだ、誰にも予想がつかない。

 いずれにしても、小泉首相が8月15日に参拝するかどうかは、いつものことながら、8月15日当日までわからないだろう。

 小泉首相が参拝するかどうかで、その後の政治的様相が大きく変わってくることは必定だから、おそらくは、自民党総裁選も、そのときまでは大きく動くことはないのではないか。

 だがこの問題に関して、福田、安倍候補のスタンスはとっくの昔から明瞭すぎるほど明瞭である。

 安倍はつい最近も、首相の靖国神社参拝を支持する新人議員の会である「伝統と創造の会」に出席して、「自分が行くか行かないかを、事前に明言するようなことはしないが、行ったとしてそのことは誰からも批判されるべきではない。行きたい気持ちは持ちつづける」と明言した。そして、「外国から何かいわれてしないようなことはありえない」とも明言した。

 だが、何か言ってくる国が中国、韓国のような国でなく、アメリカの場合はどうなのか。

 アメリカが靖国参拝批判をもっと強めてきたとき、小泉首相にしろ、安倍にしろ、それにどう対応するのか。

 8月15日が近づけば近づくほど、この問題は大きくなっていきそうだ。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。  

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