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自然エネルギーを過大評価するな! たくさんあるだけでは、問題は解決しない|山本達也
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/231.html
投稿者 上葉 日時 2010 年 7 月 09 日 07:53:02: CclMy.VRtIjPk
 

自然エネルギーを過大評価するな! たくさんあるだけでは、問題は解決しない JBpress(日本ビジネスプレス)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3619


自然エネルギーを過大評価するな!
たくさんあるだけでは、問題は解決しない
2010.06.02(Wed) 山本 達也
日本経済・解体新書

明治以来、日本は海外の先進事例を学び、真似をして、日本型にアレンジしながら付加価値をつけることを得意としてきた。こうした「政策の模倣」は、「エミュレーションモデル」(emulation model)と呼ばれる。

 自動車産業に代表されるように、かつての日本は、「エミュレーションモデル」によって国際的な競争力を獲得してきた。しかし21世紀のエネルギー問題については、残念ながらお得意の「マネっこ政策」は有効な解決策にはならない。


■「濃縮」されている資源こそ価値が高い

 赤や白、ピンク──色鮮やかなツツジが美しい季節。通学路にある民家の庭先に咲くツツジの花をプチッとちぎってチューチューと吸った経験のある人は、きっと少なくないはず。ほんのり微かな甘味は、懐かしい記憶として残っている。

 小学生のお遊びにはそれでも十分だが、通常は花にどんな甘い蜜があっても、ただ咲いているだけでは人間には意味をなさない。ミツバチが蜜を集めて巣に持ち帰ってくる「濃縮」のプロセスを経て、初めて「ハチミツ」という資源として利用可能になる。

 もちろん「量」も重要だ。庭に1本植えたツツジを「資源」と言うと大袈裟だが、一面の花畑には「有効な資源が眠っている」と言ってもいいだろう。しかしその花畑も、人間がアクセス不能な山奥にあると、やはり利用は不可能だ。

 この「濃縮されている」「大量にある」「物理的・経済的にアクセス可能である」ことを、元国立環境研究所所長で東京大学名誉教授の石井吉徳氏は「資源が資源であるための3要素」と定義している(石井吉徳『知らなきゃヤバイ! 石油ピークで食糧危機が訪れる』日刊工業新聞社)。

 筆者は、21世紀型のエネルギー政策論では、3要素の中でも特に「濃縮」に注目する必要があると考えている。





■「たくさん」あるだけではエネルギー問題は解決できない

 例えば、海水には微量のウランが含まれている。海は地表の7割を占め、海水に溶け込んでいるウランを集めれば膨大な量になるはずだ。

 しかし、庭に咲く花が資源としては意味をなさないように、「濃縮」のプロセスを経ていない海水中のウランは資源とは言い難い。仮に莫大な量の海水を集めてそこからウランを抽出しようとすれば、そこに大量のエネルギーを投入しなければならないので、エネルギーとしての採算が合わなくなる。

 ウラン鉱山のウランも海水に含まれるウランも、同じ量を集めてくれば同じ「仕事」をすることができるが、どう考えても、最初から「濃縮」された形で存在するウラン鉱山のウランの方が圧倒的に高効率だ。「たくさんある」だけでは解決策にはならない。

 同じことは、太陽光や風力などの自然エネルギーにもあてはまる。


■エネルギーの質は 石油 > 太陽光

 「地球に降り注ぐ太陽光1時間分は、全世界が使用するエネルギー1年分に相当する」──と言われる。このため、太陽光に期待を寄せる声は大きい。しかし、それを集めて資源として活用するために膨大なエネルギーを投入しなければならないとすれば、採算はマイナスになってしまう。

 石油は、エネルギー総量に換算すれば太陽エネルギーよりもはるかに少ないが、油田に「濃縮」された形で存在する石油は、地表に降り注ぐ太陽光より遥かに良質なエネルギーだ。だからこそ、人類は石油をベースに産業を発達させることができたと言ってもいい。

 自然エネルギーはおしなべて、総量は大きいが濃縮のプロセスを経ておらず、資源としての「質」は劣る。これを凝縮して1カ所に集めて使いやすくするためには、良質なエネルギーの投入をしなければならず、エネルギーの「採算」を悪化させる。





