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<ただいま留学中> サンディエゴ高校白書
http://www.asyura2.com/08/social6/msg/200.html
投稿者 こげぱん 日時 2008 年 10 月 18 日 00:03:41: okIfuH5uFf.Lk
 

http://www.senri.ed.jp/interculture/2000-01/ic73.htm

<ただいま留学中> サンディエゴ高校白書

池山奈甫
高等部1年

 私は去年7月から、両親と共にカリフォルニア州のサンディエゴで暮らし始めた。アメリカは高校までが義務教育で、小中高と無試験で自動的に、住んでいる学区にある学校に行く。子供を質の良い学校に行かせたい親は、先を競ってレベルの高い学区に引っ越す。すると地価が上がり、その学区には裕福な者しか住めなくなる。その結果、裕福な家の子供は優秀な教師陣による教育のもと、より多くの知識を身に付け収入の多い職に就き益々裕福になり、貧しい家の子供は治安の悪い学区で十分な教育を受けられぬまま職業も限られ、益々貧しくなる。アメリカの富の90%は上位10%の富裕層が手にするそうだ。反面、底辺の者は飢えにまで直面する。アメリカ農業省によると、ここ数年1000万人のアメリカ国民が食料の不足を訴え続けている。この埋め難い貧富の差は、少なからずアメリカの教育環境に起因するところがあるように思う。

 私の通うTorrey Pines High Schoolは、全米一優秀な公立高校に与えられるNational Blue Ribbon Awardなるものを数回受賞しており、生徒のSATの平均点が絶えず全米トップ10に入っているという進学校だ。先の教育と収入の原理にもれず、生徒の親は皆総じてお金持ち。大半がオーシャンビューのある豪邸に住み、ベンツやBMWで通学している。ここで痛感したのが人種の差だ。カリフォルニアは今好景気で、国内外から移住者が絶えない。近年メキシコからの移民が一段と増え、来年には州の人口比率の内、過半数はヒスパニック系になり、白人はマイノリティーに転じるらしい。しかし、私の住む地域では白人が圧倒的多数を占め、ヒスパニック系とアジア系はわずか、黒人はほとんど見られない。

 さて、生活も教育もハイレベルな人達が集まる我が高校だが、どうしたことか設備は最悪である。カリフォルニア州は教育に重きを置かない政策らしく、公的補助金は全米でも最下位あたり。よって、現在爆発的に増えている生徒数に校舎が追いつかず、キャンパスは常に 2700人の生徒で溢れ返っている。休み時間の廊下など、ラッシュ時の満員電車を彷彿とさせるものがある。1クラス40人超で、配給される教科書はアンティーク並みの古さ。図書館の蔵書は田舎の分校といい勝負だろう。ランチエリアの確保は至難の業で、みんな立ち食い。雨の日は芝生にも出れず、廊下で立ち食い。PTAは寄付金集めに奔走している。

 そんな環境下にも関わらず、生徒の勉強に対する熱意にはただただ感心させられるばかりである。授業には、半年の履修で4単位貰える一般クラス、各5単位のhonorsクラス、AP(Advance Placement)クラス、と3種類ある。一般クラスが簡単すぎる生徒は適性テストを受けhonorsへと進級する。更にAPでは、大学と同じ内容の授業が提供され、その単位及び成績はそのまま進学先の大学に履修済みとして認められる。取りたい授業が高校で開講されていなければ、生徒は車を走らせ近隣の大学にその授業だけ受けに行く。夏休みにはサマースクールが開かれ、必修単位を次々と先取りすれば、早めに高校を卒業できる仕組みだ。

 現に、放課後一緒にネイルショップにマニキュアを塗りに行く金髪碧眼の友人Dは今年16歳だが、高校から車で10 分の距離にあるUCサンディエゴ大学で数学を取り、別のコミュニティーカレッジではフランス語を取っている。高校と大学に同時に通っているのである。高校の卒業単位は優にクリアーしているので、もう今年にでも卒業できる、という。その上ずっとAPクラスを取って来たので、来年にはコミュニティーカレッジの卒業も見込めるそうだ。彼女は17歳にして大卒になるということだ。また、良く連れ立って映画を観に行く友人Eは美術関連が好きで、美術のAPクラスではコンピューターを駆使し絵画とアニメーションとの融合などという最早私には想像も及ばない次元のことをやってのけている。Eは夏休み中に、とある美術大学の開催した短期講座に参加し、大いに創作欲を掻き立てられたらしい。今はアニメーション会社の受け付けでバイトをしている。9月にオーストリアから引っ越して来たペルシャ人のJは2年前に英語を習い始めたばかりだが、かれこれ10年近く英語を勉強している私よりはるかに上手い。Jはオーストリアの学校でラテン語とドイツ語とフランス語をマスターし、家庭ではペルシャ語を話し、今また英語も制覇しつつある。将来は国連で働きたいと真剣な目で語ってくれた。先日この3人と話していた折、Dが私に聞いてきた。「ナホは自分のために何の勉強をしてるの?」続いてEが「将来どんな仕事がしたい?」最後にJが「英語の他に何語が必要だと思う?」絶句した。私は、投げかけられた問いの内、ただのひとつも真剣に考えたことがあっただろうか。

 ところで、私の近所は皆ガーデナーさんを雇う。メキシコから出稼ぎに来ている彼等は、低賃金で庭の芝刈りや外回りの掃除全般を請け負っている。彼等は私などより遥かに努力している。しかし彼等がどんなにがんばって働こうと、彼等が一代でガーデナーを雇える日は来ないだろう。私は日本人で、この両親の元に生まれたため、努力なくしてガーデナーを雇い、彼等はメキシコ人で、貧しい家に生まれたために、すごい努力でもってガーデナーをするのだ。私は彼らの前に、自分を恥じる。私の今置かれている境遇なり立場なりは、全て他人が与えてくれたものだ。私の力で培ってきたものなど無いに等しい。私は雑踏の中、親に手を引かれ周りの人垣に支えられようやく立っているのだ。私は自覚も無いまま、恐ろしく脆いつり橋の上にあぐらを掻いているのではなかろうか。つい3、40年程前までは日本人がアメリカでこのガーデナーをはじめ農園でのイチゴ摘みの職などに就いていたのだから。またその様な境遇に陥った時、果たして私はひとりで生きていけるのだろうか。

 上昇志向で常に瞳を輝かせ夢を追う友人達と、庭で黙々と働くガーデナーとを思うとき、私は同じ世界に横たわる果てしなく深い格差を感じ、軽い目眩さえ覚えるのだ。

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▽参考
Re: 最高峰の黒人大学に初の白人卒業生総代(Don't Believe the Hype)
http://www.asyura2.com/08/social6/msg/134.html

以下原作者出身校関連投稿
関西学院と千里国際学園、2010年合併へ協議(読売新聞)
http://www.asyura2.com/07/social5/msg/521.html

Re: 帰国子女も日本育ちも、日本にいながら驚異的英語力を身に付けることができる英語教育
http://www.asyura2.com/0601/idletalk17/msg/372.html

アメリカが警戒心から陰で教育に干渉した事例があるとすれば、学制改革とセンター試験でしょう
http://www.asyura2.com/0601/idletalk20/msg/634.html
 

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