■自然エネルギーは地産地消の発想で

 「石油ピーク」が現実的な問題となりつつある今、たとえ「濃縮」のプロセスを経ていなくとも、人類は自然エネルギーを有効活用する手立てを考えなければならない局面に来ている。しかし、その方法は、原子力発電のように「新潟でまとめて大量の電気を作って、東京で消費する」ような使い方ではなく、地産地消的な発想が最も効率的な使い方なのだ。

 「分散しているものを分散したまま使う」というコンセプトは、公共政策論的に重要なテーマを提起する。「地方分権論」とリンクするためである。

 自然条件は土地土地で異なるため、自然エネルギーを利用するための画一的なモデルは存在しない。「分散しているものを分散したまま、より効率的に使う」ためには、その地域の自然の状態を徹底的に知りつくし、その土地に合ったエネルギー供給システムを構築する必要がある。

 その土地の自然はその土地の人が一番よく知っている。つまり、各地方におけるエネルギー供給モデルを作るには、その土地で暮らす人の知恵が不可欠であり、国が中央で決めた画一的なモデルを押しつけても上手くいくとは限らない。どこかの国の政策をまる写しにすることも意味がない。この点でエネルギー論と地方分権論とはリンクし得る。

 石炭や石油のようにエネルギーが高濃縮された資源は、発電所までの輸送や遠隔送電のロスに目をつぶることができた。同じエネルギー源を手に入れさえすれば、他国を模倣して「+アルファ」を付け加えることで競争力を向上させていくことが可能だった。エミュレーションモデルが有効に機能したのである。

 しかし、自然エネルギーの利用を中心としたエネルギーシフト政策を考案する場合は、「マネっこ」思考から脱却しなければならない。自然エネルギー利用に、それは通用しないのだ。他国の取り組みがいくらスマートで魅力的に見えても、自然条件や人口分布などが異なる日本の地方都市に当てはめたところで、効果は薄いだろう。

 オランダの広大な平地で何基もの風車が回る風力発電所の光景は、エコの象徴のようにも見える。しかし、それはオランダが低地で1年中、一定方向の風が吹くから有効なのであって、冬と夏とで風向きが異なったり、そもそも大して風の強くない地域でマネしたところで、上手くいくはずがない。

 マネっこモデルも中央モデルも通用しない自然エネルギーの活用には、それぞれの地方で、気候・風土を知りつくしたローカルな人びとが徹底的に考え抜きながら、ボトムアップ型の政策形成を進めるしかない。その先にこそ、活力ある地方が点在する日本の目指すべき未来があると期待したい。




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コメント
 
01. 上葉 2010年7月09日 07:56:39: CclMy.VRtIjPk: QEthDcX7Ks
書籍へのリンクです。

石井吉徳:知らなきゃヤバイ!石油ピークで食糧危機が訪れる (B&Tブックス)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4526063290/asyuracom-22


02. taked4700 2010年7月10日 10:24:20: 9XFNe/BiX575U: tC8f2oPwcc
この方、あまり勉強していないと思う。

1.自然エネルギーの最も有望なものは地熱発電。このことは、太平洋戦争以前からすでに定説になっている。

2.戦前から戦後にかけて最も利用されてきたのは水力発電。アイスランド・ニュージーランドなどでは、現在も主流の発電方法として利用されている。そして、水力発電も地熱発電も、上の記事で言われている3要素は十分に満たしている。

3.オランダで風力発電ができて、日本ではあまり向かないのは、日本の大部分で、台風が来るため。風車そのものを頑丈に作る必要があり、コストがかかりすぎる。もちろん、オランダが平地であり、北に北極、南に地中海があるので、一定方向の、しかも、強さがあまり変わらない風が吹くという条件があるのに対し、日本は山地で地形が一定せず、風向きも風力もしょっちゅう変わるということがある。

4.「濃縮されている」「大量にある」「物理的・経済的にアクセス可能である」が条件であるというのは、多分、不適切。もう一つ条件が必要で、それは安全性だ。事故が起きないという意味だけでなく、環境を汚染しないという意味でも安全である必要があり、持続可能な社会を作る上で、重要な要素だと思う。


03. 上葉 2010年7月10日 21:33:29: CclMy.VRtIjPk: 68TTwYtppU
>>02
 水力発電・地熱発電は「濃縮されている」とは言えません。EPRが低いからです。自然エネルギーのなかで有望であることは否定できませんが、石油や天然ガス、原子力の代替になりえるものではありません。EPRという概念を、関連記事などをお読みになって、理解されれば、納得されることと思います。

 エネルギーの地産地消という面からも、その土地にあった発電方法が考えられるべきだと思います。水力・地熱は、それへのアクセスが容易な土地では、有効な発電手段となるでしょう。

 安全性は、「物理的・経済的にアクセス可能である」に含めればよいと思います。危険なものには、アクセスするのも容易ではありませんから。今回、事故のおきたメキシコ湾の油田も、これまでであれば採掘を考えないような深海にあるものです。


04. taked4700 2010年8月20日 01:27:12: 9XFNe/BiX575U: rkz36ijLqn
03の上葉さん、ご返事が遅くなりすいません。

http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/supplement/EPTdefinition.htmlにEPTとEPRの定義が載っていて、EPTについては、その値が小さいほど有利であり、EPRについてはその値が大きいほど有利ということです。

http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/e_source/RE-energypayback.htmlには、地熱をはじめとした再生可能エネルギーと原子力や火力などの比較が載っています。

>水力発電・地熱発電は「濃縮されている」とは言えません。EPRが低いからです。自然エネルギーのなかで有望であることは否定できませんが、石油や天然ガス、原子力の代替になりえるものではありません。EPRという概念を、関連記事などをお読みになって、理解されれば、納得されることと思います。

ということですが、上にあるリンクでは、地熱はEPR31で、化石燃料火力よりもEPRがよいというデータになっていますし、原子力については、24から76で、こちらも場合により地熱のほうが有利というデータになっています。

また、地理的条件により、地熱発電に向いた地域は地熱をやればいいということですが、確かに、フラッシュ発電などは、地域が限られ、場所によっては不向きな土地も多いでしょう。しかし、それなら、原発はもっと不適な土地が多いはずです。日本においては、どこを探しても、地震が起きないと言える土地はなく、経済性というよりももっと重大なリスクを原子力は抱え込んでいることになります。また、地熱発電は、高温岩体発電やマグマ発電ができます。高温岩体発電は既に技術が実用期にあり、!KWH10円未満のコストで発電ができるとされています。

そもそも、自然エネルギーというと、すぐに太陽光発電とか風力がもてはやされていますが、実際の発電量でいうと、自然エネルギー全体の7割以上は地熱発電で占められています。それだけ、地熱は24時間365日、安定的にかつ安全に発電できるということです。


05. 2011年1月13日 07:03:15: 8ZXG5AAQQ6
自然エネルギーは広く薄く分布しているので、産業社会のエネルギーとして適さない。お説の通りです。
自然エネルギーの地産地消も結構ですが、地熱発電も含めて、自然エネルギー利用の環境破壊という問題にも目を向けて頂きたいと思います。風力発電の適地は安定して風が吹く地域です(当たり前です)が、これらの風は鳥たちの渡りに利用されることが多く、渡りのルート上に発電機が建設されることによりバードストライクむが問題になります。
また近年見直しされるようになった小水力発電も、河川を堰きとめる必要があり、回遊性の魚介類の遡上の障害となります。農業用の取水堰設置でさえ数多くの種を絶滅寸前に追い込んでいます。大規模なダムでなくとも河川環境を破壊するのは間違いありません。
太陽光発電も、広大な山林や草原を切り開き、草の生えない日陰地に変えてしまいます。
地熱発電も全エントロピーを使い切るなら良いのですが、原子力・火力と同様温排水による河川・海洋環境の破壊が問題です。
自然エネルギー利用がエコだと単純に考えないで下さい。二酸化炭素の排出が少ないだけがエコではないのです。
共生しているもの言わぬ仲間のことにも思いを馳せてくだされば幸いです。

